説明

電子写真用シームレスベルトとその製造方法、電子写真装置

【課題】機械的耐久性に優れ、残留溶媒のないクリーンな電子写真用シームレスベルト及びそれを高い生産効率にて得るための製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を塗布、乾燥することにより成膜された電子写真用シームレスベルトにおいて、該シームレスベルトが、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理を施され、残留溶媒量が0.1wt%未満であることを特徴とする電子写真用シームレスベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シームレスベルトに関し、特にコピー・プリンタ等の電子写真装置に装備されるベルト構成部に用いられるシームレスベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置においては、その装置内においてさまざまな用途でシームレスベルト部材が用いられている。例えば、定着ベルト、転写ベルト、紙搬送ベルトなどが挙げられる。
その中でも、近年特にフルカラー電子写真装置において、感光体上に形成された4色のトナー画像を一旦、中間転写ベルトに転写することにより中間転写ベルト上にフルカラー画像を形成し、その後に紙などの転写媒体に一括転写する方式における中間転写ベルトがある。
【0003】
また、本方式において、高速性を得るため、中間転写ベルトに対峙する各色の色現像装置を直列に配置したタンデム方式と言われる方式が主流となっている。本プロセスに使用される中間転写ベルトは、走行中に変形による色重ねずれが生じず、繰返し使用に耐えうる高強度のものが要求される。
また、難燃性も要求されるため、ポリイミドやポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられている。
【0004】
ポリイミド樹脂による中間転写ベルトでは、その求められる機械強度を得るために、製法上の工夫が提案されており、我々も既にいくつかの工夫を提案している(例えば特許文献1〜3参照)。
ポリイミド樹脂に用いられている有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が一般的に用いられる。その中でも、N−メチルピロリドンが最も良く使われる。
しかしながら、N−メチルピロリドンは、生殖毒性機能があると言われており、そのものが製品内に多量に残留することは好ましくない。
【0005】
特許文献4においては、100〜200℃の低温で塗工膜を長時間乾燥し溶剤を充分蒸発除去させた後、300℃以上の高温で加熱してポリイミド化することにより、残留溶媒量が1ppm以下であるポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトが提案されている。これは、画像の白抜けを防止する効果が記述されている。しかしながら、残留溶媒を極最小限にするための当条件で作製された中間転写ベルトでは屈曲性に劣るため、装置における連続繰り返し使用による耐久性に劣り、割れや亀裂が生じる。
特許文献5〜8では、残留溶媒量を規定値まで残留させることにより屈曲性を向上させることが提案されており、例えば特許文献7では、金型に接する側のポリイミド前駆体はより高温のためポリイミド化され易くしたがって溶媒が内部に封じ込められ易いが、反対側のポリイミド前駆体面からは溶媒が蒸発し易いので、この反対側のポリイミド前駆体面を追加的に加熱することが記載されている。これは前述した理由により、残留溶媒量が多く存在し、好ましくない。
また特許文献9においては、製造過程においてある程度の多量残留溶媒状態にすべく低温乾燥した後、一挙に高温加熱して残留溶剤を形成ポリイミド組織中に封じ込めることによって屈曲性を向上させることが提案されている。しかし、本作製方法で作製したものでは結果的に最終的な残留溶媒量が多くなる場合があり、好ましくない。
このように、N−メチルピロリドンは高沸点であるため、比較的残留しやすい。また、十分な機械強度を得るには、ある程度のN−メチルピロリドンが残留した状態でイミド化を施す必要があるとも言われており、最終的にある程度の量が残留する可能性が高い。
ベルトの耐久性を確保しつつ、N−メチルピロリドンの残留量を非常に少なくするためには、非常に乾燥工程の時間がかかってしまい生産コストが上がってしまうのが現状である。
また、特許文献10では、ポリイミド化する前のポリアミック酸段階で超臨界二酸化炭素を用いてある構成のポリイミドフィルムから不要な低分子成分を抽出した後、次に、加熱してポリイミド化するという提案がされている。しかしながら、ここではポリイミド化する前のポリアミック酸段階で超臨界二酸化炭素処理するものであり、かつ、超臨界二酸化炭素処理の温度を高くするに従って被溶出物の超臨界二酸化炭素に対する溶解度が低下するので、ポリイミド化を併発するような高温での超臨界抽出処理を避けるべきことが記載(〔0029〕)されていて、ポリイミド化後の超臨界二酸化炭素処理による残留溶媒除去については懐疑的である。
【0006】
【特許文献1】特開2006−259405号公報
【特許文献2】特開2006−330242号公報
【特許文献3】特開2006−348094号公報
【特許文献4】特開平11−24427号公報
【特許文献5】特開2006−53190号公報
【特許文献6】特開2005−345692号公報
【特許文献7】特開2001−96550号公報
【特許文献8】特開2000−313071号公報
【特許文献9】特開2005−254744号公報
【特許文献10】特開2002−167434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するものであり、機械的耐久性に優れ、残留溶媒のないクリーンな電子写真用シームレスベルト及びそれを高い生産効率にて得るための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題は、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂により、機械特性が十分に得られる方法にて作製されたシームレスベルトを、超臨界二酸化炭素および亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理を施すことにより、膜中に残留する溶媒を除去することにより達成されることを見出した。
【0009】
すなわち、上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)「少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を塗布、乾燥することにより成膜された電子写真用シームレスベルトにおいて、該シームレスベルトが、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理を施され、残留溶媒量が0.1wt%未満であることを特徴とする電子写真用シームレスベルト」、
(2)「前記シームレスベルトのMIT耐揉試験による耐折回数が、1000回以上であることを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真用シームレスベルト」、
(3)「前記シームレスベルトが抵抗調整剤を含有することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の電子写真用シームレスベルト」、
(4)「像担持体上に形成されるトナー現像画像を転写して被記録媒体に画像形成する電子写真装置に装備されるベルト構成部用のシームレスベルトにおいて、該ベルトは、前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とするベルト構成部用のシームレスベルト」、
(5)「像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置に装備されるベルト構成部用のシームレスベルトにおいて、前記中間転写ベルトは、前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とするベルト構成部用のシームレスベルト」、
(6)「像担持体上に形成されるトナー現像画像を転写して被記録媒体に画像形成し、ベルト構成部を装備した電子写真装置において、該ベルトは、前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とする電子写真装置」、
(7)「像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写し、ベルト構成部を装備した電子写真装置において、前記中間転写ベルトは、前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とする電子写真装置」、
(8)「少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有することを特徴とする電子写真用シームレスベルトの製造方法」、
(9)「少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有する電子写真用シームレスベルトの製造方法において、該シームレスベルトは、脱型工程時における溶媒の残留溶媒量が0.1〜5wt%となる条件により作製され、該処理工程により0.1wt%未満となることを特徴とする電子写真用シームレスベルトの製造方法」、
(10)「少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液に抵抗調整剤を分散させる工程、該工程により作製された塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有することを特徴とする電子写真用中間転写ベルトの製造方法」、
