説明

電子キー

【課題】電源が消耗した場合であれ、無線信号の授受を通じて電子機器を円滑に作動さることができる電子キーを提供する。
【解決手段】ソーラーパネル27と、当該ソーラーパネル27によって発電される電気による充電が可能とされたコンデンサ26bと、当該コンデンサ26bの電力を消費して車両10との間で無線信号の授受を行う電子キー制御部21とを備え、当該電子キー制御部21は、無線信号の授受を通じて、車両10に搭載された各種ドアロック装置14を作動させる又は作動を許可する電子キーにおいて、電子キー制御部21は、コンデンサ26bの電圧が、無線信号の送信を完了するのに必要な電圧閾値を下回る場合には無線信号の送信を禁止し、充電によりコンデンサ26bの電圧が電圧閾値に達したとき場合には無線信号の送信の開始を許可する電子キー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車においては、利便性の向上を目的として、ユーザに所持される電子キーと車載装置との間で無線通信を行い、当該無線通信が成立したことを条件としてドア錠の施解錠を許可又は実行する電子キーシステムが搭載されている。電子キーシステムには、特許文献1に示されるように、先の無線通信を、電子キーを所持したユーザが車両に近づくだけで自動的に実行するスマートシステムと、電子キーに設けられたスイッチが操作されたことを契機として実行するワイヤレスシステムとがある。多くの自動車には、これら両方のシステムが搭載されている。この場合、ユーザは、自身のおかれた状況に応じてスマートシステムとワイヤレスシステムとを選択して使用することができるので、使用勝手がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、電子キーには、交換可能とされた電池(一次電池)が搭載されている。電子キーは、電池の電力を消費することで無線信号を生成し、車両との無線通信(スマート通信及びワイヤレス通信)を行う。こうした電子キーにおいては、電池が消耗すると、スマートシステム及びワイヤレスシステムの両方が使用できなくなる。
【0005】
そこで、電子キーに、一次電池の他に、例えば太陽光パネル等の発電手段と、同発電手段において発電した電力を蓄えるコンデンサ等の蓄電手段を設けることが検討されている。電子キーは、電池が消耗したときには、蓄電手段の電力を消費して無線信号を生成し、車両との無線通信を行う。
【0006】
しかしながら、このような電子キーにおいては、蓄電手段に蓄電されている電力量が、無線通信を完了するのに十分な量でなくても車両との通信が開始されるおそれがある。この場合、電子キーは、途中で無線通信が行えなくなり、ひいては、車両ドアの施解錠を行えなくなる。このため、ユーザにとって不便であった。
【0007】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源が消耗した場合であれ、無線信号の授受を通じて電子機器を円滑に作動さることができる電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、発電手段と、当該発電手段によって発電される電気による充電が可能とされた蓄電手段と、当該蓄電手段の電力を消費して通信マスタとの間で無線信号の授受を行う制御手段とを備え、当該制御手段は、無線信号の授受を通じて、前記通信マスタに搭載された各種電子機器を作動させる又は作動を許可する電子キーにおいて、前記制御手段は、前記蓄電手段の蓄電量が、前記無線信号の送信を完了するのに必要な電力閾値を下回る場合には前記無線信号の送信を禁止し、前記充電により蓄電手段の蓄電量が前記電力閾値に達したとき場合には前記無線信号の送信の開始を許可することを要旨とする。
【0009】
蓄電手段の蓄電量が電力閾値よりも少ない状態で、当該無線信号の送信を開始した場合、送信を継続できない。このため、通信マスタの電子機器を作動させる、又は作動を許可することができない。その点、同構成によれば、電子キーは、蓄電手段の蓄電量が電力閾値を下回る場合には、無線信号の送信を開始しない。すなわち、無線信号の送信に必要とされる電力が溜まるまで無線信号の送信が開始されることがない。このため、充電途中での無線信号の送信が抑制される。これにより、蓄電手段が充電中に、当該蓄電手段の電力が無駄に消費されることが抑制される。従って、蓄電手段が電力閾値まで充電されるのにかかる時間が短縮される。このため、ユーザは、蓄電手段が消耗した場合であっても、電子機器を円滑に作動さることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーにおいて、前記蓄電手段が蓄電できる量は、電力閾値であることを要旨とする。
