説明

電子回路装置

【課題】GHz帯を超える高速信号に対応可能な電源供給構造を有する電子回路装置を提供する。
【解決手段】ドライバトランジスタ10は半導体基板1の表面に形成される。この半導体基板1上に、ドライバトランジスタ10に電源供給する電源グランドペア伝送線路20と、レシーバに信号伝送する信号グランドペア伝送線路30が形成される。そして、電源グランドペア伝送線路20はドライバトランジスタのドレイン層3、Pウエル2中のP層7にそれぞれ接続される。また、信号グランドペア伝送線路30は、ドライバトランジスタ10のソース層4、Pウエル2中のP層8にそれぞれ接続される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子回路装置に関し、特にGHz帯を超える高速信号に対応可能な電源供給構造を有する電子回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
GHz帯を超えるディジタル信号(アナログ信号を含む)を処理するトランジスタは100ps以下の立ち上がり時間及び立下り時間で、高速スイッチ動作をする。そのような高速スイッチ動作に対応する電気エネルギーが電源から供給されなければならない。
【0003】
この電源供給の問題を水道パイプの比喩を用いて端的に説明する。家庭用水道の蛇口のバルブを水が追従する速度より早く開いても、水はそれに応じて出てこない。水の力の伝達速度は1500m/sであり、バルブから蛇口までの長さが10mmとすると、6.7μsかかる。この時間より早くバルブが全開になっても水が蛇口から出るのは6.7μs後である。また、静止した水は重力慣性があり、15 00m/sまで速度を高めるにはある時間がかかるだけでなく、水の粘性による管壁抵抗でこのような高速にならない。慣性がある以上、吐き出された水の補給に対して、家庭用パイプに連結された幹線パイプは急激な変化に対応できずその水圧が低下する。
【0004】
しかし、幹線パイプは家庭用パイプの100倍もあれば、水圧低下は1/100となり、事実上無視できる。このような形を作ろうとしていたのが従来の電源供給のアプローチであった。すなわち、プレーングランドとプレーン電源を対向させて電源供給し、これができないときはバイパスキャパシタをその代用として用いる方法であった。
【0005】
ところで、電荷の移動による電流の伝達速度はある構造体の中の電磁波速度に等しい。その構造体の比誘電率が4であれば、その伝達速度は1.5×10m/sである。電流がその構造体中を流れ始める際、電圧低下は回路中の寄生インダクタンスLによって生じ、その電圧低下をvdropとすると、vdrop=Ldi/dtとなる。
【0006】
水の管壁抵抗は、電気の世界では多少概念が違う。高速変化をする電流では、それに対応する概念は、配線の特性インピーダンスである。配線の断面にかかわる直流抵抗は特性インピーダンスに比べ一般に2桁以上小さく問題にならない。しかし高速変化で起こる表皮効果によるこの直流抵抗はGHz帯で計算に入れなければならない。
【0007】
さて、以上から高速スイッチに対応する電源は慣性、すなわち寄生インダクタンスLが無く、またオンしたスイッチに十分電流が流れる電流容量がなければならない。すなわちスイッチのコンダクタンスGに相当する電流はImax=GVddということになる。これが許容最大電流であるため、負荷の状態には関係がないということになる。レシーバ端の電圧はこの電流と負荷で決まるものである。一般に負荷の大きさで電源がサポートされなければならないという概念は低速スイッチで有用であるが、高速スイッチでは最大電流Imaxという概念で設計するべきである。
【0008】
そこで、L=0、Imax=GVddを実現できる電源供給構造はどのようなものであろうか。バイパスキャパシタは、必ず寄生インダクタンスLを持つ。1005型で見ると寄生インダクタンスLは200pH位になる。そのバイパスキャパシタを接続するための電極部分の寄生インダクタンスである200pH程度がこれに付加される。つまり、寄生インダクタンスLは合計で400pH位になる。一方、0603型では、それぞれの寄生インダクタンスは120pHと150pHとなり、合計で270pHの寄生インダクタンスを有する。今後さらに小さなキャパシタが開発されたとしても電極部分の寄生インダクタンスを含めると合計で100pHより小さくすることは非常に困難である。
【0009】
次にこのバイパスキャパシタ系の電流Iは、バスドライバのGが0.02S、Vddを1Vとすると、5mAとなる。パルス周波数を今10GHzとすると、スリューレートは30ps程度となる。0603型の電圧低下はVdrop=270pH×5mA/30ps=45mVであり、最低の100pH構造でもVdrop=100pH×5mA/30ps=17mVとなる。電源につながっているドライバが8個とすると、電圧低下はそれぞれ0.36Vと0.136Vとなり、大きな問題となる。このようにバイパスキャパシタによる電源供給の改善は困難を極めることになる。
【0010】
なお、本発明に関連する先行技術文献として以下の特許文献がある。
【0011】
【特許文献1】特開2001−210959
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、GHz帯を超える高速信号に対応可能な電源供給構造を有する電子回路装置を提供するものである。また、これに加えて、電源グランドの揺らぎが電子回路装置全体に及ばない安定な電子回路装置を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明の電子回路装置の主な特徴構成は以下の通りである。第1は、電源グランドペア伝送線路とドライバトランジスタの接続に関するものであり、電源グランドペア伝送線路と、ドライバトランジスタと、このドライバトランジスタの出力信号によってドライブされる信号グランドペア伝送線路と、をそれぞれ同一のチップ上に設ける。そして、電源グランドペア伝送線路がドライバトランジスタのドレイン層と基板に直接接続している。
【0014】
また、第2は電源グランドペア伝送線路を多数に分岐した電源供給構造に関するもので、元電源グランドペア伝送線路から複数の分岐電源グランドペア伝送線路を分岐させる。分岐電源グランドペア伝送線路にはそれぞれドライバトランジスタを接続する。また、ドライバトランジスタの出力信号によってドライブされる信号グランドペア伝送線路と、この信号グランドペア伝送線路から伝送される信号を受信するレシーバ回路とを設けるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明の電子回路装置は、電源線とグランド線とをペア伝送線路で構成した、電源グランドペア伝送線路を用いているため、まずこの点について説明する。
【0016】
電源グランドをペア伝送線路とすると、特性インピーダンスZが定義できる。例えば、8つのドライバを電源グランドペア伝送線路に接続する場合を考える。そこで、最大電流Imax =5mA×8=40mAを確保する条件は、電源電圧Vdd=0.5Vとすると、Imax=40mA=Vdd/Z=0.5V/12.5Ωとなり、特性インピーダンスZ=12.5Ωである。ペア伝送線路だけで構成されていれば寄生インダクタンスLs=0である。この値は十分設計可能な範囲である。この電源グランドペア伝送線路は高速で対応できる電源を構成できる。本発明の構成はこの電源グランドペア伝送線路を前提としている。
【0017】
そこで、このような電源グランドペア伝送線路によって、なぜ高速信号に対応できるかを説明する。特性インピーダンスの線路はLCはしご回路が等価回路となる。LCはしご回路の区分は単位長さを区分としてこの単位長さを任意に設定できることになるため、LC回路でありながらLC共振点を持たない。周波数に応じてLCはしご回路の区分が自動的に行われる。これをモデル化すると図1のようになる。
【0018】