(11)「少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液に抵抗調整剤を分散させる工程、該工程により作製された塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有する電子写真用中間転写ベルトの製造方法において、該中間転写ベルトは、脱型工程時における溶媒の残留溶媒量が0.1〜5wt%となる条件により作製され、該処理工程により0.1wt%未満となることを特徴とする電子写真用中間転写ベルトの製造方法」、
(12)「前記中間転写ベルトのMIT耐揉試験による耐折回数が1000回以上であることを特徴とする前記第(10)項又は第(11)項に記載の中間転写ベルトの製造方法」。
【発明の効果】
【0010】
請求項1によれば、極めて残留溶媒の少ないポリイミドまたはポリアミドイミドの電子写真用シームレスベルトを得ることができる。
請求項2によれば、屈曲性のある機械耐久性の高い電子写真用シームレスベルトを得ることができる。
請求項3によれば、任意の抵抗値に導電性が付与された電子写真用シームレスベルトを得ることができる。
請求項4によれば、上記効果を備えた、像担持体上に形成されるトナー現像画像を転写して被記録媒体に画像形成する電子写真装置に装備されるベルト構成部用のシームレスベルトを得ることができる。
請求項5によれば、上記効果を備えた、像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置用の中間転写ベルトを得ることができる。
請求項6によれば、上記効果を備えたシームレスベルトを用いた電子写真装置を得ることができる。
請求項7によれば、上記効果を備えた中間転写ベルトを用いたフルカラー電子写真装置を得ることができる。
請求項8によれば、極めて残留溶媒の少ないポリイミドまたはポリアミドイミドの電子写真用シームレスベルトを得る製造が可能である。
請求項9によれば、極めて残留溶媒が少ないポリイミドまたはポリアミドイミドの電子写真用シームレスベルトを高い生産性で得る製造が可能である。
請求項10によれば、極めて残留溶媒の少ないポリイミドまたはポリアミドイミドの電子写真用中間転写ベルトを得る製造が可能である。
請求項11によれば、極めて残留溶媒の少ないポリイミドまたはポリアミドイミドの電子写真用中間転写ベルトを高い生産性で得る製造が可能である。
請求項12によれば、極めて残留溶媒の少なく機械的耐久性に優れるポリイミドまたはポリアミドイミドの電子写真用中間転写ベルトを高い生産性で得る製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるポリイミドまたはポリアミドイミドによるシームレスベルトは、有機極性溶媒を用いたポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体、または溶剤可溶ポリイミドからなる溶液を塗布液とし、本塗布液を型に塗布することによって成形される。
以下、塗工液について説明する。
【0012】
本発明における塗工液の組成分であるポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体および当該前駆体の加熱処理(イミド化)により生成するポリイミドまたはポリアミドイミドについて詳しく説明する。
以下、ポリイミド、ポリアミドイミドの順に説明する。
【0013】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、まず一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。
すなわち、ポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を持つため、酸無水物と芳香族ジアミンから、まず有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸、またはポリアミド酸)を合成し、この段階で様々な方法で成型加工が行なわれ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)しポリイミドとする。反応の概略を下記化学反応式に示す。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Arは少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、Arは少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示す。)
【0016】
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0017】
次に、芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
【0018】
上記芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。
【0019】
なお、ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独あるいは混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0020】
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種あるいは複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、あるいはスラリー状に拡散させる。この溶液に前記した少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸無水物あるいは、その誘導体を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
【0021】
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
【0022】
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸組成物が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
【0023】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
このような例としては、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
【0024】
合成あるいは入手したポリアミック酸溶液に、前記無機充填材を混合・分散し、さらに本発明におけるシロキサン化合物(ポリジメチルシロキサンまたはアルキレンオキサイド変性ポリメチルシロキサン)を添加混合して塗工液が調製される。塗工液を後述のように支持体(成形用の型)に塗布した後、加熱等の処理することにより、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行なわれる。
【0025】
すなわち、ポリアミック酸は、加熱する方法(1)、または化学的方法(2)によってイミド化することができる。加熱する方法(1)は、ポリアミック酸を200〜350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱する方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。
しかしながら最近では、(2)の方法の一種であるが、イミダゾールやキノリンなどのアミン類を触媒としてワニスに含有させることによって乾燥時におけるイミド化を促進させる方法がとられることも多い。ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが必要であるが、これによると、より低温でイミド化が促進され、機械的耐久性も向上すると言われている。しかし、これらの触媒は極少量であり、乾燥中に分解・昇華するものもあるが、不純物として残留するものもあり好ましくない。
【0026】
イミド化の進行状況(イミド化の程度)は、通常行なわれているイミド化率の測定手法により評価することができる。
このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属されるHと6〜9ppm付近の芳香環に帰属されるHとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)は最も一般的な方法である。
【0027】
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)では、イミド化率を、例えば、次のように定義する。
すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、次により表わされる。
イミド化率=[(A))/(B))]×100
【0028】
この定義におけるイミド基のモル数は、FT−IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,015cm−1との吸光度比。
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm−1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比。
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比。
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1とアミド基の特性吸収1,670cm−1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比。
また、3000〜3300cm−1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
