説明

電子写真装置及びプロセスカートリッジ

【課題】 高いクリーニング性能の感光体と帯電均一性の高い帯電部材を同時に用いてもスリップを起こすこと無く、帯電スジの防止と雨降り状のクリーニング不良画像の防止を両立して、高画質な電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】 感光体、導電性弾性層と表面層とを有する帯電部材に直流電圧のみを印加して該感光体を帯電させる帯電手段、帯電された該感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段、該静電潜像を現像する現像手段、現像された画像を転写する転写手段、該感光体上に残留した現像剤を除去するクリーニング手段、を備える電子写真装置において、該感光体の表面の純水に対する接触角が105°以上でかつ動摩擦係数が0.6以上1.2以下、該帯電部材の表面層の十点平均粗さ(Rzjis)が5μm以上10μm以下かつ平均長さ(RSm)が10μm以上70μm以下である電子写真装置及びプロセスカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置及びプロセスカートリッジに関し、詳しくは特定の表面層を有する電子写真感光体と特定の表面層を有する帯電部材とを具備する電子写真装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置を用いた像形成プロセスにおいて電子写真感光体は、帯電、露光、現像、転写、クリーニング及び除電の繰り返し過程を経る。帯電及び露光により形成された静電潜像は、トナーと言われる微粒子状の現像材によりトナー画像となる。更に、このトナー画像は転写プロセスにおいて紙等の転写材に転写されるが、100%のトナーが転写されるわけではなく、一部が電子写真感光体上に残留する。この残留トナーを除去しないと、繰り返しプロセスにおいて、汚れ等のない高品質な画像を得ることができない。そのために残留トナーのクリーニングプロセスが必要となる。クリーニングプロセスとしては、ファーブラシ、磁気ブラシ又はブレード等を用いたものが代表的であるが、クリーニングの精度や装置構成等の点から一般にはブレードクリーニングが選択される。ブレードクリーニングでは、ポリウレタン等の素材から成る弾性部材を、電子写真感光体の進行方向と垂直に電子写真感光体に加圧当接させる構成となっており、トナーのクリーニング精度を上げるためには、電子写真感光体へのブレードの当接圧を上げる必要があるが、これは両者の摩擦力の上昇を引き起こす。その結果、電子写真感光体の削れ量の増加による耐久性低下、電子写真感光体傷の発生、ブレードの反転によるクリーニング不良の発生や装置の停止等の問題が生じる。電子写真感光体へのブレードの当接圧が不十分な場合には、トナーがブレードをすり抜け、雨降り状のクリーニング不良画像が発生してしまう。
【0003】
ブレードの当接圧を上げること無く、トナーのすり抜け防止するために電子写真感光体のクリーニング性能を高める手段としては、電子写真感光体の表面層にシリコーン樹脂を含有させたり、フッ素原子含有樹脂粒子(フッ素樹脂粉体)を分散させたりして、電子写真感光体の表面の撥水性を高くすることにより、トナーに対する離型性が向上することが知られている。
【0004】
ところが、このように電子写真感光体の表面層にシリコーン樹脂を含有させたり、フッ素原子含有樹脂粒子を分散させたりした場合は、電子写真感光体の表面の撥水性が向上すると同時に、表面の摩擦係数の低下が発生することが知られている。
【0005】
一方、電子写真装置は、像担持体を帯電させる一次帯電手段等の被帯電体を均一に帯電する手段を含んでいる。帯電法式として、従来のコロナ帯電法よりもオゾン発生量が大幅に少ない接触帯電法式の検討が行われ、実用化されている。接触帯電法式とは、電圧を印加した帯電部材を被帯電体に当接させて被帯電体を帯電させるものであるが、当接部近傍の微小間隙で生じる放電現象を利用して被帯電体を帯電させる場合が一般的である。接触式帯電部材としては、少なくとも弾性層に被帯電体と接触する表面層の2層を含む構成のものが広く用いられている。接触帯電部材の重要特性として、電子写真感光体に対する帯電均一性が挙げられる。均一性を向上させる方法として、抵抗分布の均一化、表面性向上が検討されている。例えば、前者については、接触帯電部材表面層中の導電性物質の分散を向上させる、体積固有抵抗が比較的低い樹脂を接触帯電部材表面層の結着材料に用いる、接触帯電部材を構成する各層の膜厚を均一に調整する等の方策が挙げられる。後者については、接触帯電部材表面層にレベリング剤を添加する、接触帯電部材弾性層の表面性を向上させる等の方策がある。また、特許文献1において、接触帯電部材の最外層の表面粗さを5μm以下とすることで直流電圧のみを印加して被帯電体を帯電処理する場合でも均一帯電性が得られるとの提案がなされ、特許文献2においては、接触帯電部材の表面粗さをJIS規格B−0601に基づいて測定した十点平均表面粗さRzスケールで20μm以下とすることにより、帯電電位の均一性を常に確保し良好画像が得られるとの提案がなされている。
【0006】
しかしこのように、帯電均一性の向上を図ることを目的として、帯電部材の表面を適正な範囲に粗らしていくと、帯電部材と電子写真感光体との接触面積が減少し、帯電部材と電子写真感光体との摩擦係数が低下する傾向がある。特に、上述のようにクリーニング性能の向上を目的として、シリコーン樹脂やフッ素原子含有樹脂粒子等を含有させて電子写真感光体表面の撥水性を高めると同時に表面摩擦係数が低下している電子写真感光体を用いた場合には、電子写真感光体と帯電部材との間の摩擦係数の不足から、帯電部材が電子写真感光体に従動せずにスリップを起こして回転ムラが発生し、回転が停止してしまうと帯電性の著しい低下が発生してしまう。更なる電子写真装置の高速化に伴い、プロセススピードが増して行くと帯電部材のスリップが発生し易い傾向にある。
【特許文献1】特開平5−341620号公報
