説明

電子制御装置

【課題】放熱性を損なうことなく筐体に収容された基板の交換を容易に実施可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】マザー基板30とこのマザー基板30に電気的に接続される各モジュール基板41〜44とが収容される筐体21は、第1ケース22と第2ケース23とを組み付けることで構成される。そして、第1ケース22の第1内面22aには、モジュール基板41,42が近接して配置されるとともに、第2ケース23の第2内面23aには、マザー基板30が近接して配置される。そして、第1内面22aに近接して配置されるモジュール基板41,42に実装される発熱素子41a等には、第1内面22aとの間に、熱伝導性の部材である熱伝導性接着剤24が配置され、モジュール基板41,42は係止部材50にて第1ケース22に係止されるとともに、マザー基板30は係止部材50にて第2ケース23に係止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器等の外部機器を制御可能な電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載機器等の外部機器を制御可能な電子制御装置に関する技術として、下記特許文献1に示す電子装置が知られている。この電子装置は、パーソナルコンピュータまたはサーバーに採用される装置であって、筐体内に、複数の電子モジュールや制御用基板モジュール、電源モジュール等を搭載して構成されている。これら複数搭載された電子モジュールの各々の表面には、発熱素子であるCPUやその他の複数の発熱素子がハードディスク等と共に搭載されており、各電子モジュールは、それぞれ、それ自体でコンピュータを構成している。また、各電子モジュールは、コネクタを共通配線基板のコネクタに挿入(圧入)することによって、装置側の制御用基板モジュールや電源モジュール等との間で、必要な電気的接続がそれぞれ行われる。この電気的接続時に、各電子モジュールの液コネクタが液冷ジャケットの液コネクタに挿入(圧入)されることで液循環ループが構成され、当該液循環ループを流れる冷却液により各電子モジュールの冷却が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−246615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に示すように、筐体内に共通配線基板や複数のモジュール基板が収容される場合、各基板に実装される発熱素子等を冷却するために、このような発熱素子等を筐体面に近接させて配置することで、発熱素子等の熱を筐体面に放熱して冷却することが考えられる。
【0005】
しかしながら、複数のモジュール基板を有し、かつ複数のケース(例えば、一方のケースと他方のケース)を組み付けて各モジュール基板を収容する筐体を構成する場合、一方のケースに対し組付けるモジュール基板については、ケース内面と近接させることができるが、順次、モジュール基板が組みつけられた後、最後に組みつけられたモジュール基板とモジュール基板組付け完了後に組付ける他方のケースについては、このケースや基板厚み等の寸法公差や、組付け公差等の積上げにより、ケース内面との間にある程度の余分な間隔があいてしまい、放熱性が悪化してしまう課題がある。
【0006】
また、一方で筐体面に近接させて配置されるモジュール基板等を交換する場合には、交換時にモジュール基板等の発熱素子を筐体面に近接させるように取り付ける必要があり、筐体等の寸法精度や組立精度が低いために発熱素子と筐体面との間に隙間ができると、設計上必要な放熱効果が得られなくなるという問題がある。また、上述した隙間をなくすため、筐体等の加工精度を高くする為の製造コストの増大や、交換時の組立精度を高くする為の例えばディーラーのような販売店等では技術的に交換できないために製造元である製品出荷工場等での交換が必要となることによる交換コストの増大を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、放熱性を損なうことなく筐体に収容された基板の交換を容易に実施可能な電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電子制御装置では、複数の外部機器を制御可能な電子制御装置であって、前記複数の外部機器のうちのいずれかを制御するための第1の基板と、電源装置から電力を供給される第2の基板と、前記第2の基板と前記第1の基板とが収容される筐体と、を備え、前記筐体は、第1ケースと第2ケースとを組み付けることで構成され、前記筐体の内面の一部を構成する前記第1ケースの壁面である第1内面には、複数の前記第1の基板のうちの少なくとも1つが近接して配置されるとともに、前記筐体の内面の他の一部を構成する前記第2ケースの壁面である第2内面には、前記第2の基板が近接して配置され、前記第1内面に近接して配置される第1の基板に実装される複数の素子であってその動作に応じて発熱する発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、前記第1内面との間に、熱伝導性の部材が配置され、第1の基板は、係止部材もしくは前記第1ケースの係止部位にて当該第1ケースに係止されるとともに、第2の基板は、係止部材もしくは前記第2ケースの係止部位にて当該第2ケースに係止されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記第2の基板に実装される複数の素子であってその動作に応じて発熱する発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、前記第2内面との間に、熱伝導性の部材が配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電子制御装置において、前記第1ケースには、前記第1内面のうち前記熱伝導性の部材が配置される領域を含めた部位が前記発熱素子に近接する方向に突出する突出部が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電子制御装置において、前記第1ケースには、前記筐体の外面の一部を構成し前記突出部に対向する部位に凹部が形成され、この凹部内に前記第1内面における放熱性を向上させるための放熱部が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記第1ケースに、複数の前記第1の基板のうち当該第1ケースに係止される第1の基板を除く第1の基板を支持する部位が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記筐体は、その外面が機能追加用ケースを組み付け可能に形成されており、前記機能追加用ケースと前記外面とにより構成される他の収容空間には、当該外面に対向する前記機能追加用ケースの壁面である第3内面に、前記第1の基板のうちの少なくとも1つが近接して収容され、前記外面には、前記機能追加用ケースの組み付け時にこの機能追加用ケースに取り付けられた第1の基板と前記筐体に収容されるいずれかの基板とを電気的に接続するための接続部材が設けられ、前記第3内面に近接して収容される第1の基板に実装される複数の素子であってその動作に応じて発熱する発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、当該第3内面との間に、熱伝導性の部材が配置され、前記第3内面に近接して収容される第1の基板は、係止部材もしくは前記機能追加用ケースの係止部位にて当該機能追加用ケースに係止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、第2の基板と第1の基板とが収容される筐体は、第1ケースと第2ケースとを組み付けることで構成される。そして、第1ケースの第1内面には、複数の第1の基板のうちの少なくとも1つが近接して配置されるとともに、第2ケースの第2内面には、第2の基板が近接して配置される。そして、第1内面に近接して配置される第1の基板に実装される発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、第1内面との間に、熱伝導性の部材が配置され、第1の基板は係止部材もしくは第1ケースの係止部位にて当該第1ケースに係止されるとともに、第2の基板は係止部材もしくは第2ケースの係止部位にて当該第2ケースに係止されている。
