説明

電子付着及び遠隔イオン発生を伴うフラックスレス技術によって表面酸化物を除去するための装置及び方法

【課題】比較的低い温度下で、少なくとも1つの部品及び/又は半田表面から金属酸化物を除去するための経済的かつ効率的な方法を提供する。
【解決手段】基材に接続された該少なくとも1つの部品25を提供して、該基材が接地電位又は陽電位から成る群より選択された少なくとも1つの電位を有するターゲットアッセンブリを形成すること;還元ガス27を含んで成るガス混合物を、第1及び第2電極を含んで成るイオン発生器21に通過させること;該還元ガスの少なくとも一部に付着する電子を発生させて、負に帯電した還元ガスを形成するのに十分な電圧を該第1及び該第2電極の少なくとも一方に供給すること;並びに該ターゲットアッセンブリを該負に帯電した還元ガス27と接触させて、該少なくとも1つの部品25上の該金属酸化物を還元することを含んで成る、少なくとも1つの部品25表面から金属酸化物を除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、表面酸化物を除去するためのフラックスレスプロセスに関する。より具体的に本発明は、遠隔イオン発生器内での電子付着を伴うフラックスレスリフロー及び半田付けのためのフラックスレスプロセスを含んで成る装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リフロー及び半田付けは、電子部品の組み付けにおいて半田接合するための重要な処理工程である。本明細書で用いられる“リフロー”という語は、基材上に前もって適用した半田を、例えば、熱エネルギーなどのエネルギー源を適用して溶融及び流動させる処理のことを言う。本明細書で用いられる“半田付け”という語は、溶融した半田によって少なくとも2つの金属基材を接合する処理のことを言う。さまざまな異なるリフロー及び半田付け処理は、ウェハバンピングに用いられる半田バンプのリフロー、表面実装用電子部品の組み付けにおいて用いられるリフロー半田付け、及び挿入実装用部品の組み付けにおいて用いられるウェーブ半田付けなど、しかしそれらに限定されない電子デバイスの組み付けにおいて使用できる。
【0003】
リフロー半田付けは、表面実装部品のアウターリードボンディングに用いられる処理であり、この処理においては、チップが次のレベルの表面実装パッケージへ適切にリードとともに移される。リフロー半田付け処理においては、半田ペーストを回路基板上に前もって印刷して、部品を回路基板の対応する微小領域上に取り付ける。次いで、このように形成された半田付け部品をリフロー炉に入れ、加熱及び冷却帯域に通す。部品リードと回路基板上の半田ランドとの間の半田接合は、半田ペーストの溶融、濡れ、及び凝固によって形成される。接合表面上での溶融した半田の良好な濡れを確実にするために、有機フラックスを半田ペースト中に通常含ませ、半田及びベース金属両方に関する初期表面酸化物を除去して、凝固前の表面を清浄な状態に維持する。該フラックスは、大部分が半田付け中に蒸気相に蒸発するが、フラックスの揮発性物質は、半田接合における空隙の形成、及びリフロー炉の汚染のような問題を引き起こす場合がある。半田付け後、腐食及び短絡の原因となる場合のあるフラックス残留物が、依然として回路基板上に残ったままである。
【0004】
同様に、ウェーブ半田付けは、従来の挿入実装部品を組み付けるためなどのアウターリードボンディングに用いられる。それはまた、半田付け前に接着剤によって回路基板上の部品を仮付けすることで表面実装部品に使用することもできる。両方の場合について、挿入又は仮付けした部品を有する回路基板は、部品リード及び半田ランド上の酸化物を除去するために、液体フラックスを用いて洗浄しなければならず、次いで、高温の溶融半田浴に通さなければならない。溶融した半田によって、半田付けされるべき金属表面を自動的に濡らし、そうして半田接合を形成する。浴中の溶融半田は、酸化される傾向が高く、半田かすを形成する。それゆえ、半田浴の表面は、このかすを機械的に除去することによって頻繁に洗浄しなければならず、半田の運用コストと消費を増大させる。半田付け後、フラックス残留物が回路基板上に残ったままであり、リフロー半田付けについて本明細書で記載したのと同じ問題が生じる。
【0005】
ウェハバンピングは、インナーリードボンディングについてチップボンドパッド上に厚い金属バンプを作製するのに用いられる処理である。該バンプは、概してパッド上に半田を付着させ、次いでリフロー(第1リフローと本明細書で称される)させて、合金化を行い、マッシュルーム形状から半球体形状へ半田バンプの形状を変化させることによって作製される。第1リフローバンプを有するチップは、基材上の半田で濡れた端子のフットプリントに対応するよう“はじかれ”、次いで第2リフローを受けて半田接合を形成する。これらの半田接合は、本明細書でインナーリードボンドと称される。高溶融点の半田(例えば、>300℃)が、ウェハバンピング処理において用いられるのが通常である。なぜなら低溶融点の半田(例えば、<230℃)を用いて進行するアウターリードボンディングなどの以降の組み付け工程を、インナーリードボンドを破壊せずに可能とするからである。
【0006】
第1リフロー後の半田バンプ形状が重要である。例えば、バンプ高さが高いことは、より良好なボンディング及びより高い疲労抵抗のために好ましい。さらに、形成されるバンプは、平坦性を確実にするために、好ましくは実質的に均一であるべきである。比較的高いバンプ高さを有する実質的に均一な半田バンプは、第1リフローの際に酸化物のないバンプ表面と関連していると考えられる。半田バンプ付きウェハの第1リフロー中に半田酸化物を除去する1つのアプローチは、堆積した半田バンプの上に、又はバンプを形成するためにウェハ上に印刷された半田ペースト混合物中に有機フラックスを適用すること、並びにフラックスが半田表面上の初期酸化物を効果的に除去できるように、不活性環境においてバンプをリフローすることである。しかしながら、このアプローチは欠点を有する。小さな空隙が、フラックスの分解によって半田バンプ中に形成することがある。これらの空隙は、形成された半田結合の電気的及び機械的性質を低下させるだけでなく、半田バンプ付きウェハの共平面性を破壊し、かつ以降のチップボンディングプロセスに影響を及ぼすこともある。分解したフラックスの揮発性物質がリフロー炉を汚染する場合もあり、それによってメンテナンスコストが増加することがある。加えて、腐食を引き起こし、アッセンブリの性能を低下させることのあるフラックス残留物がしばしばウェハ上に残る。
【0007】
上記のリフロー及び半田付け処理からフラックス残留物を除去するために、洗浄剤としてクロロフルオロカーボン(CFC)を用いた後洗浄処理を採用することができる。しかしながら、後洗浄によって、新たな処理工程が加わり、製造処理の時間が増加する。さらには、洗浄剤としてのクロロフルオロカーボン(CFC)の使用は、地球を保護するオゾン層に対する潜在的なダメージのために禁止されている。少量の活性剤を用いて残留物を低減することによって無洗浄フラックスが開発されたが、フラックス残留物量のゲイン及びロスとフラックス活性との間で取引がある。
【0008】
空隙の形成、フラックスの揮発性物質、フラックス残留物、及びかすの形成を含む、上記すべての問題に対する良い解決策は、金属酸化物を除去するための有機フラックスに取って代わるために、リフロー及び半田付け環境として還元ガスを用いることである。このようなリフロー及び半田付け技術は、“フラックスレスリフロー”及び“フラックスレス半田付け”と呼ばれる。さまざまなフラックスレスリフロー及び半田付け法の中でも、ベース金属及び半田上の酸化物を還元するために、反応性ガスとして水素を使用することが特に魅力的である。なぜなら、それは非常にクリーンなプロセスであり(唯一の副生成物は、炉から容易に換気できる水である)、かつオープンで継続的な半田付け製造ラインと両立できるからである(H2は毒性がなく、4〜75%の可燃性範囲を有する)。それゆえ、水素フラックスレス半田付けは、長い間技術的な目標であった。
【0009】
1つの以前使用されたインナーリードボンディングのための水素フラックスレス法は、400〜450℃の温度で半田バンプ付きウェハのリフローに純粋な水素を利用することであった。しかしながら、純粋水素の可燃性によってその用途が非常に制限される。リフロー半田付け及びウェーブ半田付けなどのアウターリードボンディングで使用される半田付け処理について、水素を用いて表面酸化物を還元することの主な制約は、通常の処理温度範囲(<250℃)での金属酸化物の非能率的でかつ遅い還元速度であり、半田付けされるべきベース金属上の酸化物よりも大きな金属−酸素結合強さを有する半田酸化物について特にそうである。この水素の非能率性は、低温で水素分子の反応性が乏しいことに起因すると考えられる。単原子水素などの高反応性ラジカルは、通常のリフロー半田付け及びウェーブ半田付けの温度範囲よりもはるかに高い温度で形成する。例えば、スズに基づいた半田上のスズ酸化物を還元するのに効果的な純粋H2の温度範囲は350℃よりも高い。このような高温によって、包装された電子部品に損傷を与えるか又はそれに対する信頼性の問題が生じる場合がある。それゆえ、高反応性H2ラジカルの生成を助長するための触媒方法、並びにしたがって、水素濃度の効果的な範囲、及び表面酸化物を還元する処理温度の低減が、産業界で求められている。
【0010】
