説明

電子機器

【課題】 特に、非接触式の磁気センサを用い、第1本体と第2本体間の異なる2以上の間隔を検知して、夫々、所定のモードに移行することが可能な電子機器を提供することを目的としている。
【解決手段】 表示筐体2と操作筐体3とがヒンジ部を介して開閉自在に連結されている。前記表示筐体2には磁石7、操作筐体3には磁気抵抗効果素子(GMR素子)を備えた非接触式の磁気センサ8が内蔵されている。前記磁気センサ8が、前記表示筐体2と操作筐体3間を閉じる途中での外部磁界の磁界強度を検知して第1の検知信号を生成し、制御部では、前記検知信号によりスリープモードに比べて簡易的な消費電力低減モードを起動し、さらに、表示筐体2と操作筐体3間を閉じると磁気センサ8は第2の検知信号を生成し、制御部ではスリープモードを起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の磁気センサを用い、第1本体と第2本体間の異なる2以上の間隔を検知して夫々、所定のモードに移行することが可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば表示筐体と操作筐体とがヒンジ部を介して連結されて成るノート型パーソナルコンピュータでは、前記表示筐体と操作筐体間を閉じると機械的なスイッチが押圧されることでスリープモードに移行するように制御されている。
【0003】
また折畳み式の携帯電話では、前記表示筐体と操作筐体間を開いたときに自動的に表示筐体に設けられているバックライトが点灯するように制御されている。
【特許文献1】特開2003−007168号公報
【特許文献2】特許第2944910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上記したノート型パーソナルコンピュータでは、スリープモードに移行した場合、その後、前記表示筐体と操作筐体間を開いても、デバイスは直ぐには再起動せず、決められたアクセス条件、例えばパスワードを入力することが必要であった。
【0005】
スリープモードは、デバイスを停止させ、再起動用の電力しか消費せずデバイスの消費電力を低減させるための機構としてノート型パーソナルコンピュータ等に用いられている。
【0006】
前記スリープモードは、ノート型パーソナルコンピュータを長時間使用しないような場合には効果的であるが、ノート型パーソナルコンピュータを短時間だけ閉じる度にスリープモードに移行したのでは、その都度、デバイスを立ち上げる操作が必要となり使い勝手が悪かった。
【0007】
また従来では、機械的なスイッチを用いて、前記表示筐体と操作筐体間が閉じられたことを検知しスリープモードに移行するため、例えば開いた状態から閉じるまでの途中状態を検知して、スリープモード以外のモードを起動させるようなことはしていなかった。
折畳み式の携帯電話でも同様で従来では開閉検知しか行っていなかった。
【0008】
上記した特許文献1,2には、押圧距離(押圧力)に応じて複数回のスイッチング動作が可能なスイッチ機構が開示されている。
【0009】
しかしながら上記した特許文献1,2に記載されたスイッチは接触式であるため、例えば前記スイッチをノート型コンピュータ等に搭載した場合、押圧により磨耗が生じる等して長寿命を得ることが出来なかった。またスイッチ構造の小型化が困難であった。さらに、接触式のスイッチのため、表示筐体と操作筐体間を開いた状態から閉じるまでの途中状態の検知は不可能であった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、非接触式の磁気センサを用い、第1本体と第2本体間の異なる2以上の間隔を検知して、夫々、所定のモードに移行することが可能な電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子機器は、第1本体と第2本体を有し、前記第1本体と前記第2本体間の間隔は変動可能とされており、
前記第1本体及び第2本体の一方に磁石、他方に前記磁石から発せられた外部磁界を検出できる磁気検出素子を備えた非接触式の磁気センサが設けられており、
前記磁気センサは、少なくとも、前記第1本体と前記第2本体間が開いた状態で前記磁石と前記磁気検出素子間が第1の距離となったときに、前記外部磁界の前記第1の距離に基づく磁界強度を検知して第1の検知信号を、前記磁石と前記磁気検出素子間が、前記第1の距離よりも小さい第2の距離となったとき、前記外部磁界の前記第2の距離に基づく磁界強度を検知して第2の検知信号を夫々生成し、
前記第1の検知信号、及び、前記第2の検知信号に基づいて、夫々、所定のモードに移行可能な制御部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、第1本体と第2本体間の間隔が変動する形態の電子機器において、2以上の異なる間隔に応じて、夫々、所定のモードに移行させることを可能としている。よって、例えばノート型パーソナルコンピュータの第1本体と第2本体間の開閉時、従来に比べてバラエティに富むモード切換えを行うことができる。また、非接触式の磁気センサを用いることで、長寿命を得ることができ、また磁気センサの小型化を促進できる。
【0013】
本発明では、前記磁気センサは、前記第1本体と前記第2本体間の開閉検知用に用いられる前記第2の検知信号と、前記開閉検知とは別に、前記第1本体と前記第2本体間を開いた状態から閉じるまでの途中状態を検知するための前記第1の検知信号を生成するものであることが好ましい。例えば開閉検知は、別の磁気センサや従来と同様に機械的なスイッチで行ってもよいが、本発明の磁気センサが開閉検知も兼ねることで、電子機器に搭載されるセンサ機構を簡単にすることができる。
【0014】
例えば本発明の前記電子機器は、前記第1本体に表示部を、前記第2本体に操作部を備えるノート型パーソナルコンピュータであり、
使用状態において、第1本体と第2本体間を開いた状態から閉じる方向へ移動させて前記第1の距離となったときに、前記第1の検知信号に基づき、スリープモードより簡易的な消費電力低減モードに移行し、
前記第2の距離となったときに、前記第2の検知信号に基づいて前記スリープモードに移行することが好ましい。
【0015】
本発明では、前記制御部は、前記第1の距離から第1本体と第2本体間を再び開くと、前記消費電力低減モードが解除されて前記使用状態に復帰できるように制御していることが好ましい。
【0016】
また、前記消費電力低減モードでは、前記表示部の表示が消えるように制御されていることが好ましい。またこのとき、前記消費電力低減モードでは、前記表示部の裏側に設けられたバックライトが消灯するように制御されていることが好ましい。
