説明

電子方位計

【課題】指針の位置ずれを検出して補正することができる電子方位計を提供する。
【解決手段】方位検出手段(53)を備え指針(11)により方位を示すようにした電子方位計において、方位検出手段で検出された方位を指針で示すために移動位置算出手段(45)で指針を移動すべき移動位置を求め、この求められた移動位置まで指針を回転させたときに、位置検出手段(33a,33b)で指針の位置を検出し、移動位置算出手段で求められた移動位置と、位置検出手段で検出された指針位置とに基づいて指針の位置がずれているか否か判別し、指針の位置がずれていた場合に、指針の位置を補正するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータによって回転される回転軸に取り付けられた指針により方位を示す電子方位計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時、分、秒の時刻針を有する指針式電子腕時計において、秒針に方位針の機能を持たせるようにした発明が提案なされている(例えば、特許文献1)。この発明は、方位計測機能を内蔵した電子腕時計において、時計表示モードと方位表示モードとを設けて、時計表示モードでは時、分、秒の各時刻針を本来の時計表示のために回転駆動する一方、方位表示モードでは方位計測で得られた方位情報を、秒針を使用して表示させるようにしたもので、盤面が複雑になるのを回避できるという利点がある。
【特許文献1】特開平11−183658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子腕時計において時刻針を回転駆動するためにステップモータが使用されているが、ステップモータは外部磁気の影響を受けやすく、外部から強い磁界が入ると一時的に指針が動作しなくなることがある。そのため、特許文献1の発明のように、秒針と方位針とを兼用して切替え表示を可能にする場合、時計表示モードの際に外部磁気によって秒針の位置がずれると、そのずれが方位表示のときにもあらわれてしまう。また、方位表示モードに切り替わって、計測した方位位置まで秒針を移動させる際に外部から強い磁界が入ってモータが回転しなくなると誤った方位表示がなされてしまうおそれがある。
【0004】
なお、電子時計においては、秒針車、分針車、時針車にそれぞれ透孔を設けて、光センサで指針位置がずれていないかを検出する技術が知られているが、電子方位計においてはそのような技術はない。また、電子時計における秒針の位置のずれを検出する技術には、1分間に秒針が1回転する特性を利用して1分毎に位置ずれを検出するものもあるが、方位表示で連続して方位を表示する場合には、通常の状況では計測開始後1分以上経過しても指針が1回転することはないので、電子時計における秒針の位置ずれ検出技術をそのまま方位計に適用することができない。
【0005】
この発明の目的は、指針の位置ずれを検出して補正することができる電子方位計を提供することにある。
この発明の他の目的は、方位測定機能を備え秒針によって方位を表示する電子時計において、時計表示モードと方位表示モードのいずれおいても指針の位置ずれを検出して補正することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る電子方位計は、
方位を検出する方位検出手段と、
ステップモータと、
軸により回転可能に支持された指針と、
前記ステップモータの回転力を前記軸に伝達して前記指針を回転させる指針駆動機構と、
前記方位検出手段で検出された方位を前記指針で示すために、前記指針を移動すべき移動位置を求める移動位置算出手段と、
前記ステップモータを駆動して、前記指針を前記移動位置算出手段で求められた移動位置まで回転させる制御手段と、
前記指針の位置を検出する位置検出手段と、
前記指針が前記制御手段によって前記移動位置へ回転したときに前記位置検出手段により検出された指針位置と、前記移動位置算出手段で求められた移動位置とに基づいて前記指針の位置がずれているか否かを判別する判別手段と、
この判別手段が指針の位置ずれを判別したことに応じて前記指針の位置を補正する針位置補正手段と、
備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子方位計において、
計時手段と、秒針と、分針と、時針とを備え、前記計時手段からの計時情報に応じて前記秒針、分針および時針を制御する時計機能を有し、
前記秒針が方位を示す前記指針を兼用していることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電子方位計において、
前記秒針を駆動する第1ステップモータと、
前記分針および時針を駆動する第2ステップモータと、
を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2または3に記載の電子方位計において、