フラックスレス(乾式)半田付けは、いくつかの技術を用いて先行技術で実施されている。1つの技術は、レーザーを用いて除去すること又は金属酸化物をその気化温度に加熱することである。このような処理は、放出された汚染物質による再酸化を防ぐために、不活性又は還元性雰囲気のもとで実施されるのが典型的である。しかしながら、該酸化物又はベース金属の溶融点又は沸点が同様である場合があり、ベース金属を溶融又は気化させることは望ましくない場合がある。それゆえ、このようなレーザー処理を実施することは困難である。レーザーは、典型的に高価でかつ操作するのに非能率であり、酸化物層への直線的な照準を必要とする。これらのファクターによって、大部分の半田付け用途についてレーザー技術の有効性が制限される。
【0011】
表面酸化物は、高温で反応性ガス(例えば、H2)にさらすことによって、化学的に(例えば、H2Oに)還元することができる。不活性キャリヤー(例えば、N2)中に5%以上の還元ガスを含有する混合物が典型的に用いられる。次いで、反応生成物(例えば、H2O)が、高温で脱着して表面から放出され、ガス流動域に運び去られる。典型的な処理温度は350℃を超える。しかしながら、この処理は、高温でさえゆっくりでかつ効果的でない場合がある。
【0012】
還元処理の速度及び有効性は、より活性な還元種を用いて向上させることができる。このような活性種は、通常のプラズマ技術を用いて製造できる。
【0013】
可聴周波、無線周波、又はマイクロ波周波でのガスプラズマは、表面脱酸素のための反応性ラジカルを生成するのに使用できる。このような処理においては、高強度の電磁放射線が、H2、O2、SF6、又はフッ素含有化合物を含む他の種を高い反応性のラジカルにイオン化及び解離するのに用いられる。表面処理は300℃未満の温度で実施できる。しかしながら、プラズマ形成の最適条件を得るために、このような処理は真空条件のもとで典型的に実施される。真空操作は高価な設備を必要とし、より速い連続プロセスよりはむしろゆっくりとしたバッチプロセスとして実施されなければならない。さらにプラズマは、典型的には処理チャンバー内に拡散して分散され、特定の領域に導くことは困難である。それゆえ、反応性種は、この処理において効率的には利用できない。プラズマはまた、スパッタリング処理によって処理チャンバーに損傷を与える場合があり、誘電体表面上の空間電荷を蓄積させる場合があって、マイクロ回路を損傷させる可能性がある。マイクロ波それ自体が、同様にマイクロ回路を損傷させる場合があり、基材又は部品の温度を処理の間制御することは困難な場合がある。プラズマはまた、潜在的に危険な紫外光を放出する場合がある。このようなプロセスはまた高価な電気設備を必要とし、かなりの電力を消費して、それによりその全体的なコストの有効性を低下させる。
【0014】
米国特許第5,409,543号明細書(特許文献1)は、熱フィラメントを用いて真空条件下で分子状水素を熱解離し、反応性水素種(即ち、原子状水素)を生成する方法を開示している。エネルギーを与えられた水素は、基材表面を化学的に還元する。熱フィラメントの温度は、500℃〜2200℃であることができる。電気的にバイアスをかけたグリッドが、熱フィラメントから放出された過剰な自由電子を偏向又は捕獲するのに用いられる。反応性種又は原子状水素は、不活性キャリヤーガス中に2%〜100%の水素を含有する混合物から生成される。
【0015】
米国特許第6,203,637号明細書(特許文献2)は、熱電子カソードからの放電を用いて水素を活性化する方法を開示している。熱電子カソードから放出された電子は、活性種を生成する気相放電を作り出す。この放出プロセスは、加熱されたフィラメントを収容している独立又は遠隔チャンバーで実施される。イオン及び活性化された中性種が処理チャンバーに流れ、酸化された金属表面を化学的に還元する。しかしながら、このような高温のカソードプロセスは、最適な有効性及びフィラメント寿命のために真空条件を必要とする。真空操作は、半田付け用コンベヤーベルトシステムに組み込まなければならない高価な設備を必要とし、それによってその全体的なコストの有効性が低下する。
【0016】
Potierらの“Fluxless Soldering Under Activated Atmosphere at Ambient Pressure”,Surface Mount International Conference,1995,San Jose,CA(非特許文献1)、並びに米国特許第6,146,503号明細書(特許文献3)、同第6,089,445号明細書(特許文献4)、同第6,021,940号明細書(特許文献5)、同第6,007,637号明細書(特許文献6)、同第5,941,448号明細書(特許文献7)、同第5,858,312号明細書(特許文献8)、及び同第5,722,581号明細書(特許文献9)は、放電によって活性化されたH2(又はCH4若しくはNH3などの他の還元ガス)を生成するための方法を説明している。還元ガスは、不活性なキャリヤーガス(N2)中に“パーセントレベル”で一般に存在する。放電は“数kV”の交流電圧源を用いて作り出される。遠隔チャンバー中の電極から放出された電子によって、実質的に帯電種のない励起した又は不安定な種が生成され、そうしてこれらの種が基材に流れる。結果として得られるプロセスによって、半田付けされるべきベース金属の上の酸化物が150℃付近の温度で還元される。しかしながら、このような遠隔放電チャンバーは、相当な設備コストを必要とし、既存の半田付け用コンベヤーベルトシステムに対して容易には更新されない。加えて、これらのプロセスは、半田酸化物を除去するよりむしろ半田付け前の金属表面を前処理するために典型的に利用される。
【0017】
米国特許第5,433,820号明細書(特許文献10)は、大気圧で高電圧(1kV〜50kV)電極からの放電又はプラズマを用いた表面処理方法を説明している。電極は遠隔チャンバーの中よりはむしろ基材の近くに配置される。電極から放出された自由電子によって、反応性水素ラジカル、つまり、原子状水素を含有するプラズマが作り出され、次いで、この反応性水素ラジカルが、酸化された基材の上に位置する誘電体シールドの開口を通過する。この誘電体シールドは、脱酸素を必要とする特定の表面位置に活性水素を集中させる。しかしながら、このような誘電体シールドは、電界を変化させ、正確なプロセス制御を妨げる場合がある表面電荷を蓄積することがある。説明されているプロセスは、ベース金属の表面を溶融するのに使用されるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,409,543号明細書
【特許文献2】米国特許第6,203,637号明細書
【特許文献3】米国特許第6,146,503号明細書
【特許文献4】米国特許第6,089,445号明細書
【特許文献5】米国特許第6,021,940号明細書
【特許文献6】米国特許第6,007,637号明細書
【特許文献7】米国特許第5,941,448号明細書
【特許文献8】米国特許第5,858,312号明細書
【特許文献9】米国特許第5,722,581号明細書
【特許文献10】米国特許第5,433,820号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Potierらの“Fluxless Soldering Under Activated Atmosphere at Ambient Pressure”,Surface Mount International Conference,1995,San Jose,CA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、電子部品に何ら損傷を与えないよう比較的低い温度下において、少なくとも1つの部品及び/又は半田表面から金属酸化物を除去するための経済的かつ効率的な方法を提供することが当技術分野で必要とされている。真空設備を購入及び維持するのに費用をかけないように、周囲圧又は大気圧付近の条件下におけるフラックスレス半田付けのための方法及び装置を提供することが当技術分野でさらに必要とされている。加えて、不燃性ガス環境を用いたフラックスレス半田付け処理を提供することが当技術分野で新たに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、フラックスを必要としないで少なくとも1つの部品及び/又は半田表面から金属酸化物を除去するための方法を提供することによって、当技術分野のニーズのすべてではないにしてもいくつかを満足させる。具体的には、本発明の1つの態様においては、少なくとも1つの部品表面から金属酸化物を除去するための方法であって、基材に接続された該少なくとも1つの部品を提供して、該基材が接地電位又は陽電位から成る群より選択された少なくとも1つの電位を有するターゲットアッセンブリを形成すること;還元ガスを含んで成るガス混合物を、第1及び第2電極を含んで成るイオン発生器に通過させること;該還元ガスの少なくとも一部に付着する電子を発生させて、負に帯電した還元ガスを形成するのに十分な電圧を該第1及び該第2電極の少なくとも一方に供給すること;並びに該ターゲットアッセンブリを該負に帯電した還元ガスと接触させて、該少なくとも1つの部品上の該酸化物を還元することを含んで成る、少なくとも1つの部品表面から金属酸化物を除去するための方法が提供される。
【0022】
本発明の別の態様においては、表面金属酸化物及び半田を有する少なくとも1つの部品を半田付けするフラックスレス半田付け法が提供される。この方法は、基材が接地電位又は陽電位から成る群より選択された少なくとも1つの電位を有するターゲットアッセンブリとして、該基材に接続される少なくとも1つの部品を提供すること;還元ガス及びキャリヤーガスを含んで成るガス混合物を、ガス入口、該ガス入口と流体が連絡しているガス出口、アノード、及び該ガス入口と該ターゲットアッセンブリに近い該ガス出口との間に配置されたカソードを含んで成るイオン発生器に通過させること;該イオン発生器を通過する該還元ガスの少なくとも一部に付着する電子を発生させるのに十分なエネルギーを、該カソード及び該アノードのうち少なくとも一方に供給し、それによって負に帯電した還元ガスを該ガス出口で形成すること;並びに該ターゲットアッセンブリを該負に帯電した還元ガスと接触させて、少なくとも1つの部品上の該金属酸化物を還元することを含んで成る。
