説明

電子制御装置

【課題】CPUボードに実装されたCPUの低温時に、CPUを安定起動させる。
【解決手段】電子制御装置1は、電源ユニット3と、CPU5を実装したCPUボード6と、CPU5の温度測定用の温度センサ7と、CPU5の加温用のヒータ8と、を備える。CPUボード6に搭載された温度電源コントローラ10は、CPU5の温度測定値に基づいて、ヒータ用スイッチ11及びCPUボード電源回路用スイッチ12のオン・オフを切り換えることにより、電源ユニット3の主電源3bからの電力をヒータ8とCPUボード電源回路13とのいずれか一方に供給する制御を行う。また、温度電源コントローラ10は、電子制御装置1の起動時に、CPU5がその動作保証温度範囲の下限値を下回る低温状態である場合には、主電源3bからの電力が、CPUボード電源回路13に供給されるに先立って、ヒータ8に供給されるように電力供給制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関し、特に、電子制御装置に搭載されたCPUボードに電力を供給するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CPUが実装されたプリント基板を備えるデータ記録装置において、CPUの動作を常に安定させることを目的として、CPU放熱用のヒートシンクにCPU加温用のヒータを設け、CPUの低温時にはヒータを駆動させてヒータからの熱をヒートシンクを介してCPUに伝達させることによりCPUを加温する一方、CPUの高温時にはヒータの駆動を停止すると共にCPUからの熱をヒートシンクを介して空気中に放出させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−53641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、CPUの低温時に、CPUを駆動させつつヒータによりCPUを加温する場合には、CPUの加温が十分ではない状態で(例えば、CPUの動作保証温度範囲より低温で)CPUが駆動される可能性があり、それゆえ、CPUの誤動作や不安定動作が発生し得るという問題があった。
また、特許文献1に記載のように、CPUの低温時に、CPUとヒータとを同時に駆動させる場合には、CPUが実装されたプリント基板における消費電力とヒータにおける消費電力とをカバーするために、比較的大容量の電源ユニットを用いる必要があった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、比較的小容量の電源ユニットを用いて、CPUの低温時に、CPUの誤動作や不安定動作を回避しつつ、CPUを駆動させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明に係る電子制御装置は、電源ユニットと、CPUを実装したCPUボードと、CPUの温度を測定する温度センサと、CPUの加温用のヒータと、CPUの温度測定値に応じて、電源ユニットからの電力をCPUボードとヒータとのいずれか一方に供給する電力供給先切換手段と、を含んで構成される。また、電力供給先切換手段は、CPUの低温時に、電源ユニットからの電力をCPUボードに供給するに先立って、ヒータに供給する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力供給先切換手段は、電源ユニットからの電力をCPUボードとヒータとのいずれか一方に供給することにより、CPUとヒータとは同時に駆動されることがないので、電源ユニットの容量を比較的小さくすることができる。
また、本発明によれば、電力供給先切換手段は、CPUの低温時に、電源ユニットからの電力をCPUボードに供給するに先立って、ヒータに供給することにより、CPUの予熱後にCPUが駆動されるので、CPUが低温であることに起因したCPUの誤動作や不安定動作の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態における電子制御装置の概略構成を示すブロック図
【図2】電子制御装置の起動時の電力供給制御フローを示すフローチャート
【図3】CPUボードの正面図
【図4】図3のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態における電子制御装置の概略構成を示す。ここで、図1における実線矢印と破線矢印とは、それぞれ、電力線(電力供給経路)と信号線(信号伝達経路)とを示す。
電子制御装置1は、外部より電力線2を介して電力が供給される電源ユニット3と、電源ON/OFFスイッチ4と、CPU(中央処理装置)5が実装されたCPUボード6と、CPU5の温度を測定する温度センサ7と、CPU5の加温用のヒータ8と、ハードディスク等の周辺ユニット9と、を備える。
【0010】
電源ユニット3は、常時投入(常時オン)の補助電源3aと、電源ON/OFFスイッチ4からの指示に基づいてオン・オフされる主電源3bと、を備える。
