説明

電子的装置のカプセル化方法

本発明は、浸透物に対する、電子的装置のカプセル化方法に関し、この際、ブチレンブロックコポリマー、特にイソブチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤が用意され、そして前記感圧接着剤は、電子的装置のカプセル化すべき領域の上および/または周りに適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく、電子的装置(elektronische Anordnung)のカプセル化方法、ならびに請求項6の上位概念に基づく、電子的装置のカプセル化のための感圧接着剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(光)電子的装置は、市場の製品においてますます頻繁に使用されており、または市場導入間近にある。このような装置には、無機電子構造または有機電子構造、例えば有機半導体、有機金属半導体、またはポリマー半導体が含まれ、またはそれらの組合せも含まれる。これらの装置および製品は、所望の用途に応じて硬く、または柔軟に形成され、その際、柔軟な装置に対する需要が次第に増している。このような装置の作製は、例えば凸版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、平版印刷のような印刷方法によって行われるか、または熱転写印刷、インクジェット印刷、もしくはデジタル印刷などのいわゆる「ノンインパクトプリンティング」のような印刷方法によっても行われる。しかし例えば化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、プラズマ促進化学または物理堆積方法(PECVD)、スパッタリング、(プラズマ)エッチングまたは蒸着(Bedampfung)のような真空方法も度々使用されており、その際、構造化は一般的にマスクによって行われる。
【0003】
すでに市販されている、またはその市場潜在力において関心を引く(光)電子の用途に関する例としては、ここでは電気泳動またはエレクトロクロミックを用いた構造物またはディスプレイ、表示装置およびディスプレイ装置における有機発光ダイオードまたはポリマー発光ダイオード(OLEDまたはPLED)、または照明として挙げればエレクトロ・ルミネセンス・ランプ、発光電気化学セル(LEEC)、有機太陽電池、好ましくは色素太陽電池またはポリマー太陽電池、無機太陽電池、好ましくは特にケイ素、ゲルマニウム、銅、インジウム、およびセレニウムをベースとする薄層太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機スイッチング素子、有機光増幅器、有機レーザダイオード、有機センサまたは無機センサ、または有機または無機ベースのRFIDトランスポンダも挙げられる。
【0004】
無機および/または有機の(光)電子機器の範囲における、ことのほか有機(光)電子機器の範囲における(光)電子的装置の十分な耐用期間および機能を実現するための技術的な課題として、その中に内包されたコンポーネントを浸透物に対して保護することが考えられる。浸透物とは、多数の低分子有機化合物または低分子無機化合物であり、特に水蒸気および酸素であり得る。
【0005】
無機および/または有機の(光)電子機器の範囲における、ことのほか有機原料を使用する場合の多数の(光)電子的装置は、水蒸気からも酸素からも影響を及ぼされやすく、その際、多くの装置に関して水蒸気の侵入がより大きな問題としてランク付けされる。このため電子的装置の耐用期間中はカプセル化による保護が不可欠であり、というのもそうしなければ、使用期間中ずっと性能が低下していくからである。こうして例えば構成要素の酸化により、エレクトロルミネセンスランプ(ELランプ)または有機発光ダイオード(OLED)などのような発光装置の場合は発光力が、電気泳動ディスプレイ(EPディスプレイ)の場合はコントラストが、または太陽電池の場合は効率が、非常に短い期間内に激しく低下する可能性がある。
【0006】
無機および/または有機の(光)電子機器の場合、特に有機(光)電子機器の場合、酸素および/または水蒸気のような浸透物に対する浸透バリアとなる柔軟な接着溶液に対する特別な需要がある。それだけでなく、このような(光)電子的装置に対しては多くのさらなる要求がある。このため柔軟な接着溶液は、2つの土台の間の優れた付着を達成するだけでなく、それに加えて高いせん断強度および剥離強度、化学耐性、耐老朽化性、高い透明性、簡単な加工性、ならびに高い柔軟性および曲げ性のような特性を満たすべきである。
【0007】
したがって従来技術に基づき一般的に行われている手法では、水蒸気および酸素を通過させない2つの土台の間に電子的装置を据える。その後、引き続き縁部での封止が行われる。柔軟でない構造物のためにはガラスまたは金属土台が使用され、これらの土台は、高い浸透バリアを提供するが、機械的な負荷に対しては抵抗力が著しく欠落している。さらにこれらの土台は装置全体の厚みを比較的大きくする。金属土台の場合にはこれに加えて透明性がない。これに対し柔軟な装置のためには、多層状に作製可能な透明または不透明なフィルムのような平面土台が用いられる。これに関しては、様々なポリマーからの組合せも、無機層または有機層も使用することができる。このような平面土台の使用は、柔軟で、極めて薄い構造を可能にする。その際、多様な用途のために、例えばフィルム、織布、不織布、および紙、またはそれらからの組合せのような非常に様々な土台が可能である。
【0008】
できるだけ優れた封止を達成するため、特殊なバリア接着剤が使用される。(光)電子部品を封止するための優れた接着剤は、酸素および特に水蒸気に対する低い浸透性を有しており、装置上への十分な付着性を有しており、かつ装置上をうまく流れ得る。装置への付着性が低いと、界面でのバリア作用が低下し、これにより接着剤の特性に関係なく、酸素および水蒸気の侵入が可能となる。接着剤と土台の間の接触が全体にわたる場合にのみ、接着剤の特性が、接着剤のバリア作用に対する決定的な因子となる。
【0009】
バリア作用を特徴づけるために、通常は酸素透過率OTR(Oxygen Transmission Rate)および水蒸気透過率(WVTR)(Water Vapor Transmission Rate)が提示される。その際、それぞれの率は、特定の温度および分圧条件ならびに場合によっては相対湿度のようなさらなる測定条件下での、面積および時間当りの酸素もしくは水蒸気のフィルムを通り抜ける流量を示す。これらの値が低ければ低いほど、それぞれの材料はカプセル化のためにより適している。その際、浸透性の提示は、単にWVTRまたはOTRに関する値に基づくだけでなく、常に、材料の厚さなどのような浸透の平均経路長に関する情報または特定の経路長に基づく規格化も内容として含んでいる。
【0010】
浸透性Pは、気体および/または液体に関する物体の透過性のための尺度である。低いP値は優れたバリア作用を特徴づける。浸透性Pは、特定の浸透経路長、分圧、および温度における定常条件下での、定義された材料および定義された浸透物に関する特定の値である。浸透性Pは、拡散項Dおよび溶解度項Sの積で表わされる。すなわち、
P=D×S
【0011】
溶解度項Sは、ここでは浸透物に対するバリア接着剤の親和力を記述する。水蒸気の場合は、例えば疎水性材料によって低いS値が達成される。拡散項Dは、バリア材料内での浸透物の可動性に関する尺度であり、分子の可動性または自由体積のような特性に直接的に依存している。強架橋された材料または高結晶質の材料ではしばしば、比較的低いD値が達成される。しかしながら高結晶質の材料は、一般的に透明度が比較的低く、比較的強い架橋は比較的低い柔軟性を生じさせる。浸透性Pは、通常は分子の可動性が増すとともに上昇し、例えば温度が上昇する場合またはガラス転移点を超える場合にも上昇する。
【0012】
接着剤のバリア作用を上昇させるための手法は、特に水蒸気および酸素の透過性への影響に関しては両方のパラメータDおよびSを考慮しなければならない。これらの化学的な特性に加え、浸透性への物理的な影響の効果、特に平均浸透経路長および界面特性(接着剤の表面流動挙動、付着性)も考慮に入れなければならない。理想的なバリア接着剤は、土台上に非常に優れて付着する上に、低いD値およびS値を有している。
【0013】
低い溶解度項Sは、優れたバリア特性を達成するためには、多くの場合不十分である。これの古典的な例は、特にシロキサンエラストマーである。この材料は極めて疎水性であるが(小さな溶解度項)、その自由に回転可能なSi−O結合(大きな拡散項)によって、水蒸気および酸素に対して比較的低いバリア作用を有する。つまり優れたバリア作用のためには溶解度項Sと拡散項Dの良いバランスが必要である。
【0014】
このためには、これまではとりわけエポキシドをベースとした液体接着剤および付着剤が使用されてきた(WO98/21287A1(特許文献1);US4,051,195A(特許文献2);US4,552,604A(特許文献3))。これらは強架橋によって低い拡散項Dを有する。その主要な使用分野は、硬い装置の縁の貼り付けであるが、並の程度に柔軟な装置もその主要使用分野である。硬化は熱またはUV放射によって行われる。面全体を貼り付けることは、硬化によって生じる収縮のためほとんど不可能であり、なぜなら硬化の際、接着剤と土台の間にテンションがかかり、このテンションは他方でまた層間剥離を引き起こす恐れがあるからである。
【0015】
この液体接着剤の使用は一連の欠点を伴う。低分子の成分(VOC−揮発性有機化合物)が、装置のうちの影響を受けやすい電子構造物を害する可能性があり、生産における取扱いを困難にする可能性がある。この接着剤は、高い費用および手間をかけて、装置のそれぞれの個々の構成要素上に施さなければならない。正確な位置決めを保証するため、高価なディスペンサおよび固定機構を購入する必要がある。加えてこの種の塗布は、迅速で連続的なプロセスの妨げとなり、かつその後に続いて必要なラミネート加工ステップ中は、低い粘性により、狭い範囲内の定義された層厚と貼り付き幅の達成を困難にする可能性がある。