【特許文献2】特開平8−286468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高いクリーニング性能の電子写真感光体と帯電均一性の高い帯電部材を同時に用いてもスリップを起こすこと無く、帯電スジの防止と雨降り状のクリーニング不良画像の防止を両立して、高画質な電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触配置された、導電性弾性層及び該導電性弾性層上に設けられた表面層を有する帯電部材を有し、該帯電部材に直流電圧のみの電圧を印加することによって該電子写真感光体を帯電するための帯電手段と、該帯電手段によって帯電された該電子写真感光体の表面に露光光を照射することによって該電子写真感光体の表面に静電潜像を形成するための露光手段と、該露光手段によって形成された該電子写真感光体の表面の静電潜像をトナーにより現像することによって該電子写真感光体の表面にトナー像を形成するための現像手段と、該現像手段によって形成された該電子写真感光体の表面のトナー像を転写材に転写するための転写手段と、該転写手段による転写後に該電子写真感光体の表面に残留したトナーを除去することによって該電子写真感光体の表面をクリーニングするためのクリーニング手段と、を備える電子写真装置において、該電子写真感光体の表面の純水に対する接触角が105°以上であり、かつ、動摩擦係数が0.6以上1.2以下であり、該帯電部材の表面の十点平均粗さ(Rzjis)が5.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、平均長さ(RSm)が10.0μm以上70.0μm以下であることを特徴とする電子写真装置及びプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、帯電均一性の高い帯電部材を用いてもスリップを起こすこと無く、かつ耐久使用を通じて高いクリーニング性能を維持し、帯電スジや雨降り状の不良画像を防止することのできる電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(1)電子写真装置
図1に本発明にかかる電子写真装置の概略構成の一例を示した。
【0012】
1は電子写真感光体でドラム型のものである。この電子写真感光体1は矢印Aの方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0013】
2は帯電手段としての接触帯電部材である帯電ローラである。この帯電ローラ2は該帯電ローラに圧設した電子写真感光体1の回転に従動して回転し、バイアス電源2Aから直流電圧のみが印加される。この帯電ローラ2により電子写真感光体1の周面が所定の極性・電位にかつ一様に接触帯電方式で帯電処理される。
【0014】
その電子写真感光体1の帯電処理面に不図示の露光手段(原稿像の結像露光手段、レーザービームスキャナ等)により目的画像情報の露光光3が照射されて電子写真感光体1の面に目的画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。
【0015】
その形成静電潜像は、現像器4の荷電粒子(トナー)5で正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)5aとして顕画化される。
【0016】
次いでそのトナー像は、電子写真感光体1と該電子写真感光体に圧設している転写手段としての転写ローラ7とのニップ部(転写部)に給紙カセット9から給紙ローラ10及びレジストローラ11により所定のタイミングで一枚ずつ給送された転写材6に被転写粒子5bが付着する。転写ローラ7にはバイアス電源7Aからトナー5の保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加されている。
【0017】
トナー像転写を受けた転写材6は、電子写真感光体1の面から分離されて不図示の定着手段へ搬送されてトナー像の定着処理を受ける。
【0018】
トナー像転写後の電子写真感光体1面は、クリーナー(クリーニング装置)8により転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて繰返して作像に供される。
【0019】
また、図2には複数の電子写真感光体、帯電部材及び現像装置を有する接触帯電方式のフルカラー電子写真装置の例を示した。このフルカラー電子写真装置は、各色のトナー(ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー)を収容した図1と同様のプロセスカートリッジを縦置きに配列し、それぞれの転写手段によって順次転写を行い、最後に定着を行う、タンデム型と呼ばれるフルカラー電子写真装置である。20K、20C、20M及び20Yは各色のプロセスカートリッジ、21K、21C、21M及び21Yは電子写真感光体、22K、22C、22M及び22Yは帯電ローラ、23は転写ローラ、24は搬送ベルト、25はレーザー光源、26はトナー、27は定着器、28は給紙ローラである。
【0020】
(2)帯電部材
本発明の電子写真装置に用いられる帯電部材は、表面層の十点平均粗さ(Rzjis)が5.0μm以上10.0μm以下、かつ、平均長さ(RSm)が10.0μm以上70.0μm以下とすることを特徴とする。
【0021】
帯電部材の表面を上述の範囲内とすることにより、電子写真感光体と帯電用部材との間に適度な放電の起点が形成されるので、帯電部材の母線方向でのスジ上の不均一な放電が抑制され、電子写真感光体を均一に帯電することが可能になったと思われる。
【0022】
帯電部材の表面粗さが本発明で規定した範囲を下回ると、充分な帯電均一性が得られず、スジ状の画像不良が発生し易くなる。一方、帯電部材の表面粗さが本発明で規定した範囲を上回ると、連続通紙により紙紛やトナー等が帯電部材表面に付着し易くなり、これに起因した帯電ムラによる画像不良が発生する。
【0023】
また帯電部材は、被帯電体の形態によって導電部材の好適な形態も変化する場合もあり、例えばベルト状であってもよいが、ローラ形状であることが好ましい。以下、帯電部材について好ましい実施の形態を図示しつつ詳しく説明する。
【0024】
帯電部材の一例としては、図3に示すようにローラ形状であり、帯電性支持体2aと、その外周に一体に形成された導電性弾性層2bと、該導電性弾性層の外周に形成された抵抗層2c、及び更にその外周に形成された表面層2dから構成されている導電部材を例示することができる。