【0029】
本発明においては、前記のようなポリイミド前駆体溶液だけでなく、あらかじめイミド化されており、かつ有機極性溶媒に可溶であるいわゆる溶剤可溶ポリイミドを用いることもできる。
このようなものとしては、リカコート(新日本理化)、ブロック共重合ポリイミド(ピーアイ技研等がある。
【0030】
次に、ポリアミドイミドについて説明する。
<ポリアミドイミド>
ポリアミドイミドは、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂であり、本発明に用いられるポリアミドイミドとしては一般的に知られている構造のものを使用することができる。
一般的にポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、(a)酸クロライド法:酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には当該誘導体のクロライド化合物とジアミンとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭42ー15637号公報)が知られている。あるいは別な方法として、(b)イソシアネート法:酸無水物基とカルボン酸を含む3価の誘導体と芳香族イソシアネートとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭44ー19274号公報)等が知られており、いずれも使用することができる。各製造方法について以下に説明する。
【0031】
(a)酸クロライド法
酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド化合物としては、例えば、下記一般式(I)および一般式(II)に示す化合物を使用することができる。
【0032】
【化2】


(式中、Xはハロゲン元素を示す。)
【0033】
【化3】


(式中、Xはハロゲン元素を示し、Yは−CH−、−CO−、−SO−または−O−を示す。)
【0034】
前記各式において、ハロゲン元素はクロライドが好ましく、誘導体の具体例を挙げると、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4’ビフェニルジカルボン酸、4、4’ビフェニルエーテルジカルボン酸、4、4’ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3、3’、4、4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3、3、’、4、4’ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3、3’、4、4’ビフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1、4シクロヘキサンジカルボン酸、1、2シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸の酸クロライドが挙げられる。
【0035】
一方、ジアミンとしては特に限定されないが、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、および脂環族ジアミンのいずれも用いられるが、芳香族ジアミンが好ましく用いられる。
芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0036】
また、ジアミンとして両末端にアミノ基を有するシロキサン系化合物、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン、1,3,−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン等を用いればシリコーン変性ポリアミドイミドを得ることができる。
【0037】
酸クロライド法により本発明におけるポリアミドイミド(ポリアミドイミド樹脂)を得るためには、ポリイミド樹脂の製造の場合と同様に、上記した酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライドとジアミンとを有機極性溶媒に溶解した後、低温(0〜30℃)で反応させ、ポリアミドイミド前駆体(ポリアミド−アミック酸)とする。
【0038】
使用することのできる有機極性溶媒としては前記ポリイミドと同様であり、ホルムアミド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等)、アセトアミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等)、ピロリドン系溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等)、フェノール系溶媒(例えば、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等)、セロソルブ系溶媒(例えば、ブチルセロソルブ等)、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらを単独あるいは混合溶媒として用いるのが望ましく、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。特に好ましく用いられる溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンである。
【0039】
上記により得たポリアミド・ポリアミック酸溶液に、前記無機充填材と、本発明におけるシロキサン化合物(ポリジメチルシロキサンまたはアルキレンオキサイド変性ポリメチルシロキサン)とを混合して塗工液が調製される。塗工液が支持体(成形用の型)に塗布された後、加熱等の処理することにより、ポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行なわれる。
【0040】
イミド化の方法としては、加熱処理により脱水閉環させる方法、および脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法が挙げられる。
加熱処理により脱水閉環させる場合、例えば、反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃であり、加熱処理時間は30秒間〜10時間、好ましくは5分間〜5時間である。また、脱水閉環触媒を用いる場合、反応温度は0〜180℃、好ましくは10〜80℃であり、反応時間は数十分間〜数日間、好ましくは2時間〜12時間である。脱水閉環触媒の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0041】
(b)イソシアネート法
イソシアネート法の場合に用いる酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体としては、例えば、下記一般式(III)あるいは下記一般式(IV)で示す化合物を使用することができる。
【0042】
【化4】

(式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示す。)
【0043】
【化5】

(式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示し、Yは−CH−、−CO−、−SO−または−O−を示す。)
【0044】
上記一般式(III)、一般式(IV)を有する誘導体は何れも使用することができるが、最も代表的には無水トリメリット酸が挙げられる。また、これらの酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体は、目的に応じて単独または混合して用いることができる。
【0045】
次に、本発明のポリアミドイミドの合成に用いられる一方の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等が挙げられる。これらの芳香族ポリイソシアネートは単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。必要に応じてこの一部としてヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式イソシアネートおよび3官能以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0046】
上記各酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体と、芳香族ポリイソシアネートとを有機極性溶媒に溶解調整して得られるポリアミドイミド前駆体を含む溶液に、前記無機充填材と、本発明におけるシロキサン化合物(ポリジメチルシロキサンまたはアルキレンオキサイド変性ポリメチルシロキサン)とを混合して塗工液が調製される。塗工液を支持体に塗布した後、加熱処理することにより、ポリアミドイミド前駆体からポリアミドイミドへの転化が行なわれる。この方法によるポリアミドイミドへの転化の際、概略ポリアミック酸を経由することなく(炭酸ガスを発生して)ポリアミドイミドを生成する。下記化学反応式に無水トリメリット酸と芳香族イソシアネートとを用いた場合のポリアミドイミド化の例を示す。
【0047】
【化6】

(式中、Arは芳香族基を示す。)
【0048】
<残留溶媒の測定>
本発明における残留溶媒の測定は以下のとおりである。
すなわち、残留溶媒の定量には、熱抽出ガスクロマトグラム質量分析装置を用いた。
ベルトを2〜3mg程度に切り取り、正確に秤量後、熱抽出装置(PY2020D:フロンティアラボ社製)に入れて400℃に加熱した。揮発成分を320℃のインターフェイスを経てガスクロマトグラム質量分析装置(GCMS−QP2010:島津製作所製)に注入し、定量した。
