説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】長期にわたって繰り返し使用しても、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】基体4と、基体4上に形成された複数の層からなり、前記複数の層の最表面層5が、硬化性の電荷輸送性材料の少なくとも一種を用いた架橋物を含んで構成され、かつ前記最表面層の弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であり、前記最表面層5と接する下層3の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的には次の如く構成、及びプロセスを有するものである。すなわち、電子写真感光体表面を帯電手段で帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させた後、現像手段で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で被転写媒体に転写させることにより、画像形成物として排出させる。
【0003】
近年電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において著しく利用されている。この電子写真感光体としては、結着樹脂にエポキシ樹脂を用いた電子写真感光体(例えば、特許文献1参照)、エポキシ樹脂及びエポキシ基を有する電荷輸送材料を用いた電子写真感光体(例えば、特許文献2参照)、保護層にフェノール樹脂及び水酸基を有する電荷輸送材料を用いた電子写真感光体(例えば、特許文献3及び4参照)が、それぞれ提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−51749号公報
【特許文献2】特開平8−278645号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開2003−186234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、長期にわたって繰り返し使用しても、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制される電子写真感光体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決された。即ち、
請求項1に係る発明は、
基体と、該基体上に形成された複数の層からなり、
前記複数の層の最表面層が、硬化性の電荷輸送性材料の少なくとも一種を用いた架橋物を含んで構成され、かつ前記最表面層の弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であり、
前記最表面層と接する下層の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記最表面層の弾性変形率と前記下層の弾性変形率との差が、10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記最表面層の塑性変形硬さが340N/mm以上400N/mm以下であり、かつ前記下層の塑性変形硬さが300N/mm以上360N/mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記硬化性の電荷輸送性材料が、下記一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体。
F−((−R−X)n1−Y)n2 (I)
(一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1であり、n2は1以上4以下の整数である。Xは酸素原子、NH、及び硫黄原子から選択される何れかを示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される何れかの基を示す。)
【0010】
請求項5に係る発明は、
前記最表面層における前記硬化性の電荷輸送性材料の含有量が、90質量%以上99質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体表面に残存したトナーを除去するためのトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記電子写真感光体表面に残存したトナーを除去するためのトナー除去手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、長期にわたって繰り返し使用しても、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項2に係る発明によれば、最表面層の弾性変形率と下層の弾性変形率との差が10%以下でない場合に比べて、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制されるという効果が顕著になる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制されるという効果が顕著になる。
請求項4に係る発明によれば、硬化性の電荷輸送性材料が一般式(I)で示される化合物でない場合に比べて、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制されるという効果が顕著になる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、最表面層における硬化性の電荷輸送性材料の含有量が90質量%以上99質量%以下でない場合に比べて、最表面層か下層から剥がれず、かつ最表面層に異物痕が残ることが抑制され、更に最表面層の磨耗が抑制されるという効果が顕著になる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、長期にわたって繰り返し使用しても、濃度ムラが抑制された画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
【0017】
請求項7に係る発明によれば、長期にわたって繰り返し使用しても、濃度ムラが抑制された画像が得られる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す概略部分断面図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】押し込み深さと荷重との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、「本実施形態に係る感光体」という場合がある。)は、基体と、該基体上に形成された複数の層からなり、前記複数の層の最表面層が、硬化性の電荷輸送性材料の少なくとも一種を用いた架橋物を含んで構成され、かつ前記最表面層の弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であり、前記最表面層と接する下層の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることを特徴とする。
【0020】
本実施形態に係る感光体は、最表面層が下層から剥がれにくく、キャリア等により最表面層に異物痕が残ることが抑制され、最表面層が磨耗することも抑制される。詳しくは、
最表面層の弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であることにより、最表面層はキャリア等の異物がぶつかっても元の状態に戻ることができ、また前記最表面層と接する下層の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることにより、最表面層に異物がぶつかり元の状態に戻る際、最表面層が下層から剥れることを防ぐ。よって、異物痕に強く、磨耗に強い感光体が得られる。この効果は、前記最表面層の弾性変形率と前記下層の弾性変形率との差が、10%以下であることを満たすことにより、顕著になる。
【0021】
ここで、前記最表面層及び下層の弾性変形率は、フィッシャースコープH−100(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、25℃/50%RHの条件下で行った。ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて、最表面層及び下層に負荷時間10secで2mNの負荷をかけ、5sec間保持した後、10secかけて除荷した時の押し込み深さおよび荷重を測定すると図3(A→B→C)のように表される。弾性変形の仕事Welastは、図3中のC−B−D−Cで囲まれる面積で、塑性変形の仕事量Wplastは、図3中のA−B−C−Aで囲まれる面積で表され、弾性変形率(%)は(Welast/(Welast+Wplast))×100から求める。
【0022】
また、最表面層及び下層のユニバーサル硬さ(Hu)は、試験荷重F(N)を接触ゼロ点を超えて侵入した圧子の表面積As(h)で除した値と定義され、下記式(1)で表される。尚、式(1)において、hは押し込み深さを示す。
Hu(N/mm)=F/As(h)=F/26.43×h (1)
【0023】