【0025】
また帯電部材における他の例としては、図4に示すように導電性弾性層2bと表面層2dからなる二層であってもよいし、図5に示すように抵抗層2cと表面層2dの間に第2の抵抗層2eを設けた四層以上を導電性支持体の上に形成した構成としてもよい。
【0026】
導電性支持体2aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。また、本発明で用いられる導電性支持体の形態は導電部材の形態によって選択することができ、例えば前述したベルト状の導電部材であれば導電性支持体としてはアルミニウムの薄膜等を例示することができる。
【0027】
導電性弾性層は、ゴム等の弾性材料中にカーボンブラック、導電性金属酸化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の導電剤を適宜添加することにより10Ω・cm未満に調整されるのが好ましい。
【0028】
また、導電性弾性層の弾性や硬度は、軟化油や可塑剤等の添加及び樹脂を発泡させることにより調整される。導電性弾性層の具体的弾性材料としては、例えば、天然ゴムやEPDM、SBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、IR、BR、NBR及びCR等の合成ゴム、更にはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等も挙げられる。これらの弾性材料を発泡成型した発泡体を導電性弾性層に用いてもよい。
【0029】
前記抵抗層は、導電性弾性層に接した位置に形成され、導電性弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の導電部材表面へのブリードアウトを防止する目的で必要に応じて設けられる。本発明に用いられる抵抗層を構成する材料としては、例えばエピクロルヒドリンゴム、NBR、ウレタンゴム、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの材料は単独又は二種類以上を混合してもよく、共重合体であってもよい。
【0030】
本発明に用いられる抵抗層は、導電性又は半導電性を有している。導電性・半導電性の発現のためには、各種導電剤(導電性カーボン、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩等)を適宜用いることができる。この場合、所望の電気抵抗を得るためには前記各種導電剤を二種以上併用してもよい。
【0031】
本発明に用いられる表面層の結着樹脂材料としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が挙げられる。表面層には、各種導電剤(導電性カーボン、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、銅、アルミニウム及びニッケル等)を適宜用いることができる。この場合、所望の電気抵抗を得るためには前記各種導電剤を二種以上併用してもよい。
【0032】
なお、前述したこれらの層は、それぞれの役割に応じて適度な層厚となるように、従来より知られている層の形成技術を用いて形成されればよい。
【0033】
帯電部材の表面粗さを所定の範囲に制御する方法としては、特には特定できないが、例えば表面層に微粒子を添加する方法、研磨剤を用いるか又はサンドブラスト法等による機械的な研磨の方法等いずれを用いてもよい。
【0034】
(3)電子写真感光体
また本発明の電子写真装置では、電子写真感光体の表面の純水に対する接触角を105°以上でかつ摩擦係数が0.6以上1.2以下とすることで、前述の均一性に優れた帯電部材と組み合わせて用いた場合でも、帯電部材が電子写真感光体に従動せずにスリップしてしまうことを防止し、かつ高いクリーニング性能を維持することが可能となる。前述のとおり本発明の電子写真装置では、電子写真感光体と組み合わせて用いられる帯電部材は、表面層の十点平均粗さ(Rzjis)が5.0μm以上10.0μm以下、かつ、平均長さ(RSm)が10.0μm以上70.0μm以下であることを特徴とし、特には電子写真感光体の表面層の摩擦係数が0.6以上0.7以下である場合には、表面層の十点平均粗さ(Rzjis)が5.0μm以上8.0μm以下、かつ、平均長さ(RSm)が20.0μm以上40.0μm以下である帯電部材と組み合わせて用いることがより好ましく、電子写真感光体の表面層の摩擦係数が0.7以上1.2以下の場合には、表面層の十点平均粗さ(Rzjis)が7.0μm以上1.2μm以下、かつ、平均長さ(RSm)が30.0μm以上60.0μm以下である帯電部材と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0035】
また、電子写真感光体の表面層は、下記式(11)で示される繰り返し構造単位α及び下記式(12)で示される繰り返し構造単位βを有し、重量平均分子量が1000〜1000000であるジオルガノポリシロキサンを含有し、該表面層中の該ジオルガノポリシロキサンの含有量が、該表面層全質量に対して0.01〜20質量%である(ただし、該表面層がフッ素原子含有樹脂粒子を含有する場合を除く)ことが好ましく、特には0.1〜10.0質量部がより好ましい。含有量が少な過ぎると発明の効果が得られ難くなり、多過ぎるとキャリアのトラップの原因となり、電位変動を生じる場合がある。電子写真感光体の表面層にフッ素原子含有樹脂微粒子を含有させると、過度の表面摩擦係数の低減を引き起こす場合があり、またフッ素原子含有樹脂微粒子が露光光を散乱させてしまい、シャープな静電潜像が得られ難くなる場合があるため、本発明の電子写真感光体の表面層はフッ素原子含有樹脂微粒子を含有しない。
【0036】
これによって、過度な表面摩擦係数の低減を引き起こすことなく電子写真感光体の表面の撥水性を向上させることができ、帯電均一性の高い帯電部材と組み合わせて用いてもスリップを起こすこと無く、クリーニング時のトナーの離型性を充分に高くすることができる。
【0037】
【化6】

