説明

電子機器および画像形成装置

【課題】 画像形成装置などの電子機器において、電源電圧変動、温度変動などの要因で演算回路内の遅延回路による遅延量が動的に変動しても、後段の回路がその影響を受けないようにする。
【解決手段】 この電子機器は、遅延回路を含む演算回路8と、この遅延回路による信号遅延開始時における所定の遅延回路の第1信号進行速度、および演算回路8内の遅延回路による信号遅延開始後のあるタイミングにおける所定の遅延回路の第2信号進行速度を計測する遅延速度測定回路9と、遅延速度測定回路9により計測された第1信号進行速度および第2信号進行速度に基づいて、演算回路8による演算結果を補正する補正回路10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の遅延素子を直列に接続した遅延回路が電子機器で使用されている。例えば、特許文献1には、そのような遅延回路を使用した画像信号同期回路が記載されている。図8は、特許文献1における画像信号同期回路を示すブロック図である。この回路は、例えばレーザビームプリンタに使用されるものである。
【0003】
一般に、レーザビームプリンタでは、ポリゴンミラーの回転により半導体レーザ発振器より出射されるレーザビームを主走査方向にスキャニングさせる。したがって、感光体上に光書込用のレーザビームを変調する信号を、ポリゴンミラー等のビーム偏向器の回転に同期させる必要がある。このレーザビームの変調信号とポリゴンミラー回転との同期方式としては、画像スキャン領域から僅かに外れた位置に取り付けたビーム検出器にレーザビームが入射した時点で、レーザビーム検出器により出力されるBD(ビームデテクト)信号に、レーザビームの変調信号であるVDATA(ビデオデータ)信号を同期させる方式が一般的である。このBD信号はポリゴンミラーの回転に同期して出力するために、ポリゴンミラーの回転位置検出信号、言い換えれば1スキャンライン毎の水平同期信号とみなすことができる。
【0004】
このような同期方式においては、レーザビームの変調信号であるVDATA信号の基本クロック信号VCLKに対しその数倍の周波数成分を持つクロック信号PCLKとBD信号とを同期させることで、正確な同期を行っている。
【0005】
図8において、回転位置検出器107は、レーザビームの入射を検出し、回転位置検出信号(水平同期信号)BDを出力する。基準クロック信号発生回路101は、レーザビームの変調信号であるVDATA(ビデオデータ)信号の基本クロック信号VCLKに対しその数倍の周波数成分を持つ基準クロック信号PCLKを発生する。同期分周回路102は、基準クロック信号PCLKと回転位置検出信号BDとの同期をとり基本クロック信号VCLKを発生する。レーザ変調回路103は、基本クロック信号VCLKに基づいて不図示の感光体上に光書込用のレーザビームを変調するための変調信号VDATAを発生する。位相差検出回路108は、回転位置検出信号BDと基本クロック信号VCLKの位相差を検出し、位相差信号PHDを発生する。変調信号遅延回路104は、変調信号VDATAを遅延させることにより複数(n個)の遅延変調信号VDATA1〜VDATAnを発生する。遅延変調信号選択回路105は、位相差信号PHDの値に応じて、複数の遅延変調信号(変調信号VDATA,VDATA1〜VDATAn)から、1つの変調信号を選択する。レーザ発光回路106は、遅延変調信号選択回路105により選択された変調信号VDATAOUTに基づいてレーザビームを発光させる。
【0006】
この回路においては、変調信号遅延回路104および位相差検出回路108において、上述のような遅延回路が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3485791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような遅延回路に使用される遅延素子による遅延量は個体差を除けば一定であるものとして設計されている。しかしながら、最近、電源としてスイッチング電源が使用されるため、このような回路に印加される電圧に大きなノイズが乗ることが多く、このノイズに起因して、遅延素子による遅延量が動的に変動してしまうことがある。このような問題を回避するために、遅延回路用のアナログ電源を設けたり、ノイズ対策として遅延回路への電源配線を別に設けることなどが行われている。しかしながら、このような対策を行うと、このような遅延回路を使用している電子機器のコストが増加してしまう。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、遅延回路による遅延量が動的に変動しても、後段の回路がその影響を受けないようにすることができる電子機器および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0011】
