説明

電子機器の装飾部材

【課題】さまざまな使用環境下において蒸着外観面の歪みを抑え、外観品質の劣化を改善し、意匠性(デザイン性)を維持できる高い品質の装飾部材を提供する。
【解決手段】片面に金属蒸着層122を形成した透明なカバー基材121と、前記金属蒸着層122上に接着した前記カバー基材121と同一形状の透明性の高い両面接着テープ123と、前記両面接着テープ123上に接着した前記カバー基材121と同一形状の透明な樹脂フィルム124と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属蒸着を施した装飾部材に関し、特に電子機器に使用される金属蒸着を施した装飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の市場は大きく広がっており、ユーザニーズの多様化にもより、さまざまな種類や、デザインの製品が販売されている。そのような市場環境の中にあって、他の製品との差別化については機能面のみならずデザイン面からも求められてきており、とりわけ装飾機能を持たせた表示スクリーンやパネル等の装飾部材はデザイン性を高める点で有効である。
【0003】
本発明の関連技術として携帯電話機の表示部のスクリーン等のデザイン性を高めるため、ハーフミラーのように暗い方から明るい方が見える半透過性の金属蒸着仕上げを行った装飾部材が用いられることが多くなってきている(特許文献1)。
【0004】
図4は本発明の開発過程で検討した表示スクリーンの構成を示す分解斜視図であり、図5は同表示スクリーンの断面構成を示す図である。
【0005】
図4、5に示す表示スクリーン12は、裏面に蒸着層122を形成したスクリーン基材121と、蒸着層122の下面に透過性の開口を形成する印刷層125と、該印刷層125の下面に接着した両面接着テープ126と、から構成される。
【0006】
前記表示スクリーン12は、前記両面接着テープ126により本発明の折畳み型携帯電話機(図1)の背面表示部の前面に接着され、印刷層125のない光透過性の開口が表示部に位置し、その周囲は印刷層125により窓枠となり、前記蒸着層122は鏡のような装飾機能を備える。
【特許文献1】特開2004−287140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、スクリーン基材121の裏面に金属蒸着を施し鏡のような装飾を行ったスクリーンにおいては、高温や高湿度となる環境下で使用された場合、金属蒸着層122が軟化することで、金属蒸着層122上に施した印刷125やスクリーン12の固定用の両面接着テープ126の厚みによる境界の段差部によって生じる負荷により金属蒸着層122に僅かな歪みが生じ、外観が鏡状で表面の均一性が高いがゆえ、その歪みが外観面の歪みとして現れ、意匠性が損なわれ商品性を低下させるという点で問題がある。
【0008】
(目的)
本発明の目的は、以上のような問題を解決することが可能な電子機器の装飾部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の電子機器の装飾部材は、片面に金属蒸着層を形成した透明なカバー基材と、前記金属蒸着層の前記カバー基材と反対面側の透明性の高い両面接着テープと、前記両面接着テープの前記金属蒸着層と反対面側の透明な樹脂フィルムと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用環境の変化や、経時変化等、さまざまな使用環境下において、印刷層や電子機器への接着用の両面接着テープの使用による蒸着外観面の歪みを抑え、外観品質の劣化を改善し、意匠性(デザイン性)を維持できる高い品質の装飾部材を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電子機器の装飾部材の実施形態について詳細に説明する。本発明の装飾部材の一実施形態として携帯電話機の筺体の情報等を表示する表示部に装着する表示スクリーンへの適用例により以下詳細に説明する。
【0012】
(構成の説明)
図1は本発明の一実施形態の表示スクリーンを使用した携帯電話機の外観を示す斜視図である。本実施形態の携帯電話機1は、下部筺体1a及び上部筺体1bで構成され、前記下部筺体1a及び上部筺体1bがそれぞれの端部に形成したヒンジ部1cにより連結され、折畳み可能に構成された折畳み型携帯電話機である。
【0013】
下部筺体1a及び上部筺体1bは、それぞれ折畳み型携帯電話機を開いた状態での前面側のフロントケースと背面側のリアケースを係合することにより構成される。下部筺体1aの前面(フロント)ケースにはキー操作部等を備え、上部筺体1bのフロントケースには主表示部、上部筺体1bの背面(リア)ケースには副表示部(背面表示部)11等を備える。
【0014】
本実施形態の表示スクリーン12は前記背面表示部11を保護するとともに携帯電話機1のデザイン性を高めるために前記背面表示部11の前面に両面接着テープにより装着される。
【0015】
図2は本実施形態の表示スクリーンの構成を示す分解図であり、図3は本実施形態の表示スクリーンの構成を示す断面図である。
