説明

電子式パーキングブレーキと、電子式パーキングブレーキを制御する方法

電子式駐車ブレーキ装置を制御する方法と、電子式駐車ブレーキ装置とを開示する。ここでは、該駐車ブレーキ装置の開放状態に達するため、距離最適化による方法を適用する。パーキングブレーキの引きつけ時に距離‐力値を検出して妥当性検査し、これによって該パーキングブレーキの開放時に、最適化された第1の位置に向かって移動する。その後に加わる余剰力が限界値を上回る場合、パーキングブレーキをさらに、該限界値を下回るかないしは定義された最大開放距離を移動完了するまで開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式パーキングブレーキを制御する次のような方法に関する。すなわち、該電子式パーキングブレーキの開放時に力制御と位置制御とを行う電子式パーキングブレーキに関する。
【0002】
本発明はまた、自動車制御と位置制御とによって開放される電子式パーキングブレーキにも関する。
【0003】
電子式駐車ブレーキ装置は、電子式パーキングブレーキ、または電動式パーキングブレーキまたは自動パーキングブレーキという名称でも知られており、自動車において純粋に機械的な手動式ブレーキに換わってますます使用されるようになってきている。電子式駐車ブレーキ装置を使用すると、車室内に設けられる大抵は比較的大きい操作レバーが省略される。このことにより、車室の形状の自由度が格段に大きくなる。さらにこのような装置では、操作快適性が高くなる。というのも、操作者はブレーキをかけるかまたは開放するのに大きな力を使う必要がなく、また、たとえば山地での発進またはパーキング後に初めて行われる発進時のブレーキの開放等の種々の機能を、電子的ひいては自動的に行うことができるからだ。しかし、電子式駐車ブレーキ装置の前記の有利な特徴は、純粋に機械的な手動式ブレーキに匹敵するかまたはさらに良好である安全性を欠いてはならない。
【0004】
このようなパーキングブレーキがたとえば電動モータトランスミッションユニットによって制御されるかまたは場合によっては調整される場合には(ここでは、文献全体におけるように、制御という概念は調整も含むことができるかないしは含むべきである)、通常、トランスミッション装置の位置とパーキングブレーキにかけられる力との間に不一致が生じる。このことは、制動系および力伝達装置の物理的特性に起因し、とりわけヒステリシス作用を引き起こす。ここでは力伝達装置という概念は、アクチュエータ、ブレーキに力を伝達するすべての部品、アクチュエータの力が作用する構成部分を含むこととする。このように、トランスミッション位置と制動力との間で一義的な対応づけを良好に行うことはできないので、制御は通常、トランスミッションまたはモータ位置のみを使用して行われることはない。択一的に、力伝導装置において力測定を行うことによって電子式駐車ブレーキ装置の制御を行う手段がある。しかし、ブレーキの力伝動装置に加わる力を使用して行われる排他的な制御または調整は、安全技術上の理由から適切でない。というのも、力伝達装置におけるエラーと、上記のヒステリシス作用とを考慮しなければならないからである。これらの理由から、電子式駐車ブレーキ装置では通常、力‐距離の組み合わせの制御が使用される。
【0005】
従来技術によれば、「パーキングブレーキの引きつけ‐パーキングブレーキ開放」のサイクルは以下のように行われる。開始位置からパーキングブレーキを、規定の力に到達するまで緊張する。このことは、相応の公差を有する所定の距離の範囲内で行なわなければならない。開放時には、このシステムはこの緊張位置から、固定的に設定された距離を開放方向に進む。ここで到達した位置が、新たな開始位置として決定される。このようにして、たとえば制動装置の摩耗によって変化する距離‐力特性をある程度考慮する。しかし、この特性が大幅に変化すると、たとえばパーキングブレーキの開放後に、不所望に余剰力が加えられてしまう。
【0006】
したがってこのことを解消するためには、余剰力がかけられなくなるまでパーキングブレーキを開放することにより、付加的に所定の距離を開放方向に進むことができる。このような手法は、ブレーキが進むべき移動距離が不必要に長いという欠点を有する。というのも通常は、ヒステリシス作用が余剰力値に影響するからである。
【0007】
本発明の基礎となる課題は、従来技術の欠点を解消し、とりわけ、移動距離が最適化された電子式パーキングブレーキを制御する方法ないしは電子式パーキングブレーキを提供することである。
【0008】