【0015】
このような構成では、第1内面に近接して配置される第1の基板を交換する場合には、交換用の新たな第1の基板が組み付けられた第1ケースを用意して第1ケースごと交換することで、第1の基板の交換が完了する。このように構成されることで、交換用の第1の基板が組み付けられてその発熱素子と第1内面との間に熱伝導性の部材が配置された第1ケースを製造元である製品出荷工場等で予め製造しておき、この第1ケースを交換用として販売店等に用意しておくことができる。そして、販売店等では、第1ケースごと交換して第1の基板の交換が完了する。また、筐体内に収容される他の第1の基板を交換する場合でも、第1ケースを取り外した後に、この他の第1基板を交換して、取り外した第1ケースを再び第2ケースに組み付けることで、当該他の第1の基板の交換が完了する。
【0016】
この場合、販売店等では、発熱素子と第1内面との間に熱伝導性の部材を配置する必要がないので、筐体等の寸法精度や組立精度を販売店等での交換を可能とするレベルまで高める必要がないので上述した交換費用を低減することができる。特に、第1の基板は、係止部材もしくは第1ケースの係止部位にて当該第1ケースに係止されるとともに、第2の基板は、係止部材もしくは第2ケースの係止部位にて当該第2ケースに係止されているため、組付け公差の積上げ等の考慮が不要となり、第1の基板と第1内面との近接距離を容易に確保できるとともに、第2の基板と第2内面との近接距離を容易に確保することができる。
したがって、放熱性を損なうことなく筐体に収容された基板の交換を容易に実施することができる。
【0017】
請求項2の発明では、第2の基板に実装される発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、第2内面との間に、熱伝導性の部材が配置されるため、当該第2内面を介した放熱を効率的に実施することができる。
【0018】
請求項3の発明では、第1ケースには、第1内面のうち熱伝導性の部材が配置される領域を含めた部位が発熱素子に近接する方向に突出する突出部が形成されるため、第1内面と発熱素子との間隔を狭くできる。これにより、発熱素子よりも背の高い部品が発熱素子の実装面と同一面に配置されていても発熱素子の実装領域に突出部を設けることで、間隔を狭くすることが出来、当該第1内面を介した放熱を効率的に実施することができる。
【0019】
請求項4の発明では、第1ケースには、筐体の外面の一部を構成し突出部に対向する部位に凹部が形成され、この凹部内に第1内面における放熱性を向上させるための放熱部が形成されるため、当該第1内面を介した放熱を効率的に実施することができる。特に、放熱部が凹部内に形成されるため、放熱部が形成されない場合と比較して、筐体の外形寸法は変化しないので、放熱部を設けることによる筐体の大型化を抑制することができる。
【0020】
請求項5の発明では、第1ケースには、複数の第1の基板のうち第1ケースに取り付けられる第1の基板を除く第1の基板を支持する部位が設けられている。これにより、複数の第1の基板が取り付けられた第1ケースと、第2の基板が組み付けられた第2ケースとを組み付けることで、当該電子制御装置に関する組み付けが完了する。
【0021】
第2の基板は、上述した電源回路など電力供給の制御に関する機能を有するために、製造時間が第1の基板に対して長くなりやすい。このため、第2ケースに第2の基板だけでなく第1ケースに取り付けられない他の第1の基板が取り付けられる場合には、第2内面に近接して組み付ける第2の基板が完成するまで第2ケースに他の第1の基板が取り付けられなくなる。そうすると、第1の基板が取り付けられる第1ケースとの製造時間の差が大きくなり、当該電子制御装置に関する組み付けが完了するまでの時間が長くなってしまう。
【0022】
本発明では、第2ケースには、筐体内に収容される各基板のうち第2の基板のみが取り付けられるので、第2ケースの筐体構造を簡潔に構成することができる。さらに、第2の基板が取り付けられる第2ケースとの製造時間と、第1の基板が取り付けられる第1ケースとの製造時間との差を小さくできるので、当該電子制御装置に関する組み付けが完了するまでの時間を短縮することができる。
【0023】
請求項6の発明では、筐体は、その外面が機能追加用ケースを組み付け可能に形成されており、機能追加用ケースと上記外面とにより構成される他の収容空間には、第3内面に、第1の基板のうちの少なくとも1つが近接して収容されている。また、上記外面には、機能追加用ケースの組み付け時にこの機能追加用ケースに取り付けられた第1の基板と筐体に収容されるいずれかの基板とを電気的に接続するための接続部材が設けられている。そして、第3内面に近接して収容される第1の基板の発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、当該第3内面との間に、熱伝導性の部材が配置され、第3内面に近接して収容される第1の基板は、係止部材もしくは機能追加用ケースの係止部位にて当該機能追加用ケースに係止されている。
【0024】
このような構成では、筐体内に収容された第1の基板により実現される機能に対して他の機能を追加する場合に、その機能を有する第1の基板を取り付けた機能追加用ケースを筐体の外面に組み付けて、この第1の基板と筐体に収容されるいずれかの基板とを接続部材により電気的に接続して当該第1の基板と第2の基板とを接続部材により電気的に接続することで、容易に所望の機能を追加することができる。
【0025】
特に、機能追加用の第1の基板が組み付けられてその発熱素子と第3内面との間に熱伝導性の部材が配置された機能追加用ケースを製造元である製品出荷工場等で予め製造しておき、この機能追加用ケースを機能追加用として販売店等に用意しておくことができる。そして、販売店等では、機能追加用ケースごと筐体に組み付けて機能追加作業が完了する。この場合、販売店等では、発熱素子と第3内面との間に熱伝導性の部材を配置する必要がないので、筐体等の寸法精度や組立精度を販売店等での機能追加作業を可能とするレベルまで高める必要がないので上述した機能追加作業にかかる費用を低減することができる。さらに、第1の基板は、係止部材もしくは機能追加用ケースの係止部位にて当該機能追加用ケースに係止されるため、第1の基板と第3内面との近接距離を容易に確保することができる。また、このような構成をとることで、複数ある基板の内、両端に配置された基板以外の基板をケースに近接させて配置させることやケースに熱伝導性の部材を介して放熱させることができる為、より放熱性を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る電子制御装置と各車載機器との接続関係を示すブロック図である。
【図2】図1の電子制御装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2の電子制御装置を矢印α方向から見た断面図である。