上記式(11)、(12)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、B11は、パーフルオロアルキル基を有する1価の有機基を示し、D11は、重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換若しくは無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基及び炭素原子数12以上の1価の有機基からなる群より選択される1価の基を示す。
【0038】
また、上記ジオルガノポリシロキサンは、更に下記式(13)で示される繰り返し構造単位γを有してもよい。
【0039】
【化7】

上記式(13)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示す。
【0040】
また、上記ジオルガノポリシロキサンの末端基としては、例えば、下記式(14)で示される構造を有する末端基I、下記式(15)で示される構造を有する末端基IIが挙げられる。
【0041】
【化8】

上記式(14)、(15)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、E11及びE12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基、パーフルオロアルキル基を有する1価の有機基、重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換若しくは無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換若しくは無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基及び炭素原子数12以上の1価の有機基からなる群より選択される1価の基を示し、ただし、上記式(14)中のE11は上記ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位の主鎖(−Si−O−)中のSiと結合し、上記式(15)中のSiは上記ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位の主鎖(−Si−O−)中のOと結合する。
【0042】
本発明において、有機基とは、置換若しくは無置換の炭化水素基を意味する。また、炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基及びアリールアルケニル基等が挙げられる。
【0043】
上記R11〜R16の1価の炭化水素基としては、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアリールアルケニル基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は1〜30であることが好ましく、特にはメチル基やフェニル基がより好ましい。
【0044】
上記B11のパーフルオロアルキル基を有する1価の有機基は、下記式(2)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
【0045】
【化9】

上記式(2)中、R21は、アルキレン基又はアルキレンオキシアルキレン基を示し、aは、3以上の整数を示す。
【0046】
上記アルキレン基としては、エチレン基やプロピレン基等が挙げられる。上記アルキレンオキシアルキレン基としては、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基及びプロピレンオキシプロピレン基等が挙げられる。
【0047】
上記D11の重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基は、下記式(3)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
【0048】
【化10】

上記式(3)中、R31は、置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、R32、R33は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、W31は、重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を示し、R34は、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、bは、0又は1を示す。
【0049】
上記2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基が挙げられ、炭素原子数1〜10であることが好ましい。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられる。上記アリール基としては、無置換であることが好ましく、フェニル基等が挙げられる。
【0050】
上記D11の置換若しくは無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基は、下記式(4)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
【0051】
【化11】

