説明

電子データ作成装置、電子データ作成方法、及び電子データ作成プログラム

【課題】挿入データを選択する作業を軽減すると共に、実質的に有効な選択肢を表示できるようにする。
【解決手段】電子データ作成装置1は、複数の挿入データを記憶する挿入データ記憶部2と、複数の感情種別と複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータを記憶する関連付けデータ記憶部3と、ユーザの現在の感情を取得する感情取得部4と、ユーザの現在の感情と関連付けデータとに基づいてユーザの現在の感情に関連する複数の挿入データを取得する挿入データ取得部5と、挿入データ取得部5によって取得された複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示部6と、挿入データ表示6によって表示されている複数の挿入データのうちユーザによって選択された挿入データを電子データに挿入する挿入部7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子データ作成装置、電子データ作成方法、及び電子データ作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、カメラ付き携帯電話機でメールを作成するに際し、メール作成中に撮像した自分自身の顔写真を解析し、顔の表情を認識して感情を判定し、その感情に対応する顔文字又は顔絵文字を生成してメールの件名や本文の指定位置に挿入する技術を開示している。また、特許文献1の段落番号0038〜0045には、カメラの現在の被写界をリアルタイムに撮影して生成される所謂スルー画像に基づいて感情判定を行い、希望の感情表現にマッチした顔アイコンが画面上に表示されたら、その顔アイコンをユーザが選択することにより、その顔アイコンがメールの本文の指定位置に挿入される変形例が記載されている。この変形例では、現在のスルー画像に一対一で対応した顔アイコンの他、過去の顔写真に対応した顔アイコンも同時に画面上に表示されるようになっており、ユーザは、表示されている複数の顔アイコンから希望する顔アイコンを選択できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今の携帯電話機は、電子メールの件名や本文中に挿入できる顔文字(文字や記号を組み合わせて顔の表情等を表現したもの)や絵文字(顔の表情等を表現したイメージデータ(アニメーションGIFを含む))(以下、単に「絵文字等」と称する)として、5000種以上のバリエーションを用意している。このように膨大なバリエーションの絵文字等が用意されること自体に問題はないが、一方で、希望する絵文字等を探し出す作業の困難性が看過できないレベルにまで達してきている。
【0005】
このような問題に対し、上記特許文献1の変形例は、ユーザの作業を軽減する点で有効である。しかしながら、当該変形例においては、上記のようにメール作成中のユーザの表情に一対一で対応した絵文字等の他には、過去の顔写真に対応した顔アイコン、即ち現在の表情(感情)とは関係のない絵文字等しか候補として表示されない。そのため、ユーザにとって実質的に有効な選択肢がほとんどない状態となる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、電子メール等の電子データに絵文字等の挿入データを挿入するに際し、ユーザが挿入データを選択する作業を軽減すると共に、ユーザに実質的に有効な複数の選択肢を与えられるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、電子データを作成するための電子データ作成装置であって、前記電子データに挿入可能な複数の挿入データを記憶する挿入データ記憶手段と、複数の感情種別と前記複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータを記憶する関連付けデータ記憶手段と、前記電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得する感情取得手段と、前記感情取得手段によって取得された前記ユーザの現在の感情と前記関連付けデータ記憶手段によって記憶されている関連付けデータとに基づいて前記ユーザの現在の感情に関連する前記複数の挿入データを取得する挿入データ取得手段と、前記挿入データ取得手段によって取得された前記複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示手段と、前記挿入データ表示手段によって表示されている前記複数の挿入データのうち前記ユーザによって選択された挿入データを前記電子データに挿入する挿入手段とを有するものである。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、電子データを作成するための電子データ作成方法であって、前記電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得する感情取得ステップと、前記感情取得ステップによって取得された前記ユーザの現在の感情と、複数の感情種別と前記電子データに挿入可能な複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータとに基づいて、前記ユーザの現在の感情に関連する前記複数の挿入データを取得する挿入データ取得ステップと、前記挿入データ取得ステップによって取得された前記複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示ステップと、前記挿入データ表示ステップによって表示されている前記複数の挿入データのうち前記ユーザによって選択された挿入データを前記電子データに挿入する挿入ステップとを有するものである。