電圧と電流の正弦波が一致している正弦波を考える。正弦波の最大点、最小点が電荷の一番貯まっているところであり、キャパシタンス成分が主としてあると考える。そして、電流勾配の一番強いところにインダクタンス成分が作用すると考えると図1のように表現できる。かかるLCはしご回路では、同じ伝送線路構造が無限に続いていることから周波数に応じてこの区分を自動的に変えることができる。
【0019】
すなわち単位長さ当たりのキャパシタンスC/l、単位長さあたりのインダクタンスL/lとすると、単位長さあたりのインピーダンスZ/lは次の式のようになる。
【0020】
【数1】



【0021】
ここでωは角周波数、jは虚数、Z=jωL/l、Z=1/jωC/lである。ZとZは長さ方向に同時に存在するための証として、2乗平均という数学的取り扱いになる。jとωとlが全て打ち消される。Zは実数で周波数特性を持たず、長さ単位を持たないインピーダンスである。伝送線路が長くても短くても同じインピーダンスという物理量はパイプの間口を表現している。
【0022】
そしてその間口の奥行きは管壁抵抗がないパイプとなっており、パルスの水が流れれば、それは無限の長さでもそのままの形で伝達する。伝送線路の入り口から見たコンダクタンスが1/Zであり、このコンダクタンスに応じた電流が伝送線路に流れてしまえば、後は抵抗がないため無限遠にまで届くという概念である。
【0023】
モデリックにその物理を考えるとLとCに蓄えられた電荷エネルギが自由に区分されるLC区分を移動しながら電磁波速度で伝送線路内を進行するということになり、LとCの2乗平均である特性インピーダンスだけが見えている。重要なことは通常のSPICEで多用されるLCのLumpedモデルには合致しない。伝送線路はLとCは見えてこないが、Zだけを見ればよいということになる。
【0024】
ドライバトランジスタの電源グランド電極に直接電源グランドペア伝送線路が接続されているとき電流I(前述条件I=40mA=Vdd/Z=0.5V/12.5Ω、Z=12.5Ω)は電磁波速度で即応供給されることになる。前述のキャパシタで問題にした慣性力となる寄生インダクタンスLはない。
【0025】
電磁波速度は比誘電率が4であれば1.5×10m/sである。ドライバのゲートが形成される速度は電荷の移動度に支配される。シリコンでは飽和電界強度で約5×10m/sであり、電磁波速度に対して約3桁遅い。ゲート長がある寸法を持っていれば、その寸法の2桁以下の長さをもつソースまたはドレイン構造に伝送線路がつながっていればスイッチ速度より速い電源供給が可能である。
【0026】
次に、電源グランドペア伝送線路を用いた電子回路装置の具体的な構成について説明する。図2はドライバトランジスタに電源グランドペア伝送線路が接続されている理想な概念構造を示す斜視図である。また、図3はドライバトランジスタに電源グランドペア伝送線路が直接接続された断面構造を示す図である。このような電源供給構造はドライバトランジスタの電極が作る寄生インダクタンスLを最小にする構造である。
【0027】
まず、Nチャネル型MOSトランジスタから成るドライバトランジスタ10の構造について説明する。例えばシリコン基板等の半導体基板1の表面にPウエル2が形成されており、このPウエル2の中に、N型のドレイン層3及びN型のソース層4が所定の間隔を隔てて形成されている。ドレイン層3とソース層4の間にあるウエル2の表面がチャネル領域となる。
【0028】
また、このチャネル領域上にゲート絶縁膜5が形成され、そのゲート絶縁膜5上に接してゲート電極6が形成されている。ゲート電極6は、ポリシリコンゲートや、ポリシリコンとタングステン・シリサイド等の高融点金属シリサイドを積層してなるポリサイドゲートで形成されている。
【0029】
また、ドレイン層3から離れたPウエル2の表面にPウエル2よりも高濃度の不純物がドーピングされてなるP層7が形成されており、同様に、ソース層4から離れたPウエル2の表面にPウエル2よりも高濃度の不純物がドーピングされてなるP層8が形成されている。また、ドレイン層3とP層7との間には絶縁層9a、ソース層4とP層8との間には絶縁層9bが形成されている。絶縁層9a,9bは例えばLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)によって形成されている。
【0030】
次に、電源グランドペア伝送線路20は絶縁層21を挟んで互いに平行に配置された、Al等の金属層から成る電源線22とグランド線23から構成されている。グランド線23と半導体基板1との間には絶縁層24が形成されている。
【0031】
また、信号グランドペア伝送線路30は、絶縁層21を挟んで互いに平行に配置された、Al等の金属層から成る信号線31とグランド線32から構成されている。グランド線32と半導体基板1との間には絶縁層24が形成されている。
【0032】
電源グランドペア伝送線路20及び信号グランドペア伝送線路30は接続コラムの縦構造でも伝送線路構造を形成し、ドライバトランジスタ10の電極に接続されている。すなわち、電源グランドペア伝送線路20では、電源線22の接続コラム22aと、グランド線23の接続コラム23aについても縦方向にペア伝送線路を形成している。接続コラム22aは、ドライバトランジスタ10の電源電極であるドレイン層3に接続され、接続コラム23aはドライバトランジスタ10の基板グランド電極であるP層7に接続されている。なお、接続コラム22aは絶縁層21,24に設けられたビアホールに埋め込まれた金属等で形成され、接続コラム23aは絶縁層24に設けられたビアホールに埋め込まれた金属等で形成されている。
【0033】
また、信号グランドペア伝送線路30では、信号線31の接続コラム31aと、グランド線32の接続コラム32aについても縦方向にペア伝送線路を形成している。接続コラム31aはドライバトランジスタ10の出力電極であるソース層4に接続され、一方接続コラム32aはドライバトランジスタ10の基板グランド電極であるP層8に接続されている。なお、接続コラム31aは絶縁層21,24に設けられたビアホールに埋め込まれた金属等で形成され、接続コラム32aは絶縁層24に設けられたビアホールに埋め込まれた金属等で形成されている。
【0034】
上述の構造によれば寄生インダクタンスLs=0を達成することができる。また、接続コラム部分のドレイン電界やソース電界がゲート電極に影響しないように、電源グランドペア伝送線路20とゲート電極6との距離が、電源グランドペア伝送線路20の電源線22とグランド線23との距離より大きな距離を持つことが好ましい。同様に、信号グランドペア伝送線路30とゲート電極6との距離が、信号グランドペア伝送線路30の信号線31とグランド線32との距離より大きな距離を持つことが好ましい。これにより、ドレイン層3及びソース層4の拡散深さを浅くすることと併せて、近接効果を極力防止することができる。
【0035】
図4は上記構成の電源供給構造を用いたドライバ・レシーバ回路の回路図である。ドライバトランジスタ10がオンになると、電源グランドペア伝送線路20に蓄えられている電荷が信号グランドペア伝送線路30に引き抜かれる。慣性が0、即ち電磁波速度で電荷が信号グランドペア伝送線路30に供給され、次の段のレシーバトランジスタ40に向かう。レシーバトランジスタ40には、同様な構造をした、電源グランドペア伝送線路41及び信号グランドペア伝送線路42が接続されている。これは1電源1ドライバの例である。信号グランドペア伝送線路30のZ=100Ωとすると、水道パイプ論理から、電源グランドペア伝送線路20の特性インピーダンスZ0pが100Ω以上あれば十分である。Imax=Vdd/100Ωの最大電流が得られる。
【0036】
しかし、ランプドモデルから見てドライバトランジスタ10のオン抵抗Ronが500Ωであったとすると、信号電圧Vは、V=Vdd/(Ron+R)=0.17Vddとなり、Vdd=1VでV=0.17Vとなる。10GHzスイッチ動作のドライバトランジスタ10の信号レベルとしては許容範囲であろう。Ron=250ΩであればVdd=0.5Vで同様な振幅が得られる。ここで、Rは終端抵抗の抵抗値、Vddは電源電圧である。
