説明

電子基板の製造方法

【課題】電子部品と配線とを安定して接続させる。
【解決手段】電子部品20、21の第1面に配置された第1配線接続部20b、21bに第1導電配線51A、51Bが接続され、第1面と対向する第2面の第2配線接続部20a、21aに第2導電配線15が接続される。基材の表面に第2配線接続部20a、21aを当接させて電子部品20、21を載置する工程と、基材の表面上の電子部品の周囲に絶縁材料で形成された絶縁層52、60Aを成膜する工程と、絶縁層52、60A上に第1配線接続部20b、21bに接続する第1導電配線51A、51Bを形成する工程と、電子部品から基材を剥離するとともに、電子部品及び絶縁層を反転する工程と基材が剥離されて露出した絶縁層60A上に第2配線接続部20a、21aに接続する第2導電配線15を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板(配線基板)上に実装される電子部品の小型化が進んでおり、配線基板の細密化が要求されている。このような、細密な配線構造を形成する方法として、液滴吐出法を用いて、導電性パターンを絶縁膜中に埋め込んだ状態に形成する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記回路基板が搭載される、例えば携帯電話等の電子機器についても、近年、小型化が進行している。これに伴って、携帯電話は、回路基板(配線基板)上における電子部品の実装スペースが制限されてしまう。そのため、電子部品をより高密度で実装する方法の提供が望まれている。
そこで、基板上にチップ部品を固定し、該チップ部品の周囲に、液滴吐出法を用いて絶縁材料を塗布し、絶縁膜中にチップ部品を埋め込み、該チップ部品に接続する配線を形成することで、チップ部品が高密度で実装された配線基板が考えられる。
【特許文献1】特開2005−327985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
高密度実装を図って、電子部品の上面のみならず、下面に設けられた配線接続部において配線と接続する場合、配線上に電子部品を載置することになる。
ところが、この配線が非硬化状態である場合には、配線を押しつぶしながら電子部品を載置することになるため、配線が断線してしまう可能性がある。
一方、配線が硬化状態である場合には、配線上に配線接続部を当接させて電子部品を載置した場合、配線と非配線部とで段差があることから電子部品が傾いた状態で配線と当接するため、安定した接続が得られない可能性がある。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、電子部品と配線とを安定して接続できる電子基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の電子基板の製造方法は、電子部品の第1面に配置された第1配線接続部に第1導電配線が接続され、前記第1面と対向する第2面の第2配線接続部に第2導電配線が接続される電子基板の製造方法であって、基材の表面に前記第2配線接続部を当接させて前記電子部品を載置する工程と、前記基材の表面上の前記電子部品の周囲に絶縁材料で形成された絶縁層を成膜する工程と、前記絶縁層上に前記第1配線接続部に接続する前記第1導電配線を形成する工程と、前記電子部品から前記基材を剥離するとともに、前記電子部品及び前記絶縁層を反転する工程と前記基材が剥離されて露出した前記絶縁層上に前記第2配線接続部に接続する前記第2導電配線を形成する工程とを有することを特徴とするものである。
従って、本発明の電子基板の製造方法では、基材上に載置された電子部品の第1配線接続部と絶縁層に跨る第1導電配線を上方から形成することができる。また、本発明では、基材が剥離されて反転された電子部品の第2配線接続部と絶縁層に跨る第2導電配線を上方から形成することができる。
そのため、本発明では、導電配線上に電子部品を載置する場合のように、導電配線を押しつぶしたり、傾いた状態で電子部品を載置することがなくなり、電子部品の対向する両面において、導電配線と配線接続部とを安定して接続することが可能になる。
【0007】
また、本発明では、前記絶縁層を半硬化状態で成膜する工程と、前記第1導電配線と前記第2導電配線との少なくとも一方を覆う第2絶縁層を半硬化状態で成膜する工程と、半硬化状態の前記絶縁層及び第2絶縁層を一括して硬化させる工程とを有する手順も好適に採用できる。
従って、本発明の電子基板の製造方法では、半硬化状態の絶縁層上に容易に導電配線を形成できるとともに、絶縁層及び第2絶縁層を加熱した際に、双方の層が同時に硬化するため、絶縁層の間に応力を残さない状態とすることができる。
【0008】
上記において、前記絶縁材料としては光硬化性及び熱硬化性を有する構成を好適に採用できる。
従って、本発明では、硬化するエネルギ量よりも小さなエネルギ量の光で絶縁層及び第2絶縁層を照射することにより、絶縁層及び第2絶縁層を容易に半硬化状態にすることができる。また、これら絶縁層及び第2絶縁層を一括して加熱することにより、容易に硬化させることが可能になる。なお、
