説明

電子機器

【課題】 電源が遮断された場合に、揮発性の記憶装置内のデータを不揮発性の記憶装置に退避させ、リセット処理を行うことができる電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】 電源遮断時に電源電圧Vddが閾値電圧V以下になれば第1リセット信号を出力するリセット生成部101と、電源電圧Vddが閾値電圧Vより低い閾値電圧V以下になると第2リセット信号を出力するリセット生成部201と、第1リセット信号の出力の終了に基づいて、復帰時リセット信号を出力する復帰時リセット生成部103を設ける。データの退避を行う退避部203は、第1リセット信号によりデータの退避を開始し、第2リセット信号に基づいてリセットされる。また、退避部203は復帰時リセット信号に基づいてリセットされるので、電源電圧Vddが電圧V1以下になれば、データの退避部203はリセットされることになり、低電圧状態による異常動作を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に係り、さらに詳しくは、電源電圧の低下に基づいてリセット前処理を行う電子機器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機は、プリンタ、ファクシミリ、スキャナなどの複数の機能を有する電子機器である。複合機の電源供給が開始されると、低電圧状態での複合機内のデバイスの異常動作や破損を防止するため、デバイスのリセット処理が行われる。同様に、電源の遮断時にもデバイスのリセット処理が行われる。
【0003】
停電等により電源が遮断された場合にもリセット処理が行われる。しかしながら、直ちに複合機のハードディスクのリセット処理を行い、ハードディスクを動作中の状態のまま停止させると、その後の衝撃により、ハードディスクが読み取り用のヘッドと衝突して破損する可能性がある。また、コンパクトフラッシュ(登録商標)の書込み処理中にリセット処理が行われると、データの破損により正常に読むことができなくなるという問題が発生する。
【0004】
このため、複合機は、電源遮断時にデバイスやデータの破損等を防止するためのリセット前処理を行う必要がある。具体的には、データの消失を防止するため、揮発性メモリから不揮発性のコンパクトフラッシュメモリやハードディスクにデータを退避させる処理を行ったり、ハードディスクの破損を防止するため、ハードディスクのヘッドを初期位置に戻す処理を行ったりしている。
【0005】
このリセット前処理は、リセット処理よりも先に行われる必要がある。このため、まず、リセット前処理の開始を指示するトリガー信号を生成し、リセット前処理のために十分な時間を確保した上でリセット処理を行う必要がある。例えば、電源スイッチが押されると、リセット前処理に十分な時間を確保してからリセット処理を行う複合機がある。ただし、この複合機でも、AC電源のコンセントを抜くことにより電源が遮断される場合や停電等の場合は想定されておらず、この場合にもリセット前処理のための時間を確保できる構成にする必要がある。
【0006】
特許文献1には、電源遮断時に、リセット信号と同時にデータの退避処理を開始させるトリガー信号を生成し、リセット信号を遅延回路により遅延させることによってリセット処理の開始を遅らせ、データの退避処理を行う時間を確保する発明が記載されている。特許文献2には、電源の遮断に伴う電源電圧の低下を電圧監視回路により監視し、データの退避処理を開始する電源電圧の閾値とリセット処理を開始する電源電圧の閾値とに差を設けることにより、データの退避処理を行う時間を確保する電子機器の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−50557号公報
【特許文献2】特開2007−207167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明は、遅延回路によりリセット処理の開始を遅らせることでデータの退避処理を行う時間を確保することができる。しかしながら、電源遮断時の電源電圧の低下速度は一定ではないため、確実にリセット処理を行うことを考慮すると、リセット処理を長時間遅延させることはできず、データを退避させるのに十分な時間を確保することができないという問題があった。
【0009】