本発明によればこの課題は、独立請求項に記載の特徴により解決される。
【0009】
従属請求項に、本発明の有利な実施形態および発展形態が記載されている。
【0010】
本発明は、上位概念に記載された方法を基礎として、次のことを特徴とする。すなわち、パーキングブレーキの開放時に該パーキングブレーキを、位置制御の枠内でまず、予め決定された第1の位置まで開放方向に動かし、該パーキングブレーキの第1の位置を決定するために、該パーキングブレーキの引きつけ時に力測定の枠内で、力が生じる位置を検出し、この位置から該第1の位置を、開放方向にさらに先にある位置として決定し、予め決定された第1の位置に到達した後に力測定を行い、該第1の位置で行われた該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキを開放方向に第2の位置までさらに動かすことを特徴とする。前記のように、パーキングブレーキの引きつけ時に力測定の枠内で位置を検出することにより、パーキングブレーキの開放時に第1の位置に向かって直接、さらに付加的に力測定を行うことなく移動することができる。第1の位置の決定は任意の時点で行うことができ、たとえばパーキングブレーキの引きつけ時にすでに行っても、また、パーキングブレーキの開放時に初めて動的に行ってもよい。このようにして、高い確率で終了位置として適する位置に向かって直接移動できるようになる。この位置で加わる力を検出した後に、パーキングブレーキを付加的に開放する必要がある場合には、開放方向に第2の位置までさらに動かすことができる。このことにより、ブレーキの移動距離をさらに最適化することができる。というのも、力が加わる際にのみ、不所望な程度に付加的な動きが行われるからである。加わる力の検出は、位置に向かって移動する際ないしは意図的な動きの終了直前に行うことができ、また、動きが終了した後初めて、静止状態で行うこともできる。このことによってさらに、付加的な第2の位置に向かって制御すべきか否かを、第1の位置までの動き中にすでに判定することができ、ひいては場合によっては、第2の位置に向かって連続的に、第1の位置で滞留せずに移動することもできる。また、前記のように検出された加わる力の評価時に、この力をたとえば、閾値と比較するかまたは1つまたは複数の値領域と比較することができる。このような閾値または値領域は、時間的に所与の条件に適合することもできる。第1の位置を、力が生じる位置に基づいて予め決定することにより、該システムの相応の知識があればさらに、上記のヒステリシス作用を距離最適化によって補償することもできる。本方法ではこのことを、パーキングブレーキのための力制御および位置制御と最適に組み合わせることができる。
【0011】
本方法の有利な実施形態では、パーキングブレーキの各引きつけ過程および/または各開放過程において、第1の位置を予め決定する。こうすることにより、パーキングブレーキの開放ポイントを特に精確に制御することができ、このことによって、可能な移動距離がさらに低減される。
【0012】
同様に有利な実施形態では、第1の位置および/または力測定の枠内で検出された位置を、妥当性検査によって確認する。このようなプロセスにより、本方法の確実性が著しく上昇する。というのも、このようにして測定および/または位置の値の信頼性を検査できるからである。
【0013】
本方法の別の有利な実施形態では、パーキングブレーキの引きつけ時に、該パーキングブレーキの開放された状態に相応する可能性のある任意の位置に到達した後に力測定を行い、該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキを開放方向にさらに動かす。このことにより、力測定の結果に依存してパーキングブレーキの開放を、固定的または可変の位置ステップで繰り返し行うことができる。この固定的または可変の位置ステップは、場合によっては制動系の構成に応じて適合することができる。ここでも、相応の位置に到達した後、動きを力測定のために中断することができ、また、力測定の結果が所望の値領域内になるまで連続的に続行することもできる。
【0014】
また、本発明の方法では有利には、パーキングブレーキの開放時に、力測定の結果がゼロでない場合に、該パーキングブレーキをさらに開放方向に動かす。このようにして、加えられる余剰力が消失しない限り、ないしは余剰力が、ゼロ値を含めて前後にとられる値領域外にある限りは、パーキングブレーキの開放を行う。この余剰力がゼロに等しくなるか、ないしは相応の限界値以下になると直ちに、パーキングブレーキが完全に開放されたと見なし、開放過程を終了することができる。
