説明

電子機器の蓋構造

【課題】従来の収納スペースにダンパーやバネを収納して電子機器の蓋を半自動的に開け、且つダンパーで蓋の開く速度を制御する。
【解決手段】上ケース2と下ケース6で構成され、暗証番号を入力する10キー、5キーボタン、指紋、静脈等の生体センサーの入力部13からの暗証番号、生体照合による認証機能を備え、上ケースに入力部を覆い隠すため上ケースに設けられる回動軸14を中心に回動可能の蓋4を有している。蓋は、回動軸の軸線長手方向に空間15を設け、空間に、蓋を閉状態に係止する爪16による係止を解除したとき蓋を開状態とするためのバネ1と、バネによる開状態の動作を漸次緩行するダンパー10とを配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の蓋構造に係り、特に蓋をあけるためのダンパーおよびバネを小スペース部分に収納可能な電子機器の蓋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、門や玄関等に設けられ、指紋照合装置または10キーや5キーを用いて電気錠の解錠操作を行う電子機器が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−78553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術に記載した電子機器は、指紋照合装置または10キーや5キーを用いて解錠操作するが、その場合、一般的には操作部を覆い隠す蓋があるので、操作部を操作するには手動にてその蓋を開ける必要があった。また、蓋を開状態に保持するためには、施解錠のための機構とは別の機構が必要であった。さらに、バネによって蓋を半自動で開ける構造においは蓋の開く速さを制御できず、蓋が勢いよく開いてしまう難点があった。このような電子機器は小型化されているので、ダンパーなどを使用して蓋を開ける構造を採用するには、当該ダンパー等を収納するスペースがさらに必要となるので、現時点では実現が難しかった。
【0005】
本発明は、このような従来の難点を解決するためになされたもので、従来の収納スペースにダンパーやバネを収納して電子機器の蓋を半自動的に開けることができ、且つダンパーで蓋の開く速度を制御することができる電子機器の蓋構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である電子機器の蓋構造は、上ケースと下ケースで構成され、暗証番号を入力する10キー、5キーボタン、指紋、静脈等の生体センサーの入力部からの暗証番号、生体照合による認証機能を備え、上ケースに入力部を覆い隠すため上ケースに設けられる回動軸を中心に回動可能の蓋を有し、蓋は、回動軸の軸線長手方向に空間を設け、空間に、蓋を閉状態に係止する爪による係止を解除したとき蓋を開状態とするためのバネと、バネによる開状態の動作を漸次緩行するダンパーとを配置するものである。
【0007】
このような第1の態様による電子機器の蓋構造によれば、回動軸の軸線長手方向に設けられた空間にバネとダンパーを配置したので、従来の収納スペースにダンパーやバネを収納することができる。これにより、従来の収納スペースを使用しても、電子機器の蓋を半自動的に開けることができ、また、ダンパーでバネによる蓋の開状態の動作を漸次緩行させることで当該蓋の開く速度を制御することができる。
【0008】
本発明の第2の態様は第1の態様である電子機器の蓋構造においては、ダンパーとバネとの間に介在されダンパーの軸の一方を固定するとともにバネを設置固定するためのホルダーを配置し、ホルダーは、上ケースのホルダー固定部に固定するものである。
【0009】
このような第2の態様による電子機器の蓋構造によれば、ダンパーとバネとをホルダーにより回動軸の軸線長手方向に直列で配置することができる。また、ホルダーが上ケースのホルダー固定部に固定され且つこのホルダーにダンパーの軸の一方が固定されているので、蓋を開閉する際にダンパーで蓋の開閉速度を制御することができる。
【0010】
本発明の第3の態様は第2の態様である電子機器の蓋構造においては、バネの固定部の一方を蓋に、他方をホルダー固定部に固定するものである。
【0011】
このような第3の態様による電子機器の蓋構造によれば、バネの弾性を蓋に加えることができるので、蓋は常時開く方向にバネの弾性が働くことになる。
【0012】
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様の何れかである電子機器の蓋構造において、ダンパーはオイルダンパーであり、バネの弾性を外気温度に応じて可変可能に調節する手段を備えるものである。
