説明

電子楽器

【課題】メモリからデータを読み出す時間を増加させること。
【解決手段】データとコンピュータプログラムとを記憶するメモリ12と、CPU26とRAM23と楽音発生器27とが1つのチップに集積された集積回路11とを備えている。集積回路11は、プログラム転送モードでメモリ12からコンピュータプログラムを読み出してRAM23に記録し、通常モードでCPU26がRAM23から読み出されるコンピュータプログラムを実行して楽音発生器27がメモリ12からデータを読み出して楽音を示す楽音データを生成する。このような電子楽器1は、楽音を放音するときにメモリ12からデータを読み出す時間を増加させることができ、同時に放音することができる楽音の数を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器に関し、特に、記憶装置に記録されるソフトウェアを用いて楽音を生成する電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアを用いて楽音を生成する電子楽器が知られている。このような電子楽器では、たとえば、楽音の内容を表す波形データと楽音生成放音用プログラムとは、それぞれ、別々のメモリに格納されている。このため、このような電子楽器の音源装置は、回路構成が複雑になり、コストアップの要因となっている。ところで、半導体技術の進歩により、大容量のDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)とCPUとを1つのチップに集積して混在させるASIC技術が発達している。電子楽器は、内部の回路構成がコンパクトであることが望まれている。このような電子楽器は、同時に発音することができる楽音の個数を増加することが望まれ、楽音発生を制御する処理速度を向上させることが望まれている。
【0003】
特開平02−126296号公報には、回路構成が簡単で、しかも情報の読出処理が簡易な楽音情報記憶装置が開示されている。その楽音情報記憶装置は、楽音の内容を表すデータを記憶するデータ記憶手段と、このデータ記憶手段と一体に設けられ、楽音を生成放音するための処理プログラムを記憶するプログラム記憶手段と、上記データ記憶手段からデータを読み出すデータ読出手段と、上記プログラム記憶手段からプログラムを読み出すプログラム読出手段と、これらデータ読出手段とプログラム読出手段との読み出しを切り換える切換手段とを備えたことを特徴としている。
【0004】
特開平08−221066号公報には、電子楽器の高速化・高機能化に対応でき、しかもLSI化に好適な電子楽器の制御装置が開示されている。その電子楽器の制御装置は、少なくとも制御プログラムの一部と波形データとを記憶した第1の記憶手段と、該第1の記憶手段から読み出された制御プログラムに従って動作する処理手段と、該第1の記憶手段から読み出された波形データに基づいて楽音信号を発生する楽音信号発生手段とを有し、第1の区間と第2の区間とから成る1サイクルのうち、該処理手段は該第1の区間で、該楽音信号発生手段は該第2の区間で、それぞれ前記第1の記憶手段に交互にアクセスし、前記サイクルを繰り返しながら制御を行う電子楽器の制御装置において、制御プログラムの他の一部を記憶した第2の記憶手段を更に備え、前記処理手段は、前記第1の区間及び前記第2の区間の双方で該第2の記憶手段から制御プログラムの他の一部を読み出して動作することを特徴としている。
【0005】
【特許文献1】特開平02−126296号公報
【特許文献2】特開平08−221066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、楽音発生を制御する処理をより高速に、より高機能化させる電子楽器を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、同時に放音することができる楽音の数を増加させる電子楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明による電子楽器(1)は、データとコンピュータプログラムとを記憶するメモリ(12)と、CPU(26)とRAM(23)と楽音発生器(27)とが1つのチップに集積された集積回路(11)とを備えている。集積回路(11)は、プログラム転送モードでメモリ(12)からコンピュータプログラムを読み出してRAM(23)に記録し、通常モードでCPU(26)がRAM(23)から読み出されるコンピュータプログラムを実行して楽音発生器(27)がメモリ(12)からデータを読み出して楽音を示す楽音データを生成する。このような電子楽器(1)は、CPU(26)がコンピュータプログラムをより速く読み出すことができる。このような電子楽器(1)は、楽音を放音しながらメモリ(12)からコンピュータプログラムを読み出す電子楽器より、楽音を放音するときにメモリ(12)からデータを読み出す時間を増加させることができる。この結果、電子楽器(1)は、同時に放音することができる楽音の数を増加させることができる。