【0015】
さらに本発明による方法は、パーキングブレーキをアクチュエータによって動かし、力測定を力伝達装置において行うことによって、特に有利に発展することができる。制動装置がパーキングブレーキによって、アクチュエータを使用して動かされる場合、力測定を力測定装置において行うことができる。こうすることにより、力測定値を本発明による方法に、迅速かつ直接的にフィードバックすることができる。
【0016】
本発明は、上位概念に記載された装置を基礎として、次のことを特徴とする。すなわち、パーキングブレーキの開放時に該パーキングブレーキは、位置制御の枠内でまず、予め決定された第1の位置まで開放方向に動かされ、該パーキングブレーキの第1の位置を決定するために、該パーキングブレーキの引きつけ時に力測定の枠内で、力(FR)が生じる位置(KEP)が検出され、この位置から該第1の位置が、開放方向にさらに先にある位置として決定し、予め決定された第1の位置に到達した後に力測定が行われ、該第1の位置で行われた該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキは開放方向に第2の位置までさらに動かされるように構成されることを特徴とする。このような構成により、本発明による方法の利点および特徴が装置の枠内でも実現される。このことは、本発明による装置の下記の特に有利な実施形態にも当てはまる。
【0017】
本発明による装置は特に有利には、第1の位置がパーキングブレーキの各引きつけ過程および/または各開放過程時に予め決定される構成によって発展される。
【0018】
同様に有利な実施形態では、第1の位置および/または力測定の枠内で検出された位置が、妥当性検査によって確認されるように構成される。
【0019】
さらに、本装置の有利な発展形態では、パーキングブレーキの開放時に、該パーキングブレーキの開放された状態に相応する可能性のある任意の位置に到達した後に力測定が行われ、該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキが開放方向にさらに動かされるように構成される。
【0020】
また、1つの実施形態では有利には、パーキングブレーキの開放時に、力測定の結果がゼロでない場合に、該パーキングブレーキがさらに開放方向に動かされる構成によって有利に発展される。
本発明による装置の同様に有利な発展形態では、パーキングブレーキが力伝達装置を有し、力測定が該力伝達装置において行われるように構成される。
【0021】
本発明はさらに、本発明による装置を備えた作動ブレーキにも関する。
【0022】
本発明の基礎となる思想は、電子式パーキングブレーキの開放過程を、該パーキングブレーキの引きつけ時に距離‐力情報を記録することによって最適化することである。ブレーキの開放時には、前記距離‐力情報に基づいて、最適化された第1の位置に向かって移動することができる。不所望の余剰力が未だ加わる場合には、場合によっては複数のステップで、パーキングブレーキを該余剰力が消失するまで開放することができる。
【0023】
ここで本発明を、添付図面を参照して有利な実施形態に基づいて例解する。
【0024】
図面
図1a〜1d 本発明による方法を説明するためのフローチャートである。
【0025】
図2a〜2c 異なる状態にある本発明による装置を説明するための機能ブロック図である。
【0026】
図3 力‐位置グラフである。
【0027】
図1a〜1dは、本発明による方法を説明するためのフローチャートである。本発明による方法はステップS01で開始する。このステップでは、駐車ブレーキ装置の電子的制御部ないしは電子的調整部が、「パーキングブレーキの引きつけ」命令の変換を開始する。その次に、その時点で力伝達装置に加わる力の検査が行われる。このことは、判定S02で示されている。この力がいわゆる基準力(「FR=force reference」)より小さい場合、アクチュエータを引きつけ方向に動かす(ステップS03)。力伝達装置に加わる力が値FRに到達するかまたは上回ると直ちに(判定S04)、その時点の力値が典型的な領域内にあるか否か、先行のサイクルによって決定された力発生ポイント(KEP)によって規定される領域内にあるか否かを検査する(判定S05)。この妥当性検査が否定的である場合、ここでは引きつけ過程をエラー通知(ステップS06)によって終了し、かつ/または、エラーを通知することができる。検査結果が肯定的である場合には、本方法は次に、ステップS07を行う。ここでは、その時点のアクチュエータ位置を新たな力発生ポイント(KEP)として記憶する。