【0017】
「使用状態」とは電源を入れて各種デバイスが起動している状態を指す。上記のように、第1本体と第2本体間を開いた状態から閉じるまでの間に、スリープモードになる前に簡易的な消費電力低減モードを起動させることができ、しかもその状態から再び第1本体と第2本体間を開くと前記消費電力低減モードが解除されて使用状態に復帰できるので、例えば、ノート型パーソナルコンピュータを短時間使用しない場合のように、わざわざスリープモードにすることなく消費電力を低減させることが可能であり、使い勝手を向上させることが出来る。
【0018】
また本発明の前記電子機器は、前記第1本体に表示部を、前記第2本体に操作部を備える折畳み式携帯電話であり、
通話状態において、第1本体と第2本体とを開いた状態から閉じる方向へ移動させて前記第1の距離となったときに、前記第1の検知信号に基づいて通話保留モードに移行し、
前記第1の距離から、さらに第1本体と第2本体とを閉じる方向へ移動させて前記第2の距離となったときに、前記第2の検知信号に基づいて通話の切断モードに移行することが好ましい。
【0019】
またこのとき、前記制御部は、前記第1の距離から第1本体と第2本体間を再び開くと、前記通話保留モードが解除されて前記通話状態に復帰できるように制御されていることが好ましい。
【0020】
従来では、通話を保留するには、通話中に、操作部の所定釦を押す等する操作が必要であったが、本発明では、第1本体と第2本体間を開いた状態から閉じる方向へ途中まで移動させるだけで、通話保留モードに移行でき、またその状態から第1本体と第2本体とを開くだけで再び通話状態に戻すことができるから、従来に比べて使い勝手を向上できる。
【0021】
本発明では、前記磁気センサは、同じ方向からの前記外部磁界の磁界強度に対して磁気感度が異なる磁気抵抗効果を利用した第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子とを有し、前記第1磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化に基づき前記第1の検知信号が生成され、前記第2磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化に基づき前記第2の検知信号が生成されることが好ましい。これにより、同じ方向からの外部磁界の異なる磁界強度を適切に検知することが出来る。
【0022】
また本発明では、各検知信号は共通の閾値により生成されることが磁気センサの回路構成を簡単にでき、また磁気センサの小型化に寄与して好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、第1本体と第2本体間の間隔が変動する形態の電子機器において、2以上の異なる間隔に応じて、夫々、所定のモードに移行させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、ノート型パーソナルコンピュータ(電子機器)の斜視図、図2は、図1のノート型パーソナルコンピュータを開いた状態から閉じるまでの途中の状態を示す前記ノート型パーソナルコンピュータの側面図、図3は、ノート型パーソナルコンピュータを閉じた状態を示すノート型パーソナルコンピュータの側面図、図4は、折畳み式携帯電話(電子機器)の平面図、図5は、図4の折畳み式携帯電話を開いた状態から閉じるまでの途中の状態を示す前記折畳み式携帯電話の側面図、図6は、折畳み式携帯電話を閉じた状態を示す折畳み式携帯電話の側面図、図7は、電子機器内に内蔵される磁気センサの回路構成図、図8は本実施形態の磁気センサの平面図、図9は、前記磁気センサに内蔵される磁気抵抗効果素子(GMR素子)の断面図、図10は、本実施形態におけるノート型パーソナルコンピュータの部分ブロック図、図11は、本実施形態における折畳み式携帯電話の部分ブロック図、図12は、第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子のR−H曲線を示すグラフ、図13は、外部磁界と、第1磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化に基づく整形後の電圧値との関係を示すグラフ、図14は、外部磁界と、第2磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化に基づく整形後の電圧値との関係を示すグラフ、である。
【0025】
図1に示すノート型パーソナルコンピュータ1は、表示筐体2と操作筐体3とがヒンジ部を介して開閉自在に連結されている。図1は、前記表示筐体2と操作筐体3を開いた使用状態を示している。
【0026】
図1に示すように前記表示筐体2の前記操作筐体3との対向面2aには、液晶等の表示部4が設けられている。また、前記操作筐体3の前記表示筐体2との対向面3aにはキーボード5やタッチパッド6等の操作部19が設けられている。
【0027】
図1に示すように前記表示筐体2の内部には、磁石7が設けられており、前記操作筐体3の内部には非接触式の磁気センサ8が設けられている。前記磁石7と前記磁気センサ8は、前記表示筐体2と操作筐体3間を閉じたときにちょうど高さ方向にて対向する位置か、あるいは前記対向する位置からややずれて配置されている(図3を参照)。
【0028】
図1に示す使用状態では、電源を入れて各種デバイスが起動している。表示部4には、デスクトップ上の各種アイコン、あるいはキーボード5により打ち込んだ文字等が表示されている。
【0029】
このようにデバイスが起動している使用状態で、前記表示筐体2をヒンジ部にて回動させて、図2の状態まで前記表示筐体2と前記操作筐体3間を近付けると、前記磁石7と、前記磁気センサ8内に含まれる外部磁界を検知するための磁気検出素子間の距離が第1の距離T1となり、前記磁気センサ8は、前記磁石7から発せられる外部磁界の第1の磁界強度HAを検知して第1の検知信号を生成し出力する。前記第1の距離T1及び後述する第2の距離T2は、例えば、前記磁石7の膜厚中心から前記磁気検出素子の膜厚中心(後述する磁気抵抗効果素子の場合、フリー磁性層の膜厚中心)までの直線距離として定義される。
【0030】
図10に示すように前記磁気センサ8から前記ノート型パーソナルコンピュータ1内に内蔵されている制御部9に、前記第1の検知信号が入力されると、前記制御部9では、前記第1の検知信号に基づいて、例えば前記表示筐体2の内部であって、表示部4の裏側に設けられたバックライト(図示せず)を消灯して、前記表示部4の表示を消す小消費電力低減モードに移行する。
