説明

電子機器のコーティング構造及び電子機器のコーティング方法

【課題】耐久性に優れ、長期に外観品質を維持することのできる電子機器のコーティング構造及び電子機器のコーティング方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器のコーティング構造は、携帯電話端末を構成する筐体の表面にコーティング層が形成されてなる電子機器のコーティング構造において、前記コーティング層が、筐体の表面に形成され、シリコン材料からなる第1のコーティング層と、該第1のコーティング層の表面に形成され、ウレタン系紫外線硬化樹脂材料からなる第2のコーティング層と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話をはじめとする各種電子機器のコーティング構造、及びコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする各種電子機器には、樹脂や金属からなる筐体の表面に、コーティング層が形成されている。
例えば、特許文献1においては、筐体の表面に、UV(紫外線)硬化性樹脂、アクリルウレタン系樹脂によりハードコート層を形成している。
また、特許文献2においては、樹脂成形品の表面に樹脂フィルムにより加飾層を形成している。
このようなコーティング層は、着色することで筐体の外観を良くする機能や、筐体に傷が付くのを防止する保護層としての機能等を有している。また、このコーティング層は、高温環境下の使用に対する耐久性や、人体からの分泌物、ハンドクリーム、化粧品、日焼け止め、整髪料等の各種化学物質に対する耐性を確保するためにも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−296841号公報
【特許文献2】特開2007−221610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機器を落下させたり機器に他の物品が衝突した場合における外部からの衝撃によりコーティング層が割れたり、砂やストラップ等の硬くて尖ったものによる摩擦で徐々に損傷を受けて、コーティング層が筐体から剥がれてしまうという問題がある。
そこでなされた本発明の目的は、耐久性に優れ、長期に外観品質を維持することのできる電子機器のコーティング構造及び電子機器のコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る電子機器のコーティング構造は、電子機器を構成する筐体の表面にコーティング層が形成されてなる電子機器のコーティング構造において、前記コーティング層が、前記筐体の表面に形成され、シリコン材料からなる第1のコーティング層と、該第1のコーティング層の表面に形成され、ウレタン系紫外線硬化樹脂材料からなる第2のコーティング層と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る電子機器のコーティング方法は、電子機器を構成する筐体の表面に、シリコン材料からなる第1のコーティング層を形成する工程と、前記第1のコーティング層の表面に、ウレタン系紫外線硬化樹脂材料からなる第2のコーティング層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾力性を有する第1のコーティング層により、外部から衝撃等が加わった際に、その衝撃を吸収することができ、第2のコーティング層に傷がついたり割れたりするのを防止する。また、第2のコーティング層自体も、柔軟性を有しているので、第1のコーティング層が衝撃吸収時に変形しても、それに追従して変形し、第2のコーティング層が割れるのを回避する。このようにして、各種電子機器の外観および機能が劣化するのを防ぎ、高い耐久性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態における携帯電話端末の構成を説明するための図であり、表示筐体と本体筐体とを開いた状態の斜視図である。
【図2】図1に示した携帯電話端末の表示筐体と本体筐体とを閉じた状態の斜視図である。
【図3】表示筐体を構成する筐体分割体の一例を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】図3(b)の一部を拡大した断面図である。
【図5】筐体分割体に貫通孔を形成して、ベース層と同時に防水パッキンを形成する構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
図1に示すように、携帯電話端末(電子機器)10は、LCD等の表示部21を備える表示筐体20と、キー入力部31を備える本体筐体30と、を備える。
図1、図2に示すように、これら表示筐体20と本体筐体30とは、それぞれの一辺20a、30aにおいて、ヒンジ11により回転可能に連結されている。ここで、表示筐体20と本体筐体30とは、ヒンジ11により回転可能に連結された構成に限らず、表示筐体20と本体筐体30とをスライド可能に連結したものであってもよい。
また、携帯電話端末10は、必ずしも表示筐体20と本体筐体30とから構成される必要はなく、表示筐体20と本体筐体30とが一体構成された、いわゆるタブレット型やストレート型であってもよい。
【0010】
ここで、表示筐体20、本体筐体30は、それぞれ、少なくとも二つに分割された筐体分割体22A、22B、32A、32B、32Cを互いに嵌合させることにより構成されている。
【0011】
筐体分割体22A、22B、32A、32B、32Cは、それぞれ所定形状を有して形成されている。
図3は、筐体分割体22A、22B、32A、32B、32Cのうち、筐体分割体22Bを一例として示した図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る携帯電話端末10のコーティング構造Kを示す図である。なお、筐体分割体22B以外の筐体分割体22A、32A、32B、32Cについても、コーティング層50の構成は同様である。
図4に示すように、筐体分割体22Bは、樹脂材料または金属材料からなる基材40の表面が、コーティング層50により覆われた構成を有している。
【0012】
コーティング層50は、基材40の表面を覆うよう形成されたベース層(第1のコーティング層)51と、最外表層を形成する表面コーティング層(第2のコーティング層)52と、を有している。さらに、ベース層51と表面コーティング層52との付着性を高めるために、プライマー層53を備えるのが好ましい。
【0013】
ベース層51は、弾力性を有する材料、例えばシリコン材料により形成するのが好ましい。
ここで、ベース層51を形成するシリコン材料に液状シリコンを用い、基材40の樹脂成形時に、いわゆる2色成形法により、ベース層51を一体に形成するのが好ましい。尚、2色成形法とは、2色または2種類の樹脂を2回に分けて成形することにより、一体の製品を作る成形法のことである。この場合、ベース層51を形成する金型の表面を調整することにより、ベース層51の表面仕上げとして、例えば鏡面度を高めたり、シボ模様や凹凸等の各種テクスチャ仕上げを容易に付加することができる。
