説明

電子写真装置

【課題】単層感光体を用いた電子写真装置において、装置が小型、高速になった場合においても安定して高品質な画像を出力することができる電子写真装置を提供する。
【解決手段】帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作される電子写真装置において、感光体が少なくとも導電性支持体上に感光層を設けて成り、感光層が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として下記一般式(1)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作し、少なくとも特定結晶型のチタニルフタロシアニンと特定の電荷輸送材料を含む単層感光体を用いた電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して、光によって情報記録を行なう光プリンタは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術は、プリンタのみならず通常の複写機にも応用され、いわゆるデジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため、今後その需要性が益々高まっていくと予想される。さらに、パーソナルコンピュータの普及、及び性能の向上にともない、画像及びドキュメントのカラー出力を行なうためのデジタルカラープリンタの進歩も急激に進んでいる。
【0003】
これらの電子写真装置に用いる電子写真感光体は、光導電性素材として従来用いられたSe、CdS、ZnO等の無機材料に対し、感度、熱安定性、毒性等に優位性を有する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体が主流になっている。この有機光導電性材料を用いた電子写真感光体には、電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層とからなる積層構造を有する機能分離型の感光層が主に使われている。
一方、電荷発生材料と電荷輸送材料を単一の感光層に含む単層感光体は、単純な製造工程で生産可能であること、層界面が少ないことから光学的特性が向上すること、正負いずれの帯電プロセスにも使用できることなどの利点があることから近年注目されている。
【0004】
近年、電子写真装置は装置の小型化や高速化が要望されている。装置の小型化には感光体の小径化が不可欠であり、高速化には感光体線速を速くする必要がある。電子写真装置においては一様に帯電された感光体上に、画像データにより変調された書込光を照射して、感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像の形成された感光体に現像部によりトナーを供給してトナー画像を感光体上に形成して現像するため、感光体の小径化や感光体線速の上昇により、書き込み部(露光部)から現像部までの時間が短くなる。従って感光体の感度、応答性が十分でない場合には、光照射された画像部の電位が減衰している途中で現像部に到達することになるため、現像部における露光部電位が安定しなかったり十分に低下していなかったりするため、結果として画像濃度ムラや画像濃度の低下といった不具合が生じる。
以上のように装置の小型化、高速化には、高感度・高速応答性を有する感光体が必要であるが、これまでの単層感光体ではいまだ不十分であり、今後のさらなる小型、高速化のためにもこれまで以上の感度、応答性を有する単層感光体を用いた電子写真装置が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、単層感光体を用いた電子写真装置において、装置が小型、高速になった場合においても安定して高品質な画像を出力することができる電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作される電子写真装置において、感光体が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなることを特徴とする電子写真装置を用いることにより、単層感光体を用いた小型高速電子写真装置において、安定して高品質な画像を得ることができることを見い出した。
【0007】
【化1】


式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。
【0008】
【化2】

式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。
【0009】
本発明に用いられるチタニルフタロシアニンは、非常に高いキャリア発生機能を有しており、また、本発明に用いられる上記一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送材料は非常に高い電荷移動機能を有している。そのため上記のチタニルフタロシアニンと電荷輸送材料を含む単層感光体は高感度で高速応答性を有する。
しかし、上記の単層感光体は高感度・高速応答性を有するものの電荷保持性があまり良好ではない、つまり暗減衰が大きいため、画像形成プロセスにおいて帯電部から現像部までの時間が長くなると、感光体の表面電位が大きく減衰してしまい、結果として地肌部の電位が下がり、地汚れ、かぶりといった異常画像を引き起こしてしまう。
しかしながら、帯電部から現像部までの時間が300msec以下の電子写真装置においては、上記単層感光体を用いた場合でも暗減衰の影響をほとんど受けることなく高品質な画像を得ることができる。
【0010】
すなわち、上記課題は、以下に示す本発明の(1)〜(10)によって解決される。
(1)「感光体と、該感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像を現像する現像手段と、現像像を転写する転写手段とを有し、帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作される電子写真装置において、前記感光体が少なくとも導電性支持体上に感光層を設けて成り、該感光層が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として下記一般式(1)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなることを特徴とする電子写真装置;
【0011】
【化3】