上記式(4)中、R41及びR42は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、R43は、水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、cは、0又は1を示し、dは、1以上300以下の整数を示す。
【0052】
上記2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基や、フェニレン基等のアリーレン基等が挙げられる。上記1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。上記dは、5以上であることが好ましい。
【0053】
上記D11の炭素原子数12以上の1価の有機基としては、n−ドデシル基、n−テトラドデシル基、n−ヘキサデシル基及びn−オクタデシル基等のアルキル基が挙げられる。上記炭素原子数は、100以下であることが好ましい。
【0054】
上記各基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子や、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0055】
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(11)で示される繰り返し構造単位αの数(平均)は、1〜1000であることが好ましく、特には10〜200であることが好ましい。
【0056】
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(12)で示される繰り返し構造単位βの数(平均)は、1〜1000であることが好ましく、特には5〜100であることが好ましい。
【0057】
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(13)で示される繰り返し構造単位γの数(平均)は、0〜1000であることが好ましく、特には100〜200であることが好ましい。
【0058】
上記ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位は、上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位βのみ、又は、上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位βと上記式(13)で示される繰り返し構造単位γのみであることが好ましい。
【0059】
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位βと上記式(13)で示される繰り返し構造単位γとの和(平均)は、2〜2000であることが好ましく、特には5〜1000であることが好ましく、更には20〜500であることがより一層好ましい。
【0060】
上記式(11)で示される繰り返し構造単位αの数が2以上の場合、複数のR11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のB11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。
【0061】
上記式(12)で示される繰り返し構造単位βの数が2以上の場合、複数のR12は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のD11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。D11は、上述のとおり、重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換若しくは無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換若しくは無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基及び炭素原子数12以上の1価の有機基のいずれかであるが、D11が複数の場合は、少なくとも1個のD11は、置換若しくは無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基であることが好ましい。
【0062】
上記式(13)で示される繰り返し構造単位γの数が2以上の場合、複数のR13は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のR14は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。
【0063】
同様のことが、上記式(3)中のR32及びR33、上記式(4)中のR42、上記式(5)中のR52及びR53についてもいえる。
【0064】
以下に、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンの具体例を示す。ただし、本発明はこれら具体例に限定されない。また、下記ジオルガノポリシロキサン(1−1)〜(1−23)は、いずれも、末端基として上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、下記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15及びR16:メチル基)を有する。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
【表17】

【0082】
【表18】

【0083】
これらの中では、(1−1)、(1−4)、(1−5)、(1−7)、(1−10)、(1−14)及び(1−15)が好ましい。
【0084】
また、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましく、特には10000〜100000であることがより好ましく、更には20000〜40000であることがより一層好ましい。
【0085】
また、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサン中のフッ素原子の含有量は、ジオルガノポリシロキサン全質量に対して1〜90質量%であることが好ましく、特には5〜60質量%であることが好ましい。フッ素原子の含有量が1質量%未満では、電子写真感光体の表面層の離型性が十分に発揮されない場合があり、90質量%を超えると、電子写真感光体の表面層中の結着樹脂との相溶性が悪くなったり、アンカー効果が十分に得られなかったりして、表面に移行し易くなり、長時間耐久使用により電子写真感光体の表面が摩耗した場合、十分な効果が得られなくなる場合がある。
【0086】
一般的に、シリコーンオイルやシロキサン化合物は、層中で表面移行性があるため、長時間耐久使用により電子写真感光体の表面が摩耗した場合、これらの成分の多くが失われてしまい、十分な効果が得られなくなるのである。
【0087】
それに対して、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンは、特に側鎖のD11が電子写真感光体の表面層の結着樹脂に対してアンカー効果を有するため、層中での表面移行性が抑制される。
【0088】
以下、本発明に用いられる電子写真感光体の構成について説明する。
【0089】
本発明に用いられる電子写真感光体は支持体上に感光層を有する。
【0090】
