説明

電子放出素子、電子放出装置、帯電装置、画像形成装置、電子線硬化装置、自発光デバイス、画像表示装置、送風装置、冷却装置

【課題】薄膜電極を適度な厚みまで薄くでき、電子放出量の向上を図ることのできる電子放出素子を提供する。
【解決手段】電子放出素子1は、電極基板2と薄膜電極3との間に電子加速層4を備え、電子加速層4は、絶縁体微粒子5と、絶縁体微粒子5より平均粒径の小さい導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方と、を含んでおり、電子加速層4の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下となっている。さらに、薄膜電極3の層厚は、100nm以下となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を印加することにより電子を放出する電子放出素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子放出素子として、スピント(Spindt)型電極、カーボンナノチューブ(CNT)型電極などが知られている。このような電子放出素子は、例えば、FED(Field Emision Display)の分野に応用検討されている。このような電子放出素子は、尖鋭形状部に電圧を印加して約1GV/mの強電界を形成し、トンネル効果により電子放出させる。
【0003】
しかしながら、これら2つのタイプの電子放出素子は、電子放出部表面近傍が強電界であるため、放出された電子は電界により大きなエネルギーを得て気体分子を電離しやすくなる。気体分子の電離により生じた陽イオンは強電界により素子の表面方向に加速衝突し、スパッタリングによる素子破壊が生じるという問題がある。また、大気中の酸素は電離エネルギーより解離エネルギーが低いため、イオンの発生より先にオゾンを発生する。オゾンは人体に有害である上、その強い酸化力により様々なものを酸化することから、素子の周囲の部材にダメージを与えるという問題が存在し、これを避けるために周辺部材には耐オゾン性の高い材料を用いなければならないという制限が生じている。
【0004】
他方、上記とは別のタイプの電子放出素子として、MIM(Metal Insulator Metal)型やMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電子放出素子が知られている。これらは素子内部の量子サイズ効果及び強電界を利用して電子を加速し、平面状の素子表面から電子を放出させる面放出型の電子放出素子である。これらは素子内部の電子加速層で加速した電子を放出するため、素子外部に強電界を必要としない。従って、MIM型及びMIS型の電子放出素子においては、上記スピント型やCNT型、BN型の電子放出素子のように気体分子の電離によるスパッタリングで破壊されるという問題やオゾンが発生するという問題を克服できる。
【0005】
このようなMIM型及びMIS型の電子放出素子として、例えば、特許文献1には、誘電体からなるエミッタ部と、そのエミッタ部に形成されておりエミッタ部の表面から電子を放出させるための駆動電圧が印加される第1の電極及び第2の電極と、を備えた電子放出素子が開示されている。この電子放出素子では、第1の電極がエミッタ部の表面に設けられ、エミッタ部の表面における表面粗さは中心線平均粗さ(Ra)で0.1(μm)以上3(μm)以下であることにより、電子放出作用に係るエミッタ部の表面積を大きくし、第1の電極の縁部における電界集中を発生しやすくして、電子放出量を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−236964号公報(平成18年9月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1の電子放出素子では、中心線平均粗さ(Ra)で表される表面粗さが0.1以上3μm以下であるエミッタ部(電子加速層)の表面に、厚みが0.1〜20μmとなるように第1の電極(薄膜電極)が設けられている。しかしながら、薄膜電極の厚みが0.1μm以上では、薄膜電極を通して放出される電子の量が減少するために電子放出量が減少する。そこで、電子放出量の向上には、薄膜電極の厚みを薄くすることが考えられるが、電子加速層の表面には電子加速層を構成する粒子径に対応した凹凸ができているため、その上に薄膜電極を形成する場合、厚さにムラができる。特に、スパッタリングにて薄膜電極を形成する場合、凹部では薄く凸部では厚くなり、電極表面の凹凸が強調される。ここで、薄膜電極が薄すぎると電気的導通を確保できず、十分な素子内電流を流すことができない。さらに、素子の強度が落ちる。反対に薄膜電極が厚すぎると電子を放出することができず、電子放出側の電極での電子の吸収、あるいは薄膜電極で電子が反射されて絶縁体膜中へ再捕獲される現象が生じてしまう。
【0008】
つまり、粒子を用いて電子加速層が構成される電子放出素子では、薄膜電極の厚さを電子加速層の表面粗さを考慮して適正化する必要がある。しかし、特許文献1の電子放出素子では、薄膜電極の厚さはエミッタ部の表面における表面粗さを考慮して適性化されてはいない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、薄膜電極を適度な厚みまで薄くでき、電子放出量の向上を図ることのできる電子放出素子等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子放出素子は、上記課題を解決するために、電極基板と薄膜電極と該電極基板および該薄膜電極に挟持された電子加速層とを有し、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧が印加されると、上記電子加速層で電子を加速させて、上記薄膜電極から該電子を放出させる電子放出素子であって、上記電子加速層は、絶縁体微粒子と、該絶縁体微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径の導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方と、を含み、上記電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下であり、上記薄膜電極の層厚は、100nm以下であることを特徴としている。
【0011】
上記構成によると、電極基板と薄膜電極との間には、絶縁体微粒子と、該絶縁体微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径の導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方と、を含む電子加速層が設けられている。この電子加速層は、絶縁体微粒子と、上記導電微粒子および上記塩基性分散剤の少なくとも一方と、が緻密に集合した薄膜の層であり、半導電性を有する。この半導電性の電子加速層に電圧を印加すると、電子加速層内に電流が流れ、その一部は印加電圧の形成する強電界により弾道電子となって放出される。
【0012】
ここで、電子加速層に塩基性分散剤が含まれる場合、電子放出素子より電子が放出されるのは、塩基性分散剤が有する電子対を供与する電子対供与体が作用しているのではないかと推察している。すなわち、塩基性分散剤は、電子対を供与する電子対供与体を有しており、電子対供与体は電子対を供与後、イオン化する。このイオン化した電子対供与体が、付着している絶縁体微粒子の表面において電荷の受け渡しを行い、絶縁体微粒子の表面における電気伝導が可能になっていると考えられる。
【0013】
さらに、上記構成では、電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下であり、上記薄膜電極の層厚は、100nm以下である。
【0014】
ここで、上述したように、スパッタリングにて薄膜電極を形成した場合に、凹部では薄く凸部では厚くなり、膜厚の薄い薄膜電極では、表面に凹凸が強調されて島状になり、表面の導通が取れなくなる。このような電子加速層の表面の凹凸を吸収して、薄膜電極の表面の導通が採れるようなものとするには、薄膜電極の膜厚を厚くする必要がある。つまり、平坦な面に電極を作製する場合よりも電極を厚く作製する必要がある。このことから電子加速層の表面粗さが粗いほど薄膜電極の膜厚を厚くする必要があるが、薄膜電極の膜厚を厚くすると、薄膜電極を通過して放出される電子の量が減少するために電子放出量が減少する。
【0015】
しかし、上記構成では、電子加速層の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下となって最適化されており、それによって、薄膜電極を適度な厚み100nm以下まで薄くすることができる。薄膜電極は、膜厚が厚くなりすぎると、素子表面での導通は取れるけれども薄膜電極を通過して放出される電子の量が減ってしまうことから、100nm以下が好ましい。
【0016】
よって、本発明の電子放出素子では、電子加速層の表面粗さを最適化し、薄膜電極を適度な厚みまで薄くでき、電子放出量の向上を図ることができる。
【0017】
また、本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記絶縁体微粒子の平均粒径は10〜1000nmであるのが好ましく、10〜200nmであるのがより好ましい。この場合、粒子径の分散状態は平均粒径に対してブロードであっても良く、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20〜100nmの領域にその粒子径分布を有していても問題ない。絶縁体微粒子の粒子径が小さすぎると、粒子間に働く力が強いために粒子が凝集しやすく、分散が困難になる。また、絶縁体微粒子の粒子径が大きすぎると分散性は良いけれども、抵抗調整のために電子加速層の層厚や、導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方の配合比を調整することが困難になる。