式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。」
(2)「感光体と、該感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像を現像する現像手段と、現像像を転写する転写手段とを有し、帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作される電子写真装置において、前記感光体が少なくとも導電性支持体上に感光層を設けて成り、該感光層が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として下記一般式(2)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなることを特徴とする電子写真装置;
【0012】
【化4】

式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。」
(3)「前記チタニルフタロシアニンがCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないことを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の電子写真装置」
(4)「前記チタニルフタロシアニンの平均粒子径が0.25μm以下であることを特徴とする前記第(3)項に記載の電子写真装置」
(5)「前記感光層に含まれる電荷輸送材料が、正孔輸送材料と電子輸送材料の両方を含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の電子写真装置」
(6)「前記正孔輸送材料が下記構造式(1)で表わされることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の電子写真装置;
【0013】
【化5】


(7)「正帯電で帯電プロセスを行なうことを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の電子写真装置」
(8)「前記電子写真装置が複数の電子写真感光体を具備してなり、それぞれの電子写真感光体上に現像された単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の電子写真装置」
(9)「前記電子写真装置が、電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する電子写真装置であって、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の電子写真装置」
(10)「前記画像形成要素が少なくとも、感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段より選ばれる一つの手段とを一体に支持した着脱自在なプロセスカートリッジであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の電子写真装置」
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単層感光体を用いた電子写真装置において、装置が小型、高速化により露光部から現像部までの時間が短くなった場合にも対応できる、高感度・高速応答性を有する単層感光体を用いた電子写真装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に沿って本発明の電子写真装置を詳しく説明する。
図1は、本発明の電子写真装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において感光体(11)は少なくとも導電性支持体上に感光層を設けて成り、該感光層が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなる。感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
図1に示される装置は、帯電装置(帯電手段)(12)の帯電部から現像手段(14)の現像部までの時間が300msec以下で動作される。この際、帯電手段から現像手段までの時間とは、帯電部の中心に対面する感光体表面位置から、現像ユニットの中心に対面する感光体表面までの円周を感光体線速で割ることにより求められるものである。
帯電手段(12)は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段(12)は、消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段(12)への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有する感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。
本発明においては帯電の極性として正負いずれも使用できるが、正帯電の方が負帯電に比べ、帯電性が安定しており、またオゾンの発生量も少ないため望ましい。
転写手段(16)には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
また、露光手段(13)、除電手段(1A)等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
現像手段(14)により感光体上に現像されたトナー(15)は、受像媒体(18)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段(17)により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0016】
図2には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。図2において、感光体(11)は、本発明の要件を満たし、エンドレスベルト状のものである。
駆動手段(1C)により駆動され、帯電手段(12)による帯電、露光手段(13)による像露光、現像(図示せず)、転写手段(16)による転写、クリーニング前露光手段(1B)によるクリーニング前露光、クリーニング手段(17)によるクリーニング、除電手段(1A)による除電が繰返し行なわれる。図2においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0017】
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行なっているが、これは感光層側から行なってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行なってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0018】
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。この場合も、感光体(11)は、本発明の要件を満たす感光体である。感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
【0019】