【0016】
さらに、このような高架橋された接着剤は、硬化後に僅かな柔軟性しか有さない。熱架橋系の使用は狭い温度範囲内に制限されるか、2成分系の場合は可使時間、つまりゲル化が起こるまでの処理時間によって制限される。高い温度範囲でも、および特に反応時間が長い場合でも、影響を受けやすい(光)電子構造物は、この種の系の使用の可能性を制限する。すなわち、(光)電子構造物における最大使用可能温度はしばしば60℃であり、なぜならこの温度を超えると事前損傷がすでに発生し得るからである。特に、有機電子機器を内包しており、かつ透明なポリマーフィルム、またはポリマーフィルムおよび無機層から成る複合材料によってカプセル化された柔軟な装置は、ここで狭い制限範囲を強いる。これは、大きな圧力でのラミネート加工ステップにも当てはまる。より良い保持性を達成するには、ここでは温度負荷ステップをなくすことおよび比較的低い圧力でのラミネート加工が好ましい。
【0017】
最近では、熱硬化可能な液体接着剤に対する代替案として、放射線硬化型接着剤も度々使用されるようになっている(US2004/0225025A1(特許文献4))。放射線硬化型接着剤の使用は、電子的装置に長く持続する熱負荷をかけることを回避する。しかしながら、一般的にはUV放射線のほかにIR放射線も非常に高い割合で放出されるので、照射によって装置の短期的な点状の加熱が引き起こされる。上に挙げたVOC、収縮、層間剥離、および低い柔軟性のような液体接着剤の別の欠点も、同様に解決されないままである。光開始剤または増感剤からの追加的な揮発性成分または分解生成物によって問題が生じ得る。それに加え装置はUV光に対して透過でなければならない。
【0018】
特に有機電子機器の構成要素や使用されるポリマーの多くは、しばしばUV負荷に対して影響を受けやすいので、比較的長く続く屋外使用は、さらなる追加的な保護措置、例えばさらなるカバーフィルムなしでは不可能である。このカバーフィルムは、UV硬化型接着剤系の場合、UV硬化後に初めて施すことができ、これは製造の複雑さと装置の厚さを付加的に高める。
【0019】
US2006/0100299A1(特許文献5)は、電子的装置をカプセル化するためのUV硬化可能な感圧接着テープを開示している。この感圧接着テープは、軟化点が60℃超のポリマー、軟化点が30℃未満の重合可能なエポキシ樹脂、および光開始剤の組合せをベースとする接着剤を含んでいる。このポリマーは、ポリウレタン、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、またはポリエステル、ただし特にアクリレートであり得る。さらに粘着樹脂、可塑剤、または充填剤が含まれる。
【0020】
アクリレート系接着剤は、UV放射線および様々な化学物質に対する非常に優れた耐性を有しているが、異なる下地への接着力のバラツキが非常に大きい。ガラスまたは金属のような極性の下地に対する接着力は非常に高い一方で、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンのような非極性の下地に対する接着力は、どちらかと言えば低い。この場合は、界面での拡散の危険が特に大きい。加えてこのアクリレート系接着剤は非常に極性が強く、これは、特に水蒸気の拡散を、後の架橋にもかかわらず助長する。重合可能なエポキシ樹脂の使用によって、この傾向はさらに強化される。
【0021】
US2006/0100299A1(特許文献5)に記載の感圧接着剤としての実施形態は、簡単な適用という利点を有しているが、同様に、含まれる光開始剤によって生じ得る分解生成物、構成の必然的なUV透過性、および硬化後の柔軟性の低下という欠陥もある。これに加え、粘着性および特に凝集性の維持に必要なエポキシ樹脂または別の架橋剤の割合が少ないことから、液体接着剤によるよりずっと少ない架橋密度しか達成できない。
【0022】
一般的に感圧接着テープは、液体接着剤とは違い比較的高分子のポリマーのため、表面上での優れた濡れおよび付着のためにはある程度の時間、十分な圧力、および粘性成分と弾性成分との優れたバランスを必要とする。一般的に接着剤を後から架橋することは、接着剤の収縮を引き起こす。このことは界面での付着性の低下を引き起こす可能性があり、さらに浸透性を上昇させることもある。
【0023】
WO2007/087281A1(特許文献6)は、電子的用途、特にOLEDのための、ポリイソブチレン(PIB)をベースとする透明で柔軟な感圧接着テープを開示している。その際、分子量が500,000g/mol超のポリイソブチレン、および水素化環状樹脂が使用される。任意に、光重合可能な樹脂および光開始剤を使用することができる。
【0024】
ポリイソブチレンをベースとする接着剤は、その低い極性に基づき、水蒸気に対する優れたバリアを有しているが、分子量が高い場合でさえ凝集性が比較的低く、このためすでに室温で、特により高められた温度では、負荷下でクリープ傾向が確認され得、したがってこの接着剤は低いせん断強度を有する。低分子成分の割合を任意に減少させることはできないが、なぜならそうすると付着性が格段に低下し、界面浸透性が増すからである。接着剤の非常に低い凝集性のゆえに必要とされる高い割合の機能性樹脂を使用すると、接着剤の極性が再び上昇し、したがって溶解度項が大きくなる。
【0025】
これに対し、しっかりと架橋された感圧接着剤は確かに優れた凝集性を示すが、表面流動挙動が低下する。この感圧接着剤は、不十分にしか土台表面の粗さに適応できず、これにより界面での浸透が上昇する。加えて、しっかりと架橋された感圧接着剤は、比較的少ない程度でしか、負荷下で現れるような変形エネルギーを散逸させられない。両方の現象によって接着力が減少する。これに対して僅かに架橋された感圧接着剤は、確かに粗い表面上をうまく流れることができ、かつ変形エネルギーを散逸させることができるため付着性への要求を満たすことができるかもしれないが、この感圧接着剤は、低い凝集性のゆえに、不十分にしか負荷に耐えられない。
【0026】
加えて、従来技術からはバリア特性のない感圧接着剤が知られており(WO03/065470A1(特許文献7))、この感圧接着剤は、電子構造物において転写式接着剤として使用される。この接着剤は機能性充填剤を含んでおり、この機能性充填剤は、構造物内で酸素または水蒸気と反応する。これにより構造物内における、簡単なスカベンジャーの適用が可能である。外に対して構造物を封止するために、透過性の低いさらなる付着剤を使用する。
【0027】
従来技術からは、ビニル芳香族系ブロックコポリマーをベースとする接着剤が、例えばUS4,985,499A1(特許文献8)から知られている。この公報は、接着剤の様々な有利な組成を記載している。
【0028】
さらに従来技術からブロックコポリマーのバリア作用が知られている(US2002/0188053A1(特許文献9))。ここでは、このブロックコポリマーに基づくポリマーが電気泳動ディスプレイの封止に使用されており、この場合、活性物質をその塗布後にこのポリマーの溶液で覆い、この溶液が、乾燥後に封止層および固定部として作用する。このポリマーは自己接着特性を有しておらず、電気泳動ディスプレイ構成の別のコンポーネントへの付着を、溶液からの濡れによってのみ達成する。これは、溶剤の使用を前提とし、排出物を生成し、かつ配量が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】WO98/21287A1
【特許文献2】US4,051,195A
【特許文献3】US4,552,604A
【特許文献4】US2004/0225025A1
【特許文献5】US2006/0100299A1
【特許文献6】WO2007/087281A1
【特許文献7】WO03/065470A1
【特許文献8】US4,985,499A1
【特許文献9】US2002/0188053A1
【特許文献10】EP1311559B1
【特許文献11】US2007/0135552A1
【特許文献12】WO02/026908A1
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】「Chemistry and Technology of UV and EB formulation for Coatings, Inks and Paints」(Vol. 1, 1991, SITA, London)
【非特許文献2】A. G. Erlatら編、「47th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2004、654〜659頁
【非特許文献3】M. E. Grossら編「46th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2003、89〜92頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の課題は、簡単に実施可能でありかつ同時に優れたカプセル化が達成される、浸透物、特に水蒸気および酸素に対して電子的装置をカプセル化するための方法を提供することである。さらに、適切な、特に柔軟な接着剤の使用によって(光)電子的装置の耐用期間を延長することも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、請求項1に記載の方法によって上述の問題を解決する。並列の解決策は、請求項6および19に記載されている。好ましい態様および変形形態はそれぞれの従属請求項の対象である。
【0033】
