説明

電子写真機器用ロール

【課題】被当接物に対して均一に当接可能な中高形状を有する電子写真機器用ロールにおいて、均一な帯電性を発揮することが可能な電子写真機器用ロールを提供する。
【解決手段】ロール体3の軸方向中央部の外径が軸方向端部の外径よりも大きく形成された中高形状であり、ロール体3は、接着剤層31の厚さが、軸方向の中央部が最も高く、両端部側に順次薄くなるように中高形状に形成し、導電性弾性層32の厚さを、軸方向の一方の端部から他方の端部まで、ほぼ同じに形成して、帯電ロール1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用ロールに関するものであり、更に詳しくは、軸方向中央部が軸方向端部よりも厚肉に形成された中高形状の電子写真機器用ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、静電潜像を形成するための感光体ドラム等の感光体が組み込まれている。このような電子写真機器に用いられるロールとして、例えば、上記感光体を帯電させて静電潜像を形成するために、半導電性のゴムローラ型の帯電ロールが用いられている。帯電ロールは、感光ドラム等の感光体に対して均一な帯電を行うために、金属製芯金の外周面上にゴムの組成物からなる導電性弾性層を有するロール体が設けられて構成されている。
【0003】
帯電ロールは、感光ドラム等の被当接物に当接させる場合、両端の芯金の部分に荷重を加えて、被当接物に押し当てる方法が一般に用いられている。帯電ロールは、被当接物に対して均一に当接するようにして、接地性を高めることが望ましい。帯電ロールの接地性を高めるために、ロール体の外径を軸方向の中央で最大とし、両端部側に行くに従って徐々に小さくなるような中高形状に形成することが公知である(例えば、特許文献1参照。)。このような、ロール体が中高形状の鼓型に形成されている帯電ロールの形状は、一般に中高形状と呼ばれている。
【0004】
【特許文献1】特許第2753925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示すように、例えば中高形状の帯電ロール100は、芯金101の外周に接着剤層103を介して導電性弾性層104を積層し、ロール体102が形成されている。上記接着剤層103は、軸方向に対して一方の端部から他方の端部まで、一定の厚さに塗布されている。そして上記導電性弾性層104の厚さが、軸方向の端部から中央部に対して漸次厚くなるように形成されていることで、ロール体102は中高形状に形成されている。
【0006】
しかしながら、上記従来の帯電ロール100は、導電性弾性層104の厚さが軸方向の中央部と端部では異なるため、ロール体102の軸方向の中央部と端部における静電容量が異なることになってしまう。帯電ロール100において、軸方向の位置によって静電容量が変化すると、静電容量に偏りが生じてしまい、軸方向の中央部と端部とで均一な帯電性を確保することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被当接物に対して均一に当接可能な中高形状を有する電子写真機器用ロールにおいて、均一な帯電性を確保できる電子写真機器用ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真機器用ロールは、軸体と該軸体の外周に少なくとも接着剤層と導電性弾性層とを有するロール体が形成され、該ロール体の軸方向中央部の外径が軸方向端部の外径よりも大きく形成された中高形状の電子写真機器用ロールにおいて、前記接着剤層は、ロール体の軸方向中央部の厚さが軸方向端部の厚さよりも厚い中高形状に形成され、前記接着剤層は、前記ロール体の軸方向の厚さがほぼ一定に形成されていることを要旨とするものである。
【0009】
上記の電子写真機器用ロールは、前記接着剤層の体積抵抗率が、1.0×10〜3.0×10Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真機器用ロールは、前記接着剤層のロール体の軸方向中央部の厚さが軸方向端部の厚さよりも厚い中高形状に形成され、前記導電性弾性層の前記ロール体の軸方向の厚さがほぼ一定に形成されていることにより、ロール体の中央部と端部の静電容量が変化せず、軸方向の全幅にわたり均一な帯電性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の電子写真機器用ロールの一例として帯電ロールの例を示す外観斜視図であり、図2は図1の周方向断面を示すB−B線断面図であり、図3は図1の軸方向断面を示すC−C線断面図である。図1〜図3に示すように帯電ロール1は、円柱状の芯金からなる軸体2と、該軸体2の表面外周に積層されたロール体3と、該ロール体3の表面に形成された保護層4とから構成されている。ロール体3は軸体2側に形成されている接着剤層31と、該接着剤層31の外周に積層された導電性弾性層32とから構成されている。
