説明

電子機器間のケーブル接続システム

【課題】電子機器間を光ファイバと電線の複合ケーブルで接続してデータ伝送と充電用給電を行うケーブル接続システムであって、給電を受ける方に対象外の機器が接続された場合にも安全なシステムを提供する。
【解決手段】据え置き型の再生機器60と携帯型のプレーヤ80がケーブルで接続されると、それぞれがプラグ30に対する電気接触端子53,54,55の導通状態から接続ケーブルの種別を識別する。接続ケーブルが複合ケーブル40である場合には、再生機器60が光ファイバ37を通じてパイロット信号をプレーヤ80へ送信し、プレーヤ80は自機が充電方式の機種である場合に電気接触端子51,53を接地して応答する。この確認により、再生機器60とプレーヤ80は接続回路を送受信・給電状態に変更し、再生機器60からプレーヤ80へ光ファイバを介したデータ伝送と電線を介した充電用給電とが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器間で光信号の伝送と給電を行うためのケーブル接続システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オーディオ機器間におけるデータ伝送方式には、ライン入出力端子間を接続した電気ケーブルによりアナログ信号として伝送するアナログ方式と、光入出力端子間を接続した光ファイバケーブルによりデジタル信号として伝送するデジタル方式がある。例えば、CD(Compact Disc)プレーヤで読み出した楽曲データをMD(Mini Disc)プレーヤへ伝送してMDに書き込む場合において、アナログ方式では、CDのデジタル信号をデコードした後にアナログ信号へ変換して伝送し、MDプレーヤ側でデジタル信号に変換した後にエンコードしてMDに記録する。一方、デジタル方式の場合には、CDプレーヤで読み出した楽曲データをデジタル信号として伝送し、MDプレーヤ側でMDへの記録データにエンコードして記録する。
【0003】
アナログ方式ではノイズの混入や信号変換時の量子化誤差等が発生して音質の劣化を招き易いが、デジタル方式ではそのような問題がなく、データ伝送方式としてはデジタル方式が有利であることから、パーソナルコンピュータに対するデータ伝送インターフェイスとしても多用されている。そして、伝送インターフェイスを構成するデジタル・オーディオ用光コネクタ(「光端子」とも呼ばれる)については、「光角型」と「光ミニ」(「光丸形」とも呼ばれる)の2種類が普及しており、前者は入力側と出力側とを独立させた形態でパーソナルコンピュータに実装されていることが多く、後者は小型単頭式電気プラグ・ジャックに類似した形態からなり、携帯型オーディオプレーヤ等の小型AV機器に利用されている。
【0004】
そのような実情から、例えば、下記特許文献1においては、アナログ信号伝送用の小型単頭式電気プラグと光ファイバプラグとを共用できるようにしたプラグ・ジャック式光電共用伝送装置が提案されており、また、下記特許文献2においては、同装置においてジャックに挿入されるプラグを識別するための構成が開示されている。更に、下記特許文献3では、プラグ挿入の有無検出及びプラグの種別検出の結果に応じて光−電気変換素子とその信号処理回路のシャットダウンを行う構成も提案されている。
【0005】
特許文献1のプラグ・ジャック式光電共用伝送装置における電気プラグと光ファイバプラグの構造はそれぞれ図7と図8に示される。電気プラグ10は、先端側から順に、レフト(L)信号を入出力するためのチップ部11と、絶縁カラー部12と、ライト信号(R)信号を入出力するためのリング部13と、絶縁カラー部14と、接地(GND)されるスリーブ部15とからなり、チップ部11とリング部13とスリーブ部15における各後端部はそれぞれ被覆絶縁電線11a,13a,15aに接続されている。また、それらの被覆絶縁電線11a,13a,15aはキャップ部16内でまとめられてシース17が施された電気ケーブル18に構成され、その電気ケーブル18が他端の同様の電気プラグに接続されている。尚、電線15aを外部導体として被覆絶縁電線11a,13aを覆った同軸ケーブルになっていることが多い。
【0006】
一方、光ファイバプラグ20は、チップ部21とスリーブ部22とが一体的に形成されていると共に、その軸心には光ファイバ23が貫通しており、チップ部21の先端に光ファイバ23の端面23aが露出させてある。また、スリーブ部22の外周の後側区間は絶縁カラー部24になっており、光ファイバ23はキャップ部25内からナイロンチューブ26とシース27が施された光ファイバケーブル28として構成され、その光ファイバケーブル28が他端の同様の光ファイバプラグに接続されている。