特許文献2に記載の発明は、電源電圧の閾値に差を設けることにより、データの退避処理のトリガーとなる信号とリセット信号との出力のタイミングをずらし、データの退避処理を行う時間を確保することができる。特許文献2に記載の発明において、電源電圧が第1の閾値以下に低下すると、データの退避処理が開始され、第2の閾値以下に低下すると、リセット処理が開始される。このため、電源電圧が第1の閾値以下に低下しても、第2の閾値以下に低下せずに電源電圧が回復した場合、データの退避処理は行われるが、リセット処理は行われないことになる。しかしながら、リセット処理の開始を遅らせるのはデータの退避等のリセット前処理を行う時間を確保するためであり、リセット前処理が行われた後は、デバイスの異常動作や破損を防止するためにリセット処理が行われる必要がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電源が遮断された場合に、リセット前処理を行った後、リセット処理を行うことができる電子機器を提供することを目的とする。また、電源が遮断された場合に、揮発性の記憶装置内のデータを不揮発性の記憶装置に退避させ、リセット処理を行うことができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明による電子機器は、電源電圧が第1閾値以下になれば、第1リセット信号を出力する第1リセット生成手段と、上記電源電圧が第1閾値より低い第2閾値以下になれば、第2リセット信号を出力する第2リセット生成手段と、第1リセット信号の出力の終了に基づいて、復帰時リセット信号を出力する復帰時リセット生成手段と、第1リセット信号に基づいて、リセット処理が行われる第1被リセットデバイスと、第2リセット信号及び上記復帰時リセット信号に基づいて、リセット処理が行われる第2被リセットデバイスとを備え、第2被リセットデバイスは、第1リセット信号に基づいて、リセット前処理を開始するリセット前処理手段を備えるように構成される。
【0012】
このような構成により、リセット処理が行われる閾値電圧に差を設けることにより、電源電圧が低下した場合に第1被リセットデバイスのリセット処理が早期に行われる一方、第2被リセットデバイスのリセット処理を遅らせ、リセット前処理に必要な時間を確保することができる。また、復帰時リセット信号に基づいて第2被リセットデバイスのリセット処理が行われるので、電源電圧が第1閾値以下に低下すれば、電源電圧が第2閾値以下に低下しなくても第2被リセットデバイスのリセット処理が行われ、第1被リセットデバイス及び第2被リセットデバイスの両方の異常動作や破損等を防止することができる。
【0013】
第2の本発明による電子機器は、上記構成に加え、上記リセット前処理手段は、第1リセット信号に基づいて、揮発性の記憶装置に保持されるデータを不揮発性の記憶装置に退避させる処理を開始するように構成されている。
【0014】
このような構成により、第2被リセットデバイスにリセット処理が行われるタイミングを遅らせ、揮発性の記憶装置に保持されるデータを不揮発性の記憶装置に退避させるために必要な時間を確保することができる。
【0015】
第3の本発明による電子機器は、上記構成に加え、上記復帰時リセット生成手段は、遅延回路を用いて第1リセット信号の出力の終了時から一定時間、上記復帰時リセット信号を出力するように構成されている。
【0016】
このような構成により、遅延回路を用いたリセット信号と遅延回路を用いないリセット信号との出力時のタイミングの差を利用して復帰時リセット信号を出力することができるので、電源電圧の復帰時に第2被リセットデバイスのリセット処理が行われる構成を簡単な回路により実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1被リセットデバイスには、早期にリセット処理を行うことができる一方、第2被リセットデバイスには、第1閾値より低い第2閾値を設けてリセット処理を遅らせることができる。また、第1被リセットデバイスのリセット処理に用いられるリセット信号をトリガーとしてリセット前処理を開始することにより、第2被リセットデバイスのリセット前処理を行う時間を確保することができる。
【0018】
更に、第1被リセットデバイスと第2被リセットデバイスとは、リセット処理が行われる閾値が異なるにもかかわらず、第1被リセットデバイスのリセット処理が行われた場合には、電源電圧が回復した時に第2被リセットデバイスのリセット処理が行われる。このため、電源電圧が第1閾値以下に低下した場合には、例えば、電源電圧が第2閾値以下に低下しなかった場合でも、第1被リセットデバイス及び第2被リセットデバイスの両方にリセット処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態による電子機器1の構成例を示したブロック図である。
【図2】図1に示した復帰時リセット生成部103の一構成例を示したブロック図である。
【図3】電源電圧Vddが低下した場合の図2における各出力端子の電位変化を表したグラフである。
【図4】図1の電源電圧Vddが変化した場合の各出力の電位変化を示したグラフである。
【図5】図1の各出力の電位変化を示したグラフである。
【図6】図1の電子機器1における電源監視処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態による電子機器1の構成例を示したブロック図である。この電子機器1は、商用電源10、電源供給部11、DC/DCコンバータ20、第一回路ブロック100及び第二回路ブロック200により構成される。
【0021】