【0031】
この小消費電力低減モードは、前記バックライトを消灯するだけであるからスリープモードに比べて簡易的な消費電力モードである。ここで「簡易的」とは、起動しているデバイアスの停止がスリープモードに比べて小規模である状態を言う。小消費電力低減モードでは、キーボード5やマウス等の入力装置や、CPU、記憶装置といった各種デバイスは起動した状態のままであり、上記のように例えば、バックライトを消灯するだけである。よって小消費電力低減モードでは、スリープモードに比べて消費電力の低減効果は小さいが、制御部9は、図2の状態から、再び、図1の状態へ、表示筐体2と操作筐体3間を開くと、前記小消費電力低減モードを解除して前記バックライトを点灯させ、前記表示部4に、前記ノート型パーソナルコンピュータ1を閉じる前の使用状態に復帰できるように制御している。したがって、短時間だけノート型パーソナルコンピュータ1を使用せず、わざわざスリープモードにするほどでない場合に効果的に適用できる。
【0032】
一方、図3に示すように、前記表示筐体2と操作筐体3とを閉じると、前記磁石7と、磁気センサ8に設けられる磁気検出素子間が図2に示す第1の距離T1よりも短い第2の距離T2になる。
【0033】
図3のように閉じた状態で磁気センサ8が受ける外部磁界と、図2の閉じるまでの途中状態時に磁気センサ8が受ける外部磁界とは、同じ方向であるが、図3の状態では、図2の状態に比べて、前記磁石7から前記磁気センサ8に発せられる外部磁界Hの磁界強度は強まる。このとき、前記磁気センサ8では、前記磁石7から発せられる外部磁界の第2の磁界強度HB(図2の第1の磁界強度HAより強い)を検知して第2の検知信号を生成し出力する。
【0034】
そして図10に示す制御部9に、前記第2の検知信号が入力されると、前記制御部9では、前記第2の検知信号に基づいて、一定時間アクセスが無い限り各種デバイスを停止し、再起動用の電力のみを消費するスリープモードに移行する。スリープモードの起動は、前記ノート型パーソナルコンピュータ1を長時間使用しない場合等に効果的である。
【0035】
なお一旦、前記スリープモードになると、図3の状態から図2の状態にまで、さらには図1の状態にまで表示筐体2と操作筐体3間を開いても、スリープモードは解除されず、キーボード5の所定釦を押圧する等の所定アクセスにより前記スリープモードを解除できる。
【0036】
以上のように、本実施形態のノート型パーソナルコンピュータ1に設けられた磁気センサ8では、前記表示筐体2と操作筐体3間を閉じる過程で、前記磁石7と磁気センサ8に設けられた磁気検出素子間の距離に応じて、第1の検知信号、第2の検知信号を生成し、制御部9では、前記第1の検知信号及び前記第2の検知信号に基づいて、夫々、所定のモードに移行可能なように制御している。
【0037】
従来では、ノート型パーソナルコンピュータ1の表示筐体2と操作筐体3間を閉じるとスリープモードが起動するように制御されていたが、閉じるまでの途中状態で前記スリープモードよりも簡易的な消費電力低減モードを起動するような制御はされていなかった。本実施形態では、前記スリープモードとなる前に、閉じるまでの途中状態で簡易的な消費電力低減モードを起動させることができるように制御されており、よってノート型パーソナルコンピュータ1の使用者は、ノート型パーソナルコンピュータ1の開閉という非常に簡単な操作で、簡易的な消費電力低減モードか、スリープモードかを選択でき、従来に比べて使い勝手を向上させることが出来る。
【0038】
また、図2の状態から図1の状態へ表示筐体2と操作筐体3間を開いたときに、例えばマウスを動かす等の簡単な操作で消費電力低減モードを解除できるようにしてもよいが、図2の状態から図1の状態へ再び表示筐体2と操作筐体3間を開くだけの操作で、図2のときに起動した例えばバックライトを消灯して表示部4の表示を消す小消費電力低減モードを解除して、使用状態に復帰できるようにすれば、本実施形態のノート型パーソナルコンピュータ1は、使用者にとって、短時間だけノート型パーソナルコンピュータ1を使用しない場合等に、非常に使い勝手がよいものとなる。
【0039】
また、例えば、前記表示筐体2と操作筐体3間の開閉検知は、図3での第2の磁界強度HBの検知により行うことができるので、開閉検知用として、別に磁気センサや機械的なスイッチ等を用いる必要性がなく、前記ノート型パーソナルコンピュータ1に搭載されるセンサ機構を簡単なものに出来る。
【0040】
また本実施形態では、非接触式の磁気センサを用いるので、長寿命を得ることができ、しかも磁気センサの小型化も促進できる。
【0041】
図4に示す折畳み式携帯電話10に本実施形態の非接触式の磁気センサ8及び磁石7を内蔵してもよい。
【0042】
前記折畳み式携帯電話10は、表示筐体11と操作筐体12とがヒンジ部13を介して開閉自在に連結されている。折畳み式携帯電話10を閉じたときに前記前記操作筐体12に対向する前記表示筐体11の対向面11aには、表示部20やスピーカ14が設けられている。また折畳み式携帯電話10を閉じたときに前記前記表示筐体11に対向する前記操作筐体12の対向面12aには、各種釦15やマイク16が設けられている。
【0043】
図4に示すように、前記表示筐体11の内部には、磁石7が設けられており、前記操作筐体12の内部には非接触式の磁気センサ8が設けられている。前記磁石7と前記磁気センサ8は、前記表示筐体11と操作筐体12間を閉じたときにちょうど高さ方向にて対向する位置か、あるいは前記対向する位置からややずれて配置されている(図6参照)。
【0044】
今、図4に示す表示筐体2と操作筐体3間を開いた状態で通話モードとなっているとする。
【0045】
このように通話モードの状態で、前記表示筐体11をヒンジ部13にて回動させ、図5に示す状態にまで前記表示筐体11と前記操作筐体12間を近付けると、前記磁石7と、前記磁気センサ8内に含まれる外部磁界を検知するための磁気検出素子間の距離が第1の距離T1となり、前記磁気センサ8は、前記磁石7から発せられる外部磁界の第1の磁界強度HAを検知して第1の検知信号を生成し出力する。
【0046】
図11に示すように前記磁気センサ8から前記折畳み式携帯電話10内に内蔵されている制御部17に、前記第1の検知信号が入力されると、前記制御部17では、前記第1の検知信号に基づいて、保留音声部18からスピーカ14へ保留音を流するとともにマイク16の使用を中断する通話保留モードへ移行する。
【0047】
図5の状態から、再び、図4の状態へ、前記表示筐体11と操作筐体12間を開くと、前記第1の検知信号の制御部17への入力は無くなって再び通話モードに移行する。