本発明に係る電子機器は、遅延回路を含む演算回路と、演算回路内の遅延回路による信号遅延開始時における所定の遅延回路の第1信号進行速度、および演算回路内の遅延回路による信号遅延開始後のあるタイミングにおける所定の遅延回路の第2信号進行速度を計測する遅延速度測定回路と、遅延速度測定回路により計測された第1信号進行速度および第2信号進行速度に基づいて、演算回路による演算結果を補正する補正回路とを備える。
【0012】
これにより、電源電圧変動、温度変動などの要因で演算回路内の遅延回路による遅延量が動的に変動しても、後段の回路がその影響を受けないようにすることができる。
【0013】
また、本発明に係る電子機器は、上記の電子機器に加え、次のようにしてもよい。この場合、遅延速度測定回路は、所定の遅延回路としての、クロック信号を印加される直列接続された複数の遅延素子と、複数の遅延素子の出力値に基づいて、所定の時間でクロック信号が進行した遅延素子の個数を特定する遅延量特定回路とを有する。そして、補正回路は、遅延量特定回路により特定された個数に基づいて、演算回路による演算結果を補正する。
【0014】
これにより、遅延速度測定回路内の遅延素子の遅延量が、演算回路内の遅延回路と同様の要因で変動し、遅延速度測定回路内の遅延素子の遅延量の変動に応じて補正回路が演算回路による演算結果を補正する。このため、電源電圧変動、温度変動などの要因で演算回路内の遅延回路による遅延量の動的な変動の影響を効果的に低減することができる。
【0015】
また、本発明に係る電子機器は、上記の電子機器のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、遅延量特定回路は、複数の遅延素子の出力値に基づいて、第1タイミングで信号のエッジにある遅延素子を特定し、所定の時間後の第2タイミングで信号のエッジにある遅延素子を特定し、第1タイミングで特定された遅延素子の位置と第2タイミングで特定された遅延素子の位置とから、所定の時間で信号が進行した遅延素子の個数を特定する。
【0016】
また、本発明に係る電子機器は、上記の電子機器のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、遅延速度測定回路は、演算回路と同一の電源に接続されている。
【0017】
これにより、電源が要因で遅延量が動的に変動する場合には、動的な変動の影響を効果的に低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る電子機器は、上記の電子機器のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、遅延速度測定回路は、演算回路と同一のICチップに内蔵されている。
【0019】
これにより、温度などの物理的な要因で遅延量が動的に変動する場合には、動的な変動の影響を効果的に低減することができる。
【0020】
本発明に係る画像形成装置は、水平同期信号を順次遅延させて複数の遅延同期信号を発生する遅延回路を有し、遅延同期信号を使用して水平同期信号と基本クロック信号との位相差を検出し位相差信号を発生する位相差検出回路と、基本クロック信号に基づいて変調された画像信号を順次遅延させて複数の遅延画像信号を発生する変調信号遅延回路と、位相差信号に対応させて画像信号及び複数の遅延画像信号より一の画像信号を選択する遅延変調信号選択回路と、水平同期信号のエッジ検出時における所定の遅延回路の第1信号進行速度、および水平同期信号のエッジ検出後のあるタイミングにおける所定の遅延回路の第2信号進行速度を計測する遅延速度測定回路と、遅延速度測定回路により計測された第1信号進行速度および第2信号進行速度に基づいて、位相差検出回路による演算結果を補正する補正回路とを備える。
【0021】
