説明

電子機器の蓋機構

【課題】筐体1に部品の収容室10が凹設されると共に、収容室10内の部品の抜け出しを阻止すべき抜け止め片4が収容室10内へ向かって出没可能に配備されており、該収容室10は蓋2によって開閉可能に覆われており、該蓋2は、筐体1上に軸支されて回動が可能な蓋体5と、該蓋体5の裏面に係止された止め具7と、蓋体5と止め具7の間に挟持されたスライド片6とを具え、スライド片6のスライド操作によって蓋2が閉じ位置にロックされる電子機器において、蓋体5に対する止め具7の組み立てが容易であり、且つスライド片6を操作するときの押圧力によって蓋体5からスライド片6が脱落する虞を低減した、電子機器の蓋機構を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器の蓋機構においては、抜け止め片4が、蓋2を構成する止め具7の裏面と対向する位置に配備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の電子機器における蓋機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラにおいては、筐体に電池の収容室が凹設され、該収容室内の電池の抜け出しを阻止すべき抜け止め片が収容室内へ向かって出没可能に配備されている。又、収容室は電池蓋によって開閉可能に覆われている。
電池蓋は、筐体上に軸支されて回動が可能な蓋体と、該蓋体の裏面に係止された止め具と、蓋体と止め具の間に挟持されると共に蓋体の表面に露出する操作部を有するスライド片とを具え、スライド片のスライド操作によって蓋を閉じ位置にロックすることが可能となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−41856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のデジタルカメラにおいては、電池蓋のスライド片をスライド操作するとき、蓋体に対して押圧力が作用して、蓋体が弾性変形し、これに伴って蓋体に対する止め具の係止が外れ、その結果、蓋体からスライド片が脱落する虞がある。
そこで、蓋体に対する止め具の係止をより確実なものとすることが考えられるが、これによって蓋体に対する止め具の組み立てが困難となる問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、蓋を構成する蓋体に対する止め具の組み立てが容易であり、且つ蓋のスライド片を操作するときの押圧力によって蓋体からスライド片が脱落する虞を低減した、電子機器の蓋機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子機器においては、筐体(1)に部品の収容室(10)が凹設されると共に、収容室(10)内の部品の抜け出しを阻止すべき抜け止め片(4)が収容室(10)内へ向かって出没可能に配備されている。
収容室(10)は蓋(2)によって開閉可能に覆われており、該蓋(2)は、筐体(1)上に軸支されて回動が可能な蓋体(5)と、該蓋体(5)の裏面に係止された止め具(7)と、蓋体(5)と止め具(7)の間に挟持されると共に蓋体(5)の表面に露出する操作部(61)を有するスライド片(6)とを具え、スライド片(6)のスライド操作によって蓋(2)が閉じ位置にロックされる。
ここで、前記抜け止め片(4)は、蓋(2)を構成する止め具(7)の裏面と対向する位置に配備されている。
【0007】
上記本発明の電子機器の蓋機構においては、蓋(2)の開閉のためにスライド片(6)をスライド操作するとき、蓋体(5)には押圧力が作用するが、蓋体(5)の弾性変形に伴って止め具(7)が収容室側へ変位せんとしても、該止め具(7)の変位は抜け止め片(4)によって受け止められる。この様にして蓋体(5)の弾性変形が阻止され、蓋体(5)に対する止め具(7)の係止状態が維持される。
【0008】
例えば、止め具(7)は、板部(71)に対して複数の突片(73)(74)を形成して構成される一方、蓋体(5)の蓋部(51)の裏面には複数の係止片(54)(55)が形成され、蓋体(5)又は止め具(7)を弾性変形させることによって、止め具(7)の複数の突片(73)(74)を蓋体(5)の複数の係止片(54)(55)に係脱させることが可能である。
【0009】