本発明における半硬化とは、絶縁材料に含まれる材料の状態が、吐出時の状態と、完全な硬化状態との間の状態になることを意味する。吐出時の状態とは、絶縁材料が液滴として吐出されうる粘性を有している状態である。
【0009】
また、本発明では、前記第2絶縁層上に、前記第1導電配線と前記第2導電配線との少なくとも一方に電気的に接続される第3導電配線を形成する工程と、前記絶縁材料で形成され前記第3導電配線を覆う第3絶縁層を形成する工程とを有する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、導電配線が絶縁層を挟んで複数層に亘って形成され、電子部品と導電配線とが安定した状態で接続され、また亀裂が生じない高品質の多層配線基板を得ることができる。
【0010】
また、上記における前記基材の表面としては、粘着性を有することが好ましい。
従って、本発明では、基材の表面に載置した電子部品が移動することなく、所定位置に容易に位置決めすることが可能になる。
【0011】
また、本発明では、前記所定形状の貫通孔を有するフレームの一面に、前記貫通孔を覆って前記基材を貼設する工程を有し、前記貫通孔内に露出する前記基材の表面に前記電子部品を載置する手順も好適に採用できる。
従って、本発明の電子基板の製造方法では、電子部品の周囲に塗布した絶縁層及び樹脂層の外形形状を貫通孔の所定形状とすることができ、所望形状の電子基板を容易に製造することが可能になる。
【0012】
また、上記の場合、前記貫通孔としては、テーパ状に形成される構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、基材を剥離した後に、電子基板を押し出すことにより、製造された電子基板をフレームの貫通孔から容易に抜き出す(取り出す)ことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の電子基板の製造方法の実施の形態を、図1ないし図8を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
(液滴吐出装置)
まず、本発明に係る多層配線基板の製造方法において用いられる液滴吐出装置について図1及び図2を参照して説明する。
図1に示す液滴吐出装置1は、基本的にはインクジェット装置である。より具体的には、液滴吐出装置1は、液状材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、グランドステージGSと、吐出ヘッド部(液滴吐出ヘッド)103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、光照射装置140と、支持部104aと、を備えている。
【0015】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図2参照)を保持している。このヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状材料111の液滴を吐出する。なお、吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、このため、タンク101からヘッド114に液状材料111が供給される。
ステージ106は基板(後述)を固定するための平面を提供している。さらにステージ106は、吸引力を用いて基板の位置を固定する機能も有する。
【0016】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施例では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0017】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0018】
上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、基板はステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、基板に対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、またはノズル118(図2参照)は、基板に対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0019】
制御部112は、液状材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。なお、吐出データとは、基板上に、液状材料111を所定パターンで付与するためのデータである。本実施例では、吐出データはビットマップデータの形態を有している。
【0020】
上記構成を有する液滴吐出装置1は、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118(図2参照)を基板に対して相対移動させるとともに、被吐出部に向けてノズル118から液状材料111を吐出する。なお、液滴吐出装置1によるヘッド114の相対移動と、ヘッド114からの液状材料111の吐出と、をまとめて「塗布走査」または「吐出走査」と表記することもある。
光照射装置140は、基板に付与された液状材料111に紫外光を照射する装置である。光照射装置140の紫外光の照射のON・OFFは制御部112によって制御される。
