電子機器および操作ボタンの取付方法
【課題】操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる電気機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、樹脂からなる意匠パネル12と、前記意匠パネル12に取り付けられる操作ボタンと、を備える。操作ボタンは、ユーザからの操作を受けるボタン部と、前記ボタン部に接続された腕部22と、を有する。前記意匠パネル12は、前記ボタン部の本体24が挿入される挿入孔40と、前記意匠パネル12の裏面において、前記腕部22が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部22の一部と係合することで、前記腕部22が意匠パネル12から落下することを防止する突起体44と、を備える。
【解決手段】電子機器は、樹脂からなる意匠パネル12と、前記意匠パネル12に取り付けられる操作ボタンと、を備える。操作ボタンは、ユーザからの操作を受けるボタン部と、前記ボタン部に接続された腕部22と、を有する。前記意匠パネル12は、前記ボタン部の本体24が挿入される挿入孔40と、前記意匠パネル12の裏面において、前記腕部22が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部22の一部と係合することで、前記腕部22が意匠パネル12から落下することを防止する突起体44と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ボタンが取り付けられた意匠パネルを備える電子機器、および、当該意匠パネルへの操作ボタンの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクなどの電子機器は、通常、その外表面として機能する意匠パネルを備えており、当該意匠パネルには、ユーザからの操作を受ける操作ボタンなどが取り付けられている。この操作ボタンは、製造の過程で、意匠パネルに取り付けられるが、その取付方法に関して、従来から種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ネジにより、イジェクトボタンに連結された腕部を意匠パネルに取り付ける技術が開示されている。また、特許文献2には、押釦に連結されたアーム先端に取付孔を形成するとともに当該取付孔を意匠パネルに立設されたピンに挿通させることにより押釦を意匠パネルに取り付ける技術が開示されている。特許文献3には、操作ボタンに連結されたヒンジ部の先端に角形枠状の嵌合枠部を形成し、この嵌合枠部に意匠パネルに立設された凹部を挿通させるとともに、当操作ボタンを意匠パネルとホルダ部材とで挟持する技術が開示されている。さらに、特許文献4には、イジェクトボタンに連結された腕部の先端に取付孔を設けるとともに、当該取付孔を意匠パネルに形成された溶着ボスに挿通したうえで溶着ボスを半田ゴテ等で溶かすことにより、イジェクトボタンを意匠パネルに取り付ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−180914号公報
【特許文献2】特開平8−116186号公報
【特許文献3】特開2006−164748号公報
【特許文献4】特開2008−152844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来技術には次のような問題があった。特許文献1の技術は、螺合により取り付ける構成であるため、手間であるといえる。一方、特許文献2,3記載の技術によれば、ボタン側の孔に意匠パネル側のボスを挿通するだけなので、比較的簡易に取付作業ができる。しかし、特許文献2では、孔にボスを挿通しているだけであるため、ボタンが脱落する恐れがあった。特許文献3では、孔にボスを挿通したうえで、さらに、ボタンを意匠パネルとホルダ部材とで挟持しているため、こうした脱落の恐れはない。しかし、特許文献3では、脱落防止のためにホルダ部材という新たな部品が必要になり、部品点数の増加、ひいては、コストの増加などの問題を招いていた。溶着によりボタンを意匠パネルに取り付ける特許文献4の技術によれば、こうした部品点数増加、ボタンの脱落といった問題は防止される。しかし、特許文献4の技術では、ボタンを意匠パネルに取り付けるために溶着設備が必須となり、取付作業が大掛かりになりがちであった。また、一度溶着されたボタンは、意匠パネルから取り外すことができない、という問題もあった。つまり、従来、操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる電気機器、およびボタン取付方法は無かった。
【0006】
そこで、本発明では、操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる電気機器、およびボタン取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器は、樹脂からなる意匠パネルと、前記意匠パネルに取り付けられる操作ボタンであって、少なくとも一部が外部に露出してユーザからの操作を受けるボタン部と、前記ボタン部に接続された腕部と、を有する操作ボタンと、を備え、前記意匠パネルは、前記ボタン部が挿入される挿入孔と、前記意匠パネルの裏面において、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部と係合することで、前記腕部が意匠パネルから落下することを防止する係合部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記腕部は、当該腕部の長尺方向に延びるスリットを有し、前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、前記スリットに挿通される突起体であって、その先端に、前記スリットの幅より大きい幅の返し部が形成されている突起体である。この場合、前記腕部は、さらに、前記スリットに接続され、前記返し部の幅より大きい幅の孔である通過孔を有することが望ましい。
【0009】
他の好適な態様では、前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、当該裏面との間に隙間を形成するブリッジ体であり、前記腕部が、前記隙間にスライド挿入されることで前記腕部が前記ブリッジ体と係合される。
【0010】
他の本発明であるボタン取付方法は、電子機器の意匠パネルに、ユーザからの操作を受けるボタン部および前記ボタン部に接続された腕部を有する操作ボタンを取り付けるボタン取付方法であって、樹脂からなる意匠パネルに形成された挿入孔に前記ボタン部を挿入するとともに、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部を前記意匠パネルの裏面に設けられた係合部材に係合させ、前記腕部の意匠パネルからの落下を防止する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、腕部の一部を係合部材に係合させるだけであるため、操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である光ディスクドライブを搭載したPCの斜視図である。
【図2】操作ボタンの背面図である。
【図3】操作ボタンの側面図である。