また、図5に示すように、基材40においてベース層51の裏側に、その表裏を貫通する貫通孔41を形成しておき、2色成形法により基材40を形成した後にその外表面にベース層51を形成すると、ベース層51を形成するシリコン材料が貫通孔41を通して基材40の内表面(表示筐体20や本体筐体30の内側)にも充填され、これによって、基材40の内側に防水パッキン60を同時に形成することもできる。この場合、当然のことながら、金型には、防水パッキン60を形成する部分に空隙(キャビティ)を形成しておく必要がある。
【0014】
表面コーティング層52としては、ウレタン系のUV(紫外線)硬化性樹脂を用い、柔軟性を有するものが好ましい。
【0015】
プライマー層53は、通常、付着しないベース層51のシリコン材料と表面コーティング層52のウレタン系のUV硬化性樹脂とを付着させるものである。
【0016】
このような筐体分割体22A、22B、32A、32B、32Cは、基材40の表面に、ベース層51、プライマー層53、表面コーティング層52を順次形成することで形成することができる。
ここで、ベース層51は、前記したように2色成形法を用いる場合、金型内のキャビティに樹脂材料または金属材料を注入して基材40を形成した後、同金型内の他のキャビティにシリコン材料を注入して形成する。
また、プライマー層53、表面コーティング層52は、前記ベース層51の表面に、プライマー層53を形成する材料、表面コーティング層52を形成するウレタン系UV硬化性樹脂を順次、スプレー法、スピンコート法等の各種塗布手法により塗布することで形成される。
【0017】
このような携帯電話端末10によれば、表示筐体20、本体筐体30の基材40の表面を覆うコーティング層50が、弾力性を有するシリコン材料からなるベース層51と、ベース層51を覆うよう設けられた柔軟性を有するウレタン系樹脂材料からなる表面コーティング層52とを備えている。
これにより、弾力性を有するベース層51により、外部から衝撃等が加わった際に、その衝撃を吸収することができ、表面コーティング層52に傷がついたり割れたりするのを防止する。また、表面コーティング層52も、柔軟性を有しているので、ベース層51が衝撃吸収時に変形しても、それに追従して変形し、表面コーティング層52が割れるのを回避する。
また、ベース層51をシリコン材料で形成した場合、シリコン材料は水分、薬品等の汚染物質により膨潤しやすいが、ベース層51を表面コーティング層52で覆うことにより、ベース層51への汚染物質の到達を防ぎ、ベース層51の膨潤を防ぐことができる。
このようにして、表示筐体20、本体筐体30の外観が劣化するのを防ぎ、高い耐久性を実現することができる。
【0018】
また、ベース層51に液状シリコンを用い、基材40を2色成形法により形成した場合、その表面の鏡面度や仕上げを金型により容易に付加することができるので、携帯電話端末10のデザインの自由度が高まる。
さらに、ベース層51の形成時に基材40に貫通孔41を形成しておくことで、ベース層51を形成するシリコン材料により基材40において表示筐体20、本体筐体30の内部側に対向する面に同時に防水パッキン60を形成することもでき、これによりその製造を効率よく行うことができる。
【0019】
さらに、ベース層51と表面コーティング層52との間にプライマー層53を設けることで、これらベース層51と表面コーティング層52とを強固に接合することができ、ベース層51から表面コーティング層52が剥がれるのを防ぐことができる。
【0020】
なお、本発明の電子機器のコーティング構造、及び電子機器のコーティング方法は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、表示筐体20、本体筐体30に限らず、キー入力部31等、他の部分に対しても同様のコーティング層50を設けるようにしても良い。
また、基材40が金属製の場合、ベース層51と基材40との間に、プライマー層をさらに形成し、これらの付着性を高めるのが好ましい。
また、携帯電話端末10に限らず、PHS(Personal Handy−phone System)、トランシーバ、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯音楽プレーヤー等、通信機能を有する各種電子機器をはじめ、持ち運び可能な各種機器の筐体やカバーに対しても上記実施形態で示した構成を同様に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、または他の構成を適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 携帯電話端末(電子機器)
20 表示筐体
21 表示部
22A、22B、32A、32B、32C 筐体分割体
30 本体筐体
40 基材
41 貫通孔
50 コーティング層
51 ベース層(第1のコーティング層)
52 表面コーティング層(第2のコーティング層)
53 プライマー層
60 防水パッキン
K コーティング構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を構成する筐体の表面にコーティング層が形成されてなる電子機器のコーティング構造において、
前記コーティング層が、
前記筐体の表面に形成され、シリコン材料からなる第1のコーティング層と、
該第1のコーティング層の表面に形成され、ウレタン系紫外線硬化樹脂材料からなる第2のコーティング層と、
を備えることを特徴とする電子機器のコーティング構造。
【請求項2】
前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層との間に、前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とを付着させるプライマー層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のコーティング構造。
【請求項3】
電子機器を構成する筐体の表面に、シリコン材料からなる第1のコーティング層を形成する工程と、
前記第1のコーティング層の表面に、ウレタン系紫外線硬化樹脂材料からなる第2のコーティング層を形成する工程と、を備えることを特徴とする電子機器のコーティング方法。
【請求項4】
前記第1のコーティング層の表面にプライマー層を形成する工程をさらに備え、
前記第2のコーティング層は、前記プライマー層の表面に形成されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器のコーティング方法。
【請求項5】
前記第1のコーティング層が、前記筐体の成形時に2色成形法により形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器のコーティング方法。
【請求項6】
前記筐体を貫通して貫通孔が予め形成され、2色成形法による前記第1のコーティング層の形成時に、前記貫通孔を通して前記筐体の裏面に、シリコン材料からなるシール部を形成することを特徴とする請求項5に記載の電子機器のコーティング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−54355(P2012−54355A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194854(P2010−194854)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】