【0021】
図2(a)および(b)に示すように、液滴吐出装置1におけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、振動板126と、複数のノズル118と、複数のノズル118のそれぞれの開口を規定するノズルプレート128と、液たまり129と、複数の隔壁122と、複数のキャビティ120と、複数の振動子124と、を備えている。
【0022】
液たまり129は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状材料111が常に充填される。また、複数の隔壁122は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置している。
キャビティ120は、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122と、によって囲まれた部分である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状材料111が供給される。なお、本実施例では、ノズル118の直径は、例えば約27μmである。
【0023】
さて、複数の振動子124のそれぞれは、それぞれのキャビティ120に対応するように振動板126上に位置する。複数の振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A,124Bと、を含む。制御部112が、この一対の電極124A,124Bの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から液状材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される材料の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状材料111の液滴が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
なお、吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0024】
(多層配線基板)
続いて、本発明に係る電子基板の製造法を適用して製造される多層配線基板について図3を参照して説明する。
図3に示す多層配線基板(電子基板)500は、複数の電子部品、導電配線、絶縁層等が積層して搭載されたものである。
以下、詳細に説明する。
【0025】
図3に示す多層配線基板500は、絶縁層50上にチップ部品(電子部品)20、21が絶縁層52及び60Aに埋め込まれた状態で設けられ、この絶縁層60A上に積層された絶縁層60BにICチップ(電子部品)70が絶縁層62に埋め込まれた状態で設けられ、さらに絶縁層62上に積層された絶縁層64上にチップ部品(電子部品)24、25が搭載される構成となっている。
【0026】
絶縁層50、52、60A、60B、62、64は、いずれも上述した液滴吐出装置1による液滴吐出方式を用いて絶縁性インク(絶縁材料)を塗布し、該絶縁性インクを硬化させることで形成されたものである。この絶縁性インクとしては、ここでは光エネルギを付与した際に硬化する光硬化性、及び熱エネルギを付与した際に硬化する熱硬化性を有する材料として、アクリル系の感光性樹脂(より詳細には、光硬化性を有するアクリル系樹脂、及び熱硬化性を有するエポキシ系樹脂)を含んでいる。この光硬化性材料は、溶剤と、溶剤に溶解した樹脂とを含有してよい。ここで、この場合の光硬化性材料は、それ自体が感光して重合度を上げる樹脂を含有してもよいし、あるいは、樹脂と、その樹脂の硬化を開始させる光重合開始剤とを含有していてもよい。また、光硬化性材料として、光重合して不溶の絶縁樹脂を生じるモノマーと、そのモノマーの光重合を開始させる光重合開始剤とを含有してもよい。ただしこの場合の光硬化性材料は、モノマー自体が光官能基を有していれば、光重合開始剤を含有しなくてもよい。
【0027】
チップ部品20は、図3で下方に位置する第1面30bに電極部(第1配線接続部)20bを有し、図3で上方に位置し第1面30bと対向する(逆側の)第2面30aに電極部(第2配線接続部)20aを有している。同様に、チップ部品21は、図3で下方に位置する第1面31bに電極部(第1配線接続部)21bを有し、図3で上方に位置し第1面31bと対向する(逆側の)第2面31aに電極部(第2配線接続部)21aを有している。
【0028】
前記チップ部品20、21としては、抵抗、コンデンサー、ICチップ等が挙げられ、本実施形態では、チップ部品20として抵抗を用い、チップ部品21としてコンデンサーを用いた。
【0029】
電極部20bには、絶縁層(第2絶縁層)50に覆われて絶縁層52(の図3中、下面)上に形成された配線(第1導電配線)51Aが接続されており、電極部21bには、絶縁層50に覆われて絶縁層52(の図3中、下面)上に形成された配線(第1導電配線)51Bが接続されている。配線51Aは、絶縁層52に覆われて絶縁層60A(の図3中、下面)上に形成された配線53Aに、絶縁層52に形成されたスルーホールH6を介して接続されている。この配線53Aは、絶縁層60Aに形成されたスルーホールH7に接続されている。また、配線51Bは、絶縁層52に覆われて絶縁層60A(の図3中、下面)上に形成された配線53Bに、絶縁層52に形成されたスルーホールH8を介して接続されている。
