電子機器用およびフラットパネルディスプレー用の改良金属フレーム
【課題】弾性限界を含めて物理的機械的性質を改善した電子機器用金属フレームであり、望ましくは、Zr/TiまたはFe基のバルク凝固アモルファス合金およびバルク凝固アモルファス合金複合材料で少なくとも一部が作製されている高成形性の金属フレーム、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部がバルク凝固アモルファス合金で形成されており、前記バルク凝固アモルファス合金は弾性限界が約1.5%以上である。前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cで表され、a=約30〜75原子%、b=約5〜60原子%、c=約0〜50原子%である。
【解決手段】収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部がバルク凝固アモルファス合金で形成されており、前記バルク凝固アモルファス合金は弾性限界が約1.5%以上である。前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cで表され、a=約30〜75原子%、b=約5〜60原子%、c=約0〜50原子%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器用の改良された金属フレームに関し、特に、FeおよびZr基のバルク凝固アモルファス合金およびバルク凝固アモルファス合金複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子装置は機能面で便宜的に2つの部分に分割できる。すなわち、電子装置の本来の機能を持つ電子部分と、この電子部分を機械的に保護する外殻フレームである。最良の保護は、電子装置の作動部品(1個または複数個のマイクロプロセッサ、メモリー装置、ストーレッジ装置など)をフレームで機械的に封入してしまうもので、例えば携帯用コンピュータ、パーソナルデータアシスタント(PDA)、携帯電話などがある。
【0003】
例えば、携帯型パソコン(一般にノート型パソコンと言われる)の場合、上部ケースと下部ケースとから成るハウジングが、画面(スクリーン)、コンピュータ本体、インタフェス装置を支持し収容している。典型的には、このハウジングはコンピュータを構成する種々の部品を一緒に固定するための搭載構造体でもある。ロジックボードやディスクドライブと言った種々の部品が上部ケースや下部ケースにネジなどの締結手段を用いて取り付けられる。電磁干渉(EMI)に対する保護のため、ハウジングの上下両ケース内に遮蔽材料のシートを配置したり、対象部品を金属構造物で取り囲んだりして、周囲の影響から隔離する。典型的なノートパソコンケースなどの携帯電子装置ケースの作製に際しては、全体を軽量化しつつ、装置の処理能力、メモリー容量、耐衝撃性を高める努力がなされている。
【0004】
この目的を達成するために、多数の設計要素が利用されている。まず、電子装置の小型化には、電子部品を小型化し、軽量の薄型パネルディスプレーを組み込んでいる。次に、コンピュータの種々の部品を搭載しかつ衝撃から隔離するための構造体を最小限の寸法とし、そして実際には、典型的のハウジングは埋め込み成形補強材(molded-in reinforcement)、リブ、搭載用ボスを成形体の部品搭載用内側表面に備えている。典型的には、ノートパソコン内の種々の回路基板は、埋め込み成形されたボスやリブに直接ネジ止めされている。最後に、装置の軽量化のために、ほとんどの場合、ハウジングケースは軽量高剛性のプラスチックや複合材料で作製される。
【0005】
上記のような携帯コンピュータ製造法は実用性が高いが、なお改良の余地がある。例えば、材料の観点では、プラスチックや複合材料は、軽量であるし、大部分の電子機器ケースに要求される複雑な形状への成形も容易であるが、金属に比べて構造的な強度や耐久性が一般に不十分である。また、金属ではなくプラスチックや複合材料を用いた場合、ケースと電子部品との間に別個のEMI保護層を設けなくてはならない。
【0006】
しかし、ケース全体を金属で作製すると重量やコストが増加して、軍事用途のような特殊な場合以外は実用的でない。例えば、プラスチックケースに伴う強度と耐久性の問題を解消するために、携帯コンピュータの上下ケースをダイキャスト金属で作製する試みが行なわれている。これにより確かに強度および耐久性は高まるが、重量が携帯には適さず、コストも高い。また、種々の補助部材をシート金属で作製した例もあるが、期待したような強度向上は得られていない。その上、従来の金属は大部分が成形性不足である。
【0007】
近年、マグネシウム合金の軽量と高強度に着目した研究が進められている。しかし、マグネシウム合金は従来からあるAl基合金などと比べて塑性加工性が非常に劣る。そのため現状では、マグネシウム合金は通常はダイキャストで製造されている。しかし、マグネシウム合金は薄肉製品のダイキャストが極めて難しいため、まだ比較的肉厚の製品に限られている。その上、マグネシウム合金鋳物には、鋳物にとって致命的とも言える気孔などの鋳造欠陥や酸化物系などの介在物が含まれて、これが表面に露出することがある。鋳造欠陥や介在物は、マグネシウム合金鋳物の機械強度を劣化させるし、表面に露出していると耐食性や外観に悪影響を及ぼす。
【0008】
また、マグネシウム合金鍛造材やその他の混成結晶性合金材料は耐食性が向上するかもしれないし、軽量フレームでかつ従来の金属と同等の機械強度を持つかもしれないが、これらの金属では弾性限界(材料が塑性変形しないで弾性変形できる能力)について全く考慮が払われて来なかった。結果として、一般に電子機器用のケースは弾性限界が非常に低い金属で作られており、応力によるエネルギーを蓄える能力が低く、変形要因となる応力が負荷されたときに永久変形を起こし易い。
【0009】
前述の背景から、携帯型電子機器の重量や製造コストを上昇させずに、構造体としての堅牢性や耐久性を高めた電子機器用ケースが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,288,344号
【特許文献2】米国特許第5,368,659号
【特許文献3】米国特許第5,618,359号
【特許文献4】米国特許第5,735,975号
【特許文献5】米国特許第6,325,868号
【特許文献6】特開2001−303218号公報
【特許文献7】米国特許第6,027,586号
【特許文献8】米国特許第5,950,704号
【特許文献9】米国特許第5,896,642号
【特許文献10】米国特許第5,324,368号
【特許文献11】米国特許第5,306,463号
【特許文献12】米国特許第5,342,368号
【特許文献13】米国特許第5,896,642号
【特許文献14】米国特許第5,237,486号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、約1.5%以上、望ましくは焼く2.0%以上の弾性限界を含めて物理的機械的性質を改善した電子機器用金属フレームであり、望ましくは、Zr/TiまたはFe基のバルク凝固アモルファス合金およびバルク凝固アモルファス合金複合材料で少なくとも一部が作製されている高成形性の金属フレームである。
【0012】
一実施形態においては、バルク凝固アモルファス合金は、それぞれ原子%でa=30〜75、b=5〜60、c=0〜50である分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cで表される合金群から選択される。もう1つの実施形態においては、他の遷移金属、望ましくはNb、Cr、V、Coを20原子%以下含有してよい。
【0013】
別の実施形態においては、合金群は原子%でa=40〜75、b=5〜50、c=5〜50である分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表される。別の実施形態にいては、アモルファス合金の複合材料を用いて所望の剛性、耐衝撃性、熱伝導性をフレームに付与する。この実施形態においては、合成を高めるための補強材として、カーボンの繊維またはプリフォーム、SiCの繊維またはプリフォームを用いることができる。この実施形態においては、補強材は複合材料体積の20%〜80%であることが望ましい。別の実施形態においては、補強材の形状および方位を調整することにより、例えば金属フレームの長さ方向と幅方向について所望の性質(例えば弾性率)にすることができる。
【0014】
別の実施形態においては、フレームの形状の調整により、剛性と柔軟性の組合せを向上できる。この実施形態においては、ハニカム状、波状などの望みの形状を用いることができる。
【0015】
別の実施形態においては、金属フレームはプラスチック、アルミニウムなどのような他の材料で作られた部分を備えていても良い。
【0016】
別の実施形態においては、アモルファス合金は硬さの値が約4GPa以上、望ましくは5.5GPa以上となるように選択する。
【0017】
別の実施形態においては、アモルファス合金は降伏強度が約2GPa以上となるように選択する。
【0018】
別の実施形態においては、アモルファス合金は破壊靭性が約10ksi√in(ksi・ksi1/2)以上、望ましくは20ksi√in(ksi・ksi1/2)以上となるように選択する。
【0019】
別の実施形態においては、アモルファス合金は密度が6.5g/cc以下、望ましくは4.5g/cc以下となるように選択する。
【0020】
別の実施形態においては、アモルファス合金は少なくとも、弾性限界と、硬さ、降伏強度、破壊靭性、密度のうちの1種類との2種類の性質が前記の範囲内となるように選択する。
【0021】
別の実施形態においては、アモルファス合金は少なくとも、弾性限界と、硬さ、降伏強度、破壊靭性、密度のうちの2種類との3種類の性質が前記の範囲内となるように選択する。
【0022】
別の実施形態においては、別の実施形態においては、本発明の金属フレームは金属フレームアセンブリを構成する少なくとも1つの部分を含む。フレームが2以上の部分で構成される実施形態においては、1つの部分が電子機器を収容し、もう1つの部分がフラットパネルディスプレーを収容する。この実施形態においては、金属フレームの各部分はボルト締結、クランプ締結、接着、リベット留め、溶接などの種々の接合方法により、個々の収容物を固定する。
【0023】
別の実施形態においては、アモルファス合金フレームは、衝撃や振動を減衰させるためにリブあるいは支持プラットフォームのような構造を備えるように設計することにより、ハードディスクドライブのような影響を受け易い部品を保護する。
【0024】
別の実施形態においては、アモルファス合金および複合材料のフレーム設計を例えば1ミクロン以下の寸法で高度化する(機能的、人間工学的、意匠的に精緻に設計する)。
【0025】
別の実施形態においては、本発明はPDA、携帯電話、ノート型コンピュータ等の携帯用電子装置に特化して設計したフレームである。
【0026】
別の実施形態においては、本発明はアモルファス合金の電子装置用フレームの製造方法である。この実施形態においては、アモルファス合金をそのガラス転移温度付近で鋳造あるいは成形することにより、細部まで再現させ、複雑な形状の金属ケースを実現する。
【0027】
別の実施形態においては、金属フレームをアモルファス合金および複合材料のシートからスタンピングおよび/または型成形により作製する。この実施形態においては、スタンピングおよび/または型成形はガラス転移温度付近で行なうことが望ましい。別の実施形態においては、金属フレームはアモルファス合金および複合材料のシートから例えば水ジェット、レーザ切断、放電加工のような機械加工や切断によって作製する。金属フレームは金属鋳型鋳造や金属含浸法(アモルファス合金複合材料の場合)などの種々の形態の鋳造法によっても作製できる。
【0028】
別の実施形態においては、金属フレームは機械加工、切断、スタンピング、型成形により種々のスロットと孔を具備し、電子機器、フラットパネルディスプレーの作動時に発生する熱の冷却効果を高める。この実施形態においては、金属フレームが機械加工、切断、スタンピング、型成形により種々のスロットと孔を具備することにより、内部音響システムおよびスピーカーのための性能も高められる。最後に、金属フレームが機械加工、切断、スタンピング、型成形により種々のスロットと孔を具備することにより、キーボード、マウス、トラックパッドなどの種々のアクセサリやアタッチメントのためのスペースができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態によるキーボードフレームの模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態によるフラットパネルスクリーンフレームの模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるキーボード/フラットパネルディスプレー組合せフレームの模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるフラットパネルスクリーンフレームの模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態によるヒンジ連結フレームの模式図である。
【図6】図6は、本発明のアモルファス材料の性質を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図8】図8は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図9】図9は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図10】図10は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図11】図11は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図12】図12は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図13】図13は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の一実施形態によりフレームを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、弾性限界が約1.5%以上、望ましくは約2.0%以上の材料で少なくとも一部が作られていて物理的機械的な性質を改良してある金属フレームに関し、望ましくは、Zr−TiまたはFe基のバルク凝固アモルファス合金またはバルク凝固アモルファス合金複合材料のような成形性の優れた材料で作られたフレームに関する。本明細書中ではこのフレームを電子機器用フレームまたはケース、あるいはバルク凝固アモルファスフレームまたはケースと呼称する。
【0031】
本発明の電子機器用フレームの代表例を図1〜5に示す。図示したように、金属フレーム10は、電子装置の部品40を収容する収容器20を壁部30が構成し、収容した部品40の操作に用いる開口部50を備えている。しかし、本発明の金属フレームは図1〜5に示したような基本的な部品を備えているが、ケース自体と、収容器および開口部の個数、寸法、形状と、収容されている電子機器部品の性質、形状、寸法とは、電子装置の性質に応じて多種多様である。例えば、本発明の金属フレームは、例えばPDAやノート型コンピュータのようなデータ蓄積装置や機械操作装置、ディジタルカメラやディジタルビデオカメラのようなマルチメディア記録装置、CDプレーヤーやDVDプレーヤーのようなマルチメディアプレーヤー、ポケベルや携帯電話のような伝達装置などの電子装置に用いることができる。
【0032】
図1〜4は、種々の電子装置用に設計した金属フレームの実例である。例えば、図1のケース10は、キーボード40のようなユーザーインタフェス用の単一の開口部50を備えていて、設置型または携帯型のコンピュータの遠隔制御装置や部品としてのスタンドアローン装置といて用いられる。図2のケース10は、フラットパネルディスプレー40用とユーザーインタフェスまたはアクセスポート40’用に2つの開口部50を備えていて、DVDプレーヤー用や携帯型コンピュータの部品として用いられる。図3のケース10は携帯電話用またはPDAプレーヤー用で、2つの開口部50は1つがフラットパネルディスプレー40用でもう1つが1セットの制御ボタン40’用である。また、図4のケース10は、大きな単一の開口部50がフラットパネルテレビジョン用等のヴューパネルとして用いられる。
【0033】
図示したように、いずれの金属フレームも、種々の寸法・形状の収容器20と、種々の寸法・形状の壁部30と、種々の寸法・形状の電子部品40と、種々の寸法・形状の開口部50とを備えている。そして、図示の装置は開口部が2つ以下であるが、開口部の個数と位置は用途に依存するだけである。例えば、冷却用、保守用、種々の寸法・形状・個数のアクセサリ用の開口部を付加できる。