前記位置検出手段は発光素子と受光素子とからなり、前記秒針を回転させる歯車の円周方向に所定角度おきに1箇所を除いて透孔が形成され、該透孔に対応して前記発光素子と受光素子が配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の電子方位計において、
前記分針を回転させる歯車と前記時針を回転させる歯車にそれぞれ透孔が形成され、これらの透孔の軌跡が交差する位置に対応して発光素子と受光素子とからなる第2の位置検出手段が設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の電子方位計において、
前記制御手段は、前記指針を移動すべき移動位置と前記秒針の現在の位置とに基づいて、前記秒針を移動位置まで移動させる際の移動距離が短い回転方向を判別する方向判別手段を備え、該方向判別手段により判別された方向へ前記秒針を回転させることを特徴としている。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6のいずれかに記載の電子方位計において、
前記時計機能による時計表示と、前記方位検出手段と前記秒針による方位表示とを切り替える指示を前記制御手段に与える操作手段と、を備え、
該操作手段より方位表示が指示された際に前記制御手段は前記秒針の回転を一時停止させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、指針の位置ずれを検出して補正することができる電子方位計を実現することができる。また、方位測定機能を備え秒針によって方位を表示する電子時計において、時計表示モードと方位表示モードのいずれおいても指針の位置ずれを検出して補正することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、時計表示モードと方位表示モードを有し、秒針を利用して方位表示を行うようにした本発明の実施の形態の指針式電子時計を示す正面図である。
この実施形態の指針式時計10は、電気的な駆動により秒針11、分針12、時針13を回転させて時刻を表示するもので、リング状のケーシング14と前面中央の風防ガラスと裏蓋とで囲まれ、風防ガラスの内側に文字板15が設けられている。そして、この文字板15上に秒針11と分針12と秒針13とが同軸配設されるとともに、文字板の周縁部には円周方向に12等分した位置にそれぞれ時刻表示の数字若しくはマーク16が付された構成になっている。
【0015】
また、上記ケーシング14の前面周縁部には、円周方向に12等分した位置に方位を示すN,E,S,Wや角度を示す数字が付されているとともに、ケーシング14の外周壁には、操作部として複数の操作ボタンB1〜B6が設けられている。
【0016】
さらに、この実施形態の指針式時計10においては、方位表示モードで秒針11を用いて方位を表示するように構成されており、ケーシング内部に設けられている方位計測手段により計測されたN極方向へ秒針11を回転させる。この際、短時間で秒針11を所望の位置まで移動させることができるように、秒針11を右回りまたは左回りのいずれの方向へも回転できるように構成されている。時計機能を有する電子時計に方位表示機能を持たせることで、各機能を別々の機器として提供する場合よりも安価に提供することができる。
【0017】
図2には、指針式時計10の内部機構の一例を表わした断面図を示す。
図2に示すように、指針式時計10の内部には、秒針11を回転させる第1ステップモータ21と、分針12および時針13を回転させる第2ステップモータ22と、これらのモータの回転を各指針の軸に伝達する歯車伝達機構が設けられている。具体的には、第1ステップモータ21の回転は、五番車23と秒針車25 を介して秒針11が固定されている秒針軸26aに伝達され、第2ステップモータ22の回転は、中間車27と三番車28と分針車29を介して分針12が固定されている分針軸26bに伝達されるようになっている。
【0018】
また、時針車30には、分針車29から図2には示されていない日の裏車を介して、第2ステップモータ22の回転が伝達される。このような歯車伝達機構は、従来より種々の形式のものが提案されているので、詳細な動作については説明を省略する。秒針11を回転させるモータと分針12および時針13を回転させるモータとを別個に設けることにより、方位表示を行ないつつ分針12と時針13の位置から分単位の現在時刻を知ることができる。
【0019】
この実施形態の指針式時計10においては、上記秒針車25に透孔25aが設けられているとともに、上記歯車伝達機構を保持するベースプレート31の内面の上記透孔25aと対応する位置に受光素子としてのフォトトランジスタ33aが、また歯車抑えプレート34の上記透孔25aと対応する位置には発光素子としてのLED32bが取り付けられている。また、上記分針車29に透孔29a、三番車28に透孔28a、時針軸26cと一体の筒車30に透孔30aがそれぞれ設けられているとともに、文字板15の下面の上記透孔26a,28a,30aと対応する位置に受光素子としてのフォトトランジスタ35aが、また歯車抑えプレート34の上記透孔26a,28a,30aと対応する位置には発光素子としてのLED35bが取り付けられている。