【0037】
もし8ドライバを電源グランドペア伝送線路につなぐときはZ0p=100Ω/8=12.5Ωとすれば原理的な問題は解決する。ここで、伝送線路の各種の構造を示すと図5のようになる。(a)はペア配線を一平面上に配置したペアコプレーナ線路、(b)は3本の配線を一平面状に配置し、両端のペア配線を共通接続したガードコモンプレーナ線路、(c)はペア配線を上下に平行に重ねたスタックトペア線路、(d)は3本の配線を上下に平行に重ね、上下の配線を共通接続したガードスタックトペア線路である。いずれの構造についても、配線が均質な絶縁層の中に埋め込まれていることが重要で、このような構造ではs=d/2であっても隣接の影響はほとんどないという一見信じられない状態を示す。ここで、sは伝送線路間の距離、dは伝送線路の配線間距離である。
【0038】
ペアの進行波電磁波(TEM波)に対して、隣接は進行波の形をしていないためである。s>d/2が守られれば良い。伝送線路とはそれだけ有利なエネルギ伝達構造といえる。
【0039】
次に、複数ドライバの電源供給構造について説明する。簡単のため、3ドライバの電源を考える。図6は、3ドライバへの電源供給構造を示す等価回路図である。また、図7は、スタックトペア線路で作った3ドライバの電源グランドペア伝送線路の一例を示す図である。
【0040】
50は元電源グランドペア伝送線路、51,52,53は元電源グランドペア伝送線路50から分岐した、分岐電源グランドペア伝送線路である。55,56,57はそれぞれ分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53に接続されたドライバトランジスタである。58,59,60はそれぞれドライバトランジスタ55,56,57に接続された信号グランドペア伝送線路である。
【0041】
図6及び図7から分かるように、3ドライバが同時にオンし、電源電荷を引き抜くときはあたかも1ドライバが動作したように、3つの分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53の合流部の特性インピーダンスが整合しているため問題がない。ここで、元電源グランドペア伝送線路50の特性インピーダンスZ0ps=16.6Ω、各分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53の特性インピーダンスZ0ptはいずれも50Ωである。
【0042】
この特性インピーダンスの整合条件を一般化すれば、Z0ps=Z0pt/n となる。ここで、nは分岐電源グランドペア伝送線路の数である。それぞれの分岐電源グランドペア伝送線路は等しい特性インピーダンスZ0ptを有するものとする。この3ドライバの例では、n=3である。このとき、分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53の元電源グランドペア伝送線路50への合流部での電磁波のエネルギ反射率Γは次式で定義され、ゼロとなる。
【0043】
Γ=(Z0pt/n−Z0ps)/(Z0pt/n+Z0ps)=0
また、このエネルギ反射率Γが10%以下であれば、電源設計上、許容できる。そこで、この点を考慮すると、以下の条件が満たされていればよい。
【0044】
Z0ps≦Z0pt/n≦1.2Z0ps
すなわち、1.2Z0ps=Z0ptのとき、
Γ=(1.2Z0ps−Z0ps)/(1.2Z0ps+Z0ps)=0.2/2.2=
0.091となり、エネルギ反射率Γは10%以下となる。
【0045】
電磁波の様子をシミュレーションモデルで見ると図8のようになる。図8(A)はシミュレーションモデルを示す図、図8(B)は、シミュレーションモデルによる表面磁界の分布図である。磁界変化の大きいところが電流変化の大きいところと解釈できる。
【0046】
各ドライバトランジスタ55,56,57のオン抵抗Ron=200ΩであることからポートP1、P2、P3に到達した瞬間に信号線側は大きな反射をするため、これらのトランジスタがオンした瞬間から電磁波が両サイドに伝播するように見える。ここで、ポートP1、P2、P3はシミュレーション上の測定点である。進行波が元電源グランドペア伝送線路50へ合流した後も電磁波は、ほぼ素直に進行している様子がわかる。
【0047】
しかし、3つのドライバトランジスタ55,56,57がランダムに動作すると、合流部はそれぞれから見て特性インピーダンスが1/3に見えるため、引き抜き電磁進行波は67%のマイナス反射が起こる。図9は3つのドライバトランジスタ55,56,57の中、2つのトランジスタが先行してオンした場合の、図8と同様のシミュレーション結果を示す図である。この図9から、この反射電磁波が右2本の信号線側に伝わる様子が分かる。分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53が合流した元電源は中間の電圧になる。これ自身は問題ないが、分岐した電源グランドペア伝送線路を伝播する進行波の時間拡散が大きくなり、TEMモードが崩れる結果、カップリングが弱くなり、電磁放射や周囲に影響し共振を起こすという問題点となる。
【0048】
次に分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53より太い元電源グランドペア伝送線路50がより低い特性インピーダンスZ0ps(6.33Ω)を有しているという条件で、同様のシミュレーションを行った。この結果を図10に示す。太い元電源グランドペア伝送線路50の電磁波のTEM伝送モードはあまり崩れず、良好な電源状態であることを示している。しかし、3つのドライバトランジスタがオンするタイミングがずれたシミュレーション結果は、図11に示すように、図9よりさらに悪い状態となり、進行波とは言えない、乱れた電磁波状態となることがわかる。プレーン状の電源グランドの揺らぎは、この図11に示すようになっていて、TEM進行が全く崩れ、渦電流などの共振があちこちに発生する。一般によく言われている数100MHzより高いクロック周波数を持つボードは、EMIの大部分が電源グランドプレーン構造から出ているという概念がここにある。
【0049】
ここで、電気信号エネルギは電気力線、磁力線の発生と等価であり、その電磁界が電気信号エネルギの進行方向に直角な伝面方向にのみ広がっている進行波をTransverse Electromagnetic Wave(TEM波)と呼んでいる。これは、伝送線路に信号が流れるときの理想形であり、エネルギが外に漏れない形となる。図8のシミュレーション結果によればTEM波が保持されていることがわかる。電源グランドペア伝送線路の採用によりL=0が実現可能で理想電源に近づく。しかし、電源グランドペア伝送線路のインピーダンス不整合の問題、すなわち、TEM波を保持することが不可能であると考えられ今まで採用が見送られてきた。
【0050】
そこで、ドライバトランジスタがランダムなタイミングで動作し、数多くの分岐を有する電源供給構造において、進行波が乱れないようにするためには、伝送線路の特性インピーダンスができるだけ不整合と感じないネットワーク配線が適している。その一例をシミュレーションで示すと図12のようになる。
【0051】
これは、トランジスタの抵抗を200Ωから5Ωに変えて実質トランジスタのない線路でポートP1から電荷を引き抜くというシミュレーションである。第1次進行波の次に第2次進行波、さらには第3次進行波が発生するというように、時間に対して間延びする姿になるが、特性インピーダンス50Ωから3.5Ωまで変化してもTEM波が崩れないということになる。
【0052】