【0023】
本発明のなお更なる態様においては、負に帯電したイオン性還元ガスの発生装置であって、その少なくとも一部が、第1電圧レベルに接続されたアノードを含んで成る内部中空を画定するエンクロージャーと;ガス入口、及び該内部中空に流体が連絡しているガス出口と;該内部中空に存在し、かつ該ガス入口と該ガス出口の間に配置され、該第1電圧レベルに関して負バイアスを有する第2電圧レベルに接続されたカソードとを含んで成る、負に帯電したイオン性還元ガスの発生装置が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様においては、第1チャンバー及び第2チャンバーを含んで成る、負に帯電したイオン性還元ガスを発生させる装置が提供される。該第1チャンバーは、その中に収容された少なくとも2つの電極であって、電位のバイアスがその電極間で印加される少なくとも2つの電極と;還元ガスを受け入れるための第1ガス入口と;該負に帯電したイオン性還元ガスを放出するためのガス出口とを有する。該第2チャンバーは、該第1チャンバーを封入し、かつキャリヤーガスを受け入れるための第2ガス入口を有し、該第2ガス入口が該第1チャンバーと流体連絡し、該還元ガス及び該キャリヤーガスが該第2チャンバー内でガス混合物を形成する。
【0025】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1a】カソード及びアノードについての電圧パルスを図示している。
【図1b】カソード及びアノードについての電圧パルスを図示している。
【図2a】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2b】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2c】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2d】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2e】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2f】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2g】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2h】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図2i】本発明のさまざまな電極デザインの略図である。
【図3】複数のチップを用いた放出電極の1つの実施態様についての例を提供する。
【図4】セグメントに分かれたアッセンブリを有する放出電極の1つの実施態様についての例を提供する。
【図5】遠隔イオン発生を図示した本発明の1つの実施態様についての例を提供する。
【図6】本発明のイオン発生装置の1つの実施態様についての例を提供する。
【図7】本発明のイオン発生装置の1つの実施態様についての更なる例を提供する。
【図8】本発明の装置の1つの実施態様を用いた、[電圧]対[さまざまなカソード温度についての電流]を表すグラフを提供する。
【図9】本発明の装置の1つの実施態様を用いた、[放出電流]対[2つの電極間に印加したパルス電圧の周波数及び振幅]を示す。
【図10a】本発明のイオン発生装置の付加的な実施態様についての分解側面図を提供する。
【図10b】本発明のイオン発生装置の付加的な実施態様についてのアノードの詳細図を提供する。
【図10c】本発明のイオン発生装置の付加的な実施態様についてのカソードホルダーの詳細図を提供する。
【図10d】本発明のイオン発生装置の付加的な実施態様についてのカソードエミッターの詳細図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
負に帯電した水素イオンを照射することによって、少なくとも1つの部品及び/又は半田表面から金属酸化物を除去する方法及び装置が本明細書で開示される。ある実施態様においては、その照射は、リフロー及び半田付け処理の前及び/又はその間に行うことができる。負に帯電した水素イオンが反応して表面金属酸化物を還元する。本発明は、例えば、インナーリードボンディング及びリフロー半田付けに用いられるリフロー機械、又はアウターリードボンディングに用いられるウェーブ半田付け機械などの従来のリフロー及び半田付け設備を改良することによって利用することができる。本発明はまた、メッキ(即ち、印刷回路基板又は金属表面の一部を半田メッキして、以降の半田付けに対してそれらをより扱いやすくする)、表面洗浄、ろう付け、溶接、及びシリコンウェハ処理中に形成する酸化銅のような表面金属酸化物の除去など、しかしそれらに限定されない表面金属酸化物の除去が所望とされる他の処理に適用できる。本発明の方法及び装置を用いた金属酸化物の除去は、前述の処理又は有機フラックスを必要とせずに酸化物を除去することを望む任意の他の処理に等しく適用できる。
【0028】
本明細書で開示されるイオン発生装置は、例えば、フリップチップアッセンブリを含む表面実装部品のフラックスレス半田付けのような特定の実施態様に特に好適な場合がある。これらの実施態様においては、電子は部品を横切って貫通し、下方に蓄積することがある。というのも、部品は半導電性材料から構成される場合があるためである。部品の下に電子が蓄積することで、還元ガス中の負に帯電した活性種に反発することがあり、それによって酸化物除去の効率に変化をもたらす場合がある。これを改善するために、イオン発生装置の位置を部品の表面形状に応じて調節することができる。本明細書で開示されるイオン発生装置を用いることによって、ガス混合物中の負に帯電した活性種を、表面形状に関係なく、処理されるべき部品の表面上に均一に分布させることができ、表面の環境条件に対する制限なしに負に帯電した種を形成するための操作条件(例えば、温度、圧力及びガス濃度)の最適化を可能にすることができる。
【0029】
本明細書で用いられる“部品”という語は一般に、シリコン、二酸化ケイ素で被覆されたシリコン、アルミニウム−酸化アルミニウム、ヒ化ガリウム、セラミック、石英、銅、ガラス、エポキシ、又は電子デバイス内の使用に好適な任意の材料などの材料から構成された部品に関する。ある実施態様においては、部品はその表面の少なくとも1つの上に配置された半田を有する。例示的な半田組成物は、フラックスレスのスズ−銀、フラックスレスのスズ−銀−銅、フラックスレスのスズ−鉛、又はフラックスレスのスズ−銅を含むがそれらに限定されない。しかしながら、本発明の方法は、さまざまな異なる部品及び/又は半田組成物に好適である。
【0030】
理論に束縛されることを意図するものではないが、直流(DC)電圧などのエネルギー源が、遠隔イオン発生器内に収容される2つの電極のうち少なくとも一方に印加されると、それによって電位が生じ、負バイアス電極から、2つの電極間の気相から、又はそれらの組み合せから電子が発生し、この電子が、電界に沿って正バイアス電極の方へドリフトする。ある好ましい実施態様においては、酸化物を除去すべき部品及び/又は半田付けされた部品は、接地されるか又は正バイアスをかけられた基材上に配置され、遠隔イオン発生器出口の直ぐ近くに配置される。還元ガスと随意にキャリヤーガスとを含んで成るガス混合物を、遠隔イオン発生器内の電極によって作り出した電界に通す。電子ドリフトの間に、還元ガスの一部は電子付着によって負イオンを形成し、次いで、この負イオンがイオン発生器の出口を通って、少なくとも1つの部品上に付着又は吸着する。こうして、付着又は吸着した負帯電イオンが、従来のフラックスを必要とせずに、ベース金属及び/又は半田上に存在する酸化物を還元できる。ある好ましい実施態様においては、処理すべき表面上の活性種の吸着は、活性種と処理すべき表面との間の正反対の電荷によって促進される(例えば、ターゲットアッセンブリに正バイアスをかける)。
【0031】
還元ガスが水素を含んで成る実施態様においては、本発明の方法は以下のようにして行われると考えられる。
解離性付着: H2 + e' → H- + H (I)
放射性付着: e' + H → H- + hν (II)
(I)と(II)の組み合せ: 2e' + H2 → 2H- + hν (III)
酸化物還元:2H- + MO → M + H2O + 2e'(M=半田/ベース金属)
(IV)
これらの実施態様においては、本発明の電子付着法を用いた酸化物還元の活性化エネルギーは、分子状水素を使用する方法よりも低い。なぜなら、電子付着を用いた原子状水素イオンの形成は、分子状水素の結合破壊に関連するエネルギーを除いているからである。
【0032】
カソード、2つの電極間の気相、又はそれらの組み合せから電子を発生させるのに十分なエネルギーが、電極の少なくとも一方、好ましくはカソードに供給される。ある好ましい実施態様においては、エネルギー源は、交流(AC)又は直流(DC)電圧源などの電気エネルギー源であることができる。熱エネルギー源、電磁エネルギー源、又は光エネルギー源など、他のエネルギー源を単独で又は組み合せて使用することもできる。エネルギー源は、一定あるいはパルスであることもできる。本発明のある実施態様においては、カソードが第1電圧レベルで電圧源に接続され、アノードが第2レベルで電圧源に接続される。電圧レベルの差によって、電位のバイアスが作り出される。第1又は第2電圧レベルのうち一方は、カソード又はアノードの何れかが接地していることを示すゼロであることができる。