【0030】
絶縁層60Aは、上面が電極部20a、21aと略面一に形成され、チップ部品20、21の周囲を覆うように成膜されている。この絶縁層60A上には、電極部20a、21a及びこの電極部20a、21aに接続される配線(第2導電配線)15を覆う絶縁層(第2絶縁層)60Bが設けられている。図3中、両側部に位置する配線15は、絶縁層60Bを貫通するスルーホールH1、H2にそれぞれ接続されている。
【0031】
絶縁層60B上には、外部接続用の端子72を有するICチップ70と、スルーホールH1を介して配線15に接続される配線(第2導電配線)61と、これらICチップ70及び配線61が覆われる絶縁層(第3絶縁層)62と、配線61に接続され絶縁層62を貫通するスルーホールH3と、同じく絶縁層62を貫通する上述したスルーホールH2の一部とを有している。
【0032】
絶縁層62上には、ICチップ70の端子72及びスルーホールH2に接続される配線63Aと、ICチップ70の端子72及びスルーホールH3に接続される配線63Bと、これら配線63A、63Bが覆われる絶縁層64と、配線63Aに接続され絶縁層64を貫通するスルーホールH4と、配線63Bに接続され絶縁層64を貫通するスルーホールH5と、絶縁層64上に設けられスルーホールH5と接続されるチップ部品(電子部品)24と、絶縁層64上に設けられスルーホールH4と接続されるチップ部品(電子部品)25とが設けられている。
チップ部品24、25としては、ここでは、アンテナ素子及び水晶振動子がそれぞれ実装される。
【0033】
配線15、51A、51B、53A、53B、61、63A、63B及びスルーホールH1〜H8は、液滴吐出装置1による液滴吐出方式を用いて導電性インクを吐出することで形成されたものである。本実施形態では、銀微粒子を含む導電性インクを用いている(詳細は後述)。
【0034】
(多層配線基板の製造方法)
続いて、上記多層配線基板(電子基板)500の製造方法について、図4乃至図7を参照して説明する。
本実施形態では、図4(a)に示すように、多層配線基板500の外形形状に対応した形状の貫通孔Kを有するフレームFを用いて多層配線基板500を製造する。
まず、図4(a)に示すフレームFの下面(一面)Faに、表面Saに粘着性を有する基材としての粘着シートSを、貫通孔Kを覆うように貼設する。
続いて、貫通孔K内で露出するこの粘着シートSの表面Sa上の所定位置に、マウンタ等を用いてチップ部品20、21を載置する。
このとき、チップ部品20、21は、電極部20a、21aをそれぞれ当接させて載置される。また、粘着シートSの表面Saは、粘着性を有しているため、載置されたチップ部品20、21は、移動することなく、所定位置に位置決めされる。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、貫通孔K内の粘着シートS上に上述した絶縁性インクを液滴吐出方式で塗布する。このとき、絶縁性インクは、チップ部品20、21の周囲に、当該チップ部品20、21が突出する厚さで塗布される。なお、絶縁性インクの塗布方式としては、液滴吐出方式の他に印刷法やディスペンス法等であってもよい。
なお、この絶縁性インクの塗布は、スルーホールH7を囲むように形成し、スルーホールH7に対応する孔部を形成する。
【0036】
続いて、塗布した絶縁性インクに紫外域の波長を有する光を所定時間照射して所定エネルギ量を付与することによりアクリル系樹脂のみが硬化しエポキシ系樹脂が未硬化の半硬化状態にする。このとき、絶縁性インクに対して付与するエネルギ量は、絶縁性インクが硬化するエネルギ量よりも小さい値に設定される。
ここで、絶縁性インクの半硬化とは、絶縁性インクに含まれる光硬化性材料の状態が、吐出時の状態と、完全な硬化状態との間の状態になることを意味する。本実施形態では、このような中間の状態が上述の半硬化状態である。なお、吐出時の状態とは、光硬化性材料がノズル118から吐出されうる粘性を有している状態である。
これにより、図4(b)に示すように、半硬化状態の絶縁層60Aが成膜される。
【0037】
次に、図4(c)に示すように、液滴吐出装置1による液滴吐出方式を用いて、絶縁層60Aの孔部に導電性インクを吐出することによりスルーホールH7を形成するとともに、貫通孔K内の絶縁層60A上に導電性インクを吐出することにより配線53A、53Bを形成する。
本実施形態では、直径10nm程度の銀微粒子が有機溶剤に分散した銀微粒子分散液の分散媒をテトラデカンで置換してこれを希釈し、濃度が60wt%、粘度が8mPa・s、表面張力が0.022N/mとなるように調整したものを導電性インクとして用いた。
【0038】
具体的には、前記チップ部品20、21の電極部20a、21a上に導電性インクを吐出し、乾燥することにより、図4(c)に示すように、前記チップ部品20、21と電気的に接続されるAg配線(導電配線)15を形成できる。