【図4】基板間同士を接続する電気的接続配線としてケーブルを用いた接続状態を例示する断面図である。
【図5】図5(A)は、第2ケースにマザー基板を取り付けた状態を示す説明図であり、図5(B)は、マザー基板が取り付けられた第2ケースにモジュール基板を取り付けた状態を示す説明図である。
【図6】図6(C)は、第1ケースにモジュール基板を取り付けた状態を示す説明図であり、図6(D)は、モジュール基板が取り付けられた第1ケースとマザー基板およびモジュール基板が取り付けられた第2ケースとを組み付ける直前の状態を示す説明図である。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係る電子制御装置の要部を示す断面図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係る電子制御装置の要部を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係る電子制御装置の要部を示す断面図である。
【図10】第3実施形態に係る電子制御装置の要部を示す断面図である。
【図11】各基板が対応するケースに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図12】第4実施形態に係る電子制御装置の要部を示す断面図である。
【図13】マザー基板および各モジュール基板が収容された第1ケースおよび第2ケースと、モジュール基板が取り付けられた機能追加用ケースとを、組み付ける直前の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る電子制御装置20と各車載機器11〜14との接続関係を示すブロック図である。図2は、図1の電子制御装置20の概略構成を示す斜視図である。図3は、図2の電子制御装置20を矢印α方向から見た一点鎖線の切断面に対応する断面図である。なお、図2では、便宜上、一部のコネクタなどを省略し筐体21の内面を二点鎖線で図示している。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る電子制御装置20は、車両に車載された複数の車載機器、例えば、エンジン11、トランスミッション12、ドアロック機構13およびセキュリティ装置14等を制御するための装置であり、当該車両の適所に車載されている。
この電子制御装置20は、各車載機器11〜14とこれら各車載機器等の電源として機能するバッテリ15とにワイヤハーネス等16を介して電気的に接続されている。なお、エンジン11、トランスミッション12、ドアロック機構13およびセキュリティ装置14は、特許請求の範囲に記載の「外部機器」の一例に相当し得る。
【0029】
当該電子制御装置20は、図2および図3に示すように、矩形状の筐体21を備えており、この筐体21内には、マザー基板30と複数のモジュール基板とが互いに平行となるように電気的に接続されて収容されている。筐体21は、放熱性を損なうことなく各基板の交換を容易とするために、一面が開口する箱状に形成される第1ケース22と第2ケース23とを組み付けることで構成される。なお、筐体21の内面の一部に相当する第1ケース22の底面(以下、第1内面22aという)と、この第1内面22aに対向する第2ケース23の底面(以下、第2内面23aという)とは、組み付け時に互いに平行となるように形成されている。また、筐体21の外面を構成する第2ケース23の壁面のうち、第2内面23aに近接する壁面には、当該第2内面23aにおける放熱性を向上させるための放熱部として例えば複数のフィン23bが形成されている。
【0030】
各モジュール基板は、各車載機器11〜14をそれぞれ制御するためにモジュール化された基板であり、従来のエンジンECUに対応しエンジン11を制御するためのモジュール基板41と、従来のECT(エレクトリックコントロールトランスミッション)に対応しトランスミッション12を制御するためのモジュール基板42と、従来のスマートキーコンピュータに対応し所定の電波の受信に応じてドアロック機構13やエンジン11の始動を制御するモジュール基板43と、従来のメインボデーECUに対応しドアのロック等のセキュリティ装置14などを制御するモジュール基板44とから構成されている。また、マザー基板30は、前記した各車載機器への関連、非関連を問わず、外部機器に駆動・制御する為のリレーやヒューズ等の配電機能を有している。
【0031】
各モジュール基板41〜44には、制御対象の車載機器11〜14に接続するための一対の外部接続コネクタ45と、他のモジュール基板と電気的に接続するための基板間接続コネクタ46とが、それぞれ設けられている。それぞれの両外部接続コネクタ45は、筐体21から露出させるために、モジュール基板の長手方向両端近傍に実装されている。
【0032】
また、各基板間接続コネクタ46は、モジュール基板41,42が取り付けられた第1ケース22とモジュール基板43,44が取り付けられた第2ケース23とを組み付ける際に、対応するコネクタに電気的に接続するように配置されている。このように、モジュール基板同士の基板間接続コネクタ46を接続することで、電源供給に関する電源供給用ラインが共用され、所定の情報について互いに共用するように構成されている。これにより、外部接続コネクタ45を介してそれぞれのモジュール基板毎に別々で入力する必要が無くなる為、共用しない外部接続コネクタと比較して端子数が削減され小型化が図られた外部接続コネクタ45を採用することができる。
【0033】
なお、他の機能を有するモジュール基板を採用する場合でも、このモジュール基板に設けられる基板間接続コネクタ46と、各モジュール基板41〜44のいずれかの基板間接続コネクタ46とを接続することにより、各モジュール基板41〜44と同様に、対象の車載機器が制御可能な状態となる。また、モジュール基板41〜44は、特許請求の範囲に記載の「第1の基板」の一例に相当し得る。
【0034】
また、図4に例示するように、各モジュール基板41〜44同士を接続する電気的接続配線として、基板間接続コネクタ46に代えて、例えば、コネクタとフレキケーブルの様にケーブル46aを用いた接続でも良い。ケーブル46aを用いることで、公差による各基板間の位置ずれによる応力発生を緩和することができる。また、マザー基板30と各モジュール基板41〜44とを接続する電気的接続配線として、上述したケーブルを採用しても上記効果を奏する。
【0035】
マザー基板30には、その一側基板面31に、各モジュール基板41〜44に搭載される電子部品に対し供給する為のバッテリ15からの電源の電圧を変圧する電源回路33が実装されている。また、マザー基板30には、一側基板面31と異なる他側基板面32に、バッテリ15や車載機器11〜14を含めた外部機器に対して電気的に接続するための一対の外部接続コネクタ34や各モジュール基板41〜44に接続するための基板間接続コネクタ35が実装されている。両外部接続コネクタ34は、筐体21から露出させるために、他側基板面32の長手方向両端近傍にそれぞれ実装されている。また、マザー基板30に実装される電子部品のうち実装後の実装高さが高くなる高背部品36は、一側基板面31と第2ケース23の第2内面23aとの間隔を狭くするために、他側基板面32に実装されている。なお、マザー基板30は、特許請求の範囲に記載の「第2の基板」の一例に相当し得る。
【0036】