【0033】
電子付着により負に帯電したイオンを作り出すためには、大量の電子を生成することが必要である。この点について、電子は、陰極放出、ガス放電、又はそれらの組み合せなど、しかしそれらに限定されないさまざまな方法によって生成できる。これら電子生成法の中では、方法の選択は、主として生成電子のエネルギーレベル及び効率に依存している。還元ガスが水素を含んで成る実施態様については、4eVに近いエネルギーレベルを有する電子が好ましい場合がある。これらの実施態様においては、このような低エネルギーレベルの電子は、陰極放出及び/又はガス放電によって生成できる。そうして、生成した電子は、カソードから空間電荷を作り出すアノードへドリフトする。空間電荷は、還元ガスが少なくとも2つの電極を通過するときに、負に帯電したイオンを生成するための電子源を提供する。
【0034】
陰極放出による電子生成に関する実施態様については、これらの実施態様は、(本明細書で低温放出と称される)電界放出、(本明細書で高温放出と称される)熱放出、熱電界放出、光電子放出、及び電子又はイオンビーム放出を含むことができる。
【0035】
電界放出は、エネルギーバリヤーを克服して、カソード表面から電子を放出させるよう強度の十分高い電界をカソードとアノードの間で適用することを伴う。ある好ましい実施態様においては、DC電圧が、0.1〜50kV又は1〜30kVの電圧で大きな表面の湾曲を有するカソードとアノードの間に適用される。これらの実施態様においては、電極間の距離は、0.1〜30cm又は0.5〜5cmであることができる。
【0036】
他方で、熱放出は、高温によってカソードの電子を励磁し、カソード材料の金属結合から電子を分離することを伴う。ある好ましい実施態様においては、カソードの温度は、800〜3500℃又は800〜1500℃であることができる。カソードは、AC又はDC電流などのエネルギー源をカソードに通すことによる直接加熱;加熱部材、IR放射、ガス混合物をカソードの所望温度以上の温度に予熱することにより加熱される電気絶縁された高温表面とカソード表面とを接触させるような間接加熱;又はそれらの組み合せなど、しかしそれらに限定されないさまざまな方法によって高温にするか及び/又はその高温を維持することができる。
【0037】
熱電界放出は、電界と高温の両方を適用する電界放出法と熱放出法を混成したものである。それゆえ、熱電界放出は、純粋な電界放出及び純粋な熱放出に比べて、同量の電子を生成するのにより低い電界とより低いカソード温度を要求できる。熱電界放出は、放出表面上の汚染によって電子の放出が低下する傾向があること、及び放出表面の平坦性及び均一性に関する高い制限など、純粋な電界放出に関して直面する困難を最小限に抑えることができる。さらに熱電界放出によって、放出電極と気相の間で化学反応が起こる可能性が高いことなど、熱放出に関係した問題を回避することもできる。熱電界放出を用いる実施態様においては、カソードの温度は、周囲温度から3500℃又は150〜1500℃であることができる。これらの実施態様においては、電界は、0.01〜30kV又は0.1〜10kVであることができる。
【0038】
ある好ましい実施態様においては、熱放出又は熱電界放出のメカニズムが、リフロー又は半田付けプロセスにおいて電子の生成に用いられる。これらの実施態様においては、これらメカニズムの何れかで用いられる高温のカソードは、イオン発生器においてアノードとカソードの間を通過するガス混合物のための熱源としても作用することができる。ある実施態様においては、イオン発生器中のガス混合物の温度は、リフロー及び半田付けについてガスを加熱するのに必要とされる熱エネルギーを低減することができるように、リフロー及び半田付け温度又はその付近であることができる。他の実施態様においては、イオン発生器中のガス混合物の温度は、リフロー及び半田付けプロセスの温度よりも比較的高い場合がある。この実施態様においては、還元ガスとしてH2を用いる場合のようないくつかの場合において、イオン発生器内で電子付着プロセスを促進することができる。というのも、電子付着による負に帯電した水素イオンの形成が吸熱反応であるからである。イオン発生器出口での負に帯電したイオン性還元ガスの温度は、例えば、処理ガスを大量の炉頂ガスで希釈することによってリフロー及び半田付け温度まで低下させることができる。負に帯電したイオンが形成される限り、イオンは電荷のようなものによって互いに反発することができ、それにより低下した温度で再結合する傾向が低減される。
【0039】
本発明のある実施態様においては、電子の生成は、陰極放出法とコロナ放電法の組み合せによって達成される。これらの実施態様においては、DC電圧などのエネルギー源が2つの電極間で印加され、チップ付近でカソード(低温又は高温)とガス(コロナ放電)の両方から電子を生成することができる。電子付着によって負に帯電した水素イオンを形成する効率を増加させ、かつカソード表面上の正イオンの衝突を最小限に抑えることでカソードチップの寿命を向上させるために、コロナ放電はできる限り小さく抑えることが好ましい。
【0040】
上記陰極放出メカニズムのある好ましい実施態様においては、2つの電極にわたって印加された電圧は、一定又はパルスであることができる。電圧パルスの周波数は0〜100kHzである。図1a及び1bは、それぞれカソード及びアノードについての電圧パルスの図を与える。これらの実施態様においては、電子放出量を改善しかつ気相放電の傾向を低減するためには、一定電圧よりもパルス電圧が好ましい場合があると考えられる。
【0041】
ガス放電による電子の生成に関する実施態様について、これらの実施態様は、熱放電、光放電、並びにグロー放電、アーク放電、スパーク放電、及びコロナ放電を含むさまざまなアバランシェ放電を含むことができる。これらの実施態様においては、電子は気相イオン化によって生成される。気相イオン化のある実施態様においては、気相は還元ガス及び不活性ガスを含み、電圧源が2つの電極間で印加され、電子が2つの電極間で不活性ガスから生成し、次いで、アノードなどの正バイアス電極にドリフトする。この電子ドリフトの間に、これら電子のいくつかは、還元ガス分子に付着し、電子付着によって負に帯電したイオンを形成することができる。加えて、いくつかの正イオンもまた、気相イオン化によって生成され、次いで、カソードなどの負バイアス電極へドリフトして電極表面で中性化される。
【0042】
前述のように、陰極放出については、カソードとして作用することができる電極から電子が放出される。図2a〜2iについて言えば、電極は、例えば、同軸ケーブル2a、尖ったチップを備えたロッド、コーム若しくは複数の尖ったチップを備えたロッド2c、スクリーン若しくはワイヤーメッシュ2d、ルースコイル2e、ずらりと並んだコーム2f、同軸ケーブル若しくはフィラメントの束2g、その表面から突き出た鋭いチップを備えたロッド2h、又はぎざぎざのある表面を備えたプレート2iなど、さまざまな幾何学形状を有することができる。付加的な幾何学形状は、表面突起を備えたプレート若しくはロッド、巻き線若しくはフィラメントで包まれたロッド、同軸ケーブルのコイル等のような上記幾何学形状の組み合せを含むことができる。並直列又は交差グリッドに配置できる複数の電極を使用することができる。電界放出が関係する実施態様など、ある実施態様においては、カソードは、好ましくは、複数の鋭いチップなどの大きな表面の湾曲を有する幾何学形状から作製され、図3に示す幾何学形状のような電極表面の付近で電界を最大にする。図3で示すように、電極1は、その表面から出ている複数のチップ3とともに、電極表面上の溝内部にある一連の同軸ケーブル2を有する。
【0043】
カソードとして作用する電極材料は、比較的低い電子放出エネルギー又は仕事関数を有する導電材料から構成されるのが好ましい。この材料はまた、処理条件下で高い溶融点と比較的高い安定性を有することが好ましい。好適な材料の例は、金属、合金、半導体、及び導電性基材上に被覆又は堆積された酸化物を含む。更なる例は、タングステン、黒鉛、ニッケルクロム合金などの高温用合金、並びに導電性基材上に堆積されたBaO及びAl23などの金属酸化物を含むがそれらに限定されない。
【0044】
アノードとして作用する電極は、金属又はここに記載される他の材料の何れかのような導電材料から構成される。アノードは、本明細書に記載される幾何学形状の何れかのような、適用に応じたさまざまな異なる幾何学形状を有することができる。アノードは接地されるか、又はカソードに関して正バイアスを有する電圧レベルに接続される。アノードでの負に帯電したイオンの中性化を回避するために、アノードは、導電材料の一番上にセラミック又はガラス層などの絶縁層を有し、アノードでの負に帯電したイオンの中性化を防ぐことができる。
【0045】
他の実施態様においては、電子を生成する間、磁界を適用することによって、アノード表面への負に帯電したイオンの中性化を最小限に抑えることができる。この実施態様においては、例えば、イオン発生装置及び/又はアノード管の内側若しくは外側の何れかに、1つ若しくは複数の磁気コイル又は外部磁気源を提供することなどによって、磁界を作り出すことができる。1つ又は複数の磁気コイルが、アノード管の外側又は内側にあるかに関わらず、電界によって、電子を該管の外側に移動させることができ、磁界によって、該管の内側へ電子が移動するのを制限することができる。作り出される磁界の強さはさまざまであることができるが、一般には0.1〜5,000Wb/m2、又は500〜2,000Wb/m2ある。ある実施態様においては、より高い磁界によって、イオンの移動についてのらせん経路の半径を低減することができる。これらの実施態様においては、イオンのらせん経路の半径は、アノード管の半径よりも小さいことが必要な場合がある。
