説明

電子制御ユニットによるインバータ制御装置

【課題】 この発明は,電子制御ユニットによって制御されたインバータによってモータに起動トルクを発生させ,負荷体が駆動した後にインバータを定常の周波数・電圧・電流制御に切り換えてモータの速度制御等を行う。
【解決手段】 このインバータ制御装置は,負荷体4を上下移動可能に支持するスピンドル5を上下動させため回転駆動するモータ3,モータ3の回転駆動をインバータ2を介して制御する電子制御ユニット1,及びモータ3の回転を検出するエンコーダ8を有する。電子制御ユニット1は,モータ3の起動時にインバータ2に対して高電圧をかける指令を出すと共にエンコーダ8によってモータ3の回転を検出し,モータ3が起動したことに応答してインバータ2を定常の周波数・電圧・電流制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,流路を開閉するのに設けられた水門,扉体,ゲート,弁体等の負荷体を上下移動させるアクチュエータに関し,特に,負荷体を上下駆動するためのモータ起動時における電子制御ユニットによるインバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,モータを商用電源にて駆動している状態から定電流形インバータによりモータを駆動切替を行うに際して同電源の同期切替方法が知られている。該同期切替方法は,負荷用モータを商用電源にて駆動している状態から定電流形インバータにて切替駆動するに際して,電流形インバータの周波数を上昇させていく過程においてほぼ商用周波数に等しくなった後に位相が一致する時点も検出信号を得ると共に,パルス発生時点から負荷モータの力率角だけ経過した時点までの幅を有するパルス信号を得,位相一致検出信号が発生した際に電流形インバータの逆変換制御を各パルス信号の立ち下がり時点にて行うようにし,次いでモータに対して商用電源と電流形インバータより並列的に電力を得た後,商用電源をモータより切り離すようにしたものである(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
各種管路や各種水路を開閉するのに用いる交流電動弁又はゲートが知られている。該交流電動弁又はゲートは,弁又はゲートと,弁又はゲートを駆動する交流電動機と,交流電動機のインバータと,弁又はゲートの開閉速度を求める開閉速度検出手段と,開閉速度が弁又はゲートの開度区間毎に指定した開閉速度と成るようにインバータのインバータ周波数を増加又は減少せしめるインバータ制御部とを具備している。インバータは,交流電動機を含む弁又はゲートの駆動機構に取り付けられている(例えば,特許文献2参照)。
【0004】
従来,用水路に設けた水門扉の水密構造について,水密維持と水密ゴムの保護を開示したものが知られている。該水門扉の水密構造は,取水口の前側壁面に配置した開口を有する戸当り,開口を開閉する扉体,該扉体を上下に移動する駆動手段を有し,用水路の閉鎖時の水密を維持するために扉体の内側面で開口に対向する位置の周縁部に設けた水密ゴムと,扉体の開閉操作時に扉体を受板から離反させる突起体を設けて水密ゴムを保護すると共に,突起体の沈み穴を設けて閉鎖時の水密維持を図ったものである(例えば,特許文献3参照)。
【0005】
水門扉の水密構造について,扉体が放水口を全閉する際に発生するゴムパッキンのギロチン損傷の発生を防止するものが知られている。該水門扉の水密構造は,扉体の下端内面部に対向する水門側戸当り部に沿って水密ゴムを配設し,閉鎖時に水密ゴムに背圧として圧力水導入孔を経てダム圧力水を導入し,山型突条部を扉体に押し付けることにより,扉体を水密に閉鎖するものである(例えば,特許文献4参照)。
【0006】
また,本出願人は,先にインテリジェント型バルブアクチュエータを開発した。該インテリジェント型バルブアクチュエータは,バルブ位置リミット,トルクリミット等のリミット検出,ハウジング内部の温湿度検出,ステムブッシュの雌ねじの摩耗量検出,モータや電子部品の状態データによる劣化予測,駆動系部品等の摩耗劣化,モータの駆動電流の状態データ等を電気的に検出して監視して自己診断すると共に,それらの情報に対応して内蔵する制御回路によって装置自体を正常化の処理をしたり,上記情報に対応して部品交換,警報等の表示を行うことができる。該インテリゼント型バルブアクチュエータは,各種センサからの測定値を表示し,状態データの測定値を設定値から外れた情報に応答して制御回路で処理して部品交換修理,警報等の状態出力を発し,各測定値に応答してバルブによる流路の開閉作動を自己制御する。コントローラは,制御回路に接続した通信ユニットを通じて測定値に応答して設定値を制御する(例えば,特許文献5参照)。