本発明はまず、上述の欠点にもかかわらず、これまで感圧接着剤に関して説明した欠点を生じさせないか少ししか生じさせない感圧接着剤を電子的装置のカプセル化のために使用することが可能であるという知見に基づく。詳しく言うと、ブチレンブロックコポリマー、特にイソブチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤が、電子的装置をカプセル化するために特に適していることが判明した。したがって、本発明では、ブチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤を用意し、電子的装置のカプセル化すべき領域に適用する。この接着剤は感圧接着剤であるので、適用は、事前固定またはそれに類することを行う必要がないため特に簡単である。感圧接着剤の態様によっては、後続の処理も必要なくなる。さらに感圧接着テープとして提供することで、感圧接着剤の量を簡単に配量することができ、かつ感圧接着テープは溶剤を放出させることもない。
【0034】
ブチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤とは、特にブロックコポリマーの総割合が少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも55重量%の感圧接着剤である。
【0035】
接着剤の領域においては、感圧接着剤は特にその永続的な接着性および柔軟性を特色とする。永続的な粘着性を有する材料は、いつでも付着特性および凝集特性の適切な組合せを有していなければならない。この特徴が、例えば完全に反応していない状態ではほとんど凝集性を供しない反応性接着剤と感圧接着剤を区別している。優れた付着性のためには、付着性および凝集性のバランスが最適であるように感圧接着剤を調整することが重要である。
【0036】
ここでは、記載の感圧接着剤によって完全に取り囲むことだけをカプセル化と呼ぶのではなく、(光)電子的装置のカプセル化すべき領域上での感圧接着剤の部分的な適用、例えば電子構造物の片面を覆うこと、または縁取ることもすでにカプセル化と呼ぶ。
【0037】
感圧接着剤の成分の選択、および非極性ブチレンブロック、特にイソブチレンブロックコポリマーのポリイソブチレンブロックとその結果生じる拡散係数の低い溶解度項(S)とから前記選択の結果として生じる非常に低い極性によって、水蒸気および酸素のような浸透物、特に水蒸気の低い通過性が達成される。これに加え、他の感圧接着剤に比べて酸素浸透性のさらなる低下が達成される。
【0038】
ブロックコポリマー内で少なくとも2つのドメインを形成することにより、追加的に、特にポリイソブチレンをベースとする接着剤に比べて非常に優れた凝集性および同時に改善されたバリア特性が獲得される。以下に述べるようなさらなる成分によって、(光)電子的装置の要求に応じ、例えば架橋反応によって、特性を有利に要求に適応させることができる。
【0039】
つまり本発明の利点は、他の感圧接着剤に比べると、様々な土台上での優れた界面付着性に伴う酸素およびとりわけ水蒸気に対する非常に優れたバリア特性、優れた凝集性の組合せであり、液体接着剤に比べると、非常に高い柔軟性、および(光)電子的装置内でのおよびカプセル化の際の/カプセル内での簡単な適用である。感圧接着剤の実施形態に応じて、イソブチレンブロックコポリマーをベースとする接着剤は、化学物質、ならびに環境の及ぼす影響、特に屋外暴露およびUV負荷の際の影響に対する優れた耐性を提供する。さらに特定の実施形態では透明な接着剤もあり、この接着剤は、入射光または出射光の減少を非常に少なく保つので、(光)電子的装置における用途に特に使用することができる。
【0040】
つまりブチレンブロックコポリマー、特にイソブチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤は、特にアクリレート、シリコーン、ポリイソブチレン、スチレン(Aブロック)と1,3−ジエン(Bブロック)から成るビニル芳香族系ブロックコポリマーおよびその水素化された形態、またはビニルアセテートをベースとする感圧接着剤に比べ、優れた加工性およびコーティング性のほかに、付着および凝集に関する優れた製品特性を特色とし、ならびに酸素に対する優れたバリア作用、および水蒸気に対する非常に優れたバリア作用を特色とする。このような感圧接着剤は、簡単に電子的装置内に組み込むことができ、特に、高い柔軟性が必要な装置内にも組み込むことができる。この感圧接着剤のさらに別の特別に有利な特性は、様々な土台上での同じように優れた付着性、高いせん断強度、および高い柔軟性である。これに加え、土台に対する非常に優れた付着性により、低い界面浸透性も達成される。(光)電子構造物をカプセル化するためのここに記載の調合を使用することにより、上に挙げた利点を兼ね備え、かつこれらの利点によりカプセル化プロセスを加速および簡素化させる有利な装置が得られる。
【0041】
感圧接着剤の特定の実施形態では、熱を用いた工程および/または照射が必要なく、架橋反応による収縮が生じず、また感圧接着剤が帯状の材料として、または電子的装置に相応に適応された形において存在するので、感圧接着剤を簡単に、かつ速く、感圧接着剤の適用では一般的な小さな圧力で、(光)電子構造物のカプセル化プロセスに組み込むことができる。熱負荷および機械的負荷のような、回避された処理ステップに伴って通常は生じる欠点を、こうして最小化することができる。平面的なバリア材料(例えばガラス、特に薄いガラス、金属酸化物をコーティングしたフィルム、金属フィルム、多層の土台材料)により(光)電子構造物の少なくとも一部をラミネート加工することによるカプセル化は、非常に優れたバリア作用を伴って、簡単なロール・ツー・ロール・プロセスにおいて可能である。構造全体の柔軟性は、感圧接着剤の柔軟性のほかに、(光)電子構造物もしくは平坦なバリア材料の幾何学形状および厚みのようなさらなる因子に依存する。しかし感圧接着剤の高い柔軟性は、非常に薄く、曲げやすく、かつ柔軟な(光)電子構造物の実現を可能にする。使用した「曲げやすい」という概念は、特定の半径、特に1mmの半径のドラムのような曲げられた物体の湾曲を損傷なく倣うことができる特性と理解され得る。
【0042】
(光)電子構造物のカプセル化のためには、電子構造物が、感圧接着剤を適用する前、最中、または後に加熱されると特に有利である。これにより感圧接着剤がより良く表面を流れることができ、したがって(光)電子的装置と感圧接着剤との間の界面での浸透を減らすことができる。その際、表面流動を相応に促進するには、温度は好ましくは30℃超、さらに好ましくは50℃超であることが望ましい。ただし(光)電子的装置を損傷させないためには、高過ぎる温度を選択すべきでない。温度はできるだけ100℃未満であることが望ましい。最適な温度範囲は50℃〜70℃の温度であると判明した。追加的または選択的に感圧接着剤が適用の前、最中、または後に加熱されると同様に有利である。
【0043】
浸透物に対する電子的装置のカプセル化法の好ましい態様では、感圧接着剤を接着テープの構成要素として提供することができる。この種の体裁は、感圧接着剤の特に簡単かつ均等な適用を可能にする。
【0044】
その際、「接着テープ」という一般的な表現は、一実施形態では、片面または両面に感圧接着剤が付与された支持体材料を含む。この支持体材料は、全ての平面的な形成物、例えば2次元に延びたフィルムまたはフィルム切片、延びた長さおよび限られた幅を有するテープ、テープ切片、ダイカット、多層構成物、およびその類似物を含む。その際、多様な用途のために、例えばフィルム、織編布、不織布、および紙のような非常に様々な支持体を接着剤と組み合わせることができる。さらに「接着テープ」という表現は、いわゆる「転写式接着テープ」、つまり支持体のない接着テープも含んでいる。転写式接着テープの場合、接着剤はむしろ適用前に、剥離層を備えており、かつ/または抗付着特性を有する柔軟なライナーの間に施されている。適用のためには、通常、まずライナーを取り除き、接着剤を適用し、その後で第2のライナーを取り除く。この感圧接着剤は、このように直接的に、(光)電子的装置内の2つの表面の結合のために使用できる。
【0045】
接着テープの支持体材料として、ここではポリマーフィルム、複合フィルム、または有機層および/または無機層を備えたフィルムまたは複合フィルムを使用することが好ましい。このようなフィルム/複合フィルムは、一般的に流通しているフィルム作製に使用される全てのプラスチックから成ることができ、これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、すなわちポリエチレン、ポリプロピレン−特に1軸または2軸の延伸によって生成された配向ポリプロピレン(OPP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル−特にポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルスルホン(PES)、またはポリイミド(PI)が挙げられる。
【0046】
加えて支持体は、有機または無機のコーティングまたは層と組み合わせることができる。これは例えば塗装、印刷、蒸着、スパッタリング、同時押出し、またはラミネート加工のような通常の方法によって行うことができる。これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、ここでは例えばケイ素およびアルミニウムの酸化物または窒化物、酸化インジウムスズ(ITO)、またはゾルゲルコーティングが挙げられる。
【0047】
これらのフィルム/複合フィルム、特にポリマーフィルムは、酸素および水蒸気に対する浸透バリアを備えることが特に好ましく、その際この浸透バリアは、包装分野に対する要求を上回る(WVTR<10−1g/(md);OTR<10−1cm/(md bar))。酸素透過率(OTR)および水蒸気透過率(WVTR)の決定は、DIN53380第3部またはASTM F−1249に基づき行われる。酸素透過性は、23℃および相対湿度50%で測定される。水蒸気透過性は、37.5℃および相対湿度90%で決定される。結果は50μmのフィルム厚で規格化される。
