説明

電子写真用部材、無端ベルト、定着装置及び画像形成装置

【課題】耐摩耗性と共に離型性にも優れた電子写真用部材の提供。
【解決手段】下記構造式(I)及び(II)から選択される少なくとも1種のジアミン化合物に由来する成分を有するフッ化ポリイミド樹脂が含まれるフッ化ポリイミド樹脂層を持つ電子写真用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用部材、無端ベルト、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を帯電し、この感光体ドラムを画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、さらにこのトナー像を例えば中間転写体を介して記録紙に転写し、これを定着装置によって定着して画像形成している。
【0003】
かかる画像形成装置に用いられる定着装置としては、画像形成装置の高速化に対応させるべく、表面が弾性変形する回転可能な定着ロールと、この定着ロールに接触したまま走行可能な加圧ベルトと、この加圧ベルトの内側に非回転状態で配置された圧力パッドとを具備し、圧力パッドによって、定着ロールとの接触面が形成されるように加圧ベルトを定着ロールに圧接させて構成し、加圧ベルトと定着ロールとの間に記録紙を通過させることができるようにベルトニップを設けるとともに、定着ロールの表面のうち、記録紙の出口側を局部的に弾性変形させるようにした定着装置に関する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、フッ素化ポリイミドを使用した定着部材(加熱ベルト、加圧ベルト)が提案されている(特許文献2参照)。また、ポリイミドにフッ素樹脂を分散させ、さらにポリイミド表面にフッ素樹脂を分散偏在させた定着部材も提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3298354号公報
【特許文献2】特許第3069041号公報
【特許文献3】特許第3260679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐摩耗性に優れ、ポリイミド樹脂に特定のジアミン化合物成分を含まない場合に比べ、離型性にも優れた電子写真用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
下記構造式(I)及び(II)から選択される少なくとも1種のジアミン化合物に由来する成分を有するフッ化ポリイミド樹脂が含まれるフッ化ポリイミド樹脂層を持つ電子写真用部材。
【0007】
【化1】

【0008】
請求項2に係る発明は、
前記フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部と中央部とで、フッ素原子含有量の差を有する請求項1に記載の電子写真用部材。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部のフッ素含有率が、中央部のフッ素含有率の1.05倍以上2.00倍以下である請求項1に記載の電子写真用部材。
【0010】
請求項4に係る発明は、
フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂が含まれるポリイミド樹脂層を有すると共に、当該ポリイミド樹脂層の一方の面及び他方の面の少なくとも一方に前記フッ化ポリイミド樹脂層を有する請求項1〜3のいずれか項に記載の電子写真用部材。
【0011】
請求項5に係る発明は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真部材からなる無端ベルト。
【0012】
請求項6に係る発明は、
加熱部材と、前記加熱部材と接して配設される加圧部材と、とを備え、
前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくとも一方が、請求項5に記載の無端ベルトを備える定着装置。
【0013】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、
を備え、
前記定着手段が、請求項6に記載の定着装置である画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、耐摩耗性に優れ、フッ化ポリイミド樹脂に特定のジアミン化合物に由来する成分を含まない場合に比べ、離型性にも優れる。
請求項2に係る発明によれば、耐摩耗性に優れ、フッ素原子含有量を考慮しない場合に比べ、離型性にも優れる。
請求項3に係る発明によれば、耐摩耗性に優れ、フッ素原子含有量を考慮しない場合に比べ、離型性にも優れる。
請求項4に係る発明によれば、フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂を有さない場合に比べ、低コストで部材の自己支持性が高められる。
請求項5に係る発明によれば、耐摩耗性に優れ、フッ化ポリイミド樹脂に特定のジアミン化合物成分を含まない場合に比べ、離型性にも優れる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、画像欠陥が抑制される。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、画像欠陥が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(電子写真用部材)
本実施形態に係る電子写真用部材は、フッ化ポリイミド樹脂層を持つ部材である。そして、当該フッ化ポリイミド樹脂層は、後述する特定のジアミン化合物に由来する成分を有するフッ化ポリイミド樹脂を含んで構成される。
【0016】
本実施形態に係る電子写真用部材では、上記構成とすることで、耐摩耗性に優れ、フッ化ポリイミド樹脂に特定のジアミン化合物に由来する成分を含まない場合に比べ、離型性にも優れる。これは、定かではないが、次の理由によるものと考えられる。
【0017】
特定のジアミン化合物は、柔軟な骨格を持つ化合物であることから、フッ化ポリイミド樹脂前駆体であるフッ化ポリアミック酸を構成したとき、当該特定のジアミン化合物に由来する成分が移動しやすくなると考えられる。加えて、この移動が、フッ素化ポリイミド前駆体溶液(フッ化ポリアミック酸溶液)をイミド化する前の塗膜表面(特に気体界面)方向へ生じるものと考えられる。これは、特定のジアミン化合物に由来する成分はフッ素原子を含有し疎水性であることから、疎水雰囲気である塗膜表面(特に気体界面)へ移動するためであると考えられる。このため、本実施形態に係る電子写真用部材は、元来耐摩耗性に優れたポリイミドに、フッ素原子を偏在させることで離型性にも優れたものとなると考えられる。結果、電子写真方式の画像形成装置に本実施形態に係る電子写真用部材を適用することで、例えば、部材の磨耗及び低い離型性に起因する画像欠陥や装置不具合が抑制される。
【0018】
本実施形態に係る電子写真用部材において、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部と中央部とで、フッ素原子含有量の差を有することが望ましい。具体的には、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部のフッ素含有率が、中央部のフッ素含有率の1.05倍以上2.00倍以下であることが望ましく、より望ましくは1.10倍以上1.90倍以下、さらに望ましくは1.20倍以上1.80倍以下である。ここで、中央部とは厚み方向中央部を意味する。
【0019】
フッ化ポリイミド樹脂層では、上記如く、フッ化ポリイミド前駆体溶液(フッ化ポリアミック酸溶液)をイミド化する前の塗膜における気体界面へ特定のジアミン化合物に由来する成分が移動しやすくなると考えられることから、例えば、当該塗膜を放置すると、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部と中央部とでフッ素原子含有量の差が生じやすくなる。つまり、フッ素原子がポリイミド層の一方の面の表層部に偏在しやすくなる。そして、フッ化ポリイミド樹脂層において、フッ素含有量が偏在した表面を機能面(例えば、用途に応じて、摺動面、定着面、転写面、搬送面等)として利用することで、耐摩耗性に優れ、フッ素原子含有量を考慮しない場合に比べ、離型性に優れることとなる。ここで、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部のフッ素含有率が、中央部のフッ素含有率よりも上記範囲を超えると、フッ素原子が偏在した面側の機械的強度が低下しやすくなり、結果、耐久性、耐摩耗性も低下することがある。
【0020】
また、フッ化ポリイミド前駆体溶液(フッ化ポリアミック酸溶液)をイミド化する前の塗膜では、被塗布物との接触面とは反対側の表面が空気界面となることから、当該接触面よりも当該反対側の表面側へ特定のジアミン化合物に由来する成分が移動しやすくなることから、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部のフッ素含有率が、他方の面の表層部のフッ素含有率よりも大きくなると考えられる。このため、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面と他方の面とで、水に対する接触角の差が生じると考えられる。具体的には、フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面と他方の面との水に対する接触角の差は、10以上60以下であることが望ましい。この水に対する接触角は、協和界面科学(株)製表面接触角測定器を使用し、表面にイオン交換水の水滴を滴下し、その水滴と表面との接触角を側面より測定した値である。