【特許文献1】特開昭58−39276号公報
【特許文献2】特許第3079426号公報
【特許文献3】特開2003−206523号公報
【特許文献4】特開平7−42138号公報
【特許文献5】特開2004−257420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,従来のバルブアクチュエータに設けられているバルコン用トルクモータは,初期トルク即ち起動トルクを得るためにマグネットスイッチ等でモータを回転させていた。また,従来のバルブアクチュエータでは,上記のように,扉体の水路の閉鎖時における水密構造を得るために種々の手段が取られており,閉鎖されている扉体を開閉するための起動トルクが大きなものになっている。近年,バルブアクチュエータにおいて,インバータを搭載してインバータによるバルブコントロールが行われるようになった。しかしながら,定格のベクトルインバータでは,トルクモータに必要な起動トルクを発生させることができないため,バルブコントロール用として,インバータ制御の採用について問題があった。
【0008】
この発明の目的は,例えば,水門,扉体,バルブ,ゲート等の負荷体を操作するスピンドルを上下動可能に駆動するアクチュエータにおいて,例えば,上記のインテリゼント型バルブアクチュエータを更に発展させたものであり,負荷体についての各種情報に対応してスピンドルを上下動させるモータをインバータを用いて駆動制御し,特に,負荷体の過負荷時,例えば,起動時の起動トルクが定常負荷に比較して200〜400%であるので,その起動トルクを確保するため,負荷体の起動時に,電子制御ユニットからインバータに予め決められた電圧波形,電流波形及び周波数を整形処理するための起動処理データを入力し,インバータからモータに高電圧を印加し,モータに起動トルクを発生させ,モータの起動後はインバータへ定常の処理データに入力し,負荷体の移動状態をスムーズに所望の速度で作動させる電子制御ユニットによるインバータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,負荷体を移動させるために回転駆動するモータ,前記モータの回転駆動を前記負荷体の移動駆動に変換伝達する動力伝達装置,及び前記負荷体の移動状態を検出するエンコーダを有するアクチュエータにおいて,
前記モータに起動トルクを発生させるため,電圧波形,電流波形及び周波数を整形するための起動処理データを作成する電子制御ユニット,及び前記モータを回転駆動するため前記電子制御ユニットからの前記起動処理データの入力によって制御されるインバータを有し,前記電子制御ユニットは,前記負荷体の起動時に前記インバータに前記起動処理データを入力して前記モータに高電圧をかける指令を出すと共に,前記エンコーダによって前記モータの回転を検出して前記モータが起動したことに応答して前記インバータを定常処理データによる周波数・電圧・電流制御に切り換え,前記負荷体の移動状態を制御することを特徴とする電子制御ユニットによるインバータ制御装置に関する。
【0010】
また,前記電子制御ユニットにおいて作成した前記起動処理データは,商用電源を直接入力した時に発生する処理データと同一であり,前記起動処理データが前記インバータに入力されて前記モータに印加され,前記モータに前記起動トルクを発生させる。
【0011】
また,前記電子制御ユニットは,前記エンコーダによる前記負荷体の移動位置を検出して確認できるものである。
【0012】
また,このインバータ制御装置は,前記電子制御ユニットには前記インバータと前記エンコーダからの信号が入力され,前記電子制御ユニットは前記信号に応答して前記インバータを制御して前記負荷体の作動状態を制御するように構成されている。
【0013】