電源供給部11は、商用電源10から供給される交流電力を直流電力に変換して、電源電圧Vddの定電圧電源を供給する電源装置である。通常時には電源電圧Vddは電圧Vをとり、電源遮断時には電源電圧Vddは通常時の電圧Vから低下する。ここでは、電源供給部11は、第一回路ブロック100及びDC/DCコンバータ20に電源を供給しているものとする。DC/DCコンバータ20は、供給された電力を電圧変換して第二回路ブロック200に出力する電圧変換回路である。DC/DCコンバータ20は、電源電圧Vddから、Vddより低い電源電圧Vcに電圧を変換し、変換後の電源を第二回路ブロック200に供給している。電源電圧Vcは、通常時に電圧V10をとり、電源遮断時には電源電圧Vddの低下に伴い、電圧V10から低下する。第一回路ブロック100は、第1リセット信号RS1及び復帰時リセット信号RS3を出力し、それぞれ第二回路ブロック200に入力される。
【0022】
第一回路ブロック100は、リセット生成部101、遅延回路102、復帰時リセット生成部103及び被リセットデバイス104により構成される。リセット生成部101は、電源電圧Vddを監視するリセットICであり、電源の遮断等により電源電圧Vddが通常時の電圧Vから閾値電圧Vまで低下すると、第1リセット信号RS1を出力する。電源電圧Vddの低下を検出してリセット信号を出力することにより、デバイスのリセット処理を行い、電源遮断時にデバイスの異常動作等を防止することができる。
【0023】
また、図示されていないDC/DCコンバータが、電源電圧Vddから電源電圧Vcに電圧を変換し、変換後の電源が第一回路ブロック100内のリセット生成部101を除く各デバイスに供給される。リセット生成部101には、そのまま電源電圧Vddの電力が供給されている。
【0024】
遅延回路102は、第1リセット信号RS1が入力されると、第1リセット信号RS1を一定時間だけ遅延させた遅延リセット信号DL1を出力する。復帰時リセット生成部103は、第1リセット信号RS1及び遅延リセット信号DL1が入力される。復帰時リセット生成部103は、第1リセット信号RS1が入力されない状態で、かつ、遅延リセット信号DL1が入力されている状態である場合に、この状態を判別して復帰時リセット信号RS3を出力する。このように、第1リセット信号RS1が出力されず、かつ、遅延リセット信号DL1が出力されるのは、第1リセット信号RS1の出力が終了したときである。すなわち、電源電圧Vddが一度閾値電圧V以下に低下し、再度閾値電圧V以上に回復したとき、復帰時リセット信号RS3が一定時間出力される。従って、第1リセット信号RS1が出力されれば、第1リセット信号RS1の出力の終了時に、復帰時リセット信号RS3が出力されることになる。
【0025】
被リセットデバイス104は、遅延リセット信号DL1が入力されると、リセット処理が行われるデバイスである。例えば、モータ、液晶表示装置等、比較的高電圧でリセット処理を行わないと異常動作を起こす可能性のあるデバイスが含まれる。リセット処理が行われるとは、初期化されることであり、内部のレジスタを予め定められた初期値にすることを意味する。また、「リセットされる」という語も同じことを意味する。電源遮断時に被リセットデバイス104のリセット処理が行われることにより、被リセットデバイス104の異常動作や破損等を防止することができる。
【0026】
第二回路ブロック200は、リセット生成部201、AND回路202、退避部203、被リセットデバイス204、揮発性記憶装置205及び不揮発性記憶装置206により構成される。リセット生成部201は、DC/DCコンバータ20により生成された電源電圧Vcを監視するリセットICであり、電源の遮断等の理由により電源電圧Vcが閾値電圧Vまで低下すると、第2リセット信号RS2を出力する。電源電圧Vcが閾値電圧Vまで低下しているとき、リセット生成部101に監視されている電源電圧Vddは閾値電圧Vまで低下している。VはVより低い閾値電圧である。閾値電圧に差を設けることにより、リセット生成部101が第1リセット信号RS1を出力してから、リセット生成部201が第2リセット信号RS2を出力するまでに所定の時間差を確保することができ、この間にデータの退避処理を行うことができる。
【0027】
各電源電圧及び閾値電圧の具体的な設定例としては、通常の電源電圧Vdd及びVcの通常時の電圧V、V10をそれぞれ12V、3.3Vとし、閾値電圧V、閾値電圧V及び閾値電圧Vの値をそれぞれ9V、4V及び3Vとすることが考えられる。
【0028】
AND回路202は、2つの入力部の少なくとも一方にリセット信号が入力されるとリセット信号を出力し、2つの入力部のいずれにもリセット信号が入力されなければ、リセット信号を出力しない論理ゲートである。AND回路202は、復帰時リセット生成部103から復帰時リセット信号RS3が入力されると、退避部203及び被リセットデバイス204へ論理和リセット信号RS4を出力する。また、リセット生成部201から第2リセット信号RS2が入力された場合も、退避部203及び被リセットデバイス204へ論理和リセット信号RS4を出力する。
【0029】