同構成によれば、蓄電手段に蓄電できる量が必要最小限とされる。従って、充電が完了するまでにかかる時間も少ない。このため、短時間の充電で無線信号を送信することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーにおいて、外部から操作可能とされたスイッチを備え、前記制御手段は、前記スイッチが操作されたことをトリガとして、前記蓄電手段の電力を消費して前記通信マスタに前記無線信号を送信し、当該無線信号の送信を通じて前記電子機器を作動させることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、いわゆるワイヤレス通信を行う電子キーに設けられる蓄電手段の電力消費を抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記制御手段は、前記通信マスタからの応答を要求する無線信号を受信したことをトリガとして、前記蓄電手段の電力を消費して前記無線信号に対する応答としての無線信号を送信し、当該無線信号の授受を通じて前記電子機器を作動させる又は作動を許可することを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、いわゆるスマート通信を行う電子キーに設けられる蓄電手段の電力消費を抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電子キーにおいて、前記蓄電手段の蓄電量が前記電力閾値を下回る場合、前記通信マスタからの無線信号を受信しないことを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、受信を停止することで、当該受信に必要な分の電力消費を抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記蓄電手段の他に、交換可能とされた一次電池を備え、当該一次電池の電力を消費して前記無線信号を送信することを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、一次電池の電力を使用して無線信号を送信することができるので、無線信号を送信する度に発電手段によって発電させる必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、電源が消耗した場合であれ、無線信号の授受を通じて電子機器を円滑に作動さることができる電子キーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態における車両と電子キーとのワイヤレス通信態様を示すシーケンスチャート。
【図3】従来形態における車両と電子キーとのワイヤレス通信態様を示すシーケンスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した一実施形態について図1〜3に従って説明する。
図1に示すように、車両10には、電子キー20との間で交信される無線信号によりID照合を実行する電子キーシステム1が搭載されている。電子キーシステム1は、車両10からの無線信号をトリガとしてID照合を実行するスマート通信機能(第1の通信機能)と、電子キー20からの無線信号をトリガとしてID照合を実行するワイヤレス通信機能(第2の通信機能)とを有している。
【0019】
<車両の構成>
車両10は、各種の車載機器を制御する車載制御部11と、その車載制御部11に電気的に接続されてLF(Low Frequency)帯の要求信号を送信するLF送信部12、並びにUHF(Ultra High Frequency)帯の応答信号、及びワイヤレス信号Swiを受信するUHF受信部13とを備えている。なお、要求信号は、ウェイク信号Swk、ビークル信号Svi、チャレンジ信号Schの総称、応答信号は、アック信号Sac、レスポンス信号Sreの総称である。また、車両10は、同じく車載制御部11に電気的に接続されたドアロック装置14及びドアハンドルセンサ15を備えている。ドアロック装置14は、ドア錠の施解錠を切り替える。ドアハンドルセンサ15は、ユーザの図示しないドアハンドルへの接触を検出する。
【0020】
車載制御部11には、不揮発性のメモリ11aが設けられている。このメモリ11aには車両10に固有のIDコードが記憶されている。車載制御部11は、LF送信部12及びUHF受信部13を通じて電子キー20と無線通信を行う。車載制御部11は、電子キー20との間で行われる無線信号の授受を通じて、交信している電子キー20が自身に対応するものか否かを判断する。当該判断は、電子キー20からの無線信号に含まれるIDコードと、メモリ11aに記憶されたIDコードとの照合により行う。そして、自身に対応するものと判断される場合には、ドアロック装置14の作動を許可又は実行する。詳しくは、車載制御部11は、電子キー20からの応答信号の受信を通じて、当該電子キー20が自身に対応するものと判断した場合には、ドアロック装置14の作動を許可する。この状態で、ドアハンドルセンサ15を通じてドアハンドルへの接触を検出した場合、車載制御部11は、ドアロック装置14の作動を実行する。一方、車載制御部11は、電子キー20からのワイヤレス信号Swiの受信を通じて、当該電子キー20が自身に対応するものと判断した場合には、ドアロック装置14の作動を実行する。
【0021】
<電子キーの構成>
電子キー20は、CPU等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部21を備える。この電子キー制御部21には、LF帯の無線信号を受信するLF受信部22と、UHF帯の無線信号を送信するUHF送信部23とが電気的に接続されている。
【0022】
