説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、車載装置との通信に係る電子キーの消費電力を低減することにある。
【解決手段】電子キー10の電池電圧が閾値未満である場合には、車内に送信される第2のリクエスト信号Srs2に対してのみレスポンス信号が送信される。すなわち、電池電圧が閾値未満の場合には、車外に送信される第1のリクエスト信号Srs1に対してレスポンス信号が送信されることが防止される。よって、電子キー10の電池電圧低下時に、車両ドアの解錠に係る通信が実行されることで電池の電力が消耗し、エンジンの始動が不可となることが抑制される。これにより、ユーザに対してトランスポンダ照合を通じた、エンジンの始動を要求することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムにおいては、電子キー及び車両間での無線通信を通じて、車両ドアの施解錠、エンジン始動等が許可される。例えば特許文献1に示される電子キーシステムにおいては、車両は、車室内外にリクエスト信号を送信する。電子キーは、リクエスト信号を受信すると、IDコードを含むレスポンス信号を送信する。車両は、車外に存在する電子キーからのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立した旨判断したとき車両ドアの施解錠を許可する。一方、車両は、車内に存在する電子キーからのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立した旨判断したときエンジンの始動を許可する。
【0003】
上記電子キーシステムにおいて、電子キーが電池切れの場合には、電子キーを通じた車両との通信、ひいてはドアの解錠が実行できないことになる。そこで、例えば特許文献2に記載の電子キーにおいては、電子キー本体に非常用のメカニカルキーが収納されている。すなわち、電池切れの際には、電子キー本体からメカニカルキーを取り出して、そのメカニカルキーを車両ドアの鍵穴に差し込んだ状態で回すことで、車両ドアの施解錠が可能となる。これにより、電子キーの電池切れの際に、ユーザが乗車できない状況を防ぐことができる。
【0004】
また、例えば、特許文献3に記載の電子キーシステムにおいては、電子キーの電池が切れた場合であっても、電子キーは車両との無線通信を通じてエンジンの始動が可能とされている。本構成においては、電子キーの電池が切れたとき、電子キーを特定の位置(例えば、エンジンスイッチ)にかざすことでトランスポンダ通信を通じてエンジンの始動が可能となる。このトランスポンダ通信においては、電子キーは、車両からのトリガ信号に基づき生じる誘起電力により車両にIDコードを含む無線信号を送信する。すなわち、この無線信号の送信には電池の電力を要しない。
【0005】
以上のように、電子キーの電池切れの際にも、車両ドアの施解錠及びエンジンの始動が可能となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−029385号公報
【特許文献2】特開2010−120413号公報
【特許文献3】特開2010−12921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、電子キーの電池切れの場合に車両ドアを施解錠、及びエンジンを始動するには通常時と異なる作業を行う必要がある。特に、電池切れの場合におけるエンジン始動方法は、上記電池切れの場合における車両ドアの施解錠方法に比べて特殊である。このため、ユーザによって電子キーの電池切れ時のエンジン始動方法が認知されていない可能性がある。よって、電子キーの電池切れ時に、エンジンを始動できないおそれがある。このような現状から、より電池切れが生じづらい、すなわち車載装置との通信に係る電力消費を低減した電子キーが求められている。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車載装置との通信に係る電子キーの消費電力を低減した電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車内外にリクエスト信号を送信する車載装置と、前記リクエスト信号を受信するとIDコードを含むレスポンス信号を送信する電子キーと、を備え、前記車載装置は、受信した前記レスポンス信号の妥当性を確認したとき、車両ドアの施解錠状態の切り替え又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、前記電子キーは前記リクエスト信号の受信及び前記レスポンス信号の送信に係る電力が蓄えられる電池の電圧を検出する電池電圧検出手段を備え、前記車載装置は前記リクエスト信号として第1のリクエスト信号又は第2のリクエスト信号を送信し、前記電子キーは前記電池電圧検出手段を通じて電池電圧が閾値以上である旨判断している場合、前記第1のリクエスト信号又は前記第2のリクエスト信号を受信すると前記レスポンス信号を送信し、前記電池電圧検出手段を通じて電池電圧が閾値未満である旨判断している場合、前記第2のリクエスト信号を受信したときにのみ前記レスポンス信号を送信することをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、電子キーの電池電圧が閾値未満となった場合、第2のリクエスト信号に対してのみレスポンス信号が送信される。