【0021】
また、フッ化ポリイミド樹脂層において、フッ素原子が偏在している主面表層部のフッ素含有率は、5%以上50%以下であることが望ましく、より望ましくは10%以上40%以下である。
【0022】
ここで、フッ素含有量は、X線光電子分光分析法(以下、XPSとも記載する。)を用いて解析される値である。
具体的には、XPS測定装置として「VG製 ESCALAB−220i」を使用し、測定は、X線源として単色化されたAlKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を20mVに設定して実施し、フッ素原子について測定する。分析領域は、約1mmφ、検出深さは、5nmとする。そして、フッ素原子について、C1sスペクトルを測定し、当該フッ素原子のスペクトル基づいて、元素個数を求めて、フッ素化ポリイミドの全原子量に対するフッ素原子含有率を算出する。
なお、フッ化ポリイミド樹脂層の表層部のフッ素含有量は、そのまま試験片を作製し、測定する。一方で、フッ化ポリイミド樹脂層の中央部のフッ素含有量は、当該樹脂層をその厚みの半分に相当する位置で切断して又は厚みの半分まで切削して試験片を作製し、測定する。
【0023】
以下、本実施形態に係る電子写真用部材について、さらに詳細に説明する。まず、フッ化ポリイミド樹脂層について説明する。
【0024】
フッ化ポリイミド樹脂層は、特定のジアミン化合物に由来する成分を有するフッ化ポリイミド樹脂と、必要に応じて他の添加剤と、を含んで構成される。そして、特定のジアミン化合物は、下記構造式(I)及び(II)から選択される少なくとも1種のジアミン化合物である。
【0025】
【化2】

【0026】
フッ化ポリイミド樹脂は、特定のジアミン化合物に由来する成分を有するものであるが、具体的には、例えば、当該成分とテトラカルボン酸二無水物に由来する成分を有するものである。つまり、フッ化ポリイミド樹脂は、例えば、特定のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とで合成(例えば、当モル量で合成)されるフッ化ポリアミック酸を、イミド化することで得られる樹脂である。
【0027】
特定のジアミン化合物は、構造式(I)及び構造式(II)で示されるジアミン化合物をそれぞれ単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、特定のジアミン化合物以外の他のジアミン化合物を併用してもよい。他のジアミン化合物を併用する場合、例えば、1)特定のジアミン化合物及び他のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とで合成(総ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物を例えば当モル量で合成)してフッ化ポリアミック酸を得て、これをイミド化してもよいし、2)特定のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とで合成(例えば、当モル量で合成)されるフッ化ポリアミック酸のプレポリマーを合成すると共に、別途、他のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とで合成(例えば、当モル量で合成)されるポリアミック酸のプレポリマーとを合成し、この2種のプレポリマーを共重合したブロック共重合体したフッ化ポリアミック酸を得て、これをイミド化してもよい。
【0028】
テトラカルボン酸二無水物としては特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0029】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0030】
テトラカルボン酸二無水物としては、フッ素原子を含んだテトラカルボン酸二無水物も挙げられる。
フッ素原子含有テトラカルボン酸二無水物としては、フッ素原子を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、1−トリフルオロメチル−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ジ(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ジフルオロ−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、又は1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が望ましく、特に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、又は、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物が望ましい。
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
他のジアミン化合物としては、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ −4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ −5,5’−ジメトキシビフェニル、3
,3’−ジメトキシ −4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ −2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0033】
他のジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が望ましい。
これらの他のジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
その他の添加剤としては、導電性付与、耐久性、熱伝導性向上などのため、フィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、金属酸化物粒子、ケイ酸塩鉱物、カーボンブラック、又は窒素化合物が挙げられる。これらの中でも、ケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ITO(錫添加酸化インジウム)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、Sb doped SnO被覆TiOなどより選ばれる少なくとも1種の導電性物質である。フィラーの平均粒径は、例えば0.1μm以上15μm以下であることが望ましい。フィラーの配合割合は、例えばフッ素化ポリイミド樹脂100質量部あたり0.01質量部以上30質量部以下の範囲に設定される。
【0035】
以下、フッ素化ポリイミド層の形成方法について説明する。
フッ素化ポリイミド層は、例えば、特定のジアミン化合物に由来する成分を含むフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を被塗布物に塗布する工程と、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布した被塗布物の塗膜を放置する工程と、被塗布物に塗布されたフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜を乾燥させる工程と、を少なくとも経て得られる。
【0036】
具体的には、まず、例えば、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液として、少なくとも特定のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とにより得られるフッ化ポリアミック酸を有機溶媒に溶解した溶液を準備する。
【0037】
有機溶媒は、フッ化ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、有機極性溶媒が好適に挙げられる。有機極性溶媒としては、その官能基がテトラカルボン酸二無水物又はジアミンと反応しない双極子を有するものが挙げられる。有機極性溶媒として具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。また、有機極性溶媒としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素も挙げられる。これら有機極性溶媒は、単独又は混合物として用いられる。
【0038】
