説明

電子写真用転写不織布

【課題】本発明は、布風の風合いを損なわずに、トナー定着性を向上させ、高解像度の画像印刷を可能とすると共に搬送性にも優れた電子写真用転写不織布を提供する事を課題とする。
【解決手段】木材パルプと有機繊維とからなる原布シートにおいて、有機繊維の一部が熱融着されており、該原布シートに水分散有機重合物を付与してなる事を特徴とする電子写真用転写不織布である事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用転写不織布に関するものである。更に詳しくは、乾式もしくは湿式トナーを用いた電子写真方式のプリンター、ファックス、複写機、オンデマンド印刷機により印刷する事ができ、優れたトナー転写性を有すると共に柔軟な風合いに優れた電子写真用転写不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による印刷は、パーソナルコンピューターからの印刷やオンデマンド印刷の広がりにより、急速に拡大している。これまで、高級なアウトプットメディアとしては、昇華型熱転写方式が先行しており、医療における画像処理分野などで使用されてきたが、価格が高い事と印刷処理時間が長い事が普及の大きな問題点であった。最近になって、解像度の飛躍的な向上とインキ滴の微細化技術が相まって、インクジェットプリント方式が写真画質に近づきつつあり、そのランニングコストの安さから幾つかのフォトシステムが市販されるに至っている。しかしながら、インクジェット方式は安価ではあるが、印刷処理に時間がかかるという問題は解決されていない。比較的安価で印刷処理時間の短い電子写真方式は、従来のテキスト中心のアウトプットだけでなく、ビジュアルを重視したフルカラーのアウトプット方式として注目されている。
【0003】
電子写真方式においても解像度向上とトナーの微細化技術が確実に進行しており、その活発な開発状況から、やがてはインクジェットプリント方式やオフセット印刷方式に近づいていくと予測されている。電子写真方式は、半導体材料の上に、オリジナルの潜像を形成し、トナーによって目に見えるトナー像を形成する。このトナー像は負または正の電荷を有しており、これとは逆の電荷を持つ受像材上に転写される場合と、一旦中間転写材に転写された後に更に受像材上に転写される場合がある。受像材へのトナーの転写は、逆に帯電したトナーと受像材の静電力によって行われるが、実際は半導体材料または中間転写体上にあるトナー像と、受像材同士が機械的圧力によって密着する事も重要な役割を示している。最終的には、トナーは熱や圧力のどちらか、または両方の作用によって受像材上に定着される。トナー像の受像材への転写効率を向上させる技術として、受像材の体積電気抵抗値や表面電気抵抗値、平滑度、塗工層の空隙を規定して、これを向上する試みは比較的長い間研究され、既に幾つか報告されている。しかしながら、これらの研究は受像体が硬質で平滑性に優れる紙基質であるケースが殆どであり、布風の風合いを持った柔軟な不織布に関連する報告は殆どない状態である。
【0004】
また、印刷用不織布の分野でも、オフセット印刷により印刷されたカレンダーやポスターが一般的に普及しているが、電子写真方式により印刷された印刷物は一般的ではなかった。従って、前述した様に印刷方式として優れた特徴を有する電子写真方式による印刷に適した印刷用不織布製品が市場から望まれているのが現状である。
【0005】
電子写真方式に適した印刷用不織布としては、例えば、複合融着繊維を80mass%以上含み、これら複合融着繊維が融着した不織布であって、実質的に繊維に由来する樹脂のみによって融着している印刷基材用不織布が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、本印刷基材用不織布では、強度物性面には優れた特徴を有するものの、表面性に劣る為、印刷の鮮明性が劣ると言った問題があった。また、鮮明な図柄が印刷されたシート部材を提供する目的で、多数の熱可塑性合成樹脂繊維から形成された所与厚みを有する繊維不織布からなる電子写真方式に適したシート部材が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、本明細書には、目的とする不織布を得る為の具体的な手法に関する記述が乏しいと言った問題があった。また、繊維経0.3μm以上20μm以下の繊維を主体とする不織布支持体で特定の平滑度を有する電子写真記録用シートが提案されている(特許文献3参照)。この方法では、表面の平滑性に優れてはいるが、改良の余地があり、また、トナーの不織布表面への定着性を改善する事により、更なる解像度の向上が必要となった。
【特許文献1】特開2003−96687号公報
【特許文献2】特開2002−69868号公報
【特許文献3】特開2001−183861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、布風の風合いを損なわずに、トナー定着性を向上させ、高解像度の画像印刷を可能とすると共に搬送性にも優れた電子写真用転写不織布を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明品は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下の発明を見出した。
【0008】