次に、上述のように構成される各基板の筐体21に対する組み付けについて説明する。図5(A)は、第2ケース23にマザー基板30を取り付けた状態を示す説明図であり、図5(B)は、マザー基板30が取り付けられた第2ケース23にモジュール基板43,44を取り付けた状態を示す説明図である。図6(C)は、第1ケース22にモジュール基板41,42を取り付けた状態を示す説明図であり、図6(D)は、モジュール基板41,42が取り付けられた第1ケース22とマザー基板30およびモジュール基板43,44が取り付けられた第2ケース23とを組み付ける直前の状態を示す説明図である。
【0037】
まず、図5(A)に示すように、第2ケース23に対して、マザー基板30を取り付ける。具体的には、マザー基板30を、両外部接続コネクタ34が第2ケース23に形成される開口からそれぞれ接続可能に露出し、その一側基板面31にて第2ケース23の第2内面23aに近接するように、取り付ける。この取付の際、マザー基板30を、第2ケース23に設けられる支持部23c等により支持し、ネジなどの係止部材50によって当該第2ケース23に係止する。電源回路33を構成する素子のうちその動作に応じて発熱する発熱素子と第2内面23aとの間には、伝熱性の部材(熱伝導性の高い部材)、例えば、ゲル状の熱伝導性接着剤24が配置されている。なお、マザー基板30は、係止部材50に代えてまたは係止部材50とともに、第2ケース23の支持部23c等に設けられた係止部位によって当該第2ケース23に係止されてもよい。また、係止部位は、マザー基板30が組みつけられた後のかしめ加工による係止や接着による係止であってもよい。
【0038】
次に、図5(B)に示すように、モジュール基板43,44を、マザー基板30が取り付けられた第2ケース23に対して、それぞれの基板面がマザー基板30の基板面31,32に対して平行となり、それぞれの両外部接続コネクタ45が第2ケース23に形成される開口から接続可能に露出するように取り付ける。この取付の際、モジュール基板43およびモジュール基板44を、第2ケース23に設けられる支持部23d等により支持する。そして、モジュール基板43およびモジュール基板44の基板間接続コネクタ46をマザー基板30の基板間接続コネクタ35にそれぞれ電気的に接続することにより、マザー基板30と両モジュール基板43,44との間で所定の情報について通信可能な状態となる。
【0039】
また、図6(C)に示すように、モジュール基板41,42を、第1ケース22に対して、それぞれの基板面が第1ケース22の第1内面22aに対して平行となり、それぞれの両外部接続コネクタ45が第1ケース22に形成される開口から接続可能に露出するように取り付ける。この取付の際、モジュール基板41およびモジュール基板42を、第1ケース22に設けられる支持部22b等により支持し、上記係止部材50によって当該第2ケース23に係止する。両基板41,42に実装される素子のうちその動作に応じて発熱する発熱素子41a等と第1内面22aとの間には、上述した熱伝導性接着剤24が配置されている。なお、モジュール基板41,42は、係止部材50に代えてまたは係止部材50とともに、第1ケース22の支持部22b等に設けられた係止部位によって当該第1ケース22に係止されてもよい。
【0040】
そして、図6(D)に示すように、モジュール基板41,42が取り付けられた第1ケース22と、マザー基板30およびモジュール基板43,44が取り付けられた第2ケース23とを、接続予定の基板間接続コネクタ46同士を接続可能に対向させる。そして、第1ケース22および第2ケース23を組み付けることで、図2および図3に示す各基板30,41〜44が収容された筐体21が完成する。この組み付け時に、モジュール基板41とモジュール基板43との基板間接続コネクタ46同士が接続するとともにモジュール基板42とモジュール基板44との基板間接続コネクタ46同士が接続する。これにより、マザー基板30と各モジュール基板41〜44との間で所定の情報について通信可能な状態となる。
【0041】
このとき、図3に示すように、マザー基板30および各モジュール基板41〜44において、一方の外部接続コネクタ34,45が露出する筐体21の外面21aと、他方の外部接続コネクタ34,45が露出する筐体21の外面21bとは、対向する位置関係となる。このような対向する外面21a,21bのみにそれぞれの外部接続コネクタ34,45が露出し他の外面に露出しないため、コネクタが露出しない外面を車両の内壁面等に近接させるように電子制御装置20を設置することで、当該電子制御装置20を設置するために必要なスペースを削減できるだけでなく、各外部接続コネクタ34,45とワイヤハーネス等16との接続作業を効率的に実施することができる。
【0042】
このように構成される電子制御装置20に対して、筐体21から露出する外部接続コネクタ34や外部接続コネクタ45に対応するワイヤハーネス等16を接続することで、各モジュール基板41〜44と対象の車載機器11〜14とが通信可能な状態となり、各モジュール基板41〜44からの指示に応じてマザー基板30の電源回路33が制御されて必要な電力が車載機器11〜14に対して供給可能な状態となる。
【0043】
なお、モジュール基板43では、モジュール基板41とマザー基板30との間にて処理される情報をも取り扱う必要がある。すなわち、モジュール基板41にて処理する情報量は、モジュール基板43にて処理する情報量よりも少なくなりやすいので、モジュール基板41として比較的層数の少ない基板を採用でき、低コスト化を図ることができる。同様に、モジュール基板42にて処理する情報量は、モジュール基板44にて処理する情報量よりも少なくなるので、モジュール基板42として比較的層数の少ない基板を採用でき、低コスト化を図ることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る電子制御装置20では、マザー基板30とこのマザー基板30に電気的に接続される各モジュール基板41〜44とが収容される筐体21は、第1ケース22と第2ケース23とを組み付けることで構成される。そして、第1ケース22の第1内面22aには、モジュール基板41,42が近接して配置されるとともに、第2ケース23の第2内面23aには、マザー基板30が近接して配置される。そして、第1内面22aに近接して配置されるモジュール基板41,42に実装される発熱素子41a等には、第1内面22aとの間に、熱伝導性の部材である熱伝導性接着剤24が配置され、モジュール基板41,42は係止部材50にて第1ケース22に係止されるとともに、マザー基板30は係止部材50にて第2ケース23に係止されている。
【0045】
このような構成では、第1内面22aに近接して配置されるモジュール基板41,42を交換する場合には、交換用の新たなモジュール基板41,42が組み付けられた第1ケース22を用意して第1ケース22ごと交換することで、モジュール基板41,42の交換が完了する。このように構成されることで、交換用のモジュール基板41,42が組み付けられてその発熱素子41a等と第1内面22aとの間に熱伝導性接着剤24が配置された第1ケース22を製造元である製品出荷工場等で予め製造しておき、この第1ケース22を交換用として販売店等に用意しておくことができる。そして、販売店等では、第1ケース22ごと交換してモジュール基板41,42の交換が完了する。また、筐体21内に収容されるモジュール基板43およびモジュール基板44のいずれかを交換する場合でも、第1ケース22を取り外した後に、交換対象のモジュール基板を交換して、取り外した第1ケース22を再び第2ケース23に組み付けることで、当該モジュール基板の交換が完了する。
【0046】