前記最表面層の弾性変形率は、45%以上55%以下であり、45%以上53%以下であることが望ましく、45%以上51%以下であることがより望ましい。前記最表面層の弾性変形率が45%未満であると、最表面層に異物がぶつかった時、元の形状に戻ることができない。また、55%を超えると、元の形状に戻り易いが下層との弾性変形率の差が大きくなり最表面層が下層から剥れてしまう。
【0024】
また、前記下層の弾性変形率は、35%以上45%以下であり、35%以上43%以下であることが望ましく、35%以上40%以下であることがより望ましい。前記最表面層の弾性変形率が35%未満であると、最表面層との弾性変形率の差が大きくなり、下層と最表面層との間で剥れが生じる。また、45%を超えると、軟らかくなりすぎてしまう。
【0025】
一方、前記最表面層のユニバーサル硬さは、185N/mm以上210N/mm以下であり、185N/mm以上200N/mm以下であることが望ましく、185N/mm以上190N/mm以下であることがより望ましい。前記最表面層のユニバーサル硬さが185N/mm未満であると、軟らかすぎて、キャリア等の異物で最表面層を傷つけてしまう。また、210N/mmを超えると硬すぎてキャリア等の異物痕が最表面層に残ってしまう。
【0026】
また、前記下層のユニバーサル硬さは、180N/mm以上250N/mm以下であり、190N/mm以上250N/mm以下であることが望ましく、200N/mm以上250N/mm以下であることがより望ましい。前記最表面層のユニバーサル硬さが180N/mm未満であると、軟らかすぎて、キャリア等の異物で最表面層を傷つけてしまう。
【0027】
更に、前記最表面層の弾性変形率と前記下層の弾性変形率との差は、10%以下であることが望ましく、0%以上7%以下であることがより望ましく、0%以上5%以下であることが更に望ましい。前記最表面層の弾性変形率と前記下層の弾性変形率との差が10%を超えると、最表面層に異物がぶつかり、元の形状に戻る時に最表面層が下層から剥れてしまう場合がある。
【0028】
本実施形態に係る感光体は、前記最表面層の塑性変形硬さが340N/mm以上400N/mm以下であり、かつ前記下層の塑性変形硬さが300N/mm以上360N/mm以下であることが望ましい。ここで、最表面層及び下層の塑性変形硬さは、図3に示すように、荷重変位曲線の除荷開始部分に接線を引き、荷重0まで接線を延長した時の変位(塑性押込み深さ)を用いて、式(1)より算出される。
【0029】
前記最表面層の塑性変形硬さは、340N/mm以上400N/mm以下であることが望ましいが、340N/mm以上380N/mm以下であることがより望ましく、340N/mm以上360N/mm以下であることが更に望ましい。前記最表面層の塑性変形硬さが340N/mm未満であると、軟らかすぎて、キャリア等の異物で最表面層を傷つけてしまう。また、400N/mmを超えると、硬すぎてキャリア等の異物痕が最表面層に残ってしまう場合がある。
【0030】
また、前記下層の塑性変形硬さは、300N/mm以上360N/mm以下であることが望ましいが、320N/mm以上360N/mm以下であることがより望ましく、340N/mm以上360N/mm以下であることが更に望ましい。前記下層の塑性変形硬さが300N/mm未満であると、軟らかくなりすぎてしまう場合がある。
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
の一例を示す模式断面図である。
【0032】
図1に示す電子写真感光体7は、基体4上に中間層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。尚、中間層1は設けても設けなくてもよい。
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7に基づいて、各要素について説明する。
【0033】
(基体)
基体4は、ドラム状、シート状、プレート状等、何れの形状でもよく、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、又は、ポリマー、酸化インジウム等やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。
【0034】
また、電子写真感光体7がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基体4表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0035】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。更に、基体4には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
【0036】
(中間層)
中間層1は、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物のほか、その他有機金属化合物、とくに有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物を含有することが望ましい。
【0037】
また、中間層1に含有される結着樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリ−N−ビニルイミダゾール樹脂、ポリエチレノキシド樹脂、エチルセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、カゼイン樹脂、ゼラチン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂等が挙げられる。
【0038】
更に、中間層1中には、電子輸送性顔料を混合/分散してもよい。該電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので望ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理してもよい。
【0039】
中間層1は、厚さは特に限定されず、15μm以上50μm以下であることが望ましい。
中間層1は、上記材料を含有する塗布液を塗布したものを乾燥させて得られるが、通常、乾燥は溶剤を蒸発する温度で行われる。
【0040】
(電荷発生層)
電荷発生層2は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
前記電荷発生材料は、赤外領域に光感度を持ち、高感度であるフタロシアニン系が望ましく、特にCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2)において、少なくとも7.5,9.9,12.5,16.3,18.6,25.1,28.1の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、あるいはCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2)において、少なくとも7.6,18.3,23.2,24.2,27.3の位置に回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが望ましい。
【0041】
また、電荷発生層2に含有される結着樹脂は、広範な電気抵抗が高い樹脂から選択することができ、また有機ポリマーから選択される。例えば、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどが挙げられる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いる。
【0042】
電荷発生層2は、上記電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0043】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いられる。電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
【0044】
電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0045】
<電荷輸送層>
電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。尚、図1に示す電子写真感光体7においては、電荷輸送層3が下層になる。
前記電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物等の公知の電荷輸送材料が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
電荷輸送材料としては電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
(構造式(a−1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。nは1又は2を示す。Ar及びArは各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(R)=C(R10)(R11)、又は−C−CH=CH−CH=C(R12)(R13)を示し、R乃至R13はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。)
【0049】
【化2】

