説明

電子機器および電子機器制御システム

【課題】入力される信号に基づき制御を行う電子機器を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、筐体と、前記筐体の外面に露出して配置される充電端子17と、充電端子17を介して入力された電圧信号を、充電信号と通信信号とに分離する分波器46と、分波器46にて分離された充電信号に基づく充電電圧に応じて、筐体に配設された充電池48を充電する充電部47と、分波器46にて分離された通信信号に基づき制御を行う通信制御部49と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および電子機器制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の電子機器の製造工程において、製品の機能を検査するために制御信号を入力する必要があった。このためには、電子機器に検査用の端子が設けられ、この端子とケーブルを接続することにより検査装置からデータ転送を行っている。例えば、特許文献1には、製造工程およびデザインの自由度が制限されないように、筐体内に配置される基板上に試験用端子を実装した無線電話端末装置が提案されている。
【0003】
また、近年では、インタフェース端子あるいは赤外線の送受信部を備えることにより、外部との通信を可能とする電子機器も多い。このような通信機能を利用して検査用の制御信号を入力することも考えられる。
【特許文献1】特開平08−019033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の検査用の端子やインタフェース端子を介して有線の通信を行う場合には、これらの端子と対になる検査装置側の接続端子または通信ケーブルとを勘合させる必要があり、通信可能な状態にするための工数が多く必要になる。更に、検査を繰り返す場合には、検査装置側の接続端子の耐久性が課題となり、メンテナンスの工数も多く必要になる。
【0005】
また、赤外線通信により無線で制御信号を入力する場合には、検査対象の電子機器を操作して通信モードに設定する必要があるため、工数が多く必要になる。更に、赤外線通信の特性上、光軸のずれにより通信不能となりやすいため、検査装置への設置が難しく、工数の増大につながるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、入力される信号に基づき制御を行う電子機器および電子機器制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子機器は、筐体と、前記筐体の外面に露出して配置される充電端子と、前記充電端子を介して入力された電圧信号を、充電信号と通信信号とに分離する分波部と、前記分波部にて分離された前記充電信号に基づく充電電圧に応じて、前記筐体に配設された2次電池を充電する充電部と、前記分波部にて分離された前記通信信号に基づき制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記分波部は、所定の条件が満たされるときに前記入力された電圧信号の分離を行い、前記充電部は、前記所定の条件が満たされないときには、前記入力された電圧信号に基づく充電電圧に応じて前記2次電池を充電することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電子機器は、前記通信信号に基づく制御を行うか否かの設定を切り替える設定切替部を更に備え、前記所定の条件は、前記設定切替部による設定が前記通信信号に基づく制御を行う設定であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電子機器は、前記充電端子に前記電圧信号が入力されたか否かを判定する入力判定手段と、前記入力判定手段によって前記電圧信号が入力されたと判定されたときに、電源がOFF状態である場合には電源をON状態に切り替える電源切替手段と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電子機器制御システムは、充電信号と通信信号とを混合して前記電圧信号を生成する混合器および、前記混合器にて生成された電圧信号を出力する出力端子を備えた信号出力装置を備え、前記充電端子が前記出力端子に接続されることにより、前記電圧信号が前記電子機器に入力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器における制御のための信号入力を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る電子機器の一例である携帯電話機1の外観斜視図である。なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0015】
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0016】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するためのLCD(Liquid Crystal Display)表示部21と、通話の相手側の音声を出力するスピーカ22と、を備えて構成されている。
【0017】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0018】
図2は、折り畳み状態の携帯電話機1を操作部側筐体2側から見た概観図である。操作部側筐体2には、後述する充電池48を装着するための開口部が形成されると共に、この開口部を塞ぐようにバッテリーリッド16が配置され、充電端子17を更に備える。この充電端子17から充電電圧が入力されることにより、充電池48への充電が行われる。
【0019】
図3は、携帯電話機1の機能を示すブロック図である。携帯電話機1は、操作部11と、マイク12と、メインアンテナ40と、RF回路部41と、LCD制御部42と、音声処理部43と、メモリ44と、充電端子17と、スイッチ45と、分波器46と、充電部47と、充電池48と、通信制御部49と、電源制御回路部50と、CPU51と、が操作部側筐体2に備えられ、LCD表示部21と、スピーカ22と、ドライバIC23とが表示部側筐体3に備えられている。
【0020】