次に、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を被塗布液に塗布する。被塗布物としては、板状、円筒状など任意の形状のものが採用される。以下、被塗布物として、円筒状芯体を用いて、これにフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布する場合を説明する。被塗布物として円筒状芯体を用いた場合、この円筒状芯体の外周面又は内周面に塗布する。フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を円筒状芯体の外周面に塗布する方法としては、特に限定されないが、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液中に上記円筒状芯体を浸漬した後引き上げることによって円筒状芯体外周面に塗布する方法、円筒状芯体をその中心軸に対して水平方向に回転させながらその表面に溶液を吐出することによってらせん状に塗布し、ブレードによって塗膜を平滑化させる方法などが挙げられる。フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を円筒状芯体の内周面に塗布する方法としては、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液中に上記円筒状芯体を浸漬した後引き上げることによって円筒状芯体内周面に塗布する方法、円筒状芯体の片端部にフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を供給し弾丸状又は球状の走行体を、円筒状芯体の内周面に沿って走行させる方法などが挙げられる。これらの塗布方法は状況等に応じて選択される。
【0039】
次に、被塗布物に塗布されたフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜を、例えば15℃以上40℃以下で60分間以上300分間以下放置する。このときフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜は重力の影響を受けるため、垂れが生じやすいことから、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液が塗布された円筒状芯体を軸方向に水平にして、例えば10rpm以上60rpm以下程度で回転させながら放置することがよい。回転させながらフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を円筒状芯体に塗布した場合、その回転塗布から連続して回転させ続けることがよい。
【0040】
この放置により、フッ化ポリアミック酸のうち特定のジアミン化合物に由来する成分には疎水性を有するフッ素原子が含まれるため、当該成分が有機溶媒(特に有機極性溶媒)より疎水雰囲気である空気界面である塗膜の表層部側に移動しやすくなる。これにより、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜は、円筒状芯体(被塗布物)側に比べ、空気に接する表層部側のフッ素含有量が高くなる。
【0041】
ここで、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜の表層部側を高疎水性とするためには、つまりフッ素原子含有量を高くするためには、雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることがよい。この不活性ガス雰囲気は、例えば不活性ガスとして窒素、アルゴン等を用いることが望ましい。また、揮発した有機溶媒により塗膜表層部が親水雰囲気となるのを防ぐために、常に純度80%以上100%以下の不活性ガスを用いて吸排気を続けることがよい。
【0042】
次に、上記放置されたフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜を、例えば40℃以上70℃以下(望ましくは50℃以上65℃以下)、30分間以上200分間以下で乾燥する。この乾燥により、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜の含有溶媒の30質量%以上を揮発させることがよい。この乾燥温度が低すぎると、塗膜の有機溶媒の揮発量が著しく低下し、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜中の有機溶媒の減少量が著しく小さくなることがある。一方、乾燥温度が高すぎると、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜中の有機極性溶媒の揮発量が増加し、乾燥が急速に進みやすくなる。急速に乾燥が進むと、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜中の有機溶媒が短時間で揮発し気体中に放出されるとき、大量の有機溶媒がフッ素原子が偏在したフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜の表層部を通過するため、フッ素原子含有した特定のジアミン化合物に由来する成分を含むフッ化ポリアミック酸の再配列が生じやすくなる。結果、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜中で、当該塗膜の表層部に偏在したフッ素原子含有量が塗膜の厚み方向に均一(バラツキ低減)となり、得られるフッ化ポリイミド樹脂層表面へのフッ素原子含有量の偏在が達成し難くなる。
【0043】
次に、乾燥させたフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜を、例えば250℃以上450℃以下、20分間以上60分間以下で加熱することで、イミド化させる。これにより、フッ化ポリイミド樹脂層が形成される。ここで、熱イミド化処理の際、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜に有機溶剤が残留しているとフッ化ポリイミド樹脂層に膨れが生じることがあるため、イミド化処理前には、できる限り残留溶剤を除去することが望ましく、具体的には、イミド化処理前に、上記乾燥に加え、さらに200℃以上250℃以下、10分間以上30分間以下で加熱して乾燥することが望ましい。また、当該乾燥に続けて、温度を段階的、又は一定速度で上昇させて、イミド化処理することが望ましい。
【0044】
ここで、乾燥、イミド化においても、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜の表層部側を高疎水性とするためには、つまりフッ素原子含有量を高くするためには、雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることがよい。この不活性ガス雰囲気は、例えば不活性ガスとして窒素、アルゴン等を用いることが望ましい。また、揮発した有機溶媒により塗膜表層部が親水雰囲気となるのを防ぐために、常に純度80%以上100%以下の不活性ガスを用いて吸排気を続けることがよい。
【0045】
以上のようにしてフッ化ポリイミド樹脂層が形成される。
【0046】
次に、本実施形態に係る電子写真用部材の好適な形態について説明する。
本実施形態に係る電子写真用部材では、フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂が含まれるポリイミド樹脂層を有してもよい。ポリイミド樹脂層の一方の面及び他方の面の少なくとも一方に、フッ化ポリイミド樹脂層を配設する。フッ化ポリイミド樹脂は、フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂に比べ、高コストのものである。このため、例えば、フッ素化ポリイミド層と共に、自己支持性を持たせる目的でポリイミド樹脂層を形成することで、フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂を有さない場合に比べ、フッ素化ポリイミド樹脂層を機能に併せて薄くさせられ、低コストで部材の自己支持性が高められる。その結果、例えば、フッ素化ポリイミド樹脂の使用量を低減し、樹脂層の厚膜化が実現される。
【0047】
ポリイミド樹脂層は、フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂と、必要に応じて他の添加剤と、を含んで構成される。このポリイミド樹脂は、上記で説明した、他のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とで合成(例えば、当モル量で合成)されるポリアミック酸を、イミド化することで得られる樹脂である。また、その他の添加剤としては、上記フィラー等が挙げられる。
【0048】
ポリイミド樹脂層の形成は、ポリイミド樹脂前駆体溶液として、少なくとも他のジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とにより得られるポリアミック酸を有機溶媒に溶解した溶液を、被塗布物に塗布・乾燥・イミド化することで得られる。
【0049】
ポリイミド樹脂層は、フッ化ポリイミド樹脂層と別途形成して、当該樹脂層同士を接着してもよいし、フッ化ポリイミド樹脂層と共に形成してもよい。ポリイミド樹脂層をフッ化ポリイミド樹脂層と共に形成することで、ポリイミド樹脂層とフッ化ポリイミド樹脂層との密着性(接着性)が向上し、剥れが抑制される。
【0050】
ポリイミド樹脂層をフッ化ポリイミド樹脂層と共に形成する方法としては、少なくとも特定のジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物とにより得られるフッ化ポリアミック酸と、少なくとも他のジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物とにより得られるポリアミック酸と、を共に有機溶媒に溶解した溶液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を用いる手法が挙げられる。
