説明

電子機器および熱交換機が収納された収納ラック

【課題】他の電子機器の稼働状態による影響を受けることなく、各電子機器の冷却効率を高めることができる電子機器収納ラックを提供する。
【解決手段】複数の電子機器21を高さ方向に配設するラック部22をラック本体11内に設け、ラック部22の側部に、熱交換機51を備えた熱交換室23を設ける。熱交換機51で温調された空気を送出する送出部64とラック部22の電子機器21から排出された空気を吸入する吸入部43とを熱交換室23のケーシング31に設ける。送出部64をエアダクト82を介して各電子機器21に個別に接続して熱交換機51で温調された空気を対応する電子機器21の側面から供給する供給路123を各電子機器21毎に設定し、送出部64から各供給路123を介して各電子機器21へ供給される空気がそれぞれ水平方向に環流するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバコンピュータやネットワーク機器等の電子機器を収納する電子機器収納ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバコンピュータやネットワーク機器等の電子機器を管理する際には、19インチキャビネットや19インチラック等の電子機器収納ラックが用いられている。
【0003】
この電子機器収納ラックには、例えばサーバー等の電子機器が実装されるように構成されており、これらの電子機器の発熱によってラック内温度が上昇すると、収納された電子機器の安定した運転に支障を来してしまう。
【0004】
このため、このような不具合を防止する装置として、電子機器冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この電子機器冷却装置では、筐体の下部に冷却用熱交換機が設けられており、前記筐体内の空気を前面カバーから吸引して前記冷却用熱交換機で冷却した後、冷却された空気を背面カバーから筐体内へ供給できるように構成されている。
【0006】
これにより、筐体内の空気を冷却することで、筐体内の電子機器の温度上昇を抑えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−234791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような電子機器収納ラックにあっては、前記冷却用熱交換機で冷却された空気を前記背面パネルを介して前記筐体内に供給し、前記前面パネルから回収するように構成されているが、そのような構造では電子機器の空気取り入れ口の開口面積の大きな電子機器、冷却用熱交換機の近傍に配置された電子機器に供給された空気が集中する傾向にあり、電子機器を効率的に冷却することができないという問題があった。
【0009】
また、前記電子機器は上下に重ねて配置されており、下段の電子機器から放出された熱は上段の電子機器で吸収され易く、上段の電子機器から放出された熱は下段の電子機器で吸収され難い傾向にある。
【0010】
このため、各電子機器の配置や稼働状態によって各電子機器での冷却状態に差が生じてしまい電子機器の安定的な動作にも影響を与えてしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、他の電子機器の稼働状態による影響を受けることなく、各電子機器の冷却効率を高めることができる電子機器収納ラックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の電子機器収納ラックにあっては、第1および第2の電子機器をラックの高さ方向に配設するラック部をラック本体内に設けた電子機器および熱交換機が収納された収納ラックにおいて、熱交換機を備えた熱交換室を前記ラック部の側部に有し、前記熱交換機で温調された空気を送出する第1および第2の送出部と前記ラック部の前記電子機器から排出された空気を吸入する吸入部とを有し、前記第1の送出部は第1の空気供給路を介して前記第1の電子機器の空気吸入部に接続されると共に、前記第2の送出部を第2の空気供給路を介して前記第2の電子機器の空気吸入部に接続されている。
【0013】
また、請求項2の電子機器収納ラックにおいては、前記温調された空気は前記熱交換機、前記第1の電子機器の内部、前記熱交換機の順で還流し、その空気流は前記第1および第2の電子機器のラックへの配設方向を高さ方向としたとき、その高さ方向に対しほぼ水平方向に循環すると共に、前記温調された空気は前記熱交換機、前記第2の電子機器の内部、前記熱交換機の順で還流する。
【0014】
すなわち、第1および第2電子機器が高さ方向に配設されたラック部の側部には、熱交換機を備えた熱交換室が設けられており、該熱交換室には、前記ラック部の前記電子機器から排出された空気を吸入する吸入部と、吸入された空気を温調して送出する第1および第2送出部とが設けられている。
【0015】