また,このインバータ制御装置は,前記電子制御ユニットから前記インバータへ入力する前記起動処理データの指令時間は,前記インバータが本来有する許容範囲内の短時間である。
【0014】
また,このインバータ制御装置は,前記電子制御ユニットには,前記負荷体の移動限界位置及び予め決められた設定位置のパルス値が登録されており,前記電子制御ユニットは,前記負荷体の前記設定位置までの速度を指示選択して前記インバータを制御するものである。
【0015】
また,前記動力伝達装置は,前記負荷体を取り付けたスピンドルに設けられた雄ねじに螺合する雌ねじ,前記雌ねじを備え且つハウジングに回転可能に支持されたステムブッシュ,前記ステムブッシュに固定されたウォームホイール,前記ウォームホイールに噛み合って回転を伝達するウォーム,及び前記ウォームを回転駆動し且つ前記モータに連結された回転軸を備えている。また,前記電子制御ユニットと前記インバータは,前記アクチュエータの前記ハウジング内に取付け取外し可能に配置されるケーシング内に収容されて一種のキットとして取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0016】
この電子制御ユニットによるインバータ制御装置は,上記のように構成されているので,インバータを用いてモータを起動させる際に,商用電源への電源直入れ時に発生する電圧波形,電流波形及び周波数を整形するための処理データと同一の起動処理データをコントロールユニット即ち電子制御ユニットで作ってインバータに入力してモータを起動し,モータに起動トルクを発生させ,モータが起動した後にインバータを定格即ち定常の処理データによる周波数・電圧・電流制御に切り換えてモータの速度制御等を行うように構成されている。即ち,インバータを単に定常の周波数・電圧・電流制御するだけでは,モータを駆動する起動トルクを確保できずに,モータの起動時に商用電源を必要としたが,この電子制御ユニットによるインバータ制御装置では,電子制御ユニットからインバータに起動波形等の起動処理データを入力するだけで,インバータに高電圧を瞬間的に発生させることができ,モータに起動トルクを発生させ,モータを駆動でき,特に,インバータとしてモータの起動のため大容量のものを用いることなく,より安価な定格容量即ち定常容量のものを使用でき,所望の起動トルクを発生させる特性を発揮することができ,それによって,装置そのものを安価に製造することができる。また,電子制御ユニットからの起動波形等の起動処理データをインバータへ入力する時間は,無視できるような極めて短時間であり,インバータの機能を破壊するようなことはなく,インバータには十分な耐久性を確保できる。
【0017】
また,このインバータ制御装置は,例えば,バルブアクチュエータに適用すれば,モータの制御がインバータ制御であるので,機能により状態監視保全,保守メンテナンス時期等が確認でき,各センサ等の機器の各種の設定が容易にでき,確実に設定できるものとなり,エンコーダや可逆器を設けて部品点数を低減し,コストを低減できると共に故障率が低減し,しかもケース等を開けることなく,外部から位置リミットやトルクリミットの調整を容易に行うことができ,スイッチ部への水の侵入を防止でき,故障率を低減できる。また,従来のバルブアクチュエータは,リミットスイッチ伝達部,指針による開度計への伝達部が機械的な歯車伝動で構成され,部品点数が多くなり,各リミット即ち設定値の調整に特殊技術を要しており,定期点検を行って異常の有無を確認しなければならなかったが,この電子制御ユニットによるインバータ制御装置は,バルブアクチュエータに適用されれば,上記のような部品や作業が不要になり,開度計では減速機の歯車の組み合わせが複雑であったが,デジタル液晶表示に構成でき,従来のような歯車装置を不要にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,図面を参照して,この発明による電子制御ユニットによるインバータ制御装置の実施例を説明する。