LF受信部22は、車両10から送信されるLF帯の無線信号である要求信号を受信すると、この要求信号をパルス信号に復調し、この復調された信号を電子キー制御部21へ出力する。
【0023】
電子キー制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、同メモリ11aには電子キー20に固有のIDコードが記憶されている。電子キー制御部21は、LF受信部22により復調された要求信号を認識すると応答信号を生成する。正確には、認識した信号がウェイク信号Swkである場合は当該信号を受信したことを示すアック信号Sacを、認識した信号がビークル信号Sviである場合は当該信号を受信したことを示すアック信号Sacを、認識した信号がチャレンジ信号Schである場合は当該信号に対する応答としてのレスポンス信号Sreを生成する。レスポンス信号Sreには、メモリ21aに記憶されたIDコードが含まれる。電子キー制御部21は、生成した応答信号をUHF送信部23へ出力する。UHF送信部23は、応答信号を変調し、この変調した応答信号をUHF帯の無線信号として送信する。
【0024】
また、電子キー20は、ロックスイッチ24とアンロックスイッチ25とを備える。これらスイッチ24,25は、電子キー制御部21に電気的に接続されている。電子キー制御部21は、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されて、その旨示す電気信号が入力されると、メモリ21aに記憶されたIDコードと、車両ドアの施錠又は解錠する旨示す動作内容とを含むワイヤレス信号Swiを生成し、この信号をUHF送信部23へ出力する。UHF送信部23は、ワイヤレス信号Swiを変調するとともに、この変調したワイヤレス信号SwiをUHF帯の無線信号として送信する。ワイヤレス信号Swiは、4つのフレームが連続する信号である。各フレームは、IDコードと、車両ドアの施錠又は解錠する旨示す動作内容とを含んでいる。通常、車載制御部11は、UHF受信部13の状態を、無線信号を受信可能とされた待機状態と、受信不能とされた非待機状態との間で間欠的に切り替える。
【0025】
さらに、電子キー20は、電源ユニット26、及びソーラーパネル27を備える。電源ユニット26は、交換可能とされた電池(一次電池)26aと、充放電が可能とされたコンデンサ26bとを備えている。電源ユニット26は、電池26a又はコンデンサ26bの電力を電子キー制御部21等の電子キー20の各部に供給する。電子キー制御部21は、電源ユニット26から供給される電力を消費して作動する。なお、電子キー制御部21は、コンデンサ26bの電圧を監視する。当該監視を通じて、電子キー制御部21は、コンデンサ26bの消耗を判断する。コンデンサ26bが消耗していないと判断される場合、電子キー制御部21は、自身への電力供給をコンデンサ26bから行う。コンデンサ26bが消耗していると判断される場合、電子キー制御部21は、自身への電力供給を電池26aから行う。ここでは、コンデンサ26bが消耗しているかどうかの判断基準である電圧閾値は、車両10への応答信号又はワイヤレス信号Swiを送信できなくなる電圧とされている。
【0026】
コンデンサ26bには、ソーラーパネル27が接続されている。ソーラーパネル27は、電子キー20のケースの外面に設けられている。ソーラーパネル27は、太陽光などの光が照射されると、その光エネルギーを利用して発電する。発電された電力は、コンデンサ26bに蓄えられる。なお、コンデンサ26bの蓄電量は、ワイヤレス信号Swiを1回分だけ送信できる電力量とされている。すなわち、コンデンサ26bの蓄電量は少ない。このため、ソーラーパネル27に太陽光を照射すれば、数秒でコンデンサ26bへの充電が完了する。なお、コンデンサ26bが満充電とされた状態の電圧をワイヤレス通信開始可能電圧V2(以下、第2の電圧V2)とする。
【0027】
電子キー20は、LF受信部22の状態を、無線信号の受信が可能とされた待機状態と、無線信号の受信が不能とされた非待機状態との間で切り替える切替部28を備えている。この切替部28は、電子キー制御部21と電気的に接続されており、当該電子キー制御部21によって制御されている。電子キー制御部21は、自身への電力供給が、電池26aから行われている場合には、切替部28を通じてLF受信部22を待機状態に切り替える。また、自身への電力供給が、コンデンサ26bから行われている場合で、コンデンサ26bの電圧がスマート通信開始可能電圧V1(以下、第1の電圧V1)を上回るときには、切替部28を通じてLF受信部22を待機状態に切り替える。この第1の電圧V1とは、電子キー制御部21が、車両10との間で行われる一連のスマート通信を1回実行するのに必要な電圧のことである。また、第1の電圧V1は、第2の電圧V2よりも小さい値である(V1<V2)。一方、自身への電力供給が、コンデンサ26bから行われている場合で、第1の電圧V1を下回るときには、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える。
【0028】