また、前記第1の送出部は第1の空気供給路を介して前記第1の電子機器の空気吸入部に接続されるとともに、前記第2の送出部は第2の空気供給路を介して前記第2の電子機器の空気吸入部に接続されており、前記熱交換機で温調された空気は、対応する第1および第2電子機器の空気吸入部からそれぞれ個別に供給される。
【0016】
これにより、前記熱交換機で温調された空気は、前記各空気供給路を介して対応する電子機器に確実に供給され、前記第1および第2電子機器で熱を吸収した空気は、前記熱交換室の前記吸入部より回収される。
【0017】
このとき、前記第1および第2送出部から前記第1および第2空気供給路を介して前記第1および第2電子機器の内部へ供給される空気は、前記第1および第2の電子機器の配設方向を高さ方向としたとき、その高さ方向に対しほぼ水平方向に循環するように構成されている。
【0018】
このため、下側に配置された電子機器での発熱量が多い場合であっても、この下側の電子機器で加熱された空気が上側に配置された電子機器に取り込まれ、当該電子機器に影響を与えるといった不具合が回避される。
【0019】
また、請求項3の電子機器収納ラックにおいては、前記ラック本体の内側面に断熱部材を設けた。
【0020】
すなわち、前記ラック本体の内側面には、断熱部材が設けられており、ラック本体内外での断熱効果が得られる。
【0021】
さらに、請求項4の電子機器収納ラックでは、前記各供給路での通流量を個別に変更可能に構成した。
【0022】
すなわち、前記各電子機器に対応した前記各供給路において、その通流量を個別に変更することができる。
【0023】
このため、発熱量の多い電子機器にあっては通流量を多く設定し、発熱量の少ない電子機器においては通流量を少なくする等、温調された空気の通流量が電子機器毎に設定される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来よりも電子機器の温調の制御精度を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】同実施の形態にエアダクト等を取り付けた状態を示す図である。
【図3】図8のA−A線に沿った断面を示す説明図である。
【図4】(a)は同実施の形態のブランクを示す斜視図であり、(b)は同実施の形態のエアダクトを示す斜視図である。
【図5】同実施の形態のエアダクトを示す説明図である。
【図6】同実施の形態のラック本体の要部を示す説明図である。
【図7】同実施の形態のラック本体の要部を示す図で、(a)は右用ガイドレールの取付状態を示す説明図であり、(b)は左用ガイドレールを示す説明図である。
【図8】同実施の形態のラック部に電子機器を収納する状態を示す説明図である。
【図9】同実施の形態の環流経路を示す説明図である。
【図10】同実施の形態の天部での通線状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。なお、この実施の形態は、本発明の一例である。
【0027】
図1及び図2は、本実施の形態にかかる電子機器収納ラック1を示す図であり、外周面を構成するカバー類が外された状態が示されている。この電子機器収納ラック1は、サーバコンピュータやネットワーク機器等の電子機器を収納して管理するものであり、工場設備、Network設備等での使用に適した19インチラックが示されている。
【0028】
この電子機器収納ラック1のラック本体11は、骨格を構成するフレーム12を備えており、該フレーム12は、底部を構成する矩形枠状の底枠部13と、該底枠部13の四隅に立設された支柱部14,・・・と、各支柱部14,・・・の上端を連設する矩形枠状の天枠部15とによって構成された縦長の直方体形状に形成されている。このフレーム12の前記底枠部13の下部には、矩形状のベース16が設けられており、該ベース16には、従来のラックと同様にアンカーやキャスター等が設けられている。
【0029】
このラック本体11内は、図3に示したように、複数の電子機器21,・・・を高さ方向に配設するラック部22が右寄りに形成されており、該ラック部22の左側部には、熱交換室23が設けられている。
【0030】
この熱交換室23は、ケーシング31で覆われており、図1及び図2に示したように、前記ラック本体11と同程度の高さを備えるとともに、当該ラック本体11の左側に設置されている。前記ケーシング31は、図3に示したように、奥行き方向に長い直方体形状に形成されており、その前面32は、内側へ向かうに従って後方へ傾斜するように構成されている。
【0031】
このケーシング31の後面41と前記ラック本体11の背面との間には、空間が残存するように構成されており、当該空間によって前記ラック部22側に連通した連通路42が形成されている。該連通路42に面した前記ケーシング31の前記後面41には、複数の後方開口部が設けられており、前記ラック部22の前記電子機器21から排出された空気を前記連通路42を介して当該ケーシング31内に吸い込む為の吸入部43が高さ方向全域に渡って形成されている。