この電子制御ユニットによるインバータ制御装置は,例えば,バルブアクチュエータに搭載されて適用されて好ましいものであり,該バルブアクチュエータは,図1及び図3に示すように,例えば,水路,浄水場等の流路に接続したハウジング17に固定された流路管19,流路管19の流路18を開閉するため配設されたゲート,水門,扉体等の負荷体4であるバルブ13を取り付け且つハウジング17に上下移動可能に支持されたスピンドル5,スピンドル5に設けられた雄ねじ14に螺合する雌ねじ15を備え且つハウジング17に回転可能に支持されたステムブッシュ16,及び雌ねじ15を回転駆動してスピンドル5を上下移動させるためステムブッシュ16に駆動装置であるモータ3からの回転をスピンドル5に伝達する動力伝達装置10を有する。動力伝達装置10は,雌ねじ15を回転させてスピンドル5を上下移動させるため,ステムブッシュ16に固定されたウォームホイール6と,ウォームホイール6に噛み合って駆動手段からの回転が伝達されるウォーム7を有している。
【0019】
このバルブアクチュエータは,前掲特開2004−257420号公報に開示したインテリジェント型バルブアクチュエータを,特に,モータ3の起動時においてもインバータ2で制御できるように更に発展させたものであり,該インテリジェント型バルブアクチュエータと同様に,バルブの作動状態の各種のデータを検出するため各種センサ,例えば,スピンドル5に負荷されるトルクを検出するトルク検出ポテンショ9,負荷体4の移動状態或いはモータ3の回転数を検出するエンコーダ8,駆動手段であるモータ3等の温度を検出するサーミスタ等から成る温度センサ,バルブアクチュエータの内部の湿度を検出する湿度センサ,バルブ13の流路18の開度を検出するバルブ開度センサ,バルブアクチュエータの振動を検出する振動センサ,ステムブッシュ16の雌ねじ15の摩耗を検出する雌ねじ摩耗センサ,モータ3を駆動する起動電流を検出して運転回数を検出する電流センサ等を備えている。
【0020】
このバルブアクチュエータは,図3に示すように,流路18を開閉するバルブ13,ゲート12等の負荷体4を上下移動可能に支持するスピンドル5,スピンドル5を上下動させるために回転駆動するモータ3,スピンドル5を上下動させるためモータ3の回転を上下動に変換伝達する動力伝達装置10,モータ3の回転駆動をインバータ2を介して制御するコントロールユニット即ち電子制御ユニット1,及びモータ3の回転又は負荷体4の移動状態を検出するエンコーダ8を有している。一般に,バルブアクチュエータでは,ゲート12,バルブ13等の負荷体4は,水密ゴムが設けられているので,負荷体4の回りには金属片等を用いて閉状態の密閉状態を強くしてあり,水撃等の水圧に耐えるように構成されている。従って,バルブアクチュエータでは,負荷体4を上昇させる起動時には,過負荷状態になっており,定常負荷の200〜400%になっている。このインバータ制御装置は,起動時における高トルクを必要とするモータ3をインバータ2を用いてスムーズに制御することであり,例えば,ゲート開閉時に起動する時に,定常負荷に比較して300%のトルクを必要とするモータ3を電子制御ユニット1によって制御されるインバータ2を通じてで作り出すことである。
【0021】
この電子制御ユニットによるインバータ制御装置は,電子制御ユニット1とインバータ2とは,アクチュエータのハウジング17内に取付け取外し可能に配設されるケーシング20内に収容され,一種のキットとして取り扱うことができる。このインバータ制御装置は,特に,電子制御ユニット1によって制御されるインバータ2を使用して過負荷時,特に起動時のモータの起動制御を行うものであり,図1及び図2に示すように,モータ3の起動トルクを発生させるための電圧波形,電流波形及び周波数を整形するための起動処理データを作成する電子制御ユニット1,及びモータ3の回転駆動を行うため電子制御ユニット1からの起動処理データの入力によって制御されるインバータ2を備えていることを特徴としている。また,このインバータ制御装置は,特に,負荷体4の起動時に,電子制御ユニット1からの起動処理データをインバータ2に入力してモータ3に高電圧をかける指令を出すと共に,エンコーダ8によってモータ3の回転を検出してモータ3が起動したことに応答してインバータ2を定格即ち定常処理データによる周波数・電圧・電流制御に切り換え,負荷体4の上下動の作動を制御することを特徴としている。
【0022】