電源ユニット3の補助電源3aは、電力線2aを介して、CPUボード6上の温度電源コントローラ10に接続されている。これにより、温度電源コントローラ10には、補助電源3aからの電力が常時供給される。
【0011】
電源ユニット3の主電源3bは、電力線2bを介して、CPUボード6上のヒータ用スイッチ11に接続されている。
ヒータ用スイッチ11には、電力線2cを介して、ヒータ8が接続されている。また、ヒータ用スイッチ11は、温度電源コントローラ10からの出力信号に応じてオン・オフされ、これにより、主電源3bからヒータ8への電力供給が制御される。
【0012】
主電源3bからヒータ用スイッチ11に至る電力線2bは、その途中から分岐して、CPUボード6上のCPUボード電源回路用スイッチ12に接続される電力線2dを備える。
CPUボード電源回路用スイッチ12には、電力線2eを介して、CPUボード6上のCPUボード電源回路13が接続されている。また、CPUボード電源回路用スイッチ12は、温度電源コントローラ10からの出力信号に応じてオン・オフされ、これにより、主電源3bからCPUボード電源回路13への電力供給が制御される。
【0013】
CPUボード電源回路13は、電力線2fを介して、CPUボード6上のCPU5及び周辺回路14に接続されている。ここで、周辺回路14には、CPUボード6に搭載されるIC、メモリ、インターフェース等が含まれる。
また、CPUボード電源回路13は、電力線2gを介して、周辺ユニット9に接続されている。これにより、電源ユニット3の主電源3bからCPUボード6に供給される電力の一部が周辺ユニット9に供給される。
【0014】
従って、CPUボード電源回路用スイッチ12のオン・オフが切り換えられると、この切り換えに応じて、CPUボード電源回路13からCPU5及び周辺回路14への電力供給と、CPUボード電源回路13から周辺ユニット9への電力供給とが同期して行われる。換言すれば、CPUボード電源回路用スイッチ12のオン・オフ動作に応じて、CPUボード6の電源と、周辺ユニット9の電源とが、同期してオン・オフされる。
【0015】
CPU5及び周辺回路14と周辺ユニット9との間では、信号線20aを介して各種信号の伝達が行われる。ここで、上述のように、CPUボード6の電源と周辺ユニット9の電源とが同期することにより、周辺ユニット9から信号線20aを介してCPU5及び周辺回路14に回り込む電流を抑制することができるので、CPU5等の動作を安定させることができる。
【0016】
なお、CPUボード電源回路13には、CPUボードの冷却用ファン(図示せず)の運転を制御するための制御回路(図示せず)が、電力線(図示せず)を介して接続されている。この制御回路は、温度センサ7にて測定されたCPU5の温度に基づいて、CPUボードの冷却用ファンの運転を制御する。
【0017】
温度電源コントローラ10は、電子制御装置1の各種制御を行うものであり、信号線20b,20c,20d,20e,20fを介して、電源ON/OFFスイッチ4,主電源3b,温度センサ7,ヒータ用スイッチ11,CPUボード電源回路用スイッチ12に各別に接続されている。
【0018】
温度電源コントローラ10は、電源ON/OFFスイッチ4の指示に基づいて、主電源3bのオン・オフを切り換える。
また、温度電源コントローラ10は、温度センサ7にて測定されたCPU5の温度に基づいて、ヒータ用スイッチ11及びCPUボード電源回路用スイッチ12のオン・オフを切り換える。
【0019】
次に、温度電源コントローラ10により行われる各種制御のうち、電子制御装置1の起動時の電力供給制御について、図2を用いて説明する。
図2は、電子制御装置1の起動時の電力供給制御フローを示す。
電子制御装置1の起動時に、温度電源コントローラ10が、電源ON/OFFスイッチ4より「電源ON」の指示を受けると、温度電源コントローラ10は、まず、ステップS1にて、電源ユニット3の主電源3bをオンする。
【0020】
次に、ステップS2にて、CPU5の温度測定値Tと所定の温度T1とを比較する。ここで、所定の温度T1とは、CPU5の温度測定値が、CPU5の動作保証温度範囲の下限値(例えば、0℃)を下回っているか否かを判定するための閾値である。
T≧T1の場合には、CPU5が、その動作保証温度範囲の下限値を下回る低温状態ではないと判定して、後述するステップS6に進む。
【0021】
一方、T<T1の場合には、CPU5が、その動作保証温度範囲の下限値を下回る低温状態であると判定して、ステップS3に進む。
ステップS3では、ヒータ用スイッチ11をオンして(すなわち、ヒータ8の電源をオンして)ヒータ8に電力を供給することにより、CPU5の予熱を行う。なお、この際に、CPUボード電源回路用スイッチ12はオフであるので、CPUボード電源回路13への電力供給は遮断されている。
【0022】
次に、ステップS4にて、CPU5の温度測定値Tと所定の温度T1とを比較する。