【0032】
この熱交換室23の前記ケーシング31内には、冷水が循環する水冷式ラジエータで構成された熱交換機51が斜めに配設されており、前記吸入部43から吸い込まれた空気を当該熱交換機51を通過させることによって、所定温度まで冷却できるように構成されている。
【0033】
前記ケーシング31の右側面61の前側には、図1に示したように、縦長の角穴62が高さ方向全域に渡って開設されており、該角穴62の奥側には複数のファン63,・・・が縦方向に配列され、前記熱交換機51で温調された空気を送出する為の送出部64が前記角穴62によって構成されている。
【0034】
これにより、図3に示したように、前記各ファン63,・・・で前記ケーシング31内の空気を前記送出部64から前記ラック部22側へ送出することによって、前記ケーシング31内に負圧を生じさせ、この負圧により前記後面41の前記吸入部43から前記ラック部22側の空気を吸い込めるように構成されている。このとき、前記吸入部43から吸い込んだ空気を前記熱交換機51を通過させることで、この空気から熱を奪えるように構成されており、これにより冷却された空気を供給できるように構成されている。
【0035】
前記角穴62の外周部には、矩形筒状の枠体71が当該角穴62を包囲するように設けられており、該枠体71の先端には、図1に示したように、側方に延出したフランジが形成されている。左方に延出した左フランジ部72及び右方に延出した右フランジ部73には、複数の取付穴74,・・・が一定の間隔をおいて縦方向に配列されており、各取付穴74,・・・には、ボルトを螺入できるように構成されている。
【0036】
これにより、前記両フランジ部72,73には、図2に示したように、任意の高さに配置したブランク81,・・・やエアダクト82,・・・を架橋した状態でボルトによって固定できるように構成されている。
【0037】
前記ブランク81は、図4の(a)に示すように、平板状に形成されており、前記両フランジ部72,73間に架橋できる長さ寸法に設定されている。このブランク81の両端部には、前記各フランジ部72,73に設けられた取付穴74,・・・に合致する長穴82a,82aが設けられており、各長穴82a,82aに挿通したボルト83,83を任意の取付穴74,・・・に螺入することで、当該ブランク81で前記角穴62の任意の高さ位置の一部を閉鎖した状態で前記両フランジ部72,73に固定できるよう構成されている。
【0038】
このブランク81の上縁部及び下縁部は、表面側に折曲されており、起立壁91,92が形成されている。上縁に形成された起立壁91には、断熱材93が当該起立壁91に沿って延設されており、近接して配置されたブランク81又は前記エアダクト82間に形成される隙間を閉鎖できるように構成されている。
【0039】
前記エアダクト82としては、図2に示したように、前記ブランク81の高さ寸法を一単位1Uとした際に、その二倍の高さ寸法の2Uに設定されたエアダクト82と、三倍の高さ寸法の3Uに設定されたエアダクト82とが用意されており、対応させる電子機器21の高さ寸法に応じて選択的に使用できるように構成されている。なお、図示されていないが一倍の高さ寸法の1Uに設定されたエアダクト82も用意されている。
【0040】
図4の(b)は、2Uのエアダクト82を示す図で、該エアダクト82は、矩形状のダクト本体101を中心に構成されており、該ダクト本体101の周壁102は、矩形筒状に形成されている。この周壁102を構成する左壁面103及び右壁面104の基端部には、側方に折曲されてなる折曲部105,106が形成されており、一方の折曲部105から他方の折曲部106までの長さ寸法は、前記両フランジ部72,73に架橋できる長さに設定されている。
【0041】
前記各折曲部105,106には、前記各フランジ部72,73に設けられた取付穴74,・・・に合致する長穴111,111がそれぞれの二箇所に設けられており、該長穴111,111に挿通したボルト112,112を前記取付穴74,・・・に螺入することで、当該エアダクト82で前記角穴62の任意の高さ位置の一部を覆った状態で前記両フランジ部72,73に固定できるよう構成されている。
【0042】
前記ダクト本体101の前記周壁102の先端には、矩形板状の天面121が連設されており、該天面121の中央部には、長方形状の連通穴122が開設されている。これにより、前記角穴62から前記枠体71を介して送出された空気を前記ラック部22側へ供給する供給路123が形成されるように構成されている(図3参照)。
【0043】
前記ダクト本体101の前記天面121には、図4の(b)に示すように、矩形枠状に形成されたゴム製のパッキン131が周縁に沿って固定されており、前記天面121には、前記パッキン131と前記連通穴122との間に矩形枠状の取付領域132が残存している。
【0044】