この場合、販売店等では、発熱素子41aと第1内面22aとの間に熱伝導性接着剤24を配置する必要がないので、筐体21等の寸法精度や組立精度を販売店等での交換を可能とするレベルまで高める必要がないので上述した交換費用を低減することができる。特に、モジュール基板41,42は、係止部材50にて第1ケース22に係止されるとともに、マザー基板30は、係止部材50にて第2ケース23に係止されているため、組付け公差の積上げ等の考慮が不要となり、モジュール基板41,42と第1内面22aとの近接距離を容易に確保できるとともに、マザー基板30と第2内面23aとの近接距離を容易に確保することができる。
したがって、放熱性を損なうことなく筐体21に収容された各モジュール基板41〜44の交換を容易に実施することができる。
なお、本実施形態では、第1ケース22には、モジュール基板41およびモジュール基板42の2つが取り付けられているが、これに限らず、1つのモジュール基板、例えば、モジュール基板41のみが取り付けられてもよい。
【0047】
また、マザー基板30の電源回路33の発熱素子には、第2内面23aとの間に、熱伝導性接着剤24が配置されるため、当該第2内面23aを介した放熱を効率的に実施することができる。マザー基板30の発熱素子及びモジュール基板41,42の発熱素子の両方に熱伝導性接着剤24が塗布される場合には、接着剤を塗布しない場合に比較して、発熱素子と筐体内面22a,23aとのクリアランス(=熱伝導性接着剤24の厚み)の変化は、塗布していない空気の場合に比較して、放熱性に与える影響が格段に大きい。その為、本案の構成により両発熱素子と両筐体内面22a,23aとのクリアランスを小さく保つことができることは、放熱性の面にとって、非常に有用で、効果が高い。なお、発熱素子だけでなく、基板面と筐体面との間に熱伝導性接着剤24を配置すると放熱経路が増加し、なおさら放熱効果が増大する。また、熱伝導性接着剤24と記載したが、接着性のあるものに限定するものではない。例えば、放熱シートの様なシート形状のものでも良い。
【0048】
特に、前記したとおり、モジュール基板41〜44はマザー基板30と平行に配置されることから、筐体に近接配置できる面はマザー基板30の一側基板面31とモジュール基板41,42の基板面しか存在せず、モジュール基板43,44の様な筐体面21から離れて配置されることを余儀なくされ、空気断熱層の増加により、熱的に不利な配置を余儀なくされる。これに対し、モジュール基板の電子部品に供給される電圧変換回路をマザー基板30に搭載することで、モジュール基板の温度上昇を防止することが可能となる。
具体的な回路構成として、電源回路としてスイッチング電源を採用すると発熱量を減少させることが可能でさらに温度を低下させることができる。
リレーやヒューズ等が搭載されたJ/B(ジャンクションBOX)の機能は、一般に大電流が流れることによる発熱量の大きさと、ハーネスによる配線が多数接続されていることにより一般のECUに比較して大型である為、本構成のマザー基板上に搭載されると小型化かつ高放熱が両立でき、非常に有用である。搭載するリレーの構成としては、半導体リレーを用いるとメカリレーに必要なコイル電流が不要となり発熱量の減少が可能となり、温度低下に寄与できる。さらには、リレーやヒューズ、ヒュージブルリンク等をモジュール基板への電源供給ラインに挿入することで、複数あるモジュール基板の内、一つが異常動作により過電流となった際にも切断することでマザー基板の異常発熱を防止し、他の正常動作する機能に影響を与えることから防ぐことが出来る。
【0049】
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る電子制御装置20の要部を示す断面図である。
図7に示すように、モジュール基板41,42に実装される電子部品のうち実装後の実装高さが高い高背部品41d,42dは、第1内面22aに対向する一側基板面41b,42bと異なる他側基板面41c,42cにそれぞれ実装してもよい。これにより、第1内面22aと一側基板面41b,42bとの間隔を狭くでき、当該第1内面22aを介した放熱を効率的に実施することができる。
なお、バッテリ15(電源装置)から入力された電源を外部接続コネクタ34もしくは外部接続コネクタ45を介して接続される外部機器への供給のON/OFFを制御する為のメカリレーは、他の電子部品に比べ背が高い為、高背部品36として他側基板面32に配置すると有用である。また、同じくバッテリ15から入力された電源を外部接続コネクタ34もしくは外部接続コネクタ45を介して接続される外部機器への供給を異常時に切断するヒューズを保持するとともにマザー基板30とそのヒューズを電気的に接続するコネクタも同様に背が高く成るため、高背部品37として他側基板面32に配置すると有用である。
【0050】
図8は、第1実施形態の第2変形例に係る電子制御装置20の要部を示す断面図である。なお、図8は、図2の矢印αおよび各基板面に直交する方向から見た場合の断面図(図3では下方から見た場合の断面図)に対応して図示されている。
本実施形態の第2変形例として、より実装高さが高い高背部品、例えば、各基板をそれぞれ保護するための多数のヒューズが収容されるヒューズ保持用コネクタ等の高背部品37がマザー基板30の他側基板面32に実装される場合には、筐体21の小型化を図るために、他側基板面32に対して高背部品37の実装高さよりも低い位置に各モジュール基板41〜44のいずれかまたは新たなモジュール基板を配置してもよい。図8では、他の車載機器を制御するためのモジュール基板47が、他側基板面32に対して高背部品37の実装高さよりも低い位置であって高背部品37を避けるように配置されている。これにより、筐体21内のスペースが有効に活用されて、筐体21のさらなる小型化を図ることができる。
【0051】
本実施形態の第3変形例として、各モジュール基板41〜44のうち少なくともいずれか1つには、対応する車載機器や他のモジュール基板とシリアル通信可能な通信回路が設けられてもよい。これにより、外部接続コネクタ45の端子数を削減しやすくなる。このように端子数が削減された外部接続コネクタ45を採用することで、筐体21内に占める外部接続コネクタ45の領域が小さくなるので、筐体21のさらなる小型化を図ることができる。また、マザー基板30と各モジュール基板41〜44間との信号授受についてもシリアル通信化により本数を減らすことができコスト削減が可能となる。
【0052】
また、本実施形態の第4変形例として、外部からの情報は、マザー基板30を介することなく、各モジュール基板41〜44のうち少なくともいずれかに設けられる外部接続コネクタ45を介して受信されてもよい。これにより、マザー基板30の電源回路33に流れる大電流に応じてノイズが生じる場合でも、このノイズが上記外部からの情報に影響を及ぼすことを抑制することができる。特にセンサ情報や通信情報等センシティブなラインに適用すると良い。
【0053】
また、本実施形態の第5変形例として、電源回路33を以下のように構成してもよい。電源回路33は、各モジュール基板41〜44の電子回路に各車載機器に供給する電流が流れる供給部を備え、その供給部を制御する制御部は、各モジュール基板41〜44のうちのいずれかに配置される。これにより、電源回路33の供給部に流れる大電流に応じてノイズが生じる場合でも、このノイズが制御部に影響を及ぼすことを抑制することができる。特に、多くの車載機器を制御するために多くのモジュール基板が筐体21内に収容される場合には、より大きな電流が電源回路33の供給部に流れることとなる。このような場合でも、制御部が複数のモジュール基板のうちのいずれかに配置されることで、制御部に対するノイズの影響を抑制することができる。