【0018】
ここで、絶縁体微粒子の平均粒径は10〜1000nmであると、10nmの粒子が平坦な基板上に隙間なく綺麗に並んだ場合がもっとも平坦であることから、Ra値の下限値は0.9nmとなる。よって、本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.9nm以上であるのが好ましい。また、薄膜電極は、素子表面に一様に導通が取れる状態が必要不可欠であり、最低でも10nmの膜厚がないと素子表面での導通が取れない。よって、上記薄膜電極の層厚は、10nm以上であるのが好ましい。
【0019】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子加速層の層厚は、12〜6000nmであるのが好ましく、300〜2000nmであるのがより好ましい。厚が厚いと微粒子の凝集体が電子加速層に埋もれて電子加速層の凹凸が減少するため、薄膜電極の厚みを薄くすることができる。しかしながら電子加速層の抵抗が高くなるために電子加速層を電流が流れにくくなり、電子放出量が減少する。それに対して電子加速層が薄いと、微粒子の凝集体が小さくても電子加速層の凹凸に寄与するため、薄膜電極を厚くする必要がある。よって、上記範囲が好ましい。また、電子加速層の層厚を、上記範囲とすることにより、電子加速層の層厚を均一化すること、また層厚方向における電子加速層の抵抗調整が可能となる。この結果、電子放出素子表面の全面から一様に電子を放出させることが可能となり、かつ素子外へ効率よく電子を放出させることができる。
【0020】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子加速層にバインダー樹脂を含んでいてもよい。
【0021】
電子加速層にバインダー樹脂を含むため、電子加速層に導電微粒子が含まれていると、導電微粒子の周囲にはバインダー樹脂が存在しているため、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化を発生し難い。よって、真空中だけでなく大気圧中でも安定して動作させることができる。また、絶縁体微粒子と、導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方と、はバインダー樹脂に分散しているため、凝集が起こり難く、素子の性能が均一になり、安定した電子供給が可能である。また、バインダー樹脂は電極基板との接着性が高く、機械的強度が高い。さらに、バインダー樹脂により、電子加速層表面の平滑性をよくすることができ、その上の薄膜電極を薄く形成することができる。
【0022】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記絶縁体微粒子は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいてもよい。または有機ポリマーを含んでいてもよい。上記絶縁体微粒子が、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、あるいは、有機ポリマーを含んでいると、これら物質の絶縁性が高いことにより、上記電子加速層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。
【0023】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記薄膜電極は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいてもよい。上記薄膜電極に、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つが含まれることによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子加速層で発生させた電子を効率よくトンネルさせ、電子放出素子外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
【0024】
ここで、上記電子加速層は、上記絶縁体微粒子と少なくとも上記導電微粒子とを含んでおり、該導電微粒子は、抗酸化力が高い導電体であってもよい。ここで、ここで言う抗酸化力が高いとは、酸化物形成反応の低いことを指す。一般的に熱力学計算より求めた、酸化物生成自由エネルギーの変化量ΔG[kJ/mol]値が負で大きい程、酸化物の生成反応が起こり易いことを表す。本発明ではΔG>−450[kJ/mol]以上に該当する金属元素が、抗酸化力の高い導電微粒子として該当する。また、該当する導電微粒子の周囲に、その導電微粒子の大きさよりも小さい絶縁体物質を付着、または被覆することで、酸化物の生成反応をより起こし難くした状態の導電微粒子も、抗酸化力が高い導電微粒子に含まれる。
【0025】
上記構成によると、導電微粒子として抗酸化力が高い導電体を用いることから、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化を発生し難いため、電子放出素子を大気圧中でもより安定して動作させることができる。よって、寿命を長くでき、大気中でも長時間連続動作をさせることができる。
【0026】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記導電微粒子は、貴金属であってもよい。このように、上記導電微粒子が、貴金属であることで、導電微粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化を図ることができる。
【0027】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記導電微粒子を成す導電体は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいてもよい。このように、上記導電微粒子を成す導電体が、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいることで、導電微粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を、より効果的に防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
【0028】
本発明の電子放出素子では、上記導電微粒子の平均粒径は、導電性を制御する必要から、上記絶縁体微粒子の大きさよりも小さくなければならず、3〜10nmであるのが好ましい。このように、上記導電微粒子の平均粒径を、上記絶縁体微粒子の平均粒径よりも小さく、好ましくは3〜10nmとすることにより、電子加速層内で、導電微粒子による導電パスが形成されず、電子加速層内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、平均粒径が上記範囲内の導電微粒子を用いることで、弾道電子が効率よく生成される。
【0029】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記導電微粒子の周囲に、該導電微粒子の大きさより小さい絶縁体物質である小絶縁体物質が存在してもよい。このように、上記導電微粒子の周囲に、小絶縁体物質が存在することは、素子作成時の導電微粒子の分散液中での分散性向上に貢献する他、導電微粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を、より効果的に防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
【0030】
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記小絶縁体物質は、アルコラート、脂肪酸、及びアルカンチオールの少なくとも1つを含んでいてもよい。このように、上記小絶縁体物質が、アルコラート、脂肪酸、及びアルカンチオールの少なくとも1つを含んでいることで、素子作成時の導電微粒子の分散液中での分散性向上に貢献するため、導電微粒子の凝集体が元と成る電流の異常パス形成を生じ難くする他、絶縁体微粒子の周囲に存在する導電微粒子自身の酸化に伴う粒子の組成変化を生じないため、電子放出特性に影響を与えることがない。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
【0031】
ここで、本発明の電子放出素子では、上記小絶縁体物質は、上記導電微粒子表面に付着して付着物質として存在するものであり、該付着物質は、上記導電微粒子の平均粒径より小さい形状の集合体として、上記導電微粒子表面を被膜していてもよい。このように、上記小絶縁体物質が、上記導電微粒子表面に付着あるいは、上記導電微粒子の平均粒径より小さい形状の集合体として、上記導電微粒子表面を被膜していることで、素子作成時の導電微粒子の分散液中での分散性向上に貢献するため、導電微粒子の凝集体が元と成る電流の異常パス形成を生じ難くする他、絶縁体微粒子の周囲に存在する導電微粒子自身の酸化に伴う粒子の組成変化を生じないため、電子放出特性に影響を与えることがない。よって、電子放出素子の長寿命化をさらに効果的に図ることができる。
【0032】
また、本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子加速層は、上記絶縁体微粒子と少なくとも上記塩基性分散剤とを含んでおり、該塩基性分散剤は、立体反発効果により前記絶縁体微粒子を分散させる高分子体に、電子対を供与する電子対供与体が置換基として導入されてなってもよい。
【0033】
立体反発効果により前記絶縁体微粒子を分散させる高分子体を有することで、絶縁体微粒子の分散性を良好にすることができ、電子加速層として均一な微粒子層を形成することが可能となる。これにより、電子放出素子における作成バラツキを少なく抑えることができる。
【0034】