【0016】
表示スクリーン12は、図2、3に示すように、裏面全面に光の半透過性の金属蒸着層122を形成した、透明な樹脂で成形された板状のカバー基材(スクリーン基材)121と、前記スクリーン基材121と透明性の高い両面接着テープ123と、金属蒸着層122と対向する面の反対面に窓枠等を形成するための印刷層125を有し、前記スクリーン基材121と透明な樹脂フィルム124と、表示スクリーン12を折畳み型携帯電話機1の背面表示部に固定するための両面接着テープ126と、により構成される。
【0017】
ここで、両面接着テープ123と樹脂フィルム124はスクリーン基材121と面の外形を同一形状とすると好適である。また、スクリーン基材121には、表示スクリーン12のデザイン性を高めるため、スクリーン基材121の裏面側に、例えばスズやアルミ等の金属蒸着膜により鏡のような仕上げを行う。
【0018】
また、スクリーン基材121の材料としては、例えばアクリルやポリカーボネートが使用可能であり、樹脂フィルム124の材料(樹脂)としては、例えばポリエステルやポリカーボネートが使用可能である。
【0019】
(動作の説明)
次に、本実施形態の表示スクリーンの構成に基づき、環境変化、経年変化等に対する外観面の歪の抑制機能ないし動作を以下説明する。
【0020】
スクリーン基材121の裏面に施されている金属蒸着層122に両面接着テープ123と樹脂フィルム124を接着していない表示スクリーンにおいては、印刷層125を形成して固定用の両面接着テープ126により携帯電話機等の電子機器に装着した場合、印刷層125及び固定用の両面接着テープ126の厚みにより段差部に荷重(負荷)が生じ、これが段差部のエッジに集中する。
【0021】
例えば、スクリーン基材側から押圧された場合のような表示スクリーンに対する外力や、温度変化による各材料の伸張、収縮に基づくストレス(応力)が段差部のエッジに集中する。この現象は各材料の可撓性等の有無に拘わらず生じ得る。
【0022】
この結果、金属蒸着層122の段差部のエッジ部分には僅かな歪みが生じ、歪が生じた部分は鏡面の光の反射が他の部分とは変化し、エッジ部分に沿ってライン状や帯状の影のような外観を呈することになり、デザイン性を損ない商品性が低下する。
【0023】
これは外観が鏡状で表面の均一性が高いがゆえに、外観面の歪として現れるものであり、歪の生じた部分の鏡面の平滑性又は均一性が損なわれた結果であって、高温や高湿度下で金属蒸着層122が軟化した場合には顕著に表れる。
【0024】
これに対し、本発明のようにスクリーン基材121の金属蒸着層122に両面接着テープ123を介して樹脂フィルム124を接着すると、金属蒸着層122が高温や高湿度下で軟化した場合であっても、金属蒸着層122は両面接着テープ123を介して樹脂フィルム124で保護される。
【0025】
このため、前記段差部のエッジ部分の負荷は樹脂フィルムで分散され、全面に均一に伝わることになり、印刷層125及び固定用の両面接着テープ126の厚みによる境界部の段差に集中する負荷として直接加わることが回避できる。また、前記段差部のエッジ部分の負荷の分散は樹脂フィルムにある程度の剛性を与えるとより効果的である。
【0026】
以上のように本実施形態によれば、前記段差部のエッジ部分の負荷による金属蒸着層への影響を回避することが可能となり、金属蒸着層122の段差部のエッジ部分の歪を抑制し、外観面の歪みもなくすることが可能である。
【0027】
特に、前記段差部のエッジ部分の負荷による金属蒸着層への影響は、本実施形態のように両面接着テープ123及び樹脂フィルム124をスクリーン基材121の面の外形と同一形状以上にすると効果的である。
【0028】
つまり、両面接着テープ123及び樹脂フィルム124の面の外形のサイズ(形状)をスクリーン基材のサイズ(金属蒸着部のサイズ)より小さいくすると、金属蒸着層122を保護するはずの樹脂フィルムの端面で金属蒸着面に新たな負荷を発生するのに対し、両面接着テープ123及び樹脂フィルム124をスクリーン基材121と同一形状とすればかかる負荷の発生を防止できる。
【0029】
以上のように本実施形態では、透明で板状の樹脂の裏面全面に半透過性の金属蒸着膜を施したスクリーン基材と、前記スクリーン基材と同一形状を成す透明性の高い両面接着テープと、蒸着膜と対向する面の反対面側にスクリーン基材と同一形状を成した透明な樹脂フィルムと、で構成する。
【0030】
更に、樹脂フィルムに表示スクリーンの窓枠を形成する印刷を施し、表示スクリーンを電子機器等に固定するための両面接着テープを接着して構成する。
【0031】
このような構成とすることにより、温度、湿度といった使用環境の変化や、経時変化により、印刷の見切り部や両面接着テープ外形なりに発生する蒸着外観面の歪みを押さえることを可能とする。
【0032】
(他の実施形態)
以上の実施形態では装飾部材として携帯電話機の筺体の表示部保護用のスクリーンへの適用例を示したが、本発明は携帯電話機以外の電子機器に適用可能であり、更に電子機器の筺体の表示部以外の開口部保護用等に適用可能である。