この場合、上述の如くスライド片(6)のスライド操作に伴う蓋体(5)の弾性変形による止め具(7)の脱落が防止されるので、止め具(7)の複数の突片(73)(74)と蓋体(5)の複数の係止片(54)(55)との係合深さは、比較的浅いものであってもよい。この結果、組み立て工程において止め具(7)の複数の突片(73)(74)を蓋体(5)の複数の係止片(54)(55)に係合させる作業が容易なものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子機器の蓋機構によれば、蓋を構成する蓋体に対する止め具の組み立てが容易であり、且つ蓋のスライド片を操作するときの押圧力によって蓋体からスライド片が脱落する虞は低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるデジタルカメラにおいて電池蓋のロック状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、該デジタルカメラにおいて電子蓋のロック解除状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、該デジタルカメラにおいて電池蓋が開いた状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】図5は、電池蓋の分解斜視図である。
【図6】図6は、図5とは異なる方向から見た電池蓋の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をデジタルカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態であるデジタルカメラは、図1〜図3に示す様に、筐体(1)の背面に画面(11)と操作キー(12)を具え、筐体(1)の底面には電池蓋(2)が配備されている。
【0013】
図3に示す如く、筐体(1)には、電池蓋(2)によって開閉される収容室(10)が凹設されており、該収容室(10)には電池(3)が収容されている。該電池(3)は、図示省略する付勢手段によって飛び出し方向に付勢されている。
又、収容室(10)の内壁には、収容室(10)内の電池(3)の抜け出しを阻止すべき抜け止め片(4)が、収容室(10)内へ向かって出没可能に配備され、図示省略する付勢手段によって突出方向に付勢されている。該抜け止め片(4)によって、収容室(10)内の電池(3)は収容位置に保持されている。
抜け止め片(4)の先端部上面には斜面が形成されており、収容室(10)内に電池(3)を挿入する過程で、該電池(3)の端部が前記斜面を押圧することにより、抜け止め片(4)が前記付勢手段に抗して後退し、電池(3)の挿入を許容する。
【0014】
又、電池蓋(2)は、その基端部に設けられた軸部(50)が筐体(1)上に枢支されると共に、トーションバネ(53)によって開き方向に回転付勢されている。
【0015】
電池蓋(2)は、図5及び図6に示す如く、基端部に前記軸部(50)を有する蓋体(5)と、該蓋体(5)の裏面に係止される止め具(7)と、蓋体(5)と止め具(7)の間に挟持されてスライド可能なスライド片(6)とを具えている。
【0016】
蓋体(5)は合成樹脂製であって、前記収容室(10)の開口部を塞ぐべき蓋部(51)に開口(52)を有すると共に、蓋部(51)の裏面には、開口(52)を包囲して4つの係止片(54)(54)(55)(55)が形成されている。
又、蓋体(5)の蓋部(51)の裏面には、軸部(50)寄りの位置に、リブ(56)が突設されている。
【0017】
スライド片(6)は合成樹脂製であって、その上面には、蓋体(5)の開口(52)から上方へ臨出すべき操作部(61)を具えると共に、スライド片(6)のスライド方向の端部に、舌片(62)が突設されている。
又、スライド片(6)の裏面中央部には、凸部(63)が形成されている。
【0018】
止め具(7)は板金製であって、板部(71)の中央部にバネ部(72)を有すると共に、板部(71)の周囲に4つの突片(73)(73)(74)(74)が外向きに突設されている。
電池蓋(2)の組み立て工程においては、蓋体(5)と止め具(7)の間にスライド片(6)を挟持した状態で、蓋体(5)及び止め具(7)の弾性変形を利用して、止め具(7)の4つの突片(73)(73)(74)(74)を蓋体(5)の4つの係止片(54)(54)(55)(55)に係合させる。
【0019】
図4に示す如く、抜け止め片(4)は、電池(3)に抜け止めを施すべくその先端部を電池(3)の上面に突出させた状態で、蓋(2)を構成する止め具(7)の裏面と対向する位置にその先端部を臨出させて配備されている。ここで、抜け止め片(4)の先端部と止め具(7)との間には、0.1mm程度の隙間が存在している。
【0020】