これにより、電源電圧変動、温度変動などの要因で位相差検出回路内の遅延回路による遅延量が動的に変動しても、後段の回路(遅延変調信号選択回路)がその影響を受けないようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電子機器において、電源電圧変動、温度変動などの要因で演算回路内の遅延回路による遅延量が動的に変動しても、後段の回路がその影響を受けないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る画像形成装置における画像信号同期回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1における遅延速度測定回路の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す遅延速度測定回路の動作を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、遅延時間TD経過時にホールド回路によりホールドされている遅延素子の出力値の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2における遅延速度測定回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、図5に示す遅延速度測定回路の動作を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、計時開始時(t=0)および遅延時間TD経過時(t=TD)にホールド回路によりホールドされている遅延素子の出力値の一例を示す図である。
【図8】図8は、従来の画像信号同期回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像形成装置における画像信号同期回路の構成を示すブロック図である。なお、画像形成装置は、電子機器の一例である。この画像形成装置は、水平同期信号に基づいて繰り返しスキャンしながら画像形成を行なう変調ビームを生成する画像信号を水平同期信号に同期させながらエンジン側に出力する。
【0026】
図1において、回転位置検出器7は、レーザビームの入射を検出し、回転位置検出信号(水平同期信号)BD(以下BD信号という)を出力する。
【0027】
基準クロック信号発生回路1は、レーザビームの変調信号であるVDATA(画像データ)信号の基本クロック信号VCLKに対しその数倍の周波数成分を持つ基準クロック信号PCLKを発生する。同期分周回路2は、基準クロック信号PCLKとBD信号との同期をとり基本クロック信号VCLKを発生する。
【0028】
レーザ変調回路3は、基本クロック信号VCLKに基づいて図示せぬ感光体上に光書込用のレーザビームを変調するための変調信号VDATAを発生する。変調信号遅延回路4は、変調信号VDATAを遅延させることにより複数(n個)の遅延変調信号VDATA1〜VDATAnを発生する。
【0029】
位相差検出回路8は、BD信号と基本クロック信号VCLKの位相差を検出し、位相差信号PHD(PHD=PHD1〜PHDn)を発生する。
【0030】
遅延変調信号選択回路5は、位相差補正回路10により補正された位相差信号PHDの値に応じて、複数の遅延変調信号(変調信号VDATA,VDATA1〜VDATAn)から、1つの変調信号を選択する。
【0031】
レーザ発光回路6は、遅延変調信号選択回路5により選択された変調信号VDATAOUTに基づいてレーザビームを発光させる。
【0032】
遅延速度測定回路9は、位相差検出回路8における遅延回路によるBD信号の信号遅延開始時(つまり、BD信号の立ち上がりエッジ検出時)における、当該遅延速度測定回路9内の所定の遅延回路の第1信号進行速度、およびその後のあるタイミングにおける当該遅延速度測定回路9内の所定の遅延回路の第2信号進行速度を計測する。なお、BD信号の立ち上がりエッジのタイミングが処理に必要な回路には、BD信号が供給されており、そのBD信号から立ち上がりエッジが検出される。
【0033】
また、この実施の形態1では、遅延速度測定回路9は、変調信号遅延回路4および位相差検出回路8と同一の電源に接続されている。また、この実施の形態1では、遅延速度測定回路9は、変調信号遅延回路4および位相差検出回路8と同一と同一のICチップに内蔵されている。
【0034】
図2は、実施の形態1における遅延速度測定回路9の構成を示すブロック図である。図2において、クロック信号生成回路21は、矩形波のクロック信号を生成する回路である。分周器22は、クロック信号生成回路21により生成されたクロック信号を分周して出力する。例えば、クロック信号生成回路21は、クロック信号PCLKと同一の周波数のクロック信号を生成し、分周器22は、基本クロック信号VCLKと同一の周波数のクロック信号を出力する。
【0035】
