説明

電子線殺菌装置

【課題】電子線照射の均一化。
【解決手段】搬送路面(15)は固定されている。搬送路面に載置される容器は搬送機構により推進力を与えられる。搬送機構は、容器に点状に接触する第1スクリュー(2)と、第1スクリュー(2)の下方に配置され容器に点状に接触する第2スクリュー(3)とを含んでいる。第1スクリュー(2)と容器の接触点は、第2スクリュー(3)と容器の接触点に対して互いに上下位置関係にある。搬送路面(15)と容器は同体に運動せず、容器は搬送路面に摩擦的に摺動する。このような運動関係で容器は上下方向に位置づけられる多点で推進力を受けるので、摩擦により容器に生じる回転モーメントに起因する転倒力に抗して、容器に作用する全回転モーメントは均衡しその転倒が防止される。スクリュー(2,3)と容器の接触点の数は4以下で、スクリューの容器に対する陰影効果が薄く、照射均一効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線殺菌装置に関し、特に、固定搬送路を持つ電子線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PETボトルのように飲料液体を封入する容器は、大量に用いられている。その殺菌工程の容器の流れは、極端に高速化されている。殺菌剤、消毒剤を含む洗浄水による洗浄は、流れ速度の高速化の障壁であるとともに、環境問題の解決を困難にしている。高速化と環境問題の解決のために知られている技術は、電子線照射殺菌である。
【0003】
電子線照射殺菌の問題点の1つとして、容器の内外面に均一に電子線を照射することが困難である課題が知られている(参照:特許文献1,2)。その困難の原因は、電子線陰影が生じることである。照射対象の容器そのものが電子線陰影発生の1つの原因であり、容器を搬送する搬送手段が電子線陰影発生の他の1つの原因である。照射ムラが生じる場合に十分な電子線照射処理を行うために電子線量を増大し、又は、電子線エネルギーを増大することは、装置系のスケールの拡大を招く。
【0004】
【特許文献1】特開2002−308229号
【特許文献2】特開2002−255125号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、電子線陰影の発生程度を低減するとともに、搬送物体を安定化する電子線殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電子線殺菌装置は、電子線が照射される照射領域に搬送路面(15)が設定されて固定されている。搬送路面に載置される容器は搬送機構により推進力を与えられる。搬送機構は、容器に点状に接触する第1スクリュー(2)と、第1スクリュー(2)の下方に配置され容器に点状に接触する第2スクリュー(3)とを含んでいる。第1スクリュー(2)と容器の接触点は、第2スクリュー(3)と容器の接触点に対して互いに略上下位置関係にある。搬送路面(15)と容器は同体に移動せず、容器は搬送路面に摩擦的に摺動する。このような相対関係で容器は上下方向に位置づけられる多点で推進力を受けるので、摩擦により容器に生じる回転モーメントに起因する転倒力に抗して、容器に作用する全回転モーメントは均衡しその転倒が防止される。スクリュー(2,3)と容器の接触点の数は4以下で、スクリューの容器に対する陰影効果が薄い。あるいは細いスクリューや容器を支える細い側面ガイドにより5点以上で支えることにより陰影効果が薄く且つ安定した容器搬送が可能となる。特に、搬送路面および側面ガイドが格子状、多点穴状あるいは櫛歯状に形成されていて電子線透過性を有する場合や、容器の進行方向の中心軸線に対して平行にならないように配置された棒状あるいはパイプ状の場合には、搬送路面及び側面ガイドと容器の位置関係は一定でなく、容器の全面は搬送方向に移動している間に電子線の照射を受けるので、電子線照射の均一性が格段に改善される。
【0007】
照射領域のうち搬送路面(15)に含まれる領域部分は線状領域(17)として形成されている。搬送路面(L,15)は、線状領域(17)に交叉している。このような交叉は、電子線照射の均一効果を一層に高くすることができる。
【0008】