【0050】
(構造式(a−2)中、R14及びR14’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。R15、R15’、R16、及びR16’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R17)=C(R18)(R19)、又は−CH=CH−CH=C(R20)(R21)を示し、R17乃至R21は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
【0051】
ここで、上記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び上記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(R12)(R13)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R20)(R21)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下「ゴースト」と言う場合がある)などの観点で優れ望ましい。
【0052】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられるが、中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂は電荷輸送材料との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れており望ましく用いられる。これらの結着樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
電荷輸送層3は、弾性変形率が35%以上45%以下であり、かつユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下である必要があり、更に塑性変形硬さが300N/mm以上360N/mm以下であることが望ましいが、これらの物性を満たすためには、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)やビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)などの分子量の大きい結着樹脂を用い、電荷輸送材料の量を結着樹脂の量より少なめにすると硬くなるので望ましい。また、乾燥温度は高いほうが好ましく、135℃、40分で乾燥するとより好ましい。
【0054】
電荷輸送層3を形成するための塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0055】
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
【0056】
(保護層)
保護層5は、図1に示す電子写真感光体7における最表面層である。
保護層5は、硬化性の電荷輸送性材料の少なくとも一種を用いた架橋物を含んで構成されている。ここで、硬化性の電荷輸送性材料とは、トリフェニルアミンなどの電荷輸送性材料骨格に反応性の置換基を有する電荷輸送性材料をいい、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料が挙げられる。保護層5に含有される電荷輸送性材料については後述する。
【0057】
また、前記架橋物は、前記硬化性の電荷輸送性材料の少なくとも一種と、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種とを用いた架橋物であることが望ましい。
【0058】
前記グアナミン化合物は、グアナミン骨格(構造)を有する化合物であり、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
【0059】
グアナミン化合物としては、特に下記一般式(A)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(A)で示される化合物は、一種単独で用いもよりが、2種以上を併用してもよい。特に、一般式(A)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上される。
【0060】
【化3】