本発明の電子放出装置は、上記いずれか1つの電子放出素子と、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧を印加する電源部と、を備えたことを特徴としている。
【0035】
上記構成によると、電気的導通を確保して十分な素子内電流を流し、薄膜電極からの電子放出量の向上を図ることができる。
【0036】
さらに、本発明の電子放出装置を自発光デバイス、及びこの自発光デバイスを備えた画像表示装置に用いることにより、電子放出量が向上するので、高効率で発光させることができる。また、安定で長寿命な面発光を実現する自発光デバイスを提供することができる。また、本発明の電子放出装置を、送風装置あるいは冷却装置に用いることにより、電子放出量が向上するので、高効率で冷却することができる。また、本発明の電子放出装置を、帯電装置、及びこの帯電装置を備えた画像形成装置に用いることにより、電子放出量が向上するので、高効率で帯電することができる。また、本発明の電子放出装置を、電子線硬化装置に用いることにより、電子放出量が向上するので、高効率で電子線を照射することができる。また、面積的に電子線硬化でき、マスクレス化が図れ、低価格化・高スループット化を実現することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の電子放出素子は、上記のように、上記電子加速層は、絶縁体微粒子と、該絶縁体微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径の導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方と、を含み、上記電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下であり、上記薄膜電極の層厚は、100nm以下である。
【0038】
上記構成によると、電極基板と薄膜電極との間には、絶縁体微粒子と、絶縁体微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径の導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方と、を含む電子加速層が設けられている。この電子加速層は、絶縁体微粒子と、上記導電微粒子および上記塩基性分散剤の少なくとも一方と、が緻密に集合した薄膜の層であり、半導電性を有する。この半導電性の電子加速層に電圧を印加すると、電子加速層内に電流が流れ、その一部は印加電圧の形成する強電界により弾道電子となって放出される。そして、上記構成では、電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下であり、上記薄膜電極の層厚は、100nm以下である。
【0039】
ここで、電子加速層の表面に凹凸が存在すると、電子加速層の山と谷の間の部分まで電極を作製するためには、平坦な面に電極を作製する場合よりも電極を厚く作製する必要がある。このことから電子加速層の表面粗さが粗いほど薄膜電極の膜厚を厚くする必要があり、薄膜電極の膜厚を厚くすると、薄膜電極を通過して放出される電子の量が減少するために電子放出量が減少する。
【0040】
しかし、上記構成では、電子加速層の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下となって最適化されており、それによって、薄膜電極を適度な厚み100nm以下まで薄くすることができる。薄膜電極は、膜厚が厚くなりすぎると、素子表面での導通は取れるけれども薄膜電極を通過して放出される電子の量が減ってしまうことから、100nm以下が好ましい。
【0041】
よって、本発明の電子放出素子では、電子加速層の表面粗さを最適化し、薄膜電極を適度な厚みまで薄くでき、電子放出量の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の電子放出素子を有する電子放出装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態の電子放出素子における電子加速層付近の模式図である。
【図3】本発明の一実施形態の電子放出素子における別の電子加速層付近の模式図である。
【図4】電子放出実験の測定系を示す図である。
【図5】薄膜電極の膜厚を変化させて電子放出電流を測定した結果を示す図である。
【図6】本発明の電子放出装置を用いた帯電装置の一例を示す図である。
【図7】本発明の電子放出装置を用いた電子線硬化装置の一例を示す図である。
【図8】本発明の電子放出装置を用いた自発光デバイスの一例を示す図である。
【図9】本発明の電子放出装置を用いた自発光デバイスの他の一例を示す図である。
【図10】本発明の電子放出装置を用いた自発光デバイスの更に別の一例を示す図である。
【図11】本発明の電子放出装置を用いた自発光デバイスを具備する画像表示装置の他の一例を示す図である。
【図12】本発明の電子放出装置を用いた送風装置及びそれを具備した冷却装置の一例を示す図である。
【図13】本発明の電子放出装置を用いた送風装置及びそれを具備した冷却装置の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の電子放出素子の実施形態および実施例について、図1〜13を参照しながら具体的に説明する。なお、以下に記述する実施の形態および実施例は本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明はこれらよって限定されるものではない。
【0044】
〔実施の形態1〕
(素子構成)
図1は、本発明に係る一実施形態の電子放出素子1を有する電子放出装置10の構成を示す模式図である。図1に示すように、電子放出装置10は、本発明に係る一実施形態の電子放出素子1と電源7とを有する。図1に示すように、本実施形態の電子放出素子1は、下部電極となる電極基板2と、上部電極となる薄膜電極3と、その間に挟まれて存在する電子加速層4とからなる。また、電極基板2と薄膜電極3とは電源7に繋がっており、互いに対向して配置された電極基板2と薄膜電極3との間に電圧を印加できるようになっている。電子放出素子1は、電極基板2と薄膜電極3との間に電圧を印加することで、電極基板2と薄膜電極3との間、つまり、電子加速層4に電流を流し、その一部を印加電圧の形成する強電界により弾道電子として、薄膜電極3を通過(透過)して、あるいは絶縁体微粒子間の隙間の影響から生じる薄膜電極3の孔(隙間)もしくは、絶縁体微粒子の段差等からすり抜けて外部へと放出される。
【0045】
下部電極となる電極基板2は、電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、適度な導電性を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばSUSやTi、Cu等の金属基板、SiやGe、GaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子加速層4との界面に金属などの導電性物質を電極として付着させることによって、下部電極となる電極基板2として用いることができる。上記導電性物質としては、導電性に優れた材料を、マグネトロンスパッタ等を用いて薄膜形成できれば、その構成材料は特に問わないが、大気中での安定動作を所望するのであれば、抗酸化力の高い導電体を用いることが好ましく、貴金属を用いることがより好ましい。また、酸化物導電材料として、透明電極に広く利用されているITO薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点で、例えば、ガラス基板表面にTiを200nm成膜し、さらに重ねてCuを1000nm成膜した金属薄膜を用いてもよいが、これら材料および数値に限定されることはない。
【0046】
薄膜電極3は、電子加速層4内に電圧を印加させるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子加速層4内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。また薄膜電極3の膜厚は、電子放出素子1から外部へ電子を効率良く放出させる条件として重要であり、10〜100nmの範囲とすることが好ましい。薄膜電極3を平面電極として機能させるための最低膜厚は10nmであり、これ未満の膜厚では、電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子1から外部へ電子を放出させるための最大膜厚は100nmであり、これを超える膜厚では弾道電子が透過し難く、薄膜電極3で弾道電子の吸収あるいは反射による電子加速層4への再捕獲が生じてしまう。
【0047】
図2、3は、電子放出素子1の電子加速層4付近を拡大した模式図である。電子加速層4は、図2に示すように、絶縁体微粒子5と絶縁体微粒子5の平均粒径よりも小さい平均粒径の導電微粒子6とを含んでいる。あるいは、電子加速層4は、図3に示すように、絶縁体微粒子5と、溶媒中における絶縁体微粒子5の凝集を防ぎ、絶縁体微粒子を分散させるための塩基性分散剤60とを含んでいる。もちろん、電子加速層4に絶縁体微粒子5と導電微粒子6と塩基性分散剤60とが含まれていてもよい。
【0048】
絶縁体微粒子5の材料はSiO、Al、TiOといったものが実用的となる。ただし、表面処理が施された小粒径シリカ粒子を用いると、それよりも粒子径の大きな球状シリカ粒子を用いるときと比べて、溶媒中に占めるシリカ粒子の表面積が増加し、溶液粘度が上昇するため、電子加速層4の膜厚が若干増加する傾向にある。また、絶縁体微粒子5の材料には、有機ポリマーから成る微粒子を用いてもよく、例えば、JSR株式会社の製造販売するスチレン/ジビニルベンゼンから成る高架橋微粒子(SX8743)、または日本ペイント株式会社の製造販売するスチレン・アクリル微粒子のファインスフェアシリーズが利用可能である。ここで、絶縁体微粒子5は、2種類以上の異なる粒子を用いてもよく、また、粒径のピークが異なる粒子を用いてもよく、あるいは、単一粒子で粒径がブロードな分布のものを用いてもよい。