【図4】意匠パネルの背面図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】図4におけるB−B断面図である。
【図7】操作ボタンを意匠パネルに組み付ける流れを示す図である。
【図8】操作ボタンの背面図である。
【図9】操作ボタンの側面図である。
【図10】意匠パネルの背面図である。
【図11】図10におけるD−D断面図である。
【図12】図10におけるE−E断面図である。
【図13】操作ボタンを意匠パネルに組み付ける流れを示す図である。
【図14】操作ボタンの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である光ディスクドライブ10を組み込んだパーソナルコンピュータ(以下「PC」と略す)100の概略斜視図である。PC100に組み込まれた状態において、光ディスクドライブ10の大部分はPC100の内部に収容され、光ディスクドライブ10の正面に位置する意匠パネル12のみが外部に露出することになる。この意匠パネル12には、表示器の構成要素である導光レンズ16や、ユーザからの操作指示を受ける操作ボタン14などが設けられている。
【0014】
意匠パネル12には、この操作ボタン14のボタン部が挿入される挿入孔が形成されている。そして、ボタン部に連結された腕部を、意匠パネル12の裏面に取り付けることで操作ボタン14が意匠パネル12に組み付けられる。本実施形態では、この操作ボタン14を脱落させることなく、簡易に意匠パネル12に取り付けるために、意匠パネル12および操作ボタン14の構成を特殊なものとしている。以下、これについて詳説する。
【0015】
図2は本実施形態で用いられる操作ボタン14の背面図、図3は操作ボタン14の側面図である。操作ボタン14は、一部が電子機器の外表面に露出して、ユーザの操作(押下動作)を受ける部品であり、樹脂やエラストマー、シリコンなどの良好な成形性と適度な弾性を備えた材料から構成される。この操作ボタン14は、実際にユーザの操作を受けるボタン部20と、当該ボタン部20に連結された腕部22と、に大別される。
【0016】
ボタン部20は、さらに、本体24と、ベース26とに大別される。本体24は、実際にユーザの押下動作を受ける部位である。この本体24は、正面視において横長の略長方形であり、その厚みは意匠パネル12の厚みよりも十分に大きくなっている。操作ボタン14を組み付ける際には、この本体24は、意匠パネル12の裏側から当該意匠パネル12に形成された挿入孔40に挿通され、意匠パネル12の表面より外側に突出する。
【0017】
ボタン部20の基端はベース26に連結されている。ベース26は、少なくとも挿入孔40およびボタン部20よりも大きいサイズを有した略矩形の平板状部位である。このベース26の上端近傍には、位置決め孔28が形成されている。この位置決め孔28は、意匠パネル12の裏面に形成された位置決めボス42が挿通される孔である。この位置決め孔28に位置決めボス42が挿通されることにより、ボタン部20の意匠パネル12に対する位置、ひいては、ボタン部本体24の挿入孔40に対する位置が規制される。
【0018】
ベース26の裏面には、当接ボス30が突出形成されている。当接ボス30は、本体24に対するユーザの押下動作に連動して、当該操作ボタン14の背後に設置される押しボタンスイッチ60に当接し、当該押しボタンスイッチ60を押下する。
【0019】
ベース26の上端両サイドからは、一対の腕部22が延設されている。腕部22は、ボタン部20の長尺方向に長尺な、略帯形状の部位である。この腕部22の先端は、やや肉厚かつ幅広となっている。この幅広部分には、ボタン部20の長尺方向に長尺なスリット32が形成されている。操作ボタン14を組み付ける際、このスリット32には、意匠パネル12の裏面に突設された突起体44が挿通される。スリット32の短軸方向の幅は、当該突起体44の根元部分の幅より大きく、当該突起体44の先端部分に相当する返し部46よりも小さくなっている。ただし、このスリット32の幅は、当該スリット32の周縁に力を加えて弾性変形させることにより、適宜、微小変化する。そして、この弾性変形により、幅広の突起体44の返し部46が通過できるようになる。
【0020】
スリット32の先端には、当該スリット32よりも幅広の孔である通過孔34が接続されている。この通過孔34は、突起体44に設けられた返し部46よりも幅広となっており、腕部22を突起体44から取り外す際に利用される。
【0021】
次に、意匠パネル12について図4〜図6を参照して説明する。図4は、意匠パネル12の背面図であり、図5は図4におけるA−A断面図、図6は図4におけるB−B断面図である。意匠パネル12は、光ディスクドライブ10などの電子機器の正面に取り付けられるパネルで、樹脂などから構成される。この意匠パネル12の略中央には、ボタン部20の本体24が挿通される挿入孔40が形成されている。この挿入孔40は、正面視において、横長の略長方形となっており、そのサイズは、ボタン部20の本体24より僅かに大きくなっている。意匠パネル12の裏面のうち、挿入孔40の上側位置には、位置決めボス42が突出形成されている。この位置決めボス42は、操作ボタン14の位置決め孔28に挿通される部位で、当該位置決め孔28より僅かに小径となっている。この位置決めボス42が位置決め孔28に挿通されることで、挿入孔40に対するボタン部本体24の位置が規定される。
【0022】
位置決めボス42を挟んで左右両側位置には、突起体44が形成されている。この突起体44は意匠パネル12の裏面から突出する柱状物で、腕部の一部に係合する係合部材として機能する。この突起体44は、操作ボタン14の本体24を挿入孔40に挿入し、腕部22をまっすぐに伸ばした状態において、当該腕部22のスリット32に対応する位置に設けられている。また、突起体44の先端には断面略三角形状の返し部46が設けられている。返し部46は、突起体44に差し込まれた腕部22の抜け落ちを防止するための部位で、その最大幅は、腕部22に形成されたスリット32の幅より大きくなっている。また、返し部46の上面には、根元に近づくにつれ幅広となるテーパが施されている。この返し部46の底面から意匠パネル12の裏面までの距離H1は、腕部22先端の肉厚より僅かに大きい程度となっており、当該突起体44が挿通された腕部22が、突起体44の突出方向にバタつかないようになっている。
【0023】
次に、かかる構成の操作ボタン14を意匠パネル12に組み付ける流れについて図7を参照して説明する。図7は、操作ボタン14を意匠パネル12に組み付ける流れを示す図である。
【0024】
意匠パネル12に操作ボタン14を組み付ける際には、まず、ボタン部20の本体24を、意匠パネル12の裏側から挿入孔40に挿入する(図7(a)参照)。このとき、位置決め孔28に位置決めボス42が挿通されるべく、本体24の位置を微調整する。そして、位置決め孔28に位置決めボス42を挿通させた状態で、ベース26が意匠パネル12の裏面と接触するまで本体24を挿入孔40に押し込む(図7(b)参照)。このとき、腕部22に設けられたスリット32が、意匠パネル12に設けられた突起体44の上に載った状態となる。
【0025】