被リセットデバイス204は、論理和リセット信号RS4が入力されると、リセット処理が行われるデバイスである。被リセットデバイス104に比べ、リセット処理が行われるタイミングが遅れることから、供給される電源電圧Vcが電圧V以上であれば正常に動作するデバイスから構成される。また、リセット前処理に関与するデバイスが含まれてもよい。リセット前処理とは、電源遮断時にデバイスが直ちにリセットされることによる不具合を防止するために行われる処理のことであり、例えば、揮発性記憶装置内のデータを不揮発性の記憶装置に退避させることや、フラッシュメモリの書き込み中に書き込み装置がリセットされることによりフラッシュメモリのデータが破損することを防止するため、フラッシュメモリの書込み処理を終了させることがある。また、ハードディスクの読み取り用のヘッドを初期位置に戻すことによりその後の衝撃によりヘッドがハードディスクに衝突してハードディスクが破損することを防止すること等もリセット前処理に含まれる。
【0030】
揮発性記憶装置205とは、電力の供給が途絶えると保持されているデータが失われる記憶装置のことであり、例えば、SDRAMがある。また、データには、CPUの内部データ等も含まれる。不揮発性記憶装置206とは、電力の供給が途絶えてもデータがそのまま保持される記憶装置のことであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク等がある。また、不揮発性記憶装置206には、揮発性記憶装置にバッテリーを付属させることにより電力の供給が途絶えてもデータの保持が可能となったものも含まれる。
【0031】
退避部203は、第1リセット信号RS1に基づいて、揮発性記憶装置205に保持されているデータを不揮発性記憶装置206に退避させる処理を行う演算処理装置である。退避部203は、第1リセット信号RS1を退避処理の開始のトリガーとして使用している。データを退避させることにより、電力供給の停止により揮発性記憶装置205に保持されているデータ、例えば、電子機器1の動作状態等のデータが失われることを防止することができる。また、退避部203にAND回路202から論理和リセット信号RS4が入力されると、退避部203のリセット処理が行われる。このため、第1リセット信号RS1が入力されてから論理和リセット信号RS4が入力されるまでの間、退避部203は、データの退避処理を行うことになる。また、データの退避処理が行われた後に退避部203及び被リセットデバイス204がリセットされることにより低電圧状態での退避部203の異常動作等を防止することができる。
【0032】
リセット生成部101は、電源電圧Vddが閾値電圧Vに低下したときに第1リセット信号RS1を出力し、退避部203は、この第1リセット信号RS1に基づいてデータの退避を開始する。リセット生成部201は、電源電圧Vddが閾値電圧Vに低下したときに第2リセット信号RS2を出力し、退避部203は、この第2リセット信号RS2に基づいてリセットされる。従って、退避部203は、電源電圧VddがVからVに低下するまでの間、データの退避処理を行うことができ、データを退避するのに十分な時間が確保される。
【0033】
また、復帰時リセット生成部103から出力される復帰時リセット信号RS3に基づいて、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下しても、閾値電圧Vまで低下せずに電源電圧Vddが回復するとリセット生成部201は第2リセット信号RS2を出力しない。しかしながら、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下したということは電源や電子機器1に何らかの異常が生じたことを意味することから、データの退避処理が終了した後は、退避部203及び被リセットデバイス204についてもリセット処理が行われる必要がある。このため、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下し、閾値電圧Vまで低下せずに回復した場合であっても、復帰時リセット生成部103から出力された復帰時リセット信号RS3に基づいて、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。従って、リセット生成部101が第1リセット信号RS1を出力すれば、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われることになる。
【0034】
図2は、図1に示した復帰時リセット生成部103の一構成例を示したブロック図である。復帰時リセット生成部103は、NOT回路105及びワイヤードOR回路106により構成される。以下、図3のグラフを用いて復帰時リセット生成部103の動作を説明する。
【0035】