すなわち、電池電圧が閾値未満の場合には、第1のリクエスト信号に対してレスポンス信号が送信されることが防止される。従って、車載装置との通信に係る電子キーの消費電力を低減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載装置は、車外に前記第1のリクエスト信号を送信し、車内に前記第2のリクエスト信号を送信し、前記第1のリクエスト信号に対する前記レスポンス信号の妥当性を確認したとき車両ドアの施解錠を許可し、前記第2のリクエスト信号に対する前記レスポンス信号の妥当性を確認したときエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電子キーの電池電圧が閾値未満となった場合には、車内に送信される第2のリクエスト信号に対してのみレスポンス信号が送信される。よって、電子キーの電池電圧低下時に、車両ドアの解錠に係る通信が実行されることで電池の電力が消耗し、エンジンの始動が不可となることが抑制される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、外部から加えられるエネルギを利用して発電するとともに、発電した電力を前記電池に充電する発電装置を備えたことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、発電装置を通じて電池に電力が充電される。このため、電池電圧の低下によって、電子キーシステムを通じた車両ドアの施解錠又はエンジン始動が不可となることが抑制される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーの本体に取り出し可能に収納されるとともに機械的に車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能であるメカニカルキーを備え、前記発電装置は、前記メカニカルキーの取り出し時に生じるエネルギを利用して発電することをその要旨としている。
【0016】
例えば、電子キーの電池電圧の低下によって、電子キーを通じた車両ドアの施解錠が不可となった場合には、ユーザによってメカニカルキーが電子キーの本体から取り出される。このとき、発電装置を通じて電池に電力が充電される。この充電された電力が、エンジンの始動に係る通信に利用されることで、より確実にエンジンの始動が可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、運転席近傍にユーザに操作可能に設けられるエンジンスイッチを備え、前記車載装置は、前記エンジンスイッチが操作された旨認識すると、車内に前記第2のリクエスト信号を送信し、前記第2のリクエスト信号に対する前記レスポンス信号の妥当性を確認したときエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、電子キーの電池電圧が閾値未満である場合には、エンジンスイッチが操作されたときにのみ、電子キーからレスポンス信号が送信される。よって、車載装置との通信に係る電子キーの消費電力を低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、車載装置との通信に係る電子キーの消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】第1の実施形態における車両の上面図。
【図3】第1の実施形態における車載制御装置及び電子キー制御部の処理手順を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態における車載制御装置及び電子キー制御部の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1に示すように、電子キーシステム1は、ユーザに所持される電子キー10と、車両2に搭載される車載装置20とを備える。以下、電子キー10及び車載装置20の構成について説明する。
【0022】
<電子キー>
図1に示すように、電子キー10は、コンピュータユニットによって構成される電子キー制御部11と、LF(Low Frequency)帯の無線信号を受信するLF受信部12と、UHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号を送信するUHF送信部13と、各部に電力を供給する電池ユニット15と、を備える。
【0023】
電池ユニット15は、充放電可能な2次電池を備える。また、電池ユニット15は、自身の電池電圧を検出する電圧センサ15aを備え、同電圧センサ15aの検出結果は電子キー制御部11に出力される。電子キー制御部11は、電圧センサ15aの検出結果に基づき電池電圧を認識する。
【0024】
LF受信部12は、自身の受信アンテナ12aを介して車載装置20からの第1のリクエスト信号Srs1又は第2のリクエスト信号Srs2を受信する。本例では、第1のリクエスト信号Srs1は車外に送信される電波であって、第2のリクエスト信号Srs2は車内に送信される電波である。LF受信部12は、第1のリクエスト信号Srs1又は第2のリクエスト信号Srs2をパルス信号に復調し、それを電子キー制御部11へ出力する。
【0025】