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)であればよく、アルミニウム及びステンレス等の金属製の支持体や、金属、紙、プラスチック等の上に導電性を付与する層を設けた支持体等が挙げられる。支持体の形状としては、円筒状やベルト状等が挙げられる。
【0091】
感光層は、電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)であってもよいが、電子写真特性の観点からは積層型が好ましい。また、積層型感光層には、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層と、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層があるが、電子写真特性の観点からは順層型が好ましい。
【0092】
露光光がレーザー光の場合、散乱による干渉縞を防止することを目的として、また、支持体の傷を被覆することを目的として、支持体上に導電層を設けてもよい。導電層は、カーボンブラックや金属粒子等の導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることが好ましい。なお、切削処理、アルマイト処理、乾式ブラスト処理、湿式ブラスト処理等によって支持体の表面を処理することによっても干渉縞を防止することができる。
【0093】
支持体又は導電層の上に、接着機能やバリア機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等の樹脂を適当な溶剤に溶解し、これを支持体又は導電層上に塗布・乾燥することにより形成することができる。中間層の膜厚は0.05〜5μmであることが好ましく、特には0.3〜1μmであることが好ましい。なお、支持体表面をアルマイト処理したり、ゾルゲル法による導電性膜を用いたりする場合は、中間層を必ずしも必要ではない。
【0094】
感光層が順層型感光層である場合、支持体、導電層又は中間層の上には電荷発生層が設けられる。
【0095】
電荷発生材料としては、例えば、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、アゾ(トリスアゾ、ジスアゾ、モノアゾ)、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン等の顔料が挙げられる。
【0096】
電荷発生層は、電荷発生材料を、その0.3〜4倍量(質量比)の結着樹脂及び溶剤と、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び液衝突型高速分散機等の方法で十分に分散し、得られた分散液を、塗布・乾燥することにより形成することができる。なお、結着樹脂を電荷発生材料の分散後投入してもよいし、電荷発生材料に成膜性があれば結着樹脂を使用しなくてもよい。電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0097】
感光層が順層型感光層である場合、電荷発生層の上には、電荷輸送層が設けられる。
【0098】
電荷輸送材料としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、トリアリルメタン化合物及びチアゾール化合物等が挙げられる。
【0099】
電荷輸送層は、電荷輸送材料及び結着樹脂を溶剤で溶解し、得られた塗布液を、塗布・乾燥することにより形成することができ、また、電荷輸送層が電子写真感光体の表面層である場合は、電荷輸送材料及び結着樹脂、更に上記ジオルガノポリシロキサンを溶剤で溶解し、得られた塗布液を、塗布・乾燥することにより形成することができる。電荷輸送材料と結着樹脂との質量比は5:1〜1:5であることが好ましく、特には3:1〜1:3であることが好ましい。電荷輸送層の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0100】
電荷輸送層の結着樹脂としては、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、これらの樹脂の繰り返し構造単位のうち2つ以上を含む共重合体、例えばスチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー及びスチレン−マレイン酸コポリマー等が挙げられる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン及びポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーからも選択できる。
【実施例】
【0101】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明の実施の形態は、これらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0102】
(実施例1)
長さ260.5mm、直径30mm、シリンダー部の厚み0.7mm、最大表面粗さ5.0μm、平均表面粗さ1.0μmのアルミニウムシリンダー(JISA 3003アルミニウムの合金)を用意した。
【0103】
酸化スズの被覆層を有する硫酸バリウム粒子からなる粉体(商品名:パストランPC1、三井金属鉱業(株)製)60部、酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)60部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライトJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)70部、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レシリコーン(株)製)10部、シリコーン樹脂(商品名:トスパール120、東芝シリコーン(株)製)10部、2−メトキシ−1−プロパノール60部及びメタノール60部からなる溶液を約20時間、ボールミルで分散した。
【0104】
このようにして調合した導電層用分散液を前述のアルミニウムシリンダー上に浸漬法によって塗布し、140℃で30分間加熱硬化することにより、膜厚が12μmの樹脂層を形成した。
【0105】
次に、共重合ポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)10部とメトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)30部をメタノール400部/n−ブタノール200部の混合液に溶解した溶液を、前記樹脂層の上に浸漬塗布し、90℃で10分間加熱乾燥し、膜厚が0.62μmのバリア層を形成した。
【0106】
次に、CuKαの特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部と、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業社製)5部をシクロヘキサノン250部に添加し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで1時間分散し、これに250部の酢酸エチルを加えて希釈し、これを中間層上に塗布した後、100℃で10分間乾燥して膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
【0107】
次に、以下の材料を溶解調整して電荷輸送層用塗工液を作製した:
下記式(A)で示される電荷輸送材料 40部
【0108】
【化12】