インピーダンス不整合をあまり起こさないネットワーク配線となっている50Ωの配線から出発して、75Ωを有する2本の配線に分岐する。50Ωの配線から見れば、この分岐した配線は37.5Ωに見えることになり、エネルギ反射率Γは−14.3%となる。(Γ=50−37.5/50+37.5) 次の分岐配線は55Ωを有し、進行波のエネルギ反射率Γは−15.3%となる。(Γ=75−55/75+50) そして、両端の2本の配線は拡大配線(35Ωまで小さくなる)で平行直線部に接続する。そして、この平行直線部は20Ωを有し、60°拡大角度を持って、3.5Ωを有する元電源グランドペア伝送線路50に合流する。この構造でわかることは電磁波進行が大きな反射がなく全体として進行し、反射エネルギも不連続部(配線の分岐部)までの配線長が同じであるため、戻り時間が同じであり、2次波、3次波として反射波もTEM波になっているということである。
【0053】
上述の配線構造概念を一般化すると不連続部の反射エネルギ比率を比較的小さくとるということであり、好ましくはエネルギ反射率Γは−20%以下である。このような形でネットワーク配線を組み、どんどん低特性インピーダンスへシフトする、どの経路を通っても合流層である元電源グランドペア伝送線路50へ到達する時間を同じにする、不連続部の反射時間をすべて同じにそろえるネットとするということである。
【0054】
5入力の好ましい一例を図13に示す。5本の分岐電源グランドペア伝送線路61a〜61eはそれぞれ不図示のドライバに接続されている。これらの分岐電源グランドペア伝送線路61a〜61eのそれぞれの端子から、元電源グランドペア伝送線路50に向けて、放射状に5本のペア伝送線路が広がってネットワーク配線62を構成しており、このネットワーク配線62が元電源グランドペア伝送線路50に合流している。
【0055】
分岐した5本の特性インピーダンスはドライバ側に接続されている特性インピーダンス(ドライバ接続部を50Ωとする)の5倍以下(5本分岐のため250Ω以下)から3.5倍以上(175Ω、マイナス反射−17.6%)が好ましい。この例では合流後の元電源グランドペア伝送線路50が有する特性インピーダンスは3Ωである。しかし、この特性インピーダンスは50Ω/5本=10Ωで十分であり、線幅は図13の約1/3の幅でよい。
【0056】
ここで、ネットワーク配線62には多くの交点があるが、それぞれの交点において特性インピーダンスが整合していることが好ましい。それぞれの交点では2本の配線が交わっているため、交点に向かって入ってくる入力配線2本と、交点から出ていく出力配線2本が存在することになる。これら2本の入力配線の平均の特性インピーダンスをZinとし、2本の出力配線の平均の特性インピーダンスをZoutとすると、Zin=Zoutであれば、エネルギ反射率Γ=(Zout−Zin)/(Zout+Zin)=0となる。また、エネルギ反射率Γが10%以下であることを許容すれば、(Zout−Zin)/(Zout+Zin)≦10% であればよいことになる。したがって、Zin≦Zout≦1.2Zinであれば、この条件を満たしている。Zinは上記の例でいえば、分岐電源グランドペア伝送線路側の配線の特性インピーダンスであり、Zoutは元電源グランドペア伝送線路50側の配線の特性インピーダンスである。これにより、ネットワーク配線62において、全体として進行波の極端な反射が起こらず、渦電流の発生が防止される。
【0057】
図13では、各分岐電源グランドペア伝送線路61a〜61eから分岐したネットワーク配線62の各配線が等長配線にはなっていないが、角度の浅い配線は曲率をつけて等長配線にすることは可能である。これを3合流構造で示すと図14のようになる。すなわち、3本の分岐電源グランドペア伝送線路63a,63b,63cのそれぞれの端子から、元電源グランドペア伝送線路50に向けて、放射状に3本の伝送線路が広がってネットワーク配線64を構成しており、このネットワーク配線64が元電源グランドペア伝送線路50に合流している。そして、ネットワーク配線64の各配線が等長配線となっている。なお、図13で合流部を前述のように1/3の幅にすれば、広がり角度が浅いため、直線接続でもほぼ等長配線とみなせる。
【0058】
さて更なる合流構造を示すと図15のようになる。この構造は図14の構造を更に発展させて、各3本の分岐電源グランドペア伝送線路63a,63b,63cに、更にネットワーク配線65a,65b,65cを接続したものである。これを繰り返していくことで自由な設計ができる。
【0059】
次に、太いペア伝送線路の折り曲げを行うには工夫を必要とする。角度の浅い折り曲げは分岐配線を使いそれらを等長にすることで比較的容易である。一例を示すと図16のようになる。電源グランドペア伝送線路66は6本の分岐配線67を使って折り曲げられている。これは折り曲げ角度が45°の例である。
【0060】
ペア伝送線路が直角に曲がるときは、図17に示す構造が一例となる。スタックトペア構造では2層配線ペアを使っているため、直角に曲がるときは、他の層の2層配線ペアに変わる。例えば、1層配線70,2層配線71のペアが、3層配線72,4層配線73のペアに変わる。ビアホール74は1層配線70と3層配線72を接続するためのビアホール、ビアホール75は2層配線71と4層配線73を接続するためのビアホールである。このとき、それぞれのビアホール74,75に対応して、ペアの相手の配線を逃げるアンチビアホール76を設ける必要がある。
【0061】
ビアホール74,75,76はピッチが細かいほどよいが、上記のようにプラスマイナス20%程度の反射を許すことから設計可能な範囲となる。ビアホールペアが千鳥配置となっているため、縦構造も伝送線路として保持されている。
【0062】
各ドライバトランジスタのオンするタイミングで、それぞれの反射波を含め無数のTEMモード進行波が進行する。注意すべきは分岐などの反射が進行波周波数と共振する区分とならないようにするべきである。分岐ネットの最大寸法が進行波周波数の1/4波長を越えなければよいことになる。
【0063】
また、本発明には進行する周波数の1/4波長未満の長さの分岐ネットを規定することも含まれている。反射共振しない条件の下、TEMモードで進行している限りにおいて、電磁エネルギの外部への漏洩はない。すなわち、電源グランドの電磁放射はないということになる。これで、EMIの問題が完全に解決したことになる。
【0064】
しかしながら非常に複雑な分岐を強要することは製造プロセスが複雑になるという欠点がある。そこで、電源グランドペア伝送線路の分岐部にキャパシタ伝送線路を、その上下線路の間に付加し、そこに流れる高周波電流の一部を直流抵抗で除去するという手段が考えられる。それを示すと図18のようになる。
【0065】
図18(A)は電源グランドペア伝送線路の分岐部を示す斜視図、図18(B)は元電源グランドペア伝送線路50の断面図である。図18(A)の例では、元電源グランドペア伝送線路50は、分岐した2本の分岐電源グランドペア伝送線路51,52だけを示し、もう1本の分岐電源グランドペア伝送線路53については図面を見易くするために省略されている。
【0066】
元電源グランドペア伝送線路50に乗っている衝撃波的な進行波の高周波成分エネルギを吸収するには熱エネルギに変える方法しかない。すなわち、直流抵抗を挿入するしかない。しかし直流電流を消費することはできない。そこで、図18にように、分岐する手前の元電源グランドペア伝送線路50の電源線50aとグランド線50bの間に、2つのキャパシタ電極81,82を隣接して挿入し、更にキャパシタ電極81,82間を抵抗83a,83bで接続している。すると、元電源グランドペア伝送線路50に乗っている衝撃波的な進行波の高周波成分は、キャパシタ電極81,82に流れ込む。この高周波も進行波であり、抵抗83a,83bに流れ込み、吸収される。キャパシタ電極81,82の両端は開放のため反射を繰り返すごとに終端抵抗に吸収されるため、ここを通る進行波の高調波成分の高周波ほど吸収されることになる。高周波成分のエネルギは短時間に凝集されているものであり、一般的に小さなエネルギである。
【0067】
