説明

電子機器

【課題】本発明は、角速度センサを用いて書籍の閲覧、画像の表示、音楽又は動画の再生等を行う電子機器において、振動に起因する加速度や角速度が存在する使用環境においても、片手で精度良く操作することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明の電子機器10は、表示部11を有する筐体12と、表示部11と平行なX軸回りの角速度を検出する角速度センサ13と、角速度センサ13に基づいて第1の処理又は第2の処理を行う制御部15と、を備え、制御部15は、角速度センサ13が正の角速度を検出した後に負の角速度を検出した場合に第1の処理を行い、角速度センサ13が負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に第2の処理を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサを用いて書籍の閲覧、画像の表示、音楽又は動画の再生等を行う電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電子機器について、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図7は従来の電子機器1の外観を示す外観図である。図7において、電子機器1は、開閉動作により右本体部2及び左本体部3は開閉軸部4により開閉可能に連結され、右本体部2に設けられた右側LCD5及び左本体部3に設けられた左側LCD6に書籍や画像等を表示していた。また、加速度及び角速度を検知する加速度・角速度センサ7を備え、この加速度又は角速度を用いて右本体部2と左本体部3の開閉角度を検出していた。また、開閉時の加速度が大きい方向を判定して頁送り/頁戻しの処理を行っていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−217415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、携帯電話や電子ブック、タブレット端末など、書籍の閲覧や画像の表示、音楽又は動画の再生等を行う携帯型の電子機器が増加している。このような携帯型の電子機器は、鞄を持って歩行した状態や電車の吊革につかまった状態など、振動に起因する加速度や角速度が存在する使用環境において、片手で精度良く操作ができることが求められる。
【0007】
従来の電子機器は、開閉角度や加速度に基づいて頁送り/頁戻しの処理を行っていたため、振動に起因する加速度や角速度が存在する使用環境において、片手で精度良く操作することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の電子機器は、表示部を有する筐体と、前記表示部と平行なX軸回りの角速度を検出する角速度センサと、前記角速度センサに基づいて第1の処理又は第2の処理を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記角速度センサが正の角速度を検出した後に負の角速度を検出した場合に前記第1の処理を行い、前記角速度センサが負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に前記第2の処理を行う。
【発明の効果】
【0009】
この構成により、筐体を回転させた時に発生する正の方向の角速度と負の方向の角速度の発生順序に応じて異なる処理を行うことができるため、振動に起因する加速度や角速度が存在する使用環境において、片手で精度良く操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1における電子機器の説明図
【図2】実施の形態1における角速度センサ及び加速度センサの出力波形図
【図3】実施の形態1における処理フロー図
【図4】実施の形態1における処理フロー図
【図5】実施の形態2における角速度センサ及び加速度センサの出力波形図
【図6】実施の形態3における角速度センサ及び加速度センサの出力波形図
【図7】従来の電子機器の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電子機器10の説明図である。図1において、電子機器10は、表示部11を有する筐体12と、表示部11と平行なX軸回りの角速度を検出する角速度センサ13と、角速度センサ13に基づいて第1の処理又は第2の処理を行う制御部15と、を備えている。制御部15は、角速度センサ13が正(電子機器10を持った使用者から見て時計回り)の角速度16を検出した後に、負(電子機器10を持った使用者から見て反時計回り)の角速度17を検出した場合に第1の処理を行い、角速度センサ13が負の角速度17を検出した後に、正の角速度16を検出した場合に第2の処理を行う。