【0034】
図1〜4のケースおよびフレームは、電子装置の作動部品を一体構造に収容してあるが、分離型または取付型の別体構造に収容することもできる。図5に示したのはその一例で、2つの部分を蝶番で連結した構造のケースである。このケースの一方の部分60はフラットパネルディスプレーを収容し、もう一方の部分70はユーザーインタフェス用または他の部品用である。
【0035】
上記各ケースの組み立て工程の詳細は省略するが、フレームが2つ以上の部分から構成される場合(例えば図5の例)は、各部分同士の接合と内容物の固定は、ボルト締結、クランプ締結、接着、リベット締結、溶接などで行なうことができる。また、合金フレームがリブ、支持プラットフォームなどの構造を備えても良い。
【0036】
上記各図ではケースを前から見た斜視図のみで示したが、いずれの場合も金属フレームは反対側の端部や背面もカバーしている。また、5つの例のみを図示したが、本発明の金属フレームは、電子装置の電子部品を収容・保護するのに適した種々の形状・寸法とすることができる。例えば、携帯型コンピュータ用の金属フレームが米国特許第5,237,486号および第4,571,456号に開示されている(これらの開示内容は全て本発明の参考とした)。
【0037】
図1〜5に示したケースおよびフレームは電子部品を収納する主収容器として設計されているが、これらの他に、本発明の電子機器フレームは、既に全体が収納された状態になっている電子装置を更に収納するのにも用いることができる。例えば、PDA、携帯電話、ノート型コンピュータのキャリングケースとして用いて装置を二重に保護することもできる。
【0038】
以上、本発明の電子機器フレームの構造、形状、機能に着目して説明した。しかし、発明の背景の項で述べたように、電子機器フレームの主な問題点はケースの耐久性とケース全体の重量との兼ね合いである。電子装置用のケースおよびフレームは、単位重要当りの耐久性がある程度以上必要であり、すなわちフレームは十分な保護機能を発揮しながら十分に軽量でなくてはならない。
【0039】
ケースの耐久性を設定するに当って、フレーム材料を選定するための物理的なパラメータが多数ある。従来の電子機器フレームおよびケースの場合、技術者が材料選定で第一に考慮したのは、極限引張強さ(σUTS)すなわち材料が破断するまでに負荷される応力の最大値ができるだけ大きいと、そして弾性係数(荷重形態によってヤング率または曲げ弾性率)ができるだけ大きいことであった。更に、軽量フレームを作るための材料選定として、比極限引張強さ(密度に対する極限引張強さの比)ができるだけ大きいこと、そして、比弾性率(密度に対する弾性率の比)ができるだけ大きいことであった。これらの材料パラメータの主たる意味は、破断までに全体として負担できる最大荷重とフレーム全体の変形量である。しかし、破断までの負担可能な最大荷重およびフレーム全体としての変形量は個々のフレーム設計によって大きく変わり得る。
【0040】
例えば、同一材料・所定重量での変形を最小化するには中実棒よりもI形梁の方が有効である。したがって、必要な複雑形状に材料の成形・組み立てが可能なら、このような複雑な設計によって材料の構造的な短所を直ちに効果的に救済できる。
【0041】
これらの性質は、フレームの負担できる最大荷重と、フレームが撓んだり変形したする能力の指標にはなるが、フレームの耐久性を十分に表すものではないし、押し付け、押し込み、突き刺し等の物理的外部作用による応力に対する部品保護の能力を十分に表すものでもない。また、これらのパラメータは、変形を生じさせる応力等による変形に対するケースの反応を十分に表すものでもない。もう1つ重要なのは、上述の設計的対処は選定した材料の物理的な欠点をある程度は補完できるが、耐久性の不足や、物理的外部作用に対する保護の不足を救済することはできない、という点である。
【0042】
上述のような変形に対するケースの反応を説明するには、用いた材料の弾性限界(εf)を考慮する必要がある。弾性限界とは、材料が永久変形しないで物理的に変形できる量である。降伏強度と弾性限界との関係を図6の応力/歪曲線に模式的に示す。
【0043】
電子機器用ケースの製造に対する材料の適性を決める際の弾性限界の重要性は、図7に最もよく表される。この図では、電子機器用ケースの製造に高級材料として頻繁に用いられている従来のTi合金のような高硬さ軽量材料と、本発明のバルク凝固材料とについて、応力/歪曲線を対比して示す。図示したように、従来材料は降伏点が比較的高いが、弾性限界が低ければ、軽微な変形も永久変形になる。これに対し、本発明のケースは降伏強度が高く、弾性変形量が大きくなっている。
【0044】
本発明によるケースの耐久性向上に果たす弾性限界の重要性は、図8の模式的曲線同士の比較により明示される。すなわち、図8に描いた2つの曲線下の面積は、落下とか打撃のような応力のエネルギーを弾性的に(永久損傷なしで)蓄積する能力を2種類の仮想材料について示したものである。図示のように、弾性限界が高い材料を選定すると、等しい降伏強度を持つ従来材料に比べて、遥かに大きいエネルギーを蓄積する(弾性変形しつつ)能力がある。そのため、本発明によって作製したケースは、弾性限界が1.5%以上の材料で形成され、それにより、使用中の永久変形や完全破壊し難くなっている。
【0045】
上述の性質は全て、材料の密度(ρ)すなわち体積当りの重量を考慮することにより更に明示できる。例えば、重量に対する降伏強度または弾性限界の比を用いて、本発明の電子機器用フレームとしてのアモルファス合金材料の適性を決めることができる。1つの有用な評価方法は密度に対する弾性限界の比であり、下式で定義される。
【0046】
εf/ρ・・・・・・・・(1)
また、密度に対する降伏強度の比も上記の比と組み合わせて用いることができ、下式で表される。
【0047】
σy・・・・・・・・・・(2)
弾性限界比を用いて、望ましくは上記2つの比の組合せを用いて、適した材料の範囲を決定できる。
【0048】
上記の望ましい機械的性質に加えて、電子機器用フレーム、特に使用環境・操作条件共に厳しい条件下に置かれる携帯型電子装置にとっては耐食性が非常に重要である。
【0049】
最後に、発明の背景の項で述べたように、金属製の電子機器フレームに関して次に重要な問題は、必要な複雑形状の物を効率良く製造することである。複雑形状物を製造するには、型成形と鋳造が最良であり、他の方法、例えば鍛造で製造した場合などは、後処理機械が必要になる。しかし、Al基合金等の従来材料の大部分は型成形性も鋳造性も低い。そのためケースおよびフレーム用に選択される材料は細密成形性を持たなくてはならない。
【0050】
材料の成形性は種々の方法で評価でき、例えば、ダイキャビティで再現可能な最小寸法、成形に要する成形温度や歪速度、最終製品の許容寸法公差で評価できる。
【0051】
例えば、本発明の電子機器用ケースには細密寸法が必要なので、細密成形性を持つ材料だけが利用可能である。例えば、本発明の一実施形態においては、本発明の電子機器用フレームの形成に適しているのは、100ミクロンオーダで表面形態(模様、粗さ)を再現できる材料のみである。
【0052】
適切な機械的耐久性、耐食性、成形性を得るために、本発明はバルク凝固アモルファス合金で作られた電子機器用フレームであり、特にZr−Ti基またはFe基のバルク凝固アモルファス合金で作られた電子機器フレームである。
【0053】
バルク凝固アモルファス合金とは、500K/秒以下の遅い速度で冷却しても実質的にアモルファス構造が得られる合金群を指す。このようなバルク凝固アモルファス合金は厚さ0.5mm以上に製造できるものであり、これは最大鋳造可能厚さ0.020mmで冷却速度105K/秒以上を必要とした従来のアモルファス合金より遥かに厚い。更に、バルク凝固アモルファス合金の冷却速度が上記のように遅くてよいの、鋳造、型成形やプラスチック材料のような熱可塑鋳造などを含めて多種多様な方法で成形できる。
【0054】
図9に示すように、バルク凝固アモルファス合金は弾性歪限界が1.5%以上であり、一般に2.0%程度である。比較として、従来の金属は弾性歪限界が0.6%以下である。前述したように、弾性歪限界は重要なファクターであり、弾性限界が高いと電子装置に対する拘束作用が大きくなる。例えば、電子機器ケースが落下したり打撃を受けたりした場合、周りを取り囲んでいる金属は引き伸ばされ、衝撃を蓄積して弾性的に反応する能力は、収容されている電子部品の永久損傷を防止する重要なファクターとなる。したがって、弾性限界が高いほど、電子機器ケースが内部の電子部品を安全に保持できる度合いが高まる。また、図10に示すように、バルク凝固アモルファス合金は降伏強度が1.6GPa以上であり、これは従来の金属より遥かに高い。材料の降伏強度が高いほど、損傷原因となる力に対して抵抗力が高まる。更に、バルク凝固アモルファス合金は、その固有の原子構造により、CD、DVD、標準ハードディスクドライブなどのデータ蓄積装置のように衝撃に影響され易い電子部品に対して、衝撃や振動を減衰させる作用がある。
【0055】
すなわち、バルク凝固アモルファス合金はバルクアモルファス金属に特有の高降伏強度と高弾性限界との組合せにより、電子部品の収納体金属として非常に有用である。アモルファス合金を用いた具体例については、米国特許第5,288,344号、第5,368,659号、第5,618,359号、第5,735,975号に開示されている(これらの開示内容は全て本発明の参考とした)。
【0056】
以上説明したように、電子機器用フレームとして形成された状態で弾性限界が約1.5%以上、望ましくは約2.0%以上であって、下記の物理特性すなわち約4GPa以上、望ましくは5.5GPa以上の硬さ、約2GPa以上の降伏強度、約10ksi√in以上、望ましくは20ksi√in以上の破壊靭性のうちから選択した少なくとも1つの物理特性を備えているバルク凝固アモルファス合金であれば本発明に用いることができる。
【0057】
また、材料強度の対重量比を高めるために密度は約8.5g/cc以下とすべきである。すなわち、密度に対する降伏強度の比(式(1))は0.2以上が望ましく、密度に対する弾性限界の比(式(2))は0.17以上が望ましい。
【0058】
望ましい実施形態においては、上記特性のうち少なくとも2つと上記望ましい範囲内の弾性限界との組合せが得られるようにバルク凝固アモルファス合金を選定する。最も望ましい実施形態においては、上記特性のうち少なくとも3つと上記望ましい範囲内の弾性限界との組合せが得られるようにバルク凝固アモルファス合金またはバルク凝固アモルファス合金複合材料を選定する。
【0059】
これらの特性は所望の電子機器ケースのタイプに応じて種々に組合せ可能である。例えば、望ましい実施形態においては、電子機器用金属フレームは弾性歪限界が1.5%以上の金属で作製される。別の実施形態では、ケースは弾性歪限界が1.5%以上でありかつ硬さが4GPa以上である金属製である。別の実施形態では、弾性歪限界が1.5%以上でありかつ硬さが5.5GPa以上である金属を用いる。更に別の実施形態では、弾性限歪限界が1.5%以上でありかつ破壊靭性が10ksi√in以上である金属を用いる。もう1つ別の実施形態では、弾性歪限界が1.5%以上でありかつ破壊靭性が20ksi√in以上である金属を用いる。更にもう1つ別の実施形態では、弾性歪限界が1.5%以上でありかつ降伏強度が2GPa以上である金属を用いる。
【0060】
複数の特性を必要とする実施形態においては、電子機器用金属フレームは弾性歪限界1.5%以上、硬さ4GPa以上、破壊靭性10ksi√in以上の金属か、または、弾性歪限界1.5%以上、硬さ5.5GPa以上、破壊靭性20ksi√in以上の金属で作製する。
【0061】
材料の密度を考慮する必要がある実施形態においては、電子機器用金属フレームは弾性限界が1.5%以上であり、密度が6.5g/cc以上または4.5g/cc以上である金属で作製する。
【0062】
要するに、電子機器用ケースには弾性限界1.5%以上の金属材料を用いる。また、望ましい実施形態においては、電子機器に用いる金属材料は硬さが4GPa以上、望ましくは5.5GPa以上である。より望ましい実施形態においては、金属材料は破壊靭性10ksi√in以上、更に望ましくは破壊靭性20ksi√in以上である。更に望ましい実施形態においては、金属材料は密度6.5g/cc以下である。これらはフレームの材質特性であって、金属フレームの構造特性ではない。バルク凝固アモルファス合金を用いることによって初めて本発明のこれら望ましい特性が得られる。
【0063】
また、大部分の電子機器用フレームおよびケースには多種多様なコーナー部や角度付き部分があるため、アモルファス合金材料は長時間にわたって成形性を維持できなくてはならない。図11〜13に示すように、バルクアモルファス合金は融点以上からガラス転移温度に至る温度域で流動性を維持しているので、ガラス転移温度以下で大きな応力を蓄積することが無い。更に、バルクアモルファス合金の凝固収縮は従来金属の凝固収縮より遥かに小さい。上記の特性を備えているため、バルクアモルファス合金は、型成形でも鋳造でも、変形を生ぜずに、しかもコストのかかる成形後処理工程を必要とせずに、電子機器用ケースの非常に複雑な形状に成形できる。
【0064】
すなわち、一実施形態においては、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)で求めたΔTsc(過冷却液体領域)が30℃以上、望ましくは60℃以上、最も望ましくは90℃以上であり、材料がガラス転移範囲付近で長時間成形可能であるバルク凝固アモルファス合金のみを用いる。この実施形態では、「ガラス転移範囲付近」とは、成形操作がガラス転移より高温、ガラス転移点より僅かに低温、またはガラス転移点で、ただし結晶化温度Txより低温で可能である、という意味である。最終的な成形製品がアモルファス合金素材の高い弾性限界を維持できるように、型成形の温度と時間は下記の表1に示した最高温度(℃)に従って制限することが望ましい。
【0065】
【表1】
【0066】
表中、Tmaxは型成形の最高許容温度、Tmax(Pr.)は望ましい最高許容温度、Tmax(M.Pr.)は最も望ましい最高許容温度である。
【0067】
表中、Tg、Tsc、Txは標準DSC(20℃/分で走査)により求めた。Tgはガラス転移の開始温度、Tscは過冷却液体領域の開始温度、Txは結晶化の開始温度である。ΔTscはTxとTscとの差である。全て温度の単位は「℃」である。
【0068】
上述の機械特性、耐食性、成形性を備えたZr−Ti基のバルク凝固アモルファス合金群の1つは、下記分子式で表される。(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)c、ここで原子%でaはほぼ30〜75の範囲内、bはほぼ5〜60の範囲内、cはほぼ0〜50の範囲内である。上記分子式はバルク凝固アモルファス合金の全種類を包含するものではない。例えば、上記バルク凝固アモルファス合金は他の遷移金属例えばNb、Cr、V、Coを総量で約20原子%まで含有できる。1つの典型的なバルク凝固アモルファス合金は分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、原子%でaはほぼ40〜75の範囲内、bはほぼ5〜50の範囲内、cはほぼ5〜50の範囲内で表される。1つの典型的なバルク凝固アモルファス合金組成は、Zr41Ti14Ni10Cu12.5Be22.5である。更に望ましい組成は(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)c、原子%でaはほぼ45〜65の範囲内、bはほぼ7.5〜35の範囲内、cはほぼ10〜37.5の範囲内である。もう1つ、BeZrTi基ではない望ましい合金群は、(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、原子%でaは45〜65の範囲内、bは0〜10の範囲内、cは20〜40の範囲内、dは7.5〜15の範囲内である。更に、上記ZrTi基バルク凝固アモルファス合金は非常に耐食性が高い。
【0069】
もう1つ、本発明に適したバルク凝固アモルファス合金は鉄系金属(Fe、Ni、Co)基の組成である。その例として、米国特許第6,325,868号(A. Inoue et. al., Appl. Phys. Lett., volume 71, p 464(1997))、(Shen et al., Mater. Trans. JIM, volume 42, p 2136(2001))、および日本特許出願:特願2000-126277(特開2001-303218)に開示されている(これらの開示内容は本発明の参考とした)。これら合金の典型的な組成の一例はFe72Al5Ga2P11C5B4である。またもう1つ典型例はFe72Al7Zr10Mo5W2B15である。これらの合金はZr基合金に比べると成形性は低いが、厚さ0.5mm程度以上には成形できるので本発明に用いるには十分である。また、これらの合金の密度は6.5g/cc〜8.5g/ccと一般に大きいが、硬さが7.5GPa〜12GPa以上と高いので高耐摩耗性の必要な用途には特に魅力的である。同様に、これらの材料は弾性歪限界が1.2%以上、降伏強度が2.5GPa〜4GPaである。