また、電子キー20は、外部から操作可能とされた切替スイッチ29を備えている。この切替スイッチ29は、スマート通信機能のオンオフを切り替える。切替スイッチ29は、電子キー制御部21と電気的に接続されており、切替スイッチ29が操作されたときには、電子キー制御部21が、切替部28を通じてLF受信部22を待機状態と非待機状態との間で切り替える。電子キー制御部21は、切替スイッチ29がオンとされている場合で、自身への電力供給が電池26aから行われるとき、又は自身への電力供給がコンデンサ26bから行われ当該コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を上回るときには、切替部28を通じてLF受信部22を待機状態に切り替える。また、電子キー制御部21は、切替スイッチ29がオンとされている場合で、自身への電力供給がコンデンサ26bから行われ当該コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を下回るときには、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える。一方、切替スイッチ29がオフとされている場合、電子キー制御部21は、自身への電力供給源、及びその電圧値に関係なく、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える。
【0029】
なお、電子キー制御部21は、切替スイッチ29のオンオフにかかわらず、自身への電力供給がコンデンサ26bから行われている場合には、当該コンデンサ26bの電圧を監視する。コンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2に達している場合には、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されたときにワイヤレス信号Swiを生成する。一方、コンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2に達していない場合には、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されてもワイヤレス信号Swiを生成しない。
【0030】
<電子キーシステムの動作>
はじめに、スマート通信機能を利用してドアロック装置14を作動させる場合について説明する。まず、電子キー制御部21への電力供給が電池26aから行われている場合について説明する。なお、切替スイッチ29はオンとされているものとする。
【0031】
この場合、ユーザは、電子キー20を所持した状態で、ユーザが車両10に近づくことにより、車両10と電子キー20との間でスマート通信が自動的に行われる。そして、ユーザが車両10のドアハンドルに設けられたドアハンドルセンサ15に触れることにより、ドアロック装置14が作動する。
【0032】
次に、電子キー制御部21への電力供給がコンデンサ26bから行われている場合について説明する。なお、切替スイッチ29はオンとされているものとする。
電子キー制御部21は、先の監視結果に基づきコンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を上回っているか否かを判断する。図2に示すように、コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を下回っているとき、電子キー制御部21は、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える。これにより、電子キー制御部21は、車両10から送信される要求信号、例えばウェイク信号Swkを受信しない。従って、電子キー制御部21は、ウェイク信号Swkに対する応答としてのアック信号Sacを送信しない。すなわち、電子キー20と車両10との間でスマート通信が開始されない。
【0033】
なお、このスマート通信が不可とされている間、ソーラーパネル27における発電が可能である。スマート通信が不可とされているときは、コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を下回るときである。第1の電圧V1は、第2の電圧V2よりも低い。従って、スマート通信が不可である場合、ワイヤレス通信も不可である。このため、電子キー20と車両10との間の無線通信を利用してドアロック装置14を作動させるには、コンデンサ26bの蓄電量を増加させる必要がある。すなわち、ユーザは、電子キー20のソーラーパネル27に光を照射させるようにする。これにより、ソーラーパネル27は発電を行い、当該発電によって得られた電気をコンデンサ26bに送る。すると、図2の時刻T1以降、コンデンサ26bの電圧は、徐々に上昇する。
【0034】
図2に示されるように、コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を上回ると(時刻T1)、電子キー制御部21は、切替部28を通じてLF受信部22を待機状態に切り替える。これにより、電子キー制御部21は、車両10から送信される要求信号を受信することができる。すなわち、電子キー制御部21は、車両10との間でスマート通信を開始することが可能となる。電子キー制御部21は、コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を上回っているとき、車両10からのウェイク信号Swkを受信すると、これに対する応答としてのアック信号Sacを送信する。この後、電子キー制御部21は、車両10からのビークル信号Sviを受信すると、これに対する応答としてのアック信号Sacを送信する。さらにこの後、電子キー制御部21は、車両10からのチャレンジ信号Schを受信すると、これに対する応答としてのレスポンス信号Sreを送信する。こうして、車両10と電子キー20との間のスマート通信が行われる。