【0048】
さらにフィルム/複合フィルムは、好ましい様態では透明に形成することができ、したがってこのような接着用品の構造全体も透明に形成される。ここで「透明」とは、光の可視領域において、平均透過率が少なくとも75%、好ましくは90%より高いことを意味する。
【0049】
感圧接着剤の特定の実施形態では、(光)電子的装置の要求に応じて、弾性および粘性の特性、ならびにバリア作用を(後からの)架橋反応によって変化させることができる。これは、(光)電子的装置に適応させて、熱によっても、電磁放射線、好ましくはUV放射線、電子放射線、またはガンマ放射線によっても行うことができる。その際、感圧接着剤の高い柔軟性は維持され続けることが望ましい。さらに必要ならば、電子的装置上に感圧接着剤を適用する前に、架橋を行うことが好ましい。そうすることで、架橋のために場合によっては必要な、例えば熱の形での、またはUV照射による、またはそれに類するエネルギー供給が電子構造物を傷つける可能性がなくなる。
【0050】
さらに好ましくは、特定の実施形態ではスペクトルの可視光(約400nm〜800nmの波長領域)内で透明な感圧接着剤が使用される。所望の透明性は、特に無色の粘着樹脂を使用することで達成可能である。したがって、このような感圧接着剤は、(光)電子構造面全体を覆う使用にも適している。面全体を貼り付けることは、電子構造物がほぼ中心に配置される場合、縁封止と比べ、浸透物が構造物に達する前に浸透物が面全体にくまなく拡散しなければならないという利点を提供する。これにより浸透経路は格段により長くなる。浸透経路は透過性に反比例するので、例えば液体接着剤による縁封止に比べて、この実施形態で延長された浸透経路は、総合的なバリア性に良い影響を及ぼす。
【0051】
ここで「透明」とは、光の可視領域において、接着剤の平均透過率が少なくとも75%、好ましくは90%より高いことを意味する。さらに支持体を備えた感圧接着テープとしての実施形態の場合、構造全体の最大透過率は、使用される支持体の種類および構成の種類に依存する。
【0052】
(光)電子的装置の電子構造物は、しばしばUV放射線に対して脆弱である。このため感圧接着剤がさらにUVブロック性に形成されていると特に有利なことが判明した。「UVブロック性」という概念は、ここでは、相応の波長領域における最大20%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大1%の平均透過度を意味する。好ましい様態では、感圧接着剤が320nm〜400nmの波長領域(UVA放射線)、好ましくは280nm〜400nmの波長領域(UVAおよびUVB放射線)、さらに好ましくは190nm〜400nmの波長領域(UVA、UVB、およびUVC放射線)においてUVブロック性に形成されている。
【0053】
感圧接着剤のUVブロック作用は特に、感圧接着剤にUVブロッカーまたは適切な充填剤を添加することによって達成することができる。UVブロッカーとしては、例えばCiba社のTinuvinのようなHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)またはベンズイミダゾール誘導体が適している。充填剤としては特に二酸化チタン、ことのほかナノスケールの二酸化チタンが適しており、なぜならこれによって可視領域における透明性を維持できるからである。
【0054】
この感圧接着剤は、使用したブチレンブロック、特にポリイソブチレンブロックにより、特に水素化されていないかまたは部分的にしか水素化されていないコポリマーブロックをベースとする感圧接着剤に比べ、天候の影響およびUV光に対する非常に優れた耐性を示す。この耐性は特に水素化樹脂の使用によって改善される。
【0055】
使用した感圧接着剤は、以下にさらに詳しく説明するように、少なくとも一種のブチレンブロックコポリマー、好ましくは少なくとも一種のイソブチレンブロックコポリマーをベースとすることが好ましく、加えて粘着樹脂を含んでいる。特定の実施形態では、以下に記載するようなさらなるブロックコポリマーが使用される。
【0056】
(イソ)ブチレンブロックコポリマーとしては、一つには好ましくはビニル芳香族類、例えばスチレンから成るブロック(Aブロック)、もう一つには(イソ)ブチレンだけの重合、または(イソ)ブチレンと、n−ブテンもしくは1,3−ジエン、例えばイソプレンもしくはブタジエンとの組合せの重合によって構成されたブロック(Bブロック)を含むブロックコポリマーを使用するのが好ましい。1,3−ジエンの部分は、部分的、選択的、または完全に水素化されていてもよい。このBブロックは一般的に低い極性を有する。好ましくは、Bブロックとして純粋な(ポリ)イソブチレンブロックを使用する。
【0057】
Aブロックとしての好ましいポリスチレンブロックの代わりに、ビニル芳香族類として、75℃超のガラス転移温度を有する別の芳香族類含有ホモポリマーおよびコポリマー(好ましくはC−8〜C−12芳香族類)をベースとするポリマーブロック、例えばα−メチルスチレンを含有する芳香族ブロックも使用可能である。さらに、同じまたは異なるAブロックを含むこともできる。
【0058】
特定の実施形態では、上述のBブロックを、室温より高いガラス転移温度を示す例えばポリメチルメタクリレートのような別の化学的性質のAブロックと共に使用することができる。
【0059】
ブロックコポリマーの構造は(AB)nXであり、その際、Aは例えば好ましいビニル芳香族類ブロックであり、Bは例えば好ましいポリイソブチレンブロックであり、Xは連結部位であり、nは1〜8の値を取ることができる。好ましくはnが2〜8の値を取る。つまりブロックコポリマーは、直鎖A−B−A構造を有することができるか、放射状に形成されることができる。連結部位は、例えばC−C一重結合であることができるが、別の連結部位、例えば金属原子またはその類似物との結合もあり得る。
【0060】
(イソ)ブチレンブロックコポリマーとして、上述のブロックAおよびBのほかに少なくとも1つのさらなるブロックを含むブロックコポリマー、例えばA−B−Cブロックコポリマーも使用できる。
【0061】
さらに好ましくは、ABブロックコポリマー(2ブロック)とABAブロックコポリマー(3ブロック)の混合物が使用される。この混合物の使用は、より良い表面流動挙動および付着性を備えた感圧接着剤の作製を可能にする。
【0062】
3ブロックと2ブロックの比は、1:19から19:1の範囲内で変化し得る。
【0063】
市場では、適切なイソブチレンブロックコポリマーは例えばカネカ社の商品名SiBStarまたはBASF社の商品名Oppanol IBSとして入手可能である。
【0064】
可能な一様態では、本発明による感圧接着剤は、成分としてさらなるブロックコポリマーを含むことができる。以下に記載するこのブロックコポリマーの使用により、土台への接着剤の付着性をさらに高めることができる。その際、主としてビニル芳香族類、好ましくはスチレンによって構成されたポリマーブロック(A2ブロック)と、主として1,3−ジエンの重合、好ましくはブタジエン、イソプレン、または両方のモノマーから成る混合物の重合によって構成されたポリマーブロック(B2ブロック)とを含むブロックコポリマーをベースとするビニル芳香族系ブロックコポリマーを使用するのが好ましい。このB2ブロックは一般的に低い極性を有する。B2ブロックとして、ホモポリマーブロックもコポリマーブロックも好ましく利用可能である。
【0065】
A2ブロックおよびB2ブロックから生じるブロックコポリマーは、同じまたは異なるB2ブロックを含むことができ、このB2ブロックは、部分的、選択的、または完全に水素化されていてもよい。ブロックコポリマーは直鎖A2−B2−A2構造を有することができる。放射型ブロックコポリマーならびに星型および直鎖型のマルチブロックコポリマーも同様に使用可能である。さらなる成分としてA2−B2二元ブロックコポリマーが存在してもよい。前述のポリマーの全ては、単独で利用してもよく、または相互に混合して利用してもよい。優れた天候安定性およびUV安定性を得るためには、部分水素化または水素化されたポリマーを使用するのが好ましい。
【0066】
さらなるブロックコポリマーとして好ましいポリスチレンブロックの代わりに、ビニル芳香族類として、75℃超のガラス転移温度を有する別の芳香族類含有ホモポリマーおよびコポリマー(好ましくはC−8〜C−12芳香族類)をベースとするポリマーブロック、例えばα−メチルスチレンを含有する芳香族ブロックも使用可能である。さらに、同じまたは異なるA2ブロックを含むこともできる。
【0067】
上述のブロックA2およびB2のほかに少なくとも1つのさらなるブロックを含む、例えばA2−B2−C2ブロックコポリマーのようなブロックコポリマーも使用可能である。
【0068】
あまり好ましくはないが、上に挙げたB2ブロックを、室温より高いガラス転移温度を示す例えばポリメチルメタクリレートのような別の化学的性質のA2ブロックと共に使用することもできる。
【0069】
市販されているビニル芳香族系ブロックコポリマーとしては、例えばKraton社の商品名Kraton(スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロックコポリマー(SBS)であるKraton D1101および1102、スチレン−イソプレン−スチレン−ブロックコポリマー(SiS)であるKraton D1107もしくは1163、または水素化されたスチレン−ブタジエン−スチレン−ブロックコポリマーであるKraton G1652)、Polimeri Europa社の商品名Europrene(イソプレン、ブタジエン、またはそれらの水素化生成物を含むスチレンブロックコポリマー)、またはKuraray社の商品名Septon(水素化されたスチレン−イソプレン−スチレン−ブロックコポリマー)が知られている。A2−B2−C2ビニル芳香族系ブロックコポリマーは、例えばArkema社から商品名SBMの下に入手可能である。