【0070】
Zr−Ti基およびFe基のバルク凝固アモルファス合金群は、その特有な物理的特性の組み合わせのため、本発明の電子機器用フレームの作製に適している。
【0071】
図7〜図13に示したように、本発明のバルク凝固アモルファス合金は、永久変形も破断もせずに1.5%以上の歪を発揮でき、かつ/または、約10ksi√in以上、更には約20ksi√in以上の高い破壊靭性を発揮でき、かつ/または、約4GPa以上、更には約5.5GPa以上の高い硬さを発揮できる。従来の材料と比較すると、適したバルクアモルファス合金は降伏強度レベルが約2GPa以上に達し、現状のTi合金のレベルを超えている。
【0072】
一般に、バルクアモルファス合金中に結晶が析出すると物理特性、特に靭性や強度にとって非常に有害なので、結晶質析出物の体積率は極力小さくすることが一般に望ましい。しかし、場合によってはバルクアモルファス合金の製造プロセスで延性のある金属結晶相がその場析出するが、延性析出物はバルクアモルファス合金の特性、特に靭性および延性に良い影響を及ぼすこともある。1つの典型例はC.C. Hays et al., Physical Review letters, vol. 84, p 2901, 2000に開示されている(この開示内容は本発明の参考とした)。
【0073】
以上では純粋なバルクアモルファス合金を説明したが、例えばSiC、ダイアモンド、炭素繊維、モリブデン等の金属などの材料との複合材料として製造することもできる。バルクアモルファスマトリクス複合材料の形成に用いることができる方法は種々あり、溶湯含浸法や熱可塑成形法がある。バルクアモルファス金属の複合材料は米国特許第5,886,254号および第5,567,251号に開示されている(これらの開示内容は全て本発明の参考とした)。バルクアモルファスマトリクス複合材料は炭素繊維等の種々の補強材(強化材)を含有するので、機械特性を個々の要請に合致させることができる。例えば、補強材として炭素繊維を50vol%まで含有させると、密度が3.5g/ccまで低下し、弾性率は300GPaまで増加して、高い比合成率(ヤング率/密度)が得られる。この数値は、炭素繊維やSiC粒子または繊維などの材料をもっと高い体積率で含有させれば更に向上する。更に望ましくは、炭素繊維、SiC粒子、および他の金属例えばモリブデンを組合せたバルクアモルファス合金混合複合材料を作れば、曲げ強度5GPa以上で靭性および高強度を備えかつ3g/cc〜6g/ccという低密度の複合材料が得られる。この実施形態においては、補強材は複合材料の20vol%〜80vol%が望ましい。
【0074】
以上では複合材料の作製方法の詳細は説明しなかったが、補強材の方位および形状は調整可能であり、例えば、金属フレームの長手方向および幅方向について所望特性(剛性など)を最適化するように補強材を配列することができる。また、複合材料の補強材料は、用途に応じて材料特性を調整するのに適した形状すなわち繊維状、粒子状、ウィスカ状およびその他の形状で供給される。
【0075】
バルク凝固アモルファス合金の金属フレームおよび複合材料は、ダイアモンド、TiN、SiCのような耐火高硬度材料を0.010mmまでの厚さに被覆することにより、更に高硬さとして耐久性を高めるように作製できる。バルク凝固アモルファス合金はこれらの薄い被覆の有効な下地となるので引っ掻き疵や欠け脱落に対する保護が向上する。
【0076】
また、金属フレームに意匠的あるいは色彩的な処理を更に施すこともできる。例えば、金属フレームに適当な電気化学的処理例えば陽極酸化(金属の電気化学的酸化)を施すことで青、紫などの所望の色を付与して意匠性を高めることができる。このような陽極酸化被膜自体に更に付加する(すなわち有機・無機の着色、潤滑剤など)ことができるので、陽極酸化処理した金属フレームに更に意匠的なあるいは機能的な処理を施すことができる。この実施形態においては、従来の陽極酸化処理方法を適宜利用できる。
【0077】
以上では本発明の金属フレームへのバルク凝固アモルファス合金の適用に着目したが、金属フレームの他の部位の作製に従来材料を用いることもできる。例えば、フレームの内壁あるいは外壁にポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドコポリマーなどの熱可塑性材料の装飾層や保護層を1層または複数層施すこともできる。また、合成熱硬化性発泡体のフィラーコアを接着フィルムで囲んで金属フレームとその外側の装飾壁または保護壁との接着機能を付与することができる。
【0078】
本発明は、バルク凝固アモルファス合金から電子機器用フレームを作製する方法をも提供する。図14は、本発明のバルク凝固アモルファス合金製品を形成するプロセスを示すフローチャートである。素材の準備工程(工程1)では、型成形の場合には素材はアモルファス状態の固体片であり、鋳造の場合には素材は融点より高温の合金溶湯である。次に、上記溶湯を融点以上の温度から所望形状に鋳造して冷却するか(工程2a)、上記固体の素材をガラス転移温度以上に加熱して所望形状に型成形する(工程2b)。本発明において鋳造方法は特に限定する必要はなく、永久鋳型鋳造法、ダイキャスト法、平坦流鋳造のような連続鋳造法を用いることができる。ダイキャスト法は米国特許第5,711,363号に開示されている(その開示内容は本発明の参考とした)。同様に、種々の型成形法を用いることができ、例えばブローモールディング法(素材の一部分をクランプしておき、クランプしていない領域の両面に圧力差を負荷する)、型成形(素材をダイキャビティー内に押し込む)、レプリカ型の表面形態を転写(リプリカ)する方法などがある。米国特許第6,027,586号、第5,950,704号、第5,896,642号、第5,324,368号、第5,306,463号(各開示内容は本発明の参考とした)に開示された方法は、バルク凝固アモルファス合金のガラス転移特性を活用した型成形品の形成方法である。本発明のアモルファス合金製品の仕上げ(工程3)に後続処理を加えることができるが、バルクアモルファス合金および複合材料の機械特性を得るには、鋳造ままあるいは型成形ままの状態で十分であり、熱処理や機械加工等の後続処理を必要としない。また、一実施形態においては、バルク凝固アモルファス合金および複合材料は2段プロセスによって複雑なニアネットシェープに成形される。この実施形態では、鋳造物および成形体の精度およびニアネットシェープ(最終製品近傍形状)が得られる。
【0079】
一方、金属フレームはバルク凝固アモルファス合金および複合材料のシートからスタンピングおよび/またはダイフォーミングによって作製することもできる。スタンピングおよびダイフォーミングは米国特許第5,342,368号および第5,896,642号(いずれの開示内容も本発明の参考とした)に記載されているようにガラス転移温度の近傍で行なうことが望ましい。金属フレームはバルク凝固アモルファス合金および複合材料を機械加工および切断して作製することもできる。機械加工および切断の望ましい例として、水ジェット、レーザ切断、放電加工がある。また、金属フレームに機械加工、切断、スタンピング、ダイフォーミングにより種々のスロットや穴を開けて、電子機器やフラットパネルディスプレーの作動中に発生する熱に対する冷却効果を高めるようにしても良い。この実施形態では、金属フレームに機械加工、切断、スタンピング、ダイフォーミングにより種々のスロットや穴を開けて、内部音響システムやスピーカーの性能を高めるようにしても良い。最後に、もう1つの実施形態では、金属フレームに機械加工、切断、スタンピング、ダイフォーミングにより種々のスロットや穴を開けて、キーボード、マウス、トラックパッド等の種々のアクセサリ類などの付属品のためのスペースを形成するようにしても良い。
【0080】
実際に用いる形成方法によらず、電子機器用フレームの残部位は従来の製造方法を用いてバルク凝固アモルファス合金の周囲に形成しても良い(工程4)。例えば、本発明による携帯型コンピュータ用の電子機器用フレームの形成方法が米国特許第5,237,486号に開示されている(その開示内容は本発明の参考とした)。
【0081】
図1〜5には比較的簡単な構造の電子機器用フレームを示したが、バルク凝固アモルファス合金および複合材料で作られた構造体を形成するニアネットシェープ法を利用すれば、機械特性を更に向上させた電子機器用フレームの複合材料構造のデザインを洗練させ向上させることができる。
【0082】
以上、特定の実施形態について説明したが、バルク凝固アモルファス合金製電子機器用フレームおよびその製造方法について本発明の範囲内で種々の変形態様が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器用の改良された金属フレームに関し、特に、FeおよびZr基のバルク凝固アモルファス合金およびバルク凝固アモルファス合金複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子装置は機能面で便宜的に2つの部分に分割できる。すなわち、電子装置の本来の機能を持つ電子部分と、この電子部分を機械的に保護する外殻フレームである。最良の保護は、電子装置の作動部品(1個または複数個のマイクロプロセッサ、メモリー装置、ストーレッジ装置など)をフレームで機械的に封入してしまうもので、例えば携帯用コンピュータ、パーソナルデータアシスタント(PDA)、携帯電話などがある。
【0003】
例えば、携帯型パソコン(一般にノート型パソコンと言われる)の場合、上部ケースと下部ケースとから成るハウジングが、画面(スクリーン)、コンピュータ本体、インタフェス装置を支持し収容している。典型的には、このハウジングはコンピュータを構成する種々の部品を一緒に固定するための搭載構造体でもある。ロジックボードやディスクドライブと言った種々の部品が上部ケースや下部ケースにネジなどの締結手段を用いて取り付けられる。電磁干渉(EMI)に対する保護のため、ハウジングの上下両ケース内に遮蔽材料のシートを配置したり、対象部品を金属構造物で取り囲んだりして、周囲の影響から隔離する。典型的なノートパソコンケースなどの携帯電子装置ケースの作製に際しては、全体を軽量化しつつ、装置の処理能力、メモリー容量、耐衝撃性を高める努力がなされている。
【0004】
この目的を達成するために、多数の設計要素が利用されている。まず、電子装置の小型化には、電子部品を小型化し、軽量の薄型パネルディスプレーを組み込んでいる。次に、コンピュータの種々の部品を搭載しかつ衝撃から隔離するための構造体を最小限の寸法とし、そして実際には、典型的のハウジングは埋め込み成形補強材(molded-in reinforcement)、リブ、搭載用ボスを成形体の部品搭載用内側表面に備えている。典型的には、ノートパソコン内の種々の回路基板は、埋め込み成形されたボスやリブに直接ネジ止めされている。最後に、装置の軽量化のために、ほとんどの場合、ハウジングケースは軽量高剛性のプラスチックや複合材料で作製される。
【0005】
上記のような携帯コンピュータ製造法は実用性が高いが、なお改良の余地がある。例えば、材料の観点では、プラスチックや複合材料は、軽量であるし、大部分の電子機器ケースに要求される複雑な形状への成形も容易であるが、金属に比べて構造的な強度や耐久性が一般に不十分である。また、金属ではなくプラスチックや複合材料を用いた場合、ケースと電子部品との間に別個のEMI保護層を設けなくてはならない。
【0006】
しかし、ケース全体を金属で作製すると重量やコストが増加して、軍事用途のような特殊な場合以外は実用的でない。例えば、プラスチックケースに伴う強度と耐久性の問題を解消するために、携帯コンピュータの上下ケースをダイキャスト金属で作製する試みが行なわれている。これにより確かに強度および耐久性は高まるが、重量が携帯には適さず、コストも高い。また、種々の補助部材をシート金属で作製した例もあるが、期待したような強度向上は得られていない。その上、従来の金属は大部分が成形性不足である。
【0007】
近年、マグネシウム合金の軽量と高強度に着目した研究が進められている。しかし、マグネシウム合金は従来からあるAl基合金などと比べて塑性加工性が非常に劣る。そのため現状では、マグネシウム合金は通常はダイキャストで製造されている。しかし、マグネシウム合金は薄肉製品のダイキャストが極めて難しいため、まだ比較的肉厚の製品に限られている。その上、マグネシウム合金鋳物には、鋳物にとって致命的とも言える気孔などの鋳造欠陥や酸化物系などの介在物が含まれて、これが表面に露出することがある。鋳造欠陥や介在物は、マグネシウム合金鋳物の機械強度を劣化させるし、表面に露出していると耐食性や外観に悪影響を及ぼす。
【0008】
また、マグネシウム合金鍛造材やその他の混成結晶性合金材料は耐食性が向上するかもしれないし、軽量フレームでかつ従来の金属と同等の機械強度を持つかもしれないが、これらの金属では弾性限界(材料が塑性変形しないで弾性変形できる能力)について全く考慮が払われて来なかった。結果として、一般に電子機器用のケースは弾性限界が非常に低い金属で作られており、応力によるエネルギーを蓄える能力が低く、変形要因となる応力が負荷されたときに永久変形を起こし易い。
【0009】
前述の背景から、携帯型電子機器の重量や製造コストを上昇させずに、構造体としての堅牢性や耐久性を高めた電子機器用ケースが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,288,344号
【特許文献2】米国特許第5,368,659号
【特許文献3】米国特許第5,618,359号
【特許文献4】米国特許第5,735,975号
【特許文献5】米国特許第6,325,868号
【特許文献6】特開2001−303218号公報
【特許文献7】米国特許第6,027,586号
【特許文献8】米国特許第5,950,704号
【特許文献9】米国特許第5,896,642号
【特許文献10】米国特許第5,324,368号
【特許文献11】米国特許第5,306,463号
【特許文献12】米国特許第5,342,368号
【特許文献13】米国特許第5,896,642号
【特許文献14】米国特許第5,237,486号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、約1.5%以上、望ましくは焼く2.0%以上の弾性限界を含めて物理的機械的性質を改善した電子機器用金属フレームであり、望ましくは、Zr/TiまたはFe基のバルク凝固アモルファス合金およびバルク凝固アモルファス合金複合材料で少なくとも一部が作製されている高成形性の金属フレームである。
【0012】
一実施形態においては、バルク凝固アモルファス合金は、それぞれ原子%でa=30〜75、b=5〜60、c=0〜50である分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cで表される合金群から選択される。もう1つの実施形態においては、他の遷移金属、望ましくはNb、Cr、V、Coを20原子%以下含有してよい。
【0013】
別の実施形態においては、合金群は原子%でa=40〜75、b=5〜50、c=5〜50である分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表される。別の実施形態にいては、アモルファス合金の複合材料を用いて所望の剛性、耐衝撃性、熱伝導性をフレームに付与する。この実施形態においては、合成を高めるための補強材として、カーボンの繊維またはプリフォーム、SiCの繊維またはプリフォームを用いることができる。この実施形態においては、補強材は複合材料体積の20%〜80%であることが望ましい。別の実施形態においては、補強材の形状および方位を調整することにより、例えば金属フレームの長さ方向と幅方向について所望の性質(例えば弾性率)にすることができる。
【0014】
別の実施形態においては、フレームの形状の調整により、剛性と柔軟性の組合せを向上できる。この実施形態においては、ハニカム状、波状などの望みの形状を用いることができる。
【0015】
別の実施形態においては、金属フレームはプラスチック、アルミニウムなどのような他の材料で作られた部分を備えていても良い。
【0016】
別の実施形態においては、アモルファス合金は硬さの値が約4GPa以上、望ましくは5.5GPa以上となるように選択する。
【0017】
別の実施形態においては、アモルファス合金は降伏強度が約2GPa以上となるように選択する。
【0018】
別の実施形態においては、アモルファス合金は破壊靭性が約10ksi√in(ksi・ksi1/2)以上、望ましくは20ksi√in(ksi・ksi1/2)以上となるように選択する。
【0019】
別の実施形態においては、アモルファス合金は密度が6.5g/cc以下、望ましくは4.5g/cc以下となるように選択する。
【0020】