この状態になれば、続いて、腕部22先端を突起体44の根元の方向に押して、スリット32の周縁を弾性変形させて、当該スリット32に突起体44を挿通させる(図7(c)、(d)参照)。突起体44を挿通させた後、力を解除すると、スリット32の周縁は弾性復元し、再び、返し部46より幅狭となる。その結果、特別な力を加えない限り、腕部22の先端と突起体44との係合が解除されることはなく、腕部22が意匠パネル12に取り付けられることになる。つまり、本実施形態によれば、溶着やネジといった道具を用いなくても、簡易に、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けることができる。その一方で、腕部22の先端と突起体44との係合関係により、操作ボタン14の脱落が確実に防止されている。
【0026】
また、既述したとおり、本実施形態において、スリット32は、突起体44の根元部分より幅広となっている。したがって、操作ボタン14を意匠パネル12に組み付けた状態(図7(d)の状態)において、その先端を長尺方向にスライド移動させることが可能となっている。換言すれば、本実施形態において、操作ボタン14組み付けの完了時において、腕部22が、長尺方向(意匠パネルの面方向)に動くことが許容されているといえる。これにより、操作ボタン14の操作感が向上でき、また、操作ボタン14の耐久性を向上させることができる。これについて従来技術と比較して説明する。
【0027】
従来技術の多くは、腕部22の先端を意匠パネル12の一部に位置固定で締結することにより、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けていた。具体的には従来技術では、螺合や溶着などの締結手段を用いて腕部22の先端を意匠パネル12の裏面に締結したり、腕部22の先端に設けられた丸穴に意匠パネル12の裏面から突出するボスを挿通したりすることで、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けていた。こうした技術では、腕部22の先端位置は固定となり、腕部22が意匠パネル12の面方向に動くことはできなかった。
【0028】
この場合、次のような問題があった。通常、組み付けられた操作ボタン14のうちボタン部本体24は、適宜、押下動作を受ける。この押下動作に伴い、ボタン部本体24は、意匠パネル12の面に直交する方向に進退する。このようにボタン部本体24が進退移動するためには、当該ボタン部本体24に連結されたベース26や腕部22も若干量、移動する必要がある。しかし、腕部22の先端が位置固定で意匠パネル12に締結されていた従来技術の場合、腕部22全体としては移動できないため、ボタン部本体24の移動に伴い腕部22が撓むことで、腕部22の基端(ベース26との接続部分)の位置のみが移動するようになっていた。しかし、こうした腕部22の撓みは、腕部22に負荷をかけ、腕部22の耐久性を低下させるという問題があった。また、腕部22の撓みに対する抵抗力が、ボタン部本体24を押下操作する際の抵抗感としてユーザに伝わり、ボタンの操作感低下という問題も招いていた。
【0029】
一方、本実施形態では、既述したとおり、腕部22がその長尺方向に移動可能となっている。そのため、ボタン部本体24を押下操作した際には、当該ボタン部本体24の移動に伴い腕部22全体が移動することができる。そして、腕部22全体が移動することにより、腕部22に生じる撓み量、ひいては、腕部22にかかる負荷を低減することができ、結果として、操作ボタン14の耐久性を向上できる。また、腕部22を大きく撓ませなくても、ボタン部本体24を押下操作できるため、押下操作に伴う抵抗感を低減でき、軽いタッチでもボタン部本体24を深く押せるような感覚をユーザに与えることができ、結果として、ボタンの操作感を向上できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、意匠パネル12に操作ボタン14を組み付けた後でも、容易に、当該操作ボタン14を取り外すことができる。すなわち、本実施形態では、突起体44が挿通されているスリット32の先端には、突起体44の最大幅よりも幅広な通過孔34が連結されている。かかる構成において、腕部22と突起体44との係合関係を解除したい場合には、まず、ボタン本体24を押し込んで位置決め孔28を位置決めボス42から解放した状態で、腕部22の先端をスリット32に沿ってスライド移動させることによって、操作ボタン14全体をスライドさせ、一方の突起体44を一方の腕部22の通過孔34内に位置させる。そして、その状態で、腕部22先端を突起体44から離脱させる方向に持ち上げれば、突起体44から腕部22先端が抜けることになり、突起体44と腕部22先端との係合が解除される。他方の腕部22についても同様の手順で係合を解除する。ここで、この一連の動作において、操作ボタン14および意匠パネル12のいずれにも大きな負荷はかかっていない。そのため、操作ボタン14および意匠パネル12のいずれにも損傷を与えることなく、操作ボタン14を意匠パネル12から取り外すことができる。
【0031】
このように、操作ボタン14を意匠パネル12から容易に取り外せるようにすることにより、部品の無駄な廃棄を低減できる。すなわち、溶着などの固着手段で操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けた場合に、例えば、操作ボタン14にのみ不具合(例えば傷など)が発生し、操作ボタン14を廃棄せざるを得なくなったとする。この場合、操作ボタン14から意匠パネル12を取り外すことはできないため、不具合が生じていない意匠パネル12も、操作ボタン14とともに廃棄しなければならない。また、逆に意匠パネル12にのみ不具合が生じた場合にも、不具合が生じていない操作ボタン14も廃棄せざるを得なくなる。つまり、溶着のように取り外し不可能な締結手段で操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けた場合、操作ボタン14、意匠パネル12のいずれか一方の不具合に伴い、不具合の生じていない他方も廃棄する必要があり、無駄であったといえる。
【0032】
一方、本実施形態では、操作ボタン14および意匠パネル12のいずれにも損傷を与えることなく、操作ボタン14を意匠パネル12から取り外すことができる。そのため、操作ボタン14、意匠パネル12のいずれか一方に不具合が生じた場合には、不具合が生じていない他方のみを残し、当該他方を別の製品に流用できる。その結果、無駄な部品の廃棄を低減でき、製造にかかるコストをより低減できる。
【0033】
次に、第二実施形態について図面を参照して説明する。第二実施形態では、腕部22の一部を、意匠パネル12の裏面から突出形成されたブリッジ体48と意匠パネル12の裏面との隙間に挿し込むことで、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けている。以下、これについて詳説する。
【0034】
図8は、第二実施形態に用いられる操作ボタン14の背面図である。また、図9は、この操作ボタン14の側面図である。第一実施形態と同様に、操作ボタン14は、ボタン部20と、腕部22と、に大別される。そして、ボタン部20には、実際に操作を受ける略ブロック形状の本体24と、本体24の基端に連結された平板状のベース26、および、ベース26の裏面から突出する当接ボス30が設けられている。ベース26の上端略中央には、略円弧状の位置決め切り欠き29が形成されており、当該位置決め切り欠き29内に、意匠パネル12裏面に突出形成された位置決めボス42を位置させることで、挿入孔40に対するボタン部本体24の相対位置が規定される。
【0035】