更に詳細に説明すると、ヘリウムガスをキャリアガスとして、試料から揮発した量の1/51(スプリット比50:1)を線速度153.8cm/秒(カラム温度50℃でのキャリアガス流量1.50ml/分、圧力50kPa)で、内径0.25μmφ×30mのカラム(フロンティアラボ社製キャピラリーカラムUA−5)に注入した。次いで、50℃で3分間保持した後、カラムを毎分8℃の割合で400℃まで昇温させ、同温度で10分間保持して、揮発成分を脱着させた。さらに、インターフェイス温度320℃で揮発成分を質量分析装置に注入し、溶媒に相当するピークの面積を求めた。
定量に当たっては、既知量の同一溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)で予め検量線を作成して行なった。(当条件でのN−メチル−2−ピロリドンは、リテンションタイム9.8分(質量数99)のピークに相当する。)
【0049】
本発明の塗布液では、上記ポリイミド、ポリアミドイミドのみならず、必要に応じて他の樹脂成分を含有しても良い。
また、レベリング剤、滑剤、酸化防止剤、触媒等の種々の添加剤を用いても良い。
【0050】
次に、本発明の塗工液の組成分として含有される抵抗調整剤について説明する。
本発明におけるシームレスベルト、特に、中間転写ベルトとして用いる場合、所定の抵抗値に調整する必要があり、抵抗調整剤の添加が欠かせない。
抵抗制御剤としては、カーボンブラック、黒鉛、あるいは、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属や、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等の金属(亜)酸化物微粉末などが挙げられる。また、これらにイオン電導性抵抗制御剤として、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジル、アンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウムなどを用いてもよい。また導電性高分子であるポリエーテルアミドやポリエーテルエステルアミド、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを用いても良い。なお、本発明における抵抗制御剤は、これらの例示化合物に限定されるものではない。
【0051】
本発明においては、上記抵抗制御剤のうち、カーボンブラックが好ましく用いられる。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラク、ケッキェンブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどのものが使用できるが、これらの表面を酸化処理した酸化処理カーボンブラックが好ましい。
また、必要に応じて分散助剤を用いても良い。さらには、カーボンブラックの表面官能基と、その官能基と反応性を有する有機化合物とを反応させて表面処理したものでも良い。
【0052】
次に、前記ポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体を含む塗工液を用いてシームレスベルトを製造する方法について説明する。
すなわち、必要に応じて抵抗調整剤を分散させる工程、該工程により作製された塗布液を支持体(成形用の型)に塗布・流延する工程、支持体に塗布・流延された塗膜中の溶媒を加熱により除去する工程、昇温加熱して塗膜中に含まれる前駆体のイミド化を促進する工程、形成された薄膜を支持体から離型し、シームレスベルトとする工程、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させる工程により製造することができる。
【0053】
抵抗調整剤を分散させる工程では、ポリイミド前駆体溶液に直接抵抗制御剤を分散・混合させる方法またはあらかじめ溶媒に抵抗制御剤を分散させてからポリイミド前駆体溶液と混合させる方法がある。
ここでは、抵抗制御剤としてカーボンブラックを分散させる方法を例として説明する。なお、一例でありこれに限定されるものではない。
【0054】
N−メチル−2−ピロリドンにカーボンブラックとポリイミド前駆体少量を混合し、ジルコニアビーズを用いて、ボールミルやペイントシェーカー、ビーズミル等にて所定時間分散させる。ある程度の粒径に分散された後、取り出した液を分散液とする。
該分散液にポリイミド前駆体溶液を混合することにより所定のカーボンブラック濃度になるように希釈する。このときの混合方法としては、遠心式攪拌機、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、遊星式攪拌機などを用いて行なうことができる。
必要に応じて、レベリング剤や触媒などの添加剤をこのときに添加することもできる。
また、攪拌後は真空脱泡機などを用いて脱泡することが好ましい。
【0055】
次に、上記作製の塗布液を塗布する工程について説明する。
まず、支持体(成形用の型)として遠心成型を用いた場合を例として説明する。以下の説明は、一例であり条件などこれに限定されるものではない。
遠心成型は円筒状の回転体から構成されるものであり、この円筒状の回転体をゆっくりと回転させながら塗工液を全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が得られたところで常温に戻し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、250℃〜400℃程度の高温加熱処理(焼成)し、ポリイミド前駆体のイミド化を行なう。イミド化等が完了後、徐冷して薄膜を型から剥離する。このようにしてシームレスベルトが形成される。なお、型には、剥離しやすいように、離型剤または離型層を形成しておくことが好ましい。
【0056】
十分に冷却後、脱型して得たシームレスベルトを超臨界二酸化炭素に接触させる工程について説明する。
超臨界流体場にシームレスベルトを置くことにより、シームレスベルト中に残存する残留溶媒が超臨界二酸化炭素中に抽出することができる。
超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上、かつ、臨界圧力以上の状態にある流体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましく、また、前記亜臨界流体としては、前記臨界点近傍の温度・圧力領域において高圧液体として存在する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、これらの流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、クロロトリフロロメタン、ジメチルエーテルなどが好適に挙げられる。これらの中でも、臨界温度が約31.3℃と低く、ポリイミドやその他添加剤への影響が小さく、取り扱いに優れる点で、二酸化炭素が特に好ましい。臨界温度が高い他の液体を用いると、ポリイミドの一部が分解する恐れがあり好ましくない。
【0057】
超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素処理の好ましい条件としては、温度は、35〜200℃、より好ましくは、40℃〜100℃。圧力としては、7.1〜60MPaである。ベルト材質や処理効率の点から、温度は低めで圧力は高い条件がより好ましい。
前記超臨界二酸化炭素または前記亜臨界二酸化炭素に加え、必要に応じて他の液体(エントレイナー)を併用することもできる。エントレーナーとしては、上記超臨界流体の他有機溶媒を用いても良い。しかしながら、この場合には、エントレーナーとして使用した液体が最終ベルトに残留するため、これを除去する必要があり、エントレーナー併用工程の後に、エントレーナーを用いない超臨界二酸化炭素のみの抽出工程が必要である。
従って、残留溶媒以外の抽出物を必要としない用途の場合には、エントレーナーを用いる必要はない。
【0058】
処理に用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図3に示す処理を施すための耐圧容器と、超臨界二酸化炭素を供給する加圧ポンプと、抽出した性能低下成分や溶媒を含むガスを抽出物と溶媒とに分離する減圧バルブとを有する分離槽と、を備えた装置が好適に挙げられる。
該装置を用いた処理方法としては、まず、前記耐圧容器にシームレスベルトを仕込み、該耐圧容器内に、加圧ポンプにより前記超臨界二酸化炭素を供給し、超臨界二酸化炭素を接触させて、残留溶媒や性能低下成分を抽出し、該成分を含む超臨界二酸化炭素を排出する。そして、前記超臨界二酸化炭素を、常温及び常圧下に戻すと、該超臨界二酸化炭素が気体となるため、溶媒の除去が不要となる。また、このとき、前記分離槽において、前記減圧バルブにより減圧し、前記性能低下成分と、前記超臨界流体とを分離し、該超臨界流体を再利用してもよい。
【0059】
なお、該ベルトは、超臨界二酸化炭素処理を行なう前に置いては、残留溶媒量が、0.1〜5wt%であるように作製され、超臨界二酸化炭素処理を行なった後に、0.1wt%未満となることが好ましい。超臨界二酸化炭素処理前の残留溶媒が少ない場合は、乾燥条件にもよるが生産性を考慮した工程時間にて作製しようとすると機械的耐久性の劣るものとなる。
本発明において、残留溶媒量が0.1〜5wt%となる条件について説明すると、これは、使用ポリイミド原料、当初の溶剤の種類や使用量、抵抗調節剤の添加量、イミド化触媒の有無等、多くの要件にもよるので一概にいえないが、主に塗膜の乾燥条件、焼成条件には、より多く依存する。特に一次乾燥条件(前述のように、ポリイミド化反応をなるべく避けて低温で比較的長時間、加熱乾燥することが好ましい)、一次乾燥から焼成への昇温速度(毎分0.1℃以上の昇温速度が好ましい)、焼成温度と焼成時間(前述のように、150〜400℃、30秒〜10時間であることが好ましい)が、要因としては最も大きい。