別の実施形態においては、アモルファス合金は少なくとも、弾性限界と、硬さ、降伏強度、破壊靭性、密度のうちの1種類との2種類の性質が前記の範囲内となるように選択する。
【0021】
別の実施形態においては、アモルファス合金は少なくとも、弾性限界と、硬さ、降伏強度、破壊靭性、密度のうちの2種類との3種類の性質が前記の範囲内となるように選択する。
【0022】
別の実施形態においては、別の実施形態においては、本発明の金属フレームは金属フレームアセンブリを構成する少なくとも1つの部分を含む。フレームが2以上の部分で構成される実施形態においては、1つの部分が電子機器を収容し、もう1つの部分がフラットパネルディスプレーを収容する。この実施形態においては、金属フレームの各部分はボルト締結、クランプ締結、接着、リベット留め、溶接などの種々の接合方法により、個々の収容物を固定する。
【0023】
別の実施形態においては、アモルファス合金フレームは、衝撃や振動を減衰させるためにリブあるいは支持プラットフォームのような構造を備えるように設計することにより、ハードディスクドライブのような影響を受け易い部品を保護する。
【0024】
別の実施形態においては、アモルファス合金および複合材料のフレーム設計を例えば1ミクロン以下の寸法で高度化する(機能的、人間工学的、意匠的に精緻に設計する)。
【0025】
別の実施形態においては、本発明はPDA、携帯電話、ノート型コンピュータ等の携帯用電子装置に特化して設計したフレームである。
【0026】
別の実施形態においては、本発明はアモルファス合金の電子装置用フレームの製造方法である。この実施形態においては、アモルファス合金をそのガラス転移温度付近で鋳造あるいは成形することにより、細部まで再現させ、複雑な形状の金属ケースを実現する。
【0027】
別の実施形態においては、金属フレームをアモルファス合金および複合材料のシートからスタンピングおよび/または型成形により作製する。この実施形態においては、スタンピングおよび/または型成形はガラス転移温度付近で行なうことが望ましい。別の実施形態においては、金属フレームはアモルファス合金および複合材料のシートから例えば水ジェット、レーザ切断、放電加工のような機械加工や切断によって作製する。金属フレームは金属鋳型鋳造や金属含浸法(アモルファス合金複合材料の場合)などの種々の形態の鋳造法によっても作製できる。
【0028】
別の実施形態においては、金属フレームは機械加工、切断、スタンピング、型成形により種々のスロットと孔を具備し、電子機器、フラットパネルディスプレーの作動時に発生する熱の冷却効果を高める。この実施形態においては、金属フレームが機械加工、切断、スタンピング、型成形により種々のスロットと孔を具備することにより、内部音響システムおよびスピーカーのための性能も高められる。最後に、金属フレームが機械加工、切断、スタンピング、型成形により種々のスロットと孔を具備することにより、キーボード、マウス、トラックパッドなどの種々のアクセサリやアタッチメントのためのスペースができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態によるキーボードフレームの模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態によるフラットパネルスクリーンフレームの模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるキーボード/フラットパネルディスプレー組合せフレームの模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるフラットパネルスクリーンフレームの模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態によるヒンジ連結フレームの模式図である。
【図6】図6は、本発明のアモルファス材料の性質を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図8】図8は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図9】図9は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図10】図10は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図11】図11は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図12】図12は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図13】図13は、本発明のアモルファス材料と従来の材料の性質を比較して示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の一実施形態によりフレームを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、弾性限界が約1.5%以上、望ましくは約2.0%以上の材料で少なくとも一部が作られていて物理的機械的な性質を改良してある金属フレームに関し、望ましくは、Zr−TiまたはFe基のバルク凝固アモルファス合金またはバルク凝固アモルファス合金複合材料のような成形性の優れた材料で作られたフレームに関する。本明細書中ではこのフレームを電子機器用フレームまたはケース、あるいはバルク凝固アモルファスフレームまたはケースと呼称する。
【0031】
本発明の電子機器用フレームの代表例を図1〜5に示す。図示したように、金属フレーム10は、電子装置の部品40を収容する収容器20を壁部30が構成し、収容した部品40の操作に用いる開口部50を備えている。しかし、本発明の金属フレームは図1〜5に示したような基本的な部品を備えているが、ケース自体と、収容器および開口部の個数、寸法、形状と、収容されている電子機器部品の性質、形状、寸法とは、電子装置の性質に応じて多種多様である。例えば、本発明の金属フレームは、例えばPDAやノート型コンピュータのようなデータ蓄積装置や機械操作装置、ディジタルカメラやディジタルビデオカメラのようなマルチメディア記録装置、CDプレーヤーやDVDプレーヤーのようなマルチメディアプレーヤー、ポケベルや携帯電話のような伝達装置などの電子装置に用いることができる。
【0032】
図1〜4は、種々の電子装置用に設計した金属フレームの実例である。例えば、図1のケース10は、キーボード40のようなユーザーインタフェス用の単一の開口部50を備えていて、設置型または携帯型のコンピュータの遠隔制御装置や部品としてのスタンドアローン装置といて用いられる。図2のケース10は、フラットパネルディスプレー40用とユーザーインタフェスまたはアクセスポート40’用に2つの開口部50を備えていて、DVDプレーヤー用や携帯型コンピュータの部品として用いられる。図3のケース10は携帯電話用またはPDAプレーヤー用で、2つの開口部50は1つがフラットパネルディスプレー40用でもう1つが1セットの制御ボタン40’用である。また、図4のケース10は、大きな単一の開口部50がフラットパネルテレビジョン用等のヴューパネルとして用いられる。
【0033】
図示したように、いずれの金属フレームも、種々の寸法・形状の収容器20と、種々の寸法・形状の壁部30と、種々の寸法・形状の電子部品40と、種々の寸法・形状の開口部50とを備えている。そして、図示の装置は開口部が2つ以下であるが、開口部の個数と位置は用途に依存するだけである。例えば、冷却用、保守用、種々の寸法・形状・個数のアクセサリ用の開口部を付加できる。
【0034】
図1〜4のケースおよびフレームは、電子装置の作動部品を一体構造に収容してあるが、分離型または取付型の別体構造に収容することもできる。図5に示したのはその一例で、2つの部分を蝶番で連結した構造のケースである。このケースの一方の部分60はフラットパネルディスプレーを収容し、もう一方の部分70はユーザーインタフェス用または他の部品用である。
【0035】
上記各ケースの組み立て工程の詳細は省略するが、フレームが2つ以上の部分から構成される場合(例えば図5の例)は、各部分同士の接合と内容物の固定は、ボルト締結、クランプ締結、接着、リベット締結、溶接などで行なうことができる。また、合金フレームがリブ、支持プラットフォームなどの構造を備えても良い。
【0036】
上記各図ではケースを前から見た斜視図のみで示したが、いずれの場合も金属フレームは反対側の端部や背面もカバーしている。また、5つの例のみを図示したが、本発明の金属フレームは、電子装置の電子部品を収容・保護するのに適した種々の形状・寸法とすることができる。例えば、携帯型コンピュータ用の金属フレームが米国特許第5,237,486号および第4,571,456号に開示されている(これらの開示内容は全て本発明の参考とした)。
【0037】
図1〜5に示したケースおよびフレームは電子部品を収納する主収容器として設計されているが、これらの他に、本発明の電子機器フレームは、既に全体が収納された状態になっている電子装置を更に収納するのにも用いることができる。例えば、PDA、携帯電話、ノート型コンピュータのキャリングケースとして用いて装置を二重に保護することもできる。
【0038】
以上、本発明の電子機器フレームの構造、形状、機能に着目して説明した。しかし、発明の背景の項で述べたように、電子機器フレームの主な問題点はケースの耐久性とケース全体の重量との兼ね合いである。電子装置用のケースおよびフレームは、単位重要当りの耐久性がある程度以上必要であり、すなわちフレームは十分な保護機能を発揮しながら十分に軽量でなくてはならない。
【0039】
ケースの耐久性を設定するに当って、フレーム材料を選定するための物理的なパラメータが多数ある。従来の電子機器フレームおよびケースの場合、技術者が材料選定で第一に考慮したのは、極限引張強さ(σUTS)すなわち材料が破断するまでに負荷される応力の最大値ができるだけ大きいと、そして弾性係数(荷重形態によってヤング率または曲げ弾性率)ができるだけ大きいことであった。更に、軽量フレームを作るための材料選定として、比極限引張強さ(密度に対する極限引張強さの比)ができるだけ大きいこと、そして、比弾性率(密度に対する弾性率の比)ができるだけ大きいことであった。これらの材料パラメータの主たる意味は、破断までに全体として負担できる最大荷重とフレーム全体の変形量である。しかし、破断までの負担可能な最大荷重およびフレーム全体としての変形量は個々のフレーム設計によって大きく変わり得る。
【0040】
例えば、同一材料・所定重量での変形を最小化するには中実棒よりもI形梁の方が有効である。したがって、必要な複雑形状に材料の成形・組み立てが可能なら、このような複雑な設計によって材料の構造的な短所を直ちに効果的に救済できる。
【0041】
これらの性質は、フレームの負担できる最大荷重と、フレームが撓んだり変形したする能力の指標にはなるが、フレームの耐久性を十分に表すものではないし、押し付け、押し込み、突き刺し等の物理的外部作用による応力に対する部品保護の能力を十分に表すものでもない。また、これらのパラメータは、変形を生じさせる応力等による変形に対するケースの反応を十分に表すものでもない。もう1つ重要なのは、上述の設計的対処は選定した材料の物理的な欠点をある程度は補完できるが、耐久性の不足や、物理的外部作用に対する保護の不足を救済することはできない、という点である。
【0042】
上述のような変形に対するケースの反応を説明するには、用いた材料の弾性限界(εf)を考慮する必要がある。弾性限界とは、材料が永久変形しないで物理的に変形できる量である。降伏強度と弾性限界との関係を図6の応力/歪曲線に模式的に示す。
【0043】
電子機器用ケースの製造に対する材料の適性を決める際の弾性限界の重要性は、図7に最もよく表される。この図では、電子機器用ケースの製造に高級材料として頻繁に用いられている従来のTi合金のような高硬さ軽量材料と、本発明のバルク凝固材料とについて、応力/歪曲線を対比して示す。図示したように、従来材料は降伏点が比較的高いが、弾性限界が低ければ、軽微な変形も永久変形になる。これに対し、本発明のケースは降伏強度が高く、弾性変形量が大きくなっている。
【0044】
本発明によるケースの耐久性向上に果たす弾性限界の重要性は、図8の模式的曲線同士の比較により明示される。すなわち、図8に描いた2つの曲線下の面積は、落下とか打撃のような応力のエネルギーを弾性的に(永久損傷なしで)蓄積する能力を2種類の仮想材料について示したものである。図示のように、弾性限界が高い材料を選定すると、等しい降伏強度を持つ従来材料に比べて、遥かに大きいエネルギーを蓄積する(弾性変形しつつ)能力がある。そのため、本発明によって作製したケースは、弾性限界が1.5%以上の材料で形成され、それにより、使用中の永久変形や完全破壊し難くなっている。
【0045】
上述の性質は全て、材料の密度(ρ)すなわち体積当りの重量を考慮することにより更に明示できる。例えば、重量に対する降伏強度または弾性限界の比を用いて、本発明の電子機器用フレームとしてのアモルファス合金材料の適性を決めることができる。1つの有用な評価方法は密度に対する弾性限界の比であり、下式で定義される。
【0046】
εf/ρ・・・・・・・・(1)
また、密度に対する降伏強度の比も上記の比と組み合わせて用いることができ、下式で表される。
【0047】
σy・・・・・・・・・・(2)
弾性限界比を用いて、望ましくは上記2つの比の組合せを用いて、適した材料の範囲を決定できる。
【0048】
上記の望ましい機械的性質に加えて、電子機器用フレーム、特に使用環境・操作条件共に厳しい条件下に置かれる携帯型電子装置にとっては耐食性が非常に重要である。
【0049】
最後に、発明の背景の項で述べたように、金属製の電子機器フレームに関して次に重要な問題は、必要な複雑形状の物を効率良く製造することである。複雑形状物を製造するには、型成形と鋳造が最良であり、他の方法、例えば鍛造で製造した場合などは、後処理機械が必要になる。しかし、Al基合金等の従来材料の大部分は型成形性も鋳造性も低い。そのためケースおよびフレーム用に選択される材料は細密成形性を持たなくてはならない。
【0050】
材料の成形性は種々の方法で評価でき、例えば、ダイキャビティで再現可能な最小寸法、成形に要する成形温度や歪速度、最終製品の許容寸法公差で評価できる。
【0051】
例えば、本発明の電子機器用ケースには細密寸法が必要なので、細密成形性を持つ材料だけが利用可能である。例えば、本発明の一実施形態においては、本発明の電子機器用フレームの形成に適しているのは、100ミクロンオーダで表面形態(模様、粗さ)を再現できる材料のみである。
【0052】
適切な機械的耐久性、耐食性、成形性を得るために、本発明はバルク凝固アモルファス合金で作られた電子機器用フレームであり、特にZr−Ti基またはFe基のバルク凝固アモルファス合金で作られた電子機器フレームである。
【0053】
バルク凝固アモルファス合金とは、500K/秒以下の遅い速度で冷却しても実質的にアモルファス構造が得られる合金群を指す。このようなバルク凝固アモルファス合金は厚さ0.5mm以上に製造できるものであり、これは最大鋳造可能厚さ0.020mmで冷却速度105K/秒以上を必要とした従来のアモルファス合金より遥かに厚い。更に、バルク凝固アモルファス合金の冷却速度が上記のように遅くてよいの、鋳造、型成形やプラスチック材料のような熱可塑鋳造などを含めて多種多様な方法で成形できる。
【0054】
図9に示すように、バルク凝固アモルファス合金は弾性歪限界が1.5%以上であり、一般に2.0%程度である。比較として、従来の金属は弾性歪限界が0.6%以下である。前述したように、弾性歪限界は重要なファクターであり、弾性限界が高いと電子装置に対する拘束作用が大きくなる。例えば、電子機器ケースが落下したり打撃を受けたりした場合、周りを取り囲んでいる金属は引き伸ばされ、衝撃を蓄積して弾性的に反応する能力は、収容されている電子部品の永久損傷を防止する重要なファクターとなる。したがって、弾性限界が高いほど、電子機器ケースが内部の電子部品を安全に保持できる度合いが高まる。また、図10に示すように、バルク凝固アモルファス合金は降伏強度が1.6GPa以上であり、これは従来の金属より遥かに高い。材料の降伏強度が高いほど、損傷原因となる力に対して抵抗力が高まる。更に、バルク凝固アモルファス合金は、その固有の原子構造により、CD、DVD、標準ハードディスクドライブなどのデータ蓄積装置のように衝撃に影響され易い電子部品に対して、衝撃や振動を減衰させる作用がある。
【0055】
すなわち、バルク凝固アモルファス合金はバルクアモルファス金属に特有の高降伏強度と高弾性限界との組合せにより、電子部品の収納体金属として非常に有用である。アモルファス合金を用いた具体例については、米国特許第5,288,344号、第5,368,659号、第5,618,359号、第5,735,975号に開示されている(これらの開示内容は全て本発明の参考とした)。
【0056】