【0020】
図3には、上記透孔25a,26a,28a,30aが設けられている歯車の平面図を示す。なお、図3は各歯車に設けられる透孔の位置が分かるように示したもので、歯車伝達機構において各歯車の噛み合い状態の様子が分かるように表わしたものではない。
【0021】
図3に示すように、秒針車25には、円周方向に6度ずつ30等分した30箇所のうち29箇所の位置、より具体的には0から59までの60個の秒針位置のうち偶数の秒針位置にそれぞれ透孔25aが設けられている。また、第1ステップモータ21のロータ21aが1ステップ(180度)回転すると、秒針4が6度回転するように各歯車が設計されており、それにより、第1ステップモータ21の1ステップの駆動により秒針11が1秒分移動し、60ステップの駆動により秒針11が360度回転するようになっている。それにより、秒針車25が1分かけて1回転する間にフォトトランジスタ33aが29回LEDからの光を検出する。なお、秒針車25において透孔25aがないのは、例えば秒針が58秒を示す位置である。1箇所だけ透孔を設けないようにしておくことにより、後述のように、ステップモータが誤動作して制御装置(CPU)が認識している秒針位置と実際の秒針の位置とのずれを検出して補正することができる。
【0022】
一方、分針車29と三番車28と筒車30には1箇所ずつ透孔29a、28a、30aがそれぞれ設けられており、それらの透孔の軌跡が交差する×印の位置PにLED35bが配置されており、この位置Pにて透孔29a、28a、30aが重なったときにフォトトランジスタ35aがLED35bからの光を検出するように構成されている。これにより、時針13が1回転する間(12時間)に1度、時針13と分針12との位置関係を確認して、制御装置(CPU)が認識している時針および分針の位置と実際の時針および分針の位置とのずれを検出して補正することができる。
【0023】
図4は、時計表示モードと方位表示モードを有し、秒針を利用して方位表示を行うようにした上記実施形態の指針式電子時計の制御システムの一構成例を示すブロック図である。
【0024】
電子時計の制御システムは、次のような回路構成を備える。すなわち、前記第1ステッピングモータ21を含みアナログ時計の秒針の回転駆動を行う秒針駆動部41と、前記第2ステッピングモータ22を含みアナログ時計の分針および時針の回転駆動を行う時分針駆動部42、前記受光素子33aおよび発光素子33bを有し秒針車の透孔の位置から指針位置を検出する検出部43、前記受光素子35aおよび発光素子35bを有し分針車29、三番車28、時針車(筒車)30の透孔の重なり状態から時分針の位置を検出する検出部44、検出部43および44からの検出信号を取り込んで処理するCPU(中央演算処理装置)を内蔵し装置の全体的な制御を行うマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサを含む)45が設けられている。
【0025】
さらに、本実施形態の制御システムには、CPUが実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)46、CPUに作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)47、時刻を計時するためのクロック信号を形成する発振回路48と分周回路49、分周回路49からのクロック信号に基づいて計時を行う計時回路50が設けられている。そして、分周回路から出力される1秒周期の信号(1s)は、マイクロコンピュータに供給されている。また、制御システムには、電池電圧から各部の電源を生成し供給する電源部51、時刻情報を含む無線信号(時刻標準電波)をアンテナより受信して取り込む検波回路52、方位検出手段(センサ)53からの信号に基づいて方位を検出する方位検出部54等が設けられている。方位検出手段(センサ)53は、地磁気から北(N極)もしくは南(S極)の方角を検出する。
【0026】
RAM47内には、方位位置記憶領域や時分針位置記憶領域、秒針位置記憶領域が設けられている。計時回路50には、日付や時刻を計時する時刻カウンタが設けられている。この時刻カウンタは、分周回路49からのクロックをカウントアップして現在日時分秒の値を得てマイクロコンピュータ45へ出力する。また、計時回路50の時刻カウンタからは10秒周期の信号(10s)も、マイクロコンピュータ45へ供給されている。予め決められた時刻に検波回路42が動作され、検波回路42により受信された標準電波に含まれる時刻情報に基づいて、CPUが時刻カウンタの値を修正するようになっている。また、RAM47には、秒針の位置を記憶する秒針位置記憶領域と、時針及び分針の位置を記憶する時分針位置記憶領域とが設けられ、駆動部41および42がステッピングモータ21,22を作動させる度に、この秒針位置記憶領域および時分針位置記憶領域の値がカウントアップされていく。従って、通常は、時刻カウンタの時分秒の値と、秒針及び時分針の位置と、秒針位置記憶領域および時分針位置記憶領域の値とは、常に対応している。しかしながら、駆動部41および42がステッピングモータ21,22にパルスを供給しても、外部磁界によりステッピングモータ21,22が回転できず運針ミスが発生すると、時刻カウンタの時分秒の値と、秒針位置記憶領域および時分針位置記憶領域の値とは対応するが、秒針、分針の位置が、時刻カウンタの時分秒の値、秒針位置記憶領域および時分針位置記憶領域の値に対応しなくなる。