【0051】
上記手法では、前駆体溶液を塗布した後、その塗膜を放置すると、塗膜中のフッ化ポリアミック酸とフッ素原子を含有しないポリアミック酸とは、当該フッ化ポリアミック酸が疎水性の成分(特定のジアミン化合物に由来する成分)を含むことから、塗膜表層部(気体界面側)に移動しやすくなる結果、当該フッ化ポリアミック酸とフッ素原子を含有しないポリアミック酸とが分離しやすくなる。このため、当該塗膜は、表層部側(気体界面側)がフッ化ポリアミック酸を含む塗膜とフッ素原子を含有しないポリアミック酸を含む塗膜との2層構成となる。そして、この塗膜を、乾燥・イミド化を行うことで、フッ化ポリイミド樹脂層とフッ素原子を含有しないポリイミド樹脂層とが形成される。
【0052】
また、ポリイミド樹脂層をフッ化ポリイミド樹脂層と共に形成する方法としては、少なくとも特定のジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物とにより得られるフッ化ポリアミック酸を有機溶媒に溶解した溶液を用いて塗布・乾燥した後、当該塗膜上に少なくとも他のジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物とにより得られるポリアミック酸有機溶媒に溶解した溶液を用いて塗布・乾燥させ、この乾燥した塗膜の積層体をイミド化する手法も挙げられる。なお、本手法では、積層順序は逆でもよい。
【0053】
本実施形態に係る電子写真用部材は、上記フッ化ポリイミド層を有していれば、その形態に特に制限はない。本実施形態に係る電子写真用部材は、フッ化ポリイミド層単独で部材を構成してもよし、上記如く、フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂層と併用してもよく、その他、例えば金属部材などと組み合わせて部材を構成してもよい。但し、フッ化ポリイミド樹脂層は、部材の機能面を構成する部位に配設させる。
【0054】
本実施形態に係る電子写真用部材として具体的は、例えば、無端ベルト(例えば、中間転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルト(加熱ベルト、加圧ベルト)、摺動部材(例えば、摺動シート)、ロール(例えば、帯電ロール、転写ロール、搬送ロール)が挙げられる。例えば、ベルト部材や摺動部材の場合、例えば、フッ素ポリイミド樹脂層をベルト状やシート状等に成形して構成される。ロール部材の場合、例えば、離型層としてフッ素ポリイミド樹脂層を成形して構成される。
【0055】
(定着装置)
次に、本実施形態に係る定着装置の一例について説明する。本実施形態に係る定着装置としては、種々の構成があり、以下に、第1実施形態として、加熱源を有する加熱ロールと圧力パッドが押圧された加圧ベルトと備えた定着装置を説明し、第2実施形態として、加熱源が押圧された加熱ベルトと加圧ロールと備えた定着装置を説明する。これらの定着装置における加熱ベルト、加圧ベルトとして上記本実施形態に係る電子写真用部材が適用される。なお、摺動シートとして上記本実施形態に係る電子写真用部材を適用してもよい。
【0056】
−定着装置の第1実施形態−
まず、第1実施形態に係る定着装置60について説明する。図1は、第1実施形態の定着装置60の構成を示す概略図である。
【0057】
定着装置60は、図1に示すように、回転駆動する回転体の一例としての加熱ロール61と、加圧ベルト62と、加圧ベルト62を介して加熱ロール61を加圧する圧力部材の一例としての圧力パッド64とを備えて構成されている。なお、圧力パッド64は、加圧ベルト62と加熱ロール61とが相対的に加圧されていればよい。従って、加圧ベルト62側が加熱ロール61に加圧されても良く、加熱ロール61側が加熱ロール61に加圧されても良い。
【0058】
加熱ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612及び離型層613を積層して構成されたものである。加熱ロール61の内部には、挟込領域において未定着トナー像を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンランプ66が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0059】
一方、加熱ロール61の表面には感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、150℃)を維持される。
【0060】
加圧ベルト62は、内部に配置された圧力パッド64とベルト走行ガイド63と、後段で述べる両端部に配置されたエッジガイド80によって回転自在に支持されている。そして、挟込領域Nにおいて加熱ロール61に対して圧接されて配置されている。
【0061】
圧力パッド64は、加圧ベルト62の内側において、加圧ベルト62を介して加熱ロール61に加圧される状態で配置され、加熱ロール61との間で挟込領域Nを形成している。圧力パッド64は、幅の広い挟込領域Nを確保するためのプレ挟込部材64aを挟込領域Nの入口側に配置し、加熱ロール61に歪みを与えるための剥離挟込部材64bを挟込領域Nの出口側に配置している。
【0062】
さらに、加圧ベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、プレ挟込部材64a及び剥離挟込部材64bの加圧ベルト62と接する面に摺動シート68が設けられている。そして、圧力パッド64と摺動シート68とは、金属製のホルダ65に保持されている。
【0063】
さらに、ホルダ65にはベルト走行ガイド63が取り付けられ、加圧ベルト62が回転する構成となっている。
【0064】
そして加熱ロール61は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は、加熱ロール61の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、加熱ロール61が図1における時計方向へ回転するのに対して、加圧ベルト62は反時計方向へ回転する。
【0065】
未定着トナー像を有する用紙K(記録媒体)は、定着入口ガイド56によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と、加熱ロール61から供給される熱とによって定着される。
【0066】
第1実施形態の定着装置60では、加熱ロール61の外周面に倣う凹形状のプレ挟込部材64aにより、プレ挟込部材64aがない構成に比して、広い挟込領域Nを確保される。
【0067】
また、第1実施形態に係る定着装置60では、加熱ロール61の外周面に対し突出させて剥離挟込部材64bを配置することにより、挟込領域Nの出口領域において加熱ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。
【0068】
このように剥離挟込部材64bを配置すれば、定着後の用紙Kは、剥離挟込領域を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、用紙Kが加熱ロール61から剥離しやすい。
【0069】
また、剥離の補助手段として、加熱ロール61の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設されている。剥離部材70は、剥離バッフル71が加熱ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ロール61と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
【0070】
−定着装置の第2実施形態−
次に、第2実施形態に係る定着装置90について説明する。図2は、第2実施形態の定着装置90の構成を示す概略図である。
なお、第1実施形態に係る定着装置と同様な構成については、同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0071】
図2に示すように、第2実施形態に係る定着装置90は、加熱ベルト92と、加圧ロール91とを備えて構成されている。
【0072】
そして、加熱ベルト92が用紙Kのトナー像保持面側に配置されるとともに、加熱ベルト92の内側には、加熱手段の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82から挟込領域Nに熱を供給するように構成している。
【0073】
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、加熱ベルト92を介して加圧ロール91に加圧される状態で配置され、挟込領域Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。挟込領域Nを通過した用紙Kは、挟込領域Nの出口領域(剥離挟込部)において加熱ベルト92の曲率の変化によって加熱ベルト92から剥離される。
【0074】
さらに、加熱ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、加熱ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、摺動シート68が配設されている。この摺動シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成してもよい。