ベース26の両サイドからは、一対の腕部22が延設されている。腕部22は、ボタン部本体24の長尺方向に長尺な帯状部材である。この腕部22の先端は、幅広に広がっており、肉厚も若干厚くなっている。この腕部22先端の幅は、後述するブリッジ体48の幅より小さく、その厚みはブリッジ体48と意匠パネル12裏面との隙間より僅かに小さくなっている。
【0036】
次に、第二実施形態で用いられる意匠パネル12について図10〜図11を参照して説明する。図10は意匠パネル12の背面図、図11は図10におけるD−D断面図、図12は図10におけるE−E断面図である。
【0037】
この意匠パネル12も、第一実施形態と同様に、その略中央付近に、ボタン部本体24が挿入される挿入孔40が形成されている。また、意匠パネル12の裏面のうち、挿入孔40の上側には、位置決め切り欠き29に差し込まれる位置決めボス42が形成されている。
【0038】
位置決めボス42の左右両側には、ブリッジ体48が形成されている。ブリッジ体48は、腕部の一部と係合する係合部材として機能するものである。このブリッジ体48は、意匠パネル12の裏面から立脚する断面略コ字状の部位で、裏面との間に略矩形の間隙49を形成する。この間隙49の厚みは、腕部22先端の厚みより僅かに大きく、また、間隙49の幅は腕部22先端の幅より僅かに大きくなっている。また、このブリッジ体48は、ボタン部本体24を挿入孔40に挿入した際、腕部22の先端(幅広、肉厚となっている部分)が位置する位置に設けられている。
【0039】
次に、こうした意匠パネル12に操作ボタン14を組み付ける流れについて図13を参照して説明する。図13は、操作ボタン14を意匠パネル12に組み付ける流れを示す図である。
【0040】
意匠パネル12に操作ボタン14を組み付ける場合には、まず、ボタン部本体24を挿入孔40からずらした状態で、操作ボタン14を意匠パネル12の裏面に当てる(図13(a)参照)。そして、その状態で、位置を調整し、一方の腕部22の先端を対応するブリッジ体48と意匠パネル12の裏面との隙間に挿し込む(図13(b)参照)。そのまま、操作ボタン14全体を、腕部22の長尺方向にスライド移動させ、他方の腕部22の先端を対応するブリッジ体48と意匠パネル12の裏面との隙間に挿し込む(図13(c)、(d)参照)。このように二つの腕部22がそれぞれ、対応するブリッジ体48と係合した状態になれば、ボタン部本体24を挿入孔40に挿入する図13(e)参照)。このとき、操作ボタン14に設けられた位置決め切り欠き29内に、意匠パネル12に設けられた位置決めボス42が位置するように、ボタン部本体24の位置を微調整する。そして、最終的に、ベース26表面が意匠パネル12の裏面に当接する位置まで、ボタン部本体24を挿入できれば、組み付け作業が完了となる。
【0041】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、溶着やネジといった道具を用いなくても、簡易に、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けることができる。その一方で、腕部22の先端とブリッジ体48との係合関係により、操作ボタン14の脱落が確実に防止されている。
【0042】
また、本実施形態でも、操作ボタン14組み付けの完了時において、腕部22の長尺方向への動きが許容されている。その結果、操作ボタン14の操作感が向上でき、また、操作ボタン14の耐久性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態でも、一度組み付けた操作ボタン14を、容易に意匠パネル12から取り外すことができる。すなわち、一度組み付けた操作ボタン14を意匠パネル12から取り外したい場合には、図13に示す組み付け作業と逆の流れの作業を行い、二つの腕部22それぞれを撓ませて、その先端を対応するブリッジ体48から抜き取ればよい。これにより、腕部22とブリッジ体48との係合関係が解除されるため、後は、挿入孔40に挿入されたボタン部本体24を挿入孔40から押し出せば、操作ボタン14を取り外すことができる。そして、このように取り外し可能とすることにより、無駄な部品の廃棄を低減でき、製造コストを低減できる。
【0044】
なお、これまで二つの実施形態を例に挙げて説明してきたが、腕部22の一部が意匠パネル12の面方向に移動可能な状態で、意匠パネル12の裏面に設けられた係合部材と係合するのであれば、各部位の形状や位置は適宜、変更されてもよい。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、腕部22を、いずれも、直線状に伸びた帯状部位としているが、腕部22を、途中で屈曲した形状としてもよい。すなわち、図14に示すように、腕部22を、ベース26の下端両サイドから伸び、途中で、上方向に略90度屈曲した略L字形状としてもよい。そして、この略L字形状の腕部22の先端に、意匠パネル12の裏面から突出する突起体44と係合するスリット32、あるいは、意匠パネル12の裏面に設けられたブリッジ体48に挿入される挿入部分を形成するようにしてもよい。このように、腕部22の一部を屈曲させることにより、操作ボタン14全体のサイズを低減できる。また、上述の説明では、光ディスクドライブ10を例に挙げて説明したが、操作ボタン14が取り付けられた意匠パネル12を有する電子機器であれば、当然、他の電子機器に応用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 光ディスクドライブ、12 意匠パネル、14 操作ボタン、16 導光レンズ、20 ボタン部、22 腕部、24 本体、26 ベース、28 位置決め孔、30 当接ボス、32 スリット、34 通過孔、40 挿入孔、42 位置決めボス、44 突起体、46 返し部、48 ブリッジ体、60 押しボタンスイッチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ボタンが取り付けられた意匠パネルを備える電子機器、および、当該意匠パネルへの操作ボタンの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクなどの電子機器は、通常、その外表面として機能する意匠パネルを備えており、当該意匠パネルには、ユーザからの操作を受ける操作ボタンなどが取り付けられている。この操作ボタンは、製造の過程で、意匠パネルに取り付けられるが、その取付方法に関して、従来から種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ネジにより、イジェクトボタンに連結された腕部を意匠パネルに取り付ける技術が開示されている。また、特許文献2には、押釦に連結されたアーム先端に取付孔を形成するとともに当該取付孔を意匠パネルに立設されたピンに挿通させることにより押釦を意匠パネルに取り付ける技術が開示されている。特許文献3には、操作ボタンに連結されたヒンジ部の先端に角形枠状の嵌合枠部を形成し、この嵌合枠部に意匠パネルに立設された凹部を挿通させるとともに、当操作ボタンを意匠パネルとホルダ部材とで挟持する技術が開示されている。さらに、特許文献4には、イジェクトボタンに連結された腕部の先端に取付孔を設けるとともに、当該取付孔を意匠パネルに形成された溶着ボスに挿通したうえで溶着ボスを半田ゴテ等で溶かすことにより、イジェクトボタンを意匠パネルに取り付ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−180914号公報
【特許文献2】特開平8−116186号公報