下記式(B)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート 50部
(粘度平均分子量105000)
【0109】
【化13】

ジオルガノポリシロキサン 2.7部
(構造式(1−4) 重量平均分子量36000)
クロロベンゼン 350部
この電荷輸送層用塗工液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で1時間加熱乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0110】
次に、帯電ローラを以下の手順で作製した:
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体 100部
(エピクロルヒドリン:エチレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=40mol%:56mol%:4mol%)
軽質炭酸カルシウム 30部
脂肪族ポリエステル系可塑剤 10部
ステアリン酸亜鉛 1部
老化防止剤MB(2−メルカプトベンズイミダゾール) 0.5部
酸化亜鉛 5部
下記式で示される四級アンモニウム塩 2部
【0111】
【化14】

以上の材料を50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。このコンパウンドに原料のゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し、加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのDM(ジベンゾチアジルスルフィド)1部及びTS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを、直径6mmステンレス製の芯金に外径15mmのローラ状になるように押し出し成型機にて成型し、加熱蒸気加硫した後、外径が12mmになるように研磨加工を行い、弾性層を得た。ローラ長は232mmとした。
【0112】
上記弾性層の上に表面層2dを被覆形成した。表面層2dは以下に示す表面層用塗布液を浸漬塗布法にてコート成形した。浸漬塗布回数は2回とした。
【0113】
まず、表面層の塗料として
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液 100部
メチルイソブチルケトン 250部
導電性酸化スズ 130部
(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン処理品、平均粒径:0.05μm、体積抵抗率:10Ω・cm)
疎水性シリカ 3部
(ヘキサメチルジシラザン処理品、平均粒径:0.012μm、体積抵抗率:1016Ω・cm)
変性ジメチルシリコーンオイル 0.08部
架橋PMMA粒子 100部
(平均粒子径:4.51μm、最大粒径:38.6μm)
を用い、ガラス瓶を容器として混合溶液を作製した。これに、分散メディアとして、ガラスビーズ(平均粒径:0.8mm)を充填率80%になるように充填し、ペイントシェーカー分散機を用いて8時間分散した。分散溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体1:1の混合物を、NCO/OH=1.0となるように添加し、浸漬塗布用の表面層塗料を調製した。
【0114】
上記弾性層の表面上に上記表面層用塗布液を浸漬塗布法にて2回コートし、風乾し、温度160℃にて1時間乾燥した。
【0115】
<表面粗さの測定法>
作製した帯電部材について、10点平均粗さ(Rzjis)及び平均長さ(RSm)を、小坂研究所製の表面粗さ測定機SE−3400を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0116】
<接触角の測定法>
接触角の測定は常温常湿(25℃/50%RH)の環境下において純水を用い、装置は協和界面科学(株)製接触角計CA−DS型を用いた。接触角は電子写真感光体表面5点の平均値とし、水滴付着後1分以内に測定した。結果を表1に示す。
【0117】
<摩擦係数の測定法>
電子写真感光体表面の動摩擦係数(μ)の測定は、常温常湿(25℃/50%RH)の環境下において図6の概略断面図に示されるクリーニングブレード固定装置を{HEIDON社製の表面試験装置(型式HEIDON−14)}を用いた。この装置は、ブレード37を一定の荷重(g)で電子写真感光体36に押し当て、電子写真感光体面と平行に動いている時に加わる力(g)を測定する。動摩擦係数は荷重を換えて同様の計測をし、ブレードにかかる荷重に対する、動いている時に加わる力のグラフの傾きから求められる。使用ブレードは北辰工業社製ウレタンブレード(ゴム硬度67°)を5mm×30mm×2mmにカットし、with方向、角度25°にて測定した。結果を表1に示す。
【0118】
評価装置として、図1に示されるようなヒューレットパッカード社製LBP「レーザージェット4600」を、プロセススピードを190mm/secで作動する改造を行い、以下のプロセス条件に設定を変更して評価を行った:
電子写真感光体暗部電位 −400V
電子写真感光体明部電位 −170V
現像バイアス −350V(直流電圧のみ)
【0119】
評価は、低温低湿(15℃/10%RH)の環境下で初期画像評価を行った。画像の評価は、プリント全面に1ドットを桂馬パターンで印字したハーフトーンのテストチャート及びベタ黒画像により帯電スジ画像及びクリーニング不良画像の評価を行い、目視にて判定した。結果を表1に示す。
【0120】
次いで、低温低湿(15℃/10%RH)の環境下で、A4サイズ紙に面積比率4%印字の文字パターンで10,000枚の連続画像出しを実施した後、初期画像評価と同様の方法により、評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
(実施例2)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンの量を2.7部から9部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0122】
(実施例3)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンの量を2.7部から0.9部に変更し、帯電ローラの作製において表面層に添加するPMMA粒子を、平均粒子径:19.56μm、最大粒子径:130.5μm、添加部数を20部とした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び帯電ローラを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0123】
(実施例4)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンの量を2.7部から0.9部に変更し、帯電ローラを作製において表面層に添加するPMMA粒子を、平均粒子径:9.85μm、最大粒子径:52.5μm、添加部数を60部とした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び帯電ローラを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0124】
(実施例5)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンを構造式(1−4)のものから構造式(1−15)のものに変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0125】
(実施例6)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンを構造式(1−4)のものから構造式(1−17)のものに変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0126】
(実施例7)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンを構造式(1−4)のものから構造式(1−1)のものに変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0127】
(比較例1)
実施例1において、帯電ローラを作製する際、表面層にPMMA粒子を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び帯電ローラを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0128】
(比較例2)
実施例1において、帯電ローラの表面層に添加するPMMA粒子を、平均粒子径:9.85μm、最大粒子径:52.5μm、添加部数を40部とした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び帯電ローラを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0129】
(比較例3)
実施例1において、帯電ローラの表面層に添加するPMMA粒子を、平均粒子径:19.65μm、最大粒子径:130.5μm、添加部数を60部とした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体及び帯電ローラを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0130】
(比較例4)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサンの替わりに、シリコーン系グラフトポリマー(商品名:GS−101CP:東亜合成製)0.9部を加えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0131】
(比較例5)
実施例1において、電子写真感光体の電荷輸送層を以下のように形成した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0132】
すなわち、上記式(B)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(重量平均分子量128000)10部をクロロベンゼン100部に溶解し、フッ素原子含有樹脂粒子としての四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL−2、ダイキン工業(株)製、平均粒径(1次粒子)0.3μm、平均粒径(2次粒子)5μm)10部及びフッ素成分がグラフトしたポリメタクリル酸メチル(商品名:アロンGF300、東亜合成製)を1部添加してよく振り混ぜた。この混合物を、液突型分散機を用い、2回分散することによって、フッ素原子含有樹脂粒子分散液を調製した。
【0133】
次に、上記式(B)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂:上記電荷輸送材料(A):上記四フッ化エチレン樹脂粒子:上記ジフッ素成分がグラフトしたポリメタクリル酸メチル:上記溶剤(クロロベンゼン)が、最終質量比で10:8:1:1:0.2:80となるように、上記式(B)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂及び上記電荷輸送材料(A)を上記フッ素原子含有樹脂粒子分散液に添加して調製した。
【0134】
この分散液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で1時間乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0135】
(比較例6)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中にジオルガノポリシロキサン(構造式1−4)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0136】
【表19】