【0007】
そして、電気プラグ10と光ファイバプラグ20の外形寸法は予め定められた規格に基づいて同一に設定されており、それに対応させてジャック側も規格化されている。図9の(A)と(B)はそれぞれジャック50の挿入孔に電気プラグ10と光ファイバプラグ20が挿入されて内嵌した状態を示す模式図であり、ジャック50の挿入孔の内周面には5個の電気接触端子51〜55が弾発的に配設されていると共に、各プラグ10,20の先端面との対向位置には光ファイバプラグ20との間で光授受を行うための光半導体素子56が設けられている。
【0008】
そして、電気プラグ10の場合には、電気接触端子51がチップ部11に、電気接触端子52がリング部13に、電気接触端子53,54,55がスリーブ部15に接触し、光ファイバプラグ20の場合には、電気接触端子51,52がチップ部21とスリーブ部22に、電気接触端子53,54,55が絶縁カラー部24に接触するようになっており、各電気接触端子51〜55と光半導体素子56からはそれぞれリード線が外部へ導かれている。
【0009】
従って、この場合であれば、電気接触端子53,54,55の相互間での導通状態を確認することにより、挿入されたプラグが電気プラグ10であるか光ファイバプラグ20であるか(即ち、接続されたケーブルが電気ケーブル18か光ファイバケーブル28か)を簡単に識別することができる。
【特許文献1】特開平6−140106号公報
【特許文献2】特開2000−58212号公報
【特許文献3】特開2003−34031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来の携帯型オーディオプレーヤは音楽データが記録された磁気テープや光ディスクなどのメディアを装填して再生する方式のものであったが、最近では機器本体に内蔵した不揮発性メモリやハードディスク装置(HDD)に音楽データを蓄積させて再生する方式の携帯型オーディオプレーヤが普及しつつある。このデータ蓄積方式の携帯型オーディオプレーヤは、パーソナルコンピュータや据え置き型オーディオ再生機器とケーブル接続した状態で、音楽データを内蔵の不揮発性メモリやHDDへ伝送させて蓄積させる機能を備えている。
【0011】
そして、従来のメディア装填方式の携帯型音楽プレーヤと同様に電池駆動方式であるが、小型化を図るために充電池を内蔵させていることが多く、一旦パーソナルコンピュータに取り込んだ音楽データをダウンロードさせるタイプの機種では、充電用の専用端子を設けずに、パーソナルコンピュータからUSB(Universal Serial Bus)ケーブルを用いてデータ伝送と給電とを同時に又は単独で行う方式が採用されている。一方、据え置き型オーディオ再生機器から音楽データをダウンロードさせるタイプの機種では、据え置き型オーディオ再生機器のライン出力端子と携帯型オーディオプレーヤのライン入力端子を接続してアナログ信号で伝送を行うが、上記のように音質の劣化の問題があり、またライン端子間の接続では給電も不可能であるため、別途に充電端子を設ける必要があった。
【0012】
そこで、本発明は、光ファイバと電線の複合ケーブルを用いて据え置き型オーディオ再生機器から携帯型オーディオプレーヤへ音楽データのデジタル伝送と給電を行うと共に、給電可能な機種以外の携帯型オーディオプレーヤに対しては給電を行わないようにして、他機種にとっても安全なケーブル接続システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光ファイバと電線とからなる複合ケーブルの両端にそれぞれ設けたプラグを第1及び第2の電子機器の各ジャックに挿入して前記各電子機器間を接続し、前記各電子機器間で前記光ファイバを介してデータ伝送を行うと共に、前記第1の電子機器が前記電線を介して充電用電力又は動作用電力を前記第2の電子機器へ給電する電子機器間のケーブル接続システムであって、前記第1の電子機器は、自機のジャックに挿入されたプラグの種別を識別して、接続ケーブルが前記複合ケーブルであるか否かを判別する第1のケーブル識別手段と、前記第1のケーブル識別手段が前記接続ケーブルを前記複合ケーブルであると判別した場合に、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記第2の電子機器へ確認信号を送信する確認信号送信手段と、前記確認信号送信手段による前記確認信号の送信後に、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