搬送機構は、容器に点状に接触する第3スクリュー(4)と、第3スクリュー(4)の下方に配置され容器に点状に接触する第4スクリュー(5)とを更に含む。第1スクリューと第2スクリューは搬送路面の中心線の一方側に配置され、第3スクリューと第4スクリューは搬送路面の中心線の他方側に配置される。搬送路面の後方部位(15R)では容器は第1スクリュー(2)と第2スクリュー(3)により推進力を与えられ、搬送路面の前方部位(15F)では容器は第3スクリュー(4)と第4スクリュー(5)により推進力を与えられる。このとき、スクリューは、ある鉛直線に関して概線対称に配置されることができ、容器の左右側で照射量が均一化され、且つ、容器の1つの片側には陰影原因機器部分がなく、その片側で陰影効果がない。既述の交叉性は更に一層に電子線照射を均一化する。
【0009】
容器は中心線に対して略線対称である形状を有し、中心線は線状領域と点領域(P)で交叉し、第1スクリューは第3スクリューと略点領域(P)を通る鉛直線に関して略線対称に配置され、第2スクリューは第4スクリューと点領域(P)を通る鉛直線に関して略線対称に配置されている。容器は、断面が概正方形又は概長方形又は概円であるので、スクリューの線対称配置は、更に一層に電子線照射を均一化する。
【0010】
反射板の追加の均一効果は大きい。反射板は、第1スクリューと第2スクリューの前方に配置され電子線を反射する第1反射板(20F)と、第3スクリューと第4スクリューの後方に配置され電子線を反射する第2反射板(20R)とを含んでいる。第1反射板(20F)と第2反射板(20R)とは、点状領域(P)を通る鉛直線に関して略線対称に配置されている。反射板のこのような対称配置性は、更に一層に電子線照射を均一化する。
【0011】
本発明による電子線殺菌装置は、第1スクリュー(2)の上部に配置され電子線を反射する第3反射板(23)と、第3スクリュー(4)の上部に配置され電子線を反射する第4反射板(23)とをさらに備えている。第3反射板(23)と第4反射板(23)とは、点状領域直線に関して略点線対称に配置されている。
【0012】
第1スクリュー(2)と第2スクリュー(3)と第3スクリュー(4)と第4スクリュー(5)とは、それぞれ、直線状に形成される棒状部材(31)と、棒状部材を軸とする円筒面上に配置される螺旋状に形成されて棒状部材に同体に接合される螺旋部材(32)と、その軸を中心にして回転可能に棒状部材を支持する支持部材(35、27)とを備えている。第1スクリュー(2)と第2スクリュー(3)と第3スクリュー(4)と第4スクリュー(5)とは、ともに片持ちで支持されている
【0013】
第1反射板(20F)と第2反射板(20R)はそれぞれに、容器の首部に対して電子線を反射させる第1部位(24)と、容器の胴部に対して電子線を反射させる第2部位(25)と、容器の底部に対して電子線を反射させる第3部位(26)とを含むことが更に効果的である。
【0014】
第1スクリューの螺旋巻き方向と前記第2スクリューの螺旋巻き方向とは互いに逆方向であり、且つ、第1スクリューの回転方向と前記第2スクリューの回転方向とは互いに逆方向であることは、容器の正立性の点で有利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による電子線殺菌装置は、上下1対の2軸化により、容器搬送安定性が確保される。結果的に、容器に最低限必要な吸収線量を与えるための電子が最小となり、電子銃の出力の増大を回避して装置の大型化を回避することができる。反射板の追加は、その大型化の回避を相乗的に有効化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による電子線殺菌装置の実施の最良の形態は、図に対応して、詳細に記述される。電子線殺菌装置10には、図1に示されるように、電子線走査器1とともに4組の搬送駆動用スクリューとが提供されている。4組の搬送駆動用スクリューは、図2に示されるように、後方側上部のスクリュー2と後方側下部のスクリュー3と前方側上部のスクリュー4と前方側下部のスクリュー5とで構成されている。
【0017】
4組の搬送駆動用スクリューは、それぞれに、回転軸パイプと螺旋パイプとから形成されている。すなわち、スクリュー2は、図3に示されているように、回転軸パイプ31と螺旋パイプ32とから形成されている。回転パイプ31は、中空である直線状のパイプから形成される。螺旋パイプ32は、中空パイプから形成され、螺旋状に形成されている。すなわち、螺旋パイプ32は、回転軸パイプ31を軸とする円筒面上に配置され、その軸の回りを一定の角速度で円運動しながら、その軸と平行な方向に一定の速さで移動する点が描く軌跡に沿って配置されている。螺旋パイプ32は、真っ直ぐなパイプを螺旋に曲げることにより製作される。螺旋パイプ32は、両端が回転パイプ軸31に同体に接合されて、回転軸パイプ31に支持されている。