【0070】
有利な一実施形態では、イソブチレンブロックコポリマーおよびさらなるビニル芳香族系ブロックコポリマーが、上述のAブロックまたはA2ブロックをそれぞれ10重量%〜35重量%の割合で有する。
【0071】
さらなる好ましい一様態では、感圧接着剤全体に対し、ブロックコポリマーの割合が合計で少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、さらに好ましくは少なくとも35重量%である。ブロックコポリマーの割合が少な過ぎると、感圧接着剤の凝集性が相対的に低くなる。感圧接着剤全体に対して、ブロックコポリマーの最大割合は合計で最大90重量%、好ましくは最大75重量%、ことのほか好ましくは最大70重量%である。ブロックコポリマーの割合が高過ぎてもまた、感圧接着剤はほとんど粘着性がなくなる。
【0072】
ブロックコポリマーの総割合に対する(イソ)ブチレンブロックコポリマーの割合は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも55重量%である。(イソ)ブチレンブロックコポリマーの割合が少な過ぎると、水蒸気および酸素に対するバリア作用が低下する。
【0073】
さらに好ましい様態では、付着性を望み通りに高めるために、感圧接着剤が少なくとも一種の(イソ)ブチレンブロックコポリマーのほかに、上述のように、少なくとも一種の粘着樹脂を有している。この粘着樹脂は、ブロックコポリマーのエラストマーブロックと相性が良いものがよい。
【0074】
接着性付与剤としては、例えば、ロジンおよびロジン誘導体をベースとする水素化されていないかまたは部分的にもしくは完全に水素化された樹脂、ジシクロペンタジエンの水素化ポリマー、C5、C5/C9もしくはC9モノマー流をベースとした水素化されていないかまたは部分的、選択的もしくは完全に水素化された炭化水素樹脂、α−ピネンおよび/またはss−ピネンおよび/またはδ−リモネンをベースとしたポリテルペン樹脂、好ましくは純粋なC8およびC9芳香族類の水素化ポリマーなどが、感圧接着剤に使用され得る。前述の粘着樹脂は、単独で使用することも、混合して使用することも可能である。その際、室温で固体の樹脂も液体の樹脂も使用することができる。高い耐老朽化性およびUV安定性を保証するためには、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の水素化度を有する水素化樹脂が好ましい。
【0075】
さらに、30℃より高いDACP値(ジアセトンアルコール曇り点)および50℃より高いMMAP値(混合メチルシクロヘキサンアニリン点)、特に37℃より高いDACP値および60℃より高いMMAP値を有する非極性樹脂が好ましい。DACP値およびMMAP値は、それぞれ特定の溶剤中での溶解度を示す。この範囲を選択することによって、特に高い浸透バリアが、とりわけ水蒸気に対して達成される。
【0076】
95℃超、特に100℃超の軟化温度(環/球式)を有する樹脂がさらに好ましい。この選択によって、特に高い浸透バリアが、とりわけ酸素に対して達成される。
【0077】
さらなる添加剤として典型的に利用され得るのは、
・可塑剤、例えば軟化オイル、または低分子ポリブテンなどの低分子液体ポリマー
・一次酸化防止剤、例えば立体障害フェノール
・二次酸化防止剤、例えば亜リン酸塩またはチオエーテル
・プロセス安定化剤、例えばC−ラジカルスカベンジャー
・光保護剤、例えばUV吸収剤または立体障害アミン
加工助剤
・末端ブロック強化樹脂、ならびに
・場合によっては、好ましくはエラストマー性質のさらなるポリマー;相応に利用可能なエラストマーには、なかでも純粋な炭化水素をベースとしたエラストマー、例えば天然または合成で生成されたポリイソプレンまたはポリブタジエンのような不飽和ポリジエン、化学的に本質的に飽和状のエラストマー、例えば飽和エチレン−プロピレン−コポリマー、α−オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ならびに化学的に官能化された炭化水素、例えばハロゲン含有の、アクリレート含有の、アリル―もしくはビニルエーテル含有のポリオレフィンが含まれる。
【0078】
さらなる一実施形態では、本発明に従って使用される感圧接着剤を、表面上に流す前または場合によっては流した後にも架橋することが好ましく、その際、材料の高い柔軟性および優れた付着性を引き続き可能にするような架橋度の達成が努められる。架橋後に、感圧接着剤が少なくとも20%の破断伸びを有することが好ましい。このような破断伸びは、感圧接着剤のできるだけ柔軟な様態に関して特に好ましい。破断伸びは、300mm/minの伸び速度および23℃の温度で決定される。
【0079】
好ましいやり方では、感圧接着剤はUV放射線または電子線によって架橋される。従来技術の詳細な説明および架橋に関する重要な方法パラメータは、例えば「Chemistry and Technology of UV and EB formulation for Coatings, Inks and Paints」(Vol. 1, 1991, SITA, London)(非特許文献1)から当業者に知られている。これに加え、高エネルギー照射を可能にする別の方法も使用することができる。
【0080】
必要な放射線量を減らすためには、粘弾性材料に架橋剤および/または架橋促進剤を混入させることができ、特にUV放射線、電子線および/または熱により励起可能な架橋剤および/または促進剤を混入させることができる。放射線架橋に適した架橋剤は、例えば以下の官能基を含むモノマーまたはポリマーである。すなわち、アクリレートまたはメタクリレート、エポキシド、ヒドロキシ、カルボキシ、ビニル、ビニルエーテル、オキセタン、チオール、アセトアセテート、イソシアネート、アリル、または概して不飽和の化合物。使用されるモノマーまたはポリマーは、架橋度への要求に応じて二官能性または多官能性であることができる。
【0081】
さらに好ましい一形態では、感圧接着剤が熱活性化可能な架橋剤によって架橋される。このために、好ましくは過酸化物、酸または酸無水物、金属キレート、二官能性または多官能性エポキシド、二官能性または多官能性水酸化物、ならびに二官能性または多官能性イソシアネートが混入され、これは、例えば酸無水物に関してEP1311559B1(特許文献10)に記載されているように行われる。
【0082】
前述の官能基を備えたモノマー架橋剤のほかに、これらの架橋基によって官能化されたブロックコポリマーが好ましく使用される。有利には、Kraton FGシリーズ(例えばKraton FG1901またはKraton FG1924)、Asahi Tuftec M1913もしくはTuftec M1943またはSepton HG252(SEEPS−OH)のような官能化されたブロックコポリマーが使用される。さらに、(イソ)ブチレンブロックコポリマー自体も、官能基、例えばマレイン酸および/または無水マレイン酸を有することができる。さらに別の好ましいブロックコポリマーとして、例えばDaicel社の商品名Epofriend A1005、A1010、またはA1020が入手可能である。適切な架橋剤(例えば多価イソシアネート、アミン、エポキシド、アルコール、チオール、フェノール類、グアニジン類、メルカプタン類、カルボン酸、または酸無水物)を添加することにより、これらのブロックコポリマーを熱または放射線によって架橋することができる。酸または酸無水物により変性されたブロックコポリマー(例えばKraton FGシリーズ)とエポキシ化ブロックコポリマー(例えばDaicel Epofriendシリーズ)との組合せも有利に利用し得る。これにより、モノマー架橋剤を使わずに架橋を達成することができ、このため架橋が不完全な場合も、モノマー成分が残らない。官能化されたモノマーまたはポリマーの混合物も同様に使用可能である。
【0083】
本発明の一実施形態では感圧接着剤は充填剤も含んでおり、これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、窒化物、ハロゲン化物、炭化物、またはアルミニウムの、ケイ素の、ジルコニウムの、チタンの、スズの、亜鉛の、鉄の、もしくはアルカリ(土類)金属の混合酸化物−/水酸化物−/ハロゲン化物化合物が挙げられる。これは実質的にアルミナであり、例えば酸化アルミニウム類、ベーマイト、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポア、およびその類似物である。ことのほか適しているのは層状ケイ酸塩、例えばベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ヘクトライト、カオリナイト、ベーマイト、雲母、バーミキュライト、またはそれらの混合物である。しかしカーボンブラック、または炭素のさらなる変態、例えばカーボンナノチューブも使用され得る。
【0084】
好ましくは、感圧接着剤の充填剤としてナノスケールおよび/または透明な充填剤が使用される。ここでは、充填剤が少なくとも一つの次元において最大限の延びが約100nm、好ましくは約10nmである場合、その充填剤をナノスケールと呼ぶ。特に好ましくは、小板状の微結晶(Kristallit)構造および高いアスペクト比を有する、塊状で透明な充填剤が、均一な分布で使用される。小板状の微結晶構造および100を大きく超えるアスペクト比を有する充填剤は、一般的に数nmの厚さしか有さないが、微結晶の長さもしくは幅は最大数μmであり得る。このような充填剤も同様にナノ粒子と呼ぶ。加えて、小さな寸法での充填剤の粒子状の様態は、感圧接着剤の透明な形態のために特に有利である。
【0085】