図4には本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置では、感光体(11)の周囲に帯電手段(帯電装置)(12)、露光手段(13)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色トナー毎の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)、中間転写体である中間転写ベルト(1F)、クリーニング手段(17)が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。
【0020】
感光体(11)は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。各色の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)は各々独立に制御可能となっており、画像形成を行なう色の現像手段のみが駆動される。感光体(11)上に形成されたトナー像は中間転写ベルト(1F)の内側に配置された第1の転写手段(1D)により、中間転写ベルト(1F)上に転写される。第1の転写手段(1D)は感光体(11)に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト(1F)を感光体(11)に当接させる。各色の画像形成を順次行ない、中間転写ベルト(1F)上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段(1E)により、受像媒体(18)に一括転写された後、定着手段(19)により定着されて画像が形成される。第2の転写手段(1E)も中間転写ベルト(1F)に対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト(1F)に当接する。
【0021】
転写ドラム方式の電子写真装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図4に示すような中間転写方式の電子写真装置では中間転写体(1F)上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は図4に示す装置に限らず前述の図1、図2、図3および後述する図5(具体例を図6に記す。)に記す電子写真装置に適用することができる。
【0022】
図5には本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体(11Y,11M,11C,11Bk)が設けられている。この電子写真装置に用いられる感光体は、本発明の要件を満たす感光体である。各感光体(11Y,11M,11C,11Bk)の周りには、帯電手段(12Y,12M,12C,12Bk)、露光手段(13Y,13M,13C,13Bk)、現像手段(14Y,14M,14C,14Bk)、クリーニング手段(17Y,17M,17C,17Bk)等が配設されている。また、直線上に配設された各感光体(11Y,11M,11C,11Bk)の各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト(1G)が駆動手段(1C)にて掛け渡されている。この搬送転写ベルト(1G)を挟んで各感光体(11Y,11M,11C,11Bk)に対向する転写位置には転写手段(16Y,16M,16C,16Bk)が配設されている。
【0023】
次に、本発明の電子写真装置に用いられる電子写真感光体について詳細に説明する。
図7は、本発明の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)の上に感光層(22)が設けられている。
導電性支持体(21)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板、及びそれらをDrawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨などにより表面処理した管などを使用することができる。
【0024】
本発明における感光層(22)は、少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなる。
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンは特開2001−19871号公報、特開平11−5919号公報、特開平3−269064号公報等に記載の公知合成法により得ることができる。
また、上記チタニルフタロシアニンはCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないものが好ましい。このチタニルフタロシアニンの結晶型は特開2001−019871号公報に記載されているものであるが、このチタニルフタロシアニンを用いた場合、非常に高感度であり、またその他の27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンより電荷保持性が良好な感光体を得ることができる。
更に、上記結晶型を有し、結晶合成時あるいは分散濾過処理により、一次粒子の平均粒子サイズを0.25μm以下にし、粗大粒子の存在しないチタニルフタロシアン結晶(特開2004−83859号公報、特開2004−78141号公報)は最も有用に使用できる。一次粒子の平均粒子サイズの小さいチタニルフタロシアニン結晶を用いることで平均粒子径の小さな分散液を作製することができる。通常分散液中では、全ての粒子が一次粒子の状態で存在するわけではなく、一次粒子が幾つか凝集したものも存在する。従って上記一次粒子の平均粒子サイズを0.25μm以下にし、粗大粒子の存在しないチタニルフタロシアン結晶を用いることで平均粒子径の小さな分散液を作製することができる。チタニルフタロシアニンの平均粒子径が大きいと、チタニルフタロシアニン粒子の表面積が小さくなり、電荷輸送材料との接触量が少なくなるためキャリア注入効率が小さくなってしまう。また平均粒子径が大きいと感光層(電荷発生層)の塗膜欠陥の確率が高くなり、地汚れなどの画像欠陥が発生しやすくなるといった問題点が発生する。そのため平均粒子径が小さいほど、更に高感度であり、また地汚れに対する安定性も高い電子写真感光体を得ることができる。特に平均粒子径が0.25μm以下の場合にこの効果は顕著である。
ここでいう平均粒子径とは、分散液中(電荷発生層用塗工液)での体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median系)として算出されたものである。しかしながら、この方法では微量の粗大粒子を検出できない場合があるため、より詳細に求めるには、チタニルフタロシアニン結晶粉末、あるいは分散液を直接、電子顕微鏡にて観察し、その大きさを求めることが重要である。
【0025】
また一般式(1)及び一般式(2)で表わされる電子輸送材料は非常に優れた電荷輸送機能を有するため、上記チタニルフタロシアニンと組み合わせることにより高感度、高速応答性を有する感光体を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられる感光体には、公知の電荷発生材料を併せて用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾ−ル系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生材料は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0027】
次に、電荷輸送材料について説明する。
本発明に用いられる一般式(1)で表わされる電子輸送材料は、下記に示す構造骨格を有する。
【0028】
【化6】