【0012】
軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、又はこれらにめっきを施した導電性シャフト等を用いることができる。また必要に応じ、軸体2の外周表面にプライマー等を塗布して表面を処理してもよい。上記プライマーには、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0013】
ロール体3は、図3に示すように、ロール体3の軸方向中央部M1の外径が軸方向端部E1、E2の外径よりも大きく形成された中高形状に形成されている。図3に示すようにロール体3の接着剤層31の厚さが、軸方向の中央部が最も厚く、両端部側になるに従い、順次薄くなるように中高形状(クラウン形状と呼称される場合もある)に形成されている。そして、ロール体3は、導電性弾性層32の厚さが、ロール体3の軸方向の一方の端部から他方の端部まで、ほぼ同じ厚さに形成されている。
【0014】
接着剤層31は、導電性弾性層32を軸体2と接着させると共に、ロール体3の中高形状を付与するために設けられている。接着剤層31は図3に示すように、軸方向端部E1、E2から中央部M1に向かってその厚さが連続的に厚くなるような中高形状に形成し、該接着剤層31の軸方向断面形状が、ほぼ円弧状となるように形成するのが、より均一な帯電特性を得るためには好ましい。
【0015】
接着剤層31の厚さは、5〜105μmとなるように形成するのが好ましい。また接着剤層31の中高形状の最も厚さの厚い部分の厚さと、最も厚さが薄い部分の厚さの差が50〜100μmの範囲内とするのが好ましい。この厚さの差が50μm未満では、帯電性能の均一化の効果が不十分となる虞があり、またこの厚さの差が100μmを超えると、接着剤層31の体積固有抵抗率の影響が大きくなる虞がある。
【0016】
接着剤層31は、該層自体の体積固有抵抗率が大きくなると、中央部付近の厚さの厚い部分と、両端部付近の厚さの薄い部分との間で、ロール体3の電気抵抗の変化が大きくなる虞がある。ロール体3の軸方向において電気抵抗が変化すると、帯電ロール1の帯電性能が低下してしまう。これに対し、接着剤層31の体積固有抵抗率が、ある程度低ければ、厚さの違いによる電気抵抗の変化を小さくすることができる。具体的には、接着剤層31は、その材料の体積固有抵抗率が、1.0×10〜3.0×10Ω・cmの範囲内であるのが好ましい。接着剤層31の体積固有抵抗率が上記範囲内であれば、帯電ロール1において接着剤層の厚さの違いにより帯電性能が低下する虞がなく、安定した帯電性能を発揮することができる。接着剤層31は、構成する材料を適宜選択することで、体積固有抵抗を上記範囲とすることができる。
【0017】
接着剤層31の材料は、軸体2と導電性弾性層32を接着することが可能なものであればよく、例えば、塩化ゴム系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリウレタン系、ニトリルゴム系、スチレン−ブタジエン(SBR)系、天然ゴム系等の接着剤を用いることができる。接着剤層31には、必要に応じ導電剤等を配合して、導電性を調節しても良い。
【0018】
また、接着剤層31は、導電性弾性層32の加硫成型時の熱や圧力等により硬化して、軸体2と導電性弾性層32を接着させることが可能な、加硫接着剤を用いても良い。加硫接着剤としては、例えば上記の接着剤では、塩化ゴム系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、ニトリルゴム系接着剤等が挙げられる。
【0019】
導電性弾性層32は、帯電ロール1の電気抵抗を調整する抵抗調整を目的に、下層の接着剤層31の外周表面に沿って形成されている。導電性弾性層32の厚さは、図3に示すように軸方向端部E1から中央部M1を通り他方の端部E2までの軸方向の全域にわたる厚さが、ほぼ同じ厚さとなるように形成されている。その結果、ロール体3の表面は接着剤層31の中高形状に沿った曲率の中高形状に形成されている。このように導電性弾性層32は、従来のロール体のような中高形状に形成されていない。導電性弾性層32は、軸方向の一方の端部から他方の端部までの厚さが一定なので、軸方向の端部と中央部の位置の違いにより静電容量の差が生じることがない。そのため、帯電ロール1のロール体3は、軸方向のどの位置でも静電容量が同じになる。
【0020】
導電性弾性層32の厚さは、通常、0.1〜10mm程度に形成され、好ましくは1〜5mmの範囲内である。導電性弾性層32は、体積固有抵抗率が、1.0×10〜5.0×10Ω・cmの範囲内であるのが好ましい。導電性弾性層32は、ソリッド状の非発泡体、或いはスポンジ状の発泡体のいずれでもよい。
【0021】