接着剤マトリクス内で、前述の充填剤によりラビリンス状の構造を構成することによって、例えば酸素および水蒸気の拡散経路は、接着剤層を通過する酸素および水蒸気の浸透度を減少させるように延長される。結合剤マトリクス内で充填剤がより良く分散できるように、充填剤を有機化合物によって表面変性させることができる。このような充填剤の使用自体は、例えばUS2007/0135552A1(特許文献11)およびWO02/026908A1(特許文献12)から知られている。
【0086】
本発明のさらなる有利な一実施形態では、酸素および/または水蒸気と特別なやり方において相互作用し得る充填剤も使用される。この場合、(光)電子的装置内に侵入する酸素または水蒸気は、この充填剤と化学的または物理的に結合される。この充填剤は「ゲッター」、「スカベンジャー」、「乾燥剤」、または「吸収材」とも呼ばれる。このような充填剤には、これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、酸化性金属と、金属および遷移金属のハロゲン化物、塩、ケイ酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩と、過塩素酸塩と、活性炭およびその変種が挙げられる。例として、塩化コバルト、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化リチウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカゲル)、酸化アルミニウム(活性アルミニウム)、硫酸カルシウム、硫酸銅、亜ジチオン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、ゼオライト、およびアルカリ(土類)金属の酸化物、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、および酸化マグネシウム、またはカーボンナノチューブも挙げられる。さらに有機吸収剤、例えばポリオレフィンコポリマー、ポリアミドコポリマー、PETコポリエステル、またはさらに、ハイブリッドポリマーをベースとした吸収材も使用することができ、これはたいてい例えばコバルトのような触媒と組み合わせて使用される。さらなる有機吸収剤は、例えば弱架橋されたポリアクリル酸、アスコルビン酸塩、グルコース、没食子酸、または不飽和油脂である。
【0087】
バリア作用に関する充填剤のできるだけ優れた有効性を達成するため、充填剤の割合が少なくなり過ぎないようにするべきである。この割合は、好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、およびことさら好ましくは少なくとも15重量%である。典型的には充填剤は、感圧接着剤の接着力が強く下げられ過ぎることのないよう、または他の特性を損なうことのないようにしながら、できるだけ高い割合で使用される。このためこの割合は、一形態では最大95重量%、好ましくは最大70重量%、さらに好ましくは最大50重量%である。
【0088】
さらに、充填剤のできるだけ細かい分布およびできるだけ高い表面積が有利である。これはより高い効率およびより高い積載能力を可能にし、特にナノスケールの充填剤によって達成される。
【0089】
感圧接着剤の製造および処理は溶液、分散液から、ならびに溶融物から行うことができる。好ましくは製造および処理は溶液または溶融物から行われる。特に好ましいのは溶液からの接着剤の製造である。その際、感圧接着剤の成分は、適切な溶剤、例えばトルエン中、またはベンジンおよびアセトンから成る混合物中に溶解され、そして一般的に既知の方法によって支持体上に施される。溶融物からの処理の場合、これはノズルまたはカレンダ機を介した塗布方法であることができる。溶液からの方法の場合、一部の方法を挙げるとすれば、ドクターブレード、ナイフ、ローラ、またはノズルによるコーティングが知られている。
【0090】
好ましい一実施形態では、感圧接着剤は、揮発性有機化合物(VOC)をVDA277に基づく測定で感圧接着剤1グラムにつき炭素50μgより多く含まず、特に10μg C/gより多く含まない。これは、電子構造の有機材料、ならびに場合によっては存在する機能層、例えば透明で導電性の金属酸化物層または固有導電性ポリマーから成る機能層との相性がより良好であるという利点を有する。
【0091】
該感圧接着剤は、(光)電子的装置の面全体を貼り付けるために使用することができるか、または然るべき処理をした後で、感圧接着剤または感圧接着テープからダイカット、ロールまたはその他の成形体を作製することができる。感圧接着剤/感圧接着テープの然るべきダイカットおよび成形体は、その後、好ましくは貼り付けるべき土台上に、例えば(光)電子的装置の縁取り(Umrandungen)または境界画定(Begrenzung)として貼り付けられる。ダイカットまたは成形体の形状の選択に制限はなく、(光)電子的装置の種類に依存して選択される。平面的なラミネート加工が可能であることは、液体接着剤に比べて浸透物の横からの侵入により浸透経路長が長くなることによって、感圧接着剤のバリア特性に関する利点となる。なぜなら、浸透経路長は浸透に反比例に影響するからである。
【0092】
感圧接着剤が支持体を備えた平面的な形成物の形で提供される場合には、支持体の厚さが好ましくは約1μm〜約350μm、さらに好ましくは約2μm〜約250μm、および特に好ましくは約12μm〜約150μmの範囲内であることが好ましい。最適な厚さは、(光)電子的装置、最終用途、および感圧接着剤の実施形態の種類に依存する。1〜12μmの範囲内の非常に薄い支持体が、全体厚を薄くしなければならない(光)電子構造物で使用されるが、これは構造内に組み込むための費用及び手間を増加させる。150〜350μmの非常に厚い支持体は、支持体による浸透バリアの増強および構成の剛性が極めて重要な場合に使用される。保護作用は支持体によって高められ、一方で構成の柔軟性は低下する。たいていの(光)電子構造物に対しては、12〜150μmの好ましい範囲が、カプセル化の解決策としての最適な妥協点である。
【0093】
以下に、本発明のさらなる詳細、目的、特徴、および利点を、好ましい実施例に基づきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1の(光)電子的装置の概略図である。
【図2】第2の(光)電子的装置の概略図である。
【図3】第3の(光)電子的装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、(光)電子的装置1の第1の態様を示している。この装置1は土台2を有しており、この土台上に電子構造物3が配置されている。この土台2自体が浸透物に対するバリアとして形成されており、したがって電子構造物3のカプセルの一部を構成している。電子構造物3の上方に、ここでは電子構造物から空間的に間隔を置いてバリアとして形成されたさらなるカバー4が配置されている。
【0096】
電子構造物3を側面の側でもカプセル化すると同時にカバー4を電子的装置1のその他の部分と結合させるために、感圧接着剤5が、電子構造物3の横で周囲を取り囲むように、土台2上に配置されている。感圧接着剤5はカバー4を土台2と結合させる。感圧接着剤5はこれに加え、相応に厚い形状によって電子構造物3からカバー4を隔離することを可能にする。
【0097】
感圧接着剤5は、ここでは一般的な形において述べられており、以下に実施例においてさらに詳しく説明するような、本発明による感圧接着剤をベースとした感圧接着剤である。感圧接着剤5は、ここでは土台2をカバー4と結合させる機能を担うだけでなく、加えて浸透物に対するバリア層も形成しており、こうして電子構造物2を、水蒸気および酸素のような浸透物に対して側面からもカプセル化する。
【0098】
加えてここでは、感圧接着剤5が両面接着テープからのダイカットの形で提供される。このようなダイカットは特に簡単な適用を可能にする。
【0099】
図2は、(光)電子的装置1の代替案としての構成を示している。ここでもまた、土台2上に配置されており、かつ土台2によって下方からカプセル化されている電子構造物3が示されている。この場合は電子構造物の上方および側面で、感圧接着剤5が面全体に配置されている。したがって電子構造物3は、上方から感圧接着剤5によって完全にカプセル化される。その後、感圧接着剤5上にカバー4が施される。前述の構成とは異なり、すでに感圧接着剤によってバリアが提供されているので、このカバー4は必ずしも高いバリア要求を満たさなくてもよい。カバー4は、例えば機械的な保護機能を果たすだけでもよいが、このカバーをさらに浸透バリアとして設けることもできる。
【0100】
図3は、(光)電子的装置1のさらなる代替案としての構成を示している。これまでの構成とは異なり、ここでは2つの感圧接着剤5a、bが設けられており、これらの感圧接着剤は、ここでは同一に作られている。第1の感圧接着剤5aは、土台2上に面全体に配置されている。感圧接着剤5a上に電子構造物3が配置され、この電子構造物は感圧接着剤5aによって固定される。感圧接着剤5aおよび電子構造物3から成るこの複合体は、その後さらなる感圧接着剤5bによって面全体を覆われ、これにより電子構造物3は感圧接着剤5a、bによって全ての面においてカプセル化される。ここでもまた、感圧接着剤5b上にカバー4が設けられている。
【0101】
したがってこの構成では、土台2もカバー4も、必ずしもバリア特性を有さなくてもよい。しかしそれでも、電子構造物3への浸透物の浸透をさらに制限するためにバリア特性を付与してもよい。
【0102】
特に図2、図3に関し、ここでは概略的な図示であることを指摘しておく。図からは特に明白でないが、ここでは、また好ましくは、感圧接着剤5はそれぞれ均等な層厚で塗布されている。したがって電子構造物への移行部では、図に見えるような鋭い角が形成されるのではなく、移行部は滑らかであり、むしろ、気体が充填されていないかまたは充填された小さな領域が残ることもある。しかしながら場合によっては、特に真空下で適用が実施される場合は、下地への適応を行うこともできる。さらに感圧接着剤を局所的に異なる強さで圧迫し、これにより、フロープロセスによってエッジ構造部での高さの差をある程度ならすことができる。図示した寸法も縮尺どおりではなく、むしろわかりやすい図示だけを目的としたものである。特に電子構造物自体は、一般的には比較的平坦に形成される(しばしば1μm厚未満)。