【0013】
この構成により、筐体12を回転させた時に発生する正の方向の角速度16と負の方向の角速度17の発生順序に応じて異なる処理を行うことができるため、振動に起因する加速度や角速度が存在する使用環境において、片手で精度良く操作することができる。
【0014】
また、電子機器10は、Y軸方向の加速度を検出する加速度センサ14を備えている。制御部15は、加速度センサ14がY軸の正方向の加速度を検出し、かつ、角速度センサ13が正の角速度を検出した後に負の角速度を検出した場合に第1の処理を行い、加速度センサ14がY軸の負方向の加速度を検出し、かつ、角速度センサ13が負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に第2の処理を行う。このように制御することにより、操作の精度をさらに向上させることができる。
【0015】
電子機器10の具体例としては、携帯電話や電子ブック、タブレット端末など、書籍の閲覧や画像の表示、音楽又は動画の再生等を行う携帯型の電子機器などが挙げられる。
【0016】
電子機器10が書籍を閲覧する機能を有する場合には、例えば、第1の処理は書籍の頁送りを行う処理であり、第2の処理は書籍の頁戻しを行う処理である。その他、書籍の表紙を表示している場合には、第1の処理は次の書籍を表示する処理であり、第2の処理は前の書籍を表示する処理であってもよい。
【0017】
電子機器10が画像を表示する機能を有する場合には、例えば、第1の処理は次の画像を表示する処理であり、第2の処理は前の画像を表示する処理である。その他、例えば、画像の一部のみを表示している場合には、第1の処理は表示されていない右側部分の画像を表示する処理であり、第2の処理は表示されていない左側部分の画像を表示する処理であってもよい。
【0018】
電子機器10が音楽又は動画を再生する機能を有する場合には、第1の処理は次の音楽又は動画を再生する処理であり、第2の処理は前の音楽又は動画を再生する処理である。その他、例えば、第1の処理は早送りを行う処理であり、第2の処理は巻き戻しを行う処理であってもよい。
【0019】
以下、角速度センサ13及び加速度センサ14を用いた制御について、具体的に説明する。
【0020】
図2は角速度センサ13及び加速度センサ14を用いて実験を行った結果である。図2において、図1のX軸、Y軸、Z軸に対応する各軸の角速度センサ13の出力及び加速度センサ14の出力が示されている。
【0021】
図2(a)は横軸が時間(右から左に向けて時間が進行する)であり、縦軸が角速度である。角速度18はX軸回りの角速度であり、角速度19はY軸回りの角速度であり、角速度20はZ軸回りの角速度である。
【0022】
第1の動作は、表示部11が上(Z軸の正の方向)を向くように筐体12を右手に持ち、X軸に関して正の方向に(時計回り)に回転させ、その後に負の方向(反時計回り)に回転させて元の位置に戻す動作を行った場合の角速度センサ13の出力である。図示するように時刻t1、t2、t3で計3回の第1の動作を行なっており、それぞれ波形18a、18b、18cが得られた。
【0023】
第2の動作は、表示部11が上(Z軸の正の方向)を向くように筐体12を右手に持ち、X軸に関して負の方向(反時計回り)に回転させ、その後に正の方向に(時計回り)に回転させて元の位置に戻す動作を行った場合の角速度センサ13の出力である。図示するように時刻t4、t5、t6で計3回の第2の動作を行なっており、それぞれ波形18d、18e、18fが得られた。
【0024】
図2(a)より、第1の動作においては、まず正の角速度が検出された後に、負の角速度が検出されている。また、第2の動作においては、まず負の角速度が検出された後に、正の角速度が検出されている。これは、表示部11を有する電子機器10を操作する場合には、書籍等を見るために最後には必ず表示部11が再び上を向くように戻す動作を行うためである。
【0025】
ここで、正又は負の一方向に回転させた際の角速度のみを用いて所定の処理を行うことも可能である。すなわち、正の方向の角速度を検出した場合に、第1の処理を行い、負の方向の角速度を検出した場合に第2の処理を行うことができる。しかし、鞄を持って歩行した状態や電車の吊革につかまった状態で電子機器10を使用する場合には、歩行や電車の振動に起因する角速度を誤って認識し、第1の処理又は第2の処理を実行してしまう可能性がある。
【0026】
しかし、図2に示すように、使用者が意図的に操作した場合には必ず表示部11を上に戻す動作を伴うため、この戻す動作をも考慮して処理を実行することにより、歩行や電車に起因する誤作動を防止することができる。