【0048】
一方、図6に示すように、前記表示筐体11と操作筐体12間を閉じると、前記磁石7と磁気センサ8に設けられる磁気検出素子間が図5に示す第1の距離T1よりも短い第2の距離T2になる。
【0049】
図6のように閉じた状態で磁気センサ8が受ける外部磁界と、図5の閉じるまでの途中状態時に磁気センサ8が受ける外部磁界とは、同じ方向であるが、図6の状態では、図5の状態に比べて、前記磁石7から前記磁気センサ8に発せられる外部磁界Hの磁界強度は強まる。このとき、前記磁気センサ8では、前記磁石7から発せられる外部磁界の第2の磁界強度HB(図5の第1の磁界強度HAより強い)を検知して第2の検知信号を生成し出力する。
【0050】
そして図11に示す制御部17に、前記第2の検知信号が入力されると、前記制御部17では、前記第2の検知信号に基づいて、スピーカ14及びマイク16の使用を無効とし相手方との通話を切断するモード、すなわち電話を切るモードに移行する。
【0051】
以上のように、本実施形態の折畳み式携帯電話10には、前記表示筐体11と操作筐体12間を閉じる過程で、前記磁石7と磁気センサ8間の距離に応じて、通話保留モード、あるいは、通話切断モードに移行可能な制御部17を有している。
【0052】
このように本実施形態では、これら2つのモードを閉じる際の表示筐体11と操作筐体12間の距離で変更可能にしているので、折畳み式携帯電話10にて通話している使用者は、非常に簡単な操作で、例えば通話を保留するか、通話を切断するかを選択でき、従来に比べて使い勝手を向上させることが出来る。
【0053】
また、図5の状態から図4の状態へ表示筐体11と操作筐体12間を開いたときに、例えばある所定釦を押して、通話保留モードを解除できるようにしてもよいが、図5の状態から図4の状態へ再び表示筐体11と操作筐体12間を開くだけの操作で通話モードに戻るようにすれば、誤った釦を押して電話を切ってしまう等の不具合が生じにくく使い勝手が良い。
【0054】
また、記表示筐体11と操作筐体12間の開閉検知は、図6での第2の磁界強度HBの検知により行うことができるので、開閉検知用として、別に磁気センサや機械的なスイッチ等を用いる必要性がなく、折畳み式携帯電話10に搭載されるセンサ機構を簡単なものに出来る。
【0055】
また本実施形態では、非接触式の磁気センサを用いるので、長寿命を得ることができ、しかも磁気センサの小型化も促進できる。
【0056】
本実施形態の磁気センサ8の具体的構成について説明する。図7に示すように本実施形態の磁気センサ8は、抵抗素子部21と集積回路(IC)22とを有して構成される。
【0057】
前記抵抗素子部21には、第1磁気抵抗効果素子23と第1固定抵抗素子24とが第1出力取り出し部25を介して直列接続された第1直列回路26、及び、第2固定抵抗素子27と第2磁気抵抗効果素子28とが第2出力取り出し部29を介して直列接続された第2直列回路30が設けられる。
【0058】
図7に示すように前記集積回路22には、第3固定抵抗素子31と第4固定抵抗素子32が第3出力取り出し部33を介して直列接続された第3直列回路34が設けられる。
【0059】
前記第3直列回路34は、共通回路として前記第1直列回路26及び前記第2直列回路30と夫々ブリッジ回路を構成している。以下では前記第1直列回路26と前記第3直列回路34とが並列接続されてなるブリッジ回路を第1ブリッジ回路BC1と、前記第2直列回路30と前記第3直列回路34とが並列接続されてなるブリッジ回路を第2ブリッジ回路BC2と称する。
【0060】
図7に示すように、前記第1ブリッジ回路BC1では、第1磁気抵抗効果素子23と、前記第4固定抵抗素子32が並列接続されるとともに、前記第1固定抵抗素子24と前記第3固定抵抗素子31が並列接続されている。また前記第2ブリッジ回路BC2では、前記第2固定抵抗素子27と、前記第3固定抵抗素子31が並列接続されるとともに、前記第2磁気抵抗効果素子28と前記第4固定抵抗素子32が並列接続されている。
【0061】
図7に示すように前記主磁極層籍回路22内には、入力端子(電源)39、アース端子42及び2つの外部出力端子40,41が設けられている。前記入力端子39、アース端子42及び外部出力端子40,41は夫々図示しない機器側の端子部とワイヤボンディングやダイボンディング等で電気的に接続されている。
【0062】
前記入力端子39に接続された信号ライン50及び前記アース端子42に接続された信号ライン51は、前記第1直列回路26,第2直列回路30及び第3直列回路34の両側端部に設けられた電極の夫々に接続されている。
【0063】
図7に示すように集積回路22内には、1つの差動増幅器35が設けられ、前記差動増幅器35の+入力部、−入力部のどちらかに、前記第3直列回路34の第3出力取り出し部33が接続されている。なお、前記第3出力取り出し部33と前記差動増幅器35の接続は、次に説明する、前記第1直列回路26の第1出力取り出し部25及び第2直列回路30の第2出力取り出し部29と差動増幅器35間の接続状態と異なって固定されている(非接続状態にはならない)。
【0064】
前記第1直列回路26の第1出力取り出し部25及び第2直列回路30の第2出力取り出し部29は夫々第1スイッチ回路36の入力部に接続され、前記第1スイッチ回路36の出力部は前記差動増幅器35の−入力部、+入力部のどちらか(前記第3出力取り出し部33が接続されていない側の入力部)に接続されている。
【0065】
図7に示すように、前記差動増幅器35の出力部はシュミットトリガー型のコンパレータ38に接続され、さらに前記コンパレータ38の出力部は第2スイッチ回路43の入力部に接続され、さらに前記第2スイッチ回路43の出力部側は2つのラッチ回路46,47及びFET回路54、55を経て第1外部出力端子40及び第2外部出力端子41に夫々接続される。
【0066】
さらに図7に示すように、前記集積回路22内には第3スイッチ回路48が設けられている。前記第3スイッチ回路48の出力部は、前記アース端子42に接続された信号ライン51に接続され、前記第3スイッチ回路48の入力部には、第1直列回路26及び第2直列回路30の一端部が接続されている。
【0067】
さらに図1に示すように、前記集積回路22内には、インターバルスイッチ回路52及びクロック回路53が設けられている。前記インターバルスイッチ回路52のスイッチがオフされると集積回路22内への通電が停止するようになっている。前記インターバルスイッチ回路52のスイッチのオン・オフは、前記クロック回路53からのクロック信号に連動しており、前記インターバルスイッチ回路52は通電状態を間欠的に行う節電機能を有している。