導電性弾性層32は例えば、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)等のゴムが主成分として用いられる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0022】
導電性弾性層32は、イオン導電性ポリマーを主成分として用いることが好ましい。イオン導電性ポリマーを導電性弾性層32の主成分として用いると、ロール体3において、低へたり性、導電性、柔軟性等の優れた特性が得られる。イオン導電性ポリマーとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、又はエピクロルヒドリンゴムが挙げられる。上記エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体(ECO)、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GCO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GECO)等が挙げられる。これらのイオン導電性ポリマーは単独で使用しても、あるいは2種以上混合して使用しても良い。
【0023】
導電性弾性層32は、イオン導電性ポリマー等のゴム成分以外に、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2、c−ZnO、c−SnO2、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等の導電剤(電子導電剤及び/又はイオン導電剤)を添加することができる。また導電性弾性層32は、上記主成分以外に、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、オイル、滑剤、助剤、界面活性剤等の各種添加剤を1種又は2種以上添加しても良い。
【0024】
保護層4は、感光体との固着防止等を目的に、ロール体3の表面を保護するための表面保護層として導電性弾性層32の外周表面に形成されている。保護層4は、厚さが0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。保護層4は、帯電ロール1の場合、ある程度の導電性を付与して半導電性に形成することが好ましい。上記保護層4は、体積固有抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cmの範囲内であるのが好ましい。
【0025】
保護層4の材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム等のゴム、これら樹脂やゴムをシリコーン、フッ素等で変性した変性物等が用いられる。保護層4は、上記のゴムや樹脂が2種以上含まれていてもよい。
【0026】
保護層4は、上記の樹脂やゴム以外に、導電剤(カーボンブラック等の電子系導電剤、及び/又は、第4級アンモニウム塩等のイオン系導電剤)、離型剤、硬化剤等の添加剤が1種又は2種以上含有していても良い。
【0027】
以下、上記帯電ロール1の製造方法について説明する。上記の帯電ロール1を製造するには、先ず、軸体2の外周に、接着剤層31を軸方向の両端部から中央に向かって厚さが漸次厚くなる中高形状に形成する。接着剤層31を中高形状に形成する方法として、例えば、はけ塗り又はスプレー等の各種のコーティング法を利用して、軸方向の塗布長さを少しずつ変えて重ね塗りを繰り返し行う方法が挙げられる。すなわち、厚さを厚く形成したい部分を、接着剤の塗布回数が多くなるように、塗布幅を変えて複数回塗布すれば良い。
【0028】
次いで、接着剤層31の外周に導電性弾性層32を設けてロール体3を形成する。導電性弾性層3を形成するには、接着剤層31を設けた軸体2の接着剤層の外周の表面に、上記の導電性弾性層32を構成する各成分を配合した導電性弾性層組成物を押出成形する方法、接着剤層31を設けた軸体2をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、上記金型に導電性弾性層組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する方法等を用いることができる。導電性弾性層32は、必要に応じ加硫させても良い。
【0029】
次いで、ロール体3の導電性弾性層32の外周表面に保護層4を形成して、帯電ロール1が得られる。保護層4は、樹脂やゴムにカーボンブラックや導電性金属酸化物等の導電剤が配合された保護層組成物を、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法等の所定の方法で、導電性弾性層32の表面にコーティングし、乾燥(硬化)させることで形成することができる。
【0030】