【0027】
すなわち、制御部15は、角速度センサ13が正の角速度を検出した後に負の角速度を検出した場合に、使用者により意図的に第1の動作が行われたと判断し、第1の処理を行う。また、角速度センサ13が負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に、使用者により意図的に第2の動作が行われたと判断し、第2の処理を行う。このようにすることにより、歩行や電車の振動に起因する角速度により誤作動が生じることを防止し、片手で精度良く操作することができる。
【0028】
なお、制御部15において所定の閾値を設け、角速度の絶対値がこの閾値となった場合に、角速度が検出されたと判断することにより、歩行や電車の振動に起因する角速度の影響をさらに低減することができる。
【0029】
図2(b)は横軸が時間(右から左に向けて時間が進行する)であり、縦軸が加速度である。加速度21はX軸方向の加速度であり、加速度22はY軸方向の加速度であり、加速度23はZ軸方向の加速度である。なお、図2(a)と(b)とは横軸の時間が一致している。
【0030】
ここで、Y軸方向の加速度22に着目すると、第1の動作を行った時刻t1、t2、t3で正の方向の加速度を示す波形22a、22b、22cが得られている。また、第2の動作を行った時刻t4、t5、t6で負の方向の加速度を示す波形22d、22e、22fが得られている。
【0031】
これは、使用者が第1の動作を行う際には、筐体12を同一の位置に維持したまま回転動作のみを行うことは非常に困難であり、筐体12をY軸の正方向に動かしてしまうためである。同様に、第2の動作を行う際には、筐体12をY軸の負方向に動かしてしまうためである。
【0032】
このような人の動作の特徴を利用することにより、さらに精度の良い操作を片手で行うことが可能となる。具体的には、制御部15は、加速度センサ14がY軸の正の方向の加速度を検出し、かつ、角速度センサ13が正の角速度検出した後に負の角速度を検出した場合に、使用者により意図的に第1の動作が行われたと判断し、第1の処理を行う。また、加速度センサ14がY軸の負方向の加速度を検出し、かつ、角速度センサ13が負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に、使用者により意図的に第2の動作が行われたと判断し、第2の処理を行う。このような制御により、加速度を用いて第1の動作と第2の動作の区別を行うとともに、角速度による第1の動作と第2の動作の区別を行うことができるため、さらに誤作動を防止し、精度の高い操作を片手で行うことが可能となる。
【0033】
図3は、制御部15が角速度センサ13に基づいて第1の処理又は第2の処理を行う場合の処理フローを示している。図3に示すように、ステップS1で制御が開始し、ステップS2でX軸回りの正または負の角速度を検出する。X軸回りの正または負の角速度が検出されなかった場合は、再び角速度を検出するためにスタートポイントSPに戻る。
【0034】
ステップS2で正の角速度が検出された場合には、ステップS3に進み、所定時間以内にX軸回りの負の角速度が検出されるかどうかを判定する。所定時間以内にX軸回りの負の角速度が検出された場合には、ステップS4に進み、第1の処理を実行し、スタートポイントSPに戻る。所定時間以内にX軸回りの負の角速度が検出されない場合には処理を行わずにスタートポイントSPに戻る。
【0035】
ステップS2で負の角速度が検出された場合には、ステップS5に進み、所定時間以内にX軸回りの正の角速度が検出されるかどうかを判定する。所定時間以内にX軸回りの正の角速度が検出された場合には、ステップS6に進み、第2の処理を実行し、スタートポイントSPに戻る。所定時間以内にX軸回りの正の角速度が検出されない場合には処理を行わずにスタートポイントSPに戻る。
【0036】
図4は、制御部15が角速度センサ13及び加速度センサ14に基づいて第1の処理又は第2の処理を行う場合の処理フローを示している。図4に示すように、ステップS10で制御が開始し、ステップS11で正または負の加速度を検出する。ここで、加速度が検出されなかった場合は、再び加速度を検出するためにスタートポイントSPに戻る。
【0037】
ステップS11で正の加速度が検出された場合には、ステップS12に進み、X軸回りの正の角速度が検出されるかどうかを判定する。X軸回りの正の角速度が検出されなかった場合には、スタートポイントSPに戻り、検出された場合にはステップS13に進む。
【0038】