【0075】
一方、加圧ロール91は加熱ベルト92に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転に従動して加熱ベルト92が回転するように構成されている。加圧ロール91は、コア (円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性体層912と、さらに耐熱性樹脂被覆又は耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成され、必要に応じて各層はトナーのオフセット対策としてカーボンブラックなどの添加により半導電性化されている。
【0076】
また、剥離の補助手段として、加熱ベルト92の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設してもよい。剥離部材70は、剥離バッフル71が加熱ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ベルト92と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
【0077】
加えて、ホルダ95の両端部にはエッジガイド(不図示)が配設されている。エッジガイドは、ホルダ95の両端部において対向するように配置された両エッジガイドの内側面が、加熱ベルト92の幅と略一致する間隔を持つように配置されている。そして、加熱ベルト92が回転する際には、加熱ベルト92の端部が両エッジガイドの内側面に接触することによって、加熱ベルト92の幅方向への移動(ベルトウォーク)が規制されている。このように、加熱ベルト92は、エッジガイドによって片寄りが規制されるように設定されている。
【0078】
そして、未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイドによって定着装置90の挟込領域Nに導かれる。用紙Kが挟込領域Nを通過する際には、用紙K上のトナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と、加熱ベルト92側のセラミックヒータから供給される熱とによって定着される。
【0079】
(画像形成装置)
次に、本実施形態の画像形成装置について説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。本実施形態の画像形成装置では、上記実施形態に係る定着装置が適用される。また、中間転写ベルトや搬送ベルトとして、上記本実施形態に係る電子写真用部材を適用してもよい。
【0080】
図3に示される画像形成装置100は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60とを備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0081】
この定着装置60が既述の第1実施形態の定着装置であり、当該定着装置は既述の本実施形態の加圧ベルト62を有してなる。なお、画像形成装置100は、既述の第2実施形態に係る定着装置90を備える構成であってもよい。
【0082】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体ドラム11を備えている。
【0083】
感光体ドラム11の周囲には、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段の一例として、感光体ドラム11を帯電させる帯電器12が設けられ、前記帯電手段により帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段の一例として、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザー露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0084】
また、感光体ドラム11の周囲には、前記潜像形成手段により前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0085】
さらに、感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザー露光器13、現像器14、一次転写ロール16及びドラムクリーナ17の電子写真用デバイスが感光体ドラム11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0086】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
【0087】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図3に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
【0088】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。
【0089】
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0090】
二次転写部20は、バックアップロール25と、前記現像手段により形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段の一例としての、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0091】
バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0092】
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。
【0093】
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0094】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0095】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0096】
更に、本実施形態の画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを所定のタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0097】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図3に示す画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0098】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザー露光器13に出力される。
【0099】
レーザー露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザーから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザー露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0100】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0101】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から所定サイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0102】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0103】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0104】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能であり、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0107】
(実施例1)
テトラカルボン酸二無水物として、下記構造式(III)で示される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物として下記構造式(I)で示される2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、を用いてポリイミドの調製を行った。具体的には、攪拌翼がついた2000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を334.4g入れ、60℃に加熱した。2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン33.42g(0.1モル)を加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)を徐々に加えて溶解させた。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を溶解させた後ポリアミック酸の重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇したところでNMP200gを加えて20質量%まで希釈した後室温(25℃)まで冷却し、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を得た。