このステップの後、本方法は次に判定S08を行う。この判定でも、その時点で加わる力の検査を行う。この検査はまた、本方法で力伝達装置に加わる力の検査時に判定S02で、FRより大きい値が検出され、ステップS09で、ステップS03と同様にアクチュエータの引きつけ方向の動きが初期化された場合にも行われる。判定S08で、加わる力が第2の限界値、目標引きつけ力(「TFA=target force apply」)を上回るかまたは第2の限界値に到達した場合、ステップS10で、その時点のアクチュエータ位置を一時的な力遮断ポイントとして記録する。そうでない場合には、その時点のアクチュエータ位置を最大値に関して検査する(判定S11)。この最大値を超えない場合、本方法は次に判定S08を行い、そうでない場合には、本方法はここでステップS12で、エラー通知によって終了する。
【0028】
力遮断ポイントの記録によって判定S13で、値KAPが典型的な領域および/または先行のサイクルによって規定された領域内にあるか否かを検査する。結果が否定的である場合、本方法はここで、ステップS14においてエラー通知を終了し、そうでない場合には、前記の一時的な力遮断ポイントを新たに使用すべき力遮断ポイントKAPとして記憶する(ステップS15)。この時点で駐車ブレーキ装置は、駐車状態ないしは緊張状態にある(ステップS16)。
【0029】
制御部ないしは調整部が、ドライバの要望を表現するかまたは自動的な機能によって開放されて、「パーキングブレーキの開放」命令を出した場合、アクチュエータの位置の制御ないしは検査が行われる。この「パーキングブレーキの開放」命令は、ステップS17に示されている。判定S18で示されているように、アクチュエータ位置をKEPに達したか否かに関して比較する。KEPに達しない場合、ステップS19でアクチュエータは、引きつけ方向と逆の方向に、すなわち開放方向に動き始める。この動きは、判定S20でその時点のアクチュエータ位置の検査時に、KEPに達したことが判定されるまで続行される。その際、アクチュエータの動きはS21でも開放方向に続行される。しかしここでは、絶対的な位置を目標として移動するのではなく、アクチュエータをKEPに対して相対的に、開放位置距離(「RPT=release position travel」)だけ移動する。ここでは、ステップ18ですでにKEPに達したことが検出完了されている場合にも、本方法を開始する。RPTを進んだ後、判定S22で示されているように、力伝達装置に加わる力を再び検出する。この力が目標開放力(「TFR=target force release」)いわゆる限界値を下回り、典型的な領域内にある場合、ステップ23で本方法を終了する。そうでない場合、アクチュエータ位置が最大値に達したか否かを検査する(判定S24)。肯定的でない場合、アクチュエータを開放方向に、さらなる付加的なステップだけ動かし(ステップS25)、ステップS22で再び、加わる力を検査する。そうでない場合、本方法をここで、ステップS26でエラー通知によって終了する。本方法は、余剰力が限界値TFRを下回るかないしは最大開放距離の移動が完了するまで、ステップS22,S24およびS25を繰り返し行う。すなわち、アクチュエータを開放方向に移動し、そこで加わる力と限界値TFRとを比較する。これをもって、本方法を終了する。
【0030】
さらに、本発明による方法は較正動作を行うこともできる。こうするために、本方法をステップS30で開始し、較正動作を開始する。ここではまず、アクチュエータを開放方向に移動する(ステップS31)。それと同時に判定S32で、アクチュエータがゼロ位置ないしは較正マークに達したか否かを検出する。そうである場合、最大移動距離を超えたのであれば(判定S33)、本方法をステップS34で、エラー通知によって終了する。そうでない場合、本方法は次に、判定S32を行う。較正マークないしはゼロ位置に達した場合、ステップ35でアクチュエータのその時点の位置をゼロ位置として記憶する。
【0031】
次に本方法は、上記で図1aで説明したステップS03〜S08とS11とS12とに相応するステップを行う。それゆえ、これらのステップを改めて説明しない。ここで、ステップS05,S06およびS12を相応に適合すべきであるから、S05′、S06′およびS12′で示す。判定S08で、TFAが力伝達装置に加わることが識別されると、ステップS36でその時点の位置を力遮断ポイント(KAP)として記憶する。
【0032】