【0061】
一般式(A)中、Rは、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R乃至Rは、それぞれ独立に水素、−CH−OH、又は−CH−O−Rを示す。Rは、水素、又は炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0062】
一般式(A)において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以下8以上であり、より望ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
【0063】
一般式(A)中、Rを示すフェニル基は、炭素数6以上10以下であるが、より望ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0064】
一般式(A)中、Rを示す脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より望ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0065】
一般式(A)中、R乃至Rを示す「−CH−O−R」において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以下8以上であり、より望ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。望ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0066】
一般式(A)で示される化合物としては、特に望ましくは、Rが炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R乃至Rがそれぞれ独立に−CH−O−Rを示される化合物である。また、Rは、メチル基又はn-ブチル基から選ばれることが望ましい。
【0067】
一般式(A)で示される化合物は、例えば、グアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成される。
【0068】
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例として、例示化合物:(A)−1乃至例示化合物:(A)−42を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
【0069】
【化4】

【0070】
【化5】

【0071】
【化6】

【0072】
【化7】

【0073】
一般式(A)で示される化合物の市販品としては、例えば、”スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126”以上大日本インキ社製、”ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000”以上日本カーバイド社製、などが挙げられる。
【0074】
また、一般式(A)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0075】
前記メラミン化合物としては、メラミン骨格(構造)であり、特に下記一般式(B)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)と同様に、一般式(B)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(B)で示される化合物又はその多量体は、一種単独で用いもよりが、2種以上を併用してもよい。また、前記一般式(A)で示される化合物又はその多量体と併用してもよい。特に、一般式(B)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上される。
【0076】
【化8】

【0077】
一般式(B)中、R乃至R11はそれぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基、−CH−OH、−CH−O−R12を示し、R12は炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基を示す。当該アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0078】
一般式(B)で示される化合物は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページのメラミン樹脂と同様に合成される)で合成される。
【0079】
以下、一般式(B)で示される化合物の具体例として例示化合物:(B)−1乃至例示化合物:(B)−8を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
【0080】
【化9】

【0081】
一般式(B)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日本油脂社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(大日本インキ社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業)、ニカラックMW−30(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
【0082】
また、一般式(B)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0083】
次に、硬化性の電荷輸送性材料について説明する。硬化性の電荷輸送性材料としては、例えば、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つものが好適に挙げられる。特に、硬化性の電荷輸送性材料としては、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基を少なくとも2つ(さらには3つ)持つものが好適に挙げられる。硬化性の電荷輸送性材料に反応性官能基(当該置換基)が増えることで、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、特にブレードクリーナーを用いた際の電子写真感光体の回転トルクが低減され、ブレードへのダメージの抑制や、電子写真感光体の磨耗が抑制される。この詳細は不明であるが、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られることから、電子写真感光体の極表面の分子運動が抑制されてブレード部材表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
【0084】
硬化性の電荷輸送性材料としては、下記一般式(I)で示される化合物であることがより望ましい。
F−((−R−X)n1−Y)n2 (I)
【0085】
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1であり、n2は1以上4以下の整数である。Xは酸素原子、NH、及び硫黄原子から選択される何れかを示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される何れかの基を示す。
【0086】
一般式(I)中、Fを示す正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
【0087】
そして、一般式(I)で示される化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。一般式(II)で示される化合物は、特に、電荷移動度、酸化などに対する安定性等に優れる。
【0088】
【化10】

【0089】
一般式(II)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R−X)n1−Yを示し、cはそれぞれ独立に0又は1を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。
【0090】
一般式(II)中、Dを示す「−(−R−X)n1−Y」は、一般式(I)と同様であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。また、n1として望ましくは、1である。また、Xとして望ましくは、酸素である。また、Yとして望ましくは水酸基である。
なお、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn2に相当し、望ましくは、2以上4以下であり、さらに望ましくは3以上4以下である。つまり、一般式(I)や一般式(II)において、望ましくは一分子中に2以上4以下、さらに望ましくは3以上4以下とすると、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、特にブレードクリーナーを用いた際の電子写真感光体の回転トルクが低減され、ブレードへのダメージの抑制や、電子写真感光体の磨耗が抑制される。この詳細は不明であるが、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られ、電子写真感光体の極表面の分子運動が抑制されてブレード部材表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
【0091】
一般式(II)中、Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、各Ar乃至Arに連結され得る「−(D)」と共に示す。
【0092】
【化11】

【0093】
式(1)乃至(7)中、Rは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R10乃至R12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、D及びcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0094】
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0095】
【化12】