【0049】
電子加速層4に導電微粒子6が含まれる場合、電子加速層4を構成する微粒子全体における絶縁体微粒子5の重量割合は80〜95%、絶縁体微粒子5の大きさは、導電微粒子6に対して優位な放熱効果を得るため、導電微粒子6の平均粒径よりも大きいことが好ましい。絶縁体微粒子5の平均粒径は10〜1000nmであることが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
【0050】
次に、電子加速層4に導電微粒子6が含まれる電子放出素子の、導電微粒子6について説明する。の材料としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような導電体でも用いることができる。抗酸化力が高い導電体であると大気圧動作させた時の酸化劣化を避けることができる。ここで言う抗酸化力が高いとは、酸化物形成反応の低いことを指す。一般的に熱力学計算より求めた、酸化物生成自由エネルギーの変化量ΔG[kJ/mol]値が負で大きい程、酸化物の生成反応が起こり易いことを表す。抗酸化力が高い導電体としては、貴金属、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルといった材料が挙げられる。このような導電微粒子6は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて作成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀ナノ粒子等の市販の金属微粒子粉体も利用可能である。弾道電子の生成の原理については後段で記載する。
【0051】
ここで、導電微粒子6の平均粒径は、導電性を制御する必要から、絶縁体微粒子5の大きさよりも小さくなければならず、3〜10nmであるのがより好ましい。このように、導電微粒子6の平均粒径を、絶縁体微粒子5の平均粒径よりも小さく、好ましくは3〜10nmとすることにより、電子加速層4内で、導電微粒子6による導電パスが形成されず、電子加速層4内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、平均粒径が上記範囲内の導電微粒子6を用いることで、弾道電子が効率よく生成される。
【0052】
なお、導電微粒子6の周囲には、導電微粒子6の平均粒径より小さい絶縁体物質である小絶縁体物質が存在していてもよく、この小絶縁体物質は、導電微粒子6の表面に付着する付着物質であってもよく、付着物質は、導電微粒子6の平均粒径より小さい形状の集合体として、導電微粒子6の表面を被膜する絶縁被膜であってもよい。小絶縁体物質としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような絶縁体物質でも用いることができる。ただし、導電微粒子6の大きさより小さい絶縁体物質が導電微粒子6を被膜する絶縁被膜であり、絶縁被膜を導電微粒子6の酸化被膜によって賄った場合、大気中での酸化劣化により酸化皮膜の厚さが所望の膜厚以上に厚くなってしまう恐れがあるため、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、有機材料による絶縁被膜が好ましく、例えば、アルコラート、脂肪酸、アルカンチオールといった材料が挙げられる。この絶縁被膜の厚さは薄い方が有利であることが言える。
【0053】
ここで、電子加速層4に導電微粒子6が含まれる電子放出素子の電子放出の原理について、図2を用いて説明する。図2に示すように、電子加速層4は、その大部分を絶縁体微粒子5で構成され、その隙間に導電微粒子6が点在している。図2における絶縁体微粒子5および導電微粒子6の比率は、絶縁体微粒子5および導電微粒子6の総重量に対する絶縁体微粒子5重量比率が80%に相当する状態であり、絶縁体微粒子5一粒子当たりに付着する導電微粒子6は六粒子程度となる。
【0054】
電子加速層4は絶縁体微粒子5と少数の導電微粒子6とで構成されるため、半導電性を有する。よって電子加速層4へ電圧を印加すると、極弱い電流が流れる。電子加速層4の電圧電流特性は所謂バリスタ特性を示し、印加電圧の上昇に伴い急激に電流値を増加させる。この電流の一部は、印加電圧が形成する電子加速層4の強電界により弾道電子となり、薄膜電極3を透過あるいはその隙間を通過して電子放出素子1の外部へ放出される。弾道電子の形成過程は、電子が電界方向に加速されつつトンネルすることによるものと考えられるが、断定できていない。
【0055】
次に、電子加速層4に塩基性分散剤60が含まれる電子放出素子の塩基性分散剤60について説明する。本発明において、塩基性分散剤60は、凝集し易い絶縁体微粒子5の溶媒への分散を良好にして、電極基板2表面に極めて平滑な微粒子層の形成を実現する分散剤としての本来の機能と、絶縁体微粒子5の表面の電気伝導を可能にするといったさらなる機能とを有するものである。
【0056】
塩基性分散剤60は、高分子と、該高分子の一部に導入された電子対供与体とを有する。高分子が、立体反発効果によって分散性を付与する。図3においては、参照符号15にて、絶縁体微粒子5相互間に形成される立体障害となる領域を示す。電子対供与体は、絶縁体微粒子5に吸着するアンカーとしての役割を果たす。また、電子対供与体は、電子対を供与したことで、プラスイオンとなり、イオン電導を可能にする。絶縁体微粒子5の表面の電気伝導を可能にする機能は、塩基性分散剤60における上記イオン電導を可能にする部分が、電荷の受け渡しをしているためと考えられる。また、塩基性分散剤60のイオン電導部分は、電気的に互いに反発し合うため、絶縁体微粒子の分散性にも寄与する。
【0057】
電子対供与体部分は、電子供与基から成る特定の置換基であり、上記置換基としては、例えば、π電子系であるフェニル基やビニル基、そしてアルキル基、アミノ基等である。
【0058】
本発明に適用できる塩基性分散剤60の市販品を例示すると、アビシア社製の商品名:ソルスパース9000、13240、13940、20000、24000、24000GR、24000SC、26000、28000、32550、34750、31845等の各種ソルスパース分散剤、ビックケミー社製の商品名:ディスパービック106、112、116、142、161、162,163、164、165、166、181、182、183、184、185、191、2000、2001、味の素ファインテクノ社製の商品名:アジスパーPB711、PB411、PB111、PB821、PB822、エフカケミカルズ社製の商品名:EFKA−47、4050等を挙げることができる。
【0059】
電子加速層4における塩基性分散剤60の含有量は、電子放出量と相関のある電子放出素子の素子内電流の流れ易さに関係するため、電子放出量を制御する上で、重要な制御因子の一つである。
【0060】
電子加速層4への塩基性分散剤60の添加は、電子加速層4を構成する絶縁体微粒子5を溶媒中に分散する過程で行う。つまり使用する溶媒に必要量の塩基性分散剤60を投入して分散した分散剤含有溶媒に絶縁体微粒子5を加え、絶縁体微粒子5の十分な分散を行うことで、絶縁体微粒子5の表面に塩基性分散剤60を付着させる。絶縁体微粒子5の表面における分散剤の付着量は、溶媒に対する分散剤の投入量を操作することで制御可能である。しかしながら、分散剤の投入量と、分散剤の添加後に得られる電子加速層4の電流の流れ易さは一対一の関係ではなく、ある添加量に電流の流れ易さのピークを持つ特性を有する。添加量が少ない場合には、電子の担い手が少ないため、当然ながら電子加速層4を流れる電流量は小さくなる。一方、添加量が多すぎる場合には、塩基性分散剤60の有する高分子の成分が、素子内を流れる電流に対して抵抗成分として強く作用してしまい、電流値を小さくしてしまう。
【0061】
このように、塩基性分散剤60の添加量は、素子内に流れる電流量を鑑みて、最適に設定するものであるため、一概にはいえない。ただし、電子加速層4における塩基性分散剤60の含有量を、絶縁体微粒子5が分散された分散溶液を用い、これを電極基板2上に滴下してスピンコート法で絶縁体層を形成する条件において、絶縁体微粒子5の分散溶液に含まれる、溶媒に対する塩基性分散剤60の添加量にて規定すると、添加量0.4〜10wt%が好ましく、より好ましくは1〜5wt%以下である。溶媒に対する添加量が0.4wt%未満となると、電子加速層を流れる電流量が十分に得られず、電子放出素子1からの電子放出をまったく得ることができない虞がある。より好ましい1wt%以上とすることで、電子放出素子1からの電子放出を安定して得ることができる。一方、添加量の上限であるが、10wt%を超えると、塩基性分散剤60の有する高分子の部分の抵抗成分が素子内電流を流れ難くしてしまい、電子放出素子1からの電子放出を低下させる虞がある。添加量の下限をより好ましい5wt%以下とすることで、電子放出素子1からの電子放出を低下させることなく得ることができるといった効果がある。
【0062】
ここで、電子加速層4に塩基性分散剤60が含まれる電子放出素子の電子放出の原理について、前述の図3を用いて説明する。図3に示すように、電子加速層4は、その大部分を絶縁体微粒子5で構成され、絶縁体微粒子5の表面に塩基性分散剤60が付着している。これにより、絶縁体微粒子5の表面に塩基性分散剤60からなる立体障害領域15が形成され、絶縁体微粒子5の溶媒への分散を良好にする。また、絶縁体微粒子5は絶縁性であるが、その表面に付着した塩基性分散剤60のイオン電導部分が、電荷の受け渡しを行うことで、電子加速層4は半導電性を有する。したがって、電極基板2と薄膜電極3との間に電圧を印加すると、電子加速層4に極めて弱い電流が流れる。電子加速層4の電圧電流特性は、所謂バリスタ特性を示し、印加電圧の上昇に伴い急激に電流値を増加させる。この電流の一部は、印加電圧が形成する電子加速層4内の強電界により弾道電子となり、薄膜電極3を通過(透過)して、または薄膜電極3に孔(隙間)がある場合は、その孔から、外部へと放出される。道電子の形成過程は、電子が電界方向に加速されつつトンネルすることによるものと考えられるが、断定できていない。