【0009】
更に、本発明の第3の態様は、電子データを作成するための電子データ作成プログラムであって、コンピュータに、前記電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得する感情取得処理と、前記感情取得処理によって取得された前記ユーザの現在の感情と、複数の感情種別と前記電子データに挿入可能な複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータとに基づいて、前記ユーザの現在の感情に関連する前記複数の挿入データを取得する挿入データ取得処理と、前記挿入データ取得処理によって取得された前記複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示処理と、前記挿入データ表示処理によって表示されている前記複数の挿入データのうち前記ユーザによって選択された挿入データを前記電子データに挿入する挿入処理とを実行させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの現在の感情に適合すると共に、ユーザが選択する蓋然性が高いと考えられる絵文字等(挿入データ)を複数個、優先的に選択候補として表示することができる。これにより、ユーザが挿入データを選択する負担を軽減することができると共に、ユーザは実質的に有効な選択肢の中から好みの挿入データを選択する楽しさを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る電子データ作成装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る電子データ作成装置が適用される電子機器の具体例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1に係る電子データ作成装置により電子データを作成する際の画面を例示する図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係る電子データ作成装置が適用される電子機器のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【図5】図5は、実施の形態1に係る電子データ作成装置の動作を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る電子データ作成装置1の機能的な構成を示している。図2は、当該電子データ作成装置1が適用される電子機器10の具体例を示している。当該電子機器10は、いわゆる携帯電話機10であり、表示部11、入力部12、及び撮像部13を有する。
【0013】
図1に示す電子データ作成装置1は、電子メール等の電子データを作成するための装置であって、挿入データ記憶部2、関連付けデータ記憶部3、感情取得部4、挿入データ取得部5、挿入データ表示部6、及び挿入部7を有する。
【0014】
挿入データ記憶部2は、電子データに挿入可能な絵文字等の挿入データを記憶する機構である。
【0015】
関連付けデータ記憶部3は、複数の感情種別(喜び、悲しみ、怒り等)と複数の挿入データとを一体多の関係で関連付けるデータを記憶する機構である。
【0016】
感情取得部4は、電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得(コンピュータを利用して推定)する機構である。
【0017】
挿入データ取得部5は、上記感情取得部4によって取得されたユーザの現在の感情と、上記関連付けデータ記憶部3に記憶されている関連付けデータとに基づいて、ユーザの現在の感情に関連する複数の挿入データを取得(データベースから抽出)する機構である。
【0018】
挿入データ表示部6は、上記挿入データ取得部5によって取得された複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示部11に表示する機構である。
【0019】
挿入部7は、上記挿入データ表示部6によって表示されている複数の挿入データのうちユーザによって選択された挿入データを電子メール等の電子データに挿入する機構である。
【0020】
図3は、上記電子データ作成装置1により電子データ(電子メールの送信文書)を作成する際の画面を例示している。本例において、文章部分の最後には、絵文字16が挿入されている。当該絵文字16は、表示部11の下方に設けられた挿入データ候補欄17に表示された複数の絵文字等の候補から選択される。
【0021】
上記電子データ作成装置1によれば、挿入データ候補欄17に、上記感情取得部4により取得(推定)された感情に関連付けられた複数の絵文字等のみを優先的に表示することが可能となる。また、当該候補は、1つの感情種別に対して一対多の関係で関連付けられた絵文字等であるため、常に複数個表示される。