進行波の反射を防止するため、図19に示すように、特性インピーダンスの整合を図るための構成が必要となる。すなわち、分岐電源グランドペア伝送線路51,52,53が合流した線路幅の合計より、元電源グランドペア伝送線路50の線路幅のほうを細くしなければならない。それはキャパシタ電極81,82を設けたために特性インピーダンスが小さくなっているためである。
【0068】
また、キャパシタ電極81,82が終わるところは特性インピーダンスが高くなるため、線路幅を広く取る必要がある。このため、図19に示すように、元電源グランドペア伝送線路50に、絞込み部84及び拡大部85を設けることが必要である。この絞込み部84及び拡大部85の長さは、進行波の立ち上がり時間trより伝送遅れが1/7の時間以下にする。図13〜図17で示したような整合伝送線路分岐合流より高調波が減少するため、この絞込み部84及び拡大部85の影響は少なくなる。
【0069】
上記絞込み部84及び拡大部85を設ける煩雑さを避けるために、図20のような構造が考えられる。図20(A)はチップ内にキャパシタ抵抗回路を設けた構造を示し、図20(B)はプリント配線板に外付けのキャパシタ抵抗回路を設けた構造を示し、図20(C)は図20(B)の平面図を示している。
【0070】
図20(A),(B),(C)において、元電源グランドペア伝送線路50は、分岐した2本の分岐電源グランドペア伝送線路51,52だけを示し、もう1本の分岐電源グランドペア伝送線路53については図面を見易くするために省略されている。
【0071】
図20(A)の構造において、分岐する手前の元電源グランドペア伝送線路50の電源線50aとグランド線50bの間に、2つのキャパシタ91,92が直列に挿入され、かつ2つのキャパシタ91,92を直列に接続する抵抗93が設けられている。更に詳しくは、元電源グランドペア伝送線路50の電源線50aから引き出された引き出し部97とキャパシタ92の一方の電極が縦コラム94によって接続され、一方、グランド線50bから引き出された引き出し部95とキャパシタ91の一方の電極が縦コラム96によって接続されている。キャパシタ91,92は縦構造となっているが、同じ層内に並列する構造であってもよい。
【0072】
また、図20(B)の構造において、分岐する手前の元電源グランドペア伝送線路50の電源線50aとグランド線50bの間に、2つの外付けのチップ・キャパシタ101,102が直列に挿入され、2つのチップ・キャパシタ101,102を直列に接続する外付け抵抗103が設けられている。
【0073】
図19及び図20のキャパシタの容量は伝送線路のその部分の長さ(図(C)の長さLに相当)当たりの容量の50倍以上であればよく、大きな容量は必要が無い。プリント配線板寸法で特性インピーダンスZ0p=10Ωとすると、線路幅は0.5mm、上下線路間の層厚みは30μmとなり、0603サイズのチップではL=約1mmのため、0.7pFとなる。1対のキャパシタの容量は35pFもあれば十分である。
【0074】
たとえば10GHzの進行波(クロック周波数と同じであるがそれより高い高調波を含む)とすると、インピーダンスZは1/(2π×10G×35p)=0.45Ωとなり、高周波はここでほとんど熱になって消費させる分岐回路を付加したことになる。周波数が1GHzオーダであればキャパシタ容量はLに対して500倍であればよい。チップ内のLは小さいため、チップ内キャパシタは必然的にさらに小さくてよいことになる。抵抗はZと等価であればよいが、瞬時発熱を避けるため、100倍程度の50Ωまでの範囲で調整が可能である。
【0075】
元電源グランドペア伝送線路50に乗っている衝撃波的な進行波の高周波成分エネルギを吸収するための、更なる良好な構造として、元電源グランドペア伝送線路50内の高周波進行波を方向性結合器110(方向性カプラー)で逃がし、その結合器の終端に整合抵抗を設けるという構造がある。その構造を図21に示す。図21(A)は、方向性結合器110が設けられた電源グランドペア伝送線路50を示す平面図、図21(B)は図21(A)のX−X線に沿った断面図である。
【0076】
分岐電源グランドペア伝送線路51,52に分岐する手前の元電源グランドペア伝送線路50に隣接して方向性結合器110が設けられている。方向性結合器110も元電源グランドペア伝送線路50と同じ構造のペア線路で構成され、ギャップgだけ、元電源グランドペア伝送線路50から離間して設けられている。元電源グランドペア伝送線路50及び方向性結合器110は絶縁層111内に埋設されている。また、方向性結合器110のペア線路間には終端抵抗112が接続されている。
【0077】
この構造によれば、高周波エネルギのみ方向性結合器110に逃げ、直流は元電源グランドペア伝送線路50から、分岐電源グランドペア伝送線路51,52に接続されたドライバに減衰無く通過する。本実施形態では、結合器の一例として擬似TEM線路を示した。この線路の導体厚みtに対してギャップgは同等かそれより小さければGHz周波数エネルギは方向性結合器110へ移動する。
【0078】
最後に、元電源グランドペア伝送線路50が元電源に到達する部分を図22を参照して説明する。バイパスキャパシタであるチップキャパシタ120が、元電源グランドペア伝送線路50の終端の、複数の端子に多数接続されている。その一部の電源線50c、グランド線50dが導出され、電解コンデンサ121などの大容量コンデンサを経て、不図示の電源回路につながっている。
【0079】
もちろん、チップキャパシタ120の変わりに埋め込みキャパシタでよく、LSIチップ内では半導体内に設けられた均質な接続端子を持つキャパシタ列でつながる方法をとる。チップキャパシタ120の容量は1nFから100nF程度のものが複数端面全体に配列されていて、全体として供給先の最大電流容量に見合うという従来概念で十分である。
【0080】
さて、上記構造において、電磁進行波を考えてみよう。元電源グランドペア伝送線路50に接続されたドライバトランジスタのスイッチング速度で電荷が引き抜かれ、そのドライバトランジスタのオン抵抗RonとVddで決まる電流I=Vdd/Ron=1V/200Ω=5mAが流れる。これが許容最大電流Imax=Vdd/Z0p=1V/50Ω=20mAより小さければどんなにトランジスタスイッチが早くても即応性がある。今ドライバトランジスタが30psでスイッチしたとすると、電流勾配di/dtはdi/dt=5mA/30ps=0.17×10A/sとなるため、前述の0603型のL=270pHも付いているチップキャパシタ120ではVdrop=46mV/ドライバとなり複数のドライバトランジスタを駆動することはできなかった。今終端抵抗50Ωが付いているレシーバ回路を駆動する電流の様子を模式的に図示すると、図23(A)のようになる。
【0081】
許容最大電流Imax以下という条件で、急峻な波形がそのまま元電源グランドペア伝送線路50に伝わるが、分岐拡大配線層で反射を繰り返すことでエネルギの時間拡大が行われ、図23(B)に示すように、tr=30psが10倍以上になることは簡単に想像できる。しかしこのような形になってもTEMモードは保持されていて太い配線で電荷分布も薄くなっていることになる。
【0082】
図22の元電源グランドペア伝送線路50の終端ではバイパスキャパシタである、5個のチップキャパシタ120で受けていることから、電流は1/5となり1個のチップキャパシタ120から見た電流勾配はdi/dt=1mA/300ps=3.3×10A/sということになる。
【0083】
ここでの電圧低下Vdrop=3.3×10A/s×270pH=0.9mVという低い値で問題にならない。多数のドライバトランジスタがランダムにこのような進行波を独立に終端に送ってきても、合成波はかえって平均化され、問題は小さくなる。リセットなどの64ビット同時切り替えのときも分岐ネットの多少の非対称性でスキューが起こり、10ビット同時切り替え程度の問題となる。上記計算例ではVdrop=0.9mV×10=9mVとなり問題が生じない。冒頭の計算例Ron=500Ωの例では64ビット供給エネルギがスキューなく元電源に達しても問題が起こらない。
