説明

電子機器

【課題】電源電圧が低くても、アンテナ等の電子回路の受信性能を向上させることができる電子機器を提供すること。
【解決手段】バイアス回路7に、供給される電圧を昇圧するDC/DCコンバータ26と、制御回路8から出力されたPWM信号を平滑して直流電圧に変換する平滑回路27と、DC/DCコンバータ26の出力端子に一端が接続された抵抗R2と、抵抗R2の他端にコレクタ端子が接続されると共に、平滑回路27の出力端子にベース端子が接続され、平滑回路27から出力された直流電圧に基づいてコレクタ−エミッタ間の抵抗値を可変するバイポーラトランジスタ29とを設け、抵抗R2の他端とバイポーラトランジスタ29のコレクタとの接続点から整合回路6の第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2にバイアス電圧を供給し、同調周波数を制御するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ等の電子回路との整合を行う整合回路を備えた電子機器に係り、特にバッテリによって駆動する携帯用の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ駆動の携帯用の電子機器として、パルス幅変調信号(PWM信号)により整合回路に出力されるバイアス電圧を可変させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電子機器は、PWM信号を出力する制御回路と、制御回路から出力されたPWM信号を直流電圧に変換する平滑回路と、可変容量ダイオード、容量、抵抗等を含んだ整合回路とを備えて構成されている。そして、電子機器は制御回路から出力されたPWM信号を平滑回路で直流電圧に変換した後、バイアス電圧として可変容量ダイオードに印加することで共振周波数を可変させている。
【特許文献1】特開2007−274674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記したような携帯用の電子機器においては、小型化および軽量化が望まれており、駆動電源として電子機器内には小型のバッテリが内蔵されることが想定される。しかしながら、従来の電子機器において、小型のバッテリを使用した場合には、電源電圧が低いため、平滑回路を介して可変容量ダイオードに印加されるバイアス電圧が低くなり、アンテナの利得が低減すると共に、チューニング帯域が狭くなるという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電源電圧が低くても、アンテナ等の電子回路の受信性能を向上させることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子機器は、電子回路と、前記電子回路との整合を行う可変容量素子を有した整合回路と、前記可変容量素子にバイアス電圧を供給するバイアス回路と、前記バイアス回路のバイアス電圧をパルス幅変調信号により制御する制御回路とを備え、前記バイアス回路は、供給される電圧を昇圧する昇圧回路と、前記制御回路から出力されたパルス幅変調信号を平滑して直流電圧に変換する平滑回路と、前記昇圧回路の出力端に一端が接続された抵抗と、前記抵抗の他端に出力端が接続され、前記平滑回路の出力端に制御入力端が接続され、前記平滑回路から出力された直流電圧に基づいて出力端とグランドとの間の抵抗値が変化する可変抵抗部とを設け、前記抵抗の他端と前記可変抵抗部の出力端との接続点から前記バイアス電圧を供給することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、バッテリ等の電源電圧から出力された電圧が昇圧回路により昇圧され、当該昇圧電圧が抵抗と可変抵抗部とにより分圧され、バイアス電圧として可変容量素子に供給される。よって、低電圧のバッテリ駆動の電子機器であっても、可変容量素子に高い電圧を供給することができ、可変容量素子の容量を大きく可変し、電子回路の利得を維持しつつチューニング帯域を広くすることができる。また、パルス幅変調信号を利用してバイアス電圧を制御しているため、可変容量素子の容量を精度よく可変制御することができる。
【0007】
上記電子機器において、前記可変抵抗部は、バイポーラトランジスタ、ユニポーラトランジスタ、またはPINダイオードで構成することができる。
【0008】
上記電子機器において、前記可変抵抗部は、バイポーラトランジスタであり、前記昇圧回路は、DC/DCコンバータであり、前記バイポーラトランジスタは、コレクタに前記抵抗の他端が接続され、エミッタに前記グランドが接続され、ベースにバイアス抵抗を介して前記平滑回路が接続されており、前記ベース−エミッタ間の電圧に応じて前記コレクタ−エミッタ間の抵抗値が変化する構成とすることができる。