【0096】
[式(8)、(9)中、R13及びR14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0097】
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
【0098】
【化13】

【0099】
[式(10)乃至(17)中、R15及びR16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
【0100】
上記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0101】
【化14】

【0102】
また、一般式(II)中、Arは、kが0のときはAr乃至Arの説明で例示された上記(1)乃至(7)のアリール基であり、kが1のときはかかる上記(1)乃至(7)のアリール基から水素原子を除いたアリーレン基である。
【0103】
一般式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す例示化合物:I−1乃至例示化合物:I−34が挙げられる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0104】
【化15】

【0105】
【化16】

【0106】
【化17】

【0107】
【化18】

【0108】
【化19】

【0109】
【化20】

【0110】
【化21】

【0111】
【化22】

【0112】
ここで、グアナミン化合物(例えば、一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(例えば、一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の保護層における濃度は、0.1質量%以上5質量%以下が望ましく、より望ましくは1質量%以上3質量%以下である。この固形分濃度が、上記範囲内にある場合に比べ、上記範囲未満であると、緻密な膜となりにくいため十分な強度が得られ難く、上記範囲を超えると電気特性や耐ゴースト性が悪化する。
【0113】
一方、上記特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度は、90質量%以上99質量%以下であることが望ましく、より望ましくは95質量%以上99質量%以下である。この固形分濃度は、上記範囲内にある場合に比べ、上記範囲未満であると電気特性が悪化する場合がある。
【0114】
保護層5の膜厚は、望ましくは3μm以上10μm以下である。
【0115】
保護層5は、弾性変形率が45%以上55%以下であり、かつユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下である必要があり、更に塑性変形硬さが340N/mm以上400N/mm以下であることが望ましいが、これらの物性を満たすためには、例示化合物:化合物例I−11は2官能で例示化合物:I−16は4官能なので例示化合物:I−11の量が例示化合物:化合物例I−16で表される化合物の量より多いほうが好ましい。例示化合物:I−16の量が例示化合物:化合物例I−11で表される化合物の量より多いと硬くなってしまう。またメラミンを入れすぎると保護層がより硬くなってしまうため、少ない方が良い。またブチラール樹脂(例えば積水化学社製のエスレックBM1)などの樹脂を入れることで軟らかくなる。
【0116】
以下、保護層5についてさらに詳細に説明する。
保護層5は、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を更に加えてもよい。
【0117】
また、保護層5は硬化を促進するために触媒を使用してもよい。硬化触媒として酸系の触媒が望ましく用いられる。酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、および芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが望ましい。触媒の配合量は固形分に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが望ましく、0.02質量%以上1質量%以下であることがより望ましい。前記触媒の配合量が5質量%を超えると、残留触媒により保護層の抵抗が低下し、高温高湿下での画像流れが発生する場合があり、0.01質量%未満であると、触媒活性が低くなる場合がある。
【0118】
保護層5は、以上の成分を含む保護層形成用塗布液を用いて形成される。
保護層形成用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行ってもよい。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよいが、望ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤としては、特に、少なくとも1種以上の水酸基を持つ溶剤(例えば、アルコール類等)を用いることがよい。
【0119】
保護層形成用塗布液を電荷輸送層3の上に、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布し、必要に応じて例えば温度100℃以上170以下で加熱することで、硬化させることで、保護層5が得られる。
【0120】
なお、皮膜形成用塗布液は、感光体用途以外にも、例えば、蛍光発色性塗料、ガラス表面、プラスチック表面などの帯電防止膜等に利用される。この皮膜形成用塗布液を用いると、下層に対する密着性に優れた皮膜が形成され、長期にわたる繰り返し使用による性能劣化が抑制される。
【0121】
ここで、上述の電子写真感光体は、電荷発生層2と、電荷輸送層3とを形成した機能分離型の例を説明したが、電荷発生層及び電荷輸送層の機能を併せ持つ単層型感光層を、基体又は中間層上に形成し、更に単層型感光層上に保護層を形成した構造の電子写真感光体でもよい。この場合、保護層が最表面層になり、単層型感光層が下層になる。そして、最表面層である保護層と下層である単層型感光層が、既述の関係(弾性変形率、ユニバーサル硬さ、塑性変形硬さ等の関係)を有する。
【0122】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、既述の本実施形態に係る電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記電子写真感光体表面に残存したトナーを除去するためのトナー除去手段と、を備えることを特徴とする。本実施形態に係る画像形成装置は、既述の本実施形態に係る電子写真感光体を用いることにより、長期に渡り濃度ムラが抑制された画像が得られる。
以下、本実施形態に係る画像形成装置を図を用いて説明する。
【0123】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2に示す電子写真装置100は、電子写真感光体(本実施形態に係る電子写真感光体)1を備えている。この電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の外周面の移動方向に沿って、帯電装置(帯電手段)8、露光装置(静電潜像形成手段)10、現像装置(現像手段)11、転写装置(転写手段)12、クリーニング装置(トナー除去手段)13及び除電器(イレーズ装置)14がこの順で配置されている。
【0124】
図2に示す画像形成装置による画像形成は、電子写真感光体7の表面を帯電装置8で所の電位に帯電し、所望の電位に帯電した電子写真感光体7の表面を露光装置10で静電潜像を形成した後、現像装置11により、該静電潜像をトナーによる現像によりトナー像とする。得られたトナー像は転写装置12により、記録媒体(被転写体)16に転写され、転写装置12によるトナー像の記録媒体16への転写の後、クリーニング手段13により、電子写真感光体7の表面に残留したトナーを除去し、電子写真感光体7の表面の帯電電位を除電器14により除去する。一方、記録媒体16に転写されたトナー像は、定着装置15により定着される。また、図2に示す画像形成装置は、電子写真感光体7表面に形成されたトナー像を記録媒体16へ直接転写する装置であるが、電子写真感光体7表面に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体表面に一度転写し、該中間転写体表面に転写されたトナー像を二次転写手段により記録媒体16へ転写してもよい。
【0125】
帯電手段8は、公知の帯電手段を用いられるが、ムラの無い帯電性、高速画像形成時の安定性の観点からスコロトロン式の帯電器が望ましい。
【0126】
露光手段10は、公知の露光手段が用いられるが、特にレーザー光学系が望ましい。光源となるレーザーは、レーザー光の出力が比較的大光量が得られ、汎用で安価に入手される発振波長780nmの半導体レーザーが望ましい。
【0127】
現像装置8としては、公知の現像装置等を用いることができ、現像器に用いられるトナーは不定形トナーも用いてもよいが、高画質化の観点からは球状のトナーが望ましい。球状のトナーを得る方法としては、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法。あるいは結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等が使用される。また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法が使用されるが、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0128】