また、上記分散媒としては、銀微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。また、分散液の粘度は、例えば1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周囲がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるからである。
【0039】
なお、表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0040】
続いて、図5(a)に示すように、貫通孔K内の絶縁層60A上にチップ部品20、21の周囲を囲み、配線53A、53Bを覆うように、液滴吐出法により絶縁性インクを塗布する。このとき、絶縁性インクは、チップ部品20、21の上面と略面一で、電極部20b、21bが露出する高さに塗布される。
なお、この絶縁性インクの塗布は、スルーホールH6、H8を囲むように形成し、スルーホールH6、H8に対応する孔部を形成する。
【0041】
続いて、絶縁層60Aと同様に、絶縁層60A上に塗布した絶縁性インクに対して、紫外域の波長を有する光を所定時間照射して所定エネルギ量を付与することにより半硬化状態にして絶縁膜52を形成する。
【0042】
次に、図5(b)に示すように、液滴吐出装置1による液滴吐出方式を用いて、絶縁層52の孔部に、上述した配線53A、53B及びスルーホールH7と同様の導電性インクを吐出することによりスルーホールH6、H8を形成するとともに、貫通孔K内の絶縁層52上に上記導電性インクを吐出することにより配線51A、51Bを形成する。この配線51Aは、一端がスルーホールH6に接続され、他端がチップ部品20の電極部20bに接続される。また、配線51Bは、一端がスルーホールH8に接続され、他端がチップ部品21の電極部21bに接続される。
【0043】
この後、配線51A、51B及びチップ部品20、21を覆うように、液滴吐出法により上記絶縁性インクを塗布する。そして、絶縁層52、60Aと同様に、絶縁層52上に塗布した絶縁性インクに対して、紫外域の波長を有する光を所定時間照射して所定エネルギ量を付与することにより半硬化状態の絶縁膜50を形成する。
そして、図5(c)に示すように、フレームFの下面Faから粘着シートSを剥離することにより、チップ部品20、21の電極部20a、21a、スルーホールH7及び絶縁層60Aを露出させる。
【0044】
続いて、チップ部品20、21が埋設された絶縁層52、60AをフレームFとともに上下を反転して、図6(a)に示すように、半硬化状態の下部絶縁膜60A上に、上記液滴吐出方式により導電性インクを塗布して配線15を形成する。なお、図6以降においては、便宜上、フレームFの図示を省略している。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、上記の絶縁層60A上に配線15を覆って、絶縁層60Aの形成材料と同じ絶縁性インクを液滴吐出法により塗布し、さらに紫外域の波長を有する光を所定時間照射して所定エネルギ量を付与することにより半硬化状態にして絶縁層60Bを形成する。
なお、この絶縁性インクの塗布は、スルーホールH1、H2を囲むように形成し、スルーホールH1、H2に対応する孔部を形成する。そして、紫外光照射して半硬化状態の絶縁層60Bを形成した後に、絶縁層60Bの孔部に液滴吐出方式を用いて上述した導電性インクを吐出することで、スルーホールH1、H2を形成する。
【0046】
次に、図7(a)に示すように、絶縁層60B上にスルーホールH1を介して配線15及びチップ部品20に接続される配線61を形成するとともに、ICチップ70を搭載する。この配線61は、上記配線15、スルーホールH1、H2と同様に、液滴吐出方式で形成される。
【0047】
この後、図7(b)に示すように、絶縁層60B上に、端子72が突出するように、ICチップ70及び配線61を覆って、上述した絶縁性インクを液滴吐出方式で塗布し、紫外光を照射して半硬化状態とすることで、絶縁層62を形成する。なお、この絶縁性インクの塗布は、配線15に接続されるスルーホールH2及び配線61に接続されるスルーホールH3を囲むように形成される。これにより、絶縁層62中にICチップ70が埋め込まれる。
【0048】
そして、上記スルーホールH2、H3を液滴吐出方式で配線15、61と同じ導電性インクを塗布して形成するとともに、絶縁層62上に前記端子72に接続する配線63A、63Bを液滴吐出方式で形成する。このとき、配線63A、63Bは、ICチップ70の端子72とスルーホールH2、H3にそれぞれ接続される。
【0049】
そして、図3に示したように、絶縁層62上に配線63A、63Bを覆って上述した絶縁性インクを液滴吐出方式で塗布し、紫外光を照射して半硬化状態とすることで、配線63A、63Bの下面を界面とする絶縁層64を形成する。そして、絶縁層64上に、他のチップ部品24、25をスルーホールホールH4、H5を介して実装する。これらスルーホールH4、H5は、上述したスルーホールH2、H3と同様の材料・手順により形成される。また、これら絶縁層64、スルーホールH4、H5も液滴吐出方式を用いて形成される。