【化3】

【0108】
このようにして得られたフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を、内径30mm、長さ450mmの円筒状アルミニウム製金型表面に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させた。
次に金型を20rpmで円筒円周方向に回転させた状態で、窒素ガス雰囲気下、20℃で120分間放置した。放置後、窒素ガス雰囲気下、60℃で150分間乾燥させた。乾燥工程後の塗膜表面の純水との接触角を測定した結果、65度であった。
次に金型をオーブンに入れ、窒素ガス雰囲気下で段階的に350℃まで昇温して、イミド化した。段階的な昇温は160℃で1時間、250℃で30分、350℃で1時間行った。その後、金型を室温(25℃)で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。
得られたポリイミド無端ベルトの外周面の純水との接触角を測定した結果、110度であった。また、ポリイミド無端ベルトの内周面の純水との接触角は75度であった。XPSでベルト外周面表層部と内周面表層部のフッ素含有率をそれぞれ測定した結果、外周面表層部は内周面表層部と比べて1.25倍のフッ素含有率であった。また、ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.40倍のフッ素含有率であった。
【0109】
(実施例2)
ジアミン化合物として下記構造式(II)で示される2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフロオロプロパン51.85g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして行った。乾燥後、イミド化前の塗膜表面の純水との接触角を測定した結果、63度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角はそれぞれ、112度と73度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.30倍のフッ素含有率であった。また、ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.45倍のフッ素含有率であった。
【0110】
【化4】

【0111】
(比較例1)
テトラカルボン酸二無水物として、前記構造式(III)で示される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)と、ジアミン化合物として下記構造式(IV)で示される2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを32.02g(0.1モル)と、を用いてポリイミドの調製を行った。具体的には、調製方法、ベルト製造方法は実施例1と同様にして行った。乾燥後、イミド化前の塗膜表面の純水との接触角は47度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水との接触角はそれぞれ、78度、75度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.01倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.02倍のフッ素含有率であった。
これは実施例1及び2と比較すると、ジアミン化合物においてフッ素原子を有する置換基がベンゼン環に直接結合して、上記構造式(I)又は構造式(II)出示されるジアミン化合物より剛直な主鎖構造をしており、フッ素原子の主鎖による拘束が強いため、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の塗膜の放置、乾燥工程におけるフッ素原子の偏在現象が顕著に生じなかったためと考えられる。
【化5】

【0112】
(実施例3)
テトラカルボン酸二無水物として、下記構造式(V)で示される2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物を用いた以外は実施例1と同様にして行った。乾燥後、イミド化前の塗膜表面の純水との接触角を測定した結果、68度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角はそれぞれ、112度と78度であった。外周面表層部は内周面表層部と比べて1.23倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.39倍のフッ素含有率であった。
【0113】
【化6】

【0114】
(比較例2)
テトラカルボン酸二無水物として上記構造式(V)で示される2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物を用いて、ジアミン化合物として上記構造式(IV)で示される2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを用いた以外は実施例2と同様にして行った。乾燥後、イミド化前の塗膜表面の純水との接触角を測定した結果、47度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ78度と75度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.02倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.02倍のフッ素含有率であった。
【0115】
(実施例4)
実施例2に記載のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を用いてポリイミドの調製を行った。具体的には、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液の合成、塗膜の形成までは実施例2と同様にして行った。塗膜形成後、窒素などの不活性ガス中で350℃まで段階的に昇温し、イミド化した。段階的な昇温は、70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、350℃で1時間行った。70℃で2時間、昇温した後、イミド化前の塗膜表面の純水との接触角を測定した結果、45度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角はそれぞれ、75度と70度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.01倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.02倍のフッ素含有率であった。
【0116】
(実施例5)
テトラカルボン酸二無水物として上記構造式(III)で示される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物として上記構造式(II)で示される2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いて、アミノ基末端プレポリマーの合成を行った。具体的には、攪拌翼がついた2000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を334.4g入れ、60℃に加熱した。2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン41.78g(0.125モル)を加え、溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)を徐々に加えて溶解させた。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を溶解させた後、ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇したところでNMP200gを加えて20質量%まで希釈した後室温まで冷却し、アミノ基末端プレポリマー溶液を得た。
【0117】
別途、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン41.78gの代わり下記構造式(VI)で示されるp−フェニレンジアミン10.81g(0.1モル)を用い、上記3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を36.78g(0.125モル)用いて上記と同様にして20質量%の酸二無水物基末端プレポリマー溶液を得た。
【0118】
【化7】

【0119】
得られたアミノ基末端プレポリマーの溶液の全部と、酸二無水物基末端プレポリマーの溶液の全部とを混合し、60℃で加熱・撹拌することにより、ブロック共重合型フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を得た。