前記トナーの平均粒径は、2μm以上12μm以下が望ましく、3μm以上9μm以下がより望ましい。また、平均形状係数SF1は110以上135以下の範囲が望ましい。平均形状係数SF1が110よりも小さい場合にはクリーニング性が大きく低下して、クリーニング不良が発生しやすくなる場合がある。逆に平均形状係数SF1が135より大きい場合には、転写性が低下して画質の低下や、転写されない廃棄トナーが増加してしまう場合がある。
トナーの平均形状係数SF1は、スライドグラス上に散布したトナー粒子、またはトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置(ニレコ社製)に取り込み、50個以上のトナーの最大長と投影面積を求め、下記式(4)によって計算し、その平均値を求めることにより得られるものである。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(4)
前記式(4)中、MLはトナー粒子の最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
また、前記トナーの体積平均粒径については、マルチサイザーを用いて測定し求められる。
【0129】
また、電子写真感光体7表面に形成されたトナー像を中間転写体を介して記録媒体16に転写する場合に用いる中間転写体としては、公知の中間転写体が用いられる。中間転写体に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが望ましい。
【0130】
転写装置12は、ローラー状が望ましく、本実施形態においては、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、何れを用いてもよい。本実施形態においては、接触型転写帯電器を用いた場合に大きな効果が発揮される。
また、転写装置12がローラー状である場合、その硬度は適度な硬さが求められる。具体的にはアスカーC硬度(SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定)で20以上50以下の範囲にあることが望ましく、さらに望ましくは25以上40以下の範囲である。
【0131】
また、電子写真感光体7に接する際の圧力は、10gf/cm以上30gf/cm以下の範囲が望ましく、更に望ましくは15gf/cm以上25gf/cm以下の範囲である。硬度あるいは圧力が適当な範囲から外れると転写の際に適度な空隙が得られず、ムラの無い放電が行なわれず、ムラの無い転写が行なわれないことがある。
【0132】
転写装置12を用いてトナー像を記録媒体16或いは中間転写体に転写する方法としては、転写装置12に定電流を印加するが、印加電流は直流電流が望ましい。電流範囲は10μA以上50μA以下が望ましく、15μA以上30μA以下がより望ましい。
【0133】
クリーニング手段13は、ゴムなどの弾性材料からなるクリーニングブレードを用い、その一端のエッジを感光体等の像保持体表面に接するようにして、表面に付着したトナー等の現像剤を除去する方法や、プラスチックを用いたブラシ等、公知のクリーニング方法が用いられる。
【0134】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、既述の本実施形態に係る電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体表面に残存したトナーを除去するためのトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とする。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を一体構成で画像形成装置に脱着するもので、本実施形態に係る画像形成装置と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例によって本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0136】
(実施例1)
[中間層の形成]
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.5質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行い、シランカップリング剤による表面処理を施した酸化亜鉛顔料を得た。
【0137】
前記表面処理を施した酸化亜鉛顔料100質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、これにアリザリン1質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行いアリザリンを付与した酸化亜鉛顔料を得た。
このアリザリンを付与した酸化亜鉛顔料60質量部、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175:住友バイエルンウレタン社製)15質量部、及びブチラール樹脂(BM−1(積水化学社製))15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
【0138】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部を添加し、中間層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの中間層を形成した。
【0139】
[電荷発生層の形成]
中間層を形成したアルミニウム基材上に、電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用い、その15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、浸漬塗布し、100℃にて10分間加熱乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0140】
[電荷輸送層の形成]
電荷発生層まで形成したアルミニウム基材上に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン42質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)58質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0141】
[保護層の形成]
電荷輸送層まで形成したアルミニウム基材上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を50質量部、例示化合物:I−16を50質量部、前記例示化合物:(B)−8を1質量部、t−BuOH:200質量部に溶解させた塗布液を、浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例1の電子写真感光体(感光体)を得た。
【0142】
得られた感光体を富士ゼロックス社製DocuCentre Color 500に搭載し、25℃/50%RHの条件下で画像密度5%の画像をA4用紙(富士ゼロックス社製、C紙)に20万枚画像形成を行った後、光学顕微鏡にて保護層(最表面層)のはがれ、異物痕に関して下記基準で目視評価を行った。その結果を表1に示す。また、25℃/50%RHの条件下で保護層及び電荷輸送層(下層)の弾性変形率(%)、ユニバーサル硬さ(HU)、及び塑性変形硬さを既述の方法で測定した。その結果も表1に示す。
【0143】
[はがれ]
○:はがれが発生せず。
△:若干はがれが発生するが実使用上問題なし(はがれは発生するが画像には出ない)。
×:はがれが発生し、使用不可
【0144】
[異物痕]
◎:確認される異物痕が5個未満である。
○:確認される異物痕が5個以上10個未満である。
△:確認される異物痕が10個以上20個未満である(実使用上問題なし)。
×:20個以上の異物痕が確認される(広範な領域に異物痕あり)。
【0145】
(実施例2)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン47質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)53質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、前記電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0146】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を60質量部、例示化合物:化合物例I−16で表される化合物40質量部、上記構造のメラミン化合物1質量部、t−BuOH:200質量部に溶解させた塗布液を、浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例2の感光体を得た。更に実施例2の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0147】