式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。
【0029】
また、本発明に用いられる一般式(2)で表わされる電子輸送材料は、下記に示す構造骨格を有する。
【0030】
【化7】

式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。
【0031】
該置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1〜25、好ましくは炭素数1〜10の炭素原子を有するアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基といった直鎖状のもの、i―プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メチルプロピル基、ジメチルプロピル基、エチルプロピル基、ジエチルプロピル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルペンチル基、メチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基等の分岐状のもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基で置換されたアルキル基、シアノ基で置換されたアルキル基等が例示できる。
なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたアルキル基に含まれる。
【0032】
該置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数3〜25、好ましくは炭素数3〜10の炭素原子を有するシクロアルキル環、具体的には、シクロプロパンからシクロデカンまでの同属環、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン等のアルキル置換基を有するもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基等で置換されたシクロアルキル基等が例示できる。
なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のシクロアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたシクロアルキル基に含まれる。
【0033】
置換または無置換のアラルキル基としては、上述の置換または無置換のアルキル基に芳香族環が置換した基が挙げられ、炭素数6〜14のアラルキル基が好ましい。より具体的には、ベンジル基、ペルフルオロフェニルエチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ターフェニルエチル基、ジメチルフェニルエチル基、ジエチルフェニルエチル基、t−ブチルフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが例示できる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0034】
更に具体的には、下記式(1−1)、式(1−2)、式(2−1)〜(2−5)で表わされる電子輸送材料が、得られる画像が高品質である点で好ましい。なお、式中Meはメチル基を示す。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
【化14】

【0042】
該一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送物質の製造方法としては、下記の方法が例示できる。
ナフタレンカルボン酸は公知の合成方法(例えば、米国特許6794102号公報、Industrial Organic Pigments 2nd edition, VCH, 485 (1997) など)に従い、下記反応式より合成される。
【0043】
【化15】


式中、RnはR3、R4、R7、R8を表わし、RmはR5、R6、R9、R10を表わす。
【0044】
本発明に用いる一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送物質は、上記のナフタレンカルボン酸若しくはその無水物をアミン類と反応させ、モノイミド化する方法、ナフタレンカルボン酸若しくはその無水物を緩衝液によりpH調整してジアミン類と反応させる方法等により得られる。モノイミド化は無溶媒、若しくは溶媒存在下で行なう。溶媒としては特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、酢酸、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルエチレンウレア、ジメチルスルホキサイド等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。pH調整には水酸化リチウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液をリン酸等の酸との混合により作製した緩衝液を用いる。カルボン酸とアミン類やジアミン類とを反応させて得られたカルボン酸誘導体脱水反応は無溶媒、若しくは溶媒存在下で行なう。溶媒としては特に制限は無いがベンゼン、トルエン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、無水酢酸等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。いずれの反応も、無触媒若しくは触媒存在下でおこなってよく、特に限定されないが例えばモレキュラーシーブスやベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸等を脱水剤として用いることが例示できる。
【0045】
電荷輸送材料には電子を輸送する電子輸送材料と正孔(ホール)を輸送する正孔輸送材料とがあり、本発明に用いられる感光体としては電荷輸送材料として電子輸送材料と正孔輸送材料の両方を含む方が好ましい。
本発明においては前述の一般式(1)又は一般式(2)の電子輸送材料を含むことが必須であるが、これに加えて公知の電荷輸送材料、即ち電子輸送材料、正孔輸送材料を併用することもできる。
電子輸送材料としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。
これらの電子輸送材料は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0046】
正孔輸送材料としては、電子供与性物質が好ましく用いられる。
その例としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。
これらの正孔輸送材料は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよいが、中でも下記骨格を有するα−フェニルスチルベン誘導体がその電荷輸送機能が優れているため好ましい。
【0047】
【化16】