この取付領域132には、図5に示すように、長方形状の風量調整パネル141を選択的にネジ142,・・・止めできるように構成されており、該風量調整パネル141には、当該エアダクト82を通過する通流量を制限する小径の通流穴143,・・・が複数開設されている。
【0045】
これにより、前記ダクト本体101に前記風量調整パネル141を選択的に取り付けることによって、各エアダクト82が構成する前記供給路123(図3参照)での通流量を、各エアダクト82毎に個別に変更できるように構成されている。
【0046】
このダクト本体101の前記周壁102における上縁にも、断熱材151が延設されており、近接して配置された前記ブランク81又は他のエアダクト82間に形成される隙間を閉鎖できるように構成されている。
【0047】
この熱交換室23の側部に設けられた前記ラック部22は、図3に示したように、前後及び左右に間隔をおいて立設された左前ピラー201と左奥ピラー202と右前ピラー203と右奥ピラー204とによって構成されている。各ピラー201〜204は、クランク状に折曲されてなる金属板によって構成されており、前記フレーム12と同高さを有している。
【0048】
前記左前ピラー201及び前記左奥ピラー202は、図1及び図2に示したように、その下端部が前記フレーム12の底枠部13に架橋された左下クロスメンバ211に固定されており、その上端部は、前記フレーム12の天枠部15に架橋された左上クロスメンバ212に固定されている。
【0049】
また、前記右前ピラー203及び前記右奥ピラー204は、その下端部が前記フレーム12の底枠部13に固定されており、その上端部は、前記フレーム12の前記天枠部15に固定されている。
【0050】
前記左前ピラー201及び前記左奥ピラー202間と、前記右前ピラー203及び前記右奥ピラー204間には、図6に示したように、左用ガイドレール221,・・・及び右用ガイドレール222,・・・が架橋した状態で高さ方向に間隔をおいて固定されており、上下の配置間隔は、搭載する電子機器21の高さ寸法に合わせて調整できるように構成されている。
【0051】
前記各ガイドレール221,222は、断面L字状のアングル材によって構成されており、固定面231が前記各ピラー201〜204の所定箇所にネジ止めされた状態で、支持面232が内側へ延出するように構成されている。
【0052】
前記右前ピラー203及び前記右奥ピラー204間に架橋された前記右用ガイドレール222における前記支持面232の後端部には、図7の(a)に示すように、当該支持面232に起立した後部ユニットガイド241が固定されており、該後部ユニットガイド241は、手前側から奥側へ向かうに従って左方へ傾斜するように設けられている。
【0053】
前記左前ピラー201及び前記左奥ピラー202間に架橋される前記左用ガイドレール221における前記支持面232の前端部には、図6及び図7の(b)に示したように、当該支持面232に起立した前部ユニットガイド251が固定されており、該前部ユニットガイド251の前端部は、手前側から奥側へ向かうに従って右方へ傾斜するガイド面252を構成している。
【0054】
これにより、図8に示すように、前記ラック本体11の前部より電子機器21を背面部側から挿入して前記ラック部22の設けられた所定高のガイドレール221,232に支持する際には、初期段階において、電子機器21の後端部が前記前部ユニットガイド251の前記ガイド面252に案内されることによって右寄りにガイドされる。そして、当該電子機器21の後端部が前記後部ユニットガイド241に達した際には、当該後部ユニットガイド241によって左方にガイドされるように構成されており、当該電子機器21のケーシング261の左側面262に開設された図外の空気吸入部である吸気口の外周部に前記エアダクト82のパッキン131を密着できるように構成されている。
【0055】
これにより、前記角穴62で構成された前記送出部64は、当該角穴62の外周部に固定された前記エアダクト82を介して、前記ラック部22に支持された特定の電子機器21に接続されるように構成されており、前記熱交換機51で温調された空気を複数設けられた前記各エアダクト82,・・・によって対応する電子機器21へその側面から供給できるように構成されている。
【0056】
このとき、前記角穴62からの温調された空気は、横方向に延出する前記エアダクト82,・・・を介して上下に配置された前記各電子機器21,・・・へ供給されるように構成されており、前記各エアダクト82,・・・から供給される空気は、図9に示すように、当該ラック本体11内を、それぞれほぼ水平方向に環流するように構成されている。
【0057】
その具体的な構造としては、電子機器21,・・・の奥行き方向の寸法を統一することで電子機器21,・・・から排出された空気が他の電子機器21,・・・のボディ等でスムーズな還流を阻害されることを防ぐことができる。
【0058】