【特許文献3】特開2006−164748号公報
【特許文献4】特開2008−152844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来技術には次のような問題があった。特許文献1の技術は、螺合により取り付ける構成であるため、手間であるといえる。一方、特許文献2,3記載の技術によれば、ボタン側の孔に意匠パネル側のボスを挿通するだけなので、比較的簡易に取付作業ができる。しかし、特許文献2では、孔にボスを挿通しているだけであるため、ボタンが脱落する恐れがあった。特許文献3では、孔にボスを挿通したうえで、さらに、ボタンを意匠パネルとホルダ部材とで挟持しているため、こうした脱落の恐れはない。しかし、特許文献3では、脱落防止のためにホルダ部材という新たな部品が必要になり、部品点数の増加、ひいては、コストの増加などの問題を招いていた。溶着によりボタンを意匠パネルに取り付ける特許文献4の技術によれば、こうした部品点数増加、ボタンの脱落といった問題は防止される。しかし、特許文献4の技術では、ボタンを意匠パネルに取り付けるために溶着設備が必須となり、取付作業が大掛かりになりがちであった。また、一度溶着されたボタンは、意匠パネルから取り外すことができない、という問題もあった。つまり、従来、操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる電気機器、およびボタン取付方法は無かった。
【0006】
そこで、本発明では、操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる電気機器、およびボタン取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器は、樹脂からなる意匠パネルと、前記意匠パネルに取り付けられる操作ボタンであって、少なくとも一部が外部に露出してユーザからの操作を受けるボタン部と、前記ボタン部に接続された腕部と、を有する操作ボタンと、を備え、前記意匠パネルは、前記ボタン部が挿入される挿入孔と、前記意匠パネルの裏面において、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部と係合することで、前記腕部が意匠パネルから落下することを防止する係合部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記腕部は、当該腕部の長尺方向に延びるスリットを有し、前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、前記スリットに挿通される突起体であって、その先端に、前記スリットの幅より大きい幅の返し部が形成されている突起体である。この場合、前記腕部は、さらに、前記スリットに接続され、前記返し部の幅より大きい幅の孔である通過孔を有することが望ましい。
【0009】
他の好適な態様では、前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、当該裏面との間に隙間を形成するブリッジ体であり、前記腕部が、前記隙間にスライド挿入されることで前記腕部が前記ブリッジ体と係合される。
【0010】
他の本発明であるボタン取付方法は、電子機器の意匠パネルに、ユーザからの操作を受けるボタン部および前記ボタン部に接続された腕部を有する操作ボタンを取り付けるボタン取付方法であって、樹脂からなる意匠パネルに形成された挿入孔に前記ボタン部を挿入するとともに、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部を前記意匠パネルの裏面に設けられた係合部材に係合させ、前記腕部の意匠パネルからの落下を防止する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、腕部の一部を係合部材に係合させるだけであるため、操作ボタンの脱落を防止しつつ、簡易に操作ボタンを意匠パネルに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である光ディスクドライブを搭載したPCの斜視図である。
【図2】操作ボタンの背面図である。
【図3】操作ボタンの側面図である。
【図4】意匠パネルの背面図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】図4におけるB−B断面図である。
【図7】操作ボタンを意匠パネルに組み付ける流れを示す図である。
【図8】操作ボタンの背面図である。
【図9】操作ボタンの側面図である。
【図10】意匠パネルの背面図である。
【図11】図10におけるD−D断面図である。
【図12】図10におけるE−E断面図である。
【図13】操作ボタンを意匠パネルに組み付ける流れを示す図である。
【図14】操作ボタンの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である光ディスクドライブ10を組み込んだパーソナルコンピュータ(以下「PC」と略す)100の概略斜視図である。PC100に組み込まれた状態において、光ディスクドライブ10の大部分はPC100の内部に収容され、光ディスクドライブ10の正面に位置する意匠パネル12のみが外部に露出することになる。この意匠パネル12には、表示器の構成要素である導光レンズ16や、ユーザからの操作指示を受ける操作ボタン14などが設けられている。
【0014】
意匠パネル12には、この操作ボタン14のボタン部が挿入される挿入孔が形成されている。そして、ボタン部に連結された腕部を、意匠パネル12の裏面に取り付けることで操作ボタン14が意匠パネル12に組み付けられる。本実施形態では、この操作ボタン14を脱落させることなく、簡易に意匠パネル12に取り付けるために、意匠パネル12および操作ボタン14の構成を特殊なものとしている。以下、これについて詳説する。
【0015】
図2は本実施形態で用いられる操作ボタン14の背面図、図3は操作ボタン14の側面図である。操作ボタン14は、一部が電子機器の外表面に露出して、ユーザの操作(押下動作)を受ける部品であり、樹脂やエラストマー、シリコンなどの良好な成形性と適度な弾性を備えた材料から構成される。この操作ボタン14は、実際にユーザの操作を受けるボタン部20と、当該ボタン部20に連結された腕部22と、に大別される。
【0016】
ボタン部20は、さらに、本体24と、ベース26とに大別される。本体24は、実際にユーザの押下動作を受ける部位である。この本体24は、正面視において横長の略長方形であり、その厚みは意匠パネル12の厚みよりも十分に大きくなっている。操作ボタン14を組み付ける際には、この本体24は、意匠パネル12の裏側から当該意匠パネル12に形成された挿入孔40に挿通され、意匠パネル12の表面より外側に突出する。
【0017】
ボタン部20の基端はベース26に連結されている。ベース26は、少なくとも挿入孔40およびボタン部20よりも大きいサイズを有した略矩形の平板状部位である。このベース26の上端近傍には、位置決め孔28が形成されている。この位置決め孔28は、意匠パネル12の裏面に形成された位置決めボス42が挿通される孔である。この位置決め孔28に位置決めボス42が挿通されることにより、ボタン部20の意匠パネル12に対する位置、ひいては、ボタン部本体24の挿入孔40に対する位置が規制される。
【0018】