(式中、R、R、RおよびRは水素元素、置換もしくは無置換の低級アルキル樹、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Arは置換又は無置換のアリール基を表わし、Ar置換又は無置換のアリーレン基を表わし、ArとRは共同で環を形成してもよく、またnは0又は1の整数である。)
上記一般式で表わされる正孔輸送材料の中でも、特に下記構造式(1)で表わされる正孔輸送材料が特に好ましい。
【0048】
【化17】

【0049】
これら感光層のバインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、公知のものが使用できる。例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの高分子化合物の中でも特にポリカーボネート樹脂が膜質の面から好ましい。
これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約及び成膜性の制約から、その添加量は20〜80wt%とすることが好ましい。
【0050】
感光層を形成する方法としては、溶液分散系からのキャスティング法が好ましい。キャスティング法によって感光層を設けるには、上述した電荷発生材料を、必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液に電荷輸送材料、バインダー樹脂を加えて作製した塗工液を適度な濃度に調製して塗布すればよい。塗布は、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などにより行なうことができる。
【0051】
以上のようにして設けられる感光層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。これらの溶媒は単独としてまたは混合して用いることができる。
上記感光層において、電荷発生材料は感光層全体に対して0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%が適当である。電子輸送材料はバインダー樹脂成分100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは10〜150重量部が適当である。ただし電子輸送材料全体に対し、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる電子輸送材料が50〜100重量%であることが好ましい。また正孔輸送材料は、バインダー樹脂成分100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは20〜150重量部が適当である。電子輸送材料と正孔輸送材料を併用する場合は、電子輸送材料と正孔輸送材料の総量が、バインダー樹脂成分100重量部に対して20〜300重量部、好ましくは30〜200重量部が適当である。
【0052】
また、必要により、感光層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
感光層の膜厚は5〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜35μm程度が適当である。
【0053】
本発明に用いられる電子写真感光体には、図8に示すように、導電性支持体(21)と感光層(22)との間に下引き層(23)を設けることもできる。下引き層は、接着性の向上、上層の塗工性の改良、残留電位の低減、導電性支持体からの電荷注入の防止などの目的で設けられる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましく、このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
また、下引き層には、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物、或いは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層と同様、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
【0054】
更に下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。この他に、アルミナを陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも下引き層として良好に使用できる。
下引き層の膜厚は0.1〜10μmが適当であり、さらに好ましくは1〜5μmである。
また、本発明においては、感光層中にガスバリアー性向上、及び耐環境性改善のために酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、及びレベリング剤を添加することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお、これによって本発明の範囲は限定されるわけではない。部は全て重量部である。
まず、電荷発生材料(チタニルフタロシアニン結晶)の合成例について述べる。
−チタニルフタロシアニン結晶の合成−
(顔料合成例1)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行ない、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。これを顔料1とする。
前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。なお、顔料合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図9に示す。
【0056】
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0057】
(顔料合成例2)
−チタニルフタロシアニン結晶の合成−
顔料合成例1の方法に従って、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを合成し、次のように結晶変換を行ない、顔料合成例1よりも一次粒子の小さなフタロシアニン結晶を得た。
特開2004−83859号公報、実施例1に準じて、顔料合成例1で得られた結晶変換前の水ペースト60質量部にテトラヒドロフラン400質量部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5質量部を得た。これを顔料2とする。顔料合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で44倍の量を用いた。
顔料合成例1で作製された結晶変換前チタニルフタロシアニン(水ペースト)の一部をイオン交換水でおよそ1質量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製のネットですくい取り、チタニルフタロシアニンの粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM、日立:H−9000NAR)にて、75000倍の倍率で観察を行なった。一次粒子の平均粒子サイズとして、以下のように求めた。
【0058】
上述のように観察されたTEM像をTEM写真として撮影し、映し出されたチタニルフタロシアニン粒子(針状に近い形)を30個任意に選び出し、それぞれの長径の大きさを測定する。測定した30個体の長径の算術平均を求めて、一次粒子の平均粒子サイズとした。以上の方法により求められた顔料合成例1における水ペースト中の一次粒子の平均粒子サイズは、0.06μmであった。
また、顔料合成例1及び顔料合成例2における濾過直前の結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶を、テトラヒドロフランでおよそ1質量%になるように希釈し、上記の方法と同様に観察を行なった。上記のようにして求めた一次粒子の平均粒子サイズを表1に示す。なお、顔料合成例1及び顔料合成例2で作製されたチタニルフタロシアニン結晶は、必ずしも全ての結晶の形が同一ではなかった(三角形に近い形、四角形に近い形など)。このため、結晶の最も大きな対角線の長さを長径として、計算を行なった。
【0059】
【表1】

