説明

電子ビーム物理蒸着装置において送り速度を調整する方法、電子ビーム物理蒸着装置、およびこの装置を用いた層状化の発生していない多成分凝縮物の製造方法

【課題】EB−PVDチャンバ内部の溶融プールの一定の相対液面を監視して維持するように設計された、独立したシステムを備えるEB−PVD装置を提供する。
【解決手段】電子ビーム物理蒸着装置において送り速度を調整する方法は、電子ビーム物理蒸着装置のチャンバ内部の第1の高さにターゲットを位置決めするステップと、電子ビーム物理蒸着装置の電子銃によって生成される電子ビームの中に所定の速度でターゲットを送るステップと、電子のビームでターゲットを蒸発させるステップと、チャンバに近接して配置された光センサを使用してターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定することによって第1の高さを監視するステップと、第1の高さの変化を求めるステップと、ターゲット送り速度を調整するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ビーム物理蒸着装置に関し、より具体的には、電子ビーム物理蒸着装置におけるターゲットの独立した空間位置安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
多成分凝縮物(multi−component condensate)の断面全体にわたる化学変動(chemical variation)、例えば層状化(lamination)は、電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)技法を利用するときに遭遇する主要な問題の一つである。このような化学変動は、EB−PVD工程パラメータにおける不安定性によって引き起こされる。例えば、この不安定性がこのような重大な化学変動を引き起こす可能性のある重要なパラメータの一つは、EB−PVDチャンバ内部の溶融プール(molten pool)の相対液面である。理論的には、溶融プール液面が、EB−PVD工程全体を通して一定の高さに維持される場合には、層状化を大幅に減少させるか、または排除することができる。しかし、現在のEB−PVD装置においては、溶融プール液面は、EB−PVD作業者によって手動で維持される。その結果、溶融プールの相対液面は、潜在的に不安定な動作パラメータのままである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、EB−PVDチャンバ内部の溶融プールの一定の相対液面を監視して維持するように設計された、独立したシステムを備えるEB−PVD装置に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、電子ビーム物理蒸着装置において送り速度を調整する方法は、大まかには、電子ビーム物理蒸着装置のチャンバ内部の第1の高さにターゲットを位置決めするステップと、電子ビーム物理蒸着装置の電子銃によって生成される電子ビームの中に所定の速度でターゲットを送るステップと、電子ビームでターゲットを蒸発させるステップと、チャンバに近接して(proximate to)配置された光センサを使用してターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定することによって第1の高さを監視するステップと、第1の高さの変化を求めるステップと、ターゲット送り速度を調整するステップと、を含む。
【0005】
本発明の別の態様によれば、電子ビーム物理蒸着装置は、大まかには、ターゲットステーション、ターゲットステーションを移動させる手段、および窓を収容するチャンバと、チャンバに接続し、窓に近接して配置されて、ターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定する手段を備える光センサと、チャンバと接続して配置された電子銃と、光センサとターゲットステーションを移動させる手段とに接続された電子モジュールと、を備える。
【0006】
本発明のさらに別の態様によれば、電子ビーム物理蒸着装置を使用する層状化の発生していない多成分凝縮物の製造方法は、大まかには、電子ビーム物理蒸着装置のチャンバ内部の第1の高さに多成分ターゲットを位置決めするステップと、電子ビーム物理蒸着装置の電子銃によって生成される電子のビームの中に所定の速度で多成分ターゲットを送るステップと、電子ビームで多成分ターゲットを、少なくとも第1の成分蒸発物と第2の成分蒸発物とに蒸発させるステップと、チャンバに近接して配置された光センサを使用して、多成分ターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定することによって第1の高さを監視するステップと、第1の高さにおける変化を判定するステップと、第1の成分蒸発物と第2の成分蒸発物とを基板上に均一に堆積させるように、多成分ターゲット送り速度を調整するステップと、層状化の発生していない多成分凝縮物を形成するステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すると、本発明の電子ビーム物理蒸着装置10(以下では「EBPVD10」)を表わしている。EBPVD10は、一般に、電源(図示せず)および作動機構(図示せず)を有して、ターゲットステーション移動手段18と接続して配置されたターゲットステーション16を収容し、窓14を有するチャンバ12を含む。電子モジュール20は、チャンバ12の外側面の外部に、ターゲットステーション移動手段18と接続して配置してもよい。