即ち、本願の発明は、木材パルプと有機繊維とからなる原布シートであって、有機繊維の一部が熱融着されており、該原布シートに水分散有機重合物を付与してなる電子写真用転写不織布である。
【0009】
有機繊維の融点が110℃以上であると好ましい。
【0010】
木材パルプ/有機繊維の質量比が10/90〜70/30であると好ましい。
【0011】
木材パルプの濾水度(カナディアンスタンダードフリーネス値)が、300〜600mlであると好ましい。
【0012】
水分散有機重合物がスチレンブタジエン系ラテックスであると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子写真用転写不織布は、木材パルプ及び有機繊維からなる原布シートに、水分散有機重合物を付与する事で、布風の風合いを損なわずに、トナー定着性を向上させ、高解像度の画像印刷を可能とすると共に搬送性にも優れた電子写真用転写不織布を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の電子写真用転写不織布について、詳細に説明する。
【0015】
近年の電子写真方式は、高画質化を狙い、トナーは微細化の方向へ技術開発が進んでおり、その結果、トナー像を形成する画像層も薄層化している。また、感光装置のタンデムレイアウトなどにより、近年益々印刷速度が向上し毎分20ページから更に50ページを超える電子写真方式の印刷機が実用化される中でトナー画像と受像材の接触時間は益々短くなっており、トナー像と受像材即ち電子写真用転写不織布の密着性や電子写真用転写不織布の熱伝導性はトナーの転写効率の向上と高画質化に益々重要となっている。即ち、トナー定着性と画質に優れた電子写真用転写不織布を得るには、比較的平滑な表面性、機械的圧力がかかった時にトナーと密着する事ができる圧縮性、トナー定着の為には熱伝導性に優れる事がポイントとなる。
【0016】
本発明の電子写真用転写不織布には、木材パルプと有機繊維とからなる原布シートが用いられる。木材パルプのみから構成されたシートでは、布風の柔軟な風合いを得る事はできず、電子写真用転写紙になってしまう。一方、有機繊維のみから構成されたシートでは、柔軟な風合いに優れるものの、木材パルプに比べて繊維径の大きい有機繊維がシート表面を覆う為、シート表面が凹凸のある電子写真用転写不織布となってしまい、ドラムの面に接しない部分が出てトナーが転写されないか、トナーの定着が悪くなってしまい、熱が伝わらずトナーが定着しないと言った不具合を生じる。本発明の電子写真用転写不織布の様に、木材パルプと有機繊維とからなるシートの場合、有機繊維の隙間に、木材パルプが充填される事になり、その結果、シート表面の平滑性に優れ、トナー定着性が向上して、高解像度の画像が得られる。また、有機繊維を有する事で、布ライクな柔軟な風合いを保持する事もできる。
【0017】
本発明の電子写真用転写不織布に用いられる木材パルプは、NBKP、LBKP、NBSP、LBSPその他何れの種類のパルプでも限定はされないが、目詰め、強度の点からNBKPがより好ましい。また濾水度(カナディアンスタンダードフリーネス値)は、特に限定しないが、300〜600mlの範囲内にある事が好ましく、より好ましくは400〜500mlの範囲である。濾水度が、300ml未満であると湿式抄紙法による原布シート形成の段階で目が詰まって、濾水性が悪くなり、均一な地合いが得られないケースがあり、一方、600ml以上であると、繊維の微細化具合が悪く、平滑な表面性の電子写真転写用不織布が得られないケースがある。
【0018】
本発明の電子写真用転写不織布に用いられる木材パルプ以外の有機繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンまたはこれらポリマーの変性ポリマー及びコポリマー、アクリル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維、レーヨン繊維、再生セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース繊維やコラーゲン、アルギン酸、キチン質等を溶液にしたものを紡糸した繊維等があげられる。
【0019】
本発明の電子写真用転写不織布に用いられる有機繊維は繊度が0.1〜6.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.6〜3.3デシテックスである。繊度が0.1デシテックスより細いと抄紙性が悪く地合いが悪くなる傾向があり、コストアップにもなる。一方、6.0デシテックスより太いと平滑性が悪くなり、トナー定着性が悪くなる傾向がある。繊維長は2〜20mmが好ましく、より好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mm以下となると湿式抄紙でワイヤーから繊維が抜け易く歩留り低下となったり、一方20mmを超えるとスクリーンでの詰まり等が発生する事がある。また、プリンターメーカーまたは機種によりトナーを定着させる温度が違う為一概には言えないが、トナーを定着させる温度よりも低い温度で融解する有機繊維を使用した場合、熱の影響で不織布に波打が出て、搬送性やトナー定着性が悪くなる。従って、本発明の電子写真用転写不織布に用いる有機繊維の融点は、トナーを定着させる温度よりも高い融点を持つ繊維が選択される事が好ましい。本発明の電子写真用転写不織布に用いられる有機繊維の融点は110℃以上のものが好ましく、更に好ましくは140℃以上である。
