説明

電子内視鏡装置

【課題】電子内視鏡装置の動作状態に関らず、観察画像に色反転を生じさせない。
【解決手段】プロセッサのプロセッサ側信号処理回路28において、色変換回路34、判別回路36、データ変換回路38を設ける。色変換回路34において、R、G、Bのデジタルコンポーネント映像信号がY、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント映像信号に変換する。判別回路36において、色変換回路34を通ったダミー青(B)信号が色反転しているか否かを判別する。そして、色反転が生じている場合、データ変換回路38において、Y、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント映像信号のうち、色差色成分のU、V信号のデータ配列順を入れ替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を有するビデオスコープを備えた電子内視鏡装置に関し、特に、モニタに観察画像を表示するための映像信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置では、ビデオスコープ先端にCCD等の撮像素子が設けられており、ビデオスコープが胃など器官内に挿入されると、観察部位に応じた画像信号が撮像素子から読み出される。読み出された画像信号は、ビデオスコープに接続されたプロセッサへ送信され、プロセッサでは画像信号に基づいて映像信号が生成される。映像信号としては、アナログ映像信号とともにデジタル映像信号が生成され、Y、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント映像信号が生成される。デジタルコンポーネント映像信号は、シリアル/パラレルデータとしてコンピュータなど外部装置へ送信される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−57309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
デジタルの赤(R)、緑(G)、青(B)の映像信号からY、U、Vの輝度、色差映像信号に変換する場合、電子内視鏡装置の電源特性、スコープ接続動作に起因して、映像信号変換処理時の同期信号に対してクロック発振回路から出力されるクロックパルスの位相が反転する場合がある。クロックパルスの位相反転が生じた場合、プロセッサから出力されるデジタルコンポーネント信号の位相が反転するため、観察画像が色反転した状態で表示される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電子内視鏡装置は、撮像素子を有するビデオスコープが接続される電子内視鏡装置のプロセッサであって、撮像素子から読み出される画像信号に基づいてデジタルコンポーネント映像信号を生成する信号処理手段と、デジタルコンポーネント映像信号に関して色反転が生じているか否かを判別する色反転判別手段と、色反転している場合、色反転を解消させるように、デジタルコンポーネント映像信号のうち色反転に応じた色成分信号のデータを入れ替える、すなわち反転させる色相修正手段とを備えたことを特徴とする。
【0005】
例えば、信号処理手段は、画像信号からデジタルの赤(R)、緑(G)、青(B)映像信号を生成するとともに、R、G、Bコンポーネント映像信号を輝度、色差のY、U、Vコンポーネント映像信号に変換する。この場合、色相修正手段は、色反転が生じた場合、U、V色成分信号のデータ配列順を入れ替える。
【0006】
例えば、色反転判別手段が、色反転検出用信号の色相が反転しているか否かを判別すればよい。例えば、色反転判別手段が、色反転検出用信号をY、U、Vコンポーネント映像信号の一ライン分の映像データ一式の先頭位置に挿入し、色相修正手段が、色反転検出用信号の色相が反転している場合、その後に続く映像データを反転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子内視鏡装置の動作状態に関らず、観察画像に色反転が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
【0010】
電子内視鏡装置は、CCD54を有するビデオスコープ50と、CCD54から読み出される画像信号を処理するプロセッサ10とを備える。ビデオスコープ50はプロセッサ10に着脱自在に接続され、また、被写体像を表示するモニタ32およびコンピュータ100がプロセッサ10に接続される。
【0011】
ランプ点灯スイッチ(図示せず)がONになると、ランプ制御部11からランプ12へ電源が供給されてランプ12が点灯する。ランプ12から放射された光は、集光レンズ(図示せず)、絞り14を介してビデオスコープ50内に設けられたライトガイド51の入射端51Aに入射する。ライトガイド51は、ランプ12から放射される光をビデオスコープ50の先端側へ伝達する光ファイバー束であり、ライトガイド51を通った光は出射端51Bから出射すると、拡散レンズである配光レンズ(図示せず)を介して観察部位に光が照射する。
【0012】
観察部位において反射した光は対物レンズ(図示せず)介してCCD54に到達し、観察部位の像がCCD54の受光面に形成される。本実施形態では、カラー撮像方式として単板同時式が適用されており、CCDの受光面上にはイエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)の色要素が市松状に並べられた補色カラーフィルタ(図示せず)が受光面の各画素に対応するよう配置されている。