T<T1の場合には、CPU5の低温状態が継続していると判定して、ステップS3に戻る。
一方、T≧T1の場合には、CPU5の低温状態が解消したと判定して、ステップS5に進む。
【0023】
ステップS5では、ヒータ用スイッチ11をオフして(すなわち、ヒータ8の電源をオフして)ヒータ8への電力供給を遮断することにより、CPU5の予熱を終了する。
この後、ステップS6にて、CPUボード電源回路用スイッチ12をオンして(すなわち、CPUボード6の電源をオンして)CPUボード電源回路13に電力を供給する。これにより、CPU5,周辺回路14,周辺ユニット9が同期して起動する。
【0024】
このようにして、CPU5の低温時に、電源ユニット3の主電源3bからの電力は、CPUボード電源回路13に供給されるに先立って、ヒータ8に供給される。
なお、温度電源コントローラ10、ヒータ用スイッチ11、及びCPUボード電源回路用スイッチ12により、本発明における「電力供給先切換手段」の機能が実現される。
また、電子制御装置1がアクチュエータ等の外部装置の起動を制御する場合には、CPU5の起動に同期して外部装置が起動されるように、外部装置への電力供給制御を行うことが可能である。この場合には、例えば、CPU5に信号線を介して接続される外部装置用の制御ボードを予め設け、この制御ボードにて、CPU5の起動と外部装置の起動とが同期するように、外部装置への電力供給を行う。この場合には、CPU5の電源と外部装置の電源とが同期することにより、外部装置から信号線を介してCPU5に回り込む電流を抑制することができるので、CPU5の動作を安定させることができる。
【0025】
次に、本実施形態における温度センサ7及びヒータ8が搭載されたCPUボード6の一例を、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、CPUボード6の概略構成を示す。また、図4は、図3のA−A断面を示す。
CPUボード6の上面には、2つのCPU5が載置され、2つのCPU5の間のCPUボード6の上面には、温度センサ7が載置されている。温度センサ7は、信号線20dを介して、CPUボード6上の温度電源コントローラ10に接続されている。なお、本実施形態では、温度センサ7は、CPUボード6の温度を測定することによりCPU5の温度を間接的に測定しているが、CPU5の温度測定方法はこれに限らず、例えば、温度センサ7は、CPU5の温度を直接測定するようにしてもよい。
【0026】
2つのCPU5には、双方の上面を覆うように、伝熱シート31を介して、金属製(例えば、アルミ製)のヒートシンク32が載置されている。ここで、ヒートシンク32は、伝熱シート31を介してCPU5の上面に面接触している。
ヒートシンク32は、矩形底部32aと、その上面に並行に立設された複数の放熱フィン32bとを備える。
【0027】
ヒートシンク32は、L字型断面を有する一対の固定部材33により挟持されて、固定部材33を介して、CPUボード6に固定されている。ここで、ヒートシンク32の複数の放熱フィン32bのうち最も外側に位置する放熱フィン32bと固定部材33との間には、シート状のヒータ8が介装されている。すなわち、ヒータ8は、ヒートシンク32に搭載されている。
【0028】
ヒータ8は、電力線2cを介して、CPUボード6上のヒータ用スイッチ11に接続されている。
ヒータ用スイッチ11がオンされると、ヒータ8が発熱し、この熱が、ヒートシンク32及び伝熱シート31を介して、CPU5に伝達され、これにより、CPU5が加温される。
【0029】
一方、ヒータ用スイッチ11がオフされると、ヒータ8は発熱しないので、ヒートシンク32は、CPU5用の放熱板として機能して、CPU5が冷却される。
本実施形態によれば、電子制御装置1は、電源ユニット3と、CPU5を実装したCPUボード6と、CPU5の温度を測定する温度センサ7と、CPU5の加温用のヒータ8と、CPU5の温度測定値に応じて、電源ユニット3の主電源3bからの電力をCPUボード電源回路13とヒータ8とのいずれか一方に供給する電力供給先切換手段(温度電源コントローラ10,ヒータ用スイッチ11,CPUボード電源回路用スイッチ12)と、を含んで構成される。そして、電力供給先切換手段(温度電源コントローラ10,ヒータ用スイッチ11,CPUボード電源回路用スイッチ12)は、CPU5の低温時に、電源ユニット3の主電源3bからの電力をCPUボード電源回路13に供給するに先立って、ヒータ8に供給する。これにより、CPU5とヒータ8とは同時に駆動されることがないので、電源ユニット3の容量を比較的小さくすることができる。また、CPU5の予熱後にCPU5が駆動されるので、CPU5が低温であることに起因したCPU5の誤動作や不安定動作の発生を回避することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、電子制御装置1は、CPUボード6に接続される周辺ユニット9を更に含んで構成され、電源ユニット3の主電源3bからCPUボード電源回路13に供給される電力の一部が周辺ユニット9に供給される。これにより、CPU5の電源と周辺ユニット9の電源とが同期するので、例えば、周辺ユニット9から信号線20aを介してCPU5に回り込む電流を抑制することができ、従って、CPU5の動作を安定させることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、温度センサ7は、CPUボード6の温度を測定することによりCPU5の温度を間接的に測定するので、温度センサ7がCPU5の温度を直接測定する場合に比べて、温度センサ7の設置場所の選択の自由度を高めることができる。