【0046】
熱電界放出に関する本発明のある実施態様においては、カソード又は放出電極は、図4に示される電極などのセグメントに分かれたアッセンブリを含んで成ることができる。この点については、放出電極のコア10は、高い電気抵抗を有する金属から作製でき、コア10から出る複数のチップ11を有することができる。チップ11は、本明細書で開示される材料の何れかのような比較的低い電子放出エネルギー又は仕事関数を有する導電材料から作製できる。コアは、AC又はDC電流などのエネルギー源(図示せず)をコア10に直接流して加熱することができる。熱伝導によって、コアからチップ11へ熱を伝達する。高温のコアは、エンクロージャーの外部に露出した複数のチップ11を有する絶縁材料12内に封入でき、次いで、該複数のチップ11が支持フレームに挿入され、それによって、示されるようにセグメントに分かれたアッセンブリが形成される。セグメントに分かれたアッセンブリは、操作中のコアの熱膨張を可能にすることができる。この配置においては、カソードとアノードの間に電位を印加することによって、高温のチップ11から電子を発生させることができる。
【0047】
熱電界放出に関する本発明の別の好ましい実施態様においては、放出電極の温度は、間接加熱によって上昇させることができる。これは、放出電極のコアとして加熱カートリッジを使用することで達成できる。加熱カートリッジの表面は、該カートリッジ内部の加熱部材から電気絶縁した金属などの導電材料から構成できる。電子放出を促進するために、複数の分散された放出チップを、加熱カートリッジの表面上に取り付けることができる。カートリッジは、例えば、AC又はDC電流などのエネルギー源をカートリッジ内部の加熱部材に流して加熱することができる。第2電極に関連するカートリッジ表面に負電圧バイアスを印加することによって、カートリッジの分散チップから電子を放出できる。この配置において電圧バイアスを作り出すために、第2電極は、カートリッジに負バイアスをかけることができるよう接地することができるか、あるいはカートリッジは、第2電極に正バイアスをかけることができるよう接地することができる。いくつかの実施態様においては、後者の場合が、一方が加熱部材に沿ったAC又はDC電流であり、もう一方がカートリッジ表面と第2電極との間の高い電圧バイアスである2つの電気回路間の潜在的な干渉を排除するのに好ましい場合がある。これらの実施態様においては、高温のカートリッジ電極はまた、リフロー及び半田付け処理に必要とされる温度を達成するためのガス混合物の熱源としても作用することができる。
【0048】
前述のように、還元ガスを含んで成るガス混合物が、少なくとも2つの電極を収容する遠隔イオン発生器に通される。ガス混合物中に含有される還元ガスは、以下のカテゴリー、即ち、1)本質的に還元体のガス、2)金属酸化物との反応によりガス状酸化物を形成する活性種を生成することができるガス、又は3)金属酸化物との反応により液状若しくは水性酸化物を形成する活性種を生成することができるガスのうちの1つ又は複数に分類できる。
【0049】
ガスの第1カテゴリー、即ち、本質的に還元体のガスは、除去されるべき酸化物に対して還元体として熱力学的に作用する任意のガスを含む。本質的に還元体のガスの例は、H2、CO、SiH4、Si26、ギ酸、例えば、メタノール、エタノール等のようなアルコール、及び以下の化学式(III)を有するいくつかの酸蒸気を含む。
【化1】

化学式(III)において、置換基Rは、アルキル基、置換アルキル基、アリール若しくは置換アリール基であることができる。本明細書で用いられる“アルキル”という語は、好ましくは1〜20の炭素原子、又はより好ましくは1〜10の炭素原子を含有する直鎖、分枝又は環状のアルキル基を含む。これは、ハロアルキル、アルカリール又はアラルキルなどの他の基に含有されるアルキル部分にも適用する。“置換アルキル”という語は、O、N、S若しくはハロゲン原子などのヘテロ原子;OCH3;OR(RはC1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール);C1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール;NO2;SO3R(RはC1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール);又はNR2(RはH、C1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール)を含む置換基を有するアルキル部分に適用する。本明細書で用いられる“ハロゲン”という語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。本明細書で用いられる“アリール”という語は、芳香族の性質を有する6〜12員の炭素環を含む。本明細書で用いられる“置換アリール”という語は、O、N、S若しくはハロゲン原子などのヘテロ原子;OCH3;OR(RはC1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール);C1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール;NO2;SO3R(RはC1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール);又はNR2(RはH、C1-10のアルキル若しくはC6-10のアリール)を含む置換基を有するアリール環を含む。ある好ましい実施態様においては、ガス混合物は水素を含有する。
【0050】
還元ガスの第2カテゴリーは、本質的に還元性ではないが、ガス分子上における電子の解離性付着によって、例えば、H、C、S、H’、C’及びS’などの活性種を生成でき、かつ該活性種と除去されるべき金属酸化物との反応によってガス状酸化物を形成できる任意のガスを含む。このタイプのガスの例は、NH3、H2S、例えば、CH4、C24、化学式(III)を有する酸蒸気、及び以下の化学式(IV)を有する有機蒸気など、しかしそれらに限定されないC1〜C10の炭化水素を含む。
【化2】

化学式(III)及び(IV)において、置換基Rは、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基であることができる。
【0051】
ガスの第3カテゴリーは、本質的に還元性ではないが、ガス分子上における電子の解離性付着によって、例えば、F、Cl、F’及びCl’などの活性種を形成でき、かつ該活性種と金属酸化物との反応によって液状又は水性酸化物を形成できる任意のガスを含む。このタイプのガスの例は、CF4、SF6、CF2Cl2、HCl、BF3、WF6、UF6、SiF3、NF3、CClF3及びHFなどのガスを含有するフッ素及び塩素を含む。
【0052】
還元ガスの上記カテゴリーのうち1つ又は複数を含むことに加えて、ガス混合物は、1つ又は複数のキャリヤーガスをさらに含有できる。キャリヤーガスは、例えば、還元ガスを希釈すること、若しくは反応性ガスを希釈すること、又は衝突の安定化を与えることに使用できる。ガス混合物中で使用されるキャリヤーガスは、ガス混合物中の還元ガスよりも小さい電子親和力を有する任意のガスであることができる。ある好ましい実施態様においては、キャリヤーガスは不活性ガスである。好適な不活性ガスの例は、N2、Ar、He、Ne、Kr、Xe及びRnを含むがそれらに限定されない。
【0053】
ある好ましい実施態様においては、ガス混合物は、その比較的低いコストと排ガスの放出が環境にやさしいことにより、還元ガスとしての水素とキャリヤーガスとしての窒素を含んで成る。これらの実施態様においては、ガス混合物は、0.1〜100vol%、好ましくは1〜50vol%、又はより好ましくは0.1〜4vol%の水素を含んで成る。4%未満の水素量が好ましく、ガス混合物が不燃性になる。
【0054】
ある実施態様においては、ガス混合物は、活性種を形成するために、周囲温度から3500℃、又は150〜1500℃の温度でイオン発生器に通される。イオン発生器に通した後、次いで、ガス混合物は、表面の脱酸素のために、リフロー及び半田付け温度などの処理温度まで下げることができる。イオン発生器の圧力は、1〜20気圧又は1〜5気圧であることができる。イオン発生器出口での負に帯電したイオン性還元ガスの圧力は、例えば、流量制限オリフィス、背圧調整器、流量調節計、又は同様の手段を用いて炉又は処理領域に入る前に1気圧まで下げることができる。
【0055】
前述のように、酸化物を除去すべき部品若しくは被加工物、及び/又は半田付けされた部品若しくは被加工物は、イオン発生器のガス出口の直ぐ近くに配置されるのが好ましい。出口と部品の上面との距離は、0.1〜30cm又は0.5〜5cmであることができる。本発明のある好ましい実施態様においては、部品を基材の上に置いてターゲットアッセンブリを与えることができる。基材は接地されるか、あるいは正バイアス電位を有することができる。他の実施態様においては、部品は、イオン発生器の出口と、接地されるか又は正バイアス電位を有する基材との間に配置できる。
【0056】
ある実施態様においては、遠隔イオン発生器及び/又は部品(若しくはターゲットアッセンブリ)は移動することができる。この点については、遠隔イオン発生器が固定位置にあることができて、部品が移動できるか、遠隔イオン発生器が移動できて、部品が固定位置にあることができるか、又はイオン発生器と部品の両方が移動する。移動は、垂直方向、水平方向、半径方向又は円弧に沿っていることができる。