遅延回路23は、直列に接続された複数M個の遅延素子23−1〜23−Mを有し、遅延素子23−iは、クロック信号生成回路21により生成されたクロック信号に同期して、前段の遅延素子23−(i−1)または分周器22の出力をクロック信号の1周期分遅延させて出力する。実施の形態1において、遅延素子23−p〜23−Mの数(M−p)は、遅延素子23−p〜23−Mによる総遅延量が、分周器22から出力されるクロック信号の1周期となるように決定される。
【0036】
ホールド回路24は、クロック信号生成回路21により生成されたクロック信号に同期して、第P段の遅延素子23−Pから最終段の遅延素子23−Mまでの一部の遅延素子の出力を、クロック信号生成回路21によるクロック信号の1周期ごとにホールドする。ホールド回路24は、フリップフロップなどで構成される。
【0037】
エンコーダ25は、複数の遅延素子23−1〜23−Mの出力値に基づいて、所定の時間でクロック信号が進行した遅延素子の個数を特定する。
【0038】
図1に戻り、位相差補正回路10は、遅延速度測定回路9により計測された第1信号進行速度および第2信号進行速度に基づいて、位相差検出回路8による位相差信号PHDを補正する。このとき、位相差補正回路10は、エンコーダ25により特定された遅延素子の個数に基づいて、位相差検出回路8による位相差信号PHDを補正する。
【0039】
実施の形態1では、位相差補正回路10は、BD信号における立ち上がりエッジが検出された時点のエンコーダ25により特定された遅延素子の個数(第1信号進行速度に相当)と、その後BD信号における次の立ち上がりエッジが検出されるまでの期間の任意の時点のエンコーダ25により特定された遅延素子の個数(第2信号進行速度に相当)とに基づいて、その任意の時点の位相差信号PHDを補正する。
【0040】
第1信号進行速度に相当する遅延素子の個数をN1、第2信号進行速度に相当する遅延素子の個数をN2、位相差検出回路8による位相差信号の示す位相差をP、補正後の位相差をPcとすると、例えば、式Pc=P×N2/N1に従って、位相差が線形に補正される。なお、位相差補正回路10は、第2信号進行速度に相当する遅延素子の個数を複数回(例えば3回)測定し、それらに基づいて計算された補正後の位相差Pcの平均を計算し、その平均値を出力するようにしてもよい。また、補正量(補正前の位相差Pと補正後の位相差Pcとの差の絶対値)が所定の閾値より大きい場合には、補正せずに、位相差補正回路10は、位相差検出回路8からの位相差Pをそのまま出力するようにしてもよい。
【0041】
次に、上記装置の動作について説明する。
【0042】
まず、遅延速度測定回路9の動作について説明する。図3は、図2に示す遅延速度測定回路9の動作を説明するフローチャートである。
【0043】
まず、クロック信号生成回路21がクロック信号の出力を開始するとともに図示せぬタイマが計時を開始する(ステップS1)。遅延回路23では、各遅延素子23−iが1クロック分ずつ信号を遅延させつつ進行させていく。また、ホールド回路24は、遅延素子23−P〜23−Mの出力をクロック信号に同期させて定期的にホールドしていく。
【0044】
そして、タイマによる計時開始から所定の遅延時間TDが経過すると(ステップS2)、エンコーダ25は、その時点でホールド回路24によりホールドされている遅延素子23−P〜23−Mの出力値から、信号の立ち上がりエッジにある遅延素子23−kを特定する(ステップS3)。図4は、遅延時間TD経過時にホールド回路24によりホールドされている遅延素子23−P〜23−Mの出力値の一例を示す図である。例えば、図4に示すように、遅延素子23−kの出力値がローレベル(=ゼロ)であり、その次段の遅延素子23−(k+1)の出力値がハイレベル(=1)である場合には、立ち上がりエッジが遅延素子23−kにあると特定される。
【0045】
エンコーダ25は、立ち上がりエッジにある遅延素子23−kを特定すると、その遅延素子23−kの位置から、遅延素子の個数(ここでは、kに等しい)を特定し出力する(ステップS4)。
【0046】
次に、遅延速度測定回路9により測定される信号進行速度に基づいて位相差を補正する処理について説明する。
【0047】
上述のように、変調信号遅延回路4は、レーザ変調回路3からの変調信号VDATAをn個の遅延素子で順番に遅延させることにより複数(n個)の遅延変調信号VDATA1〜VDATAnを発生し、遅延変調信号選択回路5へ供給する。遅延変調信号VDATAiは、元の変調信号VDATAから、i×T/nだけ遅延している。なお、Tは、基本クロック信号VCLKの周期である。