【0009】
また本発明は、上記電子機器において、前記電子回路は、信号受信用アンテナであることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、信号受信用アンテナと当該信号受信用アンテナに接続される受信回路および/または送信回路とを整合させることができ、信号受信用アンテナの利得を維持しつつチューニング帯域を広げることができる。
【0011】
上記電子機器において、前記信号受信用アンテナは、フィルム基板と前記フィルム基板の表面に設けられた放射導体とから構成することができる。
【0012】
また本発明は、上記電子機器において、携帯可能であると共に、前記信号受信用アンテナが地上デジタルテレビジョン放送信号の受信機能を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、小型の携帯機器に、受信性能を悪化させることなく地上デジタルテレビジョン放送信号の受信機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高電圧の電源電圧を用いることなく、電子回路に供給するバイアス電圧の可変幅を拡大でき、バイアス電圧の最大値を大きくすることができるため、アンテナ等の電子回路の受信性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る電子機器の構成図である。なお、本実施の形態においては、電子機器に請求項に記載の電子回路として信号受信用アンテナ素子を適用した構成を例示して説明するが、この構成に限定されるものでない。例えば、請求項に記載の電子回路として、携帯機器のPA(Power Amplifier)入力回路を適用してもよい。この場合、PAが周波数の異なる複数のApplicationが共用する、或いはPA出力レベルにより入力Matching状態が変わるとき、常に最適なMatching状態になるよう、Matching回路を細かく制御するのが好ましい。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る電子機器1は、小型チューナブルアンテナからなるアンテナ装置2を備えており、このアンテナ装置2の同調周波数をメインボードPCB側から制御できるように構成されている。アンテナ装置2は、信号受信用アンテナ素子5と、信号受信用アンテナ素子5の基端側に設けられた整合回路6とで主に構成されている。
【0017】
メインボードPCBは、整合回路6の一端となるアンテナ装置2の入出力端子11にチューニングライン12を介して接続し、アンテナ装置2にバイアス電圧を印加するバイアス回路7と、バイアス回路7に接続し、バイアス電圧を制御する制御回路8と、図示しない受信回路とを有している。受信回路のRF端子13には、直流カットコンデンサC1を介してチューニングライン12のメインボードPCB側の端部が接続されている。
【0018】
信号受信用アンテナ素子5は、地上デジタルテレビジョン放送信号を受信可能であり、誘電体材料からなるフィルム基板5aと、フィルム基板5aの表面に設けられたミアンダ形状を有する放射導体5bとで構成されている。なお、信号受信用アンテナ素子5としてミアンダ形状のアンテナパターンを有するものに限定されるものではなく、例えば、ループ形状、ヘリカル形状のアンテナパターンを有するものを使用してもよい。
【0019】
整合回路6は、信号受信用アンテナ素子5と受信回路とのインピーダンスを整合させるものであり、所望の周波数に同調するとともに、共振点を可変させることにより同調周波数を可変させる共振回路が組み込まれている。共振回路は、第1のバラクタダイオードVD1、第2のバラクタダイオードVD2、第1のインダクタL1により構成されている。
【0020】
第1のバラクタダイオードVD1のカソードにはチューニングライン12に接続される入出力端子11が接続され、第1のバラクタダイオードVD1のアノードには第2のバラクタダイオードVD2のアノードが接続されている。第2のバラクタダイオードVD2のカソードには整合回路6と信号受信用アンテナ素子5とのマッチング用の第2のインダクタL2の一端が接続され、第2のインダクタL2の他端には信号受信用アンテナ素子5の給電点16が接続されている。また、第1のバラクタダイオードVD1のカソードおよび第2のバラクタダイオードVD2のカソード間には、第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2に対して並列に第1のインダクタL1が接続されている。
【0021】