【0013】
CCD54では、補色カラーフィルタを通る色に応じた被写体像の画像信号が光電変換により発生し、所定時間間隔ごとに1フィールド分の画像信号が、色差線順次方式に従って順次読み出される。カラーテレビジョン方式として例えばNTSC方式が適用されており、1/60秒間隔ごとに1フィールド分の画像信号がCCDドライバ59から送られてくる駆動信号に従って順次読み出され、増幅回路55へ送られる。
【0014】
増幅回路55では、画像信号に対して増幅処理、サンプルホールド処理が施され、画像信号が初期信号処理回路57へ送られる。初期信号処理回路57では、画像信号に対し所定の処理が施され、プロセッサ10のプロセッサ側信号処理回路28へ送られる。
【0015】
プロセッサ側信号処理回路28では、初期信号処理回路57から送られてくる画像信号に対し、ホワイトバランス調整、ガンマ補正など様々な処理が施され、アナログ映像信号およびデジタル映像信号が生成される。アナログ映像信号としてY/C分離信号が生成され、モニタ32へ出力される。これにより、観察画像がモニタ32に表示される。また、プロセッサ側信号処理回路28では、R、G、Bのデジタル映像信号がY、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント信号に変換され、コンピュータ100へ送信される。
【0016】
CPUを含むシステムコントロール回路22は、プロセッサ10全体を制御し、ランプ制御部11、プロセッサ側信号処理回路28などの各回路に制御信号を出力する。タイミングコントロール回路(図示せず)では、信号の処理タイミングを調整するクロックパルス信号がプロセッサ10内の各回路に出力され、また、ビデオ信号に付随される同期信号がプロセッサ側信号処理回路28へ送られる。
【0017】
ビデオスコープ50には、ビデオスコープ50全体を制御するスコープ制御部56が設けられており、初期信号処理回路57、タイミングコントロール回路58を制御する。ビデオスコープ50がプロセッサ10に接続されると、スコープ制御部56とシステムコントロール回路22との間でデータが送受信される。
【0018】
図2は、プロセッサ側信号処理回路28内のブロック図であり、デジタル映像信号処理に関する構成のみ示している。図3は、デジタルコンポーネント映像信号のデータ配列を示した図である。図4は、デジタルコンポーネント映像信号の色反転を修正したデータ配列を示した図である。
【0019】
デジタルの赤(R)、緑(G)、青(B)映像信号はそれぞれ8ビットのデータとして構成されており、それぞれフリップフロップ32A、32B、32Cへ入力され、同期しながら色変換回路34へ送られる。各ビットデータは、0〜255のいずれかの値になる。色変換回路34では、デジタルのR、G、B映像信号がマトリクス変換によってY、U、Vの輝度、色差コンポーネント映像信号に変換される。マトリクス変換処理は、モニタ32に応じた同期信号(HD)に従って行われる。そして、マトリクス変換処理において、所定のサンプリング周波数によってサンプリング処理が実行される。ここでは、Y、U、Vの周波数比は、4:2:2に定められている(図3参照)。生成されたY、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント映像信号は、判別回路36へ送られる。
【0020】
本実施形態では、色変換回路34においてU、Vの色成分信号が反転していないか検出するため、反転検出用の青(B)信号(以下、ダミーB信号という)がR、G、Bコンポーネント映像信号とともにフリップフロップ32Dを介して色変換回路34へ入力される(図3参照)。ダミーB信号は、一ライン分のデータ一式の先頭位置に割り当てられるように、所定のタイミングで色変換回路34へ入力される。
【0021】
判別回路36では、ダミーB信号とR、G信号に基づいて生成されたY、U、V信号に基づき、色反転によってU、V信号が入れ替えられているか否かが検出される。図示しないタイミングコントロール回路から色変換回路34に入力されるマトリクス変換処理のためのクロックパルス信号が映像信号の水平同期信号に対して位相差が生じた場合(クロックパルス信号のON/OFF状態が反転した場合)、色反転が生じ、例えば、U、V信号が反転すると、青味のある画像が赤味のある画像になる。ここでは、ダミー信号Bとなる輝度、色差信号Yd:Ud:Vdのデータ値をそれぞれ36:222:112と固定し、Ud信号の値が222になっているか否かを検出することによって色反転が検出される。なお、画像データは、通常のR、G、B信号に基づいて生成されるY、U、V信号によって構成される。
【0022】
判別回路36においてダミーB信号が色反転していないと判断された場合、データ変換回路38ではY、U、Vの輝度、色差コンポーネント映像信号に対し特別な処理が施されず、輝度(Y)信号、色差(U、V)信号がそれぞれ第1メモリ40A、第2メモリ40Bへ送られる。そして、「Y、U、Y、V、Y、U、Y、V、・・・」の順にデータ配列された輝度、色差信号が生成され、パラレル−シリアル変換器42においてシリアル変換された後、コンピュータ100へ送信される(図3参照)。
【0023】