なお、本実施形態に係る電子制御装置20の特徴的な構成は、他の実施形態および変形例に適用されてもよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電子制御装置について図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係る電子制御装置20aの要部を示す断面図である。
本第2実施形態に係る電子制御装置20aでは、第1ケース22に代えて第1ケース25を採用する点が、上記第1実施形態に係る電子制御装置と異なる。したがって、第1実施形態の電子制御装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、第1ケース25は、上述した第1ケース22に対して、第1内面22aのうち熱伝導性接着剤24が配置される領域を含めた部位が発熱素子41aに近接する方向に突出する突出部25aが形成される。この突出部25aは、第1ケース25の底面(第1内面22a)の中央部から外部接続コネクタ45近傍までが底を浅くするように段状に盛り上がって形成されている。また、第1ケース25には、筐体21の外面の一部を構成し突出部25aに対向する部位に凹部25bが形成され、この凹部25b内に第1内面22aにおける放熱性を向上させるための放熱部として例えば複数のフィン25cが形成される。特に、複数のフィン25cは、その先端部が凹部25b内から突出しないように形成されている。
【0056】
これにより、外部接続コネクタ45の様な発熱素子41aよりも背の高い部品が同一実装面に配置されていたとしても、第1内面22aと発熱素子41a等との間隔を狭くでき、当該第1内面22aを介した放熱を効率的に実施することができる。さらに、凹部25b内に第1内面22aにおける放熱性を向上させるための複数のフィン25cが形成されるため、当該第1内面22aを介した放熱を効率的に実施することができる。特に、複数のフィン25cが凹部25b内から突出しないように形成されるために筐体21の外形寸法は変化しないので、複数のフィン25cを設けることによる筐体21の大型化を抑制することができる。また、第1内面22aのうち突出部25aが形成されない部位では、第1内面22aとモジュール基板41,42の基板面との間隔が広くなるので、図9に示すように、実装高さが高い外部接続コネクタ45であっても、第1内面22aとの間に配置することができる。この場合、この外部接続コネクタ45と、モジュール基板43,44における外部接続コネクタ45とを離間させて配置できるので、外部接続コネクタ45の接続に関する配線作業を容易に実施することができる。
なお、本実施形態では、外部接続コネクタ45に重なる部位を除く場所に突出部25aを設けたが、基板上に実装されるアルミ電解コンデンサ、コイル等の比較的背の高い電子部品の位置に対応する部位は突出しないように形成されていても良い。こうすることで、背の高い電子部品の高さに合わせて発熱素子と第1内面22aとのクリアランスを広げる必要がなく、高い放熱性能を確保できる。
なお、本実施形態に係る電子制御装置20aの特徴的な構成は、他の実施形態および変形例に適用されてもよい。
【0057】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る電子制御装置について図10および図11を参照して説明する。図10は、第3実施形態に係る電子制御装置20bの要部を示す断面図である。図11は、各基板30,41〜44が対応するケース26〜28に取り付けられた状態を示す断面図である。なお、図10は、図2の矢印αおよび各基板面に直交する方向から見た場合の断面図(図3では下方から見た場合の断面図)に対応して図示されている。
【0058】
本第3実施形態に係る電子制御装置20bでは、筐体21を構成するための第1ケース22および第2ケース23に代えて、筐体21を構成するための3つのケース26〜28を採用する点が、主に上記第1実施形態に係る電子制御装置と異なる。したがって、第1実施形態の電子制御装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図10に示すように、筐体21は、3つのケース26〜28を組み付けることにより構成され、ケース26は、一面が開口する箱状に形成され、ケース27,28は、双方を組み付けることで一面が開口する箱状となるように形成されている。なお、ケース26は、特許請求の範囲に記載の「第2ケース」の一例に相当し、ケース27およびケース28は、特許請求の範囲に記載の「第1ケース」の一例に相当し得る。
【0060】
図11(A)に示すように、ケース26は、マザー基板30を取り付けるためのケースで、マザー基板30は、上述した第2内面23aに対応する内面26aに一側基板面31が近接するようにケース26に取り付けられる。この取付の際、マザー基板30を、ケース26に設けられる支持部26b等により支持し、係止部材50によって当該ケース26に係止する。電源回路33の発熱素子と内面26aとの間には、上述した熱伝導性接着剤24が配置される。
【0061】
また、図11(B)に示すように、ケース27は、モジュール基板41,43を取り付けるためのケースで、モジュール基板41は、上述した第1内面22aの一部に対応する内面27aに近接するようにケース27に取り付けられる。この取付の際、モジュール基板41を、ケース27に設けられる支持部27b等により支持し、係止部材50によって当該ケース27に係止する。発熱素子41aと内面27aとの間には、上述した熱伝導性接着剤24が配置される。
【0062】
このようにモジュール基板41が取り付けられたケース27に対して、モジュール基板43を、その基板間接続コネクタ46が対応するモジュール基板41の基板間接続コネクタ46に電気的に接続するように、取り付ける。この取付の際、モジュール基板43を、ケース27に設けられる図略の支持部等により支持する。
【0063】
また、図11(C)に示すように、ケース28は、モジュール基板42,44を取り付けるためのケースで、モジュール基板42は、上述した第1内面22aの一部に対応する内面28aに近接するようにケース28に取り付けられる。この取付の際、モジュール基板42を、ケース28に設けられる支持部28b等により支持し、係止部材50によって当該ケース28に係止する。当該モジュール基板42に実装される素子のうちその動作に応じて発熱する発熱素子42aと内面28aとの間には、上述した熱伝導性接着剤24が配置される。
【0064】
このようにモジュール基板42が取り付けられたケース28に対して、モジュール基板44を、その基板間接続コネクタ46が対応するモジュール基板42の基板間接続コネクタ46に電気的に接続するように、取り付ける。この取付の際、モジュール基板44を、ケース28に設けられる図略の支持部等により支持する。
【0065】
このように、マザー基板30が組み付けられたケース26と、モジュール基板41,43が取り付けられたケース27と、モジュール基板42,44が取り付けられたケース28とを組み付けることで、筐体21が構成され、当該電子制御装置20bに関する組み付けが完了する。
【0066】
マザー基板30は、上述した電源回路33など電力供給の制御に関する機能を有するために、アルミ電解コンデンサやコイル等が実装される。その為、大型サイズの部品であったり、スルーホールデバイス部品等が使用されることによるフロー実装工程の追加などにより、製造時間が各モジュール基板41〜44に対して長くなりやすい。このため、上記第1実施形態のように第2ケース23にマザー基板30だけでなくモジュール基板43,44が取り付けられる場合には、第2内面23aに近接して組み付けるマザー基板30が完成するまで第2ケース23にモジュール基板43,44が取り付けられなくなる。そうすると、モジュール基板41,42が取り付けられる第1ケース22との製造時間の差が大きくなり、当該電子制御装置20に関する組み付けが完了するまでの時間が長くなってしまう。