上記実施態様では、帯電ロールを例に説明したが、本発明の電子写真機器用ロールは、帯電ロール以外に、電子写真方式の複写機やプリンタ等の、現像ロール、転写ロール、定着ロール等のように、軸体の両端部がばね等にて押圧されることにより、被当接ロールに対し当接して被当接ロールに追従して回転して使用されるものであれば、適用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
実施例1
<軸体>
芯金として、外径8mm、長さ340mmのSUS304製の軸体を用いた。
【0033】
<接着剤層>
接着剤層として、体積抵抗率が3.1×10Ω・cmのフェノール樹脂系接着剤[(株)東洋化学研究所製、商品名「メタロックN−33」]を用いた。
【0034】
接着剤の体積抵抗率は、以下の方法を用いて測定した。導電PETの表面に、隙間0.5mmのバーコートを用いて接着剤を塗布した後、風乾し、さらに100℃で1時間加熱して接着剤塗膜を形成した。接着剤塗膜は、乾燥後の膜厚が0.4〜0.6mmの範囲内になるようにした。そして室温23℃、湿度53%の環境で、上記接着剤塗膜の表面と裏面にゴム電極[日置電気製、商品名「SME−8311」]を介して、抵抗計(ケスレー:Model237High−Voltage Source−Measure Unit)の端子を接続して、印加電圧1V(10秒)を加えて抵抗値を測定した。体積抵抗率は、測定した抵抗値と接着剤塗膜の断面積と厚さから求めた。後述する導電性弾性層及び保護層の体積抵抗率も、同様の方法で求めた。
【0035】
<導電性弾性層形成組成物の調製>
導電性弾性層形成組成物は、主成分としてエピクロルヒドリンゴム(ECO)[ダイソー(株)製、商品名「エピクロマーCG102」]100質量部及び液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(液状NBR)[JSR(株)製、商品名「JSR N280」]10質量部と、加硫剤として硫黄[鶴見化学工業(株)製]0.5質量部と、加硫助剤として酸化亜鉛2種[三井金属工業(株)製]5.0質量部及びハイドロタルサイト[協和化学工業(株)製、商品名「DHT4A」]10.0質量部、加硫促進剤A[三新化学工業(株)製、商品名「サンセラーCZ」]1.0質量部、加硫促進剤B[大内新興化学工業(株)製、商品名「アクセルTBT」]1.0質量部、イオン導電剤として下記構造式にて表される第4級アンモニウム塩1.0質量部とを、ニーダーで混練して組成物を調製した。この組成物から形成される導電性弾性層の体積抵抗率は、6.7×10Ω・cmであった。
【0036】
【化1】

【0037】
<保護層形成組成物の調製>
保護層形成組成物は、N−メトキシメチル化ナイロン[帝国化学産業(株)製、商品名「トレジンEF30T」]100質量部及び、メラミン樹脂[住友化学(株)製、商品名「スミテックスレジンM3」]20質量部を、メタノール−トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500質量部に溶解して組成物を調製した。この組成物から形成される保護層の体積抵抗率は、6.0×10Ω・cmであった。
【0038】
<帯電ロールの製造>
本実施例では、図3に示す構造のロール体の長さ320mmの帯電ロールを製造した。まず、軸体表面に接着剤を、軸方向の接着剤の塗布長さを320mm(1回目)、280mm(2回目)、240mm(3回目)、200mm(4回目)、160mm(5回目)、120mm(6回目)、80mm(7回目)と漸次短くして、7回重ね塗りした。各回の塗布は、塗布長さが、軸体の軸方向中心から両端部までの長さが同じになるようにした。また接着剤の塗布量は、一度の塗布の膜厚が約10μmになる量とした。図3に示すように、接着剤層は軸体の長手方向中央部が最も塗布回数が多くなって膜厚が厚く、端部側に行くに従って厚さが徐々に薄くなるように形成した。接着剤層の厚さは、中央部M1で0.070mm、中央部M1から一方の端部側に距離150mmの位置(端部1)及び中央部M1から他方の端部側150mmの位置(端部2)で0.010mmであった。接着剤の乾燥条件は、60℃×15minであった。
【0039】
次いで接着剤層を形成した軸体を、金型形状がロール体のクラウン形状に対応する形状に形成されているパイプ状金型内にセットした後、該パイプ状金型内に上記導電性弾性層形成組成物(未加硫ゴム)を注入後、180℃で30分間加熱して、加硫成形して導電性弾性層を形成した。さらに、上記導電性弾性層の表面に、上記保護層形成組成物をロールコーティング法により厚さ8μmに塗布し、120℃で50分間加熱して架橋させ、直径12.05mm(軸方向中央部)の中高形状のロール体を有する帯電ロールを製造した。導電性弾性層の厚さは、軸方向中央部M1が1.955mmで、軸方向端部1、端部2が1.954mmであった。
【0040】