【0084】
進行波が元電源の端面に達したとき、列を成して待ち受けているチップキャパシタ120の特性インピーダンスはどのように見えるのであろうか。実質非常に広い面積で電源グランドペアがカップリングしているため、その特性インピーダンスは非常に小さく数十から数百mΩオーダとなる。元電源に達する元電源グランドペア伝送線路50の特性インピーダンスは数Ωであり、ほぼマイナス全反射が起こる。
【0085】
すなわち、高周波エネルギに対してショート端であるように見える。電流は進行波を打ち消すように逆流し、電流進行波に応じた電圧低下は高電圧波形となって電圧低下を打ち消す。このような進行波がドライバに向かって進行し、元電源グランドペア伝送線路50のLCはしご回路の不足した電荷の蓄えを充電する働きとなる。このときもTEM波が乱されることなく、電荷エネルギは元電源グランドペア伝送線路50より外に出ない電磁波状態を保ちながら充電に供することができる。
【0086】
次に、他の電源供給構造について説明する。太い配線の折り曲げ設計は難しい。できるだけ合流は避けて細い配線のままの電源グランドペア伝送線路で通し、最後に太い配線で集合するという条件がよいことになる。図24はそのような電源供給構造を提供するフリップチップを示す図であり、図24(A)は、フリップチップのパターンレイアウト、図24(B)は部分拡大図を示している。
【0087】
チップ130上の隣接ペア線路131は電源線とグランド線が、隣接配置されてなり、外部4分割×4の取り出し構造と接続されている。図が煩雑になるため、合流のための配線は省略し、図24(B)に一部取り出して図示している。チップ130上の隣接ペア線路131は、図24(B)に示すように、コラム132でチップ130の内層配線から取り出されている(この内層配線は省略)。
【0088】
そして、隣接ペア線路131は、各バンプ133を通して、各分岐電源グランドペア伝送線路134に接続され、更に、この各分岐グランドペア伝送線路134が太い元電源グランドペア伝送線路135に合流されている。
【0089】
チップ130の周辺2列のバンプ136は信号線用であり、通常の配線が行われるが、ここではバンプ136のみを図示し配線は省略されている。チップ130上の隣接ペア線路131は図24(A)の下に示した断面図のように、アスペクト比の大きい対向面が大きくなっている配線構造をとっているが、これは一例を示しただけである。
【0090】
図24でわかるように、電源グランドペア伝送線路は、引き回しが可能であれば、できるだけ分離した状態で元電源の近くまで引き回すことが望ましい。チップから出た電源グランドペア伝送線路はすでにチップ内で分岐合流が行われており、進行波電磁エネルギの時間分散がなされているか、分岐キャパシタでエネルギを吸収されている。図19、図20、図21は電源グランド進行波をここで受け止めたことになり、以降の接続は直流的な接続でよく図22のようにある場所一本の引き出しでよい。ただし、平均電流が十分流れる導体断面積でなければならない。
【0091】
次に、チップ130内の回路と配線について説明する。すでにNチャネル型のドライバトランジスタによるドライバ回路を示したが、図25のようにCMOSドライバや他の回路でも同様に電源グランドペア伝送線路の接続部だけを考えればよいということになる。
【0092】
図25は、ドライバ・レシーバ回路の回路例を示している。同図において、CMOSドライバ140はPチャネル型MOSトランジスタ141とNチャネル型MOSトランジスタ142からなるCMOSインバータ回路であり、電源グランドペア伝送線路143がその電源・グランド端子に接続されている。
【0093】
また、CMOSドライバ140の出力・グランド端子には信号グランドペア伝送線路144が接続されている。信号グランドペア伝送線路144の信号線とCMOSドライバ140の出力端子の間にはダンピング抵抗145が接続されている。
【0094】
また、信号グランドペア伝送線路144には終端抵抗146が接続されている。信号グランドペア伝送線路144は差動レシーバ150の差動入力トランジスタ151,152のゲートに接続されている。差動レシーバ150には他の電源グランドペア伝送線路153から電源が供給されている。
【0095】
この図25のドライバ・レシーバ回路は、チップ130内にあっても比較的長い信号線を有するもので、信号周波数成分の1/4波長を越える可能性がある。そのため、反射共振をおさえること、RC遅延を防止することから、10GHzディジタル信号レベルでは信号線は伝送線路にして、伝送線路整合抵抗をつけなければならない。
【0096】
1つの方法として、差動レシーバ150の端の直前に信号グランドペア伝送線路144と整合した終端抵抗146を付加して、信号前エネルギを吸収し、熱として放散することで信号反射を0に抑える。もし終端抵抗146を付加しない構造であれば、CMOSドライバ140に接続するダンピング抵抗145とCMOSドライバ140のオン抵抗Ronの直列抵抗が信号グランドペア伝送線路144の特性インピーダンスと等しくすれば良い。
【0097】
このとき、差動レシーバ150の端は全反射(レシーバゲートは非常に小さな容量のため実質的な全反射とする)するため、2倍の電圧となり、さらに全ての信号が全反射するため、電源グランドペア伝送線路143へエネルギを返却できる利点がある。
【0098】
このエネルギ返却は通常の電源グランド接続では、電源グランドの複雑な揺らぎを増長させることになるが、このドライバ・レシーバ回路ではTEM進行波になるだけで問題とならない。どの程度長い配線をこのような回路にする必要かを考えてみる。ここで長い配線すなわち1/4波長の計算を表1に示す。電磁波速度ν別に表している。ν=c/√μεで表される。ここでcは真空中の光の速度、μは線路空間を囲む絶縁材料の比透磁率、εは同様比誘電率である。
【0099】
【表1】



【0100】
次にパルス波形の性質を図26に従って説明する。パルスは正弦波の合成で出来ている。基本正弦波に3倍の周波数を持つ25%前後の正弦波、5倍の10%程度の正弦波、数%の7倍高調波、1%前後の9倍高調波でパルス波形が概略成り立っている。スリューレートが高いほど高次高調波の成分が大きくなる。
【0101】
一般論として小さなエネルギの高調波でも共振条件になるとエネルギが蓄積され、無視できない大きさとなることから、1GHzのパルスを取り扱うときは10GHz(パルスクロック周波数の10倍)正弦波の考慮が必要といわれている。表1はその観点で見ると2列目の相当正弦波を基準にして考えて左1列目のクロック周波数としている。
【0102】
1GHzクロック周波数では配線長さはSiO内で5mmとなる。2002.2のSymposium on VLSI CircuitのIntelの論文(D. Deleganes, et al, “Designing a 3GHz, 130nm, Pentium 4 Processor,” 2002 Symposium on VLSI Circuit Digest of Technical Papers, CDROM0−7803−7310−3/02, 2002.2)はチップ内配線を1.6mm以内に制限した設計となっている。これを裏づける資料である。( Pentiumはインテルコーポレーションの登録商標である。)10GHzのパルスでは0.5mmということになる。10GHzでは100GHzのRF回路と同等の周波数を取り扱って、単独正弦波又は狭帯域正弦波を取り扱うRF設計より合成波を取り扱う設計は格段に難しいということになる。
【0103】
以上の前提条件でチップ上の配線の設計が制限されなければならない。従来のCADツールで行える一般の集中定数回路で設計した回路ブロック(機能ブロック)の最大配線長は0.5mm以下にする必要があり、機能ブロックの規模はこの配線長で制限される。回路ブロック間をつなぐ配線(これをグローバル配線と呼ぶ)は全て図4や図25の伝送線路構造としなければならない。全ては配線から始まった設計としなければならない。