さらに判定S37で、KAP値が典型的な領域および/または先行のサイクルによって規定された領域内にあるか否かを検査する。そうでない場合、本方法をステップS38で、エラー通知によって終了する。
【0033】
そうである場合、本方法は次にステップ39を行い、アクチュエータを計算された開放位置まで開放する。ここで、力伝達装置に加わる力の検査が行われる(判定S40)。この力が典型的な領域内にない場合、本方法をステップS41において、エラー通知によって終了する。そうでない場合には、システムはS42で、較正された状態にある。
【0034】
このようにしてポイントKEPおよびKAPに関して、絶対的位置決定が行われる。この絶対的位置決定はとりわけ、後続の引きつけ過程で検出される値の妥当性検査に使用される。図2a〜2cは、異なる状態にある本発明による装置を説明するための機能ブロック図である。ここに図示された実施形態は、従来技術から公知の電子的構成要素と、機械的構成要素と、場合によって設けられる流体力学的構成要素と、電子制御ユニット(ECU)12と、力伝達装置14と、距離センサ16と、力センサ18とを備えている。前記公知の電子的構成要素と、機械的構成要素と、流体力学的構成要素とは、ここでは制動装置10の概念にまとめられている。ここではすでに上記の部分で説明したように、力伝達装置という概念は、アクチュエータ、ブレーキに力を伝達するすべての部品、アクチュエータの力が作用する構成部分を含むこととする。力センサ18は任意の適切な位置で、この力伝達装置14内部にも、制動装置10外部にも、場合によっては制動装置10内部にも取り付けることができる。電子制御ユニット12は信号伝送線路20を介して力伝達装置14に接続されており、力伝達装置14は制動装置10に機械的に作用結合されている。距離センサ16は、力伝達装置14によって供給された位置信号を捕捉し、該位置信号を位置情報22として、電子制御ユニット12へ伝送する。これと同様に力センサ18は、その時点で力伝達装置または制動装置に加わる力に相応する測定信号24を生成し、これも電子制御ユニット12へ送出する。距離センサ16にも力センサ18にも記号表示部26ないしは28が設けられ、これらの記号表示部26ないしは28は、選択された種々の信号を表す。距離センサ16では信号KAP,KEPおよびRPTが表示され、力センサ18の表示部28は信号FR,TFAおよびTFRを表示する。図2a,2bおよび2cに示された実施形態の構成部分ひいては参照記号も同一であり、これら構成部分が異なるのは、センサ16および18によって供給される信号20および22のみである。この相違点は、アクチュエータ位置が異なること、ひいてはパーキングブレーキの状態が異なることに相応する。
【0035】
図2aでは、電子的制御部12は力伝達装置14のアクチュエータへ、引きつけ方向に動くようにという命令を出した。すなわち、パーキングブレーキを引きつける命令を出した。図示されているこの時点の状態では、力伝達装置14に基準力FRが加わっている。これに相応して距離センサ16は、力発生ポイント(KEP)を表す信号22を電子制御ユニット12へ供給し、該電子制御ユニット12はこの距離値を、妥当性検査が成功して実行完了した場合には記録する。
【0036】
図2bでは、ブレーキがかけられた状態に相応する位置に達する。ここでは、力伝達装置14にいわゆる目標引きつけ力(TFA)が加わり、この目標引きつけ力(TFA)の絶対値は力センサ18によって、信号24として電子制御ユニット12へ伝送される。次に、この目標引きつけ力の絶対値は距離センサ16によって、その時点のアクチュエータ位置と相関付けされる。こうするために電子制御ユニット12は距離信号22をまず一時的な力遮断ポイントとして記憶し、この一時的な力遮断ポイントを妥当性検査の枠内で、典型的な値領域および/または先行のサイクルによって規定された値領域と比較し、検査が成功した場合には該一時的な力遮断ポイントを、新たに使用すべき力遮断ポイント(KAP)として記憶する。
【0037】
図2cは、電子式駐車ブレーキ装置がパーキングブレーキの開放時にとる状態を示している。ここではまず、力伝達装置14のアクチュエータを電子制御ユニット12の信号20によって再び、力発生ポイント(KEP)に達するまで移動する。このことは、図2aに示された状態に相応する。KEPに達した後、力伝達装置14のアクチュエータをここからさらに、開放方向に開放位置距離RPTだけ移動する。これに相応して、距離センサ16は信号22として、RPTに達したことを示す。電子制御ユニット12はこの信号22を受け取り、力センサ18から供給された力信号24と、目標開放力(TFR)である限界値と比較する。この時点では、力伝達装置14のアクチュエータに実際に目標開放力TFRが加わっているので、図2cに示された状態は、パーキングブレーキの開放された状態を示す。