【0020】
本発明の電子写真用転写不織布には、これら有機繊維の一部が熱融着されている事により、不織布自体に強度とコシを付与する事ができ、シートの搬送性が向上する。また、有機繊維の一部が熱融着する事によって、原布シート内部に微少な空間が発生し、それにより嵩高な原布シートを得る事ができる。電子写真用転写不織布が嵩高になる事によって、転写不織布の圧縮率が向上し、これにより、トナーの定着性が向上して、高解像度の画像を得る事ができる。本発明における有機繊維の一部が融着している状態とは、不織布製造時の乾燥工程もしくは熱カレンダー処理工程等における加熱により有機繊維の一部が融解し、元の繊維の形態を失う事を指す。融解した有機繊維の配合比率は、特に限定はないが、原布シートに対して、1〜60質量%以下である事が好ましく、更に好ましくは、10〜40質量%である。1質量%より少ないと効果が現れにくいケースがあり、一方、60質量%より多いと、風合いが堅くなり、紙ライクとなるケースがある。有機繊維の一部が熱融着した原布シートを用いる事で、布ライクな独特の風合いがあるばかりか、シートの強度・コシも強くなり電子写真記録装置におけるシートの搬送性が良好となり、更にトナーの定着性が向上する事を見出した。
【0021】
本発明の電子写真用転写不織布における原布シートの製造方法としては、特に限定はないが、均一な地合いが得られる湿式抄紙法が好ましい。湿式抄紙法は木材パルプ以外の有機繊維を単独または組み合わせて木材パルプと混合して水に分散させスラリーを調節する。スラリーは長網、円網または傾斜ワイヤー式抄紙機を用いて抄造される。また、抄造の際に配合する薬品としては、湿紙状態での断紙対策として湿潤強度剤やヤンキードライヤーからの剥離を安定させる為、内添サイズ剤を使用しても良い。
【0022】
原布シートを形成する繊維として、木材パルプ/有機繊維が質量比で10/90〜70/30の割合である事が好ましい。木材パルプは、主に目詰め効果によるトナー定着性の向上、水素結合を利用した原布シートの強度向上といった効果を発現する。また、木材パルプ以外の有機繊維は、布風の風合いを発現させる。上記質量比において、木材パルプと有機繊維を混合する事で、布風の風合いを持ったまま印刷適性の優れた電子写真用転写不織布を得る事ができる。
【0023】
本発明の電子写真用転写不織布は、木材パルプと有機繊維から構成されるので、両者間の接着性に劣る傾向にあり、それによる弊害が発生するケースがある。即ち、搬送時に不織布表面繊維の離脱が発生して印刷装置内を汚したり、印刷仕上がり等品質に与える損害が発生する可能性がある。本発明の電子写真用転写不織布の原布シートに水分散有機重合物を接着剤として塗布加工する事により、シート表面の繊維接着を強固にする事で、これらの懸念事項を防止する事ができる。本発明の電子写真用転写不織布に用いられる水分散有機重合物は、アクリル酸エステル共重合体、エチレン酢ビポリマー、メチルメタアクリレート系ラテックス、スチレンブタジエン系ラテックス、アクリルニトリルブタジエン系ラテックス等があげられる。特に限定されないが、トナー定着性と風合い等を考慮し、スチレンブタジエン系ラテックス等を使用する事が好ましい。
【0024】
これらの水分散有機重合物の原布シートへの付与方法は、特に限定されないが、原布シートに機械的力が比較的加わらず原布シート面を傷めない事から、浸漬法によるサイズプレスやタブサイズプレス等で含浸処理される事が好ましい。含浸処理によって製造された本発明の電子写真用転写不織布は、表裏面におけるトナー定着性の差が小さく、原布シート内部にまで水分散有機重合物が侵入する為、布風の風合いを維持したまま、強度を維持する事ができる。また、乾燥方式は本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されない。しかし、含浸処理直後にシリンダードライヤーにて乾燥すると、水分散有機重合物の粘着性によりドライヤー汚れが発生し、長時間運転すると水分散有機重合物の粕が電子写真用転写不織布に付着する可能性がある。従って、赤外線乾燥やエアードライヤー等の非接触式にて水分散有機重合物を乾燥させて、シートの粘着性を低減させた後、シリンダードライヤーによる接着式の乾燥で平滑性をだす事がより好ましい。
【0025】
本発明の電子写真用転写不織布は、密度が0.20〜0.55g/cm3の範囲である事が好ましい。該密度は、原布シートの繊維の種類、配合比率、坪量や厚みの調整、水分散有機重合物の付着量等で適宜調整する事ができる。密度が0.20g/cm3よりも小さくなると、トナーが電子写真用転写不織布表面に留まる事ができず裏側まで浸透し、裏抜けするといった問題が発生するケースがあり、一方、密度が0.55g/cm3を超えると、紙ライクの堅い風合いとなると共に、圧縮率に劣り、トナーの定着性が低下するケースがある。また、本発明の電子写真用転写不織布の厚さに特に制限はないが、通常坪量で40〜200g/m2程度の不織布が使用される。好ましくは坪量で60〜150g/m2である。
【実施例】
【0026】
以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を示す。実施例及び比較例で作製した電子写真用転写不織布は下記の方法で評価を行った。
1)画像鮮明性(トナー定着性)