【0060】
特に、カーボンブラックを含有する中間転写ベルトにおいては、カーボンブラックが含有することにより溶媒がさらに抜けにくく、より多く残留しやすい。さらにカーボンブラックを含有すると脆くなりやすいため、含有しないときよりもさらに機械的耐久性が劣る。
超臨界二酸化炭素処理前のベルト中の残留溶媒が多すぎると(5wt%を超えると)、溶媒抽出後のベルト中に空隙部分が生じ、吸湿しやすくなり、湿度環境による寸法変動が生じ好ましくない。具体的には、高湿度時にベルトが伸び、走行不良を起こすことによって色ずれなどの異常画像を生じてしまう。
超臨界二酸化炭素による処理を行なった後は、できる限り残留溶媒が存在しないことが好ましい。
【0061】
上記機械的耐久性とは、屈曲性能であり、MIT耐揉試験によるベルト材質が破断するまでの屈曲回数にて評価することができる。測定方法としては、JIS−P8115に準拠する。測定条件としては、幅15mmのサンプルに対して、荷重1kgf、屈曲角度135度、屈曲速度175回/分の条件にて測定し、該測定条件下で、1000回以上であることが好ましい。さらに好ましくは5000回以上が良い。
【0062】
次に、本発明における電子写真装置に装備されるベルト構成部に用いられるシームレスベルトについて、要部模式図を参照しながら以下に詳しく説明する。なお、模式図は一例であってこれに限定されるものではない。
図1の模式図に、ベルト構成部等を装備した電子写真装置の要部概略構成を示す。
図1に示すベルト部材を含む中間転写ユニット(500)は、複数のローラに張架された中間転写体である中間転写ベルト(501)などにより構成されている。この中間転写ベルト(501)の周りには、2次転写ユニット(600)の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ(605)、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーニングブレード(504)、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ(505)などが対向するように配設されている。
【0063】
また、中間転写ベルト(501)の外周面または内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト(501)の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード(504)の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト(501)の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ(514)は、中間転写ベルト(501)が架け渡されている1次転写バイアスローラ(507)とベルト駆動ローラ(508)との間の位置に設けられる。
【0064】
この中間転写ベルト(501)は、1次転写電荷付与手段である1次転写バイアスローラ(507)、ベルト駆動ローラ(508)、ベルトテンションローラ(509)、2次転写対向ローラ(510)、クリーニング対向ローラ(511)、及びフィードバック電流検知ローラ(512)に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、1次転写バイアスローラ(507)以外の各ローラは接地されている。1次転写バイアスローラ(507)には、定電流または定電圧制御された1次転写電源(801)により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流または電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0065】
中間転写ベルト(501)は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ(508)により、矢印方向に駆動される。
このベルト部材である中間転写ベルト(501)は、通常、半導体、または絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明においてはシームレスベルトが好ましく用いられ、これによって耐久性が向上すると共に、優れた画像形成が実現できる。また、中間転写ベルトは、感光体ドラム(200)上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0066】
2次転写手段である2次転写バイアスローラ(605)は、2次転写対向ローラ(510)に張架された部分の中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。2次転写バイアスローラ(605)は、2次転写対向ローラ(510)に張架された部分の中間転写ベルト(501)との間に被記録媒体である転写紙(P)を挟持するように配設されており、定電流制御される2次転写電源(802)によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0067】
レジストローラ(610)は、2次転写バイアスローラ(605)と2次転写対向ローラ(510)に張架された中間転写ベルト(501)との間に、所定のタイミングで転写材である転写紙(P)を送り込む。また、2次転写バイアスローラ(605)には、クリーニング手段であるクリーニングブレード(608)が当接している。該クリーニングブレード(608)は、2次転写バイアスローラ(605)の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
【0068】
このような構成のカラー複写機において、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム(200)は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、該感光体ドラム(200)上に、Bk(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行なわれる。中間転写ベルト(501)はベルト駆動ローラ(508)によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト(501)の回転に伴って、1次転写バイアスローラ(507)に印加される電圧による転写バイアスにより、Bkトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の1次転写が行なわれ、最終的にBk、C、M、Yの順に中間転写ベルト(501)上に各トナー像が重ね合わせて形成される。
【0069】
例えば、上記Bkトナー像形成は次のように行なわれる。
図1において、帯電チャージャ(203)は、コロナ放電によって感光体ドラム(200)の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、Bkカラー画像信号に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行なう。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム(200)の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、Bk静電潜像が形成される。このBk静電潜像に、Bk現像器(231K)の現像ローラ上の負帯電されたBkトナーが接触することにより、感光体ドラム(200)の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBkトナー像が形成される。
【0070】
このようにして感光体ドラム(200)上に形成されたBkトナー像は、感光体ドラム(200)と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト(501)のベルト外周面に1次転写される。この1次転写後の感光体ドラム(200)の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム(200)の再使用に備えて、感光体クリーニング装置(201)で清掃される。この感光体ドラム(200)側では、Bk画像形成工程の次にY画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるY画像データの読み取りが始まり、そのY画像データによるレーザ光書き込みによって、感光体ドラム(200)の表面にY静電潜像を形成する。
【0071】
そして、先のBk静電潜像の後端部が通過した後で、且つY静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット(230)の回転動作が行なわれ、Y現像機(231Y)が現像位置にセットされ、Y静電潜像がYトナーで現像される。以後、Y静電潜像領域の現像を続けるが、Y静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBk現像機(231K)の場合と同様にリボルバ現像ユニットの回転動作を行ない、次のC現像機(231C)を現像位置に移動させる。これもやはり次のC静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、C及びMの画像形成工程については、それぞれのカラー画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のBk、Yの工程と同様であるので説明は省略する。
【0072】
このようにして感光体ドラム(200)上に順次形成されたBk、Y、C、Mのトナー像は、中間転写ベルト(501)上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト(501)上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ(610)のニップで待機している。