【0018】
スクリュー3は、回転パイプ33と螺旋パイプ34とから形成されている。回転パイプ軸33は、中空である直線状のパイプから形成される。螺旋パイプ34は、中空パイプから形成され、螺旋状に形成されている。すなわち、螺旋パイプ34は、回転軸パイプ33を軸とする円筒面上に配置され、その軸の回りを螺旋パイプ32の回転方向と反対方向に一定の角速度で円運動しながら、その軸と平行な方向に一定の速さで移動する点が描く軌跡に沿って配置されている。螺旋パイプ34は、真っ直ぐなパイプを螺旋に曲げることにより製作される。螺旋パイプ34は、両端が回転軸パイプ33に同体に接合されて、回転軸パイプ33に支持されている。
【0019】
このような回転軸パイプと螺旋パイプとは、パイプ材により形成されることにより、強度が強く高剛性であり、且つ、軽量である。本発明による電子線殺菌装置は、さらに、その螺旋パイプの中に冷却液を流通させる冷却手段を備えている。なお、回転パイプと螺旋パイプとは、パイプ材以外の材料により形成されることができ、たとえば、丸棒により形成されることもできる。または、螺旋パイプの表面は摩擦整数を下げる様に表面が磨かれている。
【0020】
電子線殺菌装置10は、さらに、駆動側軸受け35を備えている。軸受け35は、回転軸パイプ31を回転可能に支持し、回転軸パイプ33を回転可能に支持している。スクリュー2の回転中心軸心線6とスクリュー3の回転中心軸心線7は、図4に示されるように、第1鉛直面11の中で互いに平行であり、本形態ではそれぞれに水平方向に向いている。
【0021】
軸受け35は、例えば図3に示されているように、ベルト36と複数のプーリとを備えている。その複数のプーリは、それぞれ、軸受け35により回転可能に支持され、ベルト36と接している。その複数のプーリは、プーリ37〜40から形成されている。プーリ37は、回転パイプ31に同体に接合されている。プーリ38は、回転軸パイプ33に着脱可能に固定されている。プーリ40は、ベルト36に張力を付加し、ベルトとプーリ37〜40とをより確実に接触させている。プーリ39は、モータ41の出力軸と連結されている。プーリ39は、回転してベルト36を動かし、プーリ37〜40を、互いに同期させて回転させる。このとき、ベルト36は、プーリ37とプーリ38とが反対方向に回転し、かつ、同じ回転速度で回転するように、配置されている。
【0022】
スクリュー4とスクリュー5とは、スクリュー2とスクリュー3と同様にして形成されている。すなわち、スクリュー4とスクリュー5とは、それぞれ、軸受けにより回転可能に支持されている。スクリュー4とスクリュー5とは、さらに、互いに反対方向に回転し、かつ、同じ回転速度で回転するように、支持されている。スクリュー4の回転中心軸心線8とスクリュー5の回転中心軸心線9は、第2鉛直面12の中で互いに平行であり、本形態ではそれぞれに水平方向に向いている。互いに平行である第1鉛直面11と第2鉛直面12の間の離間距離Dは適正な幅に設計されている。回転中心軸心線6と回転中心軸心線8は第1水平面13に属し、回転中心軸心線7と回転中心軸心線9は第2水平面14に属している。4組のスクリューの内外直径はそれぞれに互いに等しい。
【0023】
電子線殺菌装置10は、図2に示されるように、容器(例示:PETボトル以下PB)PBを支持する搬送路面15を含んでいる。搬送路面15は、図1,2に示されるように、単一の搬送路16を有している。搬送路面15は、図3に示されているように、丸棒43により形成され、搬送路16は、丸棒43の上端の表面である。なお、搬送路面15は、丸棒43と異なる形状の材料により形成されることもでき、たとえば、格子状、多点穴状あるいは櫛歯状の材料から形成されることもできる。このとき、電子線は、隣り合う櫛歯の間の空間又は孔を搬送路面15の上面側(支持面側)から搬送路面15の下面側に素通りで通り抜け、且つ、その空間又は孔を搬送路面15の下面側から搬送路面15の上面側に素通りで通り抜けることができる。
【0024】
電子線殺菌装置10は、さらに、側面ガイド44を備えている。側面ガイド44は、直線状の丸棒から形成され、スクリュー2またはスクリュー3と略平行になるように、搬送路面15を隔ててスクリュー2とスクリュー3との反対側に配置されている。すなわち、容器PBは、搬送路面15を搬送されるときに、側面ガイド44とスクリュー2とに保持され、側面ガイド44とスクリュー3とに保持される。図3には1本の側面ガイドが記載されているが、2本以上でも構わない。