顔料合成例2で作製した顔料2は、前述と同様の方法でX線回折スペクトルを測定した。その結果、顔料合成例2で作製した顔料2のX線回折スペクトルは、顔料合成例1で作製した顔料1のスペクトルと一致した。
【0060】
(顔料合成例3)
特開平3−269064号公報(特許第2584682号公報)製造例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1gをイオン交換水10gとモノクロルベンゼン1gの混合溶媒中で1時間撹拌(50℃)した後、メタノールとイオン交換水で洗浄し、乾燥して顔料を得た(顔料3とする)。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、前記の条件によりX線回折スペクトルを測定し、公報に記載のスペクトルと同様であることを確認した。
【0061】
(顔料合成例4)
特開平11−5919号公報(特許第3003664号公報)の実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、O−フタロジニトリル20.4部、四塩化チタン部7.6部をキノリン50部中で200℃にて2時間加熱反応後、水蒸気蒸留で溶媒を除き、2%塩化水溶液、続いて2%水酸化ナトリウム水溶液で精製し、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄後、乾燥し、チタニルフタロシアニンを得た。このチタニルフタロシアニン2部を5℃の98%硫酸40部の中に少しずつ溶解し、その混合物を約1時間、5℃以下の温度を保ちながら攪拌する。続いて硫酸溶液を高速攪拌した400部の氷水中に、ゆっくりと注入し、析出した結晶を濾過する。結晶を酸が残量しなくなるまで蒸留水で洗浄し、ウェットケーキを得る。そのケーキをTHF100部中で約5時間攪拌を行ない、ろ過、THFによる洗浄を行ない乾燥後、顔料を得た(顔料4とする)。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、前記の条件によりX線回折スペクトルを測定し、公報に記載のスペクトルと同様であることを確認した。
【0062】
(感光体作製例1)
顔料合成例1で作製した顔料1を下記組成の処方、条件にて分散を行ない顔料分散液を作製した。
チタニルフタロシアニン(顔料1) 3部
シクロヘキサノン 97部
φ9cmのガラスポットにφ0.5mmのPSZボールを用い、回転数100rpmで5時間分散を行なった。
なお顔料1のチタニルフタロシアニンを用いた顔料分散液中での平均粒子径を堀場製作所製CAPA−700で測定したところ0.35μmであった。
上記分散液を用いて下記組成の感光体用塗工液を作製した。
上記分散液:60部
下記構造式(1)の正孔輸送材料 30部
下記構造式(2)の電子輸送材料 20部
Z型ポリカーボネート樹脂 50部
(帝人化成製:パンライトTS−2050)
シリコーンオイル 0.01部
(信越化学工業社製:KF50)
テトラヒドロフラン 350部
【0063】
【化18】