【0068】
前記クロック回路53からのクロック信号は、第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、及び第3スイッチ回路48にも出力される。前記第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、及び第3スイッチ回路48では前記クロック信号を受けると、そのクロック信号を分割し、非常に短い周期でスイッチ動作を行うように制御されている。例えば1パルスのクロック信号が数十msecであるとき、数十μmsec毎にスイッチ動作を行う。
【0069】
前記磁気センサ8は図8に示すようにパッケージ化されており、その外周に、前記入力端子39、アース端子42及び2つの外部出力端子40,41が露出している。
【0070】
前記第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28は、共に、(+H)方向の外部磁界の磁界強度変化に基づいて巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を発揮するGMR素子である。
【0071】
ここで、(+H)方向の外部磁界はある一方向を示し、本実施形態では、図示X1方向に向く方向である(図9を参照)。
【0072】
前記第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28の層構造及びR―H曲線について以下で詳しく説明する。
【0073】
図9に示すように、前記第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28は共に、基板70上に、下から下地層60,シード層61、反強磁性層62、固定磁性層63、非磁性中間層64、67(第1磁気抵抗効果素子23の非磁性中間層を符号64、第2磁気抵抗効果素子28の非磁性中間層を符号67とした)、フリー磁性層65、及び保護層66の順で積層されている。前記下地層60は、例えば、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素の非磁性材料で形成される。前記シード層61は、NiFeCrあるいはCrで形成される。前記反強磁性層62は、元素α(ただしαは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料、又は、元素αと元素α′(ただし元素α′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成される。例えば前記反強磁性層62は、IrMnやPtMnで形成される。前記固定磁性層63及びフリー磁性層65はCoFe合金、NiFe合金、CoFeNi合金等の磁性材料で形成される。また前記非磁性中間層64,67はCu等で形成される。また前記保護層66はTa等で形成される。前記固定磁性層63やフリー磁性層65は積層フェリ構造(磁性層/非磁性層/磁性層の積層構造であり、非磁性層を挟んだ2つの磁性層の磁化方向が反平行である構造)であってもよい。また前記固定磁性層63やフリー磁性層65は材質の異なる複数の磁性層の積層構造であってもよい。
【0074】
前記第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28では、前記反強磁性層62と前記固定磁性層63とが接して形成されているため磁場中熱処理を施すことにより前記反強磁性層62と前記固定磁性層63との界面に交換結合磁界(Hex)が生じ、前記固定磁性層63の磁化方向は一方向に固定される。図9では、前記固定磁性層63の磁化方向63aを矢印方向で示している。第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28において前記固定磁性層63の磁化方向63aは共に図示X2方向である。
【0075】
また、無磁場状態(外部磁界が作用していないとき)での前記フリー磁性層65の磁化方向65aは、第1磁気抵抗効果素子23と第2磁気抵抗効果素子28共に、図示X2方向である。よって無磁場状態では、前記固定磁性層63の磁化方向63aと前記フリー磁性層65の磁化方向65aは平行状態である。
【0076】
図9に示すように前記第1磁気抵抗効果素子23と前記第2磁気抵抗効果素子28では非磁性中間層64、67の膜厚が異なっている。前記非磁性中間層64,67は上記したように例えばCuで形成されるが、Cu厚を変化させることで固定磁性層63とフリー磁性層65との間で作用する層間結合磁界Hinの大きさが変化する。
【0077】
前記第1磁気抵抗効果素子23に作用する第1層間結合磁界Hin1と、前記第2磁気抵抗効果素子28に作用する第2層間結合磁界Hin2は、同符号であり、前記第1層間結合磁界Hin1の絶対値は、前記第2層間結合磁界Hin2の絶対値よりも小さくなるように、前記非磁性中間層64,67の膜厚が調整されている。
【0078】
図12は、第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28のR−H曲線を示す。なおグラフでは縦軸が抵抗値Rであるが、抵抗変化率(%)であってもよい。図12に示すように、外部磁界を無磁場状態(ゼロ)から徐々に(+H)方向に増加していくと、第1磁気抵抗効果素子23のフリー磁性層65の磁化方向65aと固定磁性層63の磁化方向63aとの平行状態が崩れて反平行状態に近づくため前記第1磁気抵抗効果素子23の抵抗値Rは、曲線HC1上を辿って徐々に大きくなり、やがて最大抵抗値に達する。そこから(+H)方向の外部磁界を徐々にゼロに向けて小さくしていくと、前記第1磁気抵抗効果素子23の抵抗値Rは、曲線HC2上を辿って徐々に小さくなり、やがて最小抵抗値に達する。
【0079】
このように、第1磁気抵抗効果素子23のR−H曲線には、(+H)方向の外部磁界の磁界強度変化に対して、曲線HC1と曲線HC2で囲まれたループ部L1が形成される。前記第1磁気抵抗効果素子23の最大抵抗値と最低抵抗値の中間値であって、前記ループ部L1の広がり幅の中心値がループ部L1の「中点」である。そして前記ループ部L1の中点での磁界の強さで第1層間結合磁界Hin1の大きさが決定される。図12に示すように第1磁気抵抗効果素子23の前記第1層間結合磁界Hin1は(+H)方向の外部磁界方向へシフトしている。
【0080】