【0035】
電子キー制御部21は、コンデンサ26bの電力を消費して応答信号、すなわち、アック信号Sac及びレスポンス信号Sreを送信する。このため、これらアック信号Sac及びレスポンス信号Sreを送信する度にコンデンサ26bの電圧が低下する。ここでは、ビークル信号Sviに対するアック信号Sacを送信するとき、すなわち、図2において時刻T2を境に、コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を下回る。
【0036】
一方で、時刻T2において、電子キー制御部21は、車両10との間でスマート通信の最中である。このため、時刻T2において、LF受信部22を非待機状態に切り替えると、車両10からのチャレンジ信号Schを受信することができない。そこで、本例の電子キー制御部21は、一旦、第1の電圧V1に達した後は、一連のスマート通信が完了するまでLF受信部22における待機状態を維持する。ただし、時刻T2と時刻T3との間において、電子キー制御部21は、受信した無線信号がチャレンジ信号Sch以外、すなわちウェイク信号Swk又はビークル信号Sviである場合には、この信号に対する応答信号を送信しない。換言すれば、電子キー制御部21は、時刻T2以降、進行中のスマート通信のみを実行し、新たなスマート通信を開始しない。このようにすることで、スマート通信の最中にコンデンサ26bが消耗して、当該スマート通信が不能となることを抑制することができる。なお、電子キー制御部21は、レスポンス信号Sreの送信が終了した時刻T3で、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える。これにより、電子キー制御部21は、車両10からの要求信号を受信しないので、コンデンサ26bの電力を消費しない。従って、時刻T3以降、コンデンサ26bには、ソーラーパネル27によって発電された電気が供給されるので、当該コンデンサ26bの電圧は、徐々に上昇する。
【0037】
次に、ワイヤレス通信機能を利用してドアロック装置14を作動させる場合について説明する。まず、電子キー制御部21への電力供給が電池26aから行われている場合について説明する。なお、切替スイッチ29はオンとされているものとする。
【0038】
電子キー制御部21は、ユーザによりロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されて、その旨示す電気信号が入力されると、電池26aの電力を消費して、メモリ21aに記憶されたIDコードと、車両ドアの施錠又は解錠する旨示す動作内容とを含むワイヤレス信号Swi生成する。そして、当該生成したワイヤレス信号SwiをUHF送信部23を通じて送信する。車載制御部11は、UHF受信部13を通じてワイヤレス信号Swiを受信すると、当該ワイヤレス信号Swiに含まれるIDコードが自身に対応するものかどうかを判断する。そして、自身に対応するものと判断した場合には、同じくワイヤレス信号Swiに含まれる動作内容に基づきドアロック装置14を作動させる。
【0039】
次に、電子キー制御部21への電力供給がコンデンサ26bから行われている場合について説明する。なお、切替スイッチ29はオンとされているものとする。
電子キー制御部21は、先の監視結果に基づきコンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2に達しているか否かを判断する。図3に示すように、コンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2を下回るとき、電子キー制御部21は、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されても、ワイヤレス信号Swiを生成しない。これにより、電子キー20からワイヤレス信号が送信されないので、当該電子キー20と車両10との間でワイヤレス通信が行われない。なお、このとき、ユーザはソーラーパネル27による充電を行う。従って、コンデンサ26bの電圧は徐々に上昇する。
【0040】
図3に示すように、電子キー制御部21は、コンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2に達する時刻T4以降、当該コンデンサ26bの電力を消費してワイヤレス信号Swiを送信することができる。この時刻T4以降において、電子キー制御部21は、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されて、その旨示す電気信号が入力されると(時刻T5)、コンデンサ26bの電力を消費して、ワイヤレス信号Swi生成する。そして、当該生成したワイヤレス信号SwiをUHF送信部23を通じて送信する。車載制御部11は、UHF受信部13を通じてワイヤレス信号Swiを受信すると、当該ワイヤレス信号Swiに含まれるIDコードが自身に対応するものかどうかを判断する。そして、自身に対応するものと判断した場合には、同じくワイヤレス信号Swiに含まれる動作内容に基づきドアロック装置14を作動させる。なお、コンデンサ26bの蓄電量は、ワイヤレス信号Swiを1回分送信できる量とされている。このため、電子キー制御部21がワイヤレス信号Swiの送信を終了した時刻T6でコンデンサ26bの蓄電量は枯渇する。時刻T6以降、コンデンサ26bには、ソーラーパネル27によって発電された電気が供給されるので、当該コンデンサ26bの電圧は、徐々に上昇する。