【0064】
【化19】

【0065】
なお、上記構造式(2)の電子輸送材料は下記の方法により製造した。
<第一工程>
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン2.14g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体A 2.14g(収率31.5%)を得た。
<第二工程>
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体A 2.0g(5.47mmol)と、ヒドラジン一水和物0.137g(2.73mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、構造式(2)で表わされる電子輸送材料0.668g(収率33.7%)を得た。
質量分析(FD−MS)において、M/z=726のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素69.41%、水素5.27%、窒素7.71%に対し、実測値で炭素69.52%、水素5.09%、窒素7.93%あった。
【0066】
こうして得られた感光層用塗工液をφ30mm、長さ340mmアルミニウムドラム上に、浸漬塗工法にて塗布、120℃で20分間乾燥し、25μmの感光層を形成し、感光体を得た。(感光体1とする)
【0067】
(感光体作製例2)
感光体作製例1で使用した顔料1に変えて、顔料合成例2で作製した顔料2を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体2とする)。
なお顔料2のチタニルフタロシアニンを用いた顔料分散液中での平均粒子径を堀場製作所製CAPA−700で測定したところ0.20μmであった。
【0068】
(感光体作製例3)
感光体作製例1で使用した顔料1に変えて、顔料合成例3で作製した顔料3を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体3とする)。
【0069】
(感光体作製例4)
感光体作製例1で使用した顔料1に変えて、顔料合成例4で作製した顔料4を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体4とする)。
【0070】
(感光体作製例5)
感光体作製例1で使用した顔料1に変えて、X型無金属フタロシアニン(大日本インキ製:FastgenBlue8120)を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体5する)。
【0071】
(感光体作製例6)
感光体作製例1で使用した顔料1に変えて、下記構造式(3)のビスアゾ顔料を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体6とする)。
【0072】
【化20】

【0073】
(感光体作製例7)
感光体作製例1で使用した正孔輸送材料に変えて、下記構造式(4)の正孔輸送材料を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体7とする)。
【0074】
【化21】

【0075】
(感光体作製例8)
感光体作製例1で使用した正孔輸送材料に変えて、下記構造式(5)の正孔輸送材料を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体8とする)。
【0076】
【化22】

【0077】
(感光体作製例9)
感光体作製例1で使用した電子輸送材料に変えて、下記構造式(6)の電子輸送材料を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体9とする)。
【0078】
【化23】

【0079】
なお、上記構造式(6)の電子輸送材料は、下記の方法により製造した。
<第一工程>
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノプロパン1.10g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体B 2.08g(収率36.1%)を得た。
<第二工程>
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体B 2.0g(6.47mmol)と、ヒドラジン一水和物0.162g(3.23mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、上記構造式(6)で表わされる電子輸送材料0.810g(収率37.4%)を得た。
質量分析(FD−MS)において、M/z=614のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素66.45%、水素3.61%、窒素9.12%に対し、実測値で炭素66.28%、水素3.45%、窒素9.33%あった。
【0080】
(感光体作製例10)
感光体作製例1で使用した電子輸送材料に変えて、下記構造式(7)の電子輸送材料を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体10とする)。
【0081】
【化24】

【0082】
(感光体作製例11)
感光体作製例1で使用した電子輸送材料に変えて、下記構造式(8)の電子輸送材料を使用した以外は感光体作製例1と同様にして感光体を得た(感光体11とする)。
【0083】
【化25】

【0084】
実施例1〜14、比較例1〜15
以上のように作製した感光体をリコー製IPSiO Color8100改造機(パワーパックを交換し正帯電となるよう改造し、さらに書込みに用いるLDの波長を780nmのものに換装し、さらにプロセス線速を自由に変更できるようにした装置)に組み付け、帯電−現像時間が100msec、250msec、350msecになるように装置のプロセス線速を調整し、画像評価(画像濃度、画像ムラの有無、地汚れの有無)を行なった。
トナーと現像剤はIPSiO Color8100専用のものから極性が逆となるトナーと現像剤に交換し使用した。
また電子写真装置の帯電手段は外部電源を用いて、帯電ローラの印加電圧はAC成分としてピーク間電圧1.9kV、周波数1.35kHzを選択した。また、DC成分は感光体の帯電電位が+700Vとなるようなバイアスを設定した。また、現像バイアスは+500Vとした。試験環境は、24℃/54%RHであった。
またIPSiO Color8100改造機において帯電−現像時間が100msec、250msec、350msecの場合、露光−現像時間はそれぞれ約70msec、175msec、245msecとなる。
【0085】
画像評価の方法は以下の通りである。
(画像濃度、画像ムラ)
黒ベタ画像を出力し十分な画像濃度が得られるか、及び画像ムラの有無を評価した。評価ランクは以下の通りである。
・画像濃度:
○:十分な画像濃度が得られる
△:わずかに薄い
×:十分な画像濃度が得られない
・画像ムラ:
○:画像ムラなし
△:わずかに観察される
×:はっきり観察される
(地汚れ)
白紙画像を出力し地汚れの評価を行なった。評価ランクは以下の通りである。
○:地汚れ無し、
△:わずかに観察される
×:はっきり観察される
以上の結果を表2にまとめた。
【0086】
【表2】