光センサ22は、窓14に近接して、かつチャンバ12と接続して配置してもよい。より具体的には、光センサ22は、チャンバ12に外部から装着して、窓14に当接して配置してもよい。窓14は、直径が約30〜40mm、または約30〜35mmで、厚さが約4〜10mm、または約6〜8mmの石英窓(quartz window)を含んでもよい。さらに、窓14には、蒸発した被覆フラックス(coating flux)が窓14の上に堆積するのを防止するのに十分な量で、チャンバ12内部でその面上に配置した、繊維材料(図示せず)を含めてもよい。ターゲットステーション16は、ターゲットの面への光センサの見通し線(line-of-sight)を提供すると同時に、蒸発しつつあるターゲットを保持するように設計された、差込み口(receptacle)としてもよい。
【0008】
光センサ22には、ガスダイナミックフィルタ36、集束レンズ38、分離プリズム40、およびそれぞれが前置増幅器44に接続された第1の光検出器41および第2の光検出器43を含めてもよい。ガスダイナミックフィルタ36は、内部にグリッドを有する実質的に管状の構造としてもよい。この構造は、内部直径が約25mmで、長さが約150mmとすることができる。構造内部に配置されたグリッドは、メッシュ厚さを約0.1〜0.15mmにしてもよい。ガスダイナミックフィルタ36は、少なくとも長さ1mのターゲットを蒸発させている間に、フィルタに約0.02〜0.05nmの光透過(optical transmission)を与えてもよい。
【0009】
ガスダイナミックフィルタ36と集束レンズ38とは、互いに結合されて、チャンバ12の外側面に装着されている。好ましくは、ガスダイナミックフィルタ36は、チャンバ12の外側面から外向きに約3〜7度の角度で、かつターゲットステーション16の見通し線において、チャンバ12の窓14に当接して位置決めされる。集束レンズ38は、当業者に知られている多数の集束レンズの任意のものでよい。好ましくは、集束レンズ38は、直径が約29〜30mm、または直径が約29.5〜29.9mm、または直径が約29.8〜29.9mm、または直径が約29.9mmであり、焦点距離が約45〜55mm、または約49〜51mm、または約50mmである。分離プリズム40は、当業者に知られている多数の分離プリズムの任意のものでよく、好ましくは、約30mm×約30mm×約20mmの中空立方体内部に位置して、一頂点が直角であり、底面の大きさが約10mm×約10mmである100%反射プリズムである。各光検出器41,43は、分離プリズム40の反対両側の垂直面内に配置することができる。
【0010】
光センサ22は、窓14を介して、ターゲットステーション16内部のターゲットの少なくとも1つの画像を取り込む。ガスダイナミックフィルタ36は、当業者に知られているように、ターゲット蒸発過程の間に、窓14の粉立ち(dusting)を防止する。集束レンズ38は、窓14とガスダイナミックフィルタ36とを通過する画像を縮小して、画像を分離プリズム40の頂点上に投影する。分離プリズム40は、第1の光検出器41上へ原画像の反射画像を反射し、また第2の光検出器43上へ原画像の屈折画像を屈折させる。各光検出器41,43は、反射画像の光強度と、屈折画像の光強度を測定する。光強度の差、または光強度に差がないことが、前置増幅器44によって記録、表示される。さらに、光強度の差、または光強度の差がないことは、少なくとも1つの出力信号として、光センサ22から電子モジュール20へと伝達される。
【0011】
光強度の差、または光強度の差がないことは、光検出器41,43の光強度測定値を比較することによって求めることができる。光センサ22により、光強度の差に基づいて生成される出力信号は、ターゲットステーション16の高さが、ターゲット面の安定化とターゲットの最適蒸発とに要求される最適高さよりも大きいか、または小さいかを示す。各画像の光強度測定値が等しい場合には、光センサ22は、ゼロ(0)に等しい信号を出力する。このことは、ターゲットステーション16内部のターゲットの2つの画像が同じものであり、ターゲットステーションの高さは一定で変化のないままであることを示す。ターゲットステーション16の高さに言及するときには、ターゲットステーション内部に収納されている溶融液体の表面が、高さを測定する点である。
【0012】
各画像の光強度測定値が等しくない場合には、このことは、ターゲットの2つの画像が同じものではなく、ターゲットステーションの高さが変化したことを示す。第2の光検出器43が、第1の光検出器41の光強度値よりも大きい光強度値を測定する場合には、ターゲットステーション16の高さは、ターゲット面の安定化とターゲットの最適蒸発とに要求される最適高さよりも小さい。それに応じて、システムは、ターゲットステーション16を上昇させて、次には送り速度、すなわちEBPVD装置の電子ビームによるターゲットの蒸発を増大させる。第2の光検出器43が、第1の光検出器41の光強度値よりも小さい光強度値を測定する場合には、ターゲットステーション16の高さは、ターゲット面の安定化とターゲットの最適蒸発に要求される最適高さよりも大きい。それに応じて、システムは、ターゲットステーション16を下降させて、次にはEBPVD装置の電子ビームによるターゲットの送り速度を減少させる。
【0013】