【0027】
前述のように、図4の電子時計制御システムにおいては、回路が強磁界の中に置かれたり強い衝撃が加わった場合に、駆動パルスが出力されているのにも拘らず、ステッピングモータのロータが回転しなかったり、駆動パルスの出力以上にロータが回転してしまったりして、実際の針位置と針位置記憶領域の値とがずれてしまう場合がある。
【0028】
そこで、マイクロコンピュータ45は、検出部43および44によって所定時刻ごとに歯車(秒針車、三番車、分針車、時針車)の透孔の位置を検出して秒針11、分針12および時針13の位置が、計時回路50の時刻カウンタの値及び分針位置記憶領域、時分針位置記憶領域の値と対応しなくなっていないか確認する。そして、秒針11、分針12および時針13の位置が間違ったものになっていると判断した場合には、秒針、分針、時針を高速回転させつつ検出部43および44によって連続的に透孔の位置の検出を行うことで実際所定の針位置を検出し、それと計時回路50の時刻カウンタの値及び分針位置記憶領域、時分針位置記憶領域の値が対応するように修正処理を行うようになっている。
【0029】
次に、方位表示モードにおける上記マイクロコンピュータ45による方位計測処理の手順を図5および図6を用いて説明する。なお、図5の方位計測処理は、例えばユーザーがケーシング10の外周に設けられている所定の操作ボタンを操作した場合に開始される。また、方位計測処理の開始と同時に秒針駆動部41に停止指令を出して秒針の移動を一時停止させるように構成してもよい。このように構成しておくことにより、ユーザーは、秒針の一時停止から方位表示モードに入ったことを知ることができる。
【0030】
方位計測処理が開始されると、マイクロコンピュータ45は、先ず方位検出部54からの信号を取り込んで文字板の12時を示すマークが向いている方位を判別する(ステップS1)。次に、12時の方位と北(N極)の方角とのなす角度を演算によって求め、得られた角度から前記6度間隔の60個の秒針位置のうち最も近い位置を特定して、その位置をRAM47内の方位位置記憶領域に記憶する(ステップS2,S3)。
【0031】
続いて、マイクロコンピュータ45は、現在の秒針の位置から上記RAM47に記憶した北の方位位置まで秒針を移動させるときに右回りが速いか左回りが速いかを判定する(ステップS4)。そして、右回りが速いと判定したときは、ステップS5へ移行して秒針駆動部41に対してモータを1ステップ正方向回転させるパルスを出力し、秒針位置記憶領域の値を+1する(ステップS6)。また、左回りが速いと判定したときは、ステップS10へ移行して秒針駆動部41に対してモータを1ステップ逆方向回転させるパルスを出力し、秒針位置記憶領域の値を−1する(ステップS11)。このように、制御することで、短時間に秒針を所望の方位位置へ移動させることができる。
【0032】
上記のようにして秒針を右回りに1ステップずつ回転させているときは、途中で秒針位置記憶領域の値が「60」になったか否かチェックして、「60」になった場合にはカウンタの値を「0」にリセットする(ステップS7,S8)。一方、秒針を左回りに1ステップずつ逆回転させているときは、途中で秒針位置記憶領域の値が「−1」になったか否かチェックして、「−1」になった場合にはカウンタの値を「59」にセットする(ステップS12,S13)。実際の秒針の位置は、「0」〜「59」のいずれかであるためである。そして、上記秒針のステップ駆動によって秒針の位置が、ステップS3で記憶した北の方位位置と一致したか判定し(ステップS9,S14)、一致した場合にはステップ駆動のルーチンから抜けてステップS15へ移行する。このとき、とりあえず、マイクロコンピュータが認識している北の方位に秒針が一致することになり、方位表示がなされる。
【0033】
その後、ステップS15では、秒針カウンタの値から秒針位置が「58秒」であるか否かを判定し、YES(肯定)の場合にはステップS16へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS17)。前述したように秒針車21の「58秒」位置には透孔21aが形成されていないため、ステップS17での判定がNO(否定)の場合には秒針が正しい位置にいることが分かる。そこで、次のステップS18へ移行して、分針12と時針13を現在時刻カウンタが示す値の位置へ移動させてからステップS1へ戻って上記処理を繰り返す。ステップS18で分針12および時針13を移動させるのは、ステップS1〜S17の処理をしている間に実際の分針および時針の位置が現在時刻の位置からずれて誤った時刻を表示するのを回避するためである。