ベース26の裏面には、当接ボス30が突出形成されている。当接ボス30は、本体24に対するユーザの押下動作に連動して、当該操作ボタン14の背後に設置される押しボタンスイッチ60に当接し、当該押しボタンスイッチ60を押下する。
【0019】
ベース26の上端両サイドからは、一対の腕部22が延設されている。腕部22は、ボタン部20の長尺方向に長尺な、略帯形状の部位である。この腕部22の先端は、やや肉厚かつ幅広となっている。この幅広部分には、ボタン部20の長尺方向に長尺なスリット32が形成されている。操作ボタン14を組み付ける際、このスリット32には、意匠パネル12の裏面に突設された突起体44が挿通される。スリット32の短軸方向の幅は、当該突起体44の根元部分の幅より大きく、当該突起体44の先端部分に相当する返し部46よりも小さくなっている。ただし、このスリット32の幅は、当該スリット32の周縁に力を加えて弾性変形させることにより、適宜、微小変化する。そして、この弾性変形により、幅広の突起体44の返し部46が通過できるようになる。
【0020】
スリット32の先端には、当該スリット32よりも幅広の孔である通過孔34が接続されている。この通過孔34は、突起体44に設けられた返し部46よりも幅広となっており、腕部22を突起体44から取り外す際に利用される。
【0021】
次に、意匠パネル12について図4〜図6を参照して説明する。図4は、意匠パネル12の背面図であり、図5は図4におけるA−A断面図、図6は図4におけるB−B断面図である。意匠パネル12は、光ディスクドライブ10などの電子機器の正面に取り付けられるパネルで、樹脂などから構成される。この意匠パネル12の略中央には、ボタン部20の本体24が挿通される挿入孔40が形成されている。この挿入孔40は、正面視において、横長の略長方形となっており、そのサイズは、ボタン部20の本体24より僅かに大きくなっている。意匠パネル12の裏面のうち、挿入孔40の上側位置には、位置決めボス42が突出形成されている。この位置決めボス42は、操作ボタン14の位置決め孔28に挿通される部位で、当該位置決め孔28より僅かに小径となっている。この位置決めボス42が位置決め孔28に挿通されることで、挿入孔40に対するボタン部本体24の位置が規定される。
【0022】
位置決めボス42を挟んで左右両側位置には、突起体44が形成されている。この突起体44は意匠パネル12の裏面から突出する柱状物で、腕部の一部に係合する係合部材として機能する。この突起体44は、操作ボタン14の本体24を挿入孔40に挿入し、腕部22をまっすぐに伸ばした状態において、当該腕部22のスリット32に対応する位置に設けられている。また、突起体44の先端には断面略三角形状の返し部46が設けられている。返し部46は、突起体44に差し込まれた腕部22の抜け落ちを防止するための部位で、その最大幅は、腕部22に形成されたスリット32の幅より大きくなっている。また、返し部46の上面には、根元に近づくにつれ幅広となるテーパが施されている。この返し部46の底面から意匠パネル12の裏面までの距離H1は、腕部22先端の肉厚より僅かに大きい程度となっており、当該突起体44が挿通された腕部22が、突起体44の突出方向にバタつかないようになっている。
【0023】
次に、かかる構成の操作ボタン14を意匠パネル12に組み付ける流れについて図7を参照して説明する。図7は、操作ボタン14を意匠パネル12に組み付ける流れを示す図である。
【0024】
意匠パネル12に操作ボタン14を組み付ける際には、まず、ボタン部20の本体24を、意匠パネル12の裏側から挿入孔40に挿入する(図7(a)参照)。このとき、位置決め孔28に位置決めボス42が挿通されるべく、本体24の位置を微調整する。そして、位置決め孔28に位置決めボス42を挿通させた状態で、ベース26が意匠パネル12の裏面と接触するまで本体24を挿入孔40に押し込む(図7(b)参照)。このとき、腕部22に設けられたスリット32が、意匠パネル12に設けられた突起体44の上に載った状態となる。
【0025】
この状態になれば、続いて、腕部22先端を突起体44の根元の方向に押して、スリット32の周縁を弾性変形させて、当該スリット32に突起体44を挿通させる(図7(c)、(d)参照)。突起体44を挿通させた後、力を解除すると、スリット32の周縁は弾性復元し、再び、返し部46より幅狭となる。その結果、特別な力を加えない限り、腕部22の先端と突起体44との係合が解除されることはなく、腕部22が意匠パネル12に取り付けられることになる。つまり、本実施形態によれば、溶着やネジといった道具を用いなくても、簡易に、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けることができる。その一方で、腕部22の先端と突起体44との係合関係により、操作ボタン14の脱落が確実に防止されている。
【0026】
また、既述したとおり、本実施形態において、スリット32は、突起体44の根元部分より幅広となっている。したがって、操作ボタン14を意匠パネル12に組み付けた状態(図7(d)の状態)において、その先端を長尺方向にスライド移動させることが可能となっている。換言すれば、本実施形態において、操作ボタン14組み付けの完了時において、腕部22が、長尺方向(意匠パネルの面方向)に動くことが許容されているといえる。これにより、操作ボタン14の操作感が向上でき、また、操作ボタン14の耐久性を向上させることができる。これについて従来技術と比較して説明する。
【0027】
従来技術の多くは、腕部22の先端を意匠パネル12の一部に位置固定で締結することにより、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けていた。具体的には従来技術では、螺合や溶着などの締結手段を用いて腕部22の先端を意匠パネル12の裏面に締結したり、腕部22の先端に設けられた丸穴に意匠パネル12の裏面から突出するボスを挿通したりすることで、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けていた。こうした技術では、腕部22の先端位置は固定となり、腕部22が意匠パネル12の面方向に動くことはできなかった。
【0028】
この場合、次のような問題があった。通常、組み付けられた操作ボタン14のうちボタン部本体24は、適宜、押下動作を受ける。この押下動作に伴い、ボタン部本体24は、意匠パネル12の面に直交する方向に進退する。このようにボタン部本体24が進退移動するためには、当該ボタン部本体24に連結されたベース26や腕部22も若干量、移動する必要がある。しかし、腕部22の先端が位置固定で意匠パネル12に締結されていた従来技術の場合、腕部22全体としては移動できないため、ボタン部本体24の移動に伴い腕部22が撓むことで、腕部22の基端(ベース26との接続部分)の位置のみが移動するようになっていた。しかし、こうした腕部22の撓みは、腕部22に負荷をかけ、腕部22の耐久性を低下させるという問題があった。また、腕部22の撓みに対する抵抗力が、ボタン部本体24を押下操作する際の抵抗感としてユーザに伝わり、ボタンの操作感低下という問題も招いていた。
【0029】