図12に示すように、第1磁気抵抗効果素子23の電気抵抗値が変化する外部磁界の磁界強度では、第2磁気抵抗効果素子28の電気抵抗値は変化しない。すなわち前記第2磁気抵抗効果素子28のフリー磁性層65の磁化方向65aと固定磁性層63の磁化方向63aは、図9に示す平行状態を保ち電気抵抗値が低いままとなっている。
【0081】
さらに(+H)方向からの外部磁界の磁界強度を強くしていくと、やがて、第2磁気抵抗効果素子28のフリー磁性層65の磁化方向65aが、図示X2方向から徐々に図示X1方向へ移動し、前記フリー磁性層65の磁化方向65aと固定磁性層63の磁化方向63aとの平行状態が崩れて反平行状態に近づくため前記第2磁気抵抗効果素子28の抵抗値Rは、曲線HC3上を辿って徐々に大きくなり、やがて最大抵抗値に達する。そこから(+H)方向の外部磁界の磁界強度を徐々に小さくしていくと、前記第2磁気抵抗効果素子28の抵抗値Rは、曲線HC4上を辿って徐々に小さくなり、やがて最小抵抗値に達する。
【0082】
このように、第2磁気抵抗効果素子28のR−H曲線には、(+H)方向の外部磁界の磁界強度変化に対して、曲線HC3と曲線HC4で囲まれたループ部L2が形成される。前記第2磁気抵抗効果素子28の最大抵抗値と最低抵抗値の中間値であって、前記ループ部L2の広がり幅の中心値がループ部L1の「中点」である。そして前記ループ部L2の中点での磁界の強さで第2層間結合磁界Hin2の大きさが決定される。図12に示すように第2磁気抵抗効果素子28の前記第2層間結合磁界Hin2は(+H)方向の外部磁界方向へシフトしている。
【0083】
(+H)方向の外部磁界の磁界強度を正値、前記(+H)方向とは反対の(−H)方向の外部磁界の磁界強度を負値とすれば、前記第1磁気抵抗効果素子23の第1層間結合磁界Hin1と第2磁気抵抗効果素子28の第2層間結合磁界Hin2は共に正値である。なお、前記第1磁気抵抗効果素子23の第1層間結合磁界Hin1と第2磁気抵抗効果素子28の第2層間結合磁界Hin2は共に負値であってもよい。
【0084】
いずれにしても本実施形態では、第1層間結合磁界Hin1と第2層間結合磁界Hin2が同符号で、しかも、前記第1層間結合磁界Hin1の絶対値と前記第2層間結合磁界Hin2の絶対値が異なる大きさに調整されている。これにより前記第1磁気抵抗効果素子23と第2磁気抵抗効果素子28の同じ方向からの外部磁界の磁界強度に対する磁気感度は異なっている。
【0085】
本実施形態では、第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28は、共に、(+H)方向からの外部磁界の磁界強度変化に対して電気抵抗値が変化するが、第2磁気抵抗効果素子28は、第1磁気抵抗効果素子23に比べ、より強い磁界強度にて電気抵抗値が変化する。
【0086】
このように、第1磁気抵抗効果素子23と第2磁気抵抗効果素子28を同じ方向からの外部磁界の磁界強度に対して磁気感度を異ならせる理由は、図2,図3、及び図5及び図6で説明したように、表示筐体と操作筐体間の開閉距離に伴い前記磁気センサ8に磁石7から作用する外部磁界は、磁界強度は異なるが方向は同じだからである。
【0087】
一方、第1固定抵抗素子24、第2固定抵抗素子27、第3固定抵抗素子31及び第4固定抵抗素子32は、いずれも外部磁界に対して電気抵抗値は変化しない。
【0088】
例えば、第1固定抵抗素子24、第2固定抵抗素子27、第3固定抵抗素子31及び第4固定抵抗素子32は、前記第1磁気抵抗効果素子23や第2磁気抵抗効果素子28と同じ材料構成で形成されるが、前記第1磁気抵抗効果素子23や第2磁気抵抗効果素子28と異なって、フリー磁性層65と非磁性中間層64とが逆積層されている。すなわち、第1固定抵抗素子24、第2固定抵抗素子27、第3固定抵抗素子31及び第4固定抵抗素子32は、下から下地層60、シード層61、反強磁性層62、固定磁性層63、フリー磁性層65、非磁性中間層64、及び保護層66の順に積層される。前記フリー磁性層65は、前記固定磁性層63に接して形成されるため、第1磁気抵抗効果素子23や第2磁気抵抗効果素子28のように外部磁界に対して磁化変動せず、もはやフリー磁性層65として機能しない(固定磁性層63と同様に磁化方向が固定された磁性層である)。
【0089】
このように、第1固定抵抗素子24、第2固定抵抗素子27、第3固定抵抗素子31及び第4固定抵抗素子32を、前記第1磁気抵抗効果素子23や第2磁気抵抗効果素子28と同じ材料構成で形成することで、前記第1磁気抵抗効果素子23及び第2磁気抵抗効果素子28の温度係数(TCR)と、各固定抵抗素子24、27、31、32の温度係数とのばらつきを抑制できる。
【0090】
次に、外部磁界の検出原理について説明する。
図7は、第1ブリッジ回路BC1と第1外部出力端子40とが接続された回路状態を示す。
【0091】
本実施形態の磁気センサ8に作用する(+H)方向の外部磁界がゼロから徐々に大きくなると、まず、第1磁気抵抗効果素子23の電気抵抗値が変動し、前記第1直列回路26の第1出力取り出し部25での中点電位が変動する。
【0092】
今、図1に示す回路状態では、前記第3直列回路34の第3出力取り出し部33の中点電位を基準電位とし、前記第1直列回路26と第3直列回路34とで構成される第1ブリッジ回路BC1の第1出力取り出し部25と第3出力取り出し部33との差動電位を、前記差動増幅器35にて生成し、コンパレータ38に向けて出力する。前記コンパレータ38では、シュミットトリガー入力により前記差動電位がデジタル波形に整形される。
【0093】
図13は、外部磁界Hの磁界強度と、前記第1外部出力端子40から出力される信号(電圧値)との関係を示している。前記外部磁界Hが無磁場状態から+H1となったとき、出力信号はHighからLowとなる。一方、外部磁界Hが+H2以下になると、出力信号はLowからHighになる。
【0094】
次に、図7に示す第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、及び第3スイッチ回路48のスイッチ動作により、第2ブリッジ回路BC2と第2外部出力端子41とが接続される場合と考える。
【0095】
本実施形態の磁気センサ8に作用する(+H)方向の外部磁界がゼロから徐々に大きくなり、第1磁気抵抗効果素子23の電気抵抗値が変動する外部磁界強度を越えて、外部磁界が大きくなると、やがて、前記第2磁気抵抗効果素子28の電気抵抗値が変動し、前記第2直列回路30の第2出力取り出し部29での中点電位が変動する。
【0096】