【0025】
容器PBは、正立姿勢で搬送され、搬送路面15の搬送路16の上で滑って一方方向に搬送される。本形態では、全ての容器PBの中心線は鉛直方向に向いている。容器PBの底部外側面(外側底面)は、搬送路面15の搬送路16に多点で接触して摺動する。
【0026】
電子線走査器1は、図1に示されるように、角度θの範囲の扇状領域Sで電子線を一方角度方向Aに走査する。扇状領域の有効中心面は1鉛直面に含まれ、水平方向に適正な幅を有している。以下の記述では、扇状領域は扇状鉛直面で代表される。扇状鉛直面Sと基準水平面とが交わる交叉線は、本明細書で、線状領域17と呼ばれる。本形態では、図2に示されるように、線状領域17は搬送路面15に含まれている。
【0027】
搬送中心線Lは、図2と図4とに示されるように、第1鉛直面11と第2鉛直面12から略等距離に存在している。搬送中心線Lと線状領域17は、平行でなく適正角度αで交叉している。本形態では、搬送中心線Lと線状領域17は同一水平面に属している。搬送中心線Lと線状領域17の交点は、図2にPで示されている。以下、点Pは走査中心点と呼ばれる。搬送路面15は、図5に示されるように、走査中心点Pより搬送方向後方に存在する後方搬送路面15Rと走査中心点Pより搬送方向前方に存在する前方搬送路面15Fとに仮想的に分割される。スクリュー2の前方部位は、スクリュー4の後方部位に対して搬送中心線Lに直交する水平方向に重複する上側後方重複部分2Uとして配置されている。スクリュー3の前方部位は、スクリュー5の後方部位に対して搬送中心線Lに直交する水平方向に重複する下側後方重複部分3Dとして配置されている。スクリュー4の後方部位は、スクリュー2の前方部位に対して搬送中心線Lに直交する水平方向に重複する上側前方重複部分4Uとして配置されている。スクリュー5の後方部位は、スクリュー3の前方部位に対して搬送中心線Lに直交する水平方向に重複する下側前方重複部分5Dとして配置されている。このような重複部分2U,3D,4U,5Dは、スクリュー2とスクリュー3とにより駆動され推進力を受けて搬送される容器PBをスクリュー4とスクリュー5とにより駆動力を与えるための橋渡し機能を有している。後方搬送路面15Rで搬送される容器PBは、重複部分2U,3D,4U,5Dが存在する重複区間を通過する間に前方搬送路面15Fに渡される。スクリュー2は走査中心点Pを通る鉛直線に関してスクリュー4に対して略線対称に配置され、スクリュー3は走査中心点Pに関してスクリュー5に対して略線対称に配置されている。
【0028】
全面照射効果:
任意の容器PBの中心線は、搬送中心線Lに常に交わって前進する。任意の容器PBの内外面の任意の領域(即ち全領域)は、線状領域17を含む扇状領域Sを通過する。搬送中心線Lと線状領域17は適正な角度で交叉しているので、扇状領域Sに含まれる電子線が容器PBを完全透過する場合には、容器PBのうち電子線が通らない部分は存在しない。このように、容器PBの任意の内外面部分は、陰影が生じていない限り、電子線の照射を受ける。
【0029】
点接触効果:
既述の形態では、容器PBとスクリューとの接触点は、2点である。スクリュー2とスクリュー3のうちのいずれかが省略されれば、容器PBとスクリューとの接触点は1点である。いずれの場合にも、接触領域は面ではなく点であり、且つ、その接触点数は極めて少なく、搬送手段が作り出す電子線の陰影領域は極めて狭小である。接触点の多点化は、陰影領域の大きな拡大なしに、後述される搬送安定効果を導くことができる。この体系では側面ガイドが設置されている。
【0030】
2点(多点)接触の搬送安定効果:
図6は、スクリュー4とスクリュー5の回転によって前進している状態の複数の容器PBの1つを示している。スクリュー4のスクリュー面(局所的円筒面)は、容器PBの単一の上位位置点18Uに接触して、その上位位置点18Uを通して容器PBに推進力(押し力)を与えている。スクリュー5のスクリュー面は、容器PBの単一の下位位置点18Dに接触して、その下位位置点18Dを通して容器PBに推進力(押し力)を与えている。このような回転方向が相違する2点接触推進によれば、容器PBの正立性が安定的に保持される。図7に示されるように、上位位置点18U(下位位置点18D)に作用する第1推進力(第2推進力)により容器PBはそのエッジQを中心とする回転モーメントを受けて回転しようとするが、その瞬間では下位位置点18D(上位位置点18U)は瞬間固定点であるから、容器PBの回転運動は下位位置点18D(上位位置点18U)で容器PBに接合するスクリュー5(スクリュー4)により阻止される。上位位置点18Uと下位位置点18Dは、任意の瞬間時に、互いに相対的に固定点である。本発明では、公知装置と異なり、搬送路面は移動していない。1点で容器に推進力を与える場合には、転倒方向の回転モーメントが容器に作用するが、2点押しの本発明では、搬送路面は固定されているが、転倒方向の回転モーメントはなく又は大きくない。