【0063】
また、絶縁体微粒子5と、導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方とは、バインダー樹脂に分散されていてもよい。つまり、電子加速層はバインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂は、電極基板2との接着性がよく、絶縁体微粒子5、導電微粒子6および塩基性分散剤60を分散でき、絶縁性を有するものであればよい。このようなバインダー樹脂として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、加水分解性基含有シロキサン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、などが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
絶縁体微粒子5と、導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方と、がバインダー樹脂に分散されていると、バインダー樹脂が電極基板2との接着性が高く機械的強度が高いため、電子放出素子1の機械的強度が増す。また、絶縁体微粒子5と、導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方とがバインダー樹脂に分散していると、凝集が起こり難くなる。よって、電子放出素子1の性能が均一になり、安定した電子供給が可能となる。また、バインダー樹脂によって、電子加速層4表面の平滑性をよくすることができ、その上の薄膜電極3を薄く形成することができる。
【0065】
電子加速層4は薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることができるが、層厚を均一化できること、また層厚方向における電子加速層の抵抗調整が可能となることなどから、電子加速層4の層厚は、12〜6000nmが好ましく、300〜2000nmがより好ましい。
【0066】
ここで、本実施形態の電子放出素子1では、電子加速層4の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下であり、薄膜電極の層厚は、100nm以下となっている。
【0067】
中心線平均粗さは、粗さ曲線f(x)から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この部分の平均曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値であり、次の式(1)から求まる。
【0068】
【数1】

【0069】
実際の電子加速層4の表面粗さは、レーザー顕微鏡を用いて測定できる。後段の実施例では、レーザー顕微鏡としてキーエンス社製のVK−9500を用いて、基準長さLを5mmとして任意で粗さ曲線を選択し、中心線平均粗さ(Ra)を求めた。
【0070】
ここで、電子加速層の表面に凹凸が存在すると、電子加速層の山と谷の間の部分まで電極を作製するためには、平坦な面に電極を作製する場合よりも電極を厚く作製する必要がある。このことから電子加速層の表面粗さが粗いほど薄膜電極の膜厚を厚くする必要があり、薄膜電極の膜厚を厚くすると、薄膜電極を通過して放出される電子の量が減少するために電子放出量が減少する。
【0071】
しかし、本実施形態の電子放出素子1の電子加速層4の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下となって最適化されている。それによって、薄膜電極3を適度な厚み100nm以下まで薄くすることができる。薄膜電極3は、膜厚が厚くなりすぎると、素子表面での導通は取れるけれども薄膜電極を通過して放出される電子の量が減ってしまうことから、100nm以下が好ましい。
【0072】
なお、絶縁体微粒子5の平均粒径は10〜1000nmであると、10nmの粒子が平坦な基板上に隙間なく綺麗に並んだ場合がもっとも平坦であることから、Ra値の下限値は0.9nmとなる。よって、電子放出素子1では、電子加速層4の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.9nm以上であるのが好ましい。また、薄膜電極3は、素子表面に一様に導通が取れる状態が必要不可欠であり、最低でも10nmの膜厚がないと素子表面での導通が取れない。よって、薄膜電極3の層厚は、10nm以上であるのが好ましい。
【0073】
以上のように、本実施形態の電子放出素子1では、電子加速層の4表面粗さを最適化し、薄膜電極を適度な厚みまで薄くでき、電子放出量の向上を図ることができる。
【0074】
(製造方法)
次に、電子放出素子1の、製造方法の一実施形態について説明する。
【0075】
分散溶媒に絶縁体微粒子5と、導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方と、を分散させた微粒子分散液Aを得る。例えば、分散溶媒に、絶縁体微粒子5を投入して分散させ、ここにさらに導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方を追加投入して分散させることで得ることができる。分散方法は特に限定されるものではなく、例えば、常温で超音波分散器にかければよい。ここで、分散溶媒としては、絶縁体微粒子5と、導電微粒子6および塩基性分散剤60の少なくとも一方と、を分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。また、導電微粒子6を用いる場合、分散性を向上させる目的で、事前処理として導電微粒子6の表面処理、例えばアルコラート処理を施すとよい。
【0076】
また、電子加速層4に導電微粒子6を含み、さらにバインダー樹脂を含む場合には、まず、絶縁体微粒子5とバインダー樹脂と分散溶媒中に分散させた分散液Bを得る。ここで用いられる分散溶媒としては、絶縁体微粒子5とバインダー樹脂とを分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノールなどが挙げられる。これらの分散溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。分散方法は特に限定されるものではなく、例えば、常温で超音波分散器にかけることで分散させることができる。絶縁体微粒子の含有率は、1〜50重量%が好ましい。1重量%より少ない場合は絶縁体として電子加速層4の抵抗を調整するという効果を発揮せず、50重量%より多い場合は絶縁体微粒子5の凝集が発生する。中でも、1〜20重量%であることがより好ましい。
【0077】
次に、上記のように得られた分散液Bと導電微粒子6とを混合して混合溶液Dを得る。混合方法は特に限定されるものではなく、例えば、常温で攪拌すればよい。ここで、この混合に際して、導電微粒子6が粉末状の場合は、分散溶媒中に導電微粒子6を分散させた導電微粒子分散液Cを用いて分散液Bと混合溶液Dを得るのが混合するのがよい。導電微粒子6の分散溶媒としては、導電微粒子を分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、ヘキサン、トルエンなどが挙げられる。また、導電微粒子分散液Cは、導電微粒子のナノコロイド液を液体の状態で用いてもよい。導電微粒子のナノコロイド液を液体の状態で使用すると、導電微粒子6が均一分散した電子加速層4を形成することができる。導電微粒子のナノコロイド液の例としては、ハリマ化成株式会社が製造販売する金ナノ粒子コロイド液、応用ナノ研究所が製造販売する銀ナノ粒子、株式会社徳力化学研究所が製造販売する白金ナノ粒子コロイド液及びパラジウムナノ粒子コロイド液、株式会社イオックスの製造販売するニッケルナノ粒子ペーストなどが挙げられる。また、導電微粒子のナノコロイド液の溶媒には、絶縁体微粒子5をコロイド分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。
【0078】
導電微粒子6の含有率は、0.5〜30重量%が好ましい。1重量%より少ない場合は導電微粒子として素子内電流を増加させる効果を発揮せず、30重量%より多い場合は導電微粒子の凝集が発生する。中でも、2〜20重量%であることがより好ましい。
【0079】
そして、上記のように作成した微粒子分散液Aあるいは混合溶液Dを電極基板2上に塗布し、例えば、スピンコート法を用いて、電子加速層4を形成する。スピンコート法による成膜、乾燥、を複数回繰り返すことで所定の膜厚にすることができる。電子加速層4は、スピンコート法以外に、例えば、滴下法、スプレーコート法等の方法でも成膜することができる。そして、電子加速層4の形成後、電子加速層4上に薄膜電極3を成膜する。薄膜電極3の成膜には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いればよい。また、薄膜電極3は、例えば、インクジェット法、スピンコート法、蒸着法等を用いて成膜してもよい。
【0080】
(実施例)
以下の実施例では、本発明に係る電子放出素子を用いてRaを測定し、また、電流測定した実験について説明する。なお、これら実験は実施の一例であって、本発明の内容を制限するものではない。
【0081】
まず実施例1〜7の電子放出素子と比較例1〜5の電子放出素子とを以下のように作製し、Raを測定した。さらに、作製した実施例1〜7と比較例1〜5との電子放出素子について、図4に示す実験系を用いて単位面積あたりの電子放出電流の測定実験を行った。図4の実験系では、電子放出素子1の薄膜電極3側に、絶縁体スペーサ9を挟んで対向電極8を配置させる。そして、電子放出素子1および対向電極8は、それぞれ、電源7に接続されており、電子放出素子1にはV1の電圧、対向電極8にはV2の電圧が印加されるようになっている。このような実験系を真空中に配置して電子放出実験を行った。また、各実験では、絶縁体スペーサ9を挟んで、電子放出素子と対向電極との距離は5mmとした。また、薄膜電極3への印加電圧V1=17V、対抗電極への印加電圧V2=50Vにて測定した。