【0022】
また、挿入データ候補欄17には、通常、絵文字等をジャンル毎に区分けする複数のタブ18が設けられている。これらのタブ18の1つとして「感情」タブ19を設け、当該「感情」タブ19を選択する操作をすることにより、上記ユーザの感情に対応した複数の候補が表示されるようにすることが好ましい。
【0023】
このように、ユーザの感情に対応して絵文字等の候補が自動的に絞り込まれることにより、ユーザが絵文字等を選択する負担が軽減される。また、現在の感情に対応する絵文字等の候補が常に複数個挙げられるため、ユーザは好みのものを選択する楽しさを得ることができる。
【0024】
図4は、上記電子データ作成装置1が適用される携帯電話機10のハードウェア構成を例示している。携帯電話機10は、中央処理装置21、記憶装置22、通信装置23、表示装置24、入力装置25、及び撮像装置26を有している。
【0025】
中央処理装置21は、記憶装置22に格納されたプログラム群30及びデータベース群40に基づいて、各種演算・制御処理を実行する。
【0026】
通信装置23は、通話、電子メールの送受信、インターネット閲覧、プログラムのダウンロード等の機能を実現するために必要な信号の送受信処理を実行する。
【0027】
表示装置24(表示部11)は、LCD(Liquid Crystal Display)等であり、各種情報を表示する。
【0028】
入力装置25(入力部12)は、ボタン、レバー等からなり、各種機能の実行時におけるユーザの操作を受け付ける。尚、タッチパネル機構を備える場合には、表示装置24が入力装置25の一部を構成する。
【0029】
撮像装置26(撮像部13)は、携帯電話機10の外部の画像情報を取得するものであり、本実施の形態においては、携帯電話機10を操作している(表示部11に対面している)ユーザの顔の画像を取得できる位置にレンズが設けられている。
【0030】
上記記憶装置22には、文章作成プログラム31、感情認識プログラム32、絵文字等抽出プログラム33、絵文字等データベース41、関連付けデータベース42、及び感情データベース43が格納されている。
【0031】
文書作成プログラム31は、文字、記号、絵文字等からなる文書を作成するためのものであり、電子メールを作成する時等に機能する。
【0032】
感情認識プログラム32は、撮像装置26により取得されたユーザの顔の画像情報と、感情データベース43とに基づいて、ユーザの感情をリアルタイムに推定する。感情データベース43には、顔の表情に対応する画像データの特徴と感情の種別との対応関係等が記憶されている。
【0033】
絵文字等抽出プログラム33は、感情認識プログラム32の動作により推定されたユーザの感情と、関連付けデータベース42とに基づいて、ユーザの感情に対応する複数の絵文字等を抽出する。関連付けデータベース42においては、複数の感情種別(喜び、悲しみ、怒り等)と複数の絵文字等とが、一体多の関係で関連付けられている。
【0034】
図5は、上記電子データ作成装置1の動作を例示している。先ず、ユーザが入力部12に対して所定の操作を行うと(S101)、電子メールを作成するためのメールアプリケーションが起動する(S102)と共に、携帯電話機10の前面側(ユーザの顔に対面する位置)に配置された撮像部13が起動する(S103)。この時、表示部11には撮像部13により取得された画像(プレビュー)は表示されない。
【0035】
その後、ユーザが電子メールの作成を開始すると(S104)、上記感情認識プログラムが起動し(S105)、撮像部13により取得された画像情報から現在のユーザの感情が認識(推定)される(S106)。
【0036】
その後、ステップS106において認識された感情に対応する複数の絵文字等が、上記関連付けデータベース42及び絵文字等データベース41を参照することによって選定される(S107)。当該選定は、ユーザの表情の変化に追従してリアルタイムに行われる。
【0037】
その後、ユーザが上記「感情」タブ19(図3参照)を選択する操作を行うことにより(S108)、ステップS107で選定された最新の感情に対応する絵文字等が表示され(S109)、ユーザは表示された複数の絵文字等から使用したいものを選択する(S110)。
【0038】
上記のようにして電子メールを作成し、送信すると(S111)、上記感情認識機能、前面カメラ(撮像部13)、及びメールアプリケーションがOFFとなる(S112)。
【0039】
上記のように、本実施の形態に係る電子データ作成装置1によれば、ユーザの現在の感情に適合すると共に、ユーザが選択する蓋然性が高いと考えられる絵文字等(挿入データ)を複数個、優先的に選択候補として表示することができる。これにより、ユーザが挿入データを選択する負担を軽減することができると共に、ユーザは実質的に有効な選択肢の中から好みの挿入データを選択する楽しさを得ることができる。