このとき、前記第3直列回路34の第3出力取り出し部33の中点電位を基準電位とし、前記第2直列回路30と第3直列回路34とで構成される第2ブリッジ回路BC2の第2出力取り出し部29と第3出力取り出し部33との差動電位を、前記差動増幅器35にて生成し、コンパレータ38に向けて出力する。前記コンパレータ38では、シュミットトリガー入力により前記差動電位がデジタル波形に整形される。
【0097】
図14は、外部磁界Hの磁界強度と、前記第2外部出力端子41から出力される信号(電圧値)との関係を示している。前記外部磁界Hが無磁場状態から+H3となったとき、出力信号はHighからLowとなる。一方、外部磁界Hが+H4以下になると、出力信号はLowからHighになる。
【0098】
本実施形態では、図7に示すように、差動増幅器35及びコンパレータ38をそれぞれ一つずつ設け、図13及び図14に示すように、シュミットトリガー入力により前記差動電位をデジタル波形に整形する際のスレッショルドレベル(閾値電位)を、第1ブリッジ回路BC1から得られた差動電位、及び第2ブリッジ回路BC2から得られた差動電位に対して共通化している。よって回路構成を簡単にできる。
【0099】
以上、図7ないし図9、及び図12ないし図14にて説明した磁気センサ8が、図1に示すノート型パーソナルコンピュータ1に内蔵されると、図2に示す状態にて前記磁気センサ8の第1磁気抵抗効果素子23に作用する外部磁界Hの第1の磁界強度が+H1であると、図13に示すように、第1外部出力端子40から出力される信号は、HighからLowとなり、Low信号(第1の検知信号)が図10に示す制御部9内に送信される。制御部9では、第1外部出力端子40からLow信号を受けると、表示筐体2内部に設けられたバックライトを消灯するように制御されており、バックライトが消灯されることで表示部4の表示が消える。
【0100】
また図2の状態から表示筐体2と操作筐体3間を開き、前記第1磁気抵抗効果素子23に作用する外部磁界Hの磁界強度が+H2になると、第1外部出力端子40から出力される信号は、LowからHighとなり、High信号が図10に示す制御部9内に送信される。制御部9では、第1外部出力端子40からHigh信号を受けると、表示筐体2内部に設けられたバックライトを点灯するように制御されており、これにより使用状態に復帰できる。
【0101】
さらに図3に示すように、ノート型パーソナルコンピュータ1の表示筐体2と操作筐体3間を閉じたとき、第2磁気抵抗効果素子28に作用する外部磁界Hの第2の磁界強度が+H3であると、図14に示すように、第2外部出力端子41から出力される信号は、HighからLowとなり、Low信号(第2の検知信号)が図10に示す制御部9内に送信される。制御部9では、第2外部出力端子41からLow信号を受け、一定時間経過すると、スリープモードに移行するように制御されている。
【0102】
また、図7ないし図9、及び図12ないし図14にて説明した磁気センサ8が、図4に示す折畳み式携帯電話10に内蔵されると、図5に示す状態にて前記磁気センサ8の第1磁気抵抗効果素子23に作用する外部磁界Hの第1の磁界強度が+H1であると、図13に示すように、第1外部出力端子40から出力される信号は、HighからLowとなり、Low信号(第1の検知信号)が図11に示す制御部17内に送信される。制御部17では、第1外部出力端子40からLow信号を受けると、通話モードを保留するモードとなるように制御する。
【0103】
また図5の状態から表示筐体11と操作筐体12間を開き、前記第1磁気抵抗効果素子23に作用する外部磁界Hの磁界強度が+H2になると、第1外部出力端子40から出力される信号は、LowからHighとなり、High信号が図11に示す制御部17内に送信される。制御部17では、第1外部出力端子40からHigh信号を受けると、保留モードを解除し、通話モードに復帰するように制御されている。
【0104】
さらに図6に示すように、折畳み式携帯電話10の表示筐体11と操作筐体12間を閉じたとき、第2磁気抵抗効果素子28に作用する外部磁界Hの第2の磁界強度が+H3であると、図14に示すように、第2外部出力端子41から出力される信号は、HighからLowとなり、Low信号(第2の検知信号)が図11に示す制御部17内に送信される。制御部17では、第2外部出力端子41からLow信号を受けると、通話を切断するモードに移行するように制御されている。
【0105】
以上、図1ないし図6では電子機器としてノート型パーソナルコンピュータ1及び折畳み式携帯電話10を提示したが、電子機器は、ノート型パーソナルコンピュータ1や折畳み式携帯電話10以外であってもよい。例えば第1本体と第2本体とがヒンジ部を介して回動する開閉式のものでなく、第1本体と第2本体間の間隔が変動するもので、前記間隔を2段階以上検知するもの、例えば、ワイパー機構やシートポジションの検出部に使用することもできる。
【0106】
また上記の実施形態では、外部磁界の検知は、2段階であったが、3段階以上であってもよい。かかる場合には同一方向の外部磁界の磁界強度に対して感度が異なる3つ以上の磁気抵抗効果素子を設け、これら磁気抵抗効果素子を別々のブリッジ回路に組むことで達成できる。
【0107】
また外部磁界を検出する素子としては、GMR素子以外に、異方性磁気抵抗効果(AMR)を利用したAMR素子やトンネル磁気抵抗効果(TMR)を利用したTMR素子であってもよい。ホール素子にも適用できる。
【0108】
ただし本実施形態では、GMR素子やTMR素子を使用することが好適である。層間結合磁界Hinを調整することで簡単に図12に示すR−H曲線を得て、同じ方向の外部磁界Hの磁界強度変化に対して磁気感度が異なる複数の磁気検出素子を形成できるからである。またGMR素子やTMR素子では微小磁界を検知しやすく、図2や図3に示すようにやや開いた状態での磁気検出を適切に行うことができ第1本体と第2本体間の開閉距離を複数段階で検知しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】ノート型パーソナルコンピュータ(電子機器)の斜視図、
【図2】図1のノート型パーソナルコンピュータを開いた状態から閉じるまでの途中の状態を示す前記ノート型パーソナルコンピュータの側面図、
【図3】ノート型パーソナルコンピュータを閉じた状態を示すノート型パーソナルコンピュータの側面図、
【図4】折畳み式携帯電話(電子機器)の平面図、
【図5】図4の折畳み式携帯電話を開いた状態から閉じるまでの途中の状態を示す前記折畳み式携帯電話の側面図、
【図6】折畳み式携帯電話を閉じた状態を示す折畳み式携帯電話の側面図、
【図7】電子機器内に内蔵される磁気センサの回路構成図、
【図8】本実施形態の磁気センサの平面図、