ステップS13では、所定時間以内にX軸回りの負の角速度が検出されるかどうかを判定する。所定時間以内に負の角速度が検出された場合には、ステップS14に進み、第1の処理を実行し、スタートポイントSPに戻る。所定時間以内に負の角速度が検出されない場合には処理を行わずにスタートポイントSPに戻る。
【0039】
ステップS11で負の加速度が検出された場合には、ステップS15に進み、X軸回りの負の角速度が検出されるかどうかを判定する。X軸回りの負の角速度が検出されなかった場合には、スタートポイントSPに戻り、検出された場合にはステップS16に進む。
【0040】
ステップS16では、所定時間以内にX軸回りの正の角速度が検出されるかどうかを判定する。所定時間以内に正の角速度が検出された場合には、ステップS17に進み、第2の処理を実行し、スタートポイントSPに戻る。所定時間以内に正の角速度が検出されない場合には処理を行わずにスタートポイントSPに戻る。
【0041】
図3又は図4における所定時間は、使用者が電子機器10を正又は負の方向に回転させてから再び反対方向に回転させて元の位置に戻すまでの一連の動作を完了させるための適当な時間を設定する。好ましくは、所定時間を0.1秒以上とすることにより、使用者の意図しない衝撃等の外乱に起因する誤作動を防止することができる。また、好ましくは、所定時間を2秒以内とすることにより、1回目の第1又は第2の動作と2回目の第1又は第2の動作を区別することができる。
【0042】
なお、図3のステップS3における所定時間とステップS5における所定時間とを異ならせてもよい。同様に、図4のステップS13における所定時間とステップS16における所定時間とを異ならせてもよい。これにより、第1の動作と第2の動作の操作感を異ならせることができる。
【0043】
なお、図3又は図4における所定時間は、使用者により設定可能であってもよい。これにより、第1の動作又は第2の動作が認識される時間間隔を各使用者が個別に調整することができるため、違和感のない操作を実現することができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、使用者が電子機器10を横方向に回転させる動作(図1のX軸回りに回転させる動作)を第1の動作又は第2の動作として説明した。しかし、電子機器10を縦方向に回転させる動作(図1のY軸回りに回転させる動作)を第1の動作又は第2の動作とし、第1の処理又は第2の処理を行うように制御してもよい。
【0045】
なお、図2、図5、図6において、正(電子機器10を持った使用者から見て時計回り)の角速度の場合に正の値が出力され、負(電子機器10を持った使用者から見て反時計回り)の角速度の場合に負の値が出力されている。しかし、角速度センサ13の出力信号の極性は適宜設定されるものであるため、正の角速度の場合に負の値が出力され、負の角速度の場合に正の値が出力されてもよい。同様に、正の加速度の場合に正の値が出力され、負の加速度の場合に負の値が出力されているが、加速度センサ14の出力信号の極性は適宜設定されるものであるため、正の加速度の場合に負の値が出力され、負の加速度の場合に正の値が出力されてもよい。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態において、Z軸方向の加速度を用いた制御について説明する。なお、実施の形態1と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図5は、筐体12を右手で持った場合と左手で持った場合の比較実験結果である。図5(a)は、図2と同じであり、筐体12を右手で持って第1の動作及び第2の動作を行った場合の角速度及び加速度である。図5(b)は、筐体12を左手で持って第1の動作及び第2の動作を行った場合の角速度及び加速度である。
【0048】
図5(a)(b)から分かるように、右手で持った場合であっても左手で持った場合であっても、X軸回りの角速度18の正負の発生順序や、Y軸方向の加速度22の発生方向は同じとなる。すなわち、X軸回りの角速度18は、持ち手にかかわらず、第1の動作の場合には正の角速度を検出した後に負の角速度を検出し、第2の動作の場合には負の角速度を検出した後に正の角速度を検出している。また、Y軸方向の加速度22は、持ち手にかかわらず、第1の動作の場合には正の方向の加速度を検出し、第2の動作の場合には負の方向の加速度を検出している。
【0049】
しかし、Z軸方向の加速度23は右手で持った場合と左手で持った場合で異なる波形となることが分かった。すなわち、右手で持った場合には、第1の動作の場合のZ軸方向の加速度はわずかに減少するのみであるが、第2の動作の場合にはZ軸方向の加速度は大きく減少した。一方、左手で持った場合には、第1の動作の場合のZ軸方向の加速度は負方向に大きく減少したが、第2の動作の場合にはZ軸方向の加速度は負方向にわずかに減少するのみであった。