【0103】
図示した全ての実施例では、感圧接着剤5の適用が感圧接着テープの形で行われている。これは原則的に、支持体を備えた両面感圧接着テープ、または転写式接着テープであり得る。ここでは転写式接着テープとしての構成が選択されている。
【0104】
転写式接着テープとしての感圧接着剤または平面的な形成物上にコーティングされて存在する感圧接着剤の厚さは、好ましくは約1μm〜約150μm、さらに好ましくは約5μm〜約75μm、および特に好ましくは約12μm〜50μmである。50μm〜150μmの大きな層厚は、土台へのより良い付着性および/または(光)電子構造内で緩衝作用を達成すべき場合に用いられる。ただしここでは、浸透断面の増大という欠点がある。1μm〜12μmの小さい層厚は、浸透断面、したがって横からの浸透、および(光)電子構造の全体厚を減少させる。ただしこれは、土台への付着性を低下させる。これらの特に好ましい厚み範囲内で、感圧接着剤の薄い厚みと、これにより横からの浸透を減少させる浸透断面が小さくなること、そして十分に付着する結合を作るための十分に厚い感圧接着剤フィルムとの間でうまく妥協が図れる。最適な厚さは、(光)電子構造、最終用途、感圧接着剤の実施形態の形式、および場合によっては平坦な土台に依存する。
【0105】

別の記載がない限り、以下の例における量の記載は全て、全体の組成に対する重量パーセントまたは重量割合である。
【0106】
試験方法
接着力
接着力の測定は以下のように実施した。すなわち、定義された被接着下地としてスチール面、ポリエチレンテレフタレートプレート(PET)、およびポリエチレンプレート(PE)を用いた。試験すべき貼り付き可能な平面要素を、幅20mmおよび長さ約25cmに裁断し、把持区間を設け、その後すぐに、それぞれ選択された被接着下地上に、4kgのスチールローラによって10m/minの送りで5回押し付けた。その後すぐ、このようにして貼り付けた平面要素を、引張試験機(Zwick社)を用いて180°の角度で、室温で、および300mm/minで被接着下地から剥ぎ取り、このために必要であった力を測定した。測定値(単位はN/cm)は、3回の個別の測定からの平均値として示した。
【0107】
せん断寿命
せん断寿命(SSZ)の測定は以下のように実施した。すなわち、定義された被接着下地として研磨したスチール面を用いた。試験すべき貼り付き可能な平面要素を、幅13mmおよび長さ約5cmに裁断し、その後すぐに、それぞれ選択された20×13mmの面積の被接着下地上に、2kgのスチールローラによって10m/minの送りで4回押し付けた。その後すぐ、この貼り付き可能な平面要素に、23℃/相対湿度50%において、180°の角度で10Nの負荷をかけた。貼り付き可能な平面要素が被接着下地から完全に外れるまでの時間を測定する。測定値(単位はmin)は、3回の個別の測定からの中央値として示す。試験は10,000分後に打ち切られる。
【0108】
弾性割合
弾性割合の測定は以下のように実施した。すなわち、定義された被接着下地として研磨したスチール面を用いた。試験すべき貼り付き可能な平面要素を、幅10mmおよび長さ約5cmに裁断し、その後すぐに、それぞれ選択された10×13mmの面積の被接着下地上に、2kgのスチールローラによって10m/minの送りで3回押し付けた。その後すぐ、この貼り付き可能な平面要素に、40℃の温度において、180°の角度で1Nおよび5Nの負荷をかけた。15分後の滑り距離を測定し、その後、試料を負荷から解放し、最初から30分後の滑り距離を測定する。両方の測定値の比が、接着剤の弾性割合および粘性割合に関する尺度である。測定値は、2回の個別の測定からの平均値として示す。
【0109】
透過性
接着剤の透過率をVISスペクトルによって測定した。VISスペクトルの記録は、Kontron社のUVIKON923を用いて実施された。測定されるスペクトルの波長領域は、800nm〜400nmの間の全周波数を1nmの解像度で含んでいる。このために接着剤をPET支持体上に施し、かつ測定の前に、参照として支持体の空チャネル測定(Leerkanalmessung)を全ての波長領域について実施した。結果を提示するために、上記領域内での透過測定の平均値が求められた。
【0110】
浸透性
酸素透過率(OTR)および水蒸気透過率(WVTR)の測定は、DIN53380第3部またはASTM F−1249に基づいて行われた。このために感圧接着剤を50μmの層厚で、浸透可能な膜上に施した。酸素透過性に関しては23℃および50%の相対湿度で測定器Mocon OX−Tran2/21により測定された。水蒸気透過性は37.5℃および90%の相対湿度で測定された。
【0111】
曲げ試験
柔軟性を測定するために、層厚50μmの接着剤を、23μmの2つのPET支持体の間に塗布し、180°の曲りで1mmの曲げ半径を試験した。この試験は、層の破損または剥離が起きなければ合格である。
【0112】
耐用期間試験
(光)電子構造物の耐用期間を測定するための尺度としてカルシウム試験を採用した。このために窒素雰囲気下で、20×20mmの大きさの薄いカルシウム層をガラスプレート上に堆積させる。カルシウム層の厚みは約100nmである。カルシウム層をカプセル化するために、支持体材料としてのPETバリアフィルムを備えた接着テープを使用する(ASTM F−1249およびDIN53380第3部および上で挙げた条件に基づき、WVTR=8×10−2g/m2*dおよびOTR=6×10−2cm3/m2*bar)。接着テープは、全ての側の5mmの縁で直接的にガラス板上に付着させて、カルシウム面の上に適用される。
【0113】
この試験は、例えばA. G. Erlatら編、「47th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2004、654〜659頁(非特許文献2)、およびM. E. Grossら編「46thAnnual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2003、89〜92頁(非特許文献3)に記載されているようなカルシウムと水蒸気および酸素との反応に基づいている。その際、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムへの変化によって増大する、カルシウム層の光透過を監視する。カルシウム層のない構造物の透過が90%に達することを耐用期間の終わりとする。測定条件として23℃および50%の相対湿度を選択する。サンプルは、層厚25μmの感圧接着剤で面全体をかつ気泡がない状態で貼り付けられた。
【0114】
VOC値(volatile organic compounds)の測定
VOC値の測定はVDA277に基づいて行われる。この方法を用い、実験室規模の少量の試料に由来する気体状(易揮発性)炭化水素(VOC−Volative Organic Components)の合計を測定する。その際、試料(<1g)をガラス容器(10ml)内で5時間、120℃でコンディショニングする。続いて、ガスクロマトグラフ(GC)/フレームイオン化検出器(FID)の組合せにより、気密された容器からの規定量の気体空間を、その中に含まれる炭化水素について検査する。
【0115】
感圧接着剤との接触時のITOの表面導電率の測定
ITOでコーティングされた、寸法2×2cmで表面抵抗200OhmのPETフィルムを端部で接触させる。接触した端部から0.5cmの間隔をあけて、幅1cmの接着帯を面全体に施す。試料を60℃および湿度90%で保管し、14日後に抵抗を測定する。
【0116】
サンプルの作製
例1〜例4での感圧接着剤を溶液から作製した。このために個々の成分をトルエン中に溶解し(固形分40%)、未処理のPETフィルム上にコーティングし、120℃で15分間乾燥し、これにより接着剤層が単位面積当り重量50g/mで生じた。浸透試験のためにサンプルを同じやり方で調製したが、コーティングはPETフィルム上ではなく、1.5g/mでシリコーン被覆された剥離紙上に行い、このため浸透可能な膜上に転写した後で、感圧接着剤だけに関する測定を行うことができた。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
比較例V3
EHA78%、ステアリルアクリレート19%、およびアクリル酸3%で構成されるアクリレートをアセトンおよびベンジン中で重合し、この溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用には、1.5g/mでシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、120℃で15分間乾燥し、そしてポリマー分に対して0.2%のアルミニウムキレートで架橋した。接着層の厚さは50μmである。
【0124】
比較例V4
Levamelt456(エチレンビニルアセテート)60%およびForal FG85 40%から成る混合物をアセトン中に溶かし、この溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用には、1.5g/mでシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、120℃で15分間乾燥する。接着層の厚さは50μmである。
【0125】
比較例V5