【0009】
集積回路(11)は、通常モードでメモリ(12)からコンピュータプログラムを読み出さない。このとき、電子楽器(1)は、さらに、楽音を放音するときにメモリ(12)からデータを読み出す時間を増加させることができ、同時に放音することができる楽音の数を増加させることができる。プログラム転送モードは、集積回路(11)に電源が投入されたときに開始することが好ましい。
【0010】
メモリ(12)は、発生楽音の制御に利用されるパラメータデータをさらに記憶している。このとき、集積回路(11)は、プログラム転送モードでメモリ(12)からそのパラメータデータを読み出してRAM(23)に記録し、通常モードでCPU(26)がコンピュータプログラムを実行して、RAM(23)からパラメータデータを読み出して情報処理することが好ましい。CPU(26)は、通常モードで、コンピュータプログラムを実行して生成される情報をRAM(23)に記録し、その情報をRAM(23)から読み出すことが好ましい。
【0011】
本発明による電子楽器(1)は、インターフェース(5)をさらに備えている。集積回路(11)は、インターフェース(5)を介して接続される記憶装置に記憶されるソフトウェアをメモリ(12)に記録する。このとき、電子楽器(1)は、データまたはコンピュータプログラムがバージョンアップされたときに、そのバージョンアップされたデータまたはコンピュータプログラムをその記憶装置に記録することにより、容易にバージョンアップすることができる。
【0012】
メモリ(12)は、着脱可能である。このとき、電子楽器(1)は、メモリ(12)が取り出されて、更新されたデータまたはコンピュータプログラムが記録された別のメモリが取り付けられることにより、容易にバージョンアップすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による電子楽器は、メモリからデータを読み出す時間を増加させることができ、同時に放音することができる楽音の数を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照して、本発明による電子楽器の実施の形態を記載する。その電子楽器1は、図1に示されているように、バス2を介して複数のハードウェアが互いに双方向に情報を伝送することができるように接続されている。バス2は、アドレスバスとデータバスと信号バスとから形成される。その複数のハードウェアは、インターフェース5とキーボード部7と操作パネル部8と集積回路11とプログラム/波形メモリ12とD/A変換器14とアナログ信号処理部15とアンプ16とスピーカ17とを含んでいる。
【0015】
インターフェース5は、電子楽器1と別途に設けられる記憶装置と電子楽器1とを接続する。その記憶装置は、情報を記憶し、インターフェース5を介して電子楽器1に接続されるときに、バス2を介してその情報をその複数のハードウェアに伝送することができる。
【0016】
キーボード部7は、演奏するための複数の鍵を備えている鍵盤である。すなわち、その複数の鍵は、複数の白鍵と複数の黒鍵とから形成され、それぞれ、互いに異なる複数の音高に対応している。また、キーボード部7は、打鍵された鍵とその打鍵強度とを示す電気信号を出力する。操作パネル部8は、ディスプレイと複数のスイッチとボリュームつまみと電源スイッチとを備えている。たとえば、そのディスプレイは、液晶ディスプレイの表示面であり、その液晶ディスプレイは、集積回路11により生成された画面を表示し、たとえば、ボリュームと音色の選択および設定状態を表示する。操作パネル部8は、その複数のスイッチのうちの操作されたスイッチを示す電気信号を集積回路11に出力し、そのボリュームつまみの角度を示す電気信号を集積回路11に出力する。たとえば、ユーザは、操作パネル部8を操作して情報を生成し、たとえば、音色を選択および設定する。その電源スイッチは、ユーザにより操作されてONとOFFとを切り換える。その電源スイッチは、ONのときに電子楽器1に電力を供給し、OFFのときに電子楽器1に電力の供給を停止する。その電源スイッチは、さらに、OFFからONに切り換わるときにリセット信号RSTXを出力する。
【0017】