図3は、電源電圧Vddが低下した場合の図2におけるリセット生成部101、NOT回路105、遅延回路102及びワイヤードOR回路106の各出力端子の電位変化を表したグラフである。図3(a)に電源電圧Vddの電位変化を示し、図3(b)に各出力端子のハイレベル及びローレベルの切り替えを示す。図3(a)及び図3(b)の横軸は時間tを表している。図3(a)に示すように電源電圧Vddが一時的に低下し、時刻t〜tにおいて電源電圧Vddが閾値電圧V以下になり、時刻tにおいて電源電圧Vddが閾値電圧V以上に回復した場合について説明する。第1リセット信号RS1はローアクティブの信号であり、図3(b)のリセット生成部101の出力端子の電位変化を示すグラフにおいて、ローレベルになっている状態では、第1リセット信号RS1が出力されている。リセット生成部101の出力端子がハイレベルになっている状態では、第1リセット信号RS1は出力されていない。
【0036】
電源電圧Vddが時刻tにV以下になると、リセット生成部101が電源電圧Vddの変化を検出し、第1リセット信号RS1を出力する。第1リセット生成部101の出力は通常状態ではハイレベルであり、時刻tにハイレベルからローレベルに切り替わる。時刻tに再び電源電圧がV以上に回復すると、第1リセット信号RS1の出力は終了し、第1リセット生成部101の出力はローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0037】
図2に示すように、2つの第1リセット信号RS1が、それぞれNOT回路105又は遅延回路102を経由してワイヤードOR回路106に入力される。NOT回路105は、入力端子がローレベルになれば出力がハイレベルとなり、入力端子がハイレベルになれば出力がローレベルとなる否定回路である。リセット生成部101からの出力信号が、NOT回路105を経由すると、図3(b)のNOT回路105の出力時のグラフに示すように、リセット生成部101からの出力信号のローレベルとハイレベルとが反転される。従って、NOT回路105の出力は、通常状態ではローレベルであり、時刻tにローレベルからハイレベルに変化する。また、時刻tにハイレベルからローレベルに変化する。
【0038】
また、第1リセット信号RS1は、出力の開始及び終了のタイミングが遅延回路102によって遅延されてワイヤードOR回路106に入力される。従って、遅延回路102の出力は、リセット生成部101の出力が遅延回路102によって所定の時間だけ遅延される。従って、遅延回路102の出力は、時刻tより一定の時間だけ遅れた時刻Tにハイレベルからローレベルに変化する。また、時刻tより一定の時間だけ遅れた時刻Tにローレベルからハイレベルに変化する。
【0039】
ワイヤードOR回路106は2つの入力端子がいずれもローレベルになったときに出力がローレベルになり、少なくとも一方の入力端子がハイレベルになれば出力がハイレベルになる論理ゲートである。NOT回路105の出力及び遅延回路102の出力のいずれか一方がハイレベルであれば、ワイヤードOR回路106の出力はハイレベルとなる。一方、NOT回路105の出力及び遅延回路102の出力が両方ともローレベルのときに、ワイヤードOR回路106の出力はローレベルとなり、復帰時リセット信号RS3が出力される。
【0040】
図3(b)のNOT回路105の出力及び遅延回路102の出力時のグラフに示すように、電源電圧Vddが閾値電圧V以上に回復した時点で、リセット生成部101は、第1リセット信号RS1の出力を終了する。このため、NOT回路105の出力は時刻tにハイレベルからローレベルに切り替わる。しかしながら、遅延回路102の出力は、ローレベルからハイレベルへの切り替えが遅延され、第1リセット信号の出力が終了しても時刻t〜Tの期間、ローレベルのままである。ワイヤードOR回路106は、時刻t〜Tにおいて、2つの入力端子がいずれもローレベルとなるので、復帰時リセット信号RS3を出力する。つまり、図3(a)のように、電源電圧Vddが一度V以下に低下し、再びV以上に回復したときに復帰時リセット信号RS3が出力される。
【0041】
図1で説明したように、この復帰時リセット信号RS3が出力されると、論理和リセット信号RS4がそれぞれ退避部203及び被リセットデバイス204へ入力され、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。このため、リセット生成部201が第2リセット信号RS2を出力しない場合であっても、電源電圧Vddの回復時に退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われ、退避部203及び被リセットデバイス204がリセットされないことによる異常動作等を防止することができる。
【0042】
上記のように、復帰時リセット生成部103は、入力された第1リセット信号RS1により直ちに退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われることを防止し、データ退避のための時間を確保する。一方、復帰時リセット生成部103は、第1リセット信号RS1出力が終了したときにAND回路202へ復帰時リセット信号RS3を出力し、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理を行う。
【0043】