記第2の電子機器から応答信号が供給された場合に、前記複合ケーブルの電線に充電用電力又は動作用電力の供給用電源を接続する給電接続手段とを備え、前記第2の電子機器は、自機のジャックに挿入されたプラグの種別を識別して、接続ケーブルが前記複合ケーブルであるか否かを判別する第2のケーブル識別手段と、前記第2のケーブル識別手段が前記接続ケーブルを前記複合ケーブルであると判別し、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記第1の電子機器から前記確認信号を受信し、且つ自機が前記複合ケーブルの電線を介して充電用電力又は動作用電力の供給を受ける機種である場合に、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記応答信号を前記第1の電子機器に送信する応答信号送信手段とを備えたことを特徴とする電子機器間のケーブル接続システムに係る。
【0014】
本発明のケーブル接続システムでは、複合ケーブルの光ファイバを用いて各電子機器間でのデータ伝送を行うと共に、複合ケーブルの電線を用いて第1の電子機器側から第2の電子機器へ充電用電力又は動作用電力の給電を行えるようにしているが、第1の電子機器において接続ケーブルが複合ケーブルであることが確認できても、第2の電子機器が充電用電力又は動作用電力の供給を受ける機種であるとは限らない。従って、第1の電子機器が複合ケーブルを識別しただけで電力供給を行うと、もし第2の電子機器が前記電力供給を受ける機種でない場合には、規定外の回路に大きな電流が流れて素子等が破損する可能性がある。そこで、予め複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて各電子機器間で確認信号と応答信号のやりとりを行うことにより、第2の電子機器が前記電力供給を受ける機種であることが確認できた場合にのみ、第1の電子機器が第2の電子機器へ充電用電力又は動作用電力の給電を行うようにしている。
【0015】
また、本発明において、前記複合ケーブルの前記光ファイバを介したデータ伝送が前記第1の電子機器から前記第2の電子機器へのみ行われる単向通信方式によるものである場合には、前記第1の電子機器の前記確認信号送信手段が前記確認信号を前記複合ケーブルの光ファイバを介して送信し、前記第2の電子機器の前記応答信号送信手段が前記応答信号を前記複合ケーブルの電線を介して前記第1の電子機器に送信するようにすれば、確認信号を特殊なコードによる光変調信号とし、応答信号を接地信号や極性反転信号等とすることができ、より確実で簡単な確認方式となる。
【0016】
更に、前記第1の電子機器の前記第1のケーブル識別手段を、自機の前記ジャックに挿入された前記プラグの種別を識別して、接続ケーブルが電気ケーブル、光ファイバケーブル、又は前記複合ケーブルの内のいずれであるかを識別する手段とし、前記第1の電子機器において、前記第1のケーブル識別手段により前記接続ケーブルが前記電気ケーブル又は前記光ファイバケーブルであると識別された場合に、前記確認信号送信手段と前記給電接続手段を動作させずに、前記電気ケーブル又は前記光ファイバケーブルを介して前記第2の電子機器にデータ伝送を行うようにすれば、複合ケーブルだけでなく、電気ケーブル及び光ファイバケーブルにも対応できるケーブル接続システムを構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のケーブル接続システムによれば、光ファイバと電線とからなる複合ケーブルを用いて、電子機器間でデータ伝送を行うと共に、一方の電子機器から他方の電子機器へ充電用電力又は動作用電力の給電を行う場合に、給電される方の電子機器が実際に給電を受け得る機種であるか否かを確認した上で給電を開始させるため、より安全なケーブル接続が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のケーブル接続システムの実施形態を図1から図6に基づいて詳細に説明する。先ず、図1は電線と光ファイバの複合ケーブルとそれに適用される単頭式光電プラグの構造を示す断面図である。この光電プラグ30は、電気系の構成については前記単頭式電気プラグ10(図7)と類似した構造を有しており、先端側から順に、レフト(L)信号を入出力するためのチップ部31と、絶縁カラー部32と、ライト信号(R)信号を入出力するためのリング部33と、絶縁カラー部34と、接地(GND)されるスリーブ部35とが構成されているが、スリーブ部35の外周の後側区間は絶縁カラー部36になっている。また、光系の構成は前記光ファイバプラグ20(図8)と類似したものであり、前記チップ部31の軸心に光ファイバ37が貫通させてあり、チップ部31の先端に光ファイバ37の端面37aが露出させてある。