メインアンテナ40は、所定の使用周波数帯(例えば、800MHz)で外部装置と通信を行う。なお、本実施形態では、所定の使用周波数帯として、800MHzとしたが、これ以外の周波数帯であってもよい。また、メインアンテナ40は、所定の使用周波数帯の他に、他の使用周波数帯(例えば、2GHz)に対応できる、いわゆるデュアルバンド対応型による構成であってもよい。
【0021】
RF回路部41は、メインアンテナ40によって受信した信号を復調処理し、処理後の信号をCPU51に供給し、また、CPU51から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ40を介して外部装置(基地局)に送信する。また、その一方で、メインアンテナ40によって受信している信号の強度をCPU51に通知を行う。
【0022】
LCD制御部42は、CPU51の制御にしたがって、所定の画像処理を行い、処理後の画像データをドライバIC23に出力する。ドライバIC23は、LCD制御部42から供給された画像データをフレームメモリに蓄え、所定のタイミングでLCD表示部21に出力する。
【0023】
音声処理部43は、CPU51の制御にしたがって、RF回路部41から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をスピーカ22に出力する。スピーカ22は、音声処理部43から供給された信号を外部に出力する。
【0024】
また、音声処理部43は、CPU51の制御にしたがって、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号をRF回路部41に出力する。RF回路部41は、音声処理部43から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ40に出力する。
【0025】
メモリ44は、例えば、ワーキングメモリを含み、CPU51による演算処理に利用される。なお、メモリ44は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0026】
スイッチ45は、充電端子17に入力された電圧信号を、分波器46へ供給するか、充電部47へ供給するかの設定を切り替える。ここで、携帯電話機1の製造工程においては、電圧信号を分波器46へ供給するように設定される。
【0027】
なお、このスイッチ45は、製造工程を終了後に設定を変更し、電圧信号を充電部47へ供給するようにしてもよい。これにより、電圧信号は、分波器46を介さず、直接に充電部47へ入力される。したがって、後述する分波器46および通信制御部49の機能を使用しない状態となるため、一般ユーザが使用中に誤作動を起こす原因を排除できる。
【0028】
分波器46は、充電端子17およびスイッチ45を介して入力された電圧信号を、充電池48の充電のための充電信号と、携帯電話機1の検査のための通信信号とに分離する。ここで、電圧信号は、充電信号と通信信号とが重畳された信号となっており、充電信号に比べて微小な電圧の変動を通信信号として取り出すことにより分離する。
【0029】
図4は、充電端子17間に入力される電圧信号(a)に対して、分波器46による分波後の充電信号(b)および通信信号(c)の時間変化の例を示すグラフである。
【0030】
この例では、時刻t1において電圧信号として電圧v1が入力され、その後、時刻t2以降では通信信号が重畳された電圧信号となる。この場合、充電信号として、時刻t1以降一定の電圧v1が分離され、通信信号として、時刻t2以降の電圧信号の変動成分が分離される。
【0031】
充電部47は、分波器46により分離された充電信号が入力され、この充電信号に基づく充電電圧に応じて、充電池48を充電する。なお、分波器46を介さずに、スイッチ45を介して充電端子17から電圧信号が直接入力された場合には、この電圧信号に基づく充電電圧に応じて、充電池48を充電する。
【0032】
通信制御部49は、分波器46により分離された通信信号が入力され、この通信信号を携帯電話機1の制御用の信号としてCPU51に送信することによりCPU51での各種制御を実現可能とする。この通信信号には、例えば、製造工程で必要とされる各種検査制御信号、ソフトウェアのダウンロード制御信号、管理番号等が含まれる。
【0033】
なお、通信制御部49によるCPU51への信号伝達は、充電端子17への電圧信号の入力から所定時間後に開始されることとしてよい。これは、検査装置60において、実際の通信信号の混合は、電圧信号の入力と同時には開始せず、時間差を設けることと同期する。このことにより、実際の通信信号を受け取るまでの所定時間、電圧信号の入力直後であるため不安定となりやすい信号状態において、ノイズを通信信号としてCPU51に送信するおそれを低減できる。
【0034】
電源制御回路部50は、充電池48が接続されており、充電池48から供給される電源電圧を所定の電源電圧に変換し、変換後の電源電圧を他の電子部品や機能ブロック等に供給する。なお、電源制御回路部50は、充電端子17に対して電圧信号が入力されたことに応じて、所定の機能ブロックに対して電源を供給することができる。特に、通信制御部49およびCPU51に電源を供給することにより、分波器46を介して入力された通信信号に基づく携帯電話機1の制御を可能としている。
【0035】
CPU51は、携帯電話機1の全体を制御しており、特に、RF回路部41、LCD制御部42、音声処理部43およびカメラ(図示せず)に対して所定の制御を行う。また、CPU51は、先に述べたメインアンテナ40による電波状態や充電池48の残量、不在着信および未読メールの有無等の内部状態を監視しており、この結果に基づいて、LCD表示部21の表示内容を変更したりする制御も行う。
【0036】
図5は、携帯電話機1を含む制御システムの機能を示すブロック図である。制御システムは、検査装置60を備え、携帯電話機1の充電端子17に電圧信号を入力する。
【0037】
検査装置60は、混合器61と出力端子62とを備える。混合器61は、携帯電話機1の充電池48を充電するための充電信号と、携帯電話機1の制御に関する通信信号と、を混合し、電圧信号を生成する。
【0038】