プログラム/波形メモリ12は、読み書き可能な不揮発性メモリ(たとえば、フラッシュメモリ)であり、コンピュータプログラムとパラメータデータと複数の波形とを記録している。そのパラメータデータは、楽音発生に必要なデータであり、そのコンピュータプログラムが実行されて楽音に関する制御パラメータが算出されるときに利用される。その複数の波形は、電子楽器1が放音することができる複数の音色および音域(音高)に対応している。その波形は、それぞれ、電子楽器1から発音される楽音の波形(すなわち、時間とともに変化する量)を示し、アドレスを波形データに対応付けている。そのアドレスは、その波形の時刻に対応し、プログラム/波形メモリ12の中の位置を識別するアドレスを示している。その波形データは、そのアドレスに対応する時刻での波形の変位の瞬時値を示している。その複数の音色は、ヘッドアドレスとループトップアドレスとループエンドアドレスとに対応付けられている。ヘッドアドレスとループトップアドレスとループエンドアドレスとは、それぞれ、プログラム/波形メモリ12のアドレスを示している。ヘッドアドレスは、プログラム/波形メモリ12の中のその波形の先頭が記録されるアドレスを示している。ループトップアドレスは、ヘッドアドレスより順番が後のアドレスを示している。ループエンドアドレスは、ループトップアドレスより順番が後のアドレスを示している。その波形は、立ち上がり部と繰り返し部とから形成されている。その立ち上がり部は、プログラム/波形メモリ12のヘッドアドレスからループトップアドレスまでに記録される波形の部分に対応している。繰り返し部は、ループトップアドレスからループエンドアドレスまでに記録される波形の部分に対応している。電子楽器1から発音される楽音の波形は、その立ち上がり部と、その立ち上がり部の後に繰り返し部を繰り返すことにより形成される。プログラム/波形メモリ12は、外部から入力されるアドレスに対応する波形データを出力する。
【0018】
集積回路11は、プログラム/波形メモリ12に記録されているコンピュータプログラムを実行して、キーボード部7と操作パネル部8とD/A変換器14とを制御する。すなわち、集積回路11は、キーボード部7と操作パネル部8とを走査して鍵情報と音色ボリューム情報とを生成する。その鍵情報は、キーボード部7の鍵を識別する複数の鍵番号に対応付けて鍵ON/OFFとタッチ情報を示している。その鍵ON/OFFは、その鍵番号により識別される鍵が押鍵されているか離鍵されているかを示している。そのタッチ情報は、その鍵番号により識別される鍵が打鍵されたときの打鍵強度を示している。その音色ボリューム情報は、操作パネル部8のスイッチの操作により複数の(楽音発生器)ジェネレータにそれぞれ設定された複数の音色と操作パネル部8のボリュームつまみの角度とを示している。
【0019】
集積回路11は、プログラム/波形メモリ12を参照して、集積回路11により生成される鍵情報と音色ボリューム情報とに基づいて、電子楽器1から放音される楽音を示すデジタル楽音信号を生成する。D/A変換器14は、集積回路11により生成されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するデジタル−アナログ変換器である。アナログ信号処理部15は、D/A変換器14により生成されたアナログ楽音信号に対して簡単なフィルタ処理(たとえば、ノイズ除去)と増幅処理とを施す。アンプ16は、アナログ信号処理部15によりアナログ処理されたアナログ楽音信号をスピーカ11で発生させるために増幅するパワーアンプである。スピーカ17は、1個ないし複数個から形成され、アンプ16により増幅されたアナログ楽音信号を可聴信号に変換して放音する。
【0020】
図2は、集積回路11を示している。集積回路11は、複数の回路が1つのチップに集積されている。その複数の回路は、カウント装置21とフリップフロップ22とメモリ23(RAM:読み書き可能な揮発性メモリ)と選択器24と選択器25とCPU26と複数の楽音発生器27とを備えている。
【0021】
カウント装置21は、操作パネル部8の電源スイッチからリセット信号RSTXが出力された後に、所定のクロック速度のクロック(図示せず)によってカウント状態が変化され、そのカウンタの出力を示すアドレス信号CNTABを選択器24と選択器25とに出力する。アドレス信号CNTABは、メモリ23のコンピュータプログラムとパラメータデータとが格納される領域のアドレスを示している。カウント装置21は、さらに、操作パネル部8の電源スイッチからリセット信号RSTXが出力されて所定の期間経過した後に、終了信号TEをフリップフロップ22に出力する。その所定の期間は、プログラム/波形メモリ12に記録されるプログラムの全部がメモリ23に転送されるプログラム転送モードの時間を示している。
【0022】
フリップフロップ22は、操作パネル部8の電源スイッチの出力信号とカウント装置21の出力信号とに基づいて、SRST信号を選択器24に出力する。そのSRST信号は、操作パネル部8の電源スイッチからリセット信号RSTXが出力されてから、カウント装置21から終了信号TEが出力されるまでのプログラム転送モードの期間に”H”を示し、カウント装置21から終了信号TEが出力されてから以降の通常モードの期間に”L”を示している。
【0023】