【0104】
さて、従来設計の集中定数回路ブロックの電源グランドは従来設計でよいが、その集中定数回路ブロックから出てくる電源グランド線は本発明の構造を適用する。すなわち、電源グランドペア伝送線路とし、特性インピーダンスを考慮しながら拡大合流させていく。グローバル配線に適用するドライバ・レシーバブロックの電源系はすべて本特許の構造を適用し、トランジスタのソース、またはドレインに直接接続されていることは言うまでもない。
【0105】
特にクロック分配回路は信号線の対称構造伝送線路化(一例:ツリー構造)だけでなく電源グランドペア伝送線路も対称構造とし、クロックスキューを最小限にすることを含むものとする。
【0106】
チップ内で合流した太い配線を終わりにして直流接続としたいときは図22のように太い、電源グランドペア伝送線路50の配線端面にチップキャパシタ120を散りばめて接続する。このチップキャパシタ120はチップ内に形成されたpn接合キャパシタでもよいが、好ましくは金属対向電極構造のキャパシタが望ましい。その理由はすでに説明したようにpn接続キャパシタ内のキャリア速度が遅いためである。
【0107】
以上、配線構造について詳細に説明したが、ドライバトランジスタ10の電磁波進行を円滑にすることが、上述した配線構造と組み合わせ、高速信号に対応する電源供給構造を得る上で重要である。そこで、図3のドライバトランジスタ10の構造を更に改良した、ドライバトランジスタ10Aの構造について図27を参照して説明する。
【0108】
図3のドライバトランジスタ10の構造では、電源グランドペア伝送線路20のグランド線23はドレイン側のP層7にコンタクトしており、信号グランドペア伝送線路30のグランド線32がソース側のP層8にコンタクトしている。この点は同じであるが、図27のドライバトランジスタ10Aについては、P層7とP層8とが、ドレイン層3からソース層4に至る領域下に設けられたP層160を介して互いに連結されている点が異なっている。P層160はPウエル2より高不純物濃度の拡散層で形成され、Pウエル2に比して低抵抗である。
【0109】
このドライバトランジスタの基本原理を示したのが図28である。電源グランドペア伝送線路20のグランド線23と信号グランドペア伝送線路30のグランド線32が低抵抗のP層7,8,160で連結されているので、ドライバトランジスタ10Aがオンになり、チャネル領域が反転して電流路が形成されると、全ての部分でペア伝送線路構造が保たれる。
【0110】
構造上の特性インピーダンスはソース側の伝送線路と整合すれば理想であるが、必ずしも整合条件は不要である。非常に短い距離のためである。また、図27のドレイン層3及びソース層4と、P層160との間の距離dは0でもよい。また、P層160下の半導体は不要のため、絶縁物層構造、すなわちSOI(Silicon On Insulator)構造としてよい。ドレイン層3及びソース層4下のpn接合容量を排除するため、ドレイン層3及びソース層4と、P層160との間の層を絶縁物で構成してもよい。さらにP層7,8,160は全て金属で置き換えてもよい。これにより、電源グランドペア伝送線路20のグランド線23と信号グランドペア伝送線路30のグランド線32は金属で一体化される。要は、図28の基本原理を守る構造を提案するものである。
【0111】
図29はSOI構造のCMOSドライバ140を示す断面図である。このCMOSドライバ140の回路は図25に示したものである。絶縁基板170上にPチャネル型MOSトランジスタ141及びNチャネル型MOSトランジスタ142が形成されており、この絶縁基板170内に、電源グランドペア伝送線路143のグランド線と信号グランドペア伝送線路147のグランド配線を接続するAl層171が形成されている。
【0112】
この構造において、dはソース層/ドレイン層の拡散層深さ程度の厚みが必要であるが、pn接合容量が生じてSOIの利点がなくなるため、d層は絶縁物とするほうが望ましい。また、Nチャネル型MOSトランジスタ142がオンのとき、出力負荷側に終端抵抗146を付加したのでは全く電荷が動かない、すなわち、Nチャネル型MOSトランジスタ142が不要な回路となることから、CMOSとしての利点を生かすためにはCMOSドライバ側にダンピング抵抗145を設ける方がより良い設計といえる。
【0113】
さらに付け加えると、入力信号もペア伝送線路172で供給することにより、そのグランド線は出力系のグランドに落ちることで、ゲートチャージ、ゲート下チャネル形成が起こり、その下のグランドレベルがバランスするため、ドライバトランジスタ10Aのチャネル形成が促進されるという利点がある。
【0114】
【発明の効果】
本発明の電子回路装置によれば、GHz帯を超える高速信号に対応可能な電源供給構造を有する電子回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】伝送線路のLCはしご等価回路を示す図である。
【図2】ドライバトランジスタに電源グランドペア伝送線路が接続されている構造を示す斜視図である。
【図3】図2の断面構造を示す図である。
【図4】ドライバ・レシーバ回路の回路図である。
【図5】伝送線路の各種の構造を示す図である。
【図6】3ドライバへの電源供給構造を示す等価回路図である。
【図7】スタックトペア線路で作った3ドライバの電源グランドペア伝送線路の一例を示す図である。
【図8】電源グランドペア伝送線路合流点の電磁波進行シミュレーションを示す図である。
【図9】3ドライバの1つが先行動作したときのシミュレーション結果を示す図である。
【図10】電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスZ0psが小さい場合のシミュレーションを示す図である。
【図11】ドライバトランジスタのオンするタイミングがずれた場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】ネットワーク分岐配線のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】ネットワーク分岐配線の平面図である。
【図14】ネットワーク分岐配線の平面図である。
【図15】ネットワーク分岐配線の平面図である。
【図16】ネットワーク分岐配線の平面図である。
【図17】電源グランドペア伝送線路の90°折り曲げ構造を示す図である。
【図18】高周波エネルギを吸収する抵抗キャパシタ回路を示す概念図である。
【図19】高周波エネルギを吸収する抵抗キャパシタ回路を示す平面図である。
【図20】高周波エネルギを吸収する他の抵抗キャパシタ回路を示す概念図である。
【図21】方向性結合器を有する電源グランドペア伝送線路を示す図である。
【図22】元電源グランドペア伝送線路の終端を示す構造例を示す図である。
【図23】ドライバの電流波形と電源グランドペア伝送線路を経た電流波形を示す図である。
【図24】フリップチップにおける電源グランド接続構造の一例を示す図である。
【図25】ドライバ・レシーバ回路の回路図である。
【図26】パルス波形の分解(Fourier級数)の説明図である。
【図27】ドライバトランジスタ構造の断面図である。
【図28】図27の基本原理を示す回路モデル図である。
【図29】伝送線路構造で構成したCMOSドライバの断面図である。
【符号の説明】
1 半導体基板 2 Pウエル 3 ドレイン層
4 ソース層 5 ゲート絶縁膜 6 ゲート電極
7,8 P層 9a,9b 絶縁層
10,10a ドライバトランジスタ 20 電源グランドペア伝送線路
21 絶縁層 22 電源線 22a,23a 接続コラム
23 グランド線 24 絶縁層 30 信号グランドペア伝送線路
31 信号線 31a,32a 接続コラム 32 グランド線
40 レシーバトランジスタ 41 電源グランドペア伝送線路