【0034】
一方、ステップS17で「YES」つまりフォトトランジスタが光を検出したと判定すると、図6のステップS24へ移行する(符号A)。「58秒」位置には透孔21aが形成されていないにもかかわらず、フォトトランジスタが光を検出したということは、マイクロコンピュータの認識に反して秒針が「58秒」位置にいないということになるためである。また、ステップS15でNO(否定)、つまり秒針11の停止位置が「58秒」位置でない場合には、ステップS19へ移行して秒針の位置が、透孔が設けられている偶数秒位置であるか否か判定する。
【0035】
ステップS19でYES(肯定)の場合にはステップS20へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS21)。ここで、YESならばステップS18へ移行して、分針12と時針13を現在時刻カウンタが示す値の位置へ移動させてからステップS1へ戻って上記処理を繰り返す(符号C)。偶数秒位置でフォトトランジスタが光を検出するのは正常な応答であるためである。一方、ステップS21でNO(否定)の場合には、図6のステップS24へ移行する(符号A)。偶数秒位置には透孔21aが形成されているにもかかわらず、フォトトランジスタが光を検出しないということは、マイクロコンピュータの認識に反して秒針が偶数秒位置にいないということになるためである。
【0036】
さらに、ステップS19でNO(否定)の場合つまり秒針が奇数秒位置にいるときはステップS22へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS23)。ここで、NO(否定)ならばステップS18へ移行して、分針12と時針13を現在時刻カウンタが示す値の位置へ移動させてからステップS1へ戻って上記処理を繰り返す。奇数秒位置でフォトトランジスタが光を検出しないのは正常な応答であるためである。
【0037】
一方、ステップS23でYESの場合には、図6のステップS24へ移行する(符号A)。奇数秒位置には透孔21aが形成されていないにもかかわらず、フォトトランジスタが光を検出したということは、マイクロコンピュータの認識に反して秒針が奇数秒位置にいないということになるためである。
【0038】
次に、図6の動作を説明する。
ステップS24では、秒針駆動部41に対してモータを1ステップ正方向回転させるパルスを出力して秒針を移動させてから、ステップS25へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS26)。移動前に透孔のない奇数秒位置に秒針がいたとしてもモータが正常に動作すれば秒針は偶数秒位置に移動して、フォトトランジスタが光を検出するはずである。
【0039】
ステップS26でフォトトランジスタが光を検出しないと判定すると、ステップS27へ移行して4ステップ駆動したか判定してステップS24へ戻って再度秒針を1ステップ駆動させる動作を繰り返す。そして、秒針を4ステップ駆動させてもステップS26でフォトトランジスタが光を検出しないと判定した場合には、モータが正常に回転していないということ分かるので、ステップS27からステップS36へジャンプしてエラー表示を行うとともに、秒針を停止して処理を終了する。
【0040】
一方、ステップS26でフォトトランジスタが光を検出したと判定すると、ステップS28へ進んで秒針駆動部41に対してモータを2ステップ正方向回転させるパルスを出力して秒針を移動させてから、ステップS29へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS30)。移動前に透孔のある偶数秒位置に秒針がいることでステップS26においてYESと判定してステップS28でモータを2ステップ駆動すると、モータが正常であれば秒針は再度偶数秒位置に移動して、フォトトランジスタが光を検出するはずである。
【0041】
ステップS30でフォトトランジスタが光を検出したと判定すると、ステップS31へ移行して58ステップ駆動したか判定してステップS28へ戻って再度秒針を2ステップ駆動させる動作を繰り返す。そして、秒針を58ステップ駆動させてもステップS30でフォトトランジスタが光を検出したと判定した場合には、ステップS31からステップS36へジャンプしてエラー表示を行うとともに、秒針を停止して処理を終了する。秒針車の偶数秒位置のうち58秒位置には透孔が形成されていないため、秒針を2ステップずつ1回転させるようにモータを駆動させたときに連続してもフォトトランジスタが光を検出したということはモータが全く回転していないと推測できるためである。
【0042】