選択器24は、フリップフロップ22から出力されるSRST信号に基づいて、アドレス信号WABとライト信号WWRXとリード信号WOEXとを出力する。SRST信号が”L”を示すときに、すなわち、通常モードであるときに、リード信号WOEXは、楽音発生器27から出力されるTOEX信号が示す値を示し、ライト信号WWRXは、楽音発生器27から出力されるTWRX信号が示す値を示し、アドレス信号WABは、楽音発生器27から出力される波形読み出しアドレス信号であるTAB信号が示すアドレスを示している。ライト信号WWRXは、SRST信号が”H”を示すときに、すなわち、プログラム転送モードであるときに、リード信号WOEXは、”L”を示し、ライト信号WWRXは、”H”を示し、アドレス信号WABは、カウント装置21から出力されるアドレス信号CNTABが示すアドレスを示している。
【0024】
すなわち、プログラム/波形メモリ12は、選択器24から出力されるアドレス信号WABとライト信号WWRXとリード信号WOEXとに基づいて、入力される情報を記録し、または、記録される情報を出力する。すなわち、プログラム/波形メモリ12は、ライト信号WWRXが”L”を示し、かつ、リード信号WOEXが”H”を示すときに、入力される情報をアドレス信号WABが示すアドレスに記録する。プログラム/波形メモリ12は、ライト信号WWRXが”H”を示し、かつ、リード信号WOEXが”L”を示すときに、アドレス信号WABが示すアドレスに記録されている情報を出力する。
【0025】
選択器25は、フリップフロップ22から出力されるSRST信号に基づいて、アドレス信号IABとライト信号IWRXとリード信号IOEXとを出力する。SRST信号が”L”を示すときに、すなわち、通常モードであるときに、リード信号IOEXは、CPU26から出力されるCOEX信号が示す値を示し、ライト信号IWRXは、CPU26から出力されるCWRX信号が示す値を示し、アドレス信号IABは、CPU26から出力されるアドレス信号であるCAB信号が示す値を示している。ライト信号IWRXは、SRST信号が”H”を示すときに、すなわち、プログラム転送モードであるときに、リード信号IOEXは、”H”を示し、ライト信号IWRXは、”L”を示し、アドレス信号IABは、カウント装置21から出力されるアドレス信号CNTABが示す値を示している。
【0026】
メモリ23は、読み書き可能な揮発性メモリである。このようなメモリとしては、DRAMが例示される。メモリ23は、コンピュータプログラムとパラメータデータとが記録されるプログラム領域とCPU26により生成される情報が一時的に記録される一時記憶領域とを備えている。すなわち、カウント装置21から出力されるアドレス信号CNTABは、メモリ23のプログラム領域のアドレスを示している。メモリ23は、選択器25から出力されるアドレス信号IABとライト信号IWRXとリード信号IOEXとに基づいて、入力される情報を記録し、または、記録される情報を出力する。すなわち、メモリ23は、ライト信号IWRXが”L”を示し、かつ、リード信号IOEXが”H”を示すときに、入力される情報をアドレス信号IABが示すアドレスに記録する。メモリ23は、ライト信号IWRXが”H”を示し、かつ、リード信号IOEXが”L”を示すときに、アドレス信号IABが示すアドレスに記録されている情報を出力する。
【0027】
CPU26は、メモリ23に記録されているコンピュータプログラムを読み出し、そのコンピュータプログラムを実行して、キーボード部7と操作パネル部8を操作して、楽音発生器を制御して、D/A変換器14より楽音を出力するように制御する。CPU26は、このとき生成される情報をメモリ23の一時記憶領域に一時的に記録する。すなわち、CPU26は、キーボード部7と操作パネル部8とを走査して鍵情報と音色ボリューム情報とを生成する。その鍵情報は、キーボード部7の鍵を識別する複数の鍵番号に対応付けて鍵ON/OFFとタッチ情報を示している。その鍵ON/OFFは、その鍵番号により識別される鍵が押鍵されているか離鍵されているかを示している。そのタッチ情報は、その鍵番号により識別される鍵が打鍵されたときの打鍵強度を示している。その音色ボリューム情報は、操作パネル部8のスイッチの操作により複数の(楽音発生器)ジェネレータにそれぞれ設定された複数の音色と操作パネル部8のボリュームつまみの角度とを示している。
【0028】
CPU26は、パラメータデータをメモリ23から読み出し、そのパラメータデータと鍵情報と音色ボリューム情報とに基づいて複数の制御パラメータを生成し、その複数の制御パラメータを楽音発生器27に出力する。その複数の制御パラメータの個数は、電子楽器1が同時に放音することができる複数の楽音の個数に一致し、たとえば、64個、96個である。その制御パラメータは、その複数の楽音に1対1に対応し、それぞれ、バンクbankとスタートアドレスSTとループトップアドレスLTとループエンドアドレスLEと周波数ナンバーFNoとフィルタ選択とレゾナンスQとバイアスと目標値とスピードデータとラウドネス等々を示している。バンクbankは、対象とする楽音波形が記憶されているプログラム/波形メモリ12の領域であるバンクを示している。