以上説明したように、電子機器用フレームとして形成された状態で弾性限界が約1.5%以上、望ましくは約2.0%以上であって、下記の物理特性すなわち約4GPa以上、望ましくは5.5GPa以上の硬さ、約2GPa以上の降伏強度、約10ksi√in以上、望ましくは20ksi√in以上の破壊靭性のうちから選択した少なくとも1つの物理特性を備えているバルク凝固アモルファス合金であれば本発明に用いることができる。
【0057】
また、材料強度の対重量比を高めるために密度は約8.5g/cc以下とすべきである。すなわち、密度に対する降伏強度の比(式(1))は0.2以上が望ましく、密度に対する弾性限界の比(式(2))は0.17以上が望ましい。
【0058】
望ましい実施形態においては、上記特性のうち少なくとも2つと上記望ましい範囲内の弾性限界との組合せが得られるようにバルク凝固アモルファス合金を選定する。最も望ましい実施形態においては、上記特性のうち少なくとも3つと上記望ましい範囲内の弾性限界との組合せが得られるようにバルク凝固アモルファス合金またはバルク凝固アモルファス合金複合材料を選定する。
【0059】
これらの特性は所望の電子機器ケースのタイプに応じて種々に組合せ可能である。例えば、望ましい実施形態においては、電子機器用金属フレームは弾性歪限界が1.5%以上の金属で作製される。別の実施形態では、ケースは弾性歪限界が1.5%以上でありかつ硬さが4GPa以上である金属製である。別の実施形態では、弾性歪限界が1.5%以上でありかつ硬さが5.5GPa以上である金属を用いる。更に別の実施形態では、弾性限歪限界が1.5%以上でありかつ破壊靭性が10ksi√in以上である金属を用いる。もう1つ別の実施形態では、弾性歪限界が1.5%以上でありかつ破壊靭性が20ksi√in以上である金属を用いる。更にもう1つ別の実施形態では、弾性歪限界が1.5%以上でありかつ降伏強度が2GPa以上である金属を用いる。
【0060】
複数の特性を必要とする実施形態においては、電子機器用金属フレームは弾性歪限界1.5%以上、硬さ4GPa以上、破壊靭性10ksi√in以上の金属か、または、弾性歪限界1.5%以上、硬さ5.5GPa以上、破壊靭性20ksi√in以上の金属で作製する。
【0061】
材料の密度を考慮する必要がある実施形態においては、電子機器用金属フレームは弾性限界が1.5%以上であり、密度が6.5g/cc以上または4.5g/cc以上である金属で作製する。
【0062】
要するに、電子機器用ケースには弾性限界1.5%以上の金属材料を用いる。また、望ましい実施形態においては、電子機器に用いる金属材料は硬さが4GPa以上、望ましくは5.5GPa以上である。より望ましい実施形態においては、金属材料は破壊靭性10ksi√in以上、更に望ましくは破壊靭性20ksi√in以上である。更に望ましい実施形態においては、金属材料は密度6.5g/cc以下である。これらはフレームの材質特性であって、金属フレームの構造特性ではない。バルク凝固アモルファス合金を用いることによって初めて本発明のこれら望ましい特性が得られる。
【0063】
また、大部分の電子機器用フレームおよびケースには多種多様なコーナー部や角度付き部分があるため、アモルファス合金材料は長時間にわたって成形性を維持できなくてはならない。図11〜13に示すように、バルクアモルファス合金は融点以上からガラス転移温度に至る温度域で流動性を維持しているので、ガラス転移温度以下で大きな応力を蓄積することが無い。更に、バルクアモルファス合金の凝固収縮は従来金属の凝固収縮より遥かに小さい。上記の特性を備えているため、バルクアモルファス合金は、型成形でも鋳造でも、変形を生ぜずに、しかもコストのかかる成形後処理工程を必要とせずに、電子機器用ケースの非常に複雑な形状に成形できる。
【0064】
すなわち、一実施形態においては、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)で求めたΔTsc(過冷却液体領域)が30℃以上、望ましくは60℃以上、最も望ましくは90℃以上であり、材料がガラス転移範囲付近で長時間成形可能であるバルク凝固アモルファス合金のみを用いる。この実施形態では、「ガラス転移範囲付近」とは、成形操作がガラス転移より高温、ガラス転移点より僅かに低温、またはガラス転移点で、ただし結晶化温度Txより低温で可能である、という意味である。最終的な成形製品がアモルファス合金素材の高い弾性限界を維持できるように、型成形の温度と時間は下記の表1に示した最高温度(℃)に従って制限することが望ましい。
【0065】
【表1】
【0066】
表中、Tmaxは型成形の最高許容温度、Tmax(Pr.)は望ましい最高許容温度、Tmax(M.Pr.)は最も望ましい最高許容温度である。
【0067】
表中、Tg、Tsc、Txは標準DSC(20℃/分で走査)により求めた。Tgはガラス転移の開始温度、Tscは過冷却液体領域の開始温度、Txは結晶化の開始温度である。ΔTscはTxとTscとの差である。全て温度の単位は「℃」である。
【0068】
上述の機械特性、耐食性、成形性を備えたZr−Ti基のバルク凝固アモルファス合金群の1つは、下記分子式で表される。(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)c、ここで原子%でaはほぼ30〜75の範囲内、bはほぼ5〜60の範囲内、cはほぼ0〜50の範囲内である。上記分子式はバルク凝固アモルファス合金の全種類を包含するものではない。例えば、上記バルク凝固アモルファス合金は他の遷移金属例えばNb、Cr、V、Coを総量で約20原子%まで含有できる。1つの典型的なバルク凝固アモルファス合金は分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、原子%でaはほぼ40〜75の範囲内、bはほぼ5〜50の範囲内、cはほぼ5〜50の範囲内で表される。1つの典型的なバルク凝固アモルファス合金組成は、Zr41Ti14Ni10Cu12.5Be22.5である。更に望ましい組成は(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)c、原子%でaはほぼ45〜65の範囲内、bはほぼ7.5〜35の範囲内、cはほぼ10〜37.5の範囲内である。もう1つ、BeZrTi基ではない望ましい合金群は、(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、原子%でaは45〜65の範囲内、bは0〜10の範囲内、cは20〜40の範囲内、dは7.5〜15の範囲内である。更に、上記ZrTi基バルク凝固アモルファス合金は非常に耐食性が高い。
【0069】
もう1つ、本発明に適したバルク凝固アモルファス合金は鉄系金属(Fe、Ni、Co)基の組成である。その例として、米国特許第6,325,868号(A. Inoue et. al., Appl. Phys. Lett., volume 71, p 464(1997))、(Shen et al., Mater. Trans. JIM, volume 42, p 2136(2001))、および日本特許出願:特願2000-126277(特開2001-303218)に開示されている(これらの開示内容は本発明の参考とした)。これら合金の典型的な組成の一例はFe72Al5Ga2P11C5B4である。またもう1つ典型例はFe72Al7Zr10Mo5W2B15である。これらの合金はZr基合金に比べると成形性は低いが、厚さ0.5mm程度以上には成形できるので本発明に用いるには十分である。また、これらの合金の密度は6.5g/cc〜8.5g/ccと一般に大きいが、硬さが7.5GPa〜12GPa以上と高いので高耐摩耗性の必要な用途には特に魅力的である。同様に、これらの材料は弾性歪限界が1.2%以上、降伏強度が2.5GPa〜4GPaである。
【0070】
Zr−Ti基およびFe基のバルク凝固アモルファス合金群は、その特有な物理的特性の組み合わせのため、本発明の電子機器用フレームの作製に適している。
【0071】
図7〜図13に示したように、本発明のバルク凝固アモルファス合金は、永久変形も破断もせずに1.5%以上の歪を発揮でき、かつ/または、約10ksi√in以上、更には約20ksi√in以上の高い破壊靭性を発揮でき、かつ/または、約4GPa以上、更には約5.5GPa以上の高い硬さを発揮できる。従来の材料と比較すると、適したバルクアモルファス合金は降伏強度レベルが約2GPa以上に達し、現状のTi合金のレベルを超えている。
【0072】
一般に、バルクアモルファス合金中に結晶が析出すると物理特性、特に靭性や強度にとって非常に有害なので、結晶質析出物の体積率は極力小さくすることが一般に望ましい。しかし、場合によってはバルクアモルファス合金の製造プロセスで延性のある金属結晶相がその場析出するが、延性析出物はバルクアモルファス合金の特性、特に靭性および延性に良い影響を及ぼすこともある。1つの典型例はC.C. Hays et al., Physical Review letters, vol. 84, p 2901, 2000に開示されている(この開示内容は本発明の参考とした)。
【0073】
以上では純粋なバルクアモルファス合金を説明したが、例えばSiC、ダイアモンド、炭素繊維、モリブデン等の金属などの材料との複合材料として製造することもできる。バルクアモルファスマトリクス複合材料の形成に用いることができる方法は種々あり、溶湯含浸法や熱可塑成形法がある。バルクアモルファス金属の複合材料は米国特許第5,886,254号および第5,567,251号に開示されている(これらの開示内容は全て本発明の参考とした)。バルクアモルファスマトリクス複合材料は炭素繊維等の種々の補強材(強化材)を含有するので、機械特性を個々の要請に合致させることができる。例えば、補強材として炭素繊維を50vol%まで含有させると、密度が3.5g/ccまで低下し、弾性率は300GPaまで増加して、高い比合成率(ヤング率/密度)が得られる。この数値は、炭素繊維やSiC粒子または繊維などの材料をもっと高い体積率で含有させれば更に向上する。更に望ましくは、炭素繊維、SiC粒子、および他の金属例えばモリブデンを組合せたバルクアモルファス合金混合複合材料を作れば、曲げ強度5GPa以上で靭性および高強度を備えかつ3g/cc〜6g/ccという低密度の複合材料が得られる。この実施形態においては、補強材は複合材料の20vol%〜80vol%が望ましい。
【0074】
以上では複合材料の作製方法の詳細は説明しなかったが、補強材の方位および形状は調整可能であり、例えば、金属フレームの長手方向および幅方向について所望特性(剛性など)を最適化するように補強材を配列することができる。また、複合材料の補強材料は、用途に応じて材料特性を調整するのに適した形状すなわち繊維状、粒子状、ウィスカ状およびその他の形状で供給される。
【0075】
バルク凝固アモルファス合金の金属フレームおよび複合材料は、ダイアモンド、TiN、SiCのような耐火高硬度材料を0.010mmまでの厚さに被覆することにより、更に高硬さとして耐久性を高めるように作製できる。バルク凝固アモルファス合金はこれらの薄い被覆の有効な下地となるので引っ掻き疵や欠け脱落に対する保護が向上する。
【0076】
また、金属フレームに意匠的あるいは色彩的な処理を更に施すこともできる。例えば、金属フレームに適当な電気化学的処理例えば陽極酸化(金属の電気化学的酸化)を施すことで青、紫などの所望の色を付与して意匠性を高めることができる。このような陽極酸化被膜自体に更に付加する(すなわち有機・無機の着色、潤滑剤など)ことができるので、陽極酸化処理した金属フレームに更に意匠的なあるいは機能的な処理を施すことができる。この実施形態においては、従来の陽極酸化処理方法を適宜利用できる。
【0077】
以上では本発明の金属フレームへのバルク凝固アモルファス合金の適用に着目したが、金属フレームの他の部位の作製に従来材料を用いることもできる。例えば、フレームの内壁あるいは外壁にポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドコポリマーなどの熱可塑性材料の装飾層や保護層を1層または複数層施すこともできる。また、合成熱硬化性発泡体のフィラーコアを接着フィルムで囲んで金属フレームとその外側の装飾壁または保護壁との接着機能を付与することができる。
【0078】
本発明は、バルク凝固アモルファス合金から電子機器用フレームを作製する方法をも提供する。図14は、本発明のバルク凝固アモルファス合金製品を形成するプロセスを示すフローチャートである。素材の準備工程(工程1)では、型成形の場合には素材はアモルファス状態の固体片であり、鋳造の場合には素材は融点より高温の合金溶湯である。次に、上記溶湯を融点以上の温度から所望形状に鋳造して冷却するか(工程2a)、上記固体の素材をガラス転移温度以上に加熱して所望形状に型成形する(工程2b)。本発明において鋳造方法は特に限定する必要はなく、永久鋳型鋳造法、ダイキャスト法、平坦流鋳造のような連続鋳造法を用いることができる。ダイキャスト法は米国特許第5,711,363号に開示されている(その開示内容は本発明の参考とした)。同様に、種々の型成形法を用いることができ、例えばブローモールディング法(素材の一部分をクランプしておき、クランプしていない領域の両面に圧力差を負荷する)、型成形(素材をダイキャビティー内に押し込む)、レプリカ型の表面形態を転写(リプリカ)する方法などがある。米国特許第6,027,586号、第5,950,704号、第5,896,642号、第5,324,368号、第5,306,463号(各開示内容は本発明の参考とした)に開示された方法は、バルク凝固アモルファス合金のガラス転移特性を活用した型成形品の形成方法である。本発明のアモルファス合金製品の仕上げ(工程3)に後続処理を加えることができるが、バルクアモルファス合金および複合材料の機械特性を得るには、鋳造ままあるいは型成形ままの状態で十分であり、熱処理や機械加工等の後続処理を必要としない。また、一実施形態においては、バルク凝固アモルファス合金および複合材料は2段プロセスによって複雑なニアネットシェープに成形される。この実施形態では、鋳造物および成形体の精度およびニアネットシェープ(最終製品近傍形状)が得られる。
【0079】
一方、金属フレームはバルク凝固アモルファス合金および複合材料のシートからスタンピングおよび/またはダイフォーミングによって作製することもできる。スタンピングおよびダイフォーミングは米国特許第5,342,368号および第5,896,642号(いずれの開示内容も本発明の参考とした)に記載されているようにガラス転移温度の近傍で行なうことが望ましい。金属フレームはバルク凝固アモルファス合金および複合材料を機械加工および切断して作製することもできる。機械加工および切断の望ましい例として、水ジェット、レーザ切断、放電加工がある。また、金属フレームに機械加工、切断、スタンピング、ダイフォーミングにより種々のスロットや穴を開けて、電子機器やフラットパネルディスプレーの作動中に発生する熱に対する冷却効果を高めるようにしても良い。この実施形態では、金属フレームに機械加工、切断、スタンピング、ダイフォーミングにより種々のスロットや穴を開けて、内部音響システムやスピーカーの性能を高めるようにしても良い。最後に、もう1つの実施形態では、金属フレームに機械加工、切断、スタンピング、ダイフォーミングにより種々のスロットや穴を開けて、キーボード、マウス、トラックパッド等の種々のアクセサリ類などの付属品のためのスペースを形成するようにしても良い。
【0080】
実際に用いる形成方法によらず、電子機器用フレームの残部位は従来の製造方法を用いてバルク凝固アモルファス合金の周囲に形成しても良い(工程4)。例えば、本発明による携帯型コンピュータ用の電子機器用フレームの形成方法が米国特許第5,237,486号に開示されている(その開示内容は本発明の参考とした)。
【0081】
図1〜5には比較的簡単な構造の電子機器用フレームを示したが、バルク凝固アモルファス合金および複合材料で作られた構造体を形成するニアネットシェープ法を利用すれば、機械特性を更に向上させた電子機器用フレームの複合材料構造のデザインを洗練させ向上させることができる。
【0082】
以上、特定の実施形態について説明したが、バルク凝固アモルファス合金製電子機器用フレームおよびその製造方法について本発明の範囲内で種々の変形態様が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器用金属フレームであって、
収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、
前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部がバルク凝固アモルファス合金で形成されており、
前記バルク凝固アモルファス合金は弾性限界が約1.5%以上である、ことを特徴とする電子機器用金属フレーム。
