説明

電子回路基板の組み立て構造

【課題】強制冷却手段を用いずに熱を外部に伝達し、電子回路の収納筐体を小型化する。
【解決手段】電子部品を搭載した電子回路基板を収納する筐体1a及びそのカバー1bにおいて、複数枚のプリント基板2a、2b…2nを筐体1aに設けられた基板挿入溝3a、3b…3nに面接触させて、電子回路基板に搭載した電子部品から発生した熱を基板挿入溝を通して筐体に熱伝達することを特徴とした電子回路基板の組み立て構造。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】発熱体を搭載する電子回路基板の放熱および電磁ノイズ障害防止を可能とした電子回路基板の組み立て構造に関する。本発明は、特に、機器の小型化を達成する為に回路基板と筐体との熱及び電磁的接触構造に特徴を持つ。
【0002】
【従来の技術】従来ある筐体に取り付けられた電子回路基板の取り付け方法には、一般的な方法としては、小型化あるいは絶縁の為に、筐体に基板の挿入のために絶縁材料により溝を設けた取り付け方法があった。しかし、この方法は軽量化あるいは絶縁性向上の為には良いが、部品実装密度があがり、放熱を行う為には強制冷却の為の冷却ファンを設けるなどの対策が必用であり小型化に難があるとともに、寿命が短くなると言う問題があった。また、車両の中に使用されるなど防塵構造を必要とする場合には、密閉構造にすることが難しく、環境性に問題があった。また、絶縁プリント基板上に搭載された変圧器などのコイル類から生じる電磁ノイズが周辺の電子部品に影響を与え回路特性の劣化や誤動作を発生する問題があった。
【0003】また、特開平5−167279号のように、基板と部品間に伝熱板を設け、この伝熱板の側端部にヒートシンク部を設けた方法は、側端部から熱を逃すもので側端部を強制冷却する必要があるため、側端部に隙間なく四方を筐体で囲まれた機器の小型化への適用は現実的でない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】電子回路基板上の部品の実装密度があがることによる基板の放熱と電磁ノイズ相互干渉防止のために、電子回路基板を収納する筐体と基板の取り付け方法を改善し、併せて小型化の容易な組み立て構造を得る必要がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、電子回路基板を収納する筐体をアルミ材などの熱伝導体材料を用いて構成し、電子部品基板をアルミ材などの熱伝導材料による放熱板とプリント配線板との張りあわせ構造として構成し、放熱板と筐体を接触させて組み立て、第一の目的として、基板の放熱板からの熱を筐体に伝導する。同時に第2の目的として、前記基板と筐体の接触部を電磁ノイズの伝導ルート形成に併用し、ノイズの閉ループを構成することにより、基板の外部へのノイズの漏れを無くす構造を構成するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】(構成の説明)発明の実施例を図1〜4を用いて説明する。
【0007】図1に示すような、電子部品4a、4b、…4nを搭載した複数の電子回路基板2a、2b…2nは、筐体1aに設けられた電子回路基板挿入溝3a、3b…3nに面接触の方法で取り付けられる。電子回路基板2a、2b…2nは、回路部品4からの発熱を伝える為の放熱板2a−1、2b−1、…2n−1と回路部品4の電気的接続の為の配線プリント基板2a−2、2b−2、…2n−2を張り合わせ一体形に成形されている。
【0008】回路部品は、図2に示すように放熱板2a−1、2b−1、…2n−1の上面に密着して搭載され、配線プリント基板2a−2、2b−2、…2n−2に放熱板を貫通して電気的に接続される。電子回路基板2a、2b…2nは、筐体1aの溝部3a、3b、…3nの片面に基板押え金具5a、5b、…5nにより規定の接触圧で押し付けられる構造を具備している。
【0009】図3に電子回路基板の例を示す。放熱板2−1を張り付けた配線プリント板2−2の上には多数の電子部品4が搭載され、基板の下には基板押え金具5が両側に取り付けてある。
【0010】(動作の説明)本発明は、前記の構成を備えることにより以下の動作をする。
【0011】(1)放熱動作図2に示す、電子部品4a、4b、…4nは、放熱板2a−1、2b−1、…2n−1の上面に密着して搭載され、電子部品からの発熱を放熱板に伝達する。放熱板の熱は筐体1aの電子回路基板挿入溝3a、3b、…3nに面接触の方法で、基板押え金具5a、5b、…5nにより規定の接触圧で押し付けられ、接触面を通して筐体1aに伝達し放熱される。筐体内部の発生熱はそれぞれの電子回路基板から筐体に伝達され、筐体内部に熱がこもることを防止する。