スタートアドレスSTは、その楽音の立ち上がり部の先頭の波形データが記録されるプログラム/波形メモリ12のアドレスを示している。ループトップアドレスLTは、その楽音の繰り返し部の先頭の波形データが記録されるプログラム/波形メモリ12のアドレスを示している。ループエンドアドレスLEは、その楽音の繰り返し部の末尾の波形データが記録されるプログラム/波形メモリ12のアドレスを示している。周波数ナンバーFNoは、その楽音の周波数ナンバーを示している。フィルタ選択は、楽音に実施されるフィルタの種類を示し、ハイパス、ロウパス、バンドパス、バンドリジェクトのうちのいずれかを示している。レゾナンスQは、その楽音のレゾナンスを示している。バイアスは、その楽音の遮断周波数の基準を示している。目標値は、その楽音のエンベロープの目標値を示している。スピードデータは、その楽音のエンベロープのスピードデータを示している。ラウドネスは、その楽音の振幅エンベロープを制御するときに利用される値を示している。
【0029】
CPU26は、さらに、そのコンピュータプログラムを実行してメモリ23を制御するときに、COEX信号とCWRX信号とCAB信号とを選択器25に出力する。すなわち、CPU26により生成された情報をメモリ23に一時的に記録するときに、COEX信号は、”H”を示し、CWRX信号は、”L”を示し、CAB信号は、その情報を記録させるアドレスを示している。CPU26がメモリ23から情報(コンピュータプログラムとパラメータデータと一時的に記録された情報とを含む)を読み出すときに、COEX信号は、”L”を示し、CWRX信号は、”H”を示し、CAB信号は、その情報が記録されているアドレスを示している。
【0030】
楽音発生器27は、それぞれ、CPU26から出力される複数の制御パラメータに基づいて複数の楽音を示すデジタル楽音信号を生成する。すなわち、楽音発生器27の個数は、電子楽器1が同時に放音することができる複数の楽音の個数に一致している。楽音発生器27の各々は、複数の制御パラメータの各々に基づいてアドレスを算出し、そのアドレスの出力に応答してプログラム/波形メモリ12から出力される波形データに基づいて楽音を示すデジタル楽音信号を生成し、そのデジタル楽音信号をD/A変換器14に供給する。
【0031】
電子楽器1の動作は、プログラム転送モードの動作と、通常モードの動作と、バージョンアップの動作とを備えている。
【0032】
プログラム転送モードの動作は、操作パネル部8の電源スイッチが操作されて電子楽器1に電源が投入されたときに開始する。集積回路11は、まず、その電源スイッチがOFFからONに切り換わるときに出力されるリセット信号RSTXに応答して、プログラム/波形メモリ12に記録されているコンピュータプログラムとパラメータデータとの全部を集積回路11に搭載されるメモリ23の所定の領域に転送し記録する。集積回路11は、その転送が終了すると、通常モードに移行する。
【0033】
通常モードの動作は、プログラム転送モードの動作が終了した直後に開始される。集積回路11のCPU26は、まず、メモリ23に記録されているコンピュータプログラムをメモリ23から読み出し、そのコンピュータプログラムを実行することにより、キーボード部7と操作パネル部8とプログラム/波形メモリ12とD/A変換器14とメモリ23と楽音発生器27とを制御する。このとき生成される情報は、CPU26によりメモリ23の一時記憶領域に一時的に記録され、CPU26によりメモリ23から読み出される。すなわち、CPU26は、キーボード部7と操作パネル部8とを走査して、その操作内容に対応するコンピュータプログラムをメモリ23から読み出して実行する。たとえば、CPU26は、電子楽器1が楽音を発生するようにユーザがキーボード部7と操作パネル部8とを操作したときに、その操作内容に基づいて鍵情報と音色ボリューム情報とを生成する。CPU26は、パラメータデータをメモリ23から読み出し、そのパラメータデータと鍵情報と音色ボリューム情報とに基づいて複数の制御パラメータを算出する。このとき、楽音発生器27は、その複数の制御パラメータに基づいて複数のアドレスを算出する。楽音発生器27は、その複数のアドレスをプログラム/波形メモリ12に出力して、複数の波形データを読み出す。楽音発生器27は、その複数の波形データに基づいて複数の楽音を示すデジタル楽音信号を生成し、電子楽器1は、そのデジタル楽音信号に基づいて生成される複数の楽音を放音する。
【0034】
一般的に、1つのチップに集積されている複数の回路の間を情報が伝送される伝送速度は、そのチップとそのチップの外部の回路との間を情報が伝送される伝送速度より大きく設計することができる。このような動作によれば、電子楽器1は、楽音を放音しながらCPUを備える集積回路の外部メモリからコンピュータプログラムを読み出す電子楽器より、楽音を放音するときにプログラム/波形メモリ12から波形データを読み出す時間を増加させることができる。この結果、電子楽器1は、その増加した時間だけプログラム/波形メモリ12から波形データをさらに読み出すことができ、同時に放音することができる楽音の数を増加させることができる。