また、電子キー制御部11は、不揮発性のメモリ11aを備える。メモリ11aには電子キー10に固有のIDコードと、電池電圧低下の判断に関する閾値とが記憶されている。電子キー制御部11は、第1のリクエスト信号Srs1を認識すると、電圧センサ15aを通じて電池電圧を認識する。電子キー制御部11は、その電池電圧が閾値以上である旨判断したとき、メモリ11aに記憶されたIDコードを含むレスポンス信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号を変調し、これを送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。一方、電子キー制御部11は、その電池電圧が閾値未満である旨判断したとき、第1のリクエスト信号Srs1を受けてもレスポンス信号を生成しない。
【0026】
電子キー制御部11は、第2のリクエスト信号Srs2を認識すると、メモリ11aに記憶されたIDコードを含むレスポンス信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号を変調し、これを送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。
【0027】
また、電子キー10の本体には、非常用のメカニカルキー17が収納されている。さらに、メカニカルキー17の挿抜によって発電する発電装置18が設けられる。本例では、この挿抜力が発電装置18にとって外部エネルギである。挿抜に伴うメカニカルキー17の直線運動は発電装置18によって回転運動に変換される。発電装置18は、この回転運動に基づき発電する。発電装置18を通じて発電された電力は電池ユニット15に充電される。
【0028】
取り出されたメカニカルキー17は車両ドアに設けられるキーシリンダ(図示略)に挿入される。そして、その状態でメカニカルキー17は回動される。これにより、車両ドアの施解錠状態が切り替えられる。
【0029】
また、電子キー10はトランスポンダ14を備える。トランスポンダ14は、コイル及びICチップ等からなる。このトランスポンダ14は、エンジン始動時に操作されるエンジンスイッチの近傍に局所的に送信される駆動電波を受けると、自身のコイルに誘起電力が生じる。トランスポンダ14は、この電力に基づき自身のIDコードを含むトランスポンダ応答信号を送信する。このとき、電池ユニット15の電力は利用されない。
【0030】
<車載装置>
図1に示すように、車載装置20は、コンピュータユニットにて構成される車載制御部21と、車外にLF帯の無線信号を送信する車外送信部22と、車内にLF帯の無線信号を送信する車内送信部23と、車内外から送信されるUHF帯の無線信号を受信する車載受信部24と、を備える。
【0031】
また、車載制御部21には、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35と、ロックスイッチ36と、カーテシスイッチ37と、が電気的に接続されている。
【0032】
図2の円中に拡大して示すように、ロックスイッチ36は、車外側のドアハンドル4に設けられるとともに、車両ドアの施解錠時に押し操作される。図1に示すように、ロックスイッチ36は、自身が操作された旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0033】
また、エンジンスイッチ33は、運転席の近傍に設けられてエンジンの始動時に押し操作される。エンジンスイッチ33は、自身が操作された旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0034】
また、カーテシスイッチ37は車両ドアの開閉状態を検出し、その検出結果を車載制御部21に出力する。
車載制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには電子キー10のIDコードと同一のIDコードが記憶されている。
【0035】
車載制御部21は、車両ドアが施錠状態にあるとき、一定周期毎に第1のリクエスト信号Srs1を生成し、それを車外送信部22に出力する。図2の円中に拡大して示すように、車外送信部22は、車外側のドアハンドル4の内部に設けられる。車外送信部22は、第1のリクエスト信号Srs1を変調したうえで車外送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として送信する。
【0036】
車載制御部21は、車両ドアの解錠後にカーテシスイッチ37を通じて車両ドアが開閉した旨認識したとき、第2のリクエスト信号Srs2を生成し、それを車内送信部23に出力する。両リクエスト信号Srs1,Srs2にはそれぞれ異なる識別コードが付加されている。また、これとは別に、両リクエスト信号Srs1,Srs2におけるWakeコードのパターンを変えることで、両信号を識別させてもよい。
【0037】
図2に示すように、車内送信部23は車内に設けられる。車内送信部23は第2のリクエスト信号Srs2を変調したうえで車内送信アンテナ23aを介して車内に送信する。
図1に示すように、車載受信部24は、受信アンテナ24aを介して電子キー10から送信されるレスポンス信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調したうえで車載制御部21へ出力する。
【0038】