次に図2および図3を参照すると、電子モジュール20は、光センサ22によって生成される1つまたは複数の出力信号を増幅して、その信号をターゲットステーション16の高さに対応するように解釈、変換して、これらの増幅された出力信号に応答してターゲットステーション16の高さを調整する。電子モジュール20には、電源24、駆動用発振器(driving generator)26、増幅器28、パルス幅変調器30、および積分器32とターゲットステーション移動手段18とに電力を供給する機械系電源(mechanism power supply)33を含めてもよい。
【0014】
増幅器28は、光センサ22から出力信号を受け取る。増幅器28は、出力信号を約−20dBから約20dBに増大させ、増幅された出力信号をパルス幅変調器30に供給する。パルス幅変調器30は、増幅された出力信号の供給を制御するため、すなわち電流絶縁器(galvanic isolator)32への電流を抑制するのに使用してもよい。電流絶縁器32は、電子モジュール20の電気システムの機能部分(functional sections)を絶縁する役割を果たす。例えば、電流絶縁器32は、図3に示す光センサ回路をシステムの残部から電気的に絶縁するように設計してもよい。
【0015】
変換されて変調された出力信号を受け取ることに応答して、ターゲットステーション移動手段18は、出力信号を受け取り、ターゲットステーション16内部のターゲット面を、チャンバ12の床48に垂直な角度方向で上方または下方に移動させる。ターゲットステーション移動手段18は、電子モジュール20の機械系電源33を使用して、給電してもよい。ターゲットステーション移動手段18は、ターゲットステーションを前述の方向に少なくとも毎秒0.2〜0.4mmの速度で移動させることのできる、任意の機構とすることができる。
【0016】
駆動用発振器26は、当業者に知られている、約9〜10kHzの周波数で動作可能な任意の駆動用発振器とすることができる。電源24は、当業者に知られている、約10,000ボルト(V)、即ち10kVを供給することのできる任意の電源とすることができる。
【0017】
本明細書において説明するプール液面閉ループ制御(PLCLC:Pool Level Closed Loop Control)システムは、層状化の発生していない多成分凝縮物の製造に使用してもよい。多成分ターゲットは、電子ビーム物理蒸着装置のチャンバ内部の第1の高さに設置してもよい。多成分ターゲットは、電子銃によって生成される電子ビーム中に、所定の速度で供給することができる。電子ビームを使用して、多成分ターゲットは、少なくとも第1の成分蒸発物(evaporant)と第2の成分蒸発物とに蒸発させることができる。多成分ターゲットの第1の高さは、画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定することによって、光センサを使用して監視することができる。光センサが第1の高さにおける変化を記録すると、ターゲットステーション移動手段が、ターゲットステーションを作動させて、第1の成分蒸発物および第2の成分蒸発物を基板上に均一に堆積させるとともに層状化の発生を防止するように、多成分ターゲット送り速度を調整する。
【0018】
次に図4Aおよび図4Bを参照すると、Ti−6Al−4V EBPVD凝縮物の、それぞれ倍率100倍および倍率500倍で撮られた、一対の顕微鏡写真が示されている。図4Aおよび図4BのTi−6Al−4V EBPVD凝縮物は、従来技術の電子ビーム物理蒸着装置を使用して生成された。次に図5Aおよび図5Bを参照すると、Ti−6Al−4V EBPVD凝縮物の、それぞれ倍率100倍および倍率500倍で撮られた、一対の顕微鏡写真が示されている。図5Aおよび図5BのTi−6Al−4V EBPVD凝縮物は、本発明の電子ビーム物理蒸着装置を使用して生成された。
【0019】
実験からわかるように、層状化は、本明細書で説明したプール液面閉ループ制御(PLCLC)システムを用いて、工程中にプール液面が一定に維持されるときには、大幅に低減されるか、またはまったく排除される。図4Aおよび図4Bの顕微鏡写真に示されるように、Ti−6Al−4V EBPVD凝縮物は、アルミニウムの富化された層、すなわち層状化を示している。明るい帯は、約11〜12重量%のアルミニウム含有率を示すアルミニウム富化層である。対照的に、図5Aおよび図5Bの顕微鏡写真に示されたTi−6Al−4V EBPVD凝縮物は、その横断面全体にわたって高度に一様な化学成分を示し、層状化が事実上ないことを示している。最終製品の層状化は、本明細書で説明したプール液面閉ループ制御(PLCLC)システムを使用して、プール液面を自動的に監視することによって対策がされた。
【0020】
本発明の1つまたは複数の実施形態について説明した。しかし、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることを理解されるであろう。したがって、その他の実施形態は添付の請求項の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電子ビーム物理蒸着装置を示す図である。
【図2】図1の電子ビーム物理蒸着装置と共に使用する電子モジュールのフローチャートを表わす図である。
【図3】図1の電子ビーム物理蒸着装置と共に使用するセンサの概略を表わす図である。
【図4A】従来技術の電子ビーム物理蒸着装置で得られたTi−6Al−4V EBPVD凝縮物の倍率100倍で撮影した顕微鏡写真である。
【図4B】従来技術の電子ビーム物理蒸着装置で得られたTi−6Al−4V EBPVD凝縮物の倍率500倍で撮影した顕微鏡写真である。
【図5A】本発明の電子ビーム物理蒸着装置で得られたTi−6Al−4V EBPVD凝縮物の倍率100倍で撮影した顕微鏡写真である。