【0082】
(実施例1)
まず、10mLの試薬瓶に分散溶媒としてトルエン溶媒を3mL入れ、絶縁体微粒子5として球状シリカ粒子(平均粒径50nm)を0.5g投入し、試薬瓶を超音波分散器に30minかけ、シリカ粒子の分散を行った。次に導電微粒子6として応用ナノ粒子研究所製の銀ナノ粒子(銀平均粒径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)を0.125g追加投入し、同様に超音波分散処理を行って、球状シリカ粒子と銀ナノ粒子とが分散された微粒子分散液aを得た。銀ナノ粒子添加後の超音波分散処理の時間を15minとした。微粒子分散液aに占める球状シリカ粒子および銀ナノ粒子の総質量に対する球状シリカ粒子の重量比率は80%であった。
【0083】
次に、電極基板2となる30mm角のSUS基板上に、スピンコート法を用いて、微粒子分散液aを堆積させて、電子加速層4を形成した。ここで、実施例1の電子加速層4の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、Raは0.1μmであった。
【0084】
このように形成した電子加速層4の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極を成膜することにより、実施例1の電子放出素子を得た。薄膜電極3の成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は40nm、同面積は0.014cmとした。
【0085】
実施例1の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、0.3mA/cmの電子放出電流が確認された。
【0086】
(実施例2)
銀ナノ粒子添加後の超音波分散処理の時間を30minとした以外は実施例1と同様にして、電子加速層4を作製した。この実施例2の電子加速層4の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、Raは0.2μmであった。
【0087】
この実施例2の電子加速層4を複数作成し、それらの表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて、材料が金、層厚が5nm、10nm、15nm、30nm、35nm、40nm、45nmであり、面積が0.014cmの薄膜電極3をそれぞれ成膜して、実施例2の電子放出素子を複数得た。これらの電子放出素子を1×10−8ATMの真空中において、単位面積当たりの電子放出電流測定した結果を、図5に示す。
【0088】
図5からわかるように、Raが0.2μmの場合、薄膜電極3の膜厚が30nm以上で電子放出が確認された。
【0089】
(実施例3)
まず、10mLの試薬瓶に分散溶媒としてトルエン溶媒を3mL入れ、塩基性分散剤60として、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ株式会社製)を0.03g投入し、超音波分散器に1minかけて分散させた。さらに上記試薬瓶に絶縁体微粒子5として球状シリカ粒子(平均粒径50nm)を0.25g追加投入し、同様に試薬瓶を超音波分散器に10minかけて、塩基性分散剤と球状シリカ粒子とが分散された微粒子分散液bを得た。
【0090】
次に、電極基板2となる30mm角のSUS基板上に、スピンコート法を用いて、微粒子分散液bを堆積させて、電子加速層4を形成した。この実施例3の電子加速層4の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、Raは0.1μmであった。
【0091】
このように形成した電子加速層4の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極を成膜することにより、実施例1の電子放出素子を得た。薄膜電極3の成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は50nm、同面積は0.014cmとした。
【0092】
実施例3の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、0.5mA/cmの電子放出電流が確認された。
【0093】
(実施例4)
まず、10mLの試薬瓶に分散溶媒としてエタノール溶媒4mLと、バインダー樹脂としてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)0.5gを入れ、絶縁体微粒子5として平均粒径12nmの球状シリカ粒子AEROSIL R8200(エボニックエグサジャパン株式会社製)を0.5g投入し、上記試薬瓶を超音波分散器に30minかけ、バインダー樹脂と球状シリカ粒子とが分散したバインダー含有絶縁体微粒子分散液cを調製した。
【0094】
次に、電極基板2となる30mm角のSUS基板上に、スピンコート法を用いて、バインダー含有絶縁体微粒子分散液cを1回塗布して、電子加速層4を形成した。この実施例4の電子加速層4の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、Raは0.1μmであった。
【0095】
このように形成した電子加速層4の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極を成膜することにより、実施例4の電子放出素子を得た。薄膜電極3の成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は40nm、同面積は0.014cmとした。
【0096】
実施例3の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、0.05mA/cmの電子放出電流が確認された。
【0097】
(実施例5)
まず、10mLの試薬瓶に分散溶媒としてエタノール溶媒6mLと、バインダー樹脂としてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)0.5gを入れ、絶縁体微粒子5として平均粒径12nmの球状シリカ粒子AEROSIL R8200(エボニックエグサジャパン株式会社製)を0.5g投入し、上記試薬瓶を超音波分散器に30minかけ、バインダー樹脂と球状シリカ粒子とが分散したバインダー含有絶縁体微粒子分散液dを調製した。
【0098】
次に、バインダー含有絶縁体微粒子分散液dの1.0gを別の試薬瓶に取り、そこに導電微粒子6が分散溶媒に分散された分散液として、銀ナノ粒子含有ヘキサン分散溶液(応用ナノ粒子研究所製、銀微粒子の平均粒径4.5nm、銀微粒子固形分濃度7%)1.0gを投入した。これを、常温で攪拌し分散させた。バインダー樹脂と球状シリカ粒子と銀ナノ粒子とが分散したバインダー含有微粒子分散液eを得た。
【0099】
電極基板となる30mm角のSUS基板上にスピンコート法を用いて、上記バインダー含有微粒子分散液を1回塗布して、電子加速層を形成した。
電子加速層の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、Raが0.1μmであった。
電子加速層の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極を成膜した。成膜材料として金を使用し、薄膜電極の層厚は40nm、同面積は0.014cm2とした。
この電子放出素子は1×10−ATMの真空中において、薄膜電極への印加電圧V1=17Vにて、単位面積当たりの電子放出電流は、0.1mA/cmが確認された。
【0100】
(実施例6)
薄膜電極3の厚みを100nmとした以外は実施例3と同様に作製し、実施例6の電子放出素子を得た。本電子放出素子は、1×10−8ATMの真空中において、0.01mA/cmの電子放出電流が得られた。
【0101】
なお、薄膜電極の厚みが実施例3より厚いため、実施例3に比べて電子放出電流が減少している。
【0102】
(実施例7)
薄膜電極の膜厚を10nmとした以外は実施例4と同様に作製し、実施例7の電子放出素子を得た。本電子放出素子は、1×10−8ATMの真空中において、0.006mA/cmの電子放出電流が得られた。
【0103】
実施例7では実施例3に比べて放出電流がかなり少なくなっている。これは、粒子層に多少の凹凸があり、均一な電極になっておらず、一部がかろうじて電極として機能している状態であるためではないかと考える。
【0104】
(比較例1)
銀ナノ粒子添加後の超音波分散処理の時間を5minとした以外は実施例1と同様にして、比較例1の電子放出素子を作製した。この比較例1の電子加速層の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、凝集体が多数存在し、Raが0.3μmであった。
【0105】
この比較例1の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、電子加速層に電流が流れず、電子放出が確認されなかった。
【0106】
(比較例2)
球状シリカ粒子を分散する超音波分散処理の時間を1minとし、銀ナノ粒子添加後の超音波分散処理の時間を5minとした以外は実施例1と同様にして、比較例2の電子放出素子を作製した。この比較例2の電子加速層の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、凝集体が多数存在し、Raが0.3μmであった。
【0107】
比較例2の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、0.03mA/cmの電子放出電流が確認された。
【0108】
(比較例3)
球状シリカ粒子投入後の超音波分散処理の時間を1minとした以外は実施例3と同様にして、比較例3の電子放出素子を作製した。比較例3の電子加速層の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、大きな凝集体が多数存在し、Raが0.6μmであった。