ステップS30でフォトトランジスタが光を検出しないと判定すると、ステップS32へ進んで秒針駆動部41に対してモータを2ステップ正方向回転させるパルスを出力して秒針を移動させてから、ステップS33へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS34)。ステップS26でYESと判定してステップS28でモータを2ステップ駆動した場合、モータが正常であれば秒針は再度偶数秒位置に移動して、フォトトランジスタが光を検出するはずであるので、ステップS30でNOと判定するのは秒針車が透孔のない58秒に位置していると考えられる。
【0043】
そこで、さらにモータを2ステップ駆動してステップS34でフォトトランジスタが光を検出したと判定すると、秒針は00秒位置にいると推定できるのでステップS35へ移行して秒針位置記憶領域の値を「0」にしてからステップS18へジャンプする(符号B)。一方、ステップS34でフォトトランジスタが光を検出しないと判定した場合には、モータを2ステップずつ2回計4ステップ駆動しても一度もフォトトランジスタが光を検出しないのであるからモータが正常に動作していないと推定できる。そこで、ステップS34からステップS36へ移行してエラー表示を行うとともに、秒針を停止して処理を終了する。
【0044】
次に、時計表示モードにおける上記マイクロコンピュータ45による指針移動処理の手順を図7〜図9を用いて説明する。なお、図7の指針移動処理は、時計表示モードで動作しているときに分周回路49もしくは計時回路50からの信号により例えば1秒毎に実行されるように構成されている。割込み処理で実行するように構成してもよい。
【0045】
指針移動処理では、1秒信号が入力されたか判定(ステップS41)し、1秒信号が入力された場合には秒針駆動部41に対してモータを1ステップ正方向回転させるパルスを出力し、秒針位置記憶領域の値を+1する(ステップS42,S43)。そして、次のステップS44で秒針位置記憶領域の値が「60」になったか否かチェックして、「60」になった場合には該カウンタの値を「0」にリセットする(ステップS45)。
【0046】
ステップS44で秒針位置記憶領域の値が「60」でないと判定したときはステップS46へジャンプして、例えば10秒のキャリー信号が入力されたか判定し、10秒信号が入力された場合には時分針駆動部42に対してモータを駆動して分針を1ステップ(角度で1度)回転させるパルスを出力し、時分針位置記憶領域の値を+1する(ステップS47,S48)。そして、次のステップS49で時分針位置記憶領域の値が「4320」(=6×60×12)になったか否かチェックして、「4320」になった場合すなわち12時間経過した場合には時分針位置記憶領域の値を「0」にリセットする(ステップS50)。
【0047】
ステップS46で10秒のキャリー信号が入力されていないと判定したときおよびステップS49で時分針位置記憶領域の値が「4320」でないと判定したときはステップS51へジャンプして秒針位置検出処理を実行し、さらにその後、時分位置検出処理(ステップS52)と電波時刻修正処理(ステップS53)を実行してステップS41へ戻る。電波時刻修正処理は、予め決められた時刻になったか否かを判断し、予め決められた時刻になったら、検波回路52を動作させ、検波回路52で標準電波を受信して現在時刻を示す信号を得て、この信号に基づいて、標準時刻と計時回路50の時刻カウンタの時刻とにずれがあった場合に、計時回路50の時刻カウンタの時刻を修正する。時刻カウンタの時刻を修正した場合、時刻カウンタの時刻と、RAM47の秒針位置記憶領域の値、時分針位置記憶領域の値とが対応しなくなるので、秒針駆動部41、時分針駆動部42に対してモータを1ステップ正方向回転させるパルスを出力すると共に秒針位置記憶領域の値、時分針位置記憶領域の値を+1する処理を、時刻カウンタの時刻と、秒針位置記憶領域の値、時分針位置記憶領域の値とが対応するまで繰り返し、秒針11、分針12及び時針13を現在時刻に移動させる。
【0048】
図8には、ステップS51における秒針位置検出処理のより詳しい手順が示されている。
【0049】
針位置検出処理では、先ず最初のステップS511で、計時回路50の時刻カウンタの値から現在秒が「56秒」であるか否かを判定し、YES(肯定)の場合にはステップS512へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS513)。前述したように秒針車21の「58秒」位置を除く偶数秒位置には透孔21aが形成されているため、ステップS513での判定がYES(肯定)の場合には秒針が一応正しい位置にいるとみなすことができ、ステップS514へ進む。なお、ステップS511でNO(否定)と判定した場合にはステップS514へジャンプする。
【0050】
ステップS514では、計時回路50の時刻カウンタの値からから現在秒が「58秒」であるか否かを判定し、YES(肯定)の場合にはステップS515へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS516)。秒針車21の「58秒」位置には透孔21aが形成されていないため、ステップS516での判定がNO(否定)の場合には秒針が正しい位置にいることが分かるので、ステップS517へ進む。また、ステップS514でNO(否定)と判定した場合にもステップS517へジャンプする。