【0012】図4に図2の基板と筐体の接触部の拡大図を示す。熱は矢印で表すように放熱板2a−1から筐体1aに接触面を通して伝達される。
【0013】(2)電磁ノイズ防止動作図2に示す、電子部品4a、4b、…4nは、放熱板2a−1、2b−1、…2n−1の上面に密着して搭載され、電子部品からの発生する電磁ノイズを放熱板で遮蔽し、放熱板から筐体1の接触面を通して筐体1に伝達される。筐体1aは接地点6を通してノイズエネルギーが放出される。筐体内部に収納された他の電子回路へのノイズの影響を軽減する。
【0014】(その他の実施例)前述の実施例において、放熱板2a−1、2b−1、…2n−1を片面に設けたが、配線プリント基板2a−2、2b−2、…2n−2を挟んで、電子回路基板2a、2b…2nの両面に放熱板を設置する方法でも本発明による効果が得られる。その場合、基板押え金具5a、5b、…5nを通して熱の伝達及びノイズの伝播が行われる。また、本実施例では、筐体1aに特別な冷却手段を用いていないが、筐体が設置される周囲環境が、自動車のエンジンルームなどの高熱に晒される場合には、筐体自身を空冷、水冷による強制冷却手段が容易に達成できる。この場合も本実施例の小型化手法が有利なものとなる。
【0015】(実施例の効果)本実施例によれば、筐体内部の発熱部品の熱放散を強制冷却手段を用いずに外部に伝達でき、装置を簡易な構造で小型化できる。また、航空機などの空気密度の小さく空気対流による冷却効果が期待できない環境においても効率的な熱伝達が可能である。さらに、電子回路基板の取り付け構造を変えること無く、前記の電磁ノイズの防止手段としても効果が得られる。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、筐体内部に収納された電子回路基板上の発熱部品の熱放散を強制冷却手段を用いずに外部に伝達でき、電子回路の収納筐体を簡易な構造で小型化できる。また、航空機などの空気密度が小さく空気対流による冷却効果が期待できない環境においても効率的な熱伝達が可能である。さらに、電子回路基板の取り付け構造を変えること無く、電子回路基板の部品集積度向上及び電子回路基板の配置間隔の狭い配置が可能となり、装置の小型化に有効な手段となる。また、筐体を密閉構造とすることも可能であり、防塵あるいは防水の構造を実現できることから、屋外設置及び自動車のエンジンルームなどの耐環境性も確保できる。また、本発明による密閉構造は、EMI・EMCの耐ノイズ性向上に有効な組み立て構造となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した実施例の組み立て構成図である。
【図2】本発明を適用した一例の部分断面図である。
【図3】本発明を適用した電子回路基板の一例を示す図である。
【図4】図2の部分拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子部品を搭載した電子回路基板を収納する筐体1a及びそのカバー1bにおいて、複数枚のプリント基板2a、2b…2nを筐体1aに設けられた基板挿入溝3a、3b…3nに面接触させて、電子回路基板に搭載した電子部品から発生した熱を基板挿入溝を通して筐体に熱伝達することを特徴とした電子回路基板の組み立て構造。
【請求項2】 筐体1aの内部に発生した熱を放熱する為に、前述、請求項1の電子回路基板を、放熱板2a−1と絶縁プリント配線板2a−2とを張り合わせ一体成形された構造で構成し、電子部品等の発熱体4を放熱板上に熱伝導接触の形態で搭載して、放熱板に電子部品からの熱を伝達する構造を有する電子回路基盤の組み立て構造。
【請求項3】 前述、請求項2の電子回路基板が筐体内に並列配置される場合において、各電子回路基板内に生じる電磁ノイズを放熱板を通して基板挿入溝との接触構造により筐体との間で電磁ループを形成して、他の電子回路基板への相互電磁干渉を防止することを特徴とする電子回路基板の組み立て構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−85879(P2001−85879A)
【公開日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−258405
【出願日】平成11年9月13日(1999.9.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】