【0057】
図5は、例えば、リフロー半田付けにおいて用いられる本発明の1つの実施態様の図を与える。装置は、乾燥器/炉20の中心軸に沿って異なる区画に配置された加熱/冷却領域を典型的に有する乾燥器又は炉20を含んで成る。少なくとも2つの電極(図示せず)を有する遠隔イオン発生器21が、乾燥器/炉20の内部に挿入される。イオン発生器21は、ガス入口22とガス出口23をさらに有する。金属などの導電材料から作製した接地されている可動ベルト24は、プリント回路基板上の電子デバイスなどの1つ又は複数の部品25を運び、これらの部品は、部品の1つ又は複数の上に前もってプリントされた半田ペーストにより互いに一時的に接続され、乾燥器/炉20並びに加熱及び冷却領域を通過する。窒素及び水素還元ガスから構成されるガス混合物26は、ガス入口22を通してイオン発生器21に導入され、エネルギー源(図示せず)が、その中に収容されたカソード及びアノードとして作用する2つの電極のうち少なくとも一方に適用される。ガス混合物26は、カソードの部位で生成した電子によるカソードとアノード間の電荷に反応し、還元ガス、好ましくは水素に対して、負に帯電したイオン性還元ガス27となってガス出口23を通過する。ガス出口23は部品25の直ぐ近くにある。負に帯電したイオン性還元ガス27は、部品及び半田の表面上に存在する任意の金属酸化物を還元し、それによって半田接合を相当に強化する。半田ペーストは、乾燥器/炉20の加熱領域で溶融し、部品の表面を濡らし、乾燥器/炉20の冷却領域で再び凝固して半田付け製品を形成する。これによって、フラックスが全く必要とされず、酸化物又はフラックス残留物により生じる半田欠陥が回避される。
【0058】
図6は、本発明の遠隔イオン発生装置30の1つの実施態様についての例を与える。イオン発生器30は、少なくとも2つの電極、即ち、コイルの幾何学形状を有するカソード31と、装置の壁を含んで成る金属アノード32とを含んで成る。カソード31及びアノード32は、外部のエネルギー源(図示せず)に接続される。金属アノード32は、示されるように、その表面上に配置されたセラミックライナー33をさらに含んで成る。イオン発生器30は、ガス入口34及びガス出口35をさらに有する。ガス入口34とガス出口35の幾何学形状は、イオン発生器30を通過するガス混合物(図示せず)の流速に作用するよう、互いに関してさまざまであることができる。還元ガスと随意にはキャリヤーガスとを含有するガス混合物(図示せず)が、イオン発生器30に通される。DC電圧などのエネルギー源(図示せず)が、カソード31とアノード32に通され、それにより電界を作り出し、カソード31に電子を発生させる。カソード31から発生した電子は、電界の方向にドリフトする。電子は還元ガスの少なくとも一部に付着し、それによって、負に帯電した還元性イオンガス(図示せず)が生成される。負に帯電した還元性イオンガスは、ガス出口35を通って部品(図示せず)の表面酸化物を還元する。
【0059】
図7は、本発明の遠隔イオン発生器の別の実施態様についての図を与える。イオン発生器40は、2つの同心円チャンバー43及び44に流れる2つのガス入口41及び42を有し、水素などの濃縮還元ガスを処理するための安全性を確実にする。濃縮水素ガスが、ガス入口42を通ってメインチャンバー43に入る。メインチャンバー43は、入口41を介して入る窒素などのキャリヤーガスによってパージされる二次チャンバー44で囲まれている。濃縮水素流の圧力は、二次チャンバー44の窒素圧力よりも高くなるように維持され、濃縮水素流と窒素流のガス流量比は、2つの流れの混合物における合計水素濃度が4vol%以下になるレベルに調節される。
【0060】
図10は、磁気コイル51をさらに含むイオン発生装置50の例を与える。装置50は、磁界源として磁気コイル51を示しているが、コイルの他に磁界を作り出す他の供給源がここで考えられると予想される。磁気コイル51は、示されるようにアノード54の内部体積中に存在できるか、アノード54の外部若しくはアノード54上に存在できるか、又は他のさまざまな配置で存在できる。イオン発生器50は、少なくとも2つの電極、即ち、(図2cに示す電極配列のような)“くし形”のカソードエミッター52を有し、かつカソードホルダー53内に配置されたカソードアッセンブリと、装置の壁を含んで成るアノード54とを含んで成る。カソードエミッター52は、本明細書で開示される材料の何れかのような導電材料から構成される。カソードホルダー53は絶縁材料から構成される。しかしながら、他の実施態様においては、カソードホルダー53は、導電材料、絶縁材料、半導体材料、又はそれらの組み合せからから構成できる。ある実施態様においては、カソードエミッターのチップ58は、アノード54の壁にある複数の穿孔を通してアノード54の内部体積に及ぶことができる。あるいはまた、チップ58は、カソードエミッターとアノード54との間の領域など、アノード54の内部体積の外に存在できる。
【0061】
カソードエミッター52、アノード54、及び磁気コイル51は、示されるように外部エネルギー源に接続される。ある実施態様においては、金属アノード54は、導電材料の1つ又は複数の層、導電材料で少なくとも部分的に被覆された絶縁材料、又は他のさまざまな構成から構成できる。イオン発生器50は、ガス入口56及びガス出口57をさらに有する。ガス入口56及びガス出口57の幾何学形状は、イオン発生器50を通過するガス混合物(図示せず)の流速に作用するよう、互いに関してさまざまであることができる。還元ガスと随意にはキャリヤーガスとを含有するガス混合物(図示せず)が、イオン発生器50に通される。DC電圧などのエネルギー源が、カソードエミッター52とアノード54の間に印加され、それにより電界を作り出し、カソードエミッター52に電子を発生させる。コイル51又は他の磁気源に電流を流すことで発生する磁界によって、イオン発生器50からガス出口57への電子の誘導を補助することができる。アノード54上の穿孔55のサイズ及び数、磁気コイルに関する巻き数、カソードエミッター52に関する導電チップ58の外形、数、及び角度、カソードエミッター52のチップとアノード54の表面との間のギャップ、2つの電極間の電圧、磁気コイル51の電流、及びアノード54の幾何学形状など、しかしそれらに限定されないパラメータは、さまざまに変化して生成される電子の量を達成することができる。
【0062】
本明細書に開示される方法は、例えば、表面洗浄、メッキ、ろう付け、溶接、及び半田バンプ付きウェハのリフローなど、半田付けの他に電子アッセンブリの複数の分野で使用できる。1つの実施態様においては、本発明は、2003年4月28日付け出願の同時係属の米国出願第10/425,405号明細書で提供されている方法のような半田バンプ付きウェハのリフローに使用され、この特許出願は本発明の譲受人に譲渡されている。1つの特定の実施態様においては、この方法は、シリコンウェハ処理の間に形成した酸化銅など、金属の表面酸化物を還元するのに使用できる。このような酸化物は、ウェハ上にマイクロエレクトロニクスデバイスを形成するのに用いられるさまざまな湿潤処理工程、例えば、化学機械平坦化の結果として形成される場合がある。これらの表面酸化物は、デバイスの収率及びデバイスの信頼性を低下させる。この方法によって、水性還元剤の使用を必要としない十分に乾燥した環境にやさしい方法で表面酸化物を除去することができる。さらには、この方法は比較的低い温度で実施できるので、処理をする間、デバイスのサーマルバジェットに相当な影響を及ぼすことはない。対照的に、より高い温度では、ドーパント及び酸化物の拡散が生じることにより、デバイスの収率及び信頼性が低下する傾向にあり、それによってデバイスの性能が低下する。この方法は単一ウェハ上で実施することもできるので、他の単一ウェハプロセスと統合することができ、それにより他の製作工程とのより良好な適合性を提供する。
【0063】
本発明は、以下の例を参照してより詳細に説明されるが、本発明はそれらに限定されるとは考えられないと解されるべきである。
【実施例】
【0064】
[例1]
鋭いチップを備えた下向きの金属ロッド(カソードの幾何学形状については図2bを参照)を炉の中央付近に挿入したラボスケールの管状炉を用いて第1実験を行った。用いた試料は、接地した銅プレート(アノード)上のフラックスレスのスズ−鉛半田予備成形物(溶融点183℃)であり、それを炉の内部に装填し、N2中5%H2のガス流下で250℃まで加熱した。試料温度が平衡になると、陰極(カソード)と接地試料(アノード)の間にDC電圧を印加し、電流0.3mAで以って約2kVまで徐々に増加させた。2つの電極間の距離は約1cmであった。圧力は周囲の大気圧であった。
【0065】
半田は銅表面上で十分に濡れていることが見出された。電圧を印加せずに、銅表面上のフラックスレス半田の良好な濡れを達成することは、このような低温では、純粋なH2でさえも決してできない。なぜなら、スズに基づいた半田上のスズ酸化物を除去するのに効果的な純粋H2の温度は350℃よりも高いからである。それゆえ、この結果は、電子付着法がH2のフラックスレス半田付けを促進するのに効果的であることを立証している。
【0066】
負に帯電した水素イオンは、天然の水素ガス分子よりもはるかに反応性があるということが小規模の試験でわかった。それゆえ、この新しいアプローチを使用することによって、半田及びベース金属上の酸化物の水素還元を大いに促進することができる。周囲圧力下における水素のフラックスレス半田付け(N2中5vol%H2)の効果的な温度は、通常の半田付け温度範囲(<250℃)に低減される。
【0067】
[例2]