本発明の要件を満たす感光体を用い、帯電から現像までの時間が300msec以下である実施例1〜14の画像はいずれも良好なものであることがわかる。さらに本発明の要件を満たす感光体を用いた場合、露光現像時間が70msecとかなり短くなった場合においても良好な画像を得ることができ、装置の小型化、高速化に対応できることがわかる。
一方、本発明の要件を満たす感光体を用いた場合でも帯電−現像時間が本発明の範囲外である300msec以上の場合には地汚れが発生し、良好な画像を得ることができない。
一方、比較例1〜15から、本発明の範囲外である感光体を用いた場合には、露光現像時間が比較的長い時には比較的良好な画像が得られるが、露光現像時間が短くなった場合には十分な画像濃度を得ることができず、装置の小型化や高速化に対応できないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る電子写真装置の例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の別の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明に係る電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る電子写真感光体の別の層構成の例を示す断面図である。
【図9】合成例で合成したチタニルフタロシアニンのX線回析スペクトル図である。
【符号の説明】
【0088】
11・・・電子写真感光体
12・・・帯電手段
13・・・露光手段
14・・・現像手段
15・・・トナー
16・・・転写手段
17・・・クリーニング手段
18・・・受像媒体
19・・・定着手段
1A・・・除電手段
1B・・・クリーニング前露光手段
1C・・・駆動手段
1D・・・第1の転写手段
1E・・・第2の転写手段
1F・・・中間転写体
1G・・・受像媒体担持体
21・・・導電性支持体
22・・・感光層
23・・・下引き層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、該感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像を現像する現像手段と、現像像を転写する転写手段とを有し、帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作される電子写真装置において、前記感光体が少なくとも導電性支持体上に感光層を設けて成り、該感光層が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として下記一般式(1)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなることを特徴とする電子写真装置。
【化1】


式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。
【請求項2】
感光体と、該感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像を現像する現像手段と、現像像を転写する転写手段とを有し、帯電部から現像部までの時間が300msec以下で動作される電子写真装置において、前記感光体が少なくとも導電性支持体上に感光層を設けて成り、該感光層が少なくとも電荷発生材料としてCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン、電荷輸送材料として下記一般式(2)で表わされる電子輸送材料を含む単一の層からなることを特徴とする電子写真装置。
【化2】

式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わす。
【請求項3】
前記チタニルフタロシアニンがCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真装置。
【請求項4】
前記チタニルフタロシアニンの平均粒子径が0.25μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真装置。
【請求項5】
前記感光層に含まれる電荷輸送材料が、正孔輸送材料と電子輸送材料の両方を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項6】
前記正孔輸送材料が下記構造式(1)で表わされることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真装置。
【化3】

【請求項7】
正帯電で帯電プロセスを行なうことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項8】
前記電子写真装置が複数の電子写真感光体を具備してなり、それぞれの電子写真感光体上に現像された単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項9】
前記電子写真装置が、電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する電子写真装置であって、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項10】
前記画像形成要素が少なくとも、感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段より選ばれる一つの手段とを一体に支持した着脱自在なプロセスカートリッジであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−108637(P2007−108637A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40315(P2006−40315)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】