図1に示す如く電池蓋(2)を閉じた状態で電池蓋(2)を閉じ位置にロックしたロック状態では、図3に示すスライド片(6)の舌片(62)が筐体(1)の収容室(10)の開口縁に係合している。
この状態から図1に示す操作部(61)を、図2に示す如く電池蓋(2)の軸部(50)側へスライド操作すると、前記スライド片(6)の舌片(62)によるロックが解除され、図3に示す様に電池蓋(2)がトーションバネ(53)の付勢によって自動的に開くことになる。
【0021】
図1〜図2に示す様にスライド片(6)をスライドさせる過程で、止め具(7)のバネ部(72)がスライド片(6)の凸部(63)を乗り越えることにより、スライド片(6)の操作にクリック感が与えられる。
【0022】
スライド片(6)をスライド操作するとき、蓋体(5)には押圧力が作用するが、蓋体(5)の弾性変形に伴って止め具(7)が収容室(10)側へ変位せんとしても、該止め具(7)の変位は抜け止め片(4)によって受け止められるので(図4参照)、蓋体(5)の弾性変形が阻止されることになる。
尚、図4に示す様に、止め具(7)が抜け止め片(4)の先端部の斜面を押圧して、抜け止め片(4)に後退方向の力が作用したとしても、蓋体(5)の裏面に突設されたリブ(56)によって抜け止め片(4)の後退移動は制限(略ロック)される。従って、止め具(7)の変位は抜け止め片(4)によって確実に受け止められる。
【0023】
ここで、止め具(7)は、4つの突片(73)(74)を蓋体(5)の4つの係止片(54)(55)に係合させて、蓋体(5)に係止されているが、スライド片(6)のスライド操作時に蓋体(5)は殆ど弾性変形しないので、蓋体(5)に対する止め具(7)の係止が解除される虞はない。
【0024】
従って、止め具(7)の4つの突片(73)(74)と蓋体(5)の4つの係止片(54)(55)との係合深さは、比較的浅いものであってもよい。この結果、組み立て工程において止め具(7)の4つの突片(73)(74)を蓋体(5)の4つの係止片(54)(55)に係合させる作業が容易なものとなる。
【0025】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、スライド片(6)は、一直線上を往復移動するものに限らず、円弧線上を往復移動するものであってもよい。
又、抜け止め片(4)の出没方向は、スライド片(6)のスライド方向と同じであってもよく、円弧線上を往復移動するものであってもよい。
更に又、本発明は、デジタルカメラの電池蓋に限らず、種々の部品を収容する収容室を有する電子機器の蓋機構に実施することが出来る。
【符号の説明】
【0026】
(1) 筐体
(10) 収容室
(2) 電池蓋
(3) 電池
(4) 抜け止め片
(5) 蓋体
(51) 蓋部
(52) 開口
(54) 係止片
(55) 係止片
(6) スライド片
(61) 操作部
(62) 舌片
(7) 止め具
(71) 板部
(72) バネ部
(73) 突片
(74) 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に部品の収容室が凹設されると共に、収容室内の部品の抜け出しを阻止すべき抜け止め片が収容室内へ向かって出没可能に配備されており、該収容室は蓋によって開閉可能に覆われており、該蓋は、筐体上に軸支されて回動が可能な蓋体と、該蓋体の裏面に係止された止め具と、蓋体と止め具の間に挟持されると共に蓋体の表面に露出する操作部を有するスライド片とを具え、スライド片のスライド操作によって蓋が閉じ位置にロックされる電子機器において、前記抜け止め片は、蓋を構成する止め具の裏面と対向する位置に配備されていることを特徴とする電子機器の蓋機構。
【請求項2】
前記抜け止め片は、蓋のスライド片をスライド操作するときの押圧力による蓋体の弾性変形に伴う止め具の変位を受け止めることが出来る位置に配備されている請求項1に記載の電子機器の蓋機構。
【請求項3】
前記止め具は、板部に対して複数の突片を形成して構成される一方、前記蓋体の裏面には複数の係止片が形成され、蓋体又は止め具を弾性変形させることによって、止め具の複数の突片を蓋体の複数の係止片に係脱させることが可能である請求項1又は請求項2に記載の電子機器の蓋機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173497(P2012−173497A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35047(P2011−35047)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】