【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の電子写真装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明のフルカラー電子写真装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の電子写真装置に用いられる帯電部材の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真装置に用いられる他の帯電部材の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真装置に用いられる他の帯電部材の構成を示す断面図である。
【図6】実施例で電子写真感光体表面の動摩擦係数の測定に用いられるクリーニングブレード固定装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0138】
1 電子写真感光体
2 帯電ローラ
2A バイアス電源
3 露光光
4 現像器
5 荷電粒子(トナー)
5a 可転写粒子像(トナー像)
5b 被転写粒子
6 転写材
7 転写ローラ
7A バイアス電源
8 クリーニング装置
9 給紙カセット
10 給紙ローラ
11 レジストローラ
20K、20C、20Y、20M プロセスカートリッジ
21K、21C、21Y、21M 電子写真感光体
22K、22C、22Y、22M 帯電ローラ
23 転写ローラ
24 搬送ベルト
25 レーザー光源
25 トナー
27 定着器
28 給紙ローラ
31 支柱
32 ホルダー支柱アーム
33 上部ホルダー
34 下部ホルダー
35 固定ビス
36 サンプル
37 ウレタンゴムブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体と、
該電子写真感光体に接触配置された、導電性弾性層及び該導電性弾性層上に設けられた表面層を有する帯電部材を有し、該帯電部材に直流電圧のみの電圧を印加することによって該電子写真感光体を帯電するための帯電手段と、
該帯電手段によって帯電された該電子写真感光体の表面に露光光を照射することによって該電子写真感光体の表面に静電潜像を形成するための露光手段と、
該露光手段によって形成された該電子写真感光体の表面の静電潜像をトナーにより現像することによって該電子写真感光体の表面にトナー像を形成するための現像手段と、
該現像手段によって形成された該電子写真感光体の表面のトナー像を転写材に転写するための転写手段と、
該転写手段による転写後に該電子写真感光体の表面に残留したトナーを除去することによって該電子写真感光体の表面をクリーニングするためのクリーニング手段と、
を備える電子写真装置において、
該電子写真感光体の表面の純水に対する接触角が105°以上であり、かつ、動摩擦係数が0.6以上1.2以下であり、
該帯電部材の表面の十点平均粗さ(Rzjis)が5.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、平均長さ(RSm)が10.0μm以上70.0μm以下である
ことを特徴とする電子写真装置。
【請求項2】
前記電子写真感光体の表面層に、下記式(11)で示される繰り返し構造単位α及び下記式(12)で示される繰り返し構造単位βを有し、重量平均分子量が1000〜1000000であるジオルガノポリシロキサンを含有し、該表面層中の該ジオルガノポリシロキサンの含有量が、該表面層全質量に対して0.01〜20質量%である(ただし、該表面層がフッ素原子含有樹脂粒子を含有する場合を除く)請求項1に記載の電子写真装置:
【化1】

(式(11)、(12)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、B11は、パーフルオロアルキル基を有する1価の有機基を示し、D11は、重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換若しくは無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、及び、炭素原子数12以上の1価の有機基からなる群より選択される1価の基を示す)。
【請求項3】
前記ジオルガノポリシロキサンが、更に下記式(13)で示される繰り返し構造単位γを有する請求項1又は2に記載の電子写真装置:
【化2】

(式(13)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示す)。
【請求項4】
前記ジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が10000〜200000である請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項5】
前記R11〜R14が、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基である請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項6】
前記B11のパーフルオロアルキル基を有する1価の有機基が、下記式(2)で示される構造を有する1価の基である請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真装置:
【化3】

(式(2)中、R21は、アルキレン基又はアルキレンオキシアルキレン基を示し、aは、3以上の整数を示す)。
【請求項7】
前記D11の重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基が、下記式(3)で示される構造を有する1価の基である請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真装置:
【化4】

(式(3)中、R31は、置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、R32、R33は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、W31は、重合度3以上の置換若しくは無置換のポリスチレン鎖を示し、R34は、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、bは、0又は1を示す)。
【請求項8】
前記D11の置換若しくは無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基が、下記式(4)で示される構造を有する1価の基である請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真装置:
【化5】

(式(4)中、R41及びR42は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、R43は、水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、cは、0又は1を示し、dは、1以上300以下の整数を示す)。
【請求項9】
少なくとも電子写真感光体と、導電性弾性層と表面層とを有する帯電部材に直流電圧のみを印加して電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、を一体に支持し、電子写真本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、
該電子写真感光体の表面の純水に対する接触角が105°以上であり、かつ、動摩擦係数が0.6以上1.2以下であり、
該帯電部材の表面の十点平均粗さ(Rzjis)が5.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、平均長さ(RSm)が10.0μm以上70.0μm以下である
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−154631(P2006−154631A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348549(P2004−348549)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】