【0048】
一方、位相差検出回路8は、BD信号と基本クロック信号VCLKの位相差を検出し、位相差信号PHD(PHD=PHD1〜PHDn)を発生し、位相差補正回路10へ出力する。BD信号と変調信号VDATAの位相差の最大値は、基本クロック信号VCLKの約1周期分となる。このため、位相差検出回路8では、直列接続されたn個の遅延素子で、BD信号、及びBD信号をT/nずつ遅延させた1または複数のBD遅延信号が生成され、BD信号およびn個のBD遅延信号の立ち上がりエッジのタイミングでの基本クロック信号VCLKの値から、検出分解能をT/nとして、位相差が検出される。
【0049】
例えば、BD信号の立ち上がりエッジの時点での基本クロック信号VCLKの値と、第1のBD遅延信号(遅延量:T/n)の立ち上がりエッジの時点での基本クロック信号VCLKの値とが異なる場合には、位相差がT/n未満であるため、位相差信号PHDの値をPHD1(遅延量:T/nに相当する値)にセットする。同様に、第(i−1)(i=2,・・・,n)のBD遅延信号(遅延量:(i−1)/n×T)の立ち上がりエッジの時点での基本クロック信号VCLKの値と第iのBD遅延信号(遅延量:i/n×T)の立ち上がりエッジの時点での基本クロック信号VCLKの値とが異なる場合には、位相差が(i−1)/n×T以上i/n×T未満であるため、位相差信号PHDの値をPHDi(遅延量:i/n×Tに相当する値)にセットする。
【0050】
他方、遅延速度測定回路9は、BD信号の立ち上がりエッジが検出されるたびに、次のBD信号の立ち上がりエッジまで、上述の測定処理を繰り返し行い、測定結果としての各時点の遅延速度(つまり、遅延素子23−iの個数)を示す信号を位相差補正回路10に出力する。
【0051】
そして、位相差補正回路10は、BD信号の立ち上がりエッジが検出されたときの遅延速度を次のBD信号の立ち上がりエッジまで図示せぬ記憶素子に記憶しておき、その記憶している遅延速度と、遅延速度測定回路9から得られる各時点での遅延速度とに基づいて、位相差検出回路8からの位相差信号PHDを補正する。補正後の位相差信号PHDは、 遅延変調信号選択回路5へ出力される。
【0052】
例えば、BD信号の立ち上がりエッジが検出されたときの遅延速度としての遅延素子23−iの個数をK0とし、ある時点での遅延速度としての遅延素子23−iの個数をKとし、位相差検出回路8の遅延素子の数がnであり、位相差信号PHDの値がPHDiである場合、位相差補正回路10は、位相差信号PHDの値をPHDiからPHDjへ変更し、変更後の位相差信号PHDを遅延変調信号選択回路5へ出力する。ただし、j=int(i×K/K0)であり、int()は、小数点以下を切り捨てる関数である。
【0053】
遅延変調信号選択回路5は、位相差補正回路10からの位相差信号PHDの値に応じて、複数の遅延変調信号(変調信号VDATA,VDATA1〜VDATAn)から、1つの変調信号を選択する。位相差信号PHDの値がPHDiである場合、VDATAiが選択される。レーザ発光回路6は、遅延変調信号選択回路5により選択されたその変調信号VDATAOUTに基づいてレーザビームを発光させる。
【0054】
遅延速度測定回路9は、BD信号の立ち上がりエッジ検出時から次のBD信号の立ち上がりエッジ検出までの期間において、上述のようにして遅延速度を繰り返し測定し、位相差補正回路10は、計測されたそれらの遅延速度に基づいて位相差信号の補正を繰り返し実行し、補正後の位相差信号を遅延変調信号選択回路5へ繰り返し出力する。遅延変調信号選択回路5は、BD信号の立ち上がりエッジ検出時から次のBD信号の立ち上がりエッジ検出までの期間において、繰り返し位相差信号が供給されるごとに、変調信号を選択し直す。
【0055】
以上のように、上記実施の形態1によれば、位相差検出回路8は、水平同期信号(BD信号)を順次遅延させて複数の遅延同期信号を発生する遅延回路を有し、遅延同期信号を使用して水平同期信号と基本クロック信号との位相差を検出し位相差信号PHDを発生する。変調信号遅延回路4は、基本クロック信号VCLKに基づいて変調された画像信号VDATAを順次遅延させて複数の遅延画像信号VDATA1〜VDATAnを発生する。遅延変調信号選択回路5は、位相差信号PHDの値に従って、画像信号VDATA及び複数の遅延画像信号VDATA1〜VDATAnより一の画像信号を選択する。遅延速度測定回路9は、水平同期信号の立ち上がりエッジ検出時における所定の遅延回路23の第1信号進行速度、および水平同期信号の立ち上がりエッジ検出後のあるタイミングにおける所定の遅延回路23の第2信号進行速度を計測する。位相差補正回路10は、遅延速度測定回路9により計測された第1信号進行速度および第2信号進行速度に基づいて、位相差検出回路による位相差信号PHDを補正する。