市場で入手可能なシリコーン系感圧接着剤である、GE Bayer Silikons社のSilgrip PSA529を過酸化ベンゾイルと混合し、この溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用には、1.5g/mでフルオロシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、120℃で15分間乾燥し、架橋する。接着層の厚さは50μmである。
【0126】
比較例V6
市場で入手可能なUV硬化型エポキシドのEpo−Tek OG142をPETフィルム上に50μmの厚さで薄く塗り、中圧−水銀ランプを用い160W/cm、10m/minの進行速度で硬化させた。浸透性を測定するためには、サンプルをシリコーン被覆された剥離紙上にコーティングし、剥ぎ取った。
【0127】
結果
上に挙げた例の接着技術上の評価をするために、まず接着力、せん断寿命(SSZ)、弾性割合、および柔軟性試験を実施した。
【0128】
【表7】

【0129】
例1〜例3は、高いせん断強度での優れた接着力を示す。例3の接着力は、感圧接着剤の成分としてのイソブチレンブロックコポリマーに、部分水素化されたビニル芳香族系ブロックコポリマー(SBBS)を加えることで上昇した。しかし浸透性が少し高くなる。比較例V1は、SBBSブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤を示す。接着技術的特性は例3の接着技術的特性に非常に類似しているが、バリア作用は悪化する。
【0130】
架橋していないPiB感圧接着剤V0は、はるかに低い弾性割合を示す。特に継続的なせん断負荷(SSZ)では、ポリイソブチレンベースの感圧接着剤のクリープ傾向が示される。非常に短い期間の負荷後にすでに凝集不良が生じる。スチレンイソブチレンベースの接着剤のスチレンドメインを介した物理的な架橋により、室温でのこのクリープ傾向は阻止される。
【0131】
柔軟性の測定は、感圧接着剤が、高架橋されたエポキシドより高い柔軟性を提供することを示す。
【0132】
浸透測定および透過測定の結果を表2に示す。
【0133】
【表8】

【0134】
表2から読み取れるように、例1〜例3の本発明による感圧接着剤の浸透性はV1〜V4に比べてはるかに低く、一方で光の可視領域における透過率は類似している。架橋されたエポキシドおよびブロックコポリマーの水蒸気浸透性は類似しており、酸素透過率はより高い。透過率は全ての例に関して類似の範囲内である。
【0135】
耐用期間テストの結果
【0136】
【表9】

【0137】
耐用期間テストの結果、別の感圧接着剤に比べてはるかに良いバリア作用、およびそこから生じる測定構成の耐用期間の延長が明らかに示されている。ポリイソブチレンをベースとする感圧接着剤は、耐用期間に関しては類似する優れた値を示しているが、せん断強度ははるかに低い。
【0138】
VOC測定の結果
【0139】
【表10】

【0140】
ここに記載した感圧接着剤をベースとする接着剤は、特に、匹敵する乾燥パラメータでのアクリレートに比べて非常に低いVOC値を示す。VOC値が低いことは、(光)電子構造物内のIto層の耐用期間および性能に良い影響を及ぼす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透物に対する電子的装置のカプセル化方法であって、
ブチレンブロックコポリマー、特にイソブチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤を用意し、
前記感圧接着剤を、電子的装置のカプセル化すべき領域の上および/または周りに適用する、上記方法。
【請求項2】
感圧接着剤が、接着テープの形で提供されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
感圧接着剤および/または電子的装置のカプセル化すべき領域が、感圧接着剤の適用前、最中、および/または適用後に加熱されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
感圧接着剤が、適用後に電子的装置上で架橋されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
感圧接着剤の適用が、これに続く硬化なしで行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
特に請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法における、浸透物に対して電子的装置をカプセル化するための感圧接着剤の使用において、
感圧接着剤が、ブチレンブロックコポリマー、特にイソブチレンブロックコポリマーをベースとすることを特徴とする使用。
【請求項7】
感圧接着剤が、ビニル芳香族類、特にスチレンから構成されたポリマーブロックを含むこと、および
感圧接着剤が、イソブチレンの重合、あるいはイソブチレンと、n−ブテンおよび/または1,3−ジエン、特にブタジエンおよび/またはイソプレンとの組合せの重合によって構成されたポリマーブロックを含むことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ブロックコポリマーが、ポリビニル芳香族部分を10重量%〜35重量%の割合で有することを特徴とする請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
感圧接着剤が、ブロックコポリマーを少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、さらに好ましくは少なくとも35重量%の割合で有すること、および/または
感圧接着剤が、ブロックコポリマーを最大90重量%、好ましくは最大75重量%、さらに好ましくは最大70重量%の割合で有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の使用。
【請求項10】
ブロックコポリマーの総割合に対するイソブチレンブロックコポリマーの割合が、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも55重量%であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の使用。
【請求項11】
感圧接着剤が、樹脂または樹脂混合物、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の水素化度を有する水素化樹脂を含むこと特徴とする請求項6〜10のいずれか一つに記載の使用。
【請求項12】
感圧接着剤が、30℃超のDACP値および50℃超のMMAP値、好ましくは37℃超のDACP値および60℃超のMMAP値を有する少なくとも一種の樹脂を含むこと、および/または
感圧接着剤が、95℃超、特に100℃超の軟化温度を有する少なくとも一種の樹脂を含むことを特徴とする請求項6〜11のいずれか一つに記載の使用。
【請求項13】
感圧接着剤が一種または複数種の添加剤、好ましくは、可塑剤、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、プロセス安定化剤、光保護剤、加工助剤、末端ブロック強化樹脂、ポリマー、特にエラストマー性質のポリマーから成る群から選択される一種または複数種の添加剤を含むことを特徴とする請求項6〜12のいずれか一つに記載の使用。
【請求項14】
感圧接着剤が一種または複数種の充填剤、好ましくはナノスケールの充填剤、透明な充填剤、および/またはゲッターおよび/またはスカベンジャー充填剤を含むことを特徴とする請求項6〜13のいずれか一つに記載の使用。
【請求項15】
感圧接着剤が透明に形成されていること、
好ましくは、感圧接着剤が400nm〜800nmの波長領域において少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%の平均透過度を有することを特徴とする請求項6〜14のいずれか一つに記載の使用。
【請求項16】
感圧接着剤が、320nm〜400nmの波長領域において、好ましくは280nm〜400nmの波長領域において、さらに好ましくは190nm〜400nmの波長領域においてUVブロック性に形成され、その際、最大20%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大1%の平均透過度をUVブロック性と呼ぶことを特徴とする請求項6〜15のいずれか一つに記載の使用。
【請求項17】
感圧接着剤が、40g/m・d未満、好ましくは10g/m・d未満、ことのほか好ましくは1g/m・d未満のWVTRを有すること、および/または
感圧接着剤が、5000g/m・d・bar未満、好ましくは3000g/m・d・bar未満のOTRを有することを特徴とする請求項6〜16のいずれか一つに記載の使用。
【請求項18】
感圧接着剤が、接着テープとして、特に支持体のない接着テープとして形成されることを特徴とする請求項6〜17のいずれか一つに記載の使用。
【請求項19】
電子構造物、特に有機電子構造物と、感圧接着剤とを備えた電子的装置であって、
前記電子構造物が少なくとも部分的に感圧接着剤によってカプセル化されている電子的装置において、
前記感圧接着剤が、請求項6〜18のいずれか一つに従って形成されていることを特徴とする前記電子的装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−510546(P2012−510546A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538934(P2011−538934)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065393
【国際公開番号】WO2010/063579
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】