キヤノン製:CP−2150機でブラック、シアン、マゼンタ、イエローのソリッド画像をA4縦目の電子写真用転写不織布を横通しする事により印刷した。画像の鮮明さを以下の6段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
「6」:各色共に画像むらが全くなく、鮮明性に特に優れる。
「5」:一部の色でわずかに画像むらが見られるが、鮮明性に優れる。
「4」:二つ以上の色でわずかに画像むらが見られが、鮮明性に優れる。
「3」:各色共にわずかに画像むらが見られが、問題ないレベルの鮮明性である。
「2」:各色共に部分的に画像むらが見られ、鮮明性に劣る。
「1」:各色共に全面的な画像むらが見られ、鮮明性に大きく劣る。
【0027】
2) 風合い
電子写真用転写不織布を手で握り、その時の触感を以下に示す4段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
「4」:柔軟でありながら、適度なコシを有しており、風合いに特に優れる。
「3」:やや柔軟性に劣るが、風合いに優れる。
「2」:柔軟性に劣るが、問題ないレベルの風合いである。
「1」:紙ライクな硬い風合いであり、コシもありすぎて風合いに劣る。
3)搬送性
キヤノン製:CP−2150機でブラック、シアン、マゼンタ、イエローのソリッド画像をA4縦目の電子写真用転写不織布500枚を横通しする事により印刷した。電子写真用転写不織布がドラムにうまく巻き込まず詰まってしまったり、電子写真用転写不織布が滑って給紙がうまくできない、あるいは給紙されても電子写真用転写不織布がドラムに巻き付かないと言った搬送性不良を発生した枚数をカウントした。
【0028】
(実施例1)
〔原布シートの抄造〕パルパーに叩解後のNBKPカムループス(濾水度500ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を45:20:35の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た。
〔加工〕上記原布シートに水分散有機重合物(スチレンブタジエン系ラテックス)液を固形分で22g/m2となるようにサイズプレスにて含浸加工を行い、赤外線乾燥機で予備乾燥した後、シリンダードライヤーにて乾燥して、坪量85g/m2、密度0.31g/cm3である実施例1の電子写真用転写不織布を得た。
【0029】
(実施例2)
NBKPカムループス(濾水度500ml)とポリエチレンテレフタレート系繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘構造繊維で鞘部の融点110℃、芯部は260℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を45:20:35の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し130℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.35g/cm3である実施例2の電子写真用転写不織布を得た。
【0030】
(実施例3)
NBKPカムループス(濾水度500ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を7:29:64の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.24g/cm3である実施例3の電子写真用転写不織布を得た。
【0031】
(実施例4)
NBKPカムループス(濾水度500ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を10:29:61の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.29g/cm3である実施例4の電子写真用転写不織布を得た。
【0032】
(実施例5)
NBKPカムループス(濾水度500ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を70:15:15の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.52g/cm3である実施例5の電子写真用転写不織布を得た。
【0033】
(実施例6)
NBKPカムループス(濾水度500ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を75:15:10の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.54g/cm3である実施例6の電子写真用転写不織布を得た。
【0034】
(実施例7)
パルパーに叩解後のNBKPカムループス(濾水度270ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を45:20:35の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.33g/cm3である実施例7の電子写真用転写不織布を得た。
【0035】
(実施例8)
パルパーに叩解後のNBKPカムループス(濾水度300ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を45:20:35の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.32g/cm3である実施例8の電子写真用転写不織布を得た。