【0051】
ステップS517では、計時回路50の時刻カウンタの値から現在秒が「00秒」であるか否かを判定し、YES(肯定)の場合にはステップS518へ移行して秒針位置検出のためのLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS519)。秒針車21の「00秒」位置には透孔21aが形成されているため、ステップS519での判定がYES(肯定)の場合には秒針が一応正しい位置にいるとみなすことができるので、処理を終了する。また、ステップS517でNO(否定)と判定した場合にも処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS513,S519でNO(否定)と判定した場合と、ステップS519でYES(肯定)と判定した場合は、秒針が正しい位置にいないことが分かるので、ステップS520へ移行して秒針の修正を行う。なお、ステップS520〜S532は、図6のステップS24〜S36と同じであるので重複した説明は省略する。図6の処理と異なるのは、ステップS531で秒針位置を「0」にした後に、秒針を現在秒まで早送りし(ステップS533)、分針および時針を現在時分に移動して(ステップS534)処理を終了する点にある。
【0053】
図9には、ステップS52における時分針位置検出処理のより詳しい手順が示されている。この時分針位置検出処理は、計時回路50の時刻カウンタが計時している時刻をマイクロコンピュータが監視していて0時00分になったときに開始されるようにされている。なお、分針12と時針13は、共通のモータで連動して動作するように構成されているので、図9の処理の中でモータを1ステップ駆動すると分針と時針は連動して移動する。また、分針車29と時針車(筒車)30には0時00分位置でLEDと対向する位置に透孔29a,30aがそれぞれ形成されている。
【0054】
ステップS541で0時00分になったと判定するとステップS542へ進みLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS543)。ステップS543でフォトトランジスタが光を検出したと判定すると正常であるので、そのまま処理を終了する。一方、ステップS543でフォトトランジスタが光を検出しないと判定した場合には、計時回路50が計時している時刻が0時00分であるにもかかわらず時分針がその位置いないということである。そこで、ステップS544へ移行して時分針用のモータを1ステップ駆動させてから、ステップS545でLEDを発光させ、対応するフォトトランジスタが光を検出したか否か判定する(ステップS546)。
【0055】
そして、ステップS546でフォトトランジスタが光を検出しないと判定すると、ステップS547で4320ステップ駆動したか判定してステップS544へ戻って再度モータを1ステップ駆動させる。そして、これを繰り返してステップS547で4320ステップ駆動したと判定した場合には、時針を1回転させても1度もフォトトランジスタが透孔を検出しないつまりモータもしくは歯車が正常に動作していないということであるので、ステップS548へ移行してエラー表示を行なう。
【0056】
一方、モータの1ステップ駆動を繰り返すうちにステップS546でフォトトランジスタが光を検出したと判定すると、その位置が0時00分位置であるので、ステップS549で時分針位置記憶領域の値を「0」にクリアしてから、分針および時針を、時刻カウンタが示す現在の時分まで早送りし、秒針を現在秒に修正して処理を終了する(ステップS550,S551)。
【0057】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、時計表示モードと方位表示モードを有する指針式電子時計に適用した場合を説明したが、時計表示モードを持たず方位表示のみを行う方位計に適用することも可能である。また、時計表示は数字によるディジタル表示を行い方位表示は指針によって行う電子時計に適用することもできる。
【0058】
さらに、前記実施形態では、秒針で方位を示すようにした電子時計を示したが、分針あるいは時針で方位を示すように構成しても良い。また、秒針駆動用のモータと時分針駆動用のモータを有する電子時計を示したが、秒針、分針および時針を1つのモータで駆動するようにした針電子時計や、秒針と分針を駆動するモータと時針を駆動するモータの2つのモータを有する電子時計にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を、時計表示モードと方位表示モードを有し、秒針を利用して方位表示を行う指針式電子時計に適用した一実施形態を示す正面図である。