電子制御ユニット1は,図2に示すように,モータ3の起動時にインバータ2に,起動するための予め決められた所定周波数f,所定の電圧Vの電圧波形及び所定の電流Iの電流波形から成る起動処理データを入力し,インバータ2を通じてモータ3に高電圧Vをかける指令を出すと共に,エンコーダ8によってモータ3の回転数を検出してモータ3が起動したことに応答してインバータ2に対する定格即ち定常の周波数f,電圧V及び電流Iの周波数・電圧・電流制御に切り換え,負荷体4の上下動の作動を制御するものである。また,電子制御ユニット1によって作成した電圧波形,電流波形及び周波数を整形するための起動処理データは,モータ3を駆動する時に商用電源を直接入力した時に発生する処理データと同一のものである。一般に,起動処理データにおける波形は,空間に固定された点における波の変位を時間関数として示したものである。また,モータ3に負荷されたインバータ2の定常状態での電圧状態及び電流状態はインバータ2から電子制御ユニット1にフィードバックされるように構成されている。
【0023】
即ち,コントロールユニットである電子制御ユニット1は,モータ3の起動可能な起動処理データをインバータ2に入力してモータ3に印加し,モータ3を起動するトルクを発生させるものである。エンコーダ8は,例えば,図2に示すように,モータ3に減速ギヤ21を介して連結したり,或いは,図1に示すように,回転軸11に連結したスピンドル5を駆動するウォームホイール6に設けられ,モータ3の回転速度を検出するものであり,エンコーダパルスがインバータ2に入力され,次いで電子制御ユニット1によってモータ3の回転速度即ち回転数が確認される。エンコーダ8は,負荷体4の作動位置を検出して確認できるものであり,その信号は電子制御ユニット1にフィードバックされるように構成されている。
【0024】
このインバータ制御装置は,負荷体4の起動時に,電子制御ユニット1にインバータ2とエンコーダ8からの信号が入力され,電子制御ユニット1は,インバータ2とエンコーダ8からの信号に応答してインバータ2を周波数・電圧・電流制御を行うことができ,負荷体4の上下動等のスムーズな作動状態を制御するように構成されているものである。
【0025】
このインバータ制御装置では,電子制御ユニット1からインバータ2へ入力する高電圧の指令時間は,インバータ2が本来有する許容範囲内の短時間,例えば,数十msec程度であり,インバータ2の起動処理データによる制御では,ほとんど無視できる程度の短時間である。従って,電子制御ユニット1からインバータ2へ起動処理データを入力しても,短時間であるので,インバータ2の機能を損傷させることがなく,耐久性を損なうことがない。
【0026】
また,このインバータ制御装置は,電子制御ユニット1には,負荷体4の上限位置,下限位置,及び予め決められた設定位置のパルス値が登録されており,電子制御ユニット1は,負荷体4の設定位置までの速度を,インバータ2に対して指示選択してモータ3の駆動を制御するものである。従って,このインバータ制御装置は,バルブアクチュエータに適用された場合には,負荷体4のバルブ13をインバータ2の周波数・電圧・電流制御によって,所望な上下動速度に調節することができ,負荷体4を迅速即ち所望な速度で,正確に所定の位置に移動させることができる。
【0027】
また,この実施例では,動力伝達装置10は,スピンドル5に設けられた雄ねじ14に螺合する雌ねじ15,雌ねじ15を備え且つハウジング17に回転可能に支持されたステムブッシュ16,ステムブッシュ16に固定されたウォームホイール6,ウォームホイール6に噛み合って回転を伝達するウォーム7,及びウォーム7を回転駆動し且つモータ3に連結された回転軸11を備えているものである。
【0028】
次に,図4に示す処理フロー図を参照して,この電子制御ユニットによるインバータ制御装置の作動を説明する。まず,エンコーダ8でゲート開閉動作の位置確認,例えば,負荷体4が流路18を閉鎖している密閉時であることを確認する。このインバータ制御装置は,電子制御ユニット1によるインバータ2の制御によってモータ3を起動する時に,従来のように,商用電源(図示せず)で直入れした時に形成される起動データと同一の起動データ,即ち,電圧波形,電流波形及び周波数を整形処理する起動処理データを電子制御ユニット1で作成し,電子制御ユニット1で作成された起動処理データをインバータ2へ入力してデータ指令する(ステップS1)。