例1と同じ設定条件を用いた電界放出メカニズムを使用することにより、電子付着支援の水素フラックスレス半田付けについて、いくつかのカソード材料を調べた。調査の結果を表1に与える。
【0068】
表1に示すように、最良の結果は、Ni/Crカソードを用いることによって得られた。それは最も高い溶融効率を与え、したがって最短の濡れ時間が得られた。可能性のある理由は、Ni/Crカソードが、比較的より多量の電子を生成し、他のカソード材料に比べて好適な電子のエネルギーレベルを有することである。
【0069】
【表1】

【0070】
[例3]
遠隔イオン発生器を用いた電子付着支援のH2フラックスレス半田付けの実施可能性を実証するために、遠隔イオン発生器が、鋭いチップを備えた下向きのNi/Crカソードロッドを用いて作製されている場合で実験を行った。アノードは、セラミック層によって覆われた銅プレートから構成された。2つの電極間に適用した電界は約2KV/cmであった。遠隔イオン発生器は、試験試料の前に、即ち、言い換えると炉のガス入口近くにセットした。遠隔イオン発生器と試験試料との間の距離は約2〜4cmであった。銅プレート上のSn/Pb半田予備成形物(溶融点183℃)から成る試験試料を接地した。遠隔イオン発生器を装填した炉と試験試料を、H2とN2のガス混合物(約5vol%H2)でパージし加熱した場合に、約220℃で、半田が銅上で濡れ始めることが見出された。
【0071】
[例4]
電界とともに高温のカソードを使用(熱電界放出)して電子放出の効率を上げるという考えは、垂直に配向した管状炉の中心に垂らしたNi/Crの同軸ケーブル(直径0.004インチ)を用いて実験的に実証された。このケーブルをAC電力によって加熱し、DC電力源の負極側に接続して高温のカソードを与えた。同じ炉において、さらにまた、接地した金属プレートを高温のケーブルに平行に垂らしてアノードを与えた。アノードとカソードの間のギャップは1.43cmであった。カソードの温度は、カソード表面と接触している熱電対を用いて、室温又は周囲温度から650℃のさまざまな温度で測定した。実験の間、窒素流を炉中で維持して、高温のカソードから電子を発生させた。
【0072】
2つの電極間に印加したDC電圧の関数として、異なるカソード温度での放出電流を図8に与える。図8は、カソードの温度が周囲温度から200℃よりも高く上昇すると、カソードの放出電流が相当に増加することを示している。放出電流の最も大きい増加は400℃未満で起こった。
【0073】
[例5]
本例は、電子を生成するための熱電界放出法の有効性を調べるために行った。その表面から突き出た複数の1mm長さに機械加工されたチップを有する直径3mmの黒鉛ロッドをカソードとして作用させ、それは図2hに示したものと同様の幾何学形状であった。突き出た機械加工のチップのそれぞれは、25度の先端角であった。黒鉛ロッドを5%H2及び95%N2のガス混合物中で、AC電力源を用いた抵抗加熱により約400〜500℃に加熱した。黒鉛カソードと、アノードとして作用し、該黒鉛カソードとの間に1.5cmのギャップを有する銅プレートとの間で5KVのDC電圧源を印加した。黒鉛ロッド上のチップすべてが明るくなり、それによって黒鉛ロッド上の分散チップから一様に電子を生成できることが示された。黒鉛ロッドを加熱しなければ、カソードからの電子生成、又はチップの1つとアノードプレートとの間のアーク発生はなかった。このことは、多数のチップを有するカソードの使用と上昇した温度との組み合せ、即ち、熱電界放出法が、統合された放出システムから一様な電子生成を得るのに効果的であることを実証している。
【0074】
[例6]
本例は、図4に図示する電極のような2枚の機械加工したAl23耐火性プレートの間で、水平に固定した直径0.04インチのニッケル−クロム合金の電熱線を用いて行った。それぞれがワイヤーの一方の端部に鋭いチップ(12.5度)を有する一連の5本のニッケル−クロム合金放出用ワイヤーが、ニッケル−クロムの電熱線からまっすぐ突き出ており、2枚の耐火性プレート間に垂直に配置された。ニッケル−クロムの電熱線及びチップを、5%H2及び95%N2のガス混合物中でAC電力源を用いて約870℃に加熱した。カソードと、アノードとして作用し、2つの電極間に6mmのギャップを有する銅プレートとの間で2.6KVのDC電圧を印加した。5つのチップすべてが明るくなり、合計の電流放出は2.4mAに達した。ワイヤーを加熱しなければ、カソードからの電子生成、又はチップの1つとアノードプレートとの間のアーク発生はなかった。例5と同様に、例6は、熱電界放出が一様な電子生成を提供することを実証している。さらには、カソードがより高い温度であるために、それはまた、所与の電位で電子生成の量を増大させる。
【0075】
[例7]
本例は、高温の電極が間接加熱によって達成され、かつ2つの電極間に印加される電圧がパルスである表面上に多数のチップを備えた高温の放出電極の性能を実証した。放出電極は、そのコアとして加熱カートリッジを有していた。カートリッジのエンクロージャーは、エンクロージャー内の加熱部材で電気絶縁されたステンレス鋼から作製されている。それぞれが互いから90度の角度で伸びた2つの鋭いチップ(先端角12.5度)を有する6本のニッケル/クロムワイヤーを、図3に示すようなカートリッジ表面に分布した溝に挿入した。5%H2及び95%N2を含有する雰囲気中で、加熱部材にAC電流を流すことによってカートリッジを800℃の温度に加熱した。放出電極の表面と接地した銅電極との間にパルスのDC電圧源を印加した。2つの電極間のギャップは約1cmである。
【0076】
図9は、電圧パルスの振幅及び周波数が増加した場合に、放出電流が増加することを示している。
【0077】
本発明は、詳細にかつこれらの例を参照して説明されたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更及び改良を本発明において行うことができるということは当業者にとって明らかであろう。
【符号の説明】
【0078】
20 乾燥器/炉
21 遠隔イオン発生器
22 ガス入口
23 ガス出口
24 可動ベルト
25 部品
26 ガス混合物
27 イオン性還元ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの部品表面から金属酸化物を除去する方法であって、
基材に接続された該少なくとも1つの部品を提供して、該基材が接地電位又は陽電位から成る群より選択された少なくとも1つの電位を有するターゲットアッセンブリを形成すること;
還元ガスを含んで成るガス混合物を、第1及び第2電極を含んで成るイオン発生器に通過させること;
該還元ガスの少なくとも一部に付着する電子を発生させて、負に帯電した還元ガスを形成するのに十分な電圧を該第1及び該第2電極の少なくとも一方に供給すること(供給工程);並びに
該ターゲットアッセンブリを該負に帯電した還元ガスと接触させて、該少なくとも1つの部品上の該金属酸化物を還元すること
を含んで成る、少なくとも1つの部品表面から金属酸化物を除去する方法。
【請求項2】
前記イオン発生器が、ガス入口と、該ガス入口と流体が連絡しているガス出口とをさらに含んで成り、前記第2電極が、該ガス入口と該ガス出口の間に配置された、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン発生器が、前記ガス入口と前記ガス出口の間に配置された磁気コイルをさらに含んで成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁気コイルが、0.1〜5,000Wb/m2の磁界を作り出す、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1電極が、前記第2電極と比べて陽電位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1電極が、その表面の少なくとも一部の上に配置された絶縁材料を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記還元ガスが、H2、CO、SiH4、Si26、CF4、SF6、CF2Cl2、HCl、BF3、WF6、UF6、SiF3、NF3、CClF3、HF、NH3、H2S、直鎖、分枝又は環状のC1〜C10炭化水素、ギ酸、アルコール、以下の化学式(III)を有する酸蒸気、即ち、
【化1】

以下の化学式(IV)を有する有機蒸気、即ち、
【化2】