(実施例3)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン46質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)54質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0148】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を60質量部、例示化合物:I−16で表される化合物を40質量部、上記構造のメラミン化合物1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた塗布液を、浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例3の感光体を得た。更に実施例3の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0149】
(実施例4)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0150】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を60質量部、例示化合物:I−16で表される化合物を40質量部、上記構造のメラミン化合物1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた塗布液を、浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例4の感光体を得た。更に実施例4の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0151】
(実施例5)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン47質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)53質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0152】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、上記構造のメラミン化合物1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例5の感光体を得た。更に実施例5の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0153】
(実施例6)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン46質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)54質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0154】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例6の感光体を得た。更に実施例6の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0155】
(実施例7)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0156】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例7の感光体を得た。更に実施例7の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0157】
(実施例8)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン47質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)53質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0158】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、ブチラール樹脂(BM1)7質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH 200質量部に溶解させた。得られた塗布液を 電荷輸送層まで塗布したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例8の感光体を得た。更に実施例8の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0159】
(実施例9)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン46質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)54質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0160】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、ブチラール樹脂(BM1)7質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例9の感光体を得た。更に実施例9の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0161】
(実施例10)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)60質量部とをテトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0162】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16で表される化合物75質量部、ブチラール樹脂(BM1)7質量部、及び上記構造のメラミン化合物1質量部、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例10の感光体を得た。更に実施例10の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0163】
(比較例1)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン47質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)53質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0164】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−16を100質量部、及び上記構造のメラミン5質量部、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例1の感光体を得た。更に比較例1の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0165】
(比較例2)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン38質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)62質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0166】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−16を100質量部、及び上記構造のメラミン5質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例2の感光体を得た。更に比較例2の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0167】
(比較例3)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン46質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)54質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0168】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−16を100質量部、及び上記構造のメラミン5質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例3の感光体を得た。更に比較例3の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0169】
(比較例4)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2050:粘度平均分子量50,000:帝人化成社製)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0170】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−16を100質量部、及び上記構造のメラミン5質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例4の感光体を得た。更に比較例4の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0171】