【0050】
これは、使用者が筐体12を持って体の外側に回す場合と内側に回す場合とで回転量が異なるためであると考えられる。
【0051】
表示部11が上面を向いた初期状態においては、電子機器10のZ軸方向と重力方向とが一致するため、重力加速度が最大となる。この状態からX軸回りに回転させるに従って、電子機器10のZ軸方向と重力方向との角度が大きくなるため、加速度センサ14が検出するZ軸方向の加速度が減少する。
【0052】
ここで、使用者が筐体12を体の外側(右手で持つ場合には第1の動作、左手で持つ場合には第2の動作)に回転させる場合には、腕の構造上、回転量が小さくなるため、電子機器10のZ軸方向と重力方向との成す角度は小さくなり、Z軸方向の加速度はわずかに減少するのみとなる。一方、使用者が筐体12を体の内側(右手で持つ場合には第2の動作、左手で持つ場合には第1の動作)に回転させる場合には、体の外側に回転させる場合と比べて回転量が大きくなるため、電子機器10のZ軸方向と重力方向との成す角度が大きくなり、Z軸方向の加速度は大きく減少する。
【0053】
以上のように、腕の構造に起因するZ軸方向の加速度の違いを利用し、制御部15は右手で操作を行ったのか、左手で操作を行ったのかを判別することが可能となる。
【0054】
すなわち、X軸回りの角速度18やX軸回りのY軸方向の加速度22を用いて第1の動作又は第2の動作を検出するとともに、第1の動作である場合に、Z軸方向の加速度が所定の閾値を下回った場合には左手による操作であると判断し、所定の閾値を下回らない場合に右手による操作であると判断することができる。
【0055】
同様に、第2の動作である場合に、Z軸方向の加速度が所定の閾値を下回った場合に右手による操作であると判断し、所定の閾値を下回らない場合に左手による操作であると判断することができる。
【0056】
特に、電子機器10がゲーム機能を有する場合には、右手による操作であるか左手による操作であるかを判別することにより、ゲームの動作を異ならせることができる。例えば、野球やゴルフのゲームである場合には、右手による操作か左手による操作かで使用者の利き手を判断し、使用者の利き手に応じたバッティング動作や投球動作とすることが可能となる。
【0057】
(実施の形態3)
本実施の形態において、Z軸方向の加速度を用いた別の制御について説明する。なお、実施の形態1と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図6は、筐体12を右手に持った状態で、第1の動作において戻しすぎた場合と、第2の動作との比較実験結果である。
【0059】
第1の動作は、開始位置24から時計方向に回転25を行い、元に戻す操作26を行い、戻しすぎ27の後に再度元に戻す操作28を行っている。この動作に対応するX軸回りの角速度18の波形はそれぞれ24〜28で示している。
【0060】
第2の動作は、開始位置29から反時計方向に回転30を行い、元に戻す操作31を行っている。この動作に対応するX軸回りの角速度18の波形はそれぞれ29〜31で示している。
【0061】
ここで、第1の動作における元に戻す操作26から再度元に戻す操作28までの波形と、第2の動作における開始位置29から元に戻す操作31までの波形はほぼ同一であるため、区別することが非常に困難である。このため、使用者は第1の動作を行っているにもかかわらず、制御部15は第2の動作であると誤認識を行い、第2の処理を行ってしまう可能性がある。
【0062】
しかし、Z軸方向の加速度23を用いることにより、第1の動作において戻しすぎた場合と、第2の動作とを判別することが可能となる。
【0063】
図6から分かるように、Z軸方向の加速度23は、第1の動作における波形32はわずかに減少しているのみであるが、第2の動作における波形33は大きく減少している。
【0064】
これは、実施の形態2で説明したように、使用者が筐体12を持って体の外側に回す場合と内側に回す場合で回転量が異なるためである。筐体12を右手で持った状態では、第1の動作は体の外側に回す動作であるため、Z軸方向の加速度はわずかに減少するのみであるが、第2の動作の場合には体の内側に回す動作であるため、Z軸方向の加速度は大きく減少する。
【0065】
従って、制御部15は、負の角速度が検出された後に、正の角速度が検出された場合であっても、Z軸方向の加速度23が所定の閾値を下回らない場合には、第1の動作における戻し過ぎであると判断し、第2の動作を行わないようにすることができる。この制御により、戻し過ぎによる誤作動を防止し、さらに片手で精度よく操作を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の電子機器は、振動に起因する加速度や角速度が存在する使用環境において、片手で精度良く操作することができるので、書籍の閲覧、画像の表示、音楽又は動画の再生等を行う電子機器として有用である。