【0041】
なお、本例の電子キー20には、スマート通信機能のオンオフを切り替える切替スイッチ29が設けられている。当該切替スイッチ29をオフとすれば、電子キー制御部21は、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える。このため、ワイヤレス通信機能を利用してドアロック装置14を作動させたいとき、切替スイッチ29をオフとすれば、電子キー20と車両10との間でスマート通信が行われることはない。換言すれば、コンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2となる前に、電子キー制御部21は、コンデンサ26bの電力を消費して車両10との間でスマート通信を行うことはない。これにより、コンデンサ26bの電圧が第2の電圧V2となる前に、スマート通信が繰り返され、ワイヤレス通信が行えない事態を防ぐことができる。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)電子キー20に駆動電力を供給するコンデンサ26bの電圧が、スマート通信を完了させることのできる基準値である第1の電圧V1を下回る場合には、車両10からの要求信号、正確にはウェイク信号Swkの受信を停止するようにした。これにより、電子キー20は、ウェイク信号Swkに対する応答としてのアック信号Sacを送信しない。このため、充電途中での無線信号の送信が抑制される。そして、ソーラーパネル27を通じた充電によりコンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1に達したとき、電子キー20は、要求信号の受信が可能な状態となる。これにより、ユーザは、車両10と電子キー20との間でスマート通信を行い、車両10のドアロック装置14を作動させることができる。
【0043】
(2)コンデンサ26bの電圧が、ワイヤレス信号Swiの送信に必要な基準値である第2の電圧V2を下回る場合には、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されても、ワイヤレス信号Swiの送信を行わないようにした。そして、ソーラーパネル27によるコンデンサ26bへの充電の総量が、ワイヤレス信号Swiに必要な電力量を超えたとき、ワイヤレス信号Swiを送信可能とした。この場合も、充電途中でワイヤレス信号Swiが送信されることがない。従って、電力十分の状態でワイヤレス信号Swiが送信される。途中でワイヤレス信号Swiの送信が途切れることがないので、車両10のドアロック装置14を作動させることができる。
【0044】
(3)コンデンサ26bが蓄電できる電力量は、ワイヤレス信号Swiを1回分送信することができる量とした。このように構成したことにより、コンデンサ26bが蓄電できる電力量がワイヤレス信号Swiを1回分送信する量よりも多い場合に比べて、充電が完了するまでにかかる時間が短い。従って、コンデンサ26bが消耗している場合であっても、短時間でワイヤレス通信を利用することが可能となる。
【0045】
(4)電子キー制御部21は、コンデンサ26bが消耗しているときのみ電池26aの電力を消費して無線信号を送信するようにした。これにより、電池26aの電力が消費されることが抑制されるので、電池26aの寿命がながくなる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、コンデンサ26b以外の蓄電手段を採用してもよい。例えば、2次電池等がある。これらを利用した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・上記実施形態において、ソーラーパネル以外の発電手段を採用してもよい。例えば、圧電素子、磁石とコイルとを利用した電磁誘導等がある。これらを利用した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、これらを利用すれば、ユーザ歩行時の振動、あるいは意図的に電子キー20を振ることにより得られる振動を利用して発電することもできる。
【0048】
・上記実施形態において、電源ユニット26は、蓄電手段のみで構成されてもよい。この場合、電子キー制御部21が車両10からの要求信号の受信を停止かどうかの判断基準となる電源ユニット26の電圧閾値を、少なくともワイヤレス信号を1回分送信できる値とすればよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