【0056】
これにより、電源電圧変動、温度変動などの要因で位相差検出回路8内の遅延回路による遅延量が基本クロック信号VCLKの周期より短い時間で動的に変動し位相差検出回路8による位相差信号に誤差が発生しても、位相差補正回路10により補正が行われるため、遅延変調信号選択回路5は、その時点において正確な位相差を知ることができ、その正確な位相差に対応した画像信号を選択することができる。
【0057】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1における遅延速度測定回路9とは異なる遅延速度測定回路9aが使用される。なお、実施の形態2に係る画像形成装置におけるその他の構成は実施の形態1のものと同様である。
【0058】
図5は、実施の形態2における遅延速度測定回路9aの構成を示すブロック図である。図5において、クロック信号生成回路21、分周器22および遅延回路23は、図2に示すものと同様のものである。また、ホールド回路41は、クロック信号生成回路21により生成されたクロック信号に同期して、第1段の遅延素子23−1から最終段の遅延素子23−Mの出力を、クロック信号生成回路21によるクロック信号の1周期ごとにホールドする。ホールド回路41は、フリップフロップなどで構成される。実施の形態2において、遅延素子23−1〜23−Mの総数Mは、遅延素子23−1〜23−Mによる総遅延量が、分周器22から出力されるクロック信号の1周期となるように決定される。
【0059】
また、エンコーダ42は、複数の遅延素子23−1〜23−Mの出力値に基づいて、所定の時間でクロック信号が進行した遅延素子の個数を特定する。実施の形態2では、エンコーダ42は、複数の遅延素子23−1〜23−Mの出力値に基づいて、第1タイミングでの信号の立ち上がりエッジにある遅延素子23−p1を特定し、所定の遅延時間TD後の第2タイミングでの信号の立ち上がりエッジにある遅延素子23−p2を特定し、第1タイミングで特定された遅延素子23−p1の位置(=p1)と第2タイミングで特定された遅延素子23−p2の位置(=p2)とから、所定の時間で信号が進行した遅延素子の個数(=p2−p1)を特定する。図7は、計時開始時(t=0)および遅延時間TD経過時(t=TD)にホールド回路41によりホールドされている遅延素子の出力値の一例を示す図である。
【0060】
次に、上記回路の動作について説明する。図6は、図5に示す遅延速度測定回路9aの動作を説明するフローチャートである。
【0061】
まず、図示せぬタイマが計時を開始するときに(ステップS21)、エンコーダ42は、その時点でホールド回路41によりホールドされている遅延素子23−1〜23−Mの出力値から、信号の立ち上がりエッジにある遅延素子23−p1を特定する(ステップS22)。そして、遅延回路23では、各遅延素子23−iが1クロック分ずつ信号を遅延させつつ進行させていく。また、ホールド回路41は、遅延素子23−1〜23−Mの出力をクロック信号に同期させて定期的にホールドしていく。
【0062】
そして、タイマによる計時開始から所定の遅延時間TDが経過すると(ステップS23)、エンコーダ42は、その時点でホールド回路41によりホールドされている遅延素子23−1〜23−Mの出力値から、信号の立ち上がりエッジにある遅延素子23−p2を特定する(ステップS24)。
【0063】
エンコーダ25は、ステップS2で特定した遅延素子23−p1の位置とステップS4で特定した遅延素子23−p2の位置とから、遅延時間TDで立ち上がりエッジが進行した遅延素子の個数(ここでは、p2−p1に等しい)を特定し出力する(ステップS25)。
【0064】
例えば、遅延速度測定回路9aは、クロック信号生成回路21によるクロック信号の1周期ごとに、遅延素子の個数を出力するようにしてもよい。
【0065】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置におけるその他の動作は実施の形態1のものと同様である。
【0066】
なお、上述の各実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0067】