【0109】
この比較例3の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、電子加速層に電流が流れず、電子放出が確認されなかった。
【0110】
(比較例4)
超音波分散処理の時間を1minとした以外は実施例4と同様にして、比較例4の電子放出素子を作製した。比較例4の電子加速層の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、大きな凝集体が多数存在し、Raが0.4μmであった。
【0111】
この比較例4の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、電子加速層に電流が流れず、電子放出が確認されなかった。
【0112】
(比較例5)
バインダー樹脂と球状シリカ粒子との分散における超音波分散処理の時間を1minとした以外は実施例5と同様にして、比較例5の電子放出素子を作製した。比較例5の電子加速層の表面をレーザー顕微鏡で観察した結果、大きな凝集体が多数存在し、Raが0.4μmであった。
【0113】
この比較例5の電子放出素子は1×10−8ATMの真空中において、電子加速層に電流が流れず、電子放出が確認されなかった。
【0114】
以上からわかるように、超音波処理にて分散させる時間が短いと、微粒子の分散性が悪く、電子加速層の表面粗が、中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以上になることがわかる。また、電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下となると、電子放出素子の電子放出量が向上することがわかる。また、薄膜電極の層厚は、100nm以下であると好適に電子が放出されることがわかる。さらに、薄膜電極の層厚は、10nm以上である必要があることがわかる。
【0115】
〔実施の形態2〕
図6に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出装置10を利用した本発明に係る帯電装置90の一例を示す。帯電装置90は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とを有する電子放出装置10から成り、感光体11を帯電させるものである。本発明に係る画像形成装置は、この帯電装置90を具備している。本発明に係る画像形成装置において、帯電装置90を成す電子放出素子1は、被帯電体である感光体11に対向して設置され、電圧を印加することにより、電子を放出させ、感光体11を帯電させる。なお、本発明に係る画像形成装置では、帯電装置90以外の構成部材は、従来公知のものを用いればよい。ここで、帯電装置90として用いる電子放出素子1は、感光体11から、例えば3〜5mm隔てて配置するのが好ましい。また、電子放出素子1への印加電圧は25V程度が好ましく、電子放出素子1の電子加速層の構成は、例えば、25Vの電圧印加で、単位時間当たり1μA/cmの電子が放出されるようになっていればよい。
【0116】
帯電装置90として用いられる電子放出装置10は電子放出量が向上しているため、帯電装置90は、効果的に帯電できる。
【0117】
さらに帯電装置90として用いられる電子放出装置10は、面電子源として構成されるので、感光体11の回転方向へも幅を持って帯電を行え、感光体11のある箇所への帯電機会を多く稼ぐことができる。よって、帯電装置90は、線状で帯電するワイヤ帯電器などと比べ、均一な帯電が可能である。また、帯電装置90は、数kVの電圧印加が必要なコロナ放電器と比べて、10V程度と印加電圧が格段に低くてすむというメリットもある。
【0118】
〔実施の形態3〕
図7に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出装置10を用いた本発明に係る電子線硬化装置100の一例を示す。電子線硬化装置100は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とを有する電子放出装置10と、電子を加速させる加速電極21とを備えている。電子線硬化装置100では、電子放出素子1を電子源とし、放出された電子を加速電極21で加速してレジスト(被硬化物)22へと衝突させる。一般的なレジスト22を硬化させるために必要なエネルギーは10eV以下であるため、エネルギーだけに注目すれば加速電極は必要ない。しかし、電子線の浸透深さは電子のエネルギーの関数となるため、例えば厚さ1μmのレジスト22を全て硬化させるには約5kVの加速電圧が必要となる。
【0119】
従来からある一般的な電子線硬化装置は、電子源を真空封止し、高電圧印加(50〜100kV)により電子を放出させ、電子窓を通して電子を取り出し、照射する。この電子放出の方法であれば、電子窓を透過させる際に大きなエネルギーロスが生じる。また、レジストに到達した電子も高エネルギーであるため、レジストの厚さを透過してしまい、エネルギー利用効率が低くなる。さらに、一度に照射できる範囲が狭く、点状で描画することになるため、スループットも低い。
【0120】
これに対し、電子放出装置10を用いた本発明に係る電子線硬化装置100は、電子放出量が向上しているため、効果的に電子線を照射できる。また、電子透過窓を通さないのでエネルギーのロスも無く、印加電圧を下げることができる。さらに面電子源であるためスループットが格段に高くなる。また、パターンに従って電子を放出させれば、マスクレス露光も可能となる。
【0121】
〔実施の形態4〕
図8〜10に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出装置10を用いた本発明に係る自発光デバイスの例をそれぞれ示す。
【0122】
図8に示す自発光デバイス31は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とを有する電子放出装置と、さらに、電子放出素子1と離れ、対向した位置に、基材となるガラス基板34、ITO膜33、そして蛍光体32が積層構造を有する発光部36と、から成る。
【0123】
蛍光体32としては赤、緑、青色発光に対応した電子励起タイプの材料が適しており、例えば、赤色ではY:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、緑色ではZnSiO:Mn、BaAl1219:Mn、青色ではBaMgAl1017:Eu2+等が使用可能である。ITO膜33が成膜されたガラス基板34表面に、蛍光体32を成膜する。蛍光体32の厚さ1μm程度が好ましい。また、ITO膜33の膜厚は、導電性を確保できる膜厚であれば問題なく、本実施形態では150nmとした。
【0124】
蛍光体32を成膜するに当たっては、バインダーとなるエポキシ系樹脂と微粒子化した蛍光体粒子との混練物として準備し、バーコーター法或いは滴下法等の公知な方法で成膜するとよい。
【0125】
ここで、蛍光体32の発光輝度を上げるには、電子放出素子1から放出された電子を蛍光体へ向けて加速する必要があり、その場合は電子放出素子1の電極基板2と発光部36のITO膜33の間に、電子を加速する電界を形成するための電圧印加するために、電源35を設けるとよい。このとき、蛍光体32と電子放出素子1との距離は、0.3〜1mmで、電源7からの印加電圧は18V、電源35からの印加電圧は500〜2000Vにするのが好ましい。
【0126】
図9に示す自発光デバイス31’は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とを有する電子放出装置10と、さらに、蛍光体(発光体)32を備えている。自発光デバイス31’では、蛍光体32は平面状であり、電子放出素子1の表面に蛍光体32が配置されている。ここで、電子放出素子1表面に成膜された蛍光体32の層は、前述のように微粒子化した蛍光体粒子との混練物から成る塗布液として準備し、電子放出素子1表面に成膜する。但し、電子放出素子1そのものは外力に対して弱い構造であるため、バーコーター法による成膜手段は利用すると素子が壊れる恐れがある。このため滴下法或いはスピンコート法等の方法を用いるとよい。
【0127】
図10に示す自発光デバイス31”は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とを有する電子放出装置10を備えており、さらに、電子放出素子1の電子加速層4に蛍光体(発光体)32’として蛍光の微粒子が混入されている。この場合、蛍光体32’の微粒子を絶縁体微粒子5と兼用させてもよい。但し前述した蛍光体の微粒子は一般的に電気抵抗が低く、絶縁体微粒子5に比べると明らかに電気抵抗は低い。よって蛍光体の微粒子を絶縁体微粒子5に変えて混合する場合、その蛍光体の微粒子の混合量は少量に抑えなければ成らない。例えば、絶縁体微粒子5として球状シリカ粒子(平均粒径110nm)、蛍光体微粒子としてZnS:Mg(平均粒径500nm)を用いた場合、その重量混合比は3:1程度が適切となる。
【0128】
上記自発光デバイス31,31’,31”では、電子放出装置10より放出させた電子を蛍光体32,32に衝突させて発光させる。電子放出素子1は電子放出量が向上しているため、自発光デバイス31,31’,31”は、効果的に発光を行える。なお、自発光デバイス31,31’,31”は、真空封止することで電子放出電流が上がり、より効率よく発光することができる。
【0129】
さらに、図11に、本発明に係る自発光デバイスを備えた本発明に係る画像表示装置の一例を示す。図11に示す画像表示装置140は、図9で示した自発光デバイス31”と、液晶パネル330とを供えている。画像表示装置140では、自発光デバイス31”を液晶パネル330の後方に設置し、バックライトとして用いている。画像表示装置140に用いる場合、自発光デバイス31”への印加電圧は、20〜35Vが好ましく、この電圧にて、例えば、単位時間当たり10μA/cmの電子が放出されるようになっていればよい。また、自発光デバイス31”と液晶パネル330との距離は、0.1mm程度が好ましい。