【図2】指針式時計の内部機構の一例を表わした断面図である。
【図3】指針式時計の内部機構を構成する歯車であって透孔が設けられている歯車を示す平面説明図である。
【図4】図1の実施形態の指針式電子時計の制御システムの一構成例を示すブロック図である。
【図5】実施形態の指針式電子時計の制御システムにおける方位計測処理の主要部分の手順を示すフローチャートである。
【図6】図5の方位計測処理の残りの部分の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態の指針式電子時計の制御システムにおける指針移動処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7の指針移動処理における秒針位置検出処理(ステップS51)のより詳しい手順を示すフローチャートである。
【図9】図7の指針移動処理における時分針位置検出処理(ステップS52)のより詳しい手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
10 指針式時計
11 秒針
12 分針
13 時針
14 ケーシング
15 文字板
21 第1ステップモータ
22 第2ステップモータ
23 中間車
24 五番車
25 秒針車
26a 秒針軸
27 中間車
28 三番車
29 分針車
29a、28a、30a 透孔
33a,35a フォトトランジスタ(受光素子)
33b,35b LED(発光素子)
45 制御手段(マイクロコンピュータ)
53 方位検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位を検出する方位検出手段と、
ステップモータと、
軸により回転可能に支持された指針と、
前記ステップモータの回転力を前記軸に伝達して前記指針を回転させる指針駆動機構と、
前記方位検出手段で検出された方位を前記指針で示すために、前記指針を移動すべき移動位置を求める移動位置算出手段と、
前記ステップモータを駆動して、前記指針を前記移動位置算出手段で求められた移動位置まで回転させる制御手段と、
前記指針の位置を検出する位置検出手段と、
前記指針が前記制御手段によって前記移動位置へ回転したときに前記位置検出手段により検出された指針位置と、前記移動位置算出手段で求められた移動位置とに基づいて前記指針の位置がずれているか否かを判別する判別手段と、
この判別手段が指針の位置ずれを判別したことに応じて前記指針の位置を補正する針位置補正手段と、
備えていることを特徴とする電子方位計。
【請求項2】
計時手段と、秒針と、分針と、時針とを備え、前記計時手段からの計時情報に応じて前記秒針、分針および時針を制御する時計機能を有し、
前記秒針が方位を示す前記指針を兼用していることを特徴とする請求項1に記載の電子方位計。
【請求項3】
前記秒針を駆動する第1ステップモータと、
前記分針および時針を駆動する第2ステップモータと、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子方位計。
【請求項4】
前記位置検出手段は発光素子と受光素子とからなり、前記秒針を回転させる歯車の円周方向に所定角度おきに1箇所を除いて透孔が形成され、該透孔に対応して前記発光素子と受光素子が配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の電子方位計。
【請求項5】
前記分針を回転させる歯車と前記時針を回転させる歯車にそれぞれ透孔が形成され、これらの透孔の軌跡が交差する位置に対応して発光素子と受光素子とからなる第2の位置検出手段が設けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の電子方位計。
【請求項6】
前記制御手段は、前記指針を移動すべき移動位置と前記秒針の現在の位置とに基づいて、前記秒針を移動位置まで移動させる際の移動距離が短い回転方向を判別する方向判別手段を備え、該方向判別手段により判別された方向へ前記秒針を回転させることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の電子方位計。
【請求項7】
前記時計機能による時計表示と、前記方位検出手段と前記秒針による方位表示とを切り替える指示を前記制御手段に与える操作手段と、を備え、
該操作手段より方位表示が指示された際に前記制御手段は前記秒針の回転を一時停止させることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の電子方位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−112860(P2010−112860A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286292(P2008−286292)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】