(比較例5)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン48質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z400:粘度平均分子量40,000:三菱ガス化学社製)52質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0172】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を60質量部、例示化合物:I−16を40質量部、及び上記構造のメラミン1質量部、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例5の感光体を得た。更に比較例5の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0173】
(比較例6)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン48質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z400:粘度平均分子量40,000:三菱ガス化学社製)52質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0174】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例6の感光体を得た。更に比較例6の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0175】
(比較例7)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン48質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z400:粘度平均分子量40,000:三菱ガス化学社製)52質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0176】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、ブチラール樹脂(BM1)7質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例7の感光体を得た。更に比較例7の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0177】
(比較例8)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン48質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z400:粘度平均分子量40,000:三菱ガス化学社製)52質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0178】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を100質量部、及び上記構造のメラミン5質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例8の感光体を得た。更に比較例8の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0179】
(比較例9)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン38質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)62質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、前記電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0180】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を60質量部、例示化合物:I−16で表される化合物を40質量部、上記構造のメラミン化合物1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた塗布液を、浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例9の感光体を得た。更に比較例9の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0181】
(比較例10)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン38質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)62質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0182】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH: 200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、比較例10の感光体を得た。更に比較例10の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0183】
(比較例11)
実施例1の感光体と同様に支持体上に、中間層、電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層形成用塗布液として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン38質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(Z800:粘度平均分子量80,000:三菱ガス化学社製)62質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に溶解混合した塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分で乾燥することにより、膜厚19μmの電荷輸送層を形成した。
【0184】
更に、形成した電荷輸送層上に、保護層形成用塗布液として、例示化合物:I−11を25質量部、例示化合物:I−16を75質量部、ブチラール樹脂(BM1)7質量部、及び上記構造のメラミン1質量部を、t−BuOH:200質量部に溶解させた。得られた塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成して、実施例11の感光体を得た。更に実施例11の感光体を用いて実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0185】
【表1】

【符号の説明】
【0186】
1 中間層
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 基体
5 保護層
7 電子写真感光体
8 帯電装置
10 露光装置
11 現像装置
12 転写装置
13 クリーニング装置
100 電子写真装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体上に形成された複数の層からなり、
前記複数の層の最表面層が、硬化性の電荷輸送性材料の少なくとも一種を用いた架橋物を含んで構成され、かつ前記最表面層の弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であり、
前記最表面層と接する下層の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記最表面層の弾性変形率と前記下層の弾性変形率との差が、10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記最表面層の塑性変形硬さが340N/mm以上400N/mm以下であり、かつ前記下層の塑性変形硬さが300N/mm以上360N/mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記硬化性の電荷輸送性材料が、下記一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体。
F−((−R−X)n1−Y)n2 (I)
(一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1であり、n2は1以上4以下の整数である。Xは酸素原子、NH、及び硫黄原子から選択される何れかを示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される何れかの基を示す。)
【請求項5】
前記最表面層における前記硬化性の電荷輸送性材料の含有量が、90質量%以上99質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体表面に残存したトナーを除去するためのトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記電子写真感光体表面に残存したトナーを除去するためのトナー除去手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−224304(P2010−224304A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72546(P2009−72546)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】