一方、判別回路36においてダミーB信号が色反転している、すなわち、Ud信号の値がVd信号の値112になっている場合、データ変換回路38において、Y、U、Vの輝度、色差コンポーネント映像信号に対してU、V信号の入替え処理が施される。すなわち、Y、U、Vの色差成分信号であるU、V信号のデータ配列順が入れ替わるようにデータ処理が施される。Y信号とデータ配列順を反転させたU、V信号がそれぞれ第1メモリ40A、第2メモリ40Bへ送られると、「Y、V、Y、U、Y、U、Y、V、・・・」の順にデータ配列が修正された輝度、色差信号が生成される(図4参照)。そして、修正された信号が輝度、色差信号(Y、U、V信号)として出力される。
【0024】
このように本実施形態によれば、プロセッサ10のプロセッサ側信号処理回路28において、色変換回路34、判別回路36、データ変換回路38が設けられる。色変換回路34では、R、G、Bのデジタルコンポーネント映像信号がY、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント映像信号に変換されるとともに、サンプリング処理される。判別回路36では、色変換回路34を通ったダミー青(B)信号が色反転しているか否かが判別される。そして、データ変換回路38では、色反転が生じている場合、Y、U、Vの輝度、色差デジタルコンポーネント映像信号のうち、色差色成分のU、V信号のデータ配列順が反転するように信号処理される。
【0025】
これにより、色反転を防ぐようにクロックパルス発振回路とその同期処理の位相ずれを気にすることなくデジタル映像信号を出力することができ、クロックパルス発振回路および同期制御回路の構成を簡素化することができ、調整用の回路を設ける必要がない。
【0026】
色反転判別に関しては、ダミーB信号をR信号に比べて大きな値(例えば200以上)に設定し、Ud信号の値が所定値(160〜200の間の値)以上であるか否かによって色反転を検出してもよい。あるいは、R信号をダミー信号とし、色差信号Vdで判別してもよい。すなわち、青い映像が出力されるようなダミー信号を挿入し、赤味のある映像に反転しているか否か検出してもよい。また、判別回路を設けないで色反転を検出するように構成してもよい。例えば、図3に示すように、水平同期信号HDに対して同期信号となるイネーブル信号E(クロックパルス信号)の位相がずれてイネーブル信号E’の場合、U、V信号の並びが逆になり、色反転が生じる。したがって、イネーブル信号Eがハイレベルの時にU信号を選択肢、ローレベルの時にV信号を選択することによってU、V信号を入れ替えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
【図2】プロセッサ側信号処理回路内のブロック図である。
【図3】デジタルコンポーネント映像信号のデータ配列を示した図である。
【図4】デジタルコンポーネント映像信号の色反転を修正したデータ配列を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
10 プロセッサ
28 プロセッサ側信号処理回路(信号処理手段)
34 色変換回路
36 判別回路 (色反転判別手段)
38 データ変換回路 (色相修正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有するビデオスコープが接続される電子内視鏡装置のプロセッサであって、
前記撮像素子から読み出される画像信号に基づいてデジタルコンポーネント映像信号を生成する信号処理手段と、
前記デジタルコンポーネント映像信号に関して色反転が生じているか否かを判別する色反転判別手段と、
色反転している場合、色反転を解消させるように、前記デジタルコンポーネント映像信号のうち色反転に応じた色成分信号のデータを入れ替える色相修正手段と
を備えたことを特徴とする電子内視鏡装置のプロセッサ。
【請求項2】
前記信号処理手段が、前記画像信号からデジタルの赤(R)、緑(G)、青(B)映像信号を生成するとともに、前記R、G、B映像信号を輝度、色差のY、U、Vコンポーネント映像信号に変換し、
前記色相修正手段が、色反転が生じた場合、U、V色成分信号のデータ配列順を入れ替えることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置のプロセッサ。
【請求項3】
前記色反転判別手段が、色反転検出用信号の色相が反転しているか否かを判別することを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡装置のプロセッサ。
【請求項4】
前記色反転判別手段が、前記色反転検出用信号を前記Y、U、Vコンポーネント映像信号の一ライン分の映像データ一式の先頭位置に挿入し、
前記色相修正手段が、色反転検出用信号の色相が反転している場合、その後に続く前記映像データを入れ替えることを特徴とする請求項3に記載の電子内視鏡装置のプロセッサ。
【請求項5】
ビデオスコープ先端に設けられた撮像素子から読み出される画像信号に基づいてデジタルコンポーネント映像信号を生成する信号処理手段と、
前記デジタルコンポーネント映像信号に関して色反転が生じているか否かを判別する色反転判別手段と、
色反転している場合、色反転を解消するように、前記デジタルコンポーネント映像信号のうち色反転に応じた色成分信号のデータを入れ替える色相修正手段と
を備えたことを特徴とする内視鏡用映像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−117724(P2007−117724A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261854(P2006−261854)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】