これにより、図3に示したように、熱交換機51−>エアダクト82−>電子機器21内部−>電子機器21背面(排気)−>吸入部43−>熱交換機51の順に、各電子機器21,・・・の高さ位置毎にほぼ水平方向に延在する環流経路95,・・・が形成されるように構成されている。
【0059】
前記左前ピラー201及び前記左奥ピラー202間に架橋される前記左用ガイドレール221における前記固定面231には、図7の(b)に示すように、矩形状の切り欠き281が前端部寄りの部位に形成されており、当該切り欠き281は、前記角穴62外周の前記枠体71より突出した前記エアダクト82を挿通できる大きさに形成されている。
【0060】
そして、前記ラック本体11の天部には、図10に示すように、矩形状のトップカバー301が設けられており、該トップカバー301によって天部が覆われている。該トップカバー301の後寄りには、ケーブルや配管を引き込む為の導入口302が開設されており、この導入口302は、通線プレート303によって閉鎖されている。該通線プレート303には、ケーブルサイズに合わせて設けられた挿通穴304,・・・が複数開設されており、各挿通穴304,・・・には、内部と外部とを接続するケーブル等305,・・・が挿通されている。
【0061】
このケーブル等305,・・・には、断熱性を有するゴム等で構成された円錐台形状の通線ブッシュ311がケーブル等305に沿って移動可能に外嵌されており、このケーブル等305をラック本体11内に引き込む際に、前記ケーブル等305に外嵌した前記通線ブッシュ311を先細りした先端部側から前記挿通穴304に引き込むことによって前記ケーブル等305周囲の小さな隙間をも閉鎖して断熱効果を発揮できるように構成されている。
【0062】
そして、前記ラック本体11の前記トップカバー301と、前記通線プレート302と、前記ラック本体11の側面を形成する前記サイドカバー321,321と、前記ラック本体11の背面形成する背面カバー322と、前面を開閉する前記スチールドア323,323と、前記熱交換室23のケーシング31とは、断熱構造を備えており、その断熱構造としては、図3に示したように、前記ラック本体11を構成する前記各部材301,302,321,321,322,323,323の内側面及び前記熱交換室23のケーシング31の内側面に発泡ウレタンで構成された断熱部材331,・・・を設けたり、断熱塗料を塗布する等の構造が挙げられる。
【0063】
以上の構成にかかる本実施の形態において、複数の電子機器21,・・・が高さ方向に配設される前記ラック部22の側部には、熱交換機51を備えた熱交換室23が設けられており、該熱交換室23には、前記ラック部22の前記電子機器21,・・・から排出された空気を吸入する吸入部43と、吸入された空気を温調して送出する送出部64とが設けられている。
【0064】
また、この送出部64を前記各電子機器21,・・・に個別に接続する供給路123がエアダクト82,・・・等により構成されており、前記熱交換機51で温調された空気を、対応する電子機器21,・・・の側面から直接個別に供給することができる。
【0065】
これにより、前記熱交換機51で温調された空気を、前記供給路123によって対応する電子機器21,・・・に確実に供給した後、各電子機器21,・・・からの熱を吸収した空気を、前記熱交換室23の前記吸入部43より回収することができる。
【0066】
このため、背面パネルから供給された空気が、電子機器間の隙間を通って前面パネルから直接回収されてしまう恐れのあった従来と比較して、収納された各電子機器21,・・・を個別に効率的に冷却することができる。
【0067】
また、温調された空気の取り込みが、空気取り入れ口の開口面積の大きな電子機器や、冷却用熱交換機の近傍に配置された電子機器によって集中的に行われてしまうといった不具合を解消することができ、他の電子機器21の影響を受けることなく、各電子機器21,・・・を効率的に冷却することができる。
【0068】
このとき、前記送出部64から前記各供給路123,・・・を介して前記各電子機器21,・・・へ供給される空気は、それぞれほぼ水平方向に環流するように構成されており、上下の電子機器21,21を通過する空気の環流経路95,95の不用意な交差を抑制することができる。
【0069】
すなわち、下側に配置された電子機器21を第1の電子機器、上側に配置された電子機器を第2の電子機器、熱交換室23からの温調された空気を下側の電子機器21に送出するエアダクト82を第1の送出部、前記温調された空気を上側の電子機器21に送出するエアダクト82を第2の送出部とするとともに、前記第1の送出部が第1の空気供給路を介して前記第1の電子機器の空気吸入部に接続され、前記第2の送出部が第2の空気供給路を介して前記第2の電子機器の空気吸入部に接続されるとして具体的に説明すると、前記第1の送出部から前記第1の空気供給路を介して前記第1の電子機器へ供給された後に回収される空気と、前記第2の送出部から前記第2の空気供給路を介して前記第2の電子機器へ供給された後に回収される空気とは、それぞれほぼ水平方向に環流するように構成されており、前記第1の電子機器を通過する空気の環流経路と、前記第2の電子機器を通過する空気の環流経路との不用意な交差が抑制される。