一方、本実施形態では、既述したとおり、腕部22がその長尺方向に移動可能となっている。そのため、ボタン部本体24を押下操作した際には、当該ボタン部本体24の移動に伴い腕部22全体が移動することができる。そして、腕部22全体が移動することにより、腕部22に生じる撓み量、ひいては、腕部22にかかる負荷を低減することができ、結果として、操作ボタン14の耐久性を向上できる。また、腕部22を大きく撓ませなくても、ボタン部本体24を押下操作できるため、押下操作に伴う抵抗感を低減でき、軽いタッチでもボタン部本体24を深く押せるような感覚をユーザに与えることができ、結果として、ボタンの操作感を向上できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、意匠パネル12に操作ボタン14を組み付けた後でも、容易に、当該操作ボタン14を取り外すことができる。すなわち、本実施形態では、突起体44が挿通されているスリット32の先端には、突起体44の最大幅よりも幅広な通過孔34が連結されている。かかる構成において、腕部22と突起体44との係合関係を解除したい場合には、まず、ボタン本体24を押し込んで位置決め孔28を位置決めボス42から解放した状態で、腕部22の先端をスリット32に沿ってスライド移動させることによって、操作ボタン14全体をスライドさせ、一方の突起体44を一方の腕部22の通過孔34内に位置させる。そして、その状態で、腕部22先端を突起体44から離脱させる方向に持ち上げれば、突起体44から腕部22先端が抜けることになり、突起体44と腕部22先端との係合が解除される。他方の腕部22についても同様の手順で係合を解除する。ここで、この一連の動作において、操作ボタン14および意匠パネル12のいずれにも大きな負荷はかかっていない。そのため、操作ボタン14および意匠パネル12のいずれにも損傷を与えることなく、操作ボタン14を意匠パネル12から取り外すことができる。
【0031】
このように、操作ボタン14を意匠パネル12から容易に取り外せるようにすることにより、部品の無駄な廃棄を低減できる。すなわち、溶着などの固着手段で操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けた場合に、例えば、操作ボタン14にのみ不具合(例えば傷など)が発生し、操作ボタン14を廃棄せざるを得なくなったとする。この場合、操作ボタン14から意匠パネル12を取り外すことはできないため、不具合が生じていない意匠パネル12も、操作ボタン14とともに廃棄しなければならない。また、逆に意匠パネル12にのみ不具合が生じた場合にも、不具合が生じていない操作ボタン14も廃棄せざるを得なくなる。つまり、溶着のように取り外し不可能な締結手段で操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けた場合、操作ボタン14、意匠パネル12のいずれか一方の不具合に伴い、不具合の生じていない他方も廃棄する必要があり、無駄であったといえる。
【0032】
一方、本実施形態では、操作ボタン14および意匠パネル12のいずれにも損傷を与えることなく、操作ボタン14を意匠パネル12から取り外すことができる。そのため、操作ボタン14、意匠パネル12のいずれか一方に不具合が生じた場合には、不具合が生じていない他方のみを残し、当該他方を別の製品に流用できる。その結果、無駄な部品の廃棄を低減でき、製造にかかるコストをより低減できる。
【0033】
次に、第二実施形態について図面を参照して説明する。第二実施形態では、腕部22の一部を、意匠パネル12の裏面から突出形成されたブリッジ体48と意匠パネル12の裏面との隙間に挿し込むことで、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けている。以下、これについて詳説する。
【0034】
図8は、第二実施形態に用いられる操作ボタン14の背面図である。また、図9は、この操作ボタン14の側面図である。第一実施形態と同様に、操作ボタン14は、ボタン部20と、腕部22と、に大別される。そして、ボタン部20には、実際に操作を受ける略ブロック形状の本体24と、本体24の基端に連結された平板状のベース26、および、ベース26の裏面から突出する当接ボス30が設けられている。ベース26の上端略中央には、略円弧状の位置決め切り欠き29が形成されており、当該位置決め切り欠き29内に、意匠パネル12裏面に突出形成された位置決めボス42を位置させることで、挿入孔40に対するボタン部本体24の相対位置が規定される。
【0035】
ベース26の両サイドからは、一対の腕部22が延設されている。腕部22は、ボタン部本体24の長尺方向に長尺な帯状部材である。この腕部22の先端は、幅広に広がっており、肉厚も若干厚くなっている。この腕部22先端の幅は、後述するブリッジ体48の幅より小さく、その厚みはブリッジ体48と意匠パネル12裏面との隙間より僅かに小さくなっている。
【0036】
次に、第二実施形態で用いられる意匠パネル12について図10〜図11を参照して説明する。図10は意匠パネル12の背面図、図11は図10におけるD−D断面図、図12は図10におけるE−E断面図である。
【0037】
この意匠パネル12も、第一実施形態と同様に、その略中央付近に、ボタン部本体24が挿入される挿入孔40が形成されている。また、意匠パネル12の裏面のうち、挿入孔40の上側には、位置決め切り欠き29に差し込まれる位置決めボス42が形成されている。
【0038】
位置決めボス42の左右両側には、ブリッジ体48が形成されている。ブリッジ体48は、腕部の一部と係合する係合部材として機能するものである。このブリッジ体48は、意匠パネル12の裏面から立脚する断面略コ字状の部位で、裏面との間に略矩形の間隙49を形成する。この間隙49の厚みは、腕部22先端の厚みより僅かに大きく、また、間隙49の幅は腕部22先端の幅より僅かに大きくなっている。また、このブリッジ体48は、ボタン部本体24を挿入孔40に挿入した際、腕部22の先端(幅広、肉厚となっている部分)が位置する位置に設けられている。
【0039】
次に、こうした意匠パネル12に操作ボタン14を組み付ける流れについて図13を参照して説明する。図13は、操作ボタン14を意匠パネル12に組み付ける流れを示す図である。
【0040】
意匠パネル12に操作ボタン14を組み付ける場合には、まず、ボタン部本体24を挿入孔40からずらした状態で、操作ボタン14を意匠パネル12の裏面に当てる(図13(a)参照)。そして、その状態で、位置を調整し、一方の腕部22の先端を対応するブリッジ体48と意匠パネル12の裏面との隙間に挿し込む(図13(b)参照)。そのまま、操作ボタン14全体を、腕部22の長尺方向にスライド移動させ、他方の腕部22の先端を対応するブリッジ体48と意匠パネル12の裏面との隙間に挿し込む(図13(c)、(d)参照)。このように二つの腕部22がそれぞれ、対応するブリッジ体48と係合した状態になれば、ボタン部本体24を挿入孔40に挿入する図13(e)参照)。このとき、操作ボタン14に設けられた位置決め切り欠き29内に、意匠パネル12に設けられた位置決めボス42が位置するように、ボタン部本体24の位置を微調整する。そして、最終的に、ベース26表面が意匠パネル12の裏面に当接する位置まで、ボタン部本体24を挿入できれば、組み付け作業が完了となる。
【0041】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、溶着やネジといった道具を用いなくても、簡易に、操作ボタン14を意匠パネル12に取り付けることができる。その一方で、腕部22の先端とブリッジ体48との係合関係により、操作ボタン14の脱落が確実に防止されている。
【0042】