【0038】
図3は、力‐位置グラフである。ここでは、本発明による方法および本発明による装置で行われるアクチュエータの動きと、アクチュエータに加わる力の一例とが示されている。このグラフの横軸には、その時点のアクチュエータ位置に相応する位置がプロットされており、縦軸は、力伝達装置に加わる力を表す。位置値には、力発生ポイント(KEP)と力遮断ポイント(KAP)と開放位置距離(RPT)とがプロットされており、力値には目標開放力(TFR)と基準力(FR)と目標引きつけ力(TFA)とがプロットされている。矢印が付与された実線の曲線は例として、パーキングブレーキの引きつけ時のアクチュエータ位置と力伝達装置にその時点で加わる力との対応付けを示しており、逆方向を示す矢印が付与された破線の曲線は、パーキングブレーキの開放時のアクチュエータ位置と力伝達装置にその時点で加わる力との対応付けを示す。
【0039】
アクチュエータがゼロ位置からKEPの方向に動く際には、力‐位置関数は実線に従う。力伝達装置に加わる力が値FRに達すると、その時点のアクチュエータ位置をKEPとして決定する。パーキングブレーキをさらに引きつけると、力伝達装置に加わる力は値TFAに達し、さらに実線にしたがう。この力値に、位置KAPが対応づけられる。パーキングブレーキの開放時には、この位置に対応付けされた力は破線にしたがう。ここではまず、パーキングブレーキの引きつけ時に検出された位置KEPに向かって移動する。ここからアクチュエータは、開放方向にさらに、相対的な距離RPTだけ移動される。制動装置の物理的条件によって、破線は通常、実線より下方を経過する。このことは、上記のヒステリシス作用に起因する。そのため、位置KEPに達した際に力伝達装置に加わる力はFRより小さく、場合によってはTFRより大きいが、その直後にパーキングブレーキの引きつけが行われると、直ちに値FRに達しない。ここで、相対的な距離RPTによって決定された位置で、力伝達装置に加わる力がTFRより小さいか否かを検査する。このことは図3では、本発明による方法をここで終了するケースに当てはまる。力伝達装置に加わる力がなお値TFRを上回る場合、アクチュエータを開放方向にさらに、該力伝達装置に加わる力が値TFRを下回るまで動かす。ここでは、電子式駐車ブレーキ装置を制御ないしは調整する次のような方法と、次のような電子式駐車ブレーキ装置とを提供する。すなわち、駐車ブレーキ装置の開放された状態に達するため、距離最適化による方法を適用する方法と、これに相応する電動式駐車ブレーキ装置とを提供する。ここでは、パーキングブレーキの引きつけ時に距離‐力値を検出して妥当性検査し、これを使用してブレーキの開放時に、第1の最適化位置に向かって移動する。その後に加わる余剰力が限界値を上回る場合、パーキングブレーキをさらに、該限界値を下回るかないしは定義された最大開放距離を移動するまで開放する。
【0040】
上記の詳細な説明、図面および特許請求の範囲で開示された本発明の構成は、個別でも、任意に組み合わされても、本発明を実施するための構成要件となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】本発明による方法を説明するためのフローチャートである。
【図1B】本発明による方法を説明するためのフローチャートである。
【図1C】本発明による方法を説明するためのフローチャートである。
【図1D】本発明による方法を説明するためのフローチャートである。
【図2A】本発明による装置を説明するための機能ブロック図である。
【図2B】本発明による装置を説明するための機能ブロック図である。
【図2C】本発明による装置を説明するための機能ブロック図である。
【図3】力‐位置グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子式のパーキングブレーキを制御する方法であって、
該パーキングブレーキを開放する際に、力制御と位置制御とを行う形式の方法において、
・該パーキングブレーキの開放時に、該パーキングブレーキを位置制御の枠内でまず開放方向に、予め決定された第1の位置まで動かし、
・該パーキングブレーキの第1の位置を決定するために、該パーキングブレーキの引きつけ時に力測定の枠内で、力(FR)が生じる位置(KEP)を検出し、該位置(KEP)から第1の位置を、開放方向にさらに先にある位置として決定し、