このようにして得られたフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を用いて実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを製造した。乾燥後、イミド化前の塗膜表面の純水との接触角は69度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面の純水との接触角を測定した結果、115度であった。また、ポリイミド無端ベルトの内周面の純水との接触角は72度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.35倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.42倍のフッ素含有率であった。
【0120】
(比較例3)
実施例5において、フッ素を含むジアミン化合物として2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン41.78g(0.125モル)の代わりに、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル40.03g(0.125モル)を使用した以外は実施例5と同様にして、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、49度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ78度と76度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.03倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.03倍のフッ素含有率であった。
【0121】
(実施例6)
テトラカルボン酸二無水物として、上記構造式(III)で示される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と上記構造式(I)で示される2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いてポリイミドの調製を行った。具体的には、攪拌翼がついた2000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を334.4g入れ、60℃に加熱した。2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン33.42g(0.1モル)を加え、溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)を徐々に加えて溶解させた。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を溶解させた後、ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇したところでNMP200gを加えて20質量%まで希釈した後室温(25℃)まで冷却し、フッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を得た。
【0122】
別途、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン33.42gの代わりに上記構造式(VI)で示されるp−フェニレンジアミン(10.81g)を用いた以外は、上記と同様にして20質量%のフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液を得た。
【0123】
得られた2つのポリアミド酸溶液を混合して、固形分濃度20質量%のポリアミド酸ブレンド溶液を得た。このようにして得られたポリアミド酸ブレンド溶液を用いて、実施例1と同様の方法で金型塗布、放置、乾燥、及びイミド化を行い、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、72度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ110度と70度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.37倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.40倍のフッ素含有率であった。また、ポリイミド無端ベルトは、外周面側にフッ化ポリイミド樹脂層が形成されている一方で、内周面側はポリイミド樹脂層(フッ素原子を含有しないポリイミド層)が形成された2層構造となっていた。
【0124】
(比較例4)
実施例5において、ジアミン化合物として2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン33.42g(0.1モル)の代わりに、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル32.02g(0.1モル)を使用した以外は、実施例5と同様にして、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、43度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ75度と71度であった。外周面表層部は内周面表層部と比べて1.03倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.04倍のフッ素含有率であった。
【0125】
(実施例7)
実施例1において乾燥温度を80℃とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、58度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ79度と74度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.01倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.02倍のフッ素含有率であった。
【0126】
(実施例8)
実施例1において乾燥温度を30℃とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、49度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ73度と75度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて0.99倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.01倍のフッ素含有率であった。
【0127】
(実施例9)
実施例1においてフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液塗布後の放置時間を65分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、64度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ109度と76度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.26倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.35倍のフッ素含有率であった。
【0128】
(実施例10)
実施例1においてフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液塗布後の放置時間を300分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、66度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ112度と73度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.31倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.33倍のフッ素含有率であった。
【0129】
(実施例11)
実施例1においてフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液塗布後の放置時間を350分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、65度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ108度と78度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.22倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.30倍のフッ素含有率であった。得られたポリイミド無端ベルトの外周面を観察すると、若干ではあるがクラックが発生しており、表面平滑性が低下していたが、実用上問題のないレベルであった。
【0130】
(実施例12)