車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う。車載制御部21は、第1のリクエスト信号Srs1に対するレスポンス信号のID照合(車室外照合)が成立した状態において、ロックスイッチ36が押し操作された旨認識すると、ドアロック装置34を通じて車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【0039】
車載制御部21は、第2のリクエスト信号Srs2に対するレスポンス信号のID照合(車室内照合)が成立した後の一定時間内に、エンジンスイッチ33が押し操作された旨認識すると、エンジン装置35を通じてエンジンを始動する。
【0040】
また、車載装置20はイモビライザ通信機25を備える。イモビライザ通信機25は、エンジンスイッチ33に内蔵される。車載制御部21は、例えばエンジン停止状態においてブレーキペダルが踏み込まれたとき、指令信号をイモビライザ通信機25に出力する。イモビライザ通信機25は、車載制御部21からの指令信号に基づき駆動電波を送信する。この駆動電波は、エンジンスイッチ33の近傍に局所的に発信される。電子キー10がエンジンスイッチ33にかざされると、電子キー10のトランスポンダ14は駆動電波を受けて起動する。そして、トランスポンダ14はIDコードを含むトランスポンダ応答信号を送信する。イモビライザ通信機25は、トランスポンダ応答信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調し、これを車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、トランスポンダ応答信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う(トランスポンダ照合)。車載制御部21は、トランスポンダ照合が成立した状態において、エンジンスイッチ33が押し操作された旨認識すると、エンジン装置35を通じてエンジンを始動する。
【0041】
次に、車載制御部21及び電子キー制御部11の処理手順を図3のフローチャートに従って説明する。なお、本例の電子キー10における電池ユニット15の電池電圧は閾値未満となっている。
【0042】
車載制御部21は、車両ドアが施錠状態にあるとき、一定周期毎に第1のリクエスト信号Srs1を車外に送信する(S101)。電子キー制御部11は、第1のリクエスト信号Srs1を受信すると、電池ユニット15の電池電圧が閾値未満である旨判断して(S102)、レスポンス信号を送信しない。この場合、ユーザは、電子キー10の本体からメカニカルキー17を取り出し、そのメカニカルキー17を利用して、車両ドアを解錠する。メカニカルキー17が電子キー10の本体から抜かれるとき、発電装置18を通じて発電された電力が電池ユニット15に充電される。
【0043】
車載制御部21は、メカニカルキー17を通じた車両ドアの解錠を認識した後(S103)、車両ドアの開閉を認識すると(S104)、第2のリクエスト信号Srs2を送信する(S105)。電子キー制御部11は、第2のリクエスト信号Srs2を受けると、電池電圧に関わらずレスポンス信号を送信する(S106)。このとき、発電装置18を通じて充電された電力が利用される。これにて、電子キー制御部11の処理が終了する。
【0044】
車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合(車室内照合)が成立した旨判断する(S107)。車載制御部21は、この車室内照合が成立した状態において、エンジンスイッチ33が操作された旨判断すると(S108)、エンジンを始動する(S109)。これにて、車載制御部21の処理が終了する。
【0045】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)電子キー10の電池電圧が閾値未満である場合には、車内に送信される第2のリクエスト信号Srs2に対してのみレスポンス信号が送信される。すなわち、電池電圧が閾値未満の場合には、車外に送信される第1のリクエスト信号Srs1に対してレスポンス信号が送信されることが防止される。よって、電子キー10の電池電圧低下時に、車両ドアの解錠に係る通信が実行されることで電池の電力が消耗し、エンジンの始動が不可となることが抑制される。これにより、ユーザに対してトランスポンダ照合を通じた、エンジンの始動を要求することを抑制できる。このトランスポンダ照合の方法は、メカニカルキー17を通じた車両ドアの施解錠に比べてユーザが認知していない可能性が高い。このため、トランスポンダ照合を抑制することは有益である。
【0046】
(2)電子キー10の電池電圧の低下によって、電子キー10を通じた車両ドアの施解錠が不可となった場合には、メカニカルキー17が電子キー10の本体から取り出される。このとき、発電装置18を通じて電池に電力が充電される。この充電された電力は、車両ドアの施解錠に係る通信でなく、エンジンの始動に係る通信に利用される。よって、通常の電子キー10を通じたエンジンの始動が可能となる。
【0047】
(3)電子キー10の電池電圧が低下している状態において、他車両からの第1のリクエスト信号Srs1を受けてレスポンス信号を送信すること、ひいては電池ユニット15の電力消費が低減される。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を説明する。この実施形態の電子キーシステムは、第2のリクエスト信号Srs2の送信タイミングが上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、この実施形態の電子キーシステムは、図1に示す第1の実施形態の電子キーシステムと同様の構成を備えている。