【請求項2】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cで表され、a=約30〜75原子%、b=約5〜60原子%、c=約0〜50原子%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項3】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、a=約40〜75原子%、b=約5〜60原子%、c=約0〜50原子%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項4】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、a=約40〜65原子%、b=約0〜10原子%、c=約20〜30原子%、d=7.5〜15原子%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項5】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式Zr41Ti14Ni10Cu12.5Be22.5で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項6】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe72Al5Ga2P11C6B4およびFe72Al7Zr10Mo5W2B15から成る群から選択された分子式で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項7】
前記バルク凝固アモルファス合金は、破壊靭性が約10ksi√in以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項8】
前記バルク凝固アモルファス合金は、破壊靭性が約20ksi√in以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項9】
前記バルク凝固アモルファス合金は、硬さが約4GPa以上の高硬度であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項10】
前記バルク凝固アモルファス合金は、硬さが約5.5GPa以上の高硬度であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項11】
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が焼く2.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項12】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe、Ni、Coから成る群から選択された鉄族金属の合金であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項13】
前記バルク凝固アモルファス合金は、降伏強度が2.0GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項14】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe、Ni、Crから成る群から選択された鉄族金属の合金であって、かつ、前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界が約1.5%以上、前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約7.5GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項15】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe、Ni、Crから成る群から選択された鉄族金属の合金であって、かつ、前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界が約1.5%以上、前記バルク凝固アモルファス合金の破壊靭性が約20ksi√in以上、前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約6.5g/cc以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項16】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成された前記少なくとも一部は、リブ、ハニカム、I型梁から成る群から選択された支持構造を備え、前記電子機器用金属フレームは、少なくとも約1.5%の歪レベルでは塑性変形しないことを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項17】
前記バルク凝固アモルファス合金は、延性のある金属結晶相から成る析出物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項18】
少なくとも1つの開口部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項19】
前記開口部は、少なくとも1つの電子部品へのアクセスを許容するように構成されていることを特徴とする請求項18に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項20】
前記電子機器用金属フレームは、少なくとも2つの別体部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項21】
前記電子機器用金属フレームの前記2つの別体部分は、相互に固定して又は可動可能に取付けられていることを特徴とする請求項20に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項22】
前記電子機器用金属フレームの前記2つの別体部分は、接着剤、ネジ、スナップコネクタから成る群から選択された1種類の接続手段により相互に接続されていることを特徴とする請求項21に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項23】
前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部は、TiN、SiC、ダイアモンドから成る群から選択された高硬度材料で更に被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項24】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部は、陽極酸化されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項25】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部は、陽極酸化され虹色を与えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項26】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記少なくとも一部は、厚さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項27】
前記電子機器用金属フレームは、携帯電話、PDA、携帯型コンピュータ、ディジタルカメラから成る群から選択された装置のケースとしての形態であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項28】
前記電子機器用金属フレームは、前記電子部品を電子的干渉に対して少なくとも部分的に保護する機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項29】
前記バルク凝固アモルファス合金は、密度に対する弾性限界の比が約0.17以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項30】
前記バルク凝固アモルファス合金は、密度に対する降伏強度の比が約0.25以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項31】
前記電子機器用金属フレームのうちの前記バルク凝固アモルファス合金で形成された部分は、表面の形態が約100ミクロン以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項32】
前記バルク凝固アモルファス合金は、ΔTSCが30℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項33】
前記バルク凝固アモルファス合金は、ΔTSCが60℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項34】
電子機器用金属フレームであって、
収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、
前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金で形成されており、
前記バルク凝固アモルファス合金は、約2.0GPa以上の降伏強度、約4.5GPa以上の硬さ、約10ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする電子機器用金属フレーム。
【請求項35】
電子機器用金属フレームであって、
収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、
前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金で形成されており、
前記バルク凝固アモルファス合金は、2.0GPa以上の降伏強度、約5.5GPa以上の硬さ、約20ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする電子機器用金属フレーム。
【請求項36】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
弾性限界が1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金からなる素材を準備する工程と、
前記素材を前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度付近に加熱する工程と、
前記素材を型成形することにより、少なくとも1つの電子部品を収納する電子機器用金属フレームの少なくとも一部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項37】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、a=約40〜75原子%、b=約5〜50原子%、c=約5〜50原子%であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、a=約40〜65原子%、b=約0〜10原子%、c=約20〜30原子%、d=7.5〜15原子%であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項39】
前記バルク凝固アモルファス合金は、鉄族金属の合金であり、前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約7.5GPa以上、前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約8.5g/cc以下であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項40】
前記バルク凝固アモルファス合金は、延性のある金属結晶相から成る析出物を更に含有することを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項41】
前記電子機器用金属フレームの全体がバルク凝固アモルファス合金で形成されていることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項42】
前記形成された電子機器用金属フレームを切断することにより、少なくとも1つの電子部品の少なくとも1つにアクセスするように前記電子機器用金属フレームに少なくとも1つの開口部を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項43】
前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部をSiC、ダイアモンド、TiNから成る群から選択された高硬度材料で被覆する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項44】
前記電子機器用金属フレームの上に第2の電子機器用金属フレームを搭載する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項45】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成された前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部を陽極酸化する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項46】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成された前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部を陽極酸化して虹の色の1つ以上を与える工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項47】
前記バルク凝固アモルファス合金の硬さは約5.5GPa以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項48】
前記バルク凝固アモルファス合金の破壊靭性は約10ksi√in以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項49】
前記バルク凝固アモルファス合金の密度は約6.5g/cc以下であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項50】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する弾性限界の比が約0.17以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項51】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する降伏強度の比が約0.25以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項52】
前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界は約2.0%以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項53】
前記素材を型成形する工程は、約100ミクロン以下の表面形態を転写する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項54】
前記バルク凝固アモルファス合金はΔTSCが60℃以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項55】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
バルク凝固アモルファス合金からなる素材を準備する工程と、
前記素材を前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度付近に加熱する工程と、
前記素材を型成形することにより、少なくとも1つの電子部品を収納する電子機器用金属フレームの少なくとも一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約4.0GPa以上の硬さ、約10ksi√in以上の破壊靭性及び約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項56】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
バルク凝固アモルファス合金から成る素材を準備する工程と、
前記素材を前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度付近に加熱する工程と、