【図5B】本発明の電子ビーム物理蒸着装置で得られたTi−6Al−4V EBPVD凝縮物の倍率500倍で撮影した顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム物理蒸着装置において送り速度を調整する方法であって、
電子ビーム物理蒸着装置のチャンバ内部の第1の高さにターゲットを位置決めするステップと、
前記電子ビーム物理蒸着装置の電子銃によって生成される電子ビームの中に所定の速度で前記ターゲットを送るステップと、
前記電子ビームで前記ターゲットを蒸発させるステップと、
前記チャンバに近接して配置された光センサを使用して、前記ターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定することによって前記第1の高さを監視するステップと、
前記第1の高さの変化を求めるステップと、
ターゲット送り速度を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記監視するステップが、
前記ターゲットの前記蒸発から前記少なくとも1つの画像を有する所定の量の光を放射するステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記光センサの集束レンズへ向かう該光センサのガスダイナミックフィルタを介してフィルタリングするステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記集束レンズを介して前記光センサの反射プリズム上に集束させるステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記反射プリズムを介して前記光センサの少なくとも1つの光検出器上に投影するステップと、
前記第1の光強度および前記第2の光強度を測定するステップと、
第1の光検出器によって測定される前記第1の光強度が、第2の光検出器によって測定される前記第2の光強度と等しくないことを判定するステップと、
前記第1の光強度と前記第2の光強度の差を、前記光センサの出力信号に変換するステップと、
前記出力信号に基づいて、前記第1の高さが変化したことを判定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタリングするステップが、前記少なくとも1つの画像を、前記ガスダイナミックフィルタに近接して配置された、前記チャンバの窓を介して受け取るステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投影するステップが、
少なくとも1つの画像を受け取るステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記反射プリズムを通して分離するステップと、
第1の光強度を有する反射画像を、前記光センサの第1の光検出器に投影し、第2の光強度を有する屈折画像を、前記光センサの第2の光検出器上に投影するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記調整するステップが、
前記ターゲットの高さの変化を判定するステップと、
前記ターゲットを移動させる手段を起動するステップと、
前記ターゲットが、前記第1の高さよりも低い第2の高さにあるときに、前記ターゲットの高さを増大させるステップと、
前記ターゲット送り速度を増大させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲットの高さの変化を判定するステップと、
前記ターゲットを移動させる手段を起動するステップと、
前記ターゲットが、前記第1の高さよりも高い第2の高さにあるときに、前記ターゲットの高さを減少させるステップと、
前記ターゲット送り速度を減少させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ターゲットステーションと、該ターゲットステーションを移動させる手段と、窓とを収容するチャンバと、
前記チャンバに接続し、前記窓に近接して配置されて、ターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定する手段を備える光センサと、
前記チャンバに接続して配置された電子銃と、
前記光センサと前記ターゲットステーションを移動させる手段とに接続された電子モジュールと、
を備える電子ビーム物理蒸着装置。
【請求項8】
前記光センサは、前記チャンバの外側面に外部から、約3〜7度の角度で装着されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記差を測定する手段は、
内部に配設されたメッシュグリッドを有する実質的に管状の構造を含むガスダイナミックフィルタと、
直径が約29〜30mmで、焦点距離が約45〜55mmの集束レンズと、
100%反射プリズムと、
前記100%反射プリズムに隣接して、その垂直面内に配置された第1の光検出器と、
前記100%反射プリズムに隣接して、その垂直面内に、かつ前記第1の光検出器の反対側に配置された第2の光検出器と、
前記第1の光検出器と前記第2の光検出器とに接続された前置増幅器と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記メッシュグリッドは、メッシュ厚さが約0.1〜0.15mmであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記100%反射プリズムは、約30mm×約30mm×約20mmの寸法の中空立方体内に位置して、一頂点が直角であり、底面の大きさが約10mm×約10mmであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記電子モジュールが、