このインバータ制御装置では,電子制御ユニット1からの起動処理データが入力されてインバータ2が付勢し,インバータ2からの起動処理データによる出力がモータ3に出力される(ステップS2)。インバータ2からの出力によってモータ3を起動させる(ステップS3)。モータ3の起動によって負荷体4が駆動すると共に,エンコーダ8が回転する(ステップS4)。エンコーダ8の回転速度はパルスによって電子制御ユニット1にフィードバックされて確認される(ステップS5)。そこで,電子制御ユニット1は,エンコーダ8からのエンコーダパルスが予め決められた所定のパルス数か否かを判断する(ステップS6)。この実施例では,エンコーダ8は,例えば,一回転に付き32パルスであり,負荷体4の起動はエンコーダ8のパルス数の4パルスであり,これによって電子制御ユニット1はモータ3の起動を確認する。ここで,4パルスは,エンコーダ8の1/8回転に相当している。
【0029】
このインバータ制御装置では,インバータ2による起動時の処理データ指令は,例えば,それ程長くない2秒間に設定されている。その理由は,インバータ2に対する電子制御ユニット1による発信時間が極めて短い時間であるとはいえ,電子制御ユニット1によるインバータ2に対する起動時の処理データ指令が余り長い期間にわたってインバータ2に対して繰り返し行われると,インバータ2の耐久性を損なったり,損傷を与えたりする可能性があるから,この実施例では,例えば,2秒間程度の短い時間に設定されており,2秒間程度の短い時間で行われるのであれば,インバータ2に対する悪影響を最小限に止めることができるからである。このインバータ制御装置は,2秒間の間にエンコーダ8から4パルスのフィードバックが電子制御ユニット1に無い時には,電子制御ユニット1によるインバータ2への処理データを停止し(ステップS13),インバータ2の損傷を防止することとし,新たに再度の処理指令を行うこととする。このインバータ制御装置は,電子制御ユニット1からの起動処理データ即ち起動データ指令とインバータ2の出力は常に比較して電子制御ユニット1が制御されている(ステップS14)。
【0030】
このインバータ制御装置は,負荷体4が2秒間以内に起動,即ち,エンコーダ8からの4パルスを電子制御ユニット1が確認したら,エンコーダ8のエンコーダパルスが予め決められた所定のパルス数である場合には,モータ3が確実に起動して負荷体4が上下移動の駆動を行っているので,モータ3に対して起動に必要な高電圧を必要としない状態であるので,電子制御ユニット1からインバータ2に指令を発し,電子制御ユニット1によるインバータ2の制御を定常データ指令,即ち定常の周波数・電圧・電流制御に切り換える(ステップS7)。電子制御ユニット1からインバータ2へ定常データ指令を入力し(ステップS8),負荷体4を予め決められた所定の位置へと移動させる(ステップS9)。次いで,電子制御ユニット1は,負荷体4が予め決められた所定の位置に到達したか否かをエンコーダ8のパルス数をカウントして確認しつつ移動させて判断する(ステップS10)。負荷体4が予め決められた所定の位置に到達した時には,電子制御ユニット1からインバータ2へのデータ指令を停止し(ステップS11),負荷体4が所定の位置まで到達していない場合には,引き続き処理がステップS9を繰り返し,インバータ2によって負荷体4の移動制御が行われる。電子制御ユニット1からインバータ2へのデータ指令を停止すると,負荷体4の移動は停止して駆動処理を終了する(ステップS12)。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明による電子制御ユニットによるインバータ制御装置は,例えば,流路を開閉するのに設けられた水門,扉体,ゲート,弁体等の負荷体を上下移動させるバルブアクチュエータに適用され,モータの起動トルクを電子制御ユニットによるインバータの制御によってモータを起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明による負荷体の起動時のモータのインバータ制御装置の一実施例を示す説明図である。
【図2】このモータのインバータ制御装置における電子制御ユニット,インバータ及びモータの関係を示す説明図である。