【0040】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。例えば、上記実施の形態においては、電子データ作成装置1が適用される電子機器として携帯電話機が例示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ユーザ自身を撮影可能な撮像機構を備えるパーソナルコンピュータ等の各種機器に適用可能なものである。また、上記電子データとして電子メールが例示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常のワープロソフトを用いて文書を作成する場合にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0041】
1 電子データ作成装置
2 挿入データ記憶部
3 関連付けデータ記憶部
4 感情取得部
5 挿入データ取得部
6 挿入データ表示部
7 挿入部
10 電子機器(携帯電話機)
11 表示部
12 入力部
13 撮像部
16 絵文字
17 挿入データ候補欄
18 タブ
19 「感情」タブ
21 中央処理装置
22 記憶装置
23 通信装置
24 表示装置
25 入力装置
26 撮像装置
30 プログラム群
40 データベース群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子データを作成するための電子データ作成装置であって、
前記電子データに挿入可能な複数の挿入データを記憶する挿入データ記憶手段と、
複数の感情種別と前記複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータを記憶する関連付けデータ記憶手段と、
前記電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得する感情取得手段と、
前記感情取得手段によって取得された前記ユーザの現在の感情と前記関連付けデータ記憶手段によって記憶されている関連付けデータとに基づいて前記ユーザの現在の感情に関連する前記複数の挿入データを取得する挿入データ取得手段と、
前記挿入データ取得手段によって取得された前記複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示手段と、
前記挿入データ表示手段によって表示されている前記複数の挿入データのうち前記ユーザによって選択された挿入データを前記電子データに挿入する挿入手段と、
を有する電子データ作成装置。
【請求項2】
前記挿入データ表示手段は、前記挿入データ取得手段によって取得された前記複数の挿入データのみを表示する、
請求項1に記載の電子データ作成装置。
【請求項3】
前記挿入データ取得手段は、前記感情取得手段によって取得される前記ユーザの感情の変化に追従して前記複数の挿入データを更新する、
請求項1又は2に記載の電子データ作成装置。
【請求項4】
前記感情取得手段は、前記電子データを作成している時の前記ユーザの顔の画像データに基づいて前記感情を取得する、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子データ作成装置。
【請求項5】
前記電子データは、電子メールである、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子データ作成装置。
【請求項6】
電子データを作成するための電子データ作成方法であって、
前記電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得する感情取得ステップと、
前記感情取得ステップによって取得された前記ユーザの現在の感情と、複数の感情種別と前記電子データに挿入可能な複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータとに基づいて、前記ユーザの現在の感情に関連する前記複数の挿入データを取得する挿入データ取得ステップと、
前記挿入データ取得ステップによって取得された前記複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示ステップと、
前記挿入データ表示ステップによって表示されている前記複数の挿入データのうち前記ユーザによって選択された挿入データを前記電子データに挿入する挿入ステップと、
を有する電子データ作成方法。
【請求項7】
電子データを作成するための電子データ作成プログラムであって、
コンピュータに、
前記電子データを作成しているユーザの現在の感情を取得する感情取得処理と、
前記感情取得処理によって取得された前記ユーザの現在の感情と、複数の感情種別と前記電子データに挿入可能な複数の挿入データとを一対多の関係で関連付ける関連付けデータとに基づいて、前記ユーザの現在の感情に関連する前記複数の挿入データを取得する挿入データ取得処理と、
前記挿入データ取得処理によって取得された前記複数の挿入データを他の挿入データより優先的に表示する挿入データ表示処理と、
前記挿入データ表示処理によって表示されている前記複数の挿入データのうち前記ユーザによって選択された挿入データを前記電子データに挿入する挿入処理と、
を実行させる電子データ作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−190112(P2012−190112A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51299(P2011−51299)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】