前記素材を型成形することにより、少なくとも1つの電子部品を収納する電子機器用金属フレームの少なくとも一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約2.0%以上、ΔTSCが60℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約5.5GPa以上の硬さ、約20ksi√in以上の破壊靭性及び約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項57】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
溶融温度以上の温度の合金溶湯形態の原料を準備する工程と、
上記原料を鋳造することにより、弾性限界が1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金から成り、かつ、少なくとも1つの電子部品を収納するように構成された電子機器用金属フレームの一部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項58】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、a=約40〜75原子%、b=約5〜50原子%、c=約5〜50原子%であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項59】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、a=40〜65原子%、b=約0〜10原子%、c=約20〜30原子%、d=7.5〜15原子%であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項60】
前記バルク凝固アモルファス合金は鉄族金属の合金であり、前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約7.5GPa以上、前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約8.5g/cc以下であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項61】
前記バルク凝固アモルファス合金は、延性のある金属結晶相から成る析出物を更に含有していることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項62】
前記電子機器用金属フレームの全体がバルク凝固アモルファス合金で形成されていることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項63】
前記形成された電子機器用金属フレームを切断して、上記少なくとも1つの電子部品の少なくとも1つにアクセスできるようにを少なくとも1つの開口部を前記電子機器用金属フレームに形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項64】
前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部をSiC、ダイアモンド、TiNから成る群から選択された高硬度材料で被覆する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項65】
前記電子機器用金属フレームの上に第2の電子機器用金属フレームを搭載する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項66】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの前記少なくとも一部を陽極酸化する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項67】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの前記少なくとも一部を、虹色になるように陽極酸化する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項68】
前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約5.5GPa以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項69】
前記バルク凝固アモルファス合金の破壊靭性が約10ksi√in以上の高破壊靭性であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項70】
前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約6.5g/cc以下であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項71】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する弾性限界の比が約0.17以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項72】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する降伏強度の比が約0.25以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項73】
前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界が約2.0以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項74】
前記素材の成形工程は、約100ミクロン以下の表面形態を転写する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項75】
前記バルク凝固アモルファス合金はΔTSCが60℃以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項76】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
溶融温度以上の温度の合金溶湯形態の原料を準備する工程と、
前記原料を鋳造することにより、少なくとも1つの電子部品収納するように構成された電子機器用金属フレームの一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約4.0GPa以上の硬さ、約10ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された2つ以上の物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項77】
電子機器用金属フレームの製造方法であって
、 溶融温度以上の温度の合金溶湯形態の原料を準備する工程と、
前記原料を鋳造することにより、少なくとも1つの電子部品収納するように構成された電子機器用金属フレームの一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約2.0%以上、ΔTSCが60℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約5.5GPa以上の硬さ、約20ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項1】
電子機器用金属フレームであって、
収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、
前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部がバルク凝固アモルファス合金で形成されており、
前記バルク凝固アモルファス合金は弾性限界が約1.5%以上である、ことを特徴とする電子機器用金属フレーム。
【請求項2】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cで表され、a=約30〜75原子%、b=約5〜60原子%、c=約0〜50原子%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項3】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、a=約40〜75原子%、b=約5〜60原子%、c=約0〜50原子%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項4】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、a=約40〜65原子%、b=約0〜10原子%、c=約20〜30原子%、d=7.5〜15原子%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項5】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式Zr41Ti14Ni10Cu12.5Be22.5で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項6】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe72Al5Ga2P11C6B4およびFe72Al7Zr10Mo5W2B15から成る群から選択された分子式で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項7】
前記バルク凝固アモルファス合金は、破壊靭性が約10ksi√in以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項8】
前記バルク凝固アモルファス合金は、破壊靭性が約20ksi√in以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項9】
前記バルク凝固アモルファス合金は、硬さが約4GPa以上の高硬度であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項10】
前記バルク凝固アモルファス合金は、硬さが約5.5GPa以上の高硬度であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項11】
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が焼く2.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項12】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe、Ni、Coから成る群から選択された鉄族金属の合金であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項13】
前記バルク凝固アモルファス合金は、降伏強度が2.0GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項14】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe、Ni、Crから成る群から選択された鉄族金属の合金であって、かつ、前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界が約1.5%以上、前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約7.5GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項15】
前記バルク凝固アモルファス合金は、Fe、Ni、Crから成る群から選択された鉄族金属の合金であって、かつ、前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界が約1.5%以上、前記バルク凝固アモルファス合金の破壊靭性が約20ksi√in以上、前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約6.5g/cc以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項16】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成された前記少なくとも一部は、リブ、ハニカム、I型梁から成る群から選択された支持構造を備え、前記電子機器用金属フレームは、少なくとも約1.5%の歪レベルでは塑性変形しないことを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項17】
前記バルク凝固アモルファス合金は、延性のある金属結晶相から成る析出物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項18】
少なくとも1つの開口部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項19】
前記開口部は、少なくとも1つの電子部品へのアクセスを許容するように構成されていることを特徴とする請求項18に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項20】
前記電子機器用金属フレームは、少なくとも2つの別体部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項21】
前記電子機器用金属フレームの前記2つの別体部分は、相互に固定して又は可動可能に取付けられていることを特徴とする請求項20に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項22】
前記電子機器用金属フレームの前記2つの別体部分は、接着剤、ネジ、スナップコネクタから成る群から選択された1種類の接続手段により相互に接続されていることを特徴とする請求項21に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項23】
前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部は、TiN、SiC、ダイアモンドから成る群から選択された高硬度材料で更に被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項24】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部は、陽極酸化されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項25】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部は、陽極酸化され虹色を与えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項26】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記少なくとも一部は、厚さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項27】
前記電子機器用金属フレームは、携帯電話、PDA、携帯型コンピュータ、ディジタルカメラから成る群から選択された装置のケースとしての形態であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項28】
前記電子機器用金属フレームは、前記電子部品を電子的干渉に対して少なくとも部分的に保護する機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項29】
前記バルク凝固アモルファス合金は、密度に対する弾性限界の比が約0.17以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項30】
前記バルク凝固アモルファス合金は、密度に対する降伏強度の比が約0.25以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項31】
前記電子機器用金属フレームのうちの前記バルク凝固アモルファス合金で形成された部分は、表面の形態が約100ミクロン以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項32】
前記バルク凝固アモルファス合金は、ΔTSCが30℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項33】