図4は、図1の電源電圧Vddが変化した場合の図1のリセット生成部101、遅延回路102、復帰時リセット生成部103、リセット生成部201及びAND回路202の各出力の電位変化を示したタイミングチャートである。図4(a)は、電源電圧Vdd及び電源電圧Vcの変化を示したグラフである。図4(a)の縦軸が電圧Vを表し、横軸が時間tを表している。図4(b)の縦軸は、リセット生成部101、遅延回路102、復帰時リセット生成部103、リセット生成部201及びAND回路202の各出力の電位の変化を示し、横軸が時間tを表している。具体例として、電源電圧Vddが初期電圧Vから徐々に低下し、0Vまで低下した場合について説明する。
【0044】
時刻tにおいて、電源電圧Vddが閾値電圧V以下になると、リセット生成部101が第1リセット信号RS1を出力し、リセット生成部101の出力はハイレベルからローレベルに変化する。遅延回路102の出力は、リセット生成部101の出力より所定の時間だけ遅れて時刻Tに電位がハイレベルからローレベルに変化する。このとき、被リセットデバイス104に遅延リセット信号DL1が入力され、被リセットデバイス104のリセット処理が行われる。
【0045】
電源電圧Vddが閾値電圧V以上に回復しない場合は、復帰時リセット生成部103は、復帰時リセット信号RS3を出力しない。このため、図4(b)のように復帰時リセット生成部103の出力は常にハイレベルとなっている。
【0046】
リセット生成部201には、電源電圧Vcの電力が供給されている。図4(a)のように、DC/DCコンバータ20に供給される電源電圧Vddが低下すると、DC/DCコンバータ20からリセット生成部201に出力される電源電圧Vcも低下する。電源電圧Vcが通常時の電圧V10から閾値電圧Vに低下すると、リセット生成部201が、第2リセット信号RS2を出力し、リセット生成部201の出力はハイレベルからローレベルに変化する。このとき、電源電圧Vddは、初期電圧Vから閾値電圧Vまで低下している。言い換えれば、電源電圧Vddが閾値電圧Vまで低下すると、第2リセット信号RS2が出力される。
【0047】
AND回路202は2つの入力端子のうち少なくとも一方がローレベルになれば、出力がローレベルになる。従って、リセット生成部201及び復帰時リセット生成部103の出力のいずれか一方がローレベルとなると、論理和リセット信号RS4が出力される。図4(b)において、復帰時リセット生成部103の出力は常にハイレベルであるが、時刻tに第2リセット信号RS2が出力される。このため、時刻tに論理和リセット信号RS4が出力され、AND回路202の出力がハイレベルからローレベルに変化する。
【0048】
上記のように電源電圧Vddが低下する場合、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下すると、退避部203による揮発性記憶装置205内に保持されるデータの退避処理が開始され、被リセットデバイス104のリセット処理が行われる。また、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下したときに退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。従って、電源電圧Vddが電圧VからVに低下するまでの間、図4でいえば、時刻t〜tにおいて、退避部203はデータの退避処理を行うことができる。このため、退避部203が揮発性記憶装置205に保持されるデータを不揮発性記憶装置206へ退避させるのに十分な時間を確保することができる。
【0049】
図5は、図4と同様に、図1のリセット生成部101、遅延回路102、復帰時リセット生成部103、リセット生成部201及びAND回路202の各出力の電位変化を示したタイミングチャートである。図5は、電源電圧Vddが時刻tに閾値電圧V以下に低下したものの、閾値電圧V以下には低下せずに、時刻tに閾値電圧V以上に回復した場合を示している。図5(a)は、電源電圧Vdd及び電源電圧Vcの変化を示したグラフであり、縦軸が電圧Vを表し、横軸が時間tを表している。
【0050】
図5(b)の縦軸は、リセット生成部101、遅延回路102、復帰時リセット生成部103、リセット生成部201及びAND回路202の各出力の電位変化を示し、横軸が時間tを表している。リセット生成部101の出力は、時刻tにハイレベルからローレベルに変化し、時刻tにローレベルからハイレベルに変化する。遅延回路102の出力は、リセット生成部101の出力を遅延したものとなり、時刻tより一定時間遅れた時刻T5にハイレベルからローレベルに変化し、時刻tより一定時間遅れた時刻Tにローレベルからハイレベルに変化する。
【0051】
リセット生成部101の出力がハイレベルとなり、かつ、遅延回路102の出力がローレベルとなる期間において、復帰時リセット信号RS3が出力される。従って、図5(b)のリセット生成部101及び遅延回路102の出力のタイミングチャートに示されるように、復帰時リセット信号RS3は時刻t〜Tの期間に出力される。この時刻t〜Tの期間は遅延回路102の遅延時間に相当する。
【0052】