【0049】
車載制御部21は、車両ドアの解錠後にカーテシスイッチ37を通じて車両ドアが開閉した旨認識したとき、第1の実施形態と異なって第1のリクエスト信号Srs1を送信する。また、車載制御部21は、車室内照合が成立していない状態において、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、第2のリクエスト信号Srs2を送信する。一方、車載制御部21は、車室内照合が成立した状態において、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、エンジンを始動する。電子キー制御部11は、第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0050】
次に、車載制御部21及び電子キー制御部11の処理手順を図4のフローチャートに従って説明する。なお、本例の電子キー10における電池ユニット15の電池電圧は閾値未満となっている。このフローチャートにおいて、ステップS201〜S204は、第1の実施形態における図3のステップS101〜S104と同様の処理である。従って、ここでの説明を省略する。
【0051】
車載制御部21は、カーテシスイッチ37を通じて車両ドアが開閉した旨認識したとき第1のリクエスト信号Srs1を送信する(S205)。電子キー制御部11は、第1のリクエスト信号Srs1を受信すると、電池ユニット15の電池電圧が閾値未満である旨判断して(S206)、レスポンス信号を送信しない。
【0052】
車載制御部21は、車室内照合が成立していない状態においてエンジンスイッチ33が操作された旨認識すると(S207)、第2のリクエスト信号Srs2を送信する(S208)。電子キー制御部11は、第2のリクエスト信号Srs2を受けると、レスポンス信号を送信する(S209)。そして、車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断すると(S210)、エンジンを始動する(S211)。これにて、フローチャートが終了する。
【0053】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)エンジンスイッチ33が操作されたときにのみ第2のリクエスト信号Srs2が送信される。よって、エンジンスイッチ33が操作される前の車室内におけるレスポンス信号の送信を通じて、実際のエンジン始動時にレスポンス信号の送信が不可となる程度まで電池電圧が低下することが抑制される。よって、電子キー10の電池電圧が低下した場合であっても、より確実にエンジンの始動が可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1の実施形態においては、第1のリクエスト信号Srs1が車外に送信され、第2のリクエスト信号Srs2が車内に送信されていたが、両リクエスト信号Srs1,Srs2を車外又は車内に送信してもよい。例えば、ロックスイッチ36が1回操作されたときに車外に第1のリクエスト信号Srs1が送信され、ロックスイッチ36が複数回連続で操作されたときに同じく車外に第2のリクエスト信号Srs2が送信される構成としてもよい。本構成においては、電子キー10の電池電圧が低下している場合、ユーザによってロックスイッチ36が複数回連続で操作されたときにのみ、レスポンス信号が送信される。よって、第1及び第2の実施形態と異なって、電子キー10の電池電圧が低下している場合であっても、ロックスイッチ36の複数回連続の操作によって、無線通信を通じた車両ドアの解錠が可能となる。また、電子キー10の電池電圧が低下している状態において、他車両からの第1のリクエスト信号Srs1を受けてレスポンス信号を送信すること、ひいては電池ユニット15の電力消費が低減される。
【0055】
また、運転席側の車両ドアに対応する車外送信部22から第2のリクエスト信号Srs2を送信し、他の車両ドアに対応する車外送信部22から第1のリクエスト信号Srs1を送信してもよい。この場合、電子キー10の電池電圧が低下している状態において、ユーザが車両ドアの解錠の意図なく、上記他の車両ドアに近づいた場合、レスポンス信号が返信されることがない。よって、そのレスポンス信号の送信に係る電力消費が抑制される。また、上記同様に、エンジンスイッチ33が1回操作されたときに車内に第1のリクエスト信号Srs1が送信され、エンジンスイッチ33が複数回連続で操作されたときに車内に第2のリクエスト信号Srs2が送信される構成としてもよい。
【0056】
さらに、ロックスイッチ36若しくはエンジンスイッチ33の操作毎、又は一定周期毎に、第1のリクエスト信号Srs1及び第2のリクエスト信号Srs2が交互に送信されてもよい。この場合であっても、電子キー10の電池電圧が低下している状態においては、電子キー10におけるレスポンス信号の送信回数、ひいては電池ユニット15の消費電力を低減することができる。また、第1のリクエスト信号Srs1及び第2のリクエスト信号Srs2は、上記のように交互に限らず、例えば、2回に亘って第1のリクエスト信号Srs1を送信した後、第2のリクエスト信号Srs2を1回送信してもよい。