実施例1においてフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液塗布後の放置時間を10分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、49度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ78度と76度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.00倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.01倍のフッ素含有率であった。
【0131】
(実施例13)
実施例1において50℃の乾燥時間を15分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、48度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ74度と75度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.03倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.04倍のフッ素含有率であった。
【0132】
(実施例14)
実施例1において60℃の乾燥時間を250分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、68度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ105度と73度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.30倍のフッ素含有率であった。得られたポリイミド無端ベルトの外周面を観察すると、若干ではあるがクラックが発生しており、表面平滑性が低下していたが、実用上問題のないレベルであった。
【0133】
(実施例15)
実施例1においてフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液塗布後の放置温度と時間を15℃、600分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、77度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ108度と77度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.88倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて1.95倍のフッ素含有率であった。得られたポリイミド無端ベルトの外周面を観察すると、クラックが発生しており、表面平滑性が低下していたが、実用上問題ないレベルであった。
【0134】
(実施例16)
実施例1においてフッ化ポリイミド樹脂前駆体溶液塗布後の放置温度と時間を15℃、720分とした以外は同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを得た。乾燥後、イミド化前のベルト表面の純水との接触角を測定したところ、79度であった。イミド化後、得られたポリイミド無端ベルトの外周面と内周面の純水の接触角は、それぞれ110度と74度であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は内周面表層部と比べて1.97倍のフッ素含有率であった。ポリイミド無端ベルトの外周面表層部は中央部と比べて2.05倍のフッ素含有率であった。得られたポリイミド無端ベルトの外周面を観察すると、クラックが発生しており、表面平滑性、耐摩耗性が共に低下していたが、実用上問題ないレベルであった。
【0135】
(評価)
加熱ロール・加圧ベルト方式の定着装置(図1参照)を搭載した富士ゼロックス社製DCC400に対して、得られたポリイミド無端ベルトを加圧ベルトとしてセットし、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0136】
−加圧ベルトの耐摩耗性−
加圧ベルトの耐摩耗性の評価は次のようにして行った。上記電子写真装置を、加熱ロール内部に800Wのハロゲンランプヒーターを有し、150℃の設定温度、150mm/secのスピード、8mmのニップ幅を有する様に設定した。また、トナーは、富士ゼロックス社製Docu CenterColor400用カラートナー(シアン色)を使用し、富士ゼロックス社製「J紙」に定着させた。上記条件により、100,000枚
(100kpv)のテストを実施し、耐摩耗性の評価は、テスト後の加圧ベルトの膜厚を測定し、1kpv当たりの減少量を摩耗量として求めることにより行った。
【0137】
−加圧ベルトの離型性−
加圧ベルトの離型性の評価は次のようにして行った。 電子写真装置の条件は上記耐摩耗性評価と同様にして行い、印字サンプルを100枚通紙し、紙詰まり(加圧ベルトとの剥離不良)発生が無い場合、良好とし、不良の場合、紙詰まりの発生枚数を評価した。
【0138】
−定着特性−
画質は次のようにして行った。 電子写真装置の条件は上記耐摩耗性評価と同様にして行い、100kpv通紙後、次の評価を行った。画像が定着された用紙の、定着トナー像のソリッド部のほぼ中央に、内側に折り目を入れて定着トナー像が破壊された部分をティッシュペーパーで拭い取り、白抜けした線幅を測定し、白抜けした線幅が0.2mm未満のものの割合が80%以上である場合、良好と評価した。
【0139】
【表1】

【0140】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、加圧ベルトの耐磨耗性、加圧ベルトの離型性、画質に優れることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】第1実施形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図2】第2実施形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0142】
1Y,1M,1C,1K 画像形成ユニット
10 一次転写部
11 感光体ドラム
12 帯電器
13 レーザー露光器
14 現像器
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
17 ドラムクリーナ
20 二次転写部
22 二次転写ロール
25 バックアップロール
26 給電ロール
31 駆動ロール
32 支持ロール
33 テンションロール
34 クリーニングバックアップロール
35 中間転写ベルトクリーナ
40 制御部
42 基準センサ
43 画像濃度センサ
50 用紙収容部
51 給紙ロール
52 搬送ロール
53 搬送ガイド
55 搬送ベルト
56 定着入口ガイド
60 定着装置
61 加熱ロール
611 コア
612 耐熱性弾性体層
613 離型層
62 加圧ベルト
63 ベルト走行ガイド
64a プレ挟込部材
64 圧力パッド
64b 剥離挟込部材
65 ホルダ
66 ハロゲンランプ
68 摺動シート
69 感温素子
70 剥離部材
71 剥離バッフル
72 ホルダ
80 エッジガイド
82 セラミックヒータ
90 定着装置
91 加圧ロール
911 コア
912 耐熱性弾性体層
913 離型層
92 加熱ベルト
95 ホルダ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)及び(II)から選択される少なくとも1種のジアミン化合物に由来する成分を有するフッ化ポリイミド樹脂が含まれるフッ化ポリイミド樹脂層を持つ電子写真用部材。
【化1】

【請求項2】
前記フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部と中央部とで、フッ素原子含有量の差を有する請求項1に記載の電子写真用部材。
【請求項3】
前記フッ化ポリイミド樹脂層の一方の面の表層部のフッ素含有率が、中央部のフッ素含有率の1.05倍以上2.00倍以下である請求項1に記載の電子写真用部材。
【請求項4】
フッ素原子を含有しないポリイミド樹脂が含まれるポリイミド樹脂層を有すると共に、当該ポリイミド樹脂層の一方の面及び他方の面の少なくとも一方に前記フッ化ポリイミド樹脂層を有する請求項1〜3のいずれか項に記載の電子写真用部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真部材からなる無端ベルト。
【請求項6】
加熱部材と、前記加熱部材と接して配設される加圧部材と、とを備え、
前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくとも一方が、請求項5に記載の無端ベルトを備える定着装置。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、
を備え、
前記定着手段が、請求項6に記載の定着装置である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−151969(P2010−151969A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328127(P2008−328127)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】