また、本実施形態によれば、ヒータ8は、CPU5に接触させて配置されるヒートシンク32に搭載されるので、比較的コンパクトな構成でCPU5の予熱を行うことができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、電源ユニット3は、主電源3bと補助電源3aとを備え、温度電源コントローラ10は、補助電源3aより常時供給される電力で切換動作して、主電源3bより供給される電力を、CPUボード電源回路13とヒータ8とのいずれか一方に供給する。これにより、電源ON/OFFスイッチ4が「電源OFF」である場合に温度電源コントローラ10が待機状態になるので、電源ON/OFFスイッチ4が「電源OFF」から「電源ON」に切り換わると、直ちに、電子制御装置1の起動時の電力供給制御フローを開始することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、電力供給先切換手段(温度電源コントローラ10,ヒータ用スイッチ11,CPUボード電源回路用スイッチ12)は、CPUボードに搭載されるので、比較的コンパクトな構成で電子制御装置1の起動時の電力供給先の切換を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 電子制御装置
2,2a〜2g 電力線
3 電源ユニット
3a 補助電源
3b 主電源
4 電源ON/OFFスイッチ
5 CPU
6 CPUボード
7 温度センサ
8 ヒータ
9 周辺ユニット
10 温度電源コントローラ
11 ヒータ用スイッチ
12 CPUボード電源回路用スイッチ
13 CPUボード電源回路
14 周辺回路
20a〜20f 信号線
31 伝熱シート
32 ヒートシンク
32a 矩形底部
32b 放熱フィン
33 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ユニットと、
CPUを実装したCPUボードと、
前記CPUの温度を測定する温度センサと、
前記CPUの加温用のヒータと、
前記CPUの温度測定値に応じて、前記電源ユニットからの電力を前記CPUボードと前記ヒータとのいずれか一方に供給する電力供給先切換手段と、
を含んで構成され、
前記電力供給先切換手段は、前記CPUの低温時に、前記電源ユニットからの電力を前記CPUボードに供給するに先立って、前記ヒータに供給することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記CPUボードに接続される周辺ユニットを更に含んで構成され、前記電源ユニットから前記CPUボードに供給される電力の一部が前記周辺ユニットに供給されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記温度センサは、前記CPUボードの温度を測定することにより前記CPUの温度を間接的に測定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記CPUに接触させて配置されるヒートシンクに搭載されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記電源ユニットは、主電源と補助電源とを備え、
前記電力供給先切換手段は、前記補助電源より常時供給される電力で切換動作して、前記主電源より供給される電力を、前記CPUボードと前記ヒータとのいずれか一方に供給することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記電力供給先切換手段は、前記CPUボードに搭載されることを特徴とする請求項5に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59037(P2012−59037A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201988(P2010−201988)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(301001845)株式会社ダックス (1)
【出願人】(591020663)長野沖電気株式会社 (9)
【Fターム(参考)】