【0070】
このため、下側に配置された第1の電子機器21での発熱量が多い場合であっても、当該第1の電子機器21で加熱された空気が上側に配置された前記第2の電子機器21で取り込まれ、当該第2の電子機器21での冷却効率を下げるといった不具合を回避することができる。
【0071】
したがって、他の電子機器21の稼働状態や発熱状態による影響を受けることなく、各電子機器21,・・・の冷却効率を高めることができる。
【0072】
なお、ここでは、独立的な空気の環流を明確にする為に、下側に配置された電子機器21を第1の電子機器、上側に配置された電子機器を第2の電子機器とした場合を具体例として説明したが、電子機器21はさらに複数あっても良く、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
また、前記ラック本体11の前記トップカバー301の内側面と、前記通線プレート302の内側面と、前記ラック本体11の側面を形成する前記サイドカバー321,321の内側面と、前記ラック本体11の背面形成する背面カバー322内側面と、前面を開閉する前記スチールドア323,323内側面と、前記熱交換室23のケーシング31の内側面とには、発泡ウレタンで構成された断熱部材が設けられており、ラック本体11内外での断熱効果を高めることができる。
【0074】
これにより、当該ラック本体外からの熱の侵入を防止することができ、発熱量が大きい他のラックが近接して配置されたり、外周部の温度が高い場合であっても、収納された電子機器21,・・・を一定温度に保つことができる。
【0075】
そして、前記各エアダクト82には、風量調整パネル141を選択的に取り付けられるように構成されており、各エアダクト82が構成する前記供給路123,・・・での通流量を各エアダクト82毎に個別に変更できるように構成されている。
【0076】
このため、発熱量の多い電子機器21にあっては、例えば前記風量調整パネル141を取り外すことによって通流量を多く設定する一方、発熱量の少ない電子機器21においては、前記風量調整パネル141を取り付けることによって通流量を少なくすることができ、温調された空気の通流量を電子機器21,・・・毎に個別設定することができる。
【0077】
これにより、電子機器21,・・・毎に適した発熱対策が可能となる。
【符号の説明】
【0078】
1 電子機器収納ラック
11 ラック本体
21 電子機器
22 ラック部
23 熱交換室
43 吸入部
51 熱交換機
64 送出部
82 エアダクト
95 環流経路
123 供給路
141 風量調整パネル
262 左側面
331 断熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の電子機器をラックの高さ方向に配設するラック部をラック本体内に設けた電子機器および熱交換機が収納された収納ラックにおいて、
熱交換機を備えた熱交換室を前記ラック部の側部に有し、前記熱交換機で温調された空気を送出する第1および第2の送出部と前記ラック部の前記電子機器から排出された空気を吸入する吸入部とを有し、
前記第1の送出部は第1の空気供給路を介して前記第1の電子機器の空気吸入部に接続されると共に、前記第2の送出部を第2の空気供給路を介して前記第2の電子機器の空気吸入部に接続されていることを特徴とする電子機器および熱交換機が収納された収納ラック。
【請求項2】
前記温調された空気は前記熱交換機、前記第1の電子機器の内部、前記熱交換機の順で還流し、その空気流は前記第1および第2の電子機器のラックへの配設方向を高さ方向としたとき、その高さ方向に対しほぼ水平方向に循環すると共に、前記温調された空気は前記熱交換機、前記第2の電子機器の内部、前記熱交換機の順で還流することを特徴とする請求項1記載の電子機器および熱交換機が収納された収納ラック。
【請求項3】
前記ラック本体の内側面に断熱部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子機器収納ラック。
【請求項4】
前記各供給路での通流量を個別に変更可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の電子機器収納ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−59948(P2011−59948A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208355(P2009−208355)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(394025094)三菱電機特機システム株式会社 (24)
【Fターム(参考)】