【0019】
そして、チップ部31とリング部33とスリーブ部35の各後端部はそれぞれ被覆絶縁電線31a,33a,35aに接続されており、それらの被覆絶縁電線31a,33a,35aがキャップ38内で光ファイバ37の周囲に束ねられてシース39が施された複合ケーブル40が構成されている。尚、当然に図1の複合ケーブル40の他端には前記と同様の光電プラグ30が接続されている。
【0020】
ところで、この光電プラグ30も前記の電気プラグ10や光ファイバプラグ20と同様に外形寸法が予め定められた規格に基づいて同一に設定されており、図9で示したジャック50を介して機器間を複合ケーブル40で接続する。即ち、図2はジャック50の挿入孔に光電プラグ30が挿入されて内嵌した状態を示す模式図であるが、電気接触端子51がチップ部31に、電気接触端子52がリング部33に、電気接触端子53,54がスリーブ部33に、電気接触端子55が絶縁カラー部36に接触している。
【0021】
従って、ジャック50を用いると、電気接触端子53−54間と電気接触端子53−55間の導通状態を確認すれば、次の表1で規定する関係に基づいて、接続されたケーブルの種類が電気ケーブル18か光ファイバケーブル28か複合ケーブル40かを識別することができる。
【表1】

【0022】
この実施形態では、据え置き型オーディオ再生機器(以下、「再生機器」と略す)とデータ蓄積方式の携帯型オーディオプレーヤ(以下、「プレーヤ」と略す)とを各ケーブル18,28,40のいずれかで接続した場合について説明する。再生機器とプレーヤとは、それぞれ前記表1の導通状態に基づいて各ケーブル18,28,40の種別を識別し、それぞれのジャック50の各電気接続端子51〜53の接続先を切り換える。また、複合ケーブル40を用いる場合においては、再生機器からプレーヤへ光信号によるデータ伝送と充電用の給電とを並行して行うが、予めプレーヤが複合ケーブル40を介して給電を受ける機種のものであるか否かを確認した上で給電を実行する。
【0023】
次に、各ケーブル18,28,40の接続時における再生機器とプレーヤの動作について具体的に説明する。
<電気ケーブル18による接続>
図3は、再生機器60とプレーヤ80とを電気プラグ10・電気ケーブル18で接続した状態を示す。同図において、再生機器60とプレーヤ80はそれぞれ上記のジャック50と同様の構成からなるジャック50aとジャック50bを備えている。但し、ジャック50a側の光半導体素子56aは発光素子(発光ダイオード又は半導体レーザ等)であり、ジャック50bの光半導体素子56bは受光素子(フォトダイオード等)である。そして、電気ケーブル18の両端の電気プラグ10が再生機器60とプレーヤ80の各ジャック50a,50bに挿入されている。
【0024】
また、再生機器60は、前記ジャック50a以外の本発明の実施形態に関連した主要部分として、CD61の音楽データを読み取るデータ読取部62と、読み取られた音楽データをデコードして左右チャンネルの送信用アナログ信号に変換するアナログ送信回路63と、読み取られた音楽データに基づいてジャック50の光半導体素子56aを駆動するための送信用変調信号を生成して同素子56aへ出力する光送信回路64と、ジャック50の電気接続端子53,54,55に係る導通状態(表1の端子間の導通状態)を確認してケーブルの種類に対応した識別信号を出力するケーブル識別部65と、ケーブル識別部65の識別信号に基づいてジャック50aの電気接続端子51,52,53に対する接続回路を切り換えると共に光送信回路64と光半導体素子56aに対する駆動電圧の印加/非印加状態を切り換える接続切換部66と、再生機器60のシステム全体に所要電圧を供給する電源回路67とを備えている。
【0025】