及びそれらの混合物(化学式III及びIV中の置換基Rは、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基である)から成る群より選択された、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス混合物が0.1〜100vol%の水素を含んで成る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス混合物が0.1〜4vol%の水素を含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス混合物がキャリヤーガスをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリヤーガスが、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン及びそれらの混合物から成る群より選択された、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリヤーガスが窒素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電圧が0.01〜50kVである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記電圧が0.1〜30kVである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2電極間の距離が0.1〜30cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び第2電極間の距離が0.5〜5cmである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電圧がパルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記電圧パルスの周波数が0〜100kHzである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1電極が接地された、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第2電極が接地された、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記電子が、陰極放出、ガス放電、又はそれらの組み合せから成る群より選択された少なくとも1つの方法によって前記供給工程で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記電子が陰極放出によって生成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記陰極放出法が、電界放出、熱放出、熱電界放出、光電子放出、及び電子ビーム放出から成る群より選択された少なくとも1つの方法である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記陰極放出法が電界放出である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの表面上に半田及び金属酸化物を含んで成る少なくとも1つの部品をフラックスレス半田付けする方法であって、
基材が接地電位又は陽電位から成る群より選択された少なくとも1つの電位を有するターゲットアッセンブリとして、該基材に接続される少なくとも1つの部品を提供すること;
還元ガスを含んで成るガス混合物を、ガス入口、該ガス入口と流体が連絡しているガス出口、アノード、カソード、及び該ガス入口と該ターゲットアッセンブリに近い該ガス出口との間に配置された磁気コイルを含んで成るイオン発生器に通過させること;
該カソード及び該アノードのうち少なくとも一方にエネルギーを供給して、該イオン発生器を通過する該還元ガスの少なくとも一部に付着する電子を発生させ、それによって負に帯電した還元ガスを該ガス出口で形成すること(供給工程);
該磁気コイルにエネルギーを供給して、該負に帯電した還元ガスの近くに磁界を与えること;並びに
該ターゲットアッセンブリを該負に帯電した還元ガスと接触させて、該少なくとも1つの部品の該少なくとも1つの表面上の該金属酸化物を還元すること
を含んで成る、少なくとも1つの表面上に半田及び金属酸化物を含んで成る少なくとも1つの部品をフラックスレス半田付けする方法。
【請求項26】
前記アノードが、その表面の少なくとも一部の上に配置された絶縁材料を含んで成る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記イオン発生器中の前記ガス混合物の温度が25℃〜3,500℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記イオン発生器中の前記ガス混合物の温度が150℃〜1,500℃である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記カソードの温度が25℃〜3,500℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記カソードの温度が150℃〜1,500℃である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記供給工程のエネルギーが、電気エネルギー源、電磁エネルギー源、熱エネルギー源、光エネルギー源、及びそれらの組み合せから成る群より選択された少なくとも1つの供給源である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記エネルギーが前記カソードに適用される、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記イオン発生器内の圧力が1〜20気圧である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記イオン発生器内の圧力が1〜5気圧である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記カソードが、黄銅、ステンレス鋼、銅、ニッケルクロム、アルミニウム、タングステン、黒鉛、金属基材上に堆積された金属酸化物、及びそれらの混合物から成る群より選択された材料から構成される、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記カソードがニッケルクロムから構成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記カソードが、ワイヤー、コイル、スクリーン、ロッド、鋭いチップを備えたロッド、鋭いチップを備えたずらりと並んだロッド、ワイヤーから構成されたブラシ、その表面の少なくとも1つから出た突出部を有するプレート、その表面から出た突出部を有するロッド、及びそれら2種以上から成る群より選択された幾何学形状を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記部品と前記イオン発生器の出口との間の距離が0.1〜30cmである、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記部品と前記イオン発生器の出口との間の距離が0.5〜5cmである、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
遠隔イオン発生器が移動する、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記ターゲットアッセンブリが移動する、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
遠隔イオン発生器が移動する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
リフロー半田付け、ウェーブ半田付け、ウェハバンピング、メッキ、ろう付け、溶接、表面洗浄、薄膜の脱酸素、及びそれら2種以上より成る群からの少なくとも1つの処理で使用される、請求項25に記載の方法。
【請求項44】
負に帯電したイオン性還元ガスの発生装置であって、
その少なくとも一部が、第1電圧レベルに接続されたアノードを含んで成る内部中空を画定するエンクロージャーと;
ガス入口、及び該内部中空に流体が連絡しているガス出口と;
該内部中空に存在し、かつ該ガス入口と該ガス出口の間に配置され、該第1電圧レベルに関して負バイアスを有する第2電圧レベルに接続されたカソードと
を含んで成る、負に帯電したイオン性還元ガスの発生装置。
【請求項45】
前記内部中空の内側に存在する磁気コイルをさらに含んで成り、該磁気コイルがエネルギー源に接続された、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記内部中空の外側に存在する磁気コイルをさらに含んで成り、該磁気コイルがエネルギー源に接続された、請求項44に記載の装置。
【請求項47】
前記アノードが、その表面の少なくとも一部に配置された絶縁材料を有する、請求項44に記載の装置。
【請求項48】
前記ガス出口の開口が前記ガス入口の開口よりも小さい、請求項44に記載の装置。
【請求項49】
前記ガス出口が、流量制限開口、背圧調整器、流量調節計、及びそれら2種以上から成る群より選択された少なくとも1つを含んで成る、請求項44に記載の装置。
【請求項50】
負に帯電したイオン性還元ガスの発生装置であって、
電位のバイアスがその電極間で印加される少なくとも2つの電極と;還元ガスを受け入れるための第1ガス入口と;該負に帯電したイオン性還元ガスを放出するためのガス出口とを含んで成る、第1チャンバー;並びに
該第1チャンバーを封入し、かつキャリヤーガスを受け入れるための第2ガス入口を含んで成り、該第2ガス入口が該第1チャンバーと流体連絡し、該還元ガス及び該キャリヤーガスが該第1チャンバー内でガス混合物を形成する、第2チャンバー
を含んで成る、負に帯電したイオン性還元ガスの発生装置。
【請求項51】
前記ガス混合物中の還元ガス濃度が約4vol%以下である、請求項50に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【公開番号】特開2010−43357(P2010−43357A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−199943(P2009−199943)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【分割の表示】特願2004−134263(P2004−134263)の分割
【原出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】