【0067】
本実施形態では、ケース26には、筐体21内に収容される各基板のうちマザー基板30のみが取り付けられるので、ケース26の筐体構造を簡潔に構成することができる。さらに、マザー基板30が取り付けられるケース26との製造時間と、モジュール基板41,43が取り付けられるが取り付けられるケース27との製造時間やモジュール基板42,44が取り付けられるケース28との製造時間との差を小さくできるので、当該電子制御装置20bに関する組み付けが完了するまでの時間を短縮することができる。
なお、本実施形態に係る電子制御装置20bの特徴的な構成は、他の実施形態および変形例に適用されてもよい。
【0068】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る電子制御装置について図12および図13を参照して説明する。図12は、第4実施形態に係る電子制御装置20cの要部を示す断面図である。図13は、マザー基板30および各モジュール基板41〜44が収容された第1ケース22および第2ケース23と、モジュール基板48が取り付けられた機能追加用ケース29とを、組み付ける直前の状態を示す説明図である。
【0069】
本第4実施形態に係る電子制御装置20cでは、筐体21が機能を追加するためのモジュール基板48が取り付けられた機能追加用ケース29を組み付け可能に形成される点が、主に上記第1実施形態に係る電子制御装置と異なる。したがって、第1実施形態の電子制御装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
本第4実施形態に係る電子制御装置20cは、既存の機能に対して、所望の機能を実現するためのモジュール基板48が一側基板面48aにて近接して取り付けられた機能追加用ケース29を組み付けて電気的に接続することで、容易に機能を追加可能に構成されている。具体的には、筐体21の外面のうち第1内面22a近傍の面(以下、外面21cという)は、機能追加用ケース29を組み付け可能に形成されている。この機能追加用ケース29は、上記外面21cに組み付けられることで、機能を追加するためのモジュール基板48を収容するための収容空間Sを構成する。この外面21cには、機能追加用ケース29の組み付け時に、この機能追加用ケース29に取り付けられたモジュール基板48とマザー基板30や他のモジュール基板41〜44とを電気的に接続するための基板間接続コネクタ46aが、開口から露出するように設けられている。なお、基板間接続コネクタ46aは、例えば、モジュール基板41に設けられており、特許請求の範囲に記載の「接続部材」の一例に相当し得る。
【0071】
モジュール基板48の基板面には、上述した追加する機能を実現するための回路が実装されており、一側基板面48aと異なる他側基板面48bに、基板間接続コネクタ46aに電気的に接続するための基板間接続コネクタ46bが設けられている。
【0072】
このように構成されるモジュール基板48は、その一側基板面48aにて機能追加用ケース29の壁面のうち上記外面21cに対向する壁面(以下、第3内面29aという)に対して近接するように取り付けられる。この取付の際、モジュール基板48を、機能追加用ケース29に設けられる支持部29b等により支持し、上記係止部材50によって当該機能追加用ケース29に係止する。そして、この取付の際、モジュール基板48に実装される素子のうちその動作に応じて発熱する発熱素子48cと第3内面29aとの間には、放熱性を向上させるため、上述した熱伝導性接着剤24が配置される。なお、モジュール基板48は、係止部材50に代えてまたは係止部材50とともに、機能追加用ケース29の支持部29b等に設けられた係止部位によって当該機能追加用ケース29に係止されてもよい。
【0073】
そして、図13に示すように、マザー基板30および各モジュール基板41〜44が収容された第1ケース22および第2ケース23と、モジュール基板48が取り付けられた機能追加用ケース29とを、接続予定の基板間接続コネクタ46a,46b同士を接続可能に対向させる。モジュール基板48を取り付けた機能追加用ケース29を筐体21の外面21cに組み付けて、モジュール基板48の基板間接続コネクタ46bと外面21cから露出する基板間接続コネクタ46aとを接続する。筐体21と機能追加用ケース29とは、所定の接着剤やネジ部材による締結などにより固定される。これにより、図12に示すように、電子制御装置20cにおいて、所望の機能を追加する機能追加作業が終了する。
【0074】
このような構成では、筐体21内に収容された各モジュール基板41〜44により実現される機能に対して他の機能を追加する場合に、その機能を有するモジュール基板48を取り付けた機能追加用ケース29を筐体21の外面21cに組み付けて、このモジュール基板48とマザー基板30や他のモジュール基板41〜44とを基板間接続コネクタ46a等により電気的に接続することで、容易に所望の機能を追加することができる。
【0075】
特に、機能追加用のモジュール基板48が組み付けられてその発熱素子48cと第3内面29aとの間に熱伝導性接着剤24が配置された機能追加用ケース29を製造元である製品出荷工場等で予め製造しておき、この機能追加用ケース29を機能追加用として販売店等に用意しておくことができる。そして、販売店等では、機能追加用ケース29ごと筐体21に組み付けて機能追加作業が完了する。この場合、販売店等では、発熱素子48cと第3内面29aとの間に熱伝導性接着剤24を配置する必要がないので、筐体21等の寸法精度や組立精度を販売店等での機能追加作業を可能とするレベルまで高める必要がないので上述した機能追加作業にかかる費用を低減することができる。さらに、モジュール基板48は、係止部材50にて機能追加用ケース29に係止されるため、モジュール基板48と第3内面29aとの近接距離を容易に確保することができる。また、このような構成をとることで、複数あるモジュール基板の内、両端に配置されたモジュール基板以外のモジュール基板を筐体21の内面に近接させて配置させることや筐体21に熱伝導性接着剤24などの熱伝導性の部材を介して放熱させることができる為、より放熱性を高めることが出来る。
【0076】
なお、1つの筐体21に収容するモジュール基板として、以下の機能を有するモジュール基板を採用してもよい。このように採用されるモジュール基板は、他の実施形態や変形例においても採用することができる。
1つの筐体21に収容するモジュール基板として、ボディ系を制御する機能を有するモジュール基板の中から選定することができる。例えば、ボディ系を制御する機能を有するモジュール基板としては、主として乗員の操作やコンピュータプログラムの実行によって動作する、いわゆるイベントドリブンの装置を制御するモジュール基板がある。例えば、エアコンディショナーを制御するエアコンECU、ドアロックシステムを制御するドアECU、パワーウィンドウを制御するパワーウィンドウECU、電動ドアミラーを制御するドアミラーECU、パワーシートを制御するパワーシートECU、サンルーフの開閉を制御するルーフECU、ステアリングホイールに配置された各種スイッチからの信号の入出力を制御するステアリングホイールスイッチECU、オーバーヘッドコンソールに配置された各種スイッチからの信号の入出力を制御するオーバーヘッドECUなどのECUをモジュール化したモジュール基板がある。
【0077】