一方、プレーヤ80は、前記ジャック50b以外の本発明の実施形態に関連した主要部分として、ジャック50bの電気接続端子53,54,55に係る導通状態(表1の端子間の導通状態)を確認してケーブルの種類に対応した識別信号を出力するケーブル識別部81と、ケーブル識別部81の識別信号に基づいてジャック50bの電気接続端子51,52,53に対する接続回路を切り換えると共に後述の光受信回路84と光半導体素子56bに対する駆動電圧の印加/非印加状態を切り換える接続切換部82と、接続切換部82を介して電気接続端子51,52から得られる再生機器60側のアナログ信号(左右チャンネル)をエンコードするアナログ受信回路83と、光半導体素子56bの出力信号をアナログ受信回路83での符号化方式と同一方式による符号化データへエンコードする光受信回路84と、大容量メモリであるデータ蓄積部85と、アナログ受信回路83又は光受信回路84によってエンコードされたデータをデータ蓄積部85に書き込み、またデータ蓄積部85からデータを読み出すデータR/W部86と、データR/W部86がデータ蓄積部85から読み出したデータをデコードして左右チャンネルの音声信号として出力させる再生処理部87と、バッテリー88と、バッテリー88を電源としてプレーヤ80のシステム全体に所要電圧を供給する電源回路89と、再生機器60側から複合ケーブル40を介して給電がなされる場合にバッテリー88を充電する充電回路90とを備えている。
【0026】
ここで、図3に示すように、再生機器60とプレーヤ80とが電気ケーブル18で接続されて、それぞれのジャック50a,50bに電気プラグ10が挿入されると、各ジャック50a,50bにおいて電気接続端子53,54,55はスリーブ部15に接触しているために、電気接触端子53−54間と電気接触端子53−55間とが共に導通状態になり、各ケーブル識別部65,81は表1に基づいて電気ケーブル18による接続であると識別する。そして、再生機器60側の接続切換部66では、ケーブル識別部65の識別信号に基づいて、電気接触端子51,52とアナログ送信回路63の左右チャンネルの出力端子とをそれぞれ接続し(C1−C7,C2−C6の接続)、電気接触端子53をGND回路に接続する(C3−C4の接続)。また、プレーヤ80側の接続切換部82では、ケーブル識別部81の識別信号に基づいて、電気接触端子51,52とアナログ受信回路83の左右チャンネルの入力端子とをそれぞれ接続し(N1−N7,N2−N6の接続)、電気接触端子53をGND回路に接続する(N3−N4の接続)。尚、図3においては、再生機器60とプレーヤ80とが電気ケーブル18で接続された場合において有用な接続線のみを実線で示し、他の接続線は破線で示してある。
【0027】
その結果、再生機器60側のアナログ送信回路63とプレーヤ80側のアナログ受信回路83とが電気ケーブル18によって接続されると共に、双方のGND回路も接続された状態になり、再生機器60側において、CD61から読み出されてデコードされた左右チャンネルの送信用アナログ信号が電気ケーブル18の電線11a,13a,15a(図7参照)を通じてプレーヤ80側へ伝送され、プレーヤ80側においては、受信した左右チャンネルのアナログ信号をエンコードして、その符号化後の音楽データをデータR/W部86によってデータ蓄積部85に書き込むことができる。また、再生モードでは、データR/W部86がデータ蓄積部85から音楽データを再生処理部87へ読み出し、再生処理部87がその音楽データをデコードして左右チャンネルのオーディオ信号として出力させる。尚、この電気ケーブル18による接続の場合においては、再生機器60からプレーヤ80へアナログ信号による音楽データの伝送が行われるだけであり、充電用の給電は行われない。
【0028】
<光ファイバケーブル28による接続>
図4は、再生機器60とプレーヤ80とを光ファイバプラグ20・光ファイバケーブル28で接続した状態を示す。但し、この図4においても、再生機器60とプレーヤ80とが光ファイバケーブル28で接続された場合において有用な接続線のみを実線で示し、他の接続線は破線で示してある。この場合には、再生機器60とプレーヤ80の各ジャック50a,50bに対する光ファイバプラグ20(図8)の挿入関係になるため、各ジャック50a,50bの各電気接触端子53,54,55は光ファイバプラグ20の絶縁カラー部24と接触することになり、電気接触端子53−54間と電気接触端子53−55間とは共に非導通状態となる。従って、再生機器60とプレーヤ80の各ケーブル識別部65,81は上記表1に基づいて光ファイバケーブル28による接続であると識別する。
【0029】
そして、各ケーブル識別部65,81の識別信号に基づいて、再生機器60側の接続切換部66では光送信回路64と光半導体素子56aに対する動作電源電圧Vccの供給回路(C8−C9)を構成し、プレーヤ80側の接続切換部82では光受信回路84と光半導体素子56bに対する動作電源電圧Vccの供給回路(N8−N9)を構成するが、各ジャック50a,50bの電気接触端子51,52,53には何の接続も行われない。
【0030】