【0035】
バージョンアップの動作は、プログラム/波形メモリ12に記録されているソフトウェア(コンピュータプログラムとパラメータデータと)が更新されたときに、実行される。ユーザは、そのソフトウェアが更新されたときに、その更新されたソフトウェアが記録された外部メモリを準備する。ユーザは、インターフェース5を介して、その外部メモリを電子楽器1に取り付ける。電子楽器1の集積回路11は、そのソフトウェアをその外部メモリから読み出して、そのソフトウェアをプログラム/波形メモリ12に記録する。このような動作によれば、電子楽器1は、ソフトウェアが更新されたときに、その更新されたソフトウェアを容易にバージョンアップすることができる。
【0036】
本発明による電子楽器の実施の他の形態は、既述の実施の形態における電子楽器1のプログラム/波形メモリ12が他のプログラム/波形メモリに置換されている。そのプログラム/波形メモリは、読み出し専用のROMにより形成され、その電子楽器に着脱可能である。その電子楽器の動作は、既述の実施の形態におけるバージョンアップの動作が他の動作に置換されている。その動作では、ユーザは、そのソフトウェアが更新されたときに、その更新されたソフトウェアが記録されたプログラム/波形メモリを準備する。ユーザは、電子楽器1に電源が投入されていないときに、電子楽器1からプログラム/波形メモリ12を取り出して、その準備されたプログラム/波形メモリを取り付ける。このような動作によれば、電子楽器1は、ソフトウェアが更新されたときに、その更新されたソフトウェアを容易にバージョンアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明による電子楽器の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、集積回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
1 :電子楽器
2 :バス
5 :インターフェース
7 :キーボード部
8 :操作パネル部
11:集積回路
12:プログラム/波形メモリ
14:D/A変換器
15:アナログ信号処理部
16:アンプ
17:スピーカ
21:カウント装置
22:フリップフロップ
23:メモリ
24:選択器
25:選択器
26:CPU
27:楽音発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データとコンピュータプログラムとを記憶するメモリと、
CPUとRAMと楽音発生器とが1つのチップに集積された集積回路とを具備し、
前記集積回路は、
プログラム転送モードで前記メモリから前記コンピュータプログラムを読み出して前記RAMに記録し、
通常モードで前記CPUが前記RAMから読み出されるコンピュータプログラムを実行して前記楽音発生器が前記メモリから前記データを読み出して楽音を示す楽音データを生成する
電子楽器。
【請求項2】
請求項1において、
前記集積回路は、前記通常モードで前記メモリから前記コンピュータプログラムを読み出さない
電子楽器。
【請求項3】
請求項2において、
前記プログラム転送モードは、前記集積回路に電源が投入されたときに開始する
電子楽器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記メモリは、パラメータデータを更に記憶し、
前記集積回路は、
前記プログラム転送モードで前記メモリから前記パラメータデータを読み出して前記RAMに記録し、
前記通常モードで前記CPUが前記RAMから前記パラメータデータを読み出して情報処理する
電子楽器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記CPUは、前記通常モードで、前記コンピュータプログラムを実行して生成される情報を前記RAMに記録し、前記情報を前記RAMから読み出す
電子楽器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、
インターフェースを更に具備し、
前記集積回路は、前記インターフェースを介して接続される記憶装置に記憶されるソフトウェアを前記メモリに記録する
電子楽器。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、
前記メモリは、着脱可能である
電子楽器。

【図1】
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【図2】
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