また、第1のバラクタダイオードVD1のアノードおよび第2のバラクタダイオードVD2のアノードの接続点は、交流カット用の第3のインダクタL3の一端に接続されている。なお、この第3のインダクタL3は、交流抵抗が大きい抵抗で代用することも可能である。また、第3のインダクタL3の他端は、メインボードPCBに設けられた交流カット用の第1の抵抗R1を介してメインボードPCBのグランドに接続されている。
【0022】
制御回路8は、図示しないバッテリから2.8[v]の電源電圧を取り込むと共に、図示しないPWM回路においてバイアス電圧指令値に応じたパルス幅のPWM信号を生成する。また、制御回路8は、直流端子21に接続された電源電圧印加ライン23を介してバイアス回路7に電源電圧を印加すると共に、交流端子22に接続されたPWM信号出力ライン24を介してバイアス回路7にPWM信号を出力する。
【0023】
バイアス回路7は、制御回路8から出力されたPWM信号や電源電圧に応じてバイアス電圧を生成するものであり、制御回路8から出力された電源電圧を昇圧するDC/DCコンバータ26と、制御回路8から出力されたPWM信号を直流電圧に変換する平滑回路27とを有して構成されている。DC/DCコンバータ26の入力端子には電源電圧印加ライン23を介して制御回路8の直流端子21が接続され、出力端子には第2の抵抗R2の一端が接続されている。第2の抵抗R2の他端にはバイポーラトランジスタ29のコレクタ端子が接続されている。
【0024】
平滑回路27の入力端子にはPWM信号出力ライン24を介して制御回路8の交流端子22が接続され、出力端子には第3の抵抗R3の一端が接続されている。第3の抵抗R3の他端にはバイポーラトランジスタ29のベース端子が接続され、バイポーラトランジスタ29のエミッタ端子にはメインボードPCBのグランドが接続されている。また、第2の抵抗R2の他端とバイポーラトランジスタ29のコレクタ端子との接続点25は、第4の抵抗R4を介してチューニングライン12に接続されている。
【0025】
バイポーラトランジスタ29は、可変抵抗部として機能し、ベース−エミッタ間に印加された電圧に応じてコレクタ−エミッタ間の抵抗値が可変するように構成されている。例えば、本実施の形態においては、ベース−エミッタ間の電圧が0.7[v]以上の場合にはコレクタ−エミッタ間の抵抗値が最少となり、ベース−エミッタ間の電圧が0.3[v]以下の場合にはコレクタ−エミッタ間の抵抗値が最大となる。なお、可変抵抗部としてバイポーラトランジスタに限定されるものではなく、例えば、ユニポーラトランジスタまたはPINダイオード等を使用してもよい。
【0026】
そして、制御回路8の交流端子22からPWM信号が平滑回路27に出力されると、PWM信号は平滑回路27により直流電圧に変換される。平滑回路27から出力された直流電圧は、第3の抵抗R3を介してバイポーラトランジスタ29のベース端子に印加され、バイポーラトランジスタ29の抵抗値を可変させる。なお、本実施の形態に係る平滑回路27は、整流回路を含んで構成してもよい。
【0027】
また、制御回路8の直流端子21から2.8[v]の電源電圧がDC/DCコンバータ26に印加されると、DC/DCコンバータ26において3.3[v]以上に昇圧される。DC/DCコンバータ26から出力された直流電圧は、第2の抵抗R2の抵抗値とバイポーラトランジスタ29のコレクタ−エミッタ間の抵抗値とによって分圧され、第2の抵抗R2の他端とバイポーラトランジスタ29のコレクタ端子との接続点25に現れた電圧がバイアス電圧として第4の抵抗R4を介して第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2に印加される。
【0028】
そして、PWM信号のパルス幅を大きくしてバイアス電圧を大きくすると、第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2の容量が小さくなって信号受信用アンテナ素子5の同調周波数が上昇する。また、PWM信号のパルス幅を小さくしてバイアス電圧を小さくすると、第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2の容量が大きくなって信号受信用アンテナ素子5の同調周波数が低下する。このとき、DC/DCコンバータ26で3.3[v]以上に昇圧された電圧からバイアス電圧を生成しているため、バイアス電圧の可変幅が大きくなり、チューニング帯域を広くとることが可能となる。なお、3.3[v]以上のバイアス電圧を得られれば本実施の形態に係る信号受信用アンテナ素子5として十分な性能を得ることが可能となる。
【0029】