得られた帯電ロールのドラム帯電量を下記の測定方法で測定した。測定結果を表1に示す。ドラム帯電量の測定は、ロール体の中央部(M1)と端部1、端部2で行った。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の帯電ロールは、中央部と端部1、端部2のドラム帯電量はほぼ同じであり、端部と中央部の帯電量の差である軸方向帯電量Δの値が2Vであり、均一な帯電性を有するものであった。尚、ドラム帯電量の判定は、軸方向帯電量Δが10V以下の場合を○とし、10V超〜20V以下の場合を△とし、20V超の場合を×として評価した。
【0041】
ドラム帯電量は、帯電ロールを感光体[富士ゼロックス(株)製、商品名「CT350376ドラムカートリッジ」の感光ドラムを使用]に、1400gfの荷重を加えて圧接し、感光体を回転数60rpmで連れ回り回転させ、高圧電源(TREK社製)及びパルス発振機(NF回路設計Gr社製)を用いて、常温・常圧環境下で、−0.7kVの直流電圧及び1.6kVp−p、2kHzの交流電圧を印加し、暗室内にて感光ドラム上の表面電位を表面電位計(TREK社製)にて測定した。
【0042】
実施例2
接着剤層の接着剤として、体積抵抗率が2.3×10Ω・cmのフェノール樹脂系接着剤[LORD社製、商品名「ケムロックXJ150」]を用いた以外は、実施例1と同様に導電性弾性層及び保護層を形成して実施例2の帯電ロールを製造した。得られた実施例2の帯電ロールについて、実施例1と同様にドラム帯電量を測定して帯電性を評価した。評価結果を表1に示す。表1に示すように実施例2の帯電ロールは、軸方向帯電量Δの値が5Vであり、均一な帯電性を有するものであった。
【0043】
比較例1
接着剤層を軸方向端部から端部まで一定の厚さ(0.01mm)に形成し、導電性弾性層の厚さを中央部が厚く端部が薄い中高形状として、ロール体の外径形状が実施例1と同じになるように構成した以外は、実施例1と同様の接着剤、導電性弾性層組成物、保護層形成組成物を用いて、比較例1の帯電ロールを製造した。導電性弾性層の厚さは、軸方向中央部M1が2.015mmで、軸方向端部1、端部2が1.954mmであった。比較例1の帯電ロールについて、実施例1と同様にドラム帯電量を測定して帯電性を評価した。評価結果を表1に示す。表1に示すように比較例1の帯電ロールは、軸方向帯電量Δの値が13Vであった。
【0044】
比較例2
接着剤層の接着剤として、体積抵抗率が8.4×1010Ω・cmのフェノール樹脂系接着剤[(株)東洋化学研究所製、商品名「メタロックN−15D」]を用い、接着剤層を軸方向端部から端部まで一定の厚さ(0.01mm)に形成し、導電性弾性層の厚さを中央部が厚く端部が薄い中高形状として、ロール体の外径形状が実施例1と同じになるように構成した以外は、実施例1と同様の、導電性弾性層組成物、保護層形成組成物を用いて、比較例2の帯電ロールを製造した。導電性弾性層の厚さは、軸方向中央部M1が2.015mmで、軸方向端部1、端部2が1.955mmであった。比較例2の帯電ロールについて、実施例1と同様にドラム帯電量を測定して帯電性を評価した。評価結果を表1に示す。表1に示すように比較例2の帯電ロールは、軸方向帯電量Δの値が27Vであった。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の電子写真機器用ロールの一例として帯電ロールの例を示す外観斜視図である。
【図2】図1のB−B線断面図である。
【図3】図1のC−C線断面図である。
【図4】従来の帯電ロールを示す軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 帯電ロール
2 軸体
3 ロール体
31 接着剤層
32 導電性弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と該軸体の外周に少なくとも接着剤層と導電性弾性層とを有するロール体が形成され、該ロール体の軸方向中央部の外径が軸方向端部の外径よりも大きく形成された中高形状の電子写真機器用ロールにおいて、前記接着剤層は、ロール体の軸方向中央部の厚さが軸方向端部の厚さよりも厚い中高形状に形成され、前記導電性弾性層は、前記ロール体の軸方向の厚さがほぼ一定に形成されていることを特徴とする電子写真機器用ロール。
【請求項2】
前記接着剤層の体積抵抗率が、1.0×10〜3.0×10Ω・cmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の電子写真機器用ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−72315(P2010−72315A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239352(P2008−239352)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】