電源電圧Vcが閾値電圧V以下に低下したとき、つまり、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下したときに第2リセット信号RS2が出力される。図5(a)のグラフでは、電源電圧Vcが電圧V以下には下がらないので、リセット生成部201の出力は常にハイレベルのままである。第2リセット信号RS2又は復帰時リセット信号RS3が出力されている期間、論理和リセット信号RS4が出力される。このため、復帰時リセット信号RS3が出力されるt〜Tの期間、論理和リセット信号RS4が出力され、AND回路の出力がローレベルになる。
【0053】
図4の例では、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下したときに、第2リセット信号RS2が出力され、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われた。図5の例では、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下しないので、第2リセット信号RS2が出力されることはない。この場合でも、電源電圧Vddが閾値電圧V以上に回復したときに、復帰時リセット信号RS3が出力され、復帰時リセット信号RS3に基づいて、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。
【0054】
上記のように電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下すると、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下しない場合であっても、論理和リセット信号RS4が出力され、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。また、退避部203は、第1リセット信号RS1をトリガーとして、第1リセット信号RS1の出力が終了するまで、揮発性記憶装置205内に保持されるデータを不揮発性記憶装置206に退避させる処理を行うことができる。図5の例でいえば、時刻t5〜t6の間、データの退避処理を行うことができる。
【0055】
図6のステップS101〜S109は、図1の電子機器1における電源監視処理の一例を示したフローチャートである。まず、リセット生成部101は、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下しているかを監視している(ステップS101)。電源電圧VddがV以下に低下すると、リセット生成部101が、第1リセット信号RS1を出力し、この第1リセット信号RS1に基づき、被リセットデバイス104のリセット処理が行われる(ステップS102)。また、退避部203は、第1リセット信号RS1が入力されると、揮発性記憶装置205に保持されているデータを不揮発性記憶装置206に退避させる処理を開始する(ステップS103)。また、ステップS101の判定において、電源電圧Vddが閾値電圧Vより高い場合は、処理を終了する。
【0056】
リセット生成部201は、電源電圧Vcを監視している(ステップS104)。この電源電圧Vcが閾値電圧V以下になった場合、つまり、電源電圧Vddが閾値電圧V以下になった場合に、リセット生成部201は、第2リセット信号RS2を出力する。この第2リセット信号RS2に基づき、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる(ステップS105,ステップS106)。
【0057】
次に、リセット生成部101によって、電源電圧Vddが閾値電圧V以上に回復しているかが判定される(ステップS107)。電源電圧Vddが電圧V以上に回復した場合は、復帰時リセット生成部103が復帰時リセット信号RS3を出力する。この復帰時リセット信号RS3に基いて、退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われ(ステップS108,ステップS109)、処理を終了する。また、ステップS104の判定において、電源電圧Vcが閾値電圧Vより高い場合、つまり、電源電圧Vddが閾値電圧Vより高い場合は、ステップS105及びステップS106の処理を行わず、ステップS107の判定が行われる。
【0058】
ステップS107の判定において、電源電圧Vddが閾値電圧V以上に回復していない場合は、再度ステップS104の判定が行われる。従って、電源電圧Vddが閾値電圧V以下に低下すれば、ステップS104の電源電圧Vddと閾値電圧Vとの比較結果に関わりなく、ステップS108における退避部203のリセット処理、及び、ステップS109の被リセットデバイス204のリセット処理が行われることになる。
【0059】
本実施の形態では、被リセットデバイス104には、高い閾値電圧Vを設けて早期にリセット処理を行うことができる一方、退避部203及び被リセットデバイス204には、低い閾値電圧Vを設けてリセット処理を遅らせることができる。また、被リセットデバイス104のリセット処理に用いられる第1リセット信号RS1をトリガーとして、退避部203がデータの退避を開始することにより、データを退避させる時間を確保することができる。このため、不揮発性記憶装置206が、例えばハードディスク等、アクセス速度が低い場合でもデータを退避させるのに十分な時間を確保することができる。