【0033】
また、本発明の装飾部材はスクリーンとしての構成に限られるものではなく、一般に透明材料の裏面側に金属蒸着仕上げを行って構成する装飾部材に適用可能である。
【0034】
例えば、電子機器の装飾用のパネルとして構成することが可能である。装飾用パネルの実施形態としても、片面に金属蒸着層を形成した透明なカバー基材と、前記金属蒸着層上に接着した前記カバー基材と同一形状の透明性の高い両面接着テープと、前記両面接着テープ上に接着した前記カバー基材と同一形状の透明な樹脂フィルムと、から構成する。
【0035】
また、装飾用パネルの前記金属蒸着層は半透過性の装飾層として形成し、前記樹脂フィルム上には、電子機器の開口部等に対応する位置に開口を形成する等、部分的な印刷層を形成し、前記印刷層上に前記電子機器と接着するための両面接着テープを接着して構成される。
【0036】
以上のように本発明の装飾部材は、裏面側に半透過性の金属蒸着により鏡のような装飾を施した物において、樹脂フィルムへの印刷や両面接着テープの使用により、温度、湿度といった使用環境の変化や、経時変化で、印刷の見切り部や両面接着テープ外形なりに発生する蒸着外観面の歪みを抑えることが可能であり、外観品質の劣化を抑制し、意匠性を維持し高い品質の製品として構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、表示部等のように内部を透視可能な筺体の開口部等にカバーとして取り付けることができる装飾部材に関するものであるから、携帯電話機等の携帯端末に限らず、携帯ゲーム機、デジタルカメラ、時計、音響機器等の電子機器のスクリーンやパネル等として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態の表示スクリーンを使用した携帯電話機の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の表示スクリーンの構成を示す分解図である。
【図3】本実施形態の表示スクリーンの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の開発過程で検討した表示スクリーンの構成を示す分解斜視図である。
【図5】同表示スクリーンの断面構成を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 携帯電話機
11 背面表示部(副表示部)
12 表示スクリーン
121 スクリーン基材
122 金属蒸着膜(層)
123 両面接着テープ
124 樹脂フィルム
125 印刷(層)
126 両面接着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に金属蒸着層を形成した透明なカバー基材と、前記金属蒸着層の前記カバー基材と反対面側の透明性の高い両面接着テープと、前記両面接着テープの前記金属蒸着層と反対面側の透明な樹脂フィルムと、を有することを特徴とする電子機器の装飾部材。
【請求項2】
前記両面接着テープ及び樹脂フィルムは、それぞれ前記カバー基材と面の形状が同一であることを特徴とする請求項1記載の電子機器の装飾部材。
【請求項3】
前記金属蒸着層は、光の半透過性の装飾層として形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器の装飾部材。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの前記両面接着テープと反対面側の部分的な印刷層と、前記印刷層の前記樹脂フィルムと反対面側の前記電子機器と接着するための両面接着テープと、を有することを特徴とする請求項1ないし3の何れかの請求項記載の電子機器の装飾部材。
【請求項5】
前記電子機器の表示部用のスクリーンとして構成したことを特徴とする請求項1ないし4の何れかの請求項記載の電子機器の装飾部材。
【請求項6】
前記電子機器は折り畳み型携帯端末であることを特徴とする請求項5記載の電子機器の装飾部材。
【請求項7】
前記表示部は、折り畳み型携帯端末の筺体の背面表示部であることを特徴とする請求項6記載の電子機器の装飾部材。
【請求項8】
前記電子機器の装飾用のパネルとして構成したことを特徴とする請求項1ないし4の何れかの請求項記載の電子機器の装飾部材。
【請求項9】
前記カバー基材はアクリル又はポリカーボネートの板であることを特徴とする請求項1ないし8の何れかの請求項記載の電子機器の装飾部材。
【請求項10】
前記樹脂フィルムはポリエステル又はポリカーボネートのフィルムであることを特徴とする請求項1ないし9の何れかの請求項記載の電子機器の装飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−282228(P2009−282228A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133249(P2008−133249)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】