以上のように、本実施の形態に係る電子機器1によれば、バッテリ等の電源電圧から出力された電圧がDC/DCコンバータ26により昇圧され、第2の抵抗R2とバイポーラトランジスタ29とにより分圧されてバイアス電圧として第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2に印加される。よって、低電圧のバッテリ駆動の電子機器1であっても、第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2に高い電圧を印加し、第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2の容量を大きく可変させて、信号受信用アンテナ素子5の利得を維持しつつチューニング帯域を広くすることが可能となる。また、PWM信号を利用してバイアス電圧を制御しているため、第1、第2のバラクタダイオードVD1、VD2の容量を精度よく制御することができる。
【0030】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明は、電源電圧が低くても、アンテナ等の電子回路の受信性能を向上させることができるという効果を有し、特にバッテリによって駆動する電子機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る電子機器の実施の形態を示す図であり、電子機器の全体構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 電子機器
2 アンテナ装置
5 信号受信用アンテナ素子(電子回路)
5a フィルム基板
5b 放射導体
6 整合回路
7 バイアス回路
8 制御回路
25 接続点
26 DC/DCコンバータ(昇圧回路)
27 平滑回路
29 バイポーラトランジスタ(可変抵抗部)
VD1 第1のバラクタダイオード(可変容量素子)
VD2 第2のバラクタダイオード(可変容量素子)
L1 第1のインダクタ
L2 第2のインダクタ
L3 第3のインダクタ
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗(抵抗)
R3 第3の抵抗
R4 第4の抵抗
C1 直流カットコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路と、前記電子回路との整合を行う可変容量素子を有した整合回路と、前記可変容量素子にバイアス電圧を供給するバイアス回路と、前記バイアス回路のバイアス電圧をパルス幅変調信号により制御する制御回路とを備え、
前記バイアス回路は、
供給される電圧を昇圧する昇圧回路と、
前記制御回路から出力されたパルス幅変調信号を平滑して直流電圧に変換する平滑回路と、
前記昇圧回路の出力端に一端が接続された抵抗と、
前記抵抗の他端に出力端が接続され、前記平滑回路の出力端に制御入力端が接続され、前記平滑回路から出力された直流電圧に基づいて出力端とグランドとの間の抵抗値が変化する可変抵抗部とを設け、
前記抵抗の他端と前記可変抵抗部の出力端との接続点から前記バイアス電圧を供給することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記可変抵抗部は、バイポーラトランジスタ、ユニポーラトランジスタ、またはPINダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記可変抵抗部は、バイポーラトランジスタであり、前記昇圧回路は、DC/DCコンバータであり、
前記バイポーラトランジスタは、コレクタに前記抵抗の他端が接続され、エミッタに前記グランドが接続され、ベースにバイアス抵抗を介して前記平滑回路が接続されており、前記ベース−エミッタ間の電圧に応じて前記コレクタ−エミッタ間の抵抗値が変化することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子回路は、信号受信用アンテナであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記信号受信用アンテナは、フィルム基板と前記フィルム基板の表面に設けられた放射導体とからなることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
携帯可能であると共に、前記信号受信用アンテナが地上デジタルテレビジョン放送信号の受信機能を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電子機器。


【図1】
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【公開番号】特開2010−124110(P2010−124110A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294392(P2008−294392)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】