【0057】
・第2の実施形態においては、車室内照合が成立していない状態において、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、第2のリクエスト信号Srs2が送信されていた。しかし、車室内照合の結果に関わらず、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、第2のリクエスト信号Srs2が送信されてもよい。
【0058】
・上記各実施形態においては、発電装置18は、メカニカルキー17の挿抜によって発電していたが、例えば、光、熱又は振動を通じて発電するものであってもよい。この場合、
光エネルギ、熱エネルギ及び振動エネルギが外部エネルギとなる。光を通じて発電する場合には太陽電池を利用し、振動を通じて発電する場合には圧電素子を利用し、熱を通じて発電する場合には熱電交換素子を利用することが考えられる。また、上記各発電装置を組み合わせてもよい。さらに、発電装置18を省略してもよい。この場合には1次電池が利用される。
【0059】
・上記各実施形態においては、車両ドアが施錠状態にあるとき、一定周期毎に第1のリクエスト信号Srs1が送信されていた。しかし、ロックスイッチ36が操作されたときに、第1のリクエスト信号Srs1が送信されてもよい。本構成においても、電池電圧低下時には、第1のリクエスト信号Srs1に対してレスポンス信号が返信されることはない。
【0060】
・上記各実施形態においては、車外送信アンテナ22a及び車内送信アンテナ23aが設けられていたが、車内外で共通のアンテナを備えた構成であってもよい。この場合、アンテナは車内に設けられる。そして、例えば第1の実施形態に適用する場合、このアンテナから車内に第2のリクエスト信号Srs2が送信され、車外を含む範囲に第1のリクエスト信号Srs1が送信される。
【0061】
・上記各実施形態におけるトランスポンダ14及びイモビライザ通信機25を省略してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、14…トランスポンダ、15…電池ユニット、15a…電圧センサ(電池電圧検出手段)、17…メカニカルキー、18…発電装置、20…車載装置、21…車載制御部、25…イモビライザ通信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内外にリクエスト信号を送信する車載装置と、
前記リクエスト信号を受信するとIDコードを含むレスポンス信号を送信する電子キーと、を備え、前記車載装置は、受信した前記レスポンス信号の妥当性を確認したとき、車両ドアの施解錠状態の切り替え又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは前記リクエスト信号の受信及び前記レスポンス信号の送信に係る電力が蓄えられる電池の電圧を検出する電池電圧検出手段を備え、
前記車載装置は前記リクエスト信号として第1のリクエスト信号又は第2のリクエスト信号を送信し、
前記電子キーは前記電池電圧検出手段を通じて電池電圧が閾値以上である旨判断している場合、前記第1のリクエスト信号又は前記第2のリクエスト信号を受信すると前記レスポンス信号を送信し、前記電池電圧検出手段を通じて電池電圧が閾値未満である旨判断している場合、前記第2のリクエスト信号を受信したときにのみ前記レスポンス信号を送信する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置は、車外に前記第1のリクエスト信号を送信し、車内に前記第2のリクエスト信号を送信し、前記第1のリクエスト信号に対する前記レスポンス信号の妥当性を確認したとき車両ドアの施解錠を許可し、前記第2のリクエスト信号に対する前記レスポンス信号の妥当性を確認したときエンジンの始動を許可する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
外部から加えられるエネルギを利用して発電するとともに、発電した電力を前記電池に充電する発電装置を備えた電子キーシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーの本体に取り出し可能に収納されるとともに機械的に車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能であるメカニカルキーを備え、
前記発電装置は、前記メカニカルキーの取り出し時に生じるエネルギを利用して発電する電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
運転席近傍にユーザに操作可能に設けられるエンジンスイッチを備え、
前記車載装置は、前記エンジンスイッチが操作された旨認識すると、車内に前記第2のリクエスト信号を送信し、前記第2のリクエスト信号に対する前記レスポンス信号の妥当性を確認したときエンジンの始動を許可する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60719(P2013−60719A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198569(P2011−198569)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】