【図3】この負荷体の起動時のモータのインバータ制御装置が組み込まれるバルブアクチュエータの一例を示す断面図である。
【図4】この負荷体の起動時のモータのインバータ制御装置の作動を示す処理フロー図である。
【符号の説明】
【0033】
1 電子制御ユニット
2 インバータ
3 モータ
4 負荷体
5 スピンドル
6 ウォームホイール
7 ウォーム
8 エンコーダ
10 動力伝達装置
11 回転軸
14 雄ねじ
15 雌ねじ
16 ステムブッシュ
17 ハウジング
18 流路
20 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷体を移動させるために回転駆動するモータ,前記モータの回転駆動を前記負荷体の移動駆動に変換伝達する動力伝達装置,及び前記負荷体の移動状態を検出するエンコーダを有するアクチュエータにおいて,
前記モータに起動トルクを発生させるため,電圧波形,電流波形及び周波数を整形するための起動処理データを作成する電子制御ユニット,及び前記モータを回転駆動するため前記電子制御ユニットからの前記起動処理データの入力によって制御されるインバータを有し,
前記電子制御ユニットは,前記負荷体の起動時に前記インバータに前記起動処理データを入力して前記モータに高電圧をかける指令を出すと共に,前記エンコーダによって前記モータの回転を検出して前記モータが起動したことに応答して前記インバータを定常処理データによる周波数・電圧・電流制御に切り換え,前記負荷体の移動状態を制御することを特徴とする電子制御ユニットによるインバータ制御装置。
【請求項2】
前記電子制御ユニットにおいて作成した前記起動処理データは,商用電源を直接入力した時に発生する処理データと同一であり,前記起動処理データが前記インバータに入力されて前記モータに印加され,前記モータに前記起動トルクを発生させることを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記電子制御ユニットは,前記エンコーダによる前記負荷体の移動位置を検出して確認できることを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記電子制御ユニットには前記インバータと前記エンコーダからの信号が入力され,前記電子制御ユニットは前記信号に応答して前記インバータを制御して前記負荷体の作動状態を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
前記電子制御ユニットから前記インバータへ入力する前記起動処理データの指令時間は,前記インバータが本来有する許容範囲内の短時間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
前記電子制御ユニットには,前記負荷体の移動限界位置及び予め決められた設定位置のパルス値が登録されており,前記電子制御ユニットは,前記負荷体の前記設定位置までの速度を指示選択して前記インバータを制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項7】
前記動力伝達装置は,前記負荷体を取り付けたスピンドルに設けられた雄ねじに螺合する雌ねじ,前記雌ねじを備え且つハウジングに回転可能に支持されたステムブッシュ,前記ステムブッシュに固定されたウォームホイール,前記ウォームホイールに噛み合って回転を伝達するウォーム,及び前記ウォームを回転駆動し且つ前記モータに連結された回転軸を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項8】
前記電子制御ユニットと前記インバータは,前記アクチュエータの前記ハウジング内に取付け取外し可能に配設されるケーシング内に収容されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−345653(P2006−345653A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169551(P2005−169551)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】