例えば、上記各実施の形態においては、信号の立ち上がりエッジを検出するようにしているが、その代わりに、信号の立ち下がりエッジを検出するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態1において、タイマは、分周器22から出力されるクロック信号においてエッジ(例えば立ち上がりエッジ)が検出されたとき、計時を開始するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば、プリンタ、複合機、複写機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
4 変調信号遅延回路
5 遅延変調信号選択回路
8 位相差検出回路(演算回路の一例)
9,9a 遅延速度測定回路
10 位相差補正回路(補正回路の一例)
23 遅延回路
23−1〜23−M 遅延素子
25,42 エンコーダ(遅延量特定回路の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延回路を含む演算回路と、
前記演算回路内の遅延回路による信号遅延開始時における所定の遅延回路の第1信号進行速度、および前記演算回路内の遅延回路による信号遅延開始後のあるタイミングにおける前記所定の遅延回路の第2信号進行速度を計測する遅延速度測定回路と、
前記遅延速度測定回路により計測された前記第1信号進行速度および前記第2信号進行速度に基づいて、前記演算回路による演算結果を補正する補正回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記遅延速度測定回路は、前記所定の遅延回路としての、クロック信号を印加される直列接続された複数の遅延素子と、前記複数の遅延素子の出力値に基づいて、所定の時間で前記クロック信号が進行した遅延素子の個数を特定する遅延量特定回路とを有し、
前記補正回路は、前記遅延量特定回路により特定された前記個数に基づいて、前記演算回路による演算結果を補正すること、
を特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記遅延量特定回路は、前記複数の遅延素子の出力値に基づいて、第1タイミングで信号のエッジにある遅延素子を特定し、前記所定の時間後の第2タイミングで前記信号のエッジにある遅延素子を特定し、前記第1タイミングで特定された遅延素子の位置と前記第2タイミングで特定された遅延素子の位置とから、前記所定の時間で信号が進行した遅延素子の個数を特定することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記遅延速度測定回路は、前記演算回路と同一の電源に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の電子機器。
【請求項5】
前記遅延速度測定回路は、前記演算回路と同一のICチップに内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の電子機器。
【請求項6】
水平同期信号に基づいて繰り返しスキャンしながら画像形成を行なう変調ビームを生成する画像信号を前記水平同期信号に同期させながらエンジン側に出力する画像形成装置において、
前記水平同期信号を順次遅延させて複数の遅延同期信号を発生する遅延回路を有し、前記遅延同期信号を使用して前記水平同期信号と基本クロック信号との位相差を検出し位相差信号を発生する位相差検出回路と、
前記基本クロック信号に基づいて変調された画像信号を順次遅延させて複数の遅延画像信号を発生する変調信号遅延回路と、
前記位相差信号に対応させて前記画像信号及び複数の遅延画像信号より一の画像信号を選択する遅延変調信号選択回路と、
前記水平同期信号のエッジ検出時における所定の遅延回路の第1信号進行速度、および前記水平同期信号のエッジ検出後のあるタイミングにおける前記所定の遅延回路の第2信号進行速度を計測する遅延速度測定回路と、
前記遅延速度測定回路により計測された前記第1信号進行速度および前記第2信号進行速度に基づいて、前記位相差検出回路による演算結果を補正する補正回路と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−15123(P2011−15123A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156773(P2009−156773)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】