【符号の説明】
【0067】
10 電子機器
11 表示部
12 筐体
13 角速度センサ
14 加速度センサ
15 制御部
16 正の角速度
17 負の角速度
18 X軸回りの角速度
19 Y軸回りの角速度
20 Z軸回りの角速度
21 X軸方向の加速度
22 Y軸方向の加速度
23 Z軸方向の加速度
24 開始位置
25 時計方向に回転
26 元に戻す操作
27 戻しすぎ
28 再度元に戻す操作
29 開始位置
30 反時計方向に回転
31 元に戻す操作
32 第1の動作におけるZ軸方向の加速度波形
33 第2の動作におけるZ軸方向の加速度波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を有する筐体と、
前記表示部と平行なX軸回りの角速度を検出する角速度センサと、
前記角速度センサに基づいて第1の処理又は第2の処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記角速度センサが正の角速度を検出した後に負の角速度を検出した場合に前記第1の処理を行い、
前記角速度センサが負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に前記第2の処理を行う電子機器。
【請求項2】
表示部を有する筐体と、
前記表示部と平行なX軸回りの角速度を検出する角速度センサと、
前記表示部と平行であって、X軸と直交するY軸方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサ及び前記角速度センサに基づいて第1の処理又は第2の処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加速度センサがY軸の正方向の加速度を検出し、かつ、前記角速度センサが正の角速度を検出した後に負の角速度を検出した場合に前記第1の処理を行い、
前記加速度センサがY軸の負方向の加速度を検出し、かつ、前記角速度センサが負の角速度を検出した後に正の角速度を検出した場合に前記第2の処理を行う電子機器。
【請求項3】
前記加速度センサは前記表示部と直交するZ軸方向の加速度をさらに検出するとともに、
前記制御部は、前記加速度センサを検出したZ軸の加速度が所定の閾値を超えた場合に、前記第1の処理又は前記第2の処理を行う請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の動作における角速度が、所定の閾値を超えた場合に左手による操作であると判定し、前記所定の閾値を超えない場合に右手による操作であると判定する請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2の動作における角速度が、所定の閾値を超えた場合に右手による操作であると判定し、前記所定の閾値を超えない場合に左手による操作であると判定する請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器は書籍を閲覧する機能を有し、前記第1の処理は前記書籍の頁送りを行う処理であり、前記第2の処理は前記書籍の頁戻しを行う処理である請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項7】
前記電子機器は画像を表示する機能を有し、前記第1の処理は次の画像を表示する処理であり、前記第2の処理は前の画像を表示する処理である請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項8】
前記電子機器は音楽又は動画を再生する機能を有し、前記第1の処理は次の音楽又は動画を再生する処理であり、前記第2の処理は前の音楽又は動画を再生する処理である請求項1又は請求項2に記載の電子機器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−230593(P2012−230593A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99186(P2011−99186)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【特許番号】特許第5045835号(P5045835)
【特許公報発行日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】