・予め決定された該第1の位置に達した後、力測定を行い、該第1の位置で行われた該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキを開放方向にさらに付加的に、第2の位置まで動かすことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パーキングブレーキの各引きつけ過程および/または開放過程で、前記第1の位置を予め決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の位置および/または力測定で検出された位置を、妥当性検査によって確認する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
・前記パーキングブレーキの開放時に、該パーキングブレーキの開放された状態に相応する可能性のある任意の位置に達した後、力測定を行い、
・該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキを開放方向にさらに付加的に動かす、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記パーキングブレーキの開放時に、力測定の結果がゼロでない場合に、該パーキングブレーキをさらに開放方向に動かす、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記パーキングブレーキをアクチュエータ(14)によって動かし、
前記力測定を、力伝達装置(14)において行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
電子式のパーキングブレーキであって、
力制御と位置制御とによって開放されるように構成された形式のものにおいて、
・該パーキングブレーキの開放時に該パーキングブレーキは、位置制御の枠内でまず開放方向に、予め決定された第1の位置まで動かされ、
・該パーキングブレーキの第1の位置を決定するために、該パーキングブレーキの引きつけ時に力測定の枠内で、力(FR)が生じる位置(KEP)が検出され、該位置(KEP)から前記第1の位置が、開放方向にさらに先にある位置として決定され、
・予め決定された該第1の位置に達した後、力測定が行われ、該第1の位置で行われた該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキは開放方向に、第2の位置までさらに付加的に動かされることを特徴とするパーキングブレーキ。
【請求項8】
前記第1の位置は、前記パーキングブレーキの各引きつけ過程および/または開放過程で予め決定される、請求項7記載のパーキングブレーキ。
【請求項9】
前記第1の位置および/または力測定の枠内で検出された位置は、妥当性検査によって確認される、請求項7または8記載のパーキングブレーキ。
【請求項10】
前記パーキングブレーキの開放時に、該パーキングブレーキの開放された状態に相応する可能性のある任意の位置に達した後、力測定が行われ、
・該力測定の結果に依存して、該パーキングブレーキは開放方向にさらに付加的に動かされる、請求項7から9までのいずれか1項記載のパーキングブレーキ。
【請求項11】
前記パーキングブレーキの開放時に、力測定の結果がゼロでない場合に、該パーキングブレーキをさらに開放方向に動かす、請求項7から10までのいずれか1項記載のパーキングブレーキ。
【請求項12】
アクチュエータ(14)によって動かされ、
前記力測定は、力伝達装置(14)において行われる、請求項7から11までのいずれか1項記載のパーキングブレーキ。
【請求項13】
請求項7から12までのいずれか1項記載のパーキングブレーキを有することを特徴とする作動ブレーキ。
【請求項14】
自動車であって、
請求項7から12までのいずれか1項記載のパーキングブレーキを有する自動車。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505792(P2008−505792A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519745(P2007−519745)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051839
【国際公開番号】WO2006/003042
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】