【0013】
このような第4の態様による電子機器の蓋構造によれば、オイルダンパ−のオイルの粘性が外気温度によって変化しても、バネの弾性を調節手段によって可変することができるので、外気温度に左右されることなく蓋の開く速度を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子機器の蓋構造によれば、従来の収納スペースにダンパーやバネを収納して電子機器の蓋を半自動的に開けることができ、而もダンパーで蓋の開く速度を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図1は、本発明に適用される電子機器である電気錠解錠装置を示す全体斜視図で、(A)は蓋が閉じた状態の図、(B)は蓋が開いた状態の図である。図2は認証装置の分解斜視図である。図3は図1とは異なる位置から蓋が開いた状態の電子機器を見た状態を示す全体斜視図である。図4は電子機器の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のC−C断面図である。なお、発明を実施するための最良の形態の全体を通じて同一要素には同一参照番号を付す。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態例である電気錠解錠装置は図1、図2に示すように、例えば矩形状の上ケース2と下ケース6で構成され、暗証番号を入力する10キー、5キーボタンや、指紋、静脈等の生体センサーの入力部13からの暗証番号、生体照合による認証機能を備えている。入力部13は、10キー、5キーボタン13Aと生体センサー13Bが別個に設けられている。10キー、5キーボタン13Aはタッチパネルやスイッチング構造が使用され、生体センサー13Bは光学式センサー等が使用されている。この入力部13は下ケース6に設けられ、上ケース2には下ケース6と組み合わせた際に当該上ケース2で入力部13が覆われないように開口部2aが形成されている。また、上ケース2には、下ケース6に設けられた入力部13を開口部2aとともに覆い隠すための蓋4が回動可能に設けられている。
【0017】
蓋4は、例えば矩形状に形成され回動中心側Aの両端4a、4bにはそれぞれ当該蓋4が開口部2aを開閉するための回動中心になるように回動軸14が形成され、操作側Bの裏面には蓋4を閉状態に上ケース2に係止する爪16が形成されている。この2つの回動軸14、14は同軸線上に位置している。また、爪16を係止したり解除したりするためのプッシュボタン11が上ケース2に組み込まれている。このプッシュボタン11は押圧操作前には係止部材11aが爪16に引っ掛かり、押圧操作すると係止部材11aが爪16から離れる機構を備えている。なお、プッシュボタン11から押圧操作を行なった指を離すと、係止部材11aは蓋4の爪16を引っ掛けることができる位置まで戻る。この機構は一般的な機構を採用するので説明を省略する。
【0018】
また、この蓋4を上ケース2に組み込むために、蓋4の2つの回動軸14、14を回動自在に嵌合させる窪み8a、9aが形成されたシャフトホルダ8、9が上ケース2の所定位置に固定されている(図2、図4(B)参照)。このシャフトホルダ8、9の窪み8a、9aに回動軸14、14を嵌合させることで、蓋4は回動軸14、14を回動中心にして回動させることができるようになる。
【0019】
このような蓋4は、回動軸14の軸線長手方向に空間15(図1、図3参照)を設け、この空間15に、蓋14を閉状態に係止する爪16による係止を解除したとき蓋4を開状態とするためのバネ1と、バネ1による開状態の動作を漸次緩行するダンパー10とを配置している。なお、空間15を形成する当該蓋4の部位は略円柱状に形成されている。このバネ1にはねじりコイルバネが使用され、ダンパー10にはオイルダンパーが使用されている。ねじりコイルバネは、その軸線まわりにねじり荷重を受けるバネで、各ねじり端にはそれぞれ腕が形成されている。これら腕がバネ1の固定部1a、1bとなる。オイルダンパーは、例えばトックベアリング株式会社の有限角一方向ダンパーのTD56シリーズが好適である。このオイルダンパーは円柱状で両端に軸が設けられ、一方の軸を固定した状態で他方の軸を回転させると、オイルの粘性抵抗を受けるようになっている。いわゆる衝撃緩和性を有している。これら軸がダンパー10の軸10a、10bとなる。
【0020】