駆動用発振器、パルス幅変調器、増幅器、および前記光センサに接続して配置された電源と、
前記パルス幅変調器と前記ターゲットステーションを移動させる手段とに接続して配置された積分器と、
前記光センサと前記積分器とに接続して配置された機械系電源と、
をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記ターゲットステーションが差込み口を備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項14】
前記ターゲットステーションを移動させる手段が、前記チャンバの床に垂直な角度方向で上方または下方へ、前記ターゲットステーションを移動させることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項15】
前記窓は、直径が約30〜40mmで、厚さが約4〜10mmである石英窓を含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項16】
電子ビーム物理蒸着装置を使用する層状化の発生していない多成分凝縮物の製造方法であって、
電子ビーム物理蒸着装置のチャンバ内部の第1の高さに多成分ターゲットを位置決めするステップと、
前記電子ビーム物理蒸着装置の電子銃によって生成される電子ビームの中に所定の速度で前記多成分ターゲットを送るステップと、
前記電子ビームで前記多成分ターゲットを、少なくとも第1の成分蒸発物と第2の成分蒸発物とに蒸発させるステップと、
前記チャンバに近接して配置された光センサを使用して、前記多成分ターゲットの少なくとも1つの画像の第1の光強度と第2の光強度の差を測定することによって前記第1の高さを監視するステップと、
前記第1の高さの変化を判定するステップと、
前記第1の成分蒸発物と前記第2の成分蒸発物とを基板上に均一に堆積させるように、多成分ターゲット送り速度を調整するステップと、
層状化の発生していない多成分凝縮物を形成するステップと、
を含む製造方法。
【請求項17】
前記監視するステップが、
前記多成分ターゲットの前記蒸発から前記少なくとも1つの画像を有する所定の量の光を放射するステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記光センサの集束レンズへ向かう該光センサのガスダイナミックフィルタを通してフィルタリングするステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記集束レンズを介して前記光センサの反射プリズム上に集束させるステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記プリズムを介して前記光センサの少なくとも1つの光検出器上に投影するステップと、
前記第1の光強度および前記第2の光強度を測定するステップと、
第1の光検出器によって測定される前記第1の光強度が、第2の光検出器によって測定される前記第2の光強度と等しくないことを判定するステップと、
前記第1の光強度と前記第2の光強度の差を、前記光センサの出力信号に変換するステップと、
前記出力信号に基づいて、前記第1の高さが変化したことを判定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルタリングするステップが、前記少なくとも1つの画像を、前記ガスダイナミックフィルタに近接して配置された、前記チャンバの窓を介して受け取るステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投影するステップが、
少なくとも1つの画像を受け取るステップと、
前記少なくとも1つの画像を、前記反射プリズムを通して分離するステップと、
第1の光強度を有する反射画像を、前記光センサの第1の光検出器に投影し、第2の光 強度を有する屈折画像を前記光センサの第2の光検出器上に投影するステップと、
を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記調整するステップが、
前記多成分ターゲットの高さの変化を判定するステップと、
前記多成分ターゲットを移動させる手段を起動するステップと、
前記多成分ターゲットが、前記第1の高さよりも低い第2の高さにあるときに、前記多成分ターゲットの高さを増大させるステップと、
前記多成分ターゲット送り速度を増大させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記調整するステップが、
前記多成分ターゲットの高さの変化を判定するステップと、
前記多成分ターゲットを移動させる手段を起動するステップと、
前記多成分ターゲットが、前記第1の高さよりも高い第2の高さにあるときに、前記多成分ターゲットの高さを減少させるステップと、
前記多成分ターゲット送り速度を減少させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2008−163464(P2008−163464A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338512(P2007−338512)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】