出力端子62は、混合器61により生成された電圧信号を出力し、携帯電話機1の充電端子17に入力する。出力端子62は、接触式ピン端子等により構成されて充電端子17に接触される端子であり、通信用のインタフェース端子に比べて簡素で丈夫な構造とすることができると共に、携帯電話機1との電気的な接続を容易に行うことができる。したがって、システムの使用を繰り返した場合であっても、耐久性に優れ、メンテナンスの工数を削減できる可能性がある。
【0039】
図6は、携帯電話機1の処理を示すフローチャートである。携帯電話機1は、電源OFFの状態で検査装置60に接続され、検査装置60からの電圧信号の入力を受け付ける。
【0040】
ステップS1では、電源制御回路部50は、充電端子17に電圧信号が入力されたか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS2に移り、この判定がNOの場合はステップS1の判定を繰り返す。
【0041】
ステップS2では、電圧信号が入力されたので、電源制御回路部50は、通信制御部49に通信信号を受信させるために、CPU51および通信制御部49に電源の供給を開始する。
【0042】
ステップS3では、分波器46は、入力された電圧信号を、充電信号と通信信号とに分離する。そして、分離された充電信号は充電部47に供給され、通信信号は通信制御部49に供給される。
【0043】
ステップS4では、通信制御部49は、所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間は、通信信号による携帯電話機1の制御を開始するまでの時間として予め設定されるものである。判定がYESの場合はステップS5に移り、判定がNOの場合はステップS6に移る。例えば、電圧信号が入力されてから所定時間が経過するまで(図4における時刻t1〜t2)は、通信信号が含まれていないと判定されて、ステップS6に移り、図4のt2以降の所定の間欠時間帯(充電信号に制御信号が重畳されている時間帯)であると判定されると、ステップS5に移る。
【0044】
ステップS5では、通信制御部49は、ステップS3にて分離された通信信号を受け取り、携帯電話機1の制御信号としてCPU51に送信する。そして、CPU51は、受信した制御信号に基づいて、携帯電話機1の制御を行う。
【0045】
ステップS6では、充電部47は、ステップS3にて分離された充電信号を受け取り、これを充電電圧として、充電池48を充電する。
【0046】
ステップS7では、電源制御回路部50は、充電端子17に入力される電圧信号がなくなったか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS9に移り、この判定がNOの場合はステップS3に戻る。
【0047】
ステップS8では、電圧信号の入力がなくなったので、電源制御回路部50は、各部への電源供給を終了し、本処理フローを終了する。
【0048】
本実施形態によれば、充電端子17への電圧信号を用いて、簡便に通信信号を入力できる。これにより、特に製造工程における検査時には、電源の投入や特別な通信端子を接続する操作を必要としない。更に、充電端子の電圧を検知することにより自動的に通信を開始できるため、通信開始のために携帯電話機1を操作する必要もないため、検査の工数を削減することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る折り畳み状態の携帯電話機1を操作部側筐体2側から見た概観図である。
【図3】本発明の実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る充電端子17間に入力される電圧信号(a)に対して、分波器46による分波後の充電信号(b)および通信信号(c)の時間変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る制御システムの機能を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る携帯電話機1の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 携帯電話機
17 充電端子
45 スイッチ
46 分波器
47 充電部
48 充電池
49 通信制御部
50 電源制御回路部
51 CPU
60 検査装置
61 混合器
62 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の外面に露出して配置される充電端子と、
前記充電端子を介して入力された電圧信号を、充電信号と通信信号とに分離する分波部と、
前記分波部にて分離された前記充電信号に基づく充電電圧に応じて、前記筐体に配設された2次電池を充電する充電部と、
前記分波部にて分離された前記通信信号に基づき制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記分波部は、所定の条件が満たされるときに前記入力された電圧信号の分離を行い、
前記充電部は、前記所定の条件が満たされないときには、前記入力された電圧信号に基づく充電電圧に応じて前記2次電池を充電することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記通信信号に基づく制御を行うか否かの設定を切り替える設定切替部を更に備え、
前記所定の条件は、前記設定切替部による設定が前記通信信号に基づく制御を行う設定であることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記充電端子に前記電圧信号が入力されたか否かを判定する入力判定手段と、
前記入力判定手段によって前記電圧信号が入力されたと判定されたときに、電源がOFF状態である場合には電源をON状態に切り替える電源切替手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器と、
充電信号と通信信号とを混合して前記電圧信号を生成する混合器および、前記混合器にて生成された電圧信号を出力する出力端子を備えた信号出力装置と、を備え、
前記充電端子が前記出力端子に接続されることにより、前記電圧信号が前記電子機器に入力されることを特徴とする電子機器制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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