従って、再生機器60側では光送信回路64と光半導体素子56aが、プレーヤ80側では光受信回路84と光半導体素子56bがそれぞれ駆動状態になり、データ読取部62がCD61から読み取った音楽データにより光送信回路64が光半導体素子(発光素子)56aを動作させて変調光信号を光ファイバケーブル28に入射させ、また、光ファイバケーブル28を介して伝送された変調光信号で光半導体素子(受光素子)56bが電気信号を出力し、その出力信号を光受信回路84でエンコードすることにより符号化された音楽データを得る。即ち、再生機器60とプレーヤ80を光ファイバケーブル28で接続することにより、自動的にデジタル光信号による音楽データの伝送状態となる。
【0031】
尚、プレーヤ80におけるデータR/W部86でのデータ蓄積部85に対する音楽データの書き込み/読み出しと再生処理・出力については上記の<電気ケーブル18による接続>の場合と同様である。また、この光ファイバケーブル28による接続の場合においても、再生機器60からプレーヤ80へデジタル光信号による音楽データの伝送が行われるだけであり、充電用の給電は行われない。
【0032】
<複合ケーブル40による接続>
図5と図6は、再生機器60とプレーヤ80とを複合ケーブル40で接続した場合の初期確認段階と伝送・充電段階を示す。但し、各図においても、図3や図4と同様に、前記各段階で有用な接続線のみを実線で示し、他の接続線は破線で示してある。
【0033】
先ず、この場合には、複合ケーブル40の両端が上記光電プラグ30(図1)になっており、図5に示すように、再生機器60とプレーヤ80の各ジャック50a,50bの電気接触端子53,54は光電プラグ30のスリーブ部35に、電気接触端子55は光電プラグ30の絶縁カラー部36に接触するため、電気接触端子53−54間が導通状態で電気接触端子53−55間が非導通状態となる。従って、再生機器60とプレーヤ80の各ケーブル識別部65,81は表1に基づいて複合ケーブル40による接続であると識別する。
【0034】
そして、再生機器60側では、ケーブル識別部65の識別信号に基づいて、接続切換部66が光送信回路64と光半導体素子56aに対する動作電源電圧Vccの供給回路(C8−C9)を構成すると共に、電気接触端子51の出力をケーブル識別部65に入力させる回路(C1−C5)を構成する。一方、プレーヤ80側では、ケーブル識別部81の識別信号に基づいて、接続切換部82が光受信回路84と光半導体素子56bに対する動作電源電圧Vccの供給回路(N8−N9)を構成するが、電気接触端子51,52,53についてはこの段階では何の接続も行わず、後の手順で適宜接続回路が構成される。
【0035】
次に、再生機器60側のケーブル識別部65は、光送信回路64に制御信号を出力して、光半導体素子56aによりパイロット信号の変調光信号を出力させる。この変調光信号は複合ケーブル40の光ファイバ37を通じてプレーヤ80側へ伝送されるが、前記のようにプレーヤ80側の光受信回路84と光半導体素子56bは予め駆動されているため、光半導体素子56bで変調光信号を検出して光受信回路84によってパイロット信号を得ることができる。そして、プレーヤ80側では光受信回路84の出力がケーブル識別部81へ入力されており、ケーブル識別部81がパイロット信号を検出すると、接続切換部82へ接続制御信号を出力して電気接触端子51,53をGND回路に接続させる回路(N1,N3−N4)を構成させる。尚、パイロット信号は特定周波数の連続したパルス信号や特定のコマンドを構成する信号とすることができる。
【0036】
ところで、再生機器60側では前記のように電気接触端子51の出力をケーブル識別部65に入力させる回路(C1−C5)が構成されており、また電気接触端子53の出力は常にケーブル識別部65に入力されているため、再生機器60側のケーブル識別部65では複合ケーブル40を介してプレーヤ80側で電気接触端子51,53がGND回路に接続せしめられたことを確認できる。即ち、プレーヤ80が再生機器60から複合ケーブル40を通じて充電用の給電を受ける機種であった場合には、プレーヤ80は再生機器60から受信したパイロット信号に対して電気接触端子51,53をGND回路へ接続させることで応答し、再生機器60では、その応答を確認した場合に限り、プレーヤ80が充電用の給電を受ける機種であるとみなす。
【0037】
そして、再生機器60では、ケーブル識別部65によってプレーヤ80が前記機種であることが確認されると、図6に示すように、接続切換部66が電気接続端子51をケーブル識別部65への接続状態(C1−C5)からGND回路への接続状態(C1−C4)に切り換えると共に、電気接続端子53もGND回路へ接続させ(C3−C4)、更に電気接続端子52を動作電源電圧Vccの供給回路に接続する(C2,C8−C9)。一方、プレーヤ80側では、それまでの接続状態(N8−N9, N1,N3−N4)をそのままにして、電気接続端子52と充電回路90の入力端子とを接続する回路(N2−N5)を構成する。