【図9】前記磁気センサに内蔵される磁気抵抗効果素子(GMR素子)の断面図、
【図10】本実施形態におけるノート型パーソナルコンピュータの部分ブロック図、
【図11】本実施形態における折畳み式携帯電話の部分ブロック図、
【図12】第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子のR−H曲線を示すグラフ、
【図13】外部磁界と、第1磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化に基づく整形後の電圧値との関係を示すグラフ、
【図14】外部磁界と、第2磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化に基づく整形後の電圧値との関係を示すグラフ、
【符号の説明】
【0110】
1 ノート型パーソナルウコンピュータ
2、11 表示筐体
3、12 操作筐体
4、20 表示部
5 キーボード
7 磁石
8 磁気センサ
9、17 制御部
10 折畳み式携帯電話
13 ヒンジ部
18 保留音声部
19 操作部
21 抵抗素子部
22 集積回路(IC)
23 第1磁気抵抗効果素子
24 第1固定抵抗素子
25 第1出力取り出し部
26 第1直列回路
27 第2固定抵抗素子
28 第2磁気抵抗効果素子
29 第2出力取り出し部
30 第2直列回路
31 第3固定抵抗素子
32 第4固定抵抗素子
33 第3出力取り出し部
34 第3直列回路
35 差動増幅器
36 第1スイッチ回路
38 コンパレータ
39 入力端子
40 第1外部出力端子
41 第2外部出力端子
42 アース端子
43 第2スイッチ回路
46、47 ラッチ回路
48 第3スイッチ回路
53 クロック回路
62 反強磁性層
63 固定磁性層
64、67 非磁性中間層
65 フリー磁性層
66 保護層
70 基板
Hin1、Hin2 層間結合磁界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1本体と第2本体を有し、前記第1本体と前記第2本体間の間隔は変動可能とされており、
前記第1本体及び第2本体の一方に磁石、他方に前記磁石から発せられた外部磁界を検出できる磁気検出素子を備えた非接触式の磁気センサが設けられており、
前記磁気センサは、少なくとも、前記第1本体と前記第2本体間が開いた状態で前記磁石と前記磁気検出素子間が第1の距離となったときに、前記外部磁界の前記第1の距離に基づく磁界強度を検知して第1の検知信号を、前記磁石と前記磁気検出素子間が、前記第1の距離よりも小さい第2の距離となったとき、前記外部磁界の前記第2の距離に基づく磁界強度を検知して第2の検知信号を夫々生成し、
前記第1の検知信号、及び、前記第2の検知信号に基づいて、夫々、所定のモードに移行可能な制御部が設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記磁気センサは、前記第1本体と前記第2本体間の開閉検知用に用いられる前記第2の検知信号と、前記開閉検知とは別に、前記第1本体と前記第2本体間を開いた状態から閉じるまでの途中状態を検知するための前記第1の検知信号を生成するものである請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子機器は、前記第1本体に表示部を、前記第2本体に操作部を備えるノート型パーソナルコンピュータであり、
使用状態において、第1本体と第2本体間を開いた状態から閉じる方向へ移動させて前記第1の距離となったときに、前記第1の検知信号に基づき、スリープモードより簡易的な消費電力低減モードに移行し、
前記第2の距離となったときに、前記第2の検知信号に基づいて前記スリープモードに移行する請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の距離から第1本体と第2本体間を再び開くと、前記消費電力低減モードが解除されて前記使用状態に復帰できるように制御している請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記消費電力低減モードでは、前記表示部の表示が消えるように制御されている請求項3又は4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記消費電力低減モードでは、前記表示部の裏側に設けられたバックライトが消灯するように制御されている請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記電子機器は、前記第1本体に表示部を、前記第2本体に操作部を備える折畳み式携帯電話であり、
通話状態において、第1本体と第2本体間を開いた状態から閉じる方向へ移動させて前記第1の距離となったときに、前記第1の検知信号に基づいて通話保留モードに移行し、
前記第2の距離となったときに、前記第2の検知信号に基づいて通話の切断モードに移行する請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の距離から第1本体と第2本体間を再び開くと、前記通話保留モードが解除されて前記通話状態に復帰できるように制御している請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記磁気センサは、同じ方向からの前記外部磁界の磁界強度に対して磁気感度が異なる磁気抵抗効果を利用した第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子とを有し、前記第1磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化に基づき前記第1の検知信号が生成され、前記第2磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化に基づき前記第2の検知信号が生成される請求項1ないし8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
各検知信号は共通の閾値により生成される請求項9記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−157002(P2010−157002A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110488(P2007−110488)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】