【0060】
また、リセット生成部201がリセット信号を出力しない場合は、リセット生成部101の出力するリセット信号により退避部203及び被リセットデバイス204のリセット処理が行われる。このため、閾値の異なる2つのリセット生成部の一方の閾値を低く設定していたために、電源の異常が生じてもリセット処理が行われないということを防止することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、リセット生成部101の第1リセット信号RS1を出力する閾値電圧とリセット信号RS1の出力を終了する閾値電圧とが同一の場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。リセット生成部101の第1リセット信号RS1を出力する閾値電圧と第1リセット信号RS1の出力を終了する閾値電圧とが異なる場合であってもよい。
【0062】
また、本実施例の形態では、リセット前処理の例として、退避部203が揮発性記憶装置205に格納されているデータを退避させる場合について説明したが、本発明はデータを退避させる場合に限定されない。例えば、リセット前処理として、退避部203が、第1リセット信号RS1に基づいて、電源遮断によるハードディスクの破損を防止するためにハードディスクの磁気ヘッドを初期位置に戻す処理を行うこととしてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、復帰時リセット生成部103がNOT回路105及びワイヤードOR回路により構成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図2の遅延回路102とワイヤードOR回路106との間にASICを配置し、ASICが入力された遅延リセット信号DL1をそのまま出力することにしてもよいし、ASICの設定変更により、リセット生成部101の第1リセット信号RS1がそのまま退避部203及び被リセットデバイス204に入力されるように切り替えることが可能な構成にしてもよい。また、ワイヤードOR回路が通常のOR回路であってもよいのはいうまでもない。
【0064】
また、本実施の形態では、遅延リセット信号DL1が入力されると、被リセットデバイス104のリセット処理が行われる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1リセット信号RS1が入力されると、被リセットデバイス104のリセット処理が行われることとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 電子機器
10 商用電源
11 電源供給部
20 コンバータ
100 第一回路ブロック
101 リセット生成部
102 遅延回路
103 復帰時リセット生成部
104 被リセットデバイス
105 NOT回路
106 ワイヤードOR回路
200 第二回路ブロック
201 リセット生成部
202 AND回路
203 退避部
204 被リセットデバイス
205 揮発性記憶装置
206 不揮発性記憶装置
DL1 遅延リセット信号
RS1 第1リセット信号
RS2 第2リセット信号
RS3 復帰時リセット信号
RS4 論理和リセット信号
Vc 電源電圧
Vdd 電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が第1閾値以下になれば、第1リセット信号を出力する第1リセット生成手段と、
上記電源電圧が第1閾値より低い第2閾値以下になれば、第2リセット信号を出力する第2リセット生成手段と、
第1リセット信号の出力の終了に基づいて、復帰時リセット信号を出力する復帰時リセット生成手段と、
第1リセット信号に基づいて、リセット処理が行われる第1被リセットデバイスと、
第2リセット信号及び上記復帰時リセット信号に基づいて、リセット処理が行われる第2被リセットデバイスとを備え、
第2被リセットデバイスは、第1リセット信号に基づいて、リセット前処理を開始するリセット前処理手段を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
上記リセット前処理手段は、第1リセット信号に基づいて、揮発性の記憶装置に保持されるデータを不揮発性の記憶装置に退避させる処理を開始することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
上記復帰時リセット生成手段は、遅延回路を用いて第1リセット信号の出力の終了時から一定時間、上記復帰時リセット信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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