そして、2次転写対向ローラ(510)に張架された中間転写ベルト(501)と2次転写バイアスローラ(605)によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト(501)上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙(P)の先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ(610)が駆動されて、転写紙ガイド板(601)に沿って転写紙(P)が搬送され、転写紙(P)とトナー像とのレジスト合わせが行なわれる。
【0073】
このようにして、転写紙(P)が2次転写部を通過すると、2次転写電源(802)によって2次転写バイアスローラ(605)に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト(501)上の4色重ねトナー像が転写紙(P)上に一括転写(2次転写)される。この転写紙(P)は、転写紙ガイド板(601)に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ(606)との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置(210)により定着装置(270)に向けて送られる(図1参照)。そして、この転写紙(P)は、定着装置(270)の定着ローラ(271)、(272)のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置(270)は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0074】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム(200)の表面は、感光体クリーニング装置(201)でクリーニングされ、上記除電ランプ(202)で均一に除電される。また、転写紙(P)にトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト(501)のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード(504)によってクリーニングされる。該ベルトクリーニングブレード(504)は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0075】
このベルトクリーニングブレード(504)の上記中間転写ベルト(501)の移動方向上流側には、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材(503)が設けられている。このトナーシール部材(503)は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード(504)から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙(P)の搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材(503)は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード(504)とともに、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離される。
【0076】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト(501)のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ(505)により削り取られた潤滑剤(506)が塗布される。該潤滑剤(506)は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ(505)に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト(501)のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ(505)及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0077】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作及び感光体ドラム(200)への画像形成は、1枚目の4色目(M)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(Bk)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト(501)は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面の上記ベルトクリーニングブレード(504)でクリーニングされた領域に、2枚目のBkトナー像が1次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行なうことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット(230)の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード(504)を中間転写ベルト(501)に接触させたままの状態にしてコピー動作を行なう。
【0078】
上記実施形態では、感光体ドラムを一つだけ備えた複写機について説明したが、本発明は、例えば、図2に示すような複数の感光体ドラムを一つの中間転写ベルトに沿って並設した画像形成装置にも適用できる。
図2は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム(21BK、21Y、21M、21C)を備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
【0079】
図2において、プリンタ本体(10)は電子写真方式によるカラー画像形成を行なうための、画像書込部(12)、画像形成部(13)、給紙部(14)から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部(12)に送信する。画像書込部(12)は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部(13)の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)(21BK、21M、21Y、21C)に各色信号に応じた画像書込を行なう。
【0080】
画像形成部(13)は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体(21BK、21M、21Y、21C)を備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体(21BK、21M、21Y、21C)の周囲には、帯電装置、上記書込部(12)からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置(20BK、20M、20Y、20C)、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ(23BK、23M、23Y、23C)、クリーニング装置(表示略)、及び図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置(20BK、20M、20Y、20C)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト(22)は、各感光体(21BK、21M、21Y、21C)と、各1次転写バイアスローラ(23BK、23M、23Y、23C)との間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0081】
一方、転写紙(P)は、給紙部(14)から給紙された後、レジストローラ(16)を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト(50)に担持される。そして、中間転写ベルト(22)と転写搬送ベルト(50)とが接触するところで、上記中間転写ベルト(22)上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ(60)により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙(P)上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙(P)は、転写搬送ベルト(50)により定着装置(15)に搬送され、この定着装置(15)により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0082】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト(22)上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング装置(25)によって中間転写ベルト(22)から除去される。このベルトクリーニング装置(25)の下流側には、潤滑剤塗布装置(表示略)が配設されている。この潤滑剤塗布装置は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト(22)に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。該導電性ブラシは、中間転写ベルト(22)に常時接触して、中間転写ベルト(22)に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト(22)のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