【0130】
また、本発明に係る画像表示装置として、図8に示す自発光デバイス31を用いる場合、自発光デバイス31をマトリックス状に配置して、自発光デバイス31そのものによるFEDとして画像を形成させて表示する形状とすることもできる。この場合、自発光デバイス31への印加電圧は、20〜35Vが好ましく、この電圧にて、例えば、単位時間当たり10μA/cmの電子が放出されるようになっていればよい。
【0131】
〔実施の形態5〕
図12及び図13に、実施の形態1で説明した本発明に係る電子放出装置10を用いた本発明に係る送風装置の例をそれぞれ示す。以下では、本願発明に係る送風装置を、冷却装置として用いた場合について説明する。しかし、送風装置の利用は冷却装置に限定されることはない。
【0132】
図12に示す送風装置150は、電子放出素子1とこれに電圧を印加する電源7とを有する電子放出装置10からなる。送風装置150において、電子放出素子1は、電気的に接地された被冷却体41に向かって電子を放出することにより、イオン風を発生させて被冷却体41を冷却する。冷却させる場合、電子放出素子1に印加する電圧は、18V程度が好ましく、この電圧で、雰囲気下に、例えば、単位時間当たり1μA/cmの電子を放出することが好ましい。
【0133】
図13に示す送風装置160は、図12に示す送風装置150に、さらに、送風ファン42が組み合わされている。図13に示す送風装置160は、電子放出装置10が電気的に接地された被冷却体41に向かって電子を放出し、さらに、送風ファン42が被冷却体41に向かって送風することで電子放出装置から放出された電子を被冷却体41に向かって送り、イオン風を発生させて被冷却体41を冷却する。この場合、送風ファン42による風量は、0.9〜2L/分/cmとするのが好ましい。
【0134】
ここで、送風によって被冷却体41を冷却させようとするとき、従来の送風装置あるいは冷却装置のようにファン等による送風だけでは、被冷却体41の表面の流速が0となり、最も熱を逃がしたい部分の空気は置換されず、冷却効率が悪い。しかし、送風される空気の中に電子やイオンといった荷電粒子を含まれていると、被冷却体41近傍に近づいたときに電気的な力によって被冷却体41表面に引き寄せられるため、表面近傍の雰囲気を入れ替えることができる。ここで、本発明に係る送風装置150,160では、送風する空気の中に電子やイオンといった荷電粒子を含んでいるので、冷却効率が格段に上がる。さらに、電子放出素子1は電子放量が向上しているため、送風装置150,160は、より効果的に冷却することができる。
【0135】
本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る電子放出素子は、薄膜電極を適度な厚みまで薄くでき、電子放出量の向上を図ることができる。よって、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の帯電装置や、電子線硬化装置、或いは発光体と組み合わせることにより画像表示装置、または放出された電子が発生させるイオン風を利用することにより冷却装置等に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 電子放出素子
2 電極基板
3 薄膜電極
4 電子加速層
5 絶縁体微粒子
6 導電微粒子
7 電源(電源部)
8 対向電極
9 絶縁体スペーサ
10 電子放出装置
11 感光体
15 立体障害領域
21 加速電極
22 レジスト(被硬化物)
31,31’,31” 自発光デバイス
32,32’ 蛍光体(発光体)
33 ITO膜
34 ガラス基板
35 電源
36 発光部
41 被冷却体
42 送風ファン
60 塩基性分散剤
90 帯電装置
100 電子線硬化装置
140 画像表示装置
150 送風装置
160 送風装置
330 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基板と薄膜電極と該電極基板および該薄膜電極に挟持された電子加速層とを有し、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧が印加されると、上記電子加速層で電子を加速させて、上記薄膜電極から該電子を放出させる電子放出素子であって、
上記電子加速層は、絶縁体微粒子と、該絶縁体微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径の導電微粒子および塩基性分散剤の少なくとも一方と、を含み、
上記電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μm以下であり、
上記薄膜電極の層厚は、100nm以下であることを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
上記絶縁体微粒子の平均粒径は、10〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
上記絶縁体微粒子の平均粒径は、10〜200nmであることを特徴とする請求項2に記載の電子放出素子。
【請求項4】
上記電子加速層の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.9nm以上であり、上記薄膜電極の層厚は、10nm以上であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電子放出素子。
【請求項5】
上記電子加速層の層厚は、12〜6000nmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項6】
上記電子加速層の層厚は、300〜2000nmであることを特徴とする請求項5に記載の電子放出素子。
【請求項7】
上記電子加速層にバインダー樹脂を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項8】
上記絶縁体微粒子は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、または有機ポリマーを含んでいることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項9】
上記薄膜電極は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項10】
上記電子加速層は、上記絶縁体微粒子と少なくとも上記導電微粒子とを含んでおり、該導電微粒子は、抗酸化力が高い導電体であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項11】
上記導電微粒子は、貴金属であることを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子。
【請求項12】
上記導電微粒子を成す導電体は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項10または11に記載の電子放出素子。
【請求項13】
上記導電微粒子の平均粒径は、3〜10nmであることを特徴とする、請求項10から12のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項14】
上記導電微粒子の周囲に、該導電微粒子の大きさより小さい絶縁体物質である小絶縁体物質が存在することを特徴とする、請求項10から13いずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項15】
上記小絶縁体物質は、アルコラート、脂肪酸、及びアルカンチオールの少なくとも1つを含んでいること特徴とする、請求項14に記載の電子放出素子。
【請求項16】
上記電子加速層は、上記絶縁体微粒子と少なくとも上記塩基性分散剤とを含んでおり、該塩基性分散剤は、立体反発効果により前記絶縁体微粒子を分散させる高分子体に、電子対を供与する電子対供与体が置換基として導入されてなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の電子放出素子と、上記電極基板と上記薄膜電極との間に電圧を印加する電源部と、を備えたことを特徴とする電子放出装置。
【請求項18】
請求項17に記載の電子放出装置と発光体とを備え、該電子放出装置から電子を放出して該発光体を発光させることを特徴とする自発光デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の自発光デバイスを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項20】
請求項17に記載の電子放出装置を備え、該電子放出装置から電子を放出して送風することを特徴とする送風装置。
【請求項21】
請求項17に記載の電子放出装置を備え、該電子放出装置から電子を放出して被冷却体を冷却することを特徴とする冷却装置。
【請求項22】
請求項17に記載の電子放出装置を備え、該電子放出装置から電子を放出して感光体を帯電することを特徴とする帯電装置。
【請求項23】
請求項22に記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項24】
請求項17に記載の電子放出装置を備え、該電子放出装置から電子を放出して被硬化物を硬化させることを特徴とする電子線硬化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−272256(P2010−272256A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121456(P2009−121456)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】