また、本実施形態でも、操作ボタン14組み付けの完了時において、腕部22の長尺方向への動きが許容されている。その結果、操作ボタン14の操作感が向上でき、また、操作ボタン14の耐久性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態でも、一度組み付けた操作ボタン14を、容易に意匠パネル12から取り外すことができる。すなわち、一度組み付けた操作ボタン14を意匠パネル12から取り外したい場合には、図13に示す組み付け作業と逆の流れの作業を行い、二つの腕部22それぞれを撓ませて、その先端を対応するブリッジ体48から抜き取ればよい。これにより、腕部22とブリッジ体48との係合関係が解除されるため、後は、挿入孔40に挿入されたボタン部本体24を挿入孔40から押し出せば、操作ボタン14を取り外すことができる。そして、このように取り外し可能とすることにより、無駄な部品の廃棄を低減でき、製造コストを低減できる。
【0044】
なお、これまで二つの実施形態を例に挙げて説明してきたが、腕部22の一部が意匠パネル12の面方向に移動可能な状態で、意匠パネル12の裏面に設けられた係合部材と係合するのであれば、各部位の形状や位置は適宜、変更されてもよい。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、腕部22を、いずれも、直線状に伸びた帯状部位としているが、腕部22を、途中で屈曲した形状としてもよい。すなわち、図14に示すように、腕部22を、ベース26の下端両サイドから伸び、途中で、上方向に略90度屈曲した略L字形状としてもよい。そして、この略L字形状の腕部22の先端に、意匠パネル12の裏面から突出する突起体44と係合するスリット32、あるいは、意匠パネル12の裏面に設けられたブリッジ体48に挿入される挿入部分を形成するようにしてもよい。このように、腕部22の一部を屈曲させることにより、操作ボタン14全体のサイズを低減できる。また、上述の説明では、光ディスクドライブ10を例に挙げて説明したが、操作ボタン14が取り付けられた意匠パネル12を有する電子機器であれば、当然、他の電子機器に応用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 光ディスクドライブ、12 意匠パネル、14 操作ボタン、16 導光レンズ、20 ボタン部、22 腕部、24 本体、26 ベース、28 位置決め孔、30 当接ボス、32 スリット、34 通過孔、40 挿入孔、42 位置決めボス、44 突起体、46 返し部、48 ブリッジ体、60 押しボタンスイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる意匠パネルと、
前記意匠パネルに取り付けられる操作ボタンであって、少なくとも一部が外部に露出してユーザからの操作を受けるボタン部と、前記ボタン部に接続された腕部と、を有する操作ボタンと、
を備え、
前記意匠パネルは、
前記ボタン部が挿入される挿入孔と、
前記意匠パネルの裏面において、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部と係合することで、前記腕部が意匠パネルから落下することを防止する係合部材と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記腕部は、当該腕部の長尺方向に延びるスリットを有し、
前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、前記スリットに挿通される突起体であって、その先端に、前記スリットの幅より大きい幅の返し部が形成されている突起体である、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記腕部は、さらに、前記スリットに接続され、前記返し部の幅より大きい幅の孔である通過孔を有する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、当該裏面との間に隙間を形成するブリッジ体であり、
前記腕部が、前記隙間にスライド挿入されることで前記腕部が前記ブリッジ体と係合される、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
電子機器の意匠パネルに、ユーザからの操作を受けるボタン部および前記ボタン部に接続された腕部を有する操作ボタンを取り付けるボタン取付方法であって、
樹脂からなる意匠パネルに形成された挿入孔に前記ボタン部を挿入するとともに、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部を前記意匠パネルの裏面に設けられた係合部材に係合させ、前記腕部の意匠パネルからの落下を防止する、
ことを特徴とするボタン取付方法。
【請求項1】
樹脂からなる意匠パネルと、
前記意匠パネルに取り付けられる操作ボタンであって、少なくとも一部が外部に露出してユーザからの操作を受けるボタン部と、前記ボタン部に接続された腕部と、を有する操作ボタンと、
を備え、
前記意匠パネルは、
前記ボタン部が挿入される挿入孔と、
前記意匠パネルの裏面において、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部と係合することで、前記腕部が意匠パネルから落下することを防止する係合部材と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記腕部は、当該腕部の長尺方向に延びるスリットを有し、
前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、前記スリットに挿通される突起体であって、その先端に、前記スリットの幅より大きい幅の返し部が形成されている突起体である、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記腕部は、さらに、前記スリットに接続され、前記返し部の幅より大きい幅の孔である通過孔を有する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記係合部材は、前記意匠パネルの裏面から突出し、当該裏面との間に隙間を形成するブリッジ体であり、
前記腕部が、前記隙間にスライド挿入されることで前記腕部が前記ブリッジ体と係合される、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
電子機器の意匠パネルに、ユーザからの操作を受けるボタン部および前記ボタン部に接続された腕部を有する操作ボタンを取り付けるボタン取付方法であって、
樹脂からなる意匠パネルに形成された挿入孔に前記ボタン部を挿入するとともに、前記腕部が前記意匠パネルの面方向へ動くことを許容した状態で前記腕部の一部を前記意匠パネルの裏面に設けられた係合部材に係合させ、前記腕部の意匠パネルからの落下を防止する、
ことを特徴とするボタン取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−138252(P2012−138252A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289596(P2010−289596)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】
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