【0083】
なお、本発明におけるシームレスベルトは、上述したような中間転写ベルト(501)または(22)を装備した中間転写ベルト方式の画像形成装置に好適に適用できる他、該中間転写ベルト(501)または(22)の代りに転写搬送ベルトを装備した転写搬送ベルト方式の画像形成装置にも適用できる。さらに、転写搬送ベルト方式の画像形成装置の場合においても、前記1感光体ドラム方式あるいは4感光体ドラム方式の何れにも適用可能である。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
【0085】
(実施例1)
下記構成材料を遠心攪拌脱泡機にて、混合・脱泡し、塗布液とした。
<塗布液構成材料>
ポリイミド溶液U−ワニスA(宇部興産;固形分18wt%) 50重量部
ポリイミド溶液U−ワニスS(宇部興産;固形分18wt%) 50重量部
ポリエーテル変性シリコンFZ2105(東レダウコーニング) 0.01重量部
上記塗布液を用いて、以下のようにシームレスベルトを作製した。
【0086】
[シームレスベルト1の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度5℃/分で120℃まで昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度5℃/分で320℃まで昇温して15分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト1を得た。
【0087】
[シームレスベルト1の超臨界二酸化炭素処理]
製作したシームレスベルトを図3における装置の抽出槽(4)に投入し、超臨界二酸化炭素を流量400ml/min(標準状態換算値)、45℃、30MPa、30分の処理条件で流通させて、ベルト中の残留N−メチル−2−ピロリドンを抽出・除去を行ない、容器内を常圧に戻し、ベルトを取り出し、ベルト1−Aを得た。
【0088】
(比較例1)
実施例1における超臨界二酸化炭素処理を行なっていないシームレスベルト1とした。
【0089】
(比較例2)
実施例1における塗布液を用いて以下の条件にてシームレスベルト2を作製した。
[シームレスベルト2の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度3℃/分で140℃まで昇温して90分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度2℃/分で400℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト2を得た。
【0090】
(実施例2)
下記構成材料を遠心攪拌脱泡機にて、混合・脱泡し、塗布液とした。
<塗布液構成材料>
ポリアミドイミド溶液HR16NN(東洋紡績;固形分15wt%)100重量部
ポリエーテル変性シリコンFZ2105(東レダウコーニング) 0.01重量部
上記塗布液を用いて、以下のようにシームレスベルトを作製した。
【0091】
[シームレスベルト3の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度5℃/分で120℃まで昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度5℃/分で260℃まで昇温して15分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト3を得た。
【0092】
[シームレスベルト3の超臨界二酸化炭素処理]
製作したシームレスベルトを図3における装置の抽出槽(4)に投入し、超臨界二酸化炭素を流量400ml/min(標準状態換算値)、45℃、30MPa、30分の処理条件で流通させて、ベルト中の残留N−メチル−2−ピロリドンを抽出・除去を行ない、容器内を常圧に戻し、ベルトを取り出し、ベルト3−Aを得た。
【0093】
(比較例3)
実施例2における超臨界二酸化炭素処理を行なっていないシームレスベルト3とした。
【0094】
(比較例4)
実施例2における塗布液を用いて以下の条件にてシームレスベルト4を作製した。
[シームレスベルト4の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度3℃/分で140℃まで昇温して90分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度2℃/分で300℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト4を得た。
【0095】
上記各種ベルトについて、熱抽出ガスクロマトグラフ質量分析装置にて残留溶媒の測定を行なった。
また、MIT耐揉試験機DA(東洋精機)にて折り曲げ破断回数を計測した。
測定条件は、以下の通り。
<MIT耐揉試験測定条件>
サンプル幅;15mm
屈曲速度;175回/分
屈曲角度;135度
屈曲回数;サンプルが破断するまでの屈曲回数を計測する。
結果を表1に示す。
【0096】
【表1】


以上のように、超臨界二酸化炭素処理を行なうことで残留溶媒を確実に抽出することができた。また、残留溶媒を低減する乾燥条件にて作製したベルトに比べ、耐屈曲性に優れるシームレスベルトが得られた。
【0097】
(実施例3)
[塗布液の調製]
まず、下記に示す各構成材料を混合し、φ1mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミル分散機にて5時間分散し、カーボン分散液を作製した。
<分散液構成材料>
ポリイミド溶液U−ワニスS(宇部興産;固形分18wt%) 2重量部
カーボンブラックSpecialblack4(デグサ) 10重量部
N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学) 88重量部
上記分散液を用いて、下記の構成材料を混合し、遠心式攪拌脱泡機にて、混合、脱泡し、塗布液を得た。
<塗布液構成材料>
上記カーボンブラック分散液 50重量部
ポリイミド溶液U−ワニスA(宇部興産;固形分18wt%) 50重量部
ポリイミド溶液U−ワニスS(宇部興産;固形分18wt%) 50重量部
ポリエーテル変性シリコンFZ2105(東レダウコーニング) 0.01重量部
【0098】
[シームレスベルト5の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度5℃/分で120℃まで昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度5℃/分で300℃まで昇温して40分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト5を得た。
【0099】
[シームレスベルト5の超臨界二酸化炭素処理]
製作したシームレスベルトを図3における装置の抽出槽(4)に投入し、超臨界二酸化炭素を流量400ml/min(標準状態換算値)、45℃、30MPa、30分の処理条件で流通させて、ベルト中の残留N−メチル−2−ピロリドンを抽出・除去を行ない、容器内を常圧に戻し、ベルトを取り出し、ベルト5−Aを得た。
【0100】
(比較例5)
実施例3における超臨界二酸化炭素処理を行なっていないシームレスベルト5とした。
【0101】
(比較例6)
実施例3のシームレスベルトの作製条件を以下のものとする他は同じとした。
[シームレスベルト6の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度3℃/分で140℃まで昇温して90分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度2℃/分で400℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト6を得た。
【0102】
(実施例4)
[塗布液の調製]
まず、下記に示す各構成材料を混合し、φ1mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミル分散機にて5時間分散し、カーボン分散液を作製した。
<分散液構成材料>
ポリアミドイミド溶液HR16NN(東洋紡績;固形分15wt%) 2重量部
カーボンブラックMA77(三菱化学) 10重量部
N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学) 88重量部
上記分散液を用いて、下記の構成材料を混合し、遠心式攪拌脱泡機にて、混合、脱泡し、塗布液を得た。
<塗布液構成材料>
上記カーボンブラック分散液 50重量部
ポリアミドイミド溶液HR16NN(東洋紡績;固形分15wt%)100重量部
ポリエーテル変性シリコンFZ2105(東レダウコーニング) 0.01重量部
【0103】
[シームレスベルト7の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度5℃/分で120℃まで昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度5℃/分で240℃まで昇温して40分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト7を得た。
【0104】
[シームレスベルト7の超臨界二酸化炭素処理]
製作したシームレスベルトを図3における装置の抽出槽(4)に投入し、超臨界二酸化炭素を流量400ml/min(標準状態換算値)、45℃、30MPa、30分の処理条件で流通させて、ベルト中の残留N−メチル−2−ピロリドンを抽出・除去を行ない、容器内を常圧に戻し、ベルトを取り出し、ベルト7−Aを得た。