【0036】
(実施例9)
パルパーに叩解後のNBKPカムループス(濾水度600ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を45:20:35の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.30g/cm3である実施例9の電子写真用転写不織布を得た。
【0037】
(実施例10)
パルパーに叩解後のNBKPカムループス(濾水度660ml)とポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を45:20:35の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.29g/cm3である実施例10の電子写真用転写不織布を得た。
【0038】
(実施例11)
加工時における水分散有機重合物として、アクリル酸エステル共重合物を使用した以外は以外は実施例1と同様にして密度0.31g/cm3である実施例11の電子写真用転写不織布を得た。
【0039】
(比較例1)
パルパーに叩解後のNBKPカムループス(濾水度500ml)のみを水に分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.60g/cm3である比較例1の電子写真用転写紙を得た。
【0040】
(比較例2)
ポリプロピレン繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、融点160℃)とレーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)を30:70の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.60g/cm3である比較例2の電子写真用転写紙を得た。
【0041】
(比較例3)
ポリプロピレン繊維(繊維径10μm、繊維長5mm、融点160℃)とポリエチレンテレフタレート系繊維(繊維径3μm、繊維長5mm、融点260℃)を30:70の配合比で水に混合分散し、円網抄紙機で抄紙した後、ヤンキードライヤーにて乾燥し180℃で熱処理を行い坪量63g/m2の原布シートを得た以外は実施例1と同様にして密度0.60g/cm3である比較例3の電子写真用転写紙を得た。
【0042】
(比較例4)
水分散有機重合物(スチレンブタジエン系ラテックス)液の含浸加工を行わなかった以外は実施例1と同様にして密度0.60g/cm3である比較例4の電子写真用転写紙を得た。
【0043】
上記評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
上記表1より、実施例1〜11に示す通り、本発明の電子写真用転写不織布は、画像鮮明性即ちトナー定着性が良好であり、布風の良好な風合いで、搬送性にも優れた電子写真用転写不織布である事が判る。一方、比較例1〜4に示したように、電子写真用転写不織布を構成する繊維の種類や配合、もしくは水分散有機重合物を含まないと言った本発明の範囲外の場合、本発明の電子写真用転写不織布に比べて、画像鮮明性、風合い、搬送性の何れかが大きく劣る事が判る。
【0046】
本発明の電子写真用転写不織布は、木材パルプ及び木材パルプ以外の有機繊維からなる原布シートに、水分散有機重合物とを付与する事で、布風の風合いを損なう事なく、トナー定着性に優れた電子写真用転写不織布を得る事ができる。コピー、プリンター、オンデマンド印刷機、ファックスなどの出力機用の乾式電子写真用転写不織布としての使用に留まらず、湿式電子写真用転写不織布、熱転写受像不織布として使用する事が可能である。また、印刷用途と反対面に、粘着剤層を塗工して、ラベル用途に適用する事も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプと有機繊維とからなる原布シートであって、有機繊維の一部が熱融着されており、該原布シートに水分散有機重合物を付与してなる事を特徴とする電子写真用転写不織布。
【請求項2】
有機繊維の融点が110℃以上である事を特徴とする請求項1記載の電子写真用転写不織布。
【請求項3】
木材パルプ/有機繊維の質量比が10/90〜70/30である事を特徴とする請求項1または2記載の電子写真用転写不織布。
【請求項4】
木材パルプの濾水度(カナディアンスタンダードフリーネス値)が、300〜600mlである事を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に電子写真用転写不織布。
【請求項5】
水分散有機重合物がスチレンブタジエン系ラテックスからなる事を特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子写真用転写不織布。

【公開番号】特開2007−199459(P2007−199459A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18695(P2006−18695)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】