なお、チップ部品24、25としては、ここでは、アンテナ素子及び水晶振動子をそれぞれ実装した。
【0050】
この後、絶縁層50、52、60A、、60B、62、64及び配線15、51A、51B、53A、53B、61、63A、63B、スルーホールH1〜H8を一括して加熱することにより硬化させる。このとき、絶縁層においては、未硬化であったエポキシ系樹脂が硬化することにより、既に光照射により硬化していたアクリル系樹脂と併せて完全に硬化状態となる。
以上の工程により、多層配線基板500を形成することができる。
【0051】
なお、この多層配線基板500をフレームFと分離させるには、例えば多層配線基板500を押し込むことでフレームFから型抜きする方法や、フレームFを切削等により除去する方法、さらには貫通孔Kを分離・一体化可能な複数のフレーム構成体で構成し、多層配線基板500を形成した後に、このフレーム構成体を分離させる方法等を適宜採用できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、粘着シートS上に載置したチップ部品20、21に対して、上方から導電性インクを塗布して電極部20b、21bに接続する配線51A、51Bを形成し、上下反転させたチップ部品20、21に対して上方から導電性インクを塗布して電極部20a、21aに接続する配線15を形成するため、配線上にチップ部品20、21を載置した場合のように、導電配線を押しつぶしたり、傾いたりすることがなくなり、電子部品の対向する両面において配線を接続する場合でも、配線と電極部とを安定して接続することが可能になるとともに、粘着シートSの粘着性によりチップ部品20、21を安定して位置決めすることができ、高精度の多層配線基板500を得ることも可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、絶縁層60A、60Bが配線15を挟むように設けられており、また、絶縁層50、52が配線51A、51Bを挟むように設けられており、これら絶縁層50、52、60A、60Bが加熱により一括して同時に硬化されるため、硬化した絶縁層60A、60Bの間、及び絶縁層50、52の間に応力を残さない状態とすることができる。そのため、本実施形態では、亀裂が生じづらく構造的に安定な電子基板である多層配線基板500を得ることができる。
【0054】
加えて、本実施の形態では、粘着シートS上に載置したチップ部品20、21の周囲に絶縁層60A、52、及び50を、配線53A、53B、51A、51Bを挟んで順次積層し、その後に粘着シートSを剥離するという簡単な工程で電極部20a、21a及び絶縁層60Aの表面が平滑で面一の配線基板を容易に得ることができ、生産性の向上及び高密度化を図ることができ、さらに、絶縁層60A上に配線及び絶縁層を積層することにより、生産性に優れた多層配線基板500を容易に製造することが可能になる。
【0055】
また、このように、本実施形態では、配線基板100(多層配線基板500)の外形形状をフレームFの貫通孔Kにより容易に規定することができ、所望形状の配線基板100(多層配線基板500)を容易に得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、配線基板100及び多層配線基板500の製造工程を全て液滴吐出方式で行うことが可能であり、生産性の大幅な向上を図ることができる。
また、本実施形態では、液滴吐出方式で絶縁性インクを塗布するため、印刷法やフォトリソ法等のように、マスクやレジスト等を用いることなく、容易に接着材をパターニングすることができ、また消費する接着材に無駄が生じないため、コスト低減にも寄与できる。さらに、本実施形態では、光エネルギの付与により絶縁性インクを半硬化状態にしているため、半硬化処理が容易であるとともに、例えばマスク等を用いることで、容易に紫外光の照射範囲を規定でき、半硬化させる領域を容易にパターニングすることが可能になる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態で示した配線の配置は一例であり、配線及び絶縁層の層数、電極部20a、20b、21a、21bとの接続パターン等は適宜選択可能である。
また、上記実施形態では、絶縁層50、52、60A、、60B、62、64及び配線15、51A、51B、53A、53B、61、63A、63B、スルーホールH1〜H8を一括して加熱することにより硬化させる構成としたが、これに限定されるものではなく、中途で適宜加熱して硬化させる手順としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、フレームFの貫通孔Kが、多層配線基板500の積層方向に平行に延びる構成として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば図8に示すように、チップ部品20、21の電極部20a、21a、及び下部絶縁膜60Aが位置する下面Fa側から上面(他面)Fb側に向けて縮径するテーパ状に形成される構成としてもよい。