・上記実施形態では、電子キー20は、車両10との間でスマート通信及びワイヤレス通信の両方を行うことができたが、どちらか一方のみ行える構成であってもよい。なお、スマート通信のみ行う場合には、コンデンサ26bの満充電が第1の電圧V1としてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替える切替スイッチ29を設けたが、当該スイッチ29は設けなくてもよい。このように構成した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
・上記実施形態において、コンデンサ26bの電圧が第1の電圧V1を下回る場合、電子キー制御部21は、切替部28を通じてLF受信部22を非待機状態に切り替えたが、待機状態のままであってもよい。この場合、電子キー制御部21は、車両10からの要求信号(ウェイク信号Swk、ビークル信号Svi、チャレンジ信号Sch)に対する応答信号(アック信号Sac、レスポンス信号Sre)を送信しなければよい。このように構成した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
・上記実施形態では、要求信号は、ウェイク信号Swk、ビークル信号Svi、及びチャレンジ信号Schの3つの信号であるとしたが、これらの信号が、1つないし2つの信号にまとめられていてもよい。この場合、電子キー20の応答信号も1つないし2つの信号となる。このような相互通信態様であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
・上記実施形態において、電子キー制御部21は、コンデンサ26bが消耗しているときのみ電池26aの電力を消費して無線信号を送信するようにしたが、逆に、電池26aが消耗しているときにコンデンサ26bに充電を行い、当該コンデンサ26bの電力を消費して、無線信号を送信するようにしてもよい。この場合、電池26aをすぐに交換することができなくとも、電子キー20と車両10との間の無線通信を行うことができる。
【0054】
・上記実施形態において、電子キー20は、車両10と通信するものに限らない。例えば、電子キー20と通信する住宅等であってもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…電子キーシステム、10…車両、11…制御手段としての車載制御部、11a…メモリ、12…LF送信部、13…UHF受信部、14…ドアロック装置、15…ドアハンドルセンサ、20…電子キー、21…電子キー制御部、21a…メモリ、22…LF受信部、23…UHF送信部、24…ロックスイッチ、25…アンロックスイッチ、26…電源ユニット、26a…電池、26b…コンデンサ、27…ソーラーパネル、28…切替部、29…切替スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電手段と、当該発電手段によって発電される電気による充電が可能とされた蓄電手段と、当該蓄電手段の電力を消費して通信マスタとの間で無線信号の授受を行う制御手段とを備え、当該制御手段は、無線信号の授受を通じて、前記通信マスタに搭載された各種電子機器を作動させる又は作動を許可する電子キーにおいて、
前記制御手段は、前記蓄電手段の蓄電量が、前記無線信号の送信を完了するのに必要な電力閾値を下回る場合には前記無線信号の送信を禁止し、前記充電により蓄電手段の蓄電量が前記電力閾値に達したとき場合には前記無線信号の送信の開始を許可する電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーにおいて、
前記蓄電手段が蓄電できる量は、電力閾値である電子キー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーにおいて、
外部から操作可能とされたスイッチを備え、
前記制御手段は、前記スイッチが操作されたことをトリガとして、前記蓄電手段の電力を消費して前記通信マスタに前記無線信号を送信し、当該無線信号の送信を通じて前記電子機器を作動させる電子キー。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記制御手段は、前記通信マスタからの応答を要求する無線信号を受信したことをトリガとして、前記蓄電手段の電力を消費して前記無線信号に対する応答としての無線信号を送信し、当該無線信号の授受を通じて前記電子機器を作動させる又は作動を許可する電子キー。
【請求項5】
請求項4に記載の電子キーにおいて、
前記蓄電手段の蓄電量が前記電力閾値を下回る場合、前記通信マスタからの無線信号を受信しない電子キー。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記蓄電手段の他に、交換可能とされた一次電池を備え、当該一次電池の電力を消費して前記無線信号を送信する電子キー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50010(P2013−50010A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189757(P2011−189757)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】