【0038】
その結果、再生機器60とプレーヤ80との間で、上記の<光ファイバケーブル28による接続>の場合と同様に、複合ケーブル40の光ファイバ37を介したデジタル光信号による音楽データの伝送を行うことができると共に、この場合には電線33a,(GND:31a,35a)を介した充電用の給電を並行して行うことができる。また、音楽データの伝送を行わずに、充電用の給電だけを単独で行うことも可能である。尚、プレーヤ80におけるデータ蓄積と再生処理・出力については上記の各ケーブル18,28による接続の場合と同様である。
【0039】
ところで、前記のように<複合ケーブル40による接続>の場合には、再生機器60からプレーヤ80への音楽データの伝送と充電用の給電を同時に行うことができるが、各ジャック50a,50bの電気接続端子51,53がGND回路に接続されており、複合ケーブル40の2本の電線31a,35aが共にGND電位になっている。従って、もし電線31a,35aの内の1本を信号伝送用に利用すれば、プレーヤ80から再生機器60へもデータを伝送でき、双方向のデータ伝送が可能になる。そして、その構成によれば、例えば、プレーヤ80における楽曲の収録内容等の情報を再生機器60へ伝送し、再生機器60側で、プレーヤ80への音楽データの伝送と充電用の給電を行いながら、表示部(図示せず)にプレーヤ80の楽曲収録状態を表示させることが可能になる。
【0040】
尚、この実施形態では、図3から図6におけるプレーヤ80を全てのケーブルの場合に対応する共通の構成回路で説明したが、電気ケーブル18で接続するプレーヤ80の場合(図3)には光半導体素子56bと光受信回路84が存在しない構成であってもよく、光ファイバケーブル28又は複合ケーブル40で接続するプレーヤ80の場合(図4、図5、図6)にはアナログ受信回路83が存在しない構成であってもよい。更に、電気ケーブル18又は光ファイバケーブル28で接続するプレーヤ80の場合(図3、図4)における充電回路90は自機に設けた充電用端子(図3、図4の90aに相当)から給電を受ける方式になる。
【0041】
また、この実施形態では、伝送信号をオーディオ信号としたが、それに限定されるものではない。例えば、伝送信号を映像信号とする場合においては、テレビチューナから別体の薄型ディスプレイへデジタル映像信号を光信号で伝送すると共に、テレビチューナから薄型ディスプレイへの給電や、逆に薄型ディスプレイからテレビチューナへの制御信号(リモコン信号等)の伝送も可能となり、電源ケーブルを独立に設ける必要がないディスプレイが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電子機器ユニット間を電線と光ファイバの複合ケーブルで接続してデータ伝送と電力供給を行うケーブル接続システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電線と光ファイバの複合ケーブルとそれに適用される単頭式光電プラグの構造を示す断面図である。
【図2】ジャックの挿入孔に複合プラグが挿入されて内嵌した状態を示す模式図である。
【図3】再生機器とプレーヤとを電気ケーブルで接続した場合における各関連回路への接続状態を示す図である。
【図4】再生機器とプレーヤとを光ファイバケーブルで接続した場合における各関連回路への接続状態を示す図である。
【図5】再生機器とプレーヤとを複合ケーブルで接続した場合における初期確認段階での各関連回路への接続状態を示す図である。
【図6】再生機器とプレーヤとを複合ケーブルで接続した場合における伝送・充電段階での各関連回路への接続状態を示す図である。
【図7】電気ケーブルと単頭式電気プラグの断面図である。
【図8】光ファイバと単頭式光ファイバプラグの断面図である。
【図9】ジャックの挿入孔にプラグが挿入されて内嵌した状態を示す模式図である。但し、(A)は電気プラグの場合、(B)は光ファイバプラグの場合である。
【符号の説明】
【0044】