この構成では、絶縁膜60A、52、50が上方に押されて僅かでも移動すると、貫通孔Kから離れることになり、容易にフレームFから離脱させることができる。また、フレームFは、必ずしも用いる必要もなく、液滴吐出法によるパターニングのみで多層配線基板500を形成する手順としてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、チップ部品20、21が双方とも電極部20a、20bを粘着シートSに当接させて載置することで、これら電極部20a、20bが面一に配置される構成としたが、例えば、チップ部品20、21(電極部20a、20b)を段差をもって配置するような場合には、チップ部品20、21の一方については電極部20a、20bを粘着シートSに当接させて載置し、チップ部品20、21の他方については、粘着シートS上に載置されたスペーサに電極部20a、20bを当接させて載置することにより、容易に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】電子基板の製造に用いる液滴吐出装置の模式図である。
【図2】(a)および(b)は液滴吐出装置におけるヘッドの模式図である。
【図3】多層配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図4】多層配線基板を形成する手順を示す工程図である。
【図5】多層配線基板を形成する手順を示す工程図である。
【図6】多層配線基板を形成する手順を示す工程図である。
【図7】多層配線基板を形成する手順を示す工程図である。
【図8】フレームの別形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
F…フレーム、 Fa…下面(一面)、 K…貫通孔、 S…粘着シート(基材)、 Sa…表面、 15…配線(第2導電配線)、 20、21…チップ部品(電子部品)、 20a、21a…電極部(第2配線接続部)、 20b、21b…電極部(第1配線接続部)、 30a、31a…第2面、 30b、31b…第1面、 51A、51B…配線(第1導電配線)、 52、60A…絶縁層、 50、60B…絶縁層(第2絶縁層)、 61…配線(第3導電配線)、 62…絶縁層(第3絶縁層)、 500…多層配線基板(電子基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の第1面に配置された第1配線接続部に第1導電配線が接続され、前記第1面と対向する第2面の第2配線接続部に第2導電配線が接続される電子基板の製造方法であって、
基材の表面に前記第2配線接続部を当接させて前記電子部品を載置する工程と、
前記基材の表面上の前記電子部品の周囲に絶縁材料で形成された絶縁層を成膜する工程と、
前記絶縁層上に前記第1配線接続部に接続する前記第1導電配線を形成する工程と、
前記電子部品から前記基材を剥離するとともに、前記電子部品及び前記絶縁層を反転する工程と
前記基材が剥離されて露出した前記絶縁層上に前記第2配線接続部に接続する前記第2導電配線を形成する工程とを有することを特徴とする電子基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電子基板の製造方法において、
前記絶縁層を半硬化状態で成膜する工程と、
前記第1導電配線と前記第2導電配線との少なくとも一方を覆う第2絶縁層を半硬化状態で成膜する工程と、
半硬化状態の前記絶縁層及び第2絶縁層を一括して硬化させる工程とを有することを特徴とする電子基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の電子基板の製造方法において、
前記絶縁材料は光硬化性及び熱硬化性を有することを特徴とする電子基板の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の電子基板の製造方法において、
前記第2絶縁層上に、前記第1導電配線と前記第2導電配線との少なくとも一方に電気的に接続される第3導電配線を形成する工程と、
前記絶縁材料で形成され前記第3導電配線を覆う第3絶縁層を形成する工程とを有することを特徴とする電子基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電子基板の製造方法において、
前記基材の表面は、粘着性を有することを特徴とする電子基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子基板の製造方法において、
所定形状の貫通孔を有するフレームの一面に、前記貫通孔を覆って前記基材を貼設する工程を有し、
前記貫通孔内に露出する前記基材の表面に前記電子部品を載置することを特徴とする電子基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の電子基板の製造方法において、
前記貫通孔は、テーパ状に形成されていることを特徴とする電子基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−130578(P2008−130578A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309941(P2006−309941)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】