また、1つの筐体21に収容するモジュール基板として、安全系を制御する機能を有するモジュール基板の中から選定することができる。例えば、安全系を制御する機能を有するモジュール基板としては、運転席エアバック、助手席エアバック、前席サイドエアバッグ、ニーエアバッグ、ルーフエアバッグ、後席用エアバッグ、後席再度エアバッグ、カーテン式エアバッグ、シートベルトのプリテンショナー、シートベルトのフォース(ロード)リミッタ−などを制御するECUをモジュール化したモジュール基板などがある。
【0078】
また、1つの筐体21に収容するモジュール基板として、情報系を制御する機能を有するモジュール基板の中から選定することができる。例えば、カーナビゲーション装置を制御するナビゲーションECU、オーディオ装置を制御するオーディオECU、電話を制御する電話ECUをモジュール化したモジュール基板などがある。
【0079】
また、1つの筐体21に収容するモジュール基板として、車両に設けられたアクセサリースイッチがONしたときに作動するもの及び作動可能な状態になるものを制御する機能を有するモジュール基板の中から選定することができる。例えば、前述したパワーウィンドウを制御するパワーウィンドウECU、電動ドアミラーを制御するドアミラーECU、パワーシートを制御するパワーシートECU、サンルーフの開閉を制御するルーフECU、ステアリングホイールに配置された各種スイッチからの信号の入出力を制御するステアリングホイールスイッチECU、オーバーヘッドコンソールに配置された各種スイッチからの信号の入出力を制御するオーバーヘッドECU、情報系を制御するECUをモジュール化したモジュール基板などがある。
【0080】
また、1つの筐体21に収容するモジュール基板として、イグニッションキースイッチがOFFの状態のときに作動する装置を制御する機能を有するモジュール基板の中から選定することができる。例えば、盗難防止装置を制御するECU、パーキングランプ類を制御するECUをモジュール化したモジュール基板などがある。
なお、本実施形態に係る電子制御装置20f特徴的な構成は、他の実施形態および変形例に適用されてもよい。
【0081】
なお、本発明は上記各実施形態または変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上記第1実施形態および変形例において、電子制御装置20は、上述した車載機器11〜14を制御対象とすることに限らず、車両と異なる一般的な外部機器を制御可能な電子制御装置として適用されてもよい。この場合、モジュール基板は、制御対象となる外部機器に応じてそれぞれ設けられることとなる。他の実施形態および変形例においても同様である。
【0082】
(2)上記第1実施形態および変形例において、外部接続コネクタ45は、全てのモジュール基板41〜44に設けられることに限らず、情報の共有化や取り扱う情報量に応じて、必要な基板のみに設けられてもよい。
【0083】
(3)筐体21内において、各モジュール基板41〜44は、基板間接続コネクタ46を採用することで基板間接続を実施することに限らず、他の接続手段を用いて基板間接続を実施してもよい。
【符号の説明】
【0084】
11…エンジン(外部機器)
12…トランスミッション(外部機器)
13…ドアロック機構(外部機器)
14…セキュリティ装置(外部機器)
15…バッテリ(電源)
20,20a〜20f…電子制御装置
21…筐体
22,25…第1ケース
22a…第1内面
23…第2ケース
23a…第2内面
24…伝熱性接着剤(伝熱性の部材)
25a…突出部
25b…凹部
25c…フィン(放熱部)
26〜28…ケース
29…機能追加用ケース
30…マザー基板(第2の基板)
31…一側基板面
32…他側基板面
33…電源回路
34…外部接続コネクタ
35…基板間接続コネクタ
41〜44,47,48…モジュール基板(第1の基板)
45…外部接続コネクタ
46,46a,46b…基板間接続コネクタ
50…係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外部機器を制御可能な電子制御装置であって、
前記複数の外部機器のうちのいずれかを制御するための第1の基板と、
電源装置から電力を供給される第2の基板と、
前記第2の基板と前記第1の基板とが収容される筐体と、
を備え、
前記筐体は、第1ケースと第2ケースとを組み付けることで構成され、
前記筐体の内面の一部を構成する前記第1ケースの壁面である第1内面には、複数の前記第1の基板のうちの少なくとも1つが近接して配置されるとともに、前記筐体の内面の他の一部を構成する前記第2ケースの壁面である第2内面には、前記第2の基板が近接して配置され、
前記第1内面に近接して配置される第1の基板に実装される複数の素子であってその動作に応じて発熱する発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、前記第1内面との間に、熱伝導性の部材が配置され、
第1の基板は、係止部材もしくは前記第1ケースの係止部位にて当該第1ケースに係止されるとともに、第2の基板は、係止部材もしくは前記第2ケースの係止部位にて当該第2ケースに係止されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記第2の基板に実装される複数の素子であってその動作に応じて発熱する発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、前記第2内面との間に、熱伝導性の部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記第1ケースには、前記第1内面のうち前記熱伝導性の部材が配置される領域を含めた部位が前記発熱素子に近接する方向に突出する突出部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記第1ケースには、前記筐体の外面の一部を構成し前記突出部に対向する部位に凹部が形成され、この凹部内に前記第1内面における放熱性を向上させるための放熱部が形成されることを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記第1ケースに、複数の前記第1の基板のうち当該第1ケースに係止される第1の基板を除く第1の基板を支持する部位が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記筐体は、その外面が機能追加用ケースを組み付け可能に形成されており、
前記機能追加用ケースと前記外面とにより構成される他の収容空間には、当該外面に対向する前記機能追加用ケースの壁面である第3内面に、前記第1の基板のうちの少なくとも1つが近接して収容され、
前記外面には、前記機能追加用ケースの組み付け時にこの機能追加用ケースに取り付けられた第1の基板と前記筐体に収容されるいずれかの基板とを電気的に接続するための接続部材が設けられ、
前記第3内面に近接して収容される第1の基板に実装される複数の素子であってその動作に応じて発熱する発熱素子のうち少なくともいずれか1つには、当該第3内面との間に、熱伝導性の部材が配置され、
前記第3内面に近接して収容される第1の基板は、係止部材もしくは前記機能追加用ケースの係止部位にて当該機能追加用ケースに係止されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−175032(P2012−175032A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38096(P2011−38096)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】