10…電気プラグ、11,21,31…チップ部、11a,13a,15a,31a,33a,35a…被覆絶縁電線、12,14,24,32,34,36…絶縁カラー部、13,33…リング部、15,22,35…スリーブ部、16,25,38…キャップ部、17,27,39…シース、18…電気ケーブル、20…光ファイバプラグ、23…光ファイバ、23a,37a…端面、26…ナイロンチューブ、28…光ファイバケーブル、30…複合ケーブル、37…光ファイバ、40…複合ケーブル、50,50a,50b…ジャック、51,52,53,54,55…電気接続端子、56,56a,56b…光半導体素子(56a:光ダイオード又は半導体レーザ等の発光素子,56b:フォトダイオード等の受光素子)、60…再生機器(据え置き型オーディオ再生機器)、61…CD、62…データ読取部、63…アナログ送信回路、64…光送信回路、65,81…ケーブル識別部、66,82…接続切換部、67,89…電源回路、80…プレーヤ(デジタルオーディオプレーヤ)、83…アナログ受信部、84…光受信回路、85…データ蓄積部、86…データR/W部、87…再生処理部、88…バッテリー、90…充電回路、90a…充電用端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと電線とからなる複合ケーブルの両端にそれぞれ設けたプラグを第1及び第2の電子機器の各ジャックに挿入して前記各電子機器間を接続し、前記各電子機器間で前記光ファイバを介してデータ伝送を行うと共に、前記第1の電子機器が前記電線を介して充電用電力又は動作用電力を前記第2の電子機器へ給電する電子機器間のケーブル接続システムであって、
前記第1の電子機器は、
自機のジャックに挿入されたプラグの種別を識別して、接続ケーブルが前記複合ケーブルであるか否かを判別する第1のケーブル識別手段と、
前記第1のケーブル識別手段が前記接続ケーブルを前記複合ケーブルであると判別した場合に、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記第2の電子機器へ確認信号を送信する確認信号送信手段と、
前記確認信号送信手段による前記確認信号の送信後に、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記第2の電子機器から応答信号が供給された場合に、前記複合ケーブルの電線に充電用電力又は動作用電力の供給用電源を接続する給電接続手段とを備え、
前記第2の電子機器は、
自機のジャックに挿入されたプラグの種別を識別して、接続ケーブルが前記複合ケーブルであるか否かを判別する第2のケーブル識別手段と、
前記第2のケーブル識別手段が前記接続ケーブルを前記複合ケーブルであると判別し、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記第1の電子機器から前記確認信号を受信し、且つ自機が前記複合ケーブルの電線を介して充電用電力又は動作用電力の供給を受ける機種である場合に、前記複合ケーブルの光ファイバ又は電線を通じて前記応答信号を前記第1の電子機器に送信する応答信号送信手段とを備えた
ことを特徴とする電子機器間のケーブル接続システム。
【請求項2】
前記複合ケーブルの前記光ファイバを介したデータ伝送が前記第1の電子機器から前記第2の電子機器へのみ行われる単向通信方式によるものであり、
前記第1の電子機器の前記確認信号送信手段が前記確認信号を前記複合ケーブルの光ファイバを介して送信し、前記第2の電子機器の前記応答信号送信手段が前記応答信号を前記複合ケーブルの電線を介して前記第1の電子機器に送信するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子機器間のケーブル接続システム。
【請求項3】
前記第1の電子機器の前記第1のケーブル識別手段が、自機の前記ジャックに挿入された前記プラグの種別を識別して、接続ケーブルが電気ケーブル、光ファイバケーブル、又は前記複合ケーブルの内のいずれであるかを識別する手段であり、
前記第1の電子機器において、前記第1のケーブル識別手段により前記接続ケーブルが前記電気ケーブル又は前記光ファイバケーブルであると識別された場合に、前記確認信号送信手段と前記給電接続手段を動作させずに、前記電気ケーブル又は前記光ファイバケーブルを介して前記第2の電子機器にデータ伝送を行うようにした請求項1又は請求項2に記載の電子機器間のケーブル接続システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−294208(P2007−294208A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120084(P2006−120084)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】