このダンパー10とバネ1との間にはホルダー12が配置されている。ホルダー12はダンパー10の一方の軸10aを固定する第1の部位12aと、バネ1を装着する第2の部位12bと、上ケース2に形成されたホルダー固定部21に固定する第3の部位12cとから構成されている。これにより、ダンパー10とバネ1とをホルダー12により回動軸14の軸線長手方向に直列で配置することができる。また、第2の部位12bに装着されたバネ1の固定部の他方1bが上ケース2のホルダー固定部21に固定され、バネ1の固定部の一方1aは蓋4の裏面に固定されている。このようにバネ1を組み込むことで、バネ1の弾性を蓋4に加えることができるので、上ケース2に回動自在に組み込まれた蓋4は常時開く方向にバネ1の弾性が働くことになる。また、第1の部位12aに一方の軸10aが固定されたダンパー10の他方の軸10bは、蓋4の空間15の所定位置に形成された固定ホルダー4c(図3、図4参照)に固定されている。このようにダンパー10を組み込むことで、上ケース2に回動自在に組み込まれた蓋4を開閉する際にダンパー10で開閉速度を制御することができる。
【0021】
このようなオイルダンパー10は、外気温度によってオイルの粘性が変化し、夏にはオイルの粘性抵抗が小さくなり、冬には粘性抵抗が大きくなるので、季節によって蓋4の開く速度が変わってしまう難点がある。そこで、バネ1の弾性を外気温度に応じて可変可能に調節する手段を備えるとよい。この調節手段を図5、図6に示す。図5は手動方式を採用した電子機器の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のD−D断面図で、(C)は蓋が開放した状態の全体斜視図である。また、図6はバイメタル駆動方式を採用した電子機器の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のE−E断面図で、(C)は蓋が開放した状態の全体斜視図である。
【0022】
図5に示す手動方式は、バネ1の固定部の他方1bを位置変化させることで当該バネ1のねじり荷重を変化させる調節手段30である。調節手段30は、ねじ31を外から回すことが可能に組み込まれた筐体32の中に当該ねじ31を嵌め込むことができる板材33が設けられている。このねじ31は筐体32から外れないように先端がCリング等で係止されている。また、板材33の上面にはバネ1の固定部の他方1bが載せられ、ねじ31を回すことでバネ1の固定部の他方1bを係止した板材33が上下するので、バネ1の固定部の他方1bを位置変化させて当該バネ1のねじり荷重を変化させることができる。
【0023】
図6に示すバイメタル駆動方式は、熱膨張率が違う2種類の金属の板を張り合わせたバイメタルを利用してバネ1の固定部の他方1bを位置変化させることで当該バネ1のねじり荷重を変化させる調節手段40である。調節手段40は、ホルダー固定部21に固定されたバイメタル41でバネ1の固定部の他方1bを支えている。したがって、バイメタル41が外気温度の変化によって移動するので、バネ1の固定部の他方1bを位置変化させて当該バネ1のねじり荷重を変化させることができる。
【0024】
このように、オイルダンパー10のオイルの粘性が外気温度によって変化しても、バネ1の弾性を調節手段30、40によって可変することができるので、外気温度に左右されることなく蓋4の開く速度を一定にすることができる。
【0025】
このように構成された電気錠解錠装置の蓋4を上ケース2に装着するには、蓋4の固定ホルダー4cにダンパー10の他方の軸10bを固定し、ダンパー10の一方の軸10aをホルダー12の第1の部位12aに固定する。また、ホルダー12の第2の部位12bにバネ1を装着して、バネ1の固定部の他方1bを上ケース2のホルダー固定部21に、バネ1の固定部の一方1aを蓋4の裏面にそれぞれ固定する。そして、ダンパー10、バネ1及びホルダー12が組み込まれた蓋4の回動軸14、14を、上ケース2の所定位置に固定されたシャフトホルダ8、9の窪み8a、9aに嵌合する。この際、ホルダー12の第3の部位12cを上ケース2に形成されたホルダー固定部21に固定する。このように、回動軸14の軸線長手方向に設けられた空間15にバネ1とダンパー10を配置したので、従来の収納スペースにダンパー10やバネ1を収納することができる。
【0026】
なお、上ケース2と下ケース6とはビス5によって固定され、この上ケース2には入力部13やプッシュボタン11を操作可能にする開口部3aが形成された意匠パネル3がビス3によって固定されている。
【0027】
次に、電気錠解錠装置の主に蓋4の開閉動作について説明する。
【0028】