前記バルク凝固アモルファス合金は、ΔTSCが60℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用金属フレーム。
【請求項34】
電子機器用金属フレームであって、
収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、
前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金で形成されており、
前記バルク凝固アモルファス合金は、約2.0GPa以上の降伏強度、約4.5GPa以上の硬さ、約10ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする電子機器用金属フレーム。
【請求項35】
電子機器用金属フレームであって、
収容器を少なくとも1つ構成する壁部を有する本体を備え、
前記収容器は少なくとも1つの電子部品の少なくとも一部を収納するように構成されており、
前記本体の少なくとも一部は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金で形成されており、
前記バルク凝固アモルファス合金は、2.0GPa以上の降伏強度、約5.5GPa以上の硬さ、約20ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする電子機器用金属フレーム。
【請求項36】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
弾性限界が1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金からなる素材を準備する工程と、
前記素材を前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度付近に加熱する工程と、
前記素材を型成形することにより、少なくとも1つの電子部品を収納する電子機器用金属フレームの少なくとも一部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項37】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、a=約40〜75原子%、b=約5〜50原子%、c=約5〜50原子%であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、a=約40〜65原子%、b=約0〜10原子%、c=約20〜30原子%、d=7.5〜15原子%であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項39】
前記バルク凝固アモルファス合金は、鉄族金属の合金であり、前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約7.5GPa以上、前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約8.5g/cc以下であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項40】
前記バルク凝固アモルファス合金は、延性のある金属結晶相から成る析出物を更に含有することを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項41】
前記電子機器用金属フレームの全体がバルク凝固アモルファス合金で形成されていることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項42】
前記形成された電子機器用金属フレームを切断することにより、少なくとも1つの電子部品の少なくとも1つにアクセスするように前記電子機器用金属フレームに少なくとも1つの開口部を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項43】
前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部をSiC、ダイアモンド、TiNから成る群から選択された高硬度材料で被覆する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項44】
前記電子機器用金属フレームの上に第2の電子機器用金属フレームを搭載する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項45】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成された前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部を陽極酸化する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項46】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成された前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部を陽極酸化して虹の色の1つ以上を与える工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項47】
前記バルク凝固アモルファス合金の硬さは約5.5GPa以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項48】
前記バルク凝固アモルファス合金の破壊靭性は約10ksi√in以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項49】
前記バルク凝固アモルファス合金の密度は約6.5g/cc以下であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項50】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する弾性限界の比が約0.17以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項51】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する降伏強度の比が約0.25以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項52】
前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界は約2.0%以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項53】
前記素材を型成形する工程は、約100ミクロン以下の表面形態を転写する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項54】
前記バルク凝固アモルファス合金はΔTSCが60℃以上であることを特徴とする請求項36に記載の製造方法。
【請求項55】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
バルク凝固アモルファス合金からなる素材を準備する工程と、
前記素材を前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度付近に加熱する工程と、
前記素材を型成形することにより、少なくとも1つの電子部品を収納する電子機器用金属フレームの少なくとも一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約4.0GPa以上の硬さ、約10ksi√in以上の破壊靭性及び約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項56】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
バルク凝固アモルファス合金から成る素材を準備する工程と、
前記素材を前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度付近に加熱する工程と、
前記素材を型成形することにより、少なくとも1つの電子部品を収納する電子機器用金属フレームの少なくとも一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約2.0%以上、ΔTSCが60℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約5.5GPa以上の硬さ、約20ksi√in以上の破壊靭性及び約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項57】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
溶融温度以上の温度の合金溶湯形態の原料を準備する工程と、
上記原料を鋳造することにより、弾性限界が1.5%以上、ΔTSCが30℃以上のバルク凝固アモルファス合金から成り、かつ、少なくとも1つの電子部品を収納するように構成された電子機器用金属フレームの一部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項58】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cで表され、a=約40〜75原子%、b=約5〜50原子%、c=約5〜50原子%であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項59】
前記バルク凝固アモルファス合金は、分子式(Zr)a(Nb、Ti)b(Ni、Cu)c(Al)dで表され、a=40〜65原子%、b=約0〜10原子%、c=約20〜30原子%、d=7.5〜15原子%であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項60】
前記バルク凝固アモルファス合金は鉄族金属の合金であり、前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約7.5GPa以上、前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約8.5g/cc以下であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項61】
前記バルク凝固アモルファス合金は、延性のある金属結晶相から成る析出物を更に含有していることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項62】
前記電子機器用金属フレームの全体がバルク凝固アモルファス合金で形成されていることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項63】
前記形成された電子機器用金属フレームを切断して、上記少なくとも1つの電子部品の少なくとも1つにアクセスできるようにを少なくとも1つの開口部を前記電子機器用金属フレームに形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項64】
前記電子機器用金属フレームの少なくとも一部をSiC、ダイアモンド、TiNから成る群から選択された高硬度材料で被覆する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項65】
前記電子機器用金属フレームの上に第2の電子機器用金属フレームを搭載する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項66】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの前記少なくとも一部を陽極酸化する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項67】
前記バルク凝固アモルファス合金で形成されている前記電子機器用金属フレームの前記少なくとも一部を、虹色になるように陽極酸化する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項68】
前記バルク凝固アモルファス合金の硬さが約5.5GPa以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項69】
前記バルク凝固アモルファス合金の破壊靭性が約10ksi√in以上の高破壊靭性であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項70】
前記バルク凝固アモルファス合金の密度が約6.5g/cc以下であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項71】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する弾性限界の比が約0.17以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項72】
前記バルク凝固アモルファス合金は密度に対する降伏強度の比が約0.25以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項73】
前記バルク凝固アモルファス合金の弾性限界が約2.0以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項74】
前記素材の成形工程は、約100ミクロン以下の表面形態を転写する工程を更に含むことを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項75】
前記バルク凝固アモルファス合金はΔTSCが60℃以上であることを特徴とする請求項57に記載の製造方法。
【請求項76】
電子機器用金属フレームの製造方法であって、
溶融温度以上の温度の合金溶湯形態の原料を準備する工程と、
前記原料を鋳造することにより、少なくとも1つの電子部品収納するように構成された電子機器用金属フレームの一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約1.5%以上、ΔTSCが30℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約4.0GPa以上の硬さ、約10ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された2つ以上の物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【請求項77】
電子機器用金属フレームの製造方法であって
、 溶融温度以上の温度の合金溶湯形態の原料を準備する工程と、
前記原料を鋳造することにより、少なくとも1つの電子部品収納するように構成された電子機器用金属フレームの一部を形成する工程と、
を含み、
前記バルク凝固アモルファス合金は、弾性限界が約2.0%以上、ΔTSCが60℃以上であり、かつ、約2.0GPa以上の降伏強度、約5.5GPa以上の硬さ、約20ksi√in以上の破壊靭性、約6.5g/cc以下の密度から成る群から選択された少なくとも2つの物理特性を備えていることを特徴とする製造方法。
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−46826(P2012−46826A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−219558(P2011−219558)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2003−514366(P2003−514366)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(503326823)リキッドメタル テクノロジーズ,インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219558(P2011−219558)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2003−514366(P2003−514366)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(503326823)リキッドメタル テクノロジーズ,インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】
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