【0105】
(比較例7)
実施例4における超臨界二酸化炭素処理を行なっていないシームレスベルト7とした。
【0106】
(比較例8)
実施例3のシームレスベルトの作製条件を以下のものとする他は同じとした。
[シームレスベルト8の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度3℃/分で140℃まで昇温して90分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度2℃/分で300℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト8を得た。
【0107】
(実施例5)
実施例3における塗布液を用いて以下の条件にてシームレスベルトを作製した。
[シームレスベルト9の作製]
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度5℃/分で80℃まで昇温して20分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度5℃/分で280℃まで昇温して15分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚80μmのシームレスベルト9を得た。
【0108】
[シームレスベルト9の超臨界二酸化炭素処理]
製作したシームレスベルトを図3における装置の抽出槽(4)に投入し、超臨界二酸化炭素を流量400ml/min(標準状態換算値)、45℃、30MPa、30分の処理条件で流通させて、ベルト中の残留N−メチル−2−ピロリドンを抽出・除去を行ない、容器内を常圧に戻し、ベルトを取り出し、ベルト9−Aを得た。
【0109】
上記各種ベルトについて、同様にして、熱分解ガスクロマトグラフィーにて残留溶媒の測定を行なった。
また、MIT耐揉試験機DA(東洋精機)にて折り曲げ破断回数を計測した。
また、図2の装置の中間転写ベルトとして搭載し、25℃50%環境と30℃80%環境において、フルカラー画像を連続1万枚出力したときの画像評価及びベルト状態の確認を行なった。
結果を表2に示す。
【0110】
上記のように、超臨界二酸化炭素処理により確実に残留溶媒を除去された機械的強度に優れる中間転写ベルトを得ることができた。超臨界二酸化炭素処理をしないで残留溶媒を低減させたものでは、十分な機械的強度を得られず実用上問題がある。
また、超臨界二酸化炭素処理を行なう前の残留溶媒量が多すぎると(5wt%を超えると)、高湿度環境で色ずれが生じ実用上、あまり好ましくない。
【0111】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る電子写真装置のベルト構成部に用いられるシームレスベルトと装置を説明するための要部模式図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置のベルト構成部に配備される1つの中間転写ベルトに沿って複数の感光体ドラムが並設されている一構成例を示す要部模式図である。
【図3】超臨界二酸化炭素処理装置の模式図である。
【符号の説明】
【0113】
(図1)
P 転写紙
70 除電ローラ
80 アースローラ
200 感光体ドラム
201 感光体クリーニング装置
202 除電ランプ
203 帯電チャージャ
204 電位センサ
205 トナー画像濃度センサ
210 ベルト搬送装置
230 リボルバ現像ユニット
231Y Y現像機
231K Bk現像機
231C C現像機
231M M現像機
270 定着装置
271、272 定着ローラ
500 中間転写ユニット
501 中間転写ベルト
503 トナーシール部材
504 ベルトクリーニングブレード
505 潤滑剤塗布ブラシ
506 潤滑剤
507 1次転写バイアスローラ
508 ベルト駆動ローラ
509 ベルトテンションコントローラ
510 2次転写対向ローラ
511 クリーニング対向ローラ
512 フィードバッグ電流検知ローラ
513 トナー画像
514 光学センサ
600 2次転写ユニット
601 転写紙ガイド板
605 2次転写バイアスローラ
606 転写紙除電チャージャ
608 クリーニングブレード
610 レジストローラ
801 1次転写電源
802 2次転写電源
(図2)
P 転写紙
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20BK、20M、20Y、20C 現像装置
21BK、21M、21Y、21C 感光体
22 中間転写ベルト
23BK、23M、23Y、23C 1次転写バイアスローラ
25 ベルトクリーニング装置
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイアスローラ
(図3)
1 高圧送液ポンプ
2 ストップバルブ
3 フィルター
4 抽出槽
5 スターラー
6 フィルター
7 背圧弁
8 流量計
T 温度計
P 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を塗布、乾燥することにより成膜された電子写真用シームレスベルトにおいて、該シームレスベルトが、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理を施され、残留溶媒量が0.1wt%未満であることを特徴とする電子写真用シームレスベルト。
【請求項2】
前記シームレスベルトのMIT耐揉試験による耐折回数が、1000回以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用シームレスベルト。
【請求項3】
前記シームレスベルトが抵抗調整剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用シームレスベルト。
【請求項4】
像担持体上に形成されるトナー現像画像を転写して被記録媒体に画像形成する電子写真装置に装備されるベルト構成部用のシームレスベルトにおいて、該ベルトは、請求項1乃至3のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とするベルト構成部用のシームレスベルト。
【請求項5】
像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置に装備されるベルト構成部用のシームレスベルトにおいて、前記中間転写ベルトは、請求項1乃至3のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とするベルト構成部用のシームレスベルト。
【請求項6】
像担持体上に形成されるトナー現像画像を転写して被記録媒体に画像形成し、ベルト構成部を装備した電子写真装置において、該ベルトは、請求項1乃至3のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とする電子写真装置。
【請求項7】
像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写し、ベルト構成部を装備した電子写真装置において、前記中間転写ベルトは、請求項1乃至3のいずれかに記載のシームレスベルトであることを特徴とする電子写真装置。
【請求項8】
少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有することを特徴とする電子写真用シームレスベルトの製造方法。
【請求項9】
少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液からなる塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有する電子写真用シームレスベルトの製造方法において、該シームレスベルトは、脱型工程時における溶媒の残留溶媒量が0.1〜5wt%となる条件により作製され、該処理工程により0.1wt%未満となることを特徴とする電子写真用シームレスベルトの製造方法。
【請求項10】
少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液に抵抗調整剤を分散させる工程、該工程により作製された塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有することを特徴とする電子写真用中間転写ベルトの製造方法。
【請求項11】
少なくともポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体の有機極性溶媒溶液、または溶剤可溶ポリイミド溶液に抵抗調整剤を分散させる工程、該工程により作製された塗布液を型の面上に所定厚みで塗布する塗布工程、塗布された型を加熱乾燥する乾燥工程、乾燥終了した型を冷却する冷却工程、冷却した型から膜を取り出す脱型工程、脱型し得られたシームレスベルトを超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有する電子写真用中間転写ベルトの製造方法において、該中間転写ベルトは、脱型工程時における溶媒の残留溶媒量が0.1〜5wt%となる条件により作製され、該処理工程により0.1wt%未満となることを特徴とする電子写真用中間転写ベルトの製造方法。
【請求項12】
前記中間転写ベルトのMIT耐揉試験による耐折回数が1000回以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の中間転写ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−292616(P2008−292616A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136212(P2007−136212)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】