居住者等が外出先から帰宅すると、電気錠(図示せず)を解錠させるために電気錠解錠装置を操作する。電気錠解錠装置、ここでは指紋照合装置を操作するために入力部13を覆う蓋4を開ける。
【0029】
具体的には、居住者が図1(A)の状態で電気錠解錠装置のプッシュボタン11を押下すると、上ケース2のプッシュボタン11と連動する係止部材11aに係止された蓋4の爪16が解除される。これによりバネ1が作用し、蓋4が自動的に開状態へ移行する。通常、このバネ1のみが作用する構造の場合、バネ1の作用によって蓋4が勢い良く開いてしまうが、蓋4の回転にともなって、蓋側に固定されたダンパー10の他方の軸10bが回転してバネ1による開状態の動作を漸次緩行するので、蓋4を緩やかに開くことができる。蓋4は図1(B)の状態になるまで回動し、バネ1の作用によって開状態を保持する。これにより居住者は入力部13で指紋照合を行い、指紋が居住者のものと確認されると、電気錠は解錠される。電気錠が解錠されたことを確認した居住者は、開状態になっている蓋4を手動により閉状態にする。このとき、蓋4の爪16が上ケース2のプッシュボタン11と連動する係止部材11aに係止されるので、再度プッシュボタン11が押圧操作されるまで開状態になることはない。このように、従来の収納スペースを使用しても、電気錠解錠装置の蓋4を半自動的に開けることができ、また、ダンパー10でバネ1による蓋4の開状態の動作を漸次緩行させることで当該蓋4の開く速度を制御することができる。
【0030】
なお、上述した実施形態例においては電子機器を電気錠解錠装置としたが、これに限定されず、電子機器に扉構造を有する電子機器であればどのようなものでもよい。
【0031】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の電子機器の蓋構造における好ましい実施の形態例を示す説明図である。
【図2】図1に示す電子機器の分解斜視図である。
【図3】図1に示す電子機器の全体斜視図である。
【図4】図1に示す電子機器の説明図である。
【図5】バネの弾性を手動で調節する手段を示す説明図である。
【図6】バネの弾性をバイメタル機構で調節する手段を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1……バネ
1a……固定部の一方
1b……固定部の他方
2……上ケース
21……ホルダー固定部
4……蓋
6……下ケース
10……ダンパー
10a……一方の軸
12……ホルダー
13……入力部
14……回動軸
15……空間
30、40……調節手段




【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケース(2)と下ケース(6)で構成され、暗証番号を入力する10キー、5キーボタン、指紋、静脈等の生体センサーの入力部(13)からの前記暗証番号、生体照合による認証機能を備え、
前記上ケースに前記入力部を覆い隠すため前記上ケースに設けられる回動軸(14)を中心に回動可能の蓋(4)を有し、
前記蓋は、前記回動軸の軸線長手方向に空間(15)を設け、前記空間に、前記蓋を閉状態に係止する爪(16)による係止を解除したとき前記蓋を開状態とするためのバネ(1)と、前記バネによる開状態の動作を漸次緩行するダンパー(10)とを配置することを特徴とする電子機器の蓋構造。
【請求項2】
前記ダンパーと前記バネとの間に介在され前記ダンパーの軸(10a)の一方を固定するとともに前記バネを設置固定するためのホルダー(12)を配置し、前記ホルダーは、前記上ケースのホルダー固定部(21)に固定することを特徴とする請求項1記載の電子機器の蓋構造。
【請求項3】
前記バネの固定部(1a、1b)の一方(1a)を前記蓋に、他方(1b)を前記ホルダー固定部に固定することを特徴とする請求項2記載の電子機器の蓋構造。
【請求項4】
前記ダンパーはオイルダンパーであり、前記バネの弾性を外気温度に応じて可変可能に調節する手段(30、40)を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載の電子機器の蓋構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−154570(P2007−154570A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353423(P2005−353423)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】