42 信号グランドペア伝送線路 50 元電源グランドペア伝送線路
50a,50c 電源線 50b,50d グランド線
51,52,53 分岐電源グランドペア伝送線路
55,56,57 ドライバトランジスタ 58,59,60 信号グランド
ペア伝送線路
61a〜61e 分岐電源グランドペア伝送線路 62 ネットワーク配線
63a,63b,63c 分岐電源グランドペア伝送線路
64,65a,65b,65c ネットワーク配線
66 電源グランドペア伝送線路 67 分岐配線 70 1層配線
71 2層配線 72 3層配線 73 4層配線
74,75 ビアホール 76 アンチビアホール
81,82 キャパシタ電極 83a,83b 抵抗
84 絞込み部 85 拡大部 91,92 キャパシタ
93 抵抗 94,96 縦コラム 95,97 引き出し部
101,102 チップ・キャパシタ 103 抵抗
110 方向性結合器 111 絶縁層 112 終端抵抗
120 チップキャパシタ 121 電解コンデンサ
130 チップ 131 隣接ペア線路 132 コラム
133 バンプ 134 分岐電源グランドペア伝送線路
135 元電源グランドペア伝送線路 136 バンプ
140 CMOSドライバ 141 Pチャネル型MOSトランジスタ
142 Nチャネル型MOSトランジスタ
143 電源グランドペア伝送線路 144 信号グランドペア伝送線路
145 ダンピング抵抗 146 終端抵抗
147 信号グランドペア伝送線路 150 作動レシーバ
151,152 作動入力トランジスタ 153 電源グランドペア伝送線路
160 P層 170 絶縁基板 171 Al層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源線と第1のグランド線とを絶縁層を介して対向配置して成る電源グランドペア伝送線路と、ドライバトランジスタと、このドライバトランジスタの出力信号によってドライブされ、信号線と第2のグランド線とを絶縁層を介して対向配置して成る信号グランドペア伝送線路と、を具備し、前記電源グランドペア伝送線路の電源線が前記ドライバトランジスタのドレイン層に直接接続されると共に、前記電源グランドペア伝送線路の第1のグランド線が前記ドライバトランジスタの基板に接続されていることを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記信号グランドペア伝送線路の配線長が前記ドライバトランジスタの動作パルス周波数の10倍高調波の1/4波長より長いことを特徴とする請求項1記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記信号グランドペア伝送線路の信号線が前記ドライバトランジスタのソース層に直接接続されると共に、前記信号グランドペア伝送線路の第2のグランド線が前記ドライバトランジスタの基板に直接接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスが前記信号グランドペア伝送線路の特性インピーダンスより大きいか、若しくは等しいことを特徴とする請求項3記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記電源グランドペア伝送線路の第1のグランド線と前記前記信号グランドペア伝送線路の第2のグランド線が前記ドライバトランジスタの基板に形成された低抵抗層を通して連結されていることを特徴とする請求項1記載の電子回路装置。
【請求項6】
元電源グランドペア伝送線路と、この元電源グランドペア伝送線路から分岐した複数の分岐電源グランドペア伝送線路と、該分岐電源グランドペア伝送線路にそれぞれ接続されたドライバトランジスタと、前記ドライバトランジスタの出力信号によってドライブされる信号グランドペア伝送線路と、該信号グランドペア伝送線路から伝送される信号を受信するレシーバ回路と、を具備することを特徴とする電子回路装置。
【請求項7】
前記分岐電源グランドペア伝送線路の数をnとし、前記元電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスをZ0psとし、前記分岐電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスをZ0ptとすると、Z0ps≦Z0pt/n≦1.2Z0ps なる条件を満たすことを特徴とする請求項6記載の電子回路装置。
【請求項8】
前記複数の分岐電源グランドペア伝送線路は、それぞれ複数の配線に放射状に分岐してネットワーク配線を構成し、該ネットワーク配線が前記元電源グランドペア伝送線路に接続されていることを特徴とする請求項6記載の電子回路装置。
【請求項9】
前記ネットワーク配線を構成する全ての配線が等長配線であることを特徴とする請求項8記載の電子回路装置。
【請求項10】
前記元電源グランドペア伝送線路の終端に複数のバイパスキャパシタが接続され、かつ該終端から1つの電源グランドペア伝送線路が取り出され、該電源グランドペア伝送線路の電源線とグランド線の間にコンデンサが接続され、更に該電源グランドペア伝送線路は電源回路に接続されていることを特徴とする請求項6,7,8,9のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項11】
前記元電源グランドペア伝送線路の分岐部の近傍において、該分岐電源グランドペア伝送線路の電源線とグランド線との間に、一対のキャパシタと該一対のキャパシタを接続する抵抗素子とから成るキャパシタ抵抗回路を設けたことを特徴とする請求項6,7,8,9のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項12】
前記一対のキャパシタは、前記キャパシタ抵抗回路の前記元電源グランドペア伝送線路に伝送方向に沿った寸法と同じ寸法の前記元電源グランドペア伝送線路の部分が有する容量値の50倍以上の容量値を有することを特徴とする請求項11記載の電子回路装置。
【請求項13】
前記元電源グランドペア伝送線路の分岐部の近傍において、該分岐電源グランドペア伝送線路の電源線とグランド線との間に挿入された一対のキャパシタ電極と、該一対のキャパシタ電極の間を接続する抵抗素子とから成るキャパシタ抵抗回路を設けたことを特徴とする請求項6,7,8,9のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項14】
前記一対のキャパシタ電極と前記元電源グランドペア伝送線路との間で形成されるキャパシタは、前記キャパシタ抵抗回路の前記元電源グランドペア伝送線路に伝送方向に沿った寸法と同じ寸法の前記元電源グランドペア伝送線路の部分が有する容量値の50倍以上の容量値を有することを特徴とする請求項13記載の電子回路装置。
【請求項15】
前記元電源グランドペア伝送線路の分岐点の近傍に、該元電源グランドペア伝送線路に隣接して方向性結合器が配置され、該方向性結合器が終端抵抗で結合されていることを特徴とする請求項6,7,8,9のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項16】
前記元電源グランドペア伝送線路と前記方向性結合器のギャップ寸法は、前記方向性結合器を構成する導体の厚さ以下であることを特徴とする請求項15記載の電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2004−259722(P2004−259722A)
【公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−45422(P2003−45422)
【出願日】平成15年2月24日(2003.2.24)
【出願人】(598042633)
【出願人】(598168807)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】