【0031】
このような搬送安定効果には、2つの状態値が存在する。図8は、第1状態値を示している。スクリュー2の回転方向と螺旋巻き方向は、図8(a)に示されるように、スクリュー3の回転方向と螺旋巻き方向にそれぞれに等しい。スクリュー2とスクリュー3は、図8(b)に示されるように、搬送方向Bに後方である2点X,Yで容器PBに移動力を与える。スクリュー2とスクリュー3は、搬送方向Bに前方である2点Z,Wで容器PBに接触し又は接触しない。2点組(X,Z)と2点組(Y,W)を対称化する水平面が存在しない。そのような対称面の非存在は、搬送安定効果が後述される第2状態値のそれに比べて薄く、正立性が比較の上で乏しい。
【0032】
図9は、第2状態値を示している。スクリュー2の回転方向と螺旋巻き方向は、図9(a)に示されるように、スクリュー3の回転方向と螺旋巻き方向にそれぞれに等しくなくそれぞれに逆方向である。スクリュー2とスクリュー3は、図9(b)に示されるように、搬送方向Bに後方である2点X,Yで容器PBに推進力を与える。スクリュー2とスクリュー3は、搬送方向Bに前方である2点Z,Wで容器PBに接触し又は接触しない。4点接触の場合には、2点組(X,Z)と2点組(Y,W)を対称化する水平面Kが存在する。そのような対称面(鏡面対称面)Kの存在は、搬送安定効果が既述の第1状態値のそれに比べて高く、正立性が比較の上で優れている。またスクリュー2とスクリュー3が各々回転方向と螺旋巻き方向が図9(a)の逆になった場合も図9(b)に示される搬送方向Bの逆向きに搬送されることになるが、上述同様に水平面Kが存在し、搬送安定効果が既述の第一状態知のそれに比べて高く、正立性が比較の上で優れている。
【0033】
電子線殺菌装置10は、多様な反射板を更に含んでいる。反射板は、図2に示されるように、第1反射板20Rと第2反射板20Fとで形成されている。第1反射板20Rと第2反射板20Fは、互いに同形であり、点Pを通る鉛直線に関して線対称に又は概線対称に配置されている。第2反射板20Fは、図6に示されるように、一方側反射板22と他方側反射板23(第4反射板)とで形成されている。一方側反射板22は搬送中心線Lの一方側に配置され、他方側反射板23は搬送中心線Lの他方側に配置されている。搬送中心線Lの他方側は、スクリュー4とスクリュー5が配置されている側に一致している。他方側反射板23は、図6に示されるように、搬送中心線Lの他方側でスクリュー4の上方側に配置されている。他方側反射板23は、図10に示されるように、電子線の一部を反射させて容器PBの首部に導く。扇状に拡がる電子線は、偏向用磁石装置により概鉛直方向に曲げられ搬送方向に並ぶ多数の容器PBに向かう。電子線は、幅方向に拡がる傾向を有している。幅方向に拡がる電子線51の外側部分は、他方側反射板23により反射されて容器PBの首部に照射される。第1反射板20Rの他方側反射板23(第4反射板)は主として前方搬送路面15Fの容器PBの首部の一方側の電子線照射のための反射機能を有し、第2反射板20Fの他方側反射板23(第3反射板)は主として後方搬送路面15Rの容器PBの首部の他方側の電子線照射のための反射機能を有している。
【0034】
一方側反射板22は、図10に示されるように、首部位置対応反射板24と、胴部位置対応反射板25と、底部位置対応反射板26とで形成されている。首部位置対応反射板24は、後方搬送路面15Rの搬送中心線Lの一方側と前方搬送路面15Fの搬送中心線Lの他方側に配置されている。第1反射板20Rの他方側反射板23と第2反射板20Fの首部位置対応反射板24とは、搬送中心線Lを通る鉛直面に関して略対称に配置されている。胴部位置対応反射板25は、図11に示されるように、胴部側周面に対向し鉛直面に対して適正な角度で傾斜する反射面を有している。その反射面は、平面又は小さい曲率の曲面(例示:パラボラ面(放物面)、円筒面)に形成されている。第1反射板20Rの胴部位置対応反射板25は後方搬送路面15Rの搬送中心線Lの他方側に配置され、第2反射板20Fの胴部位置対応反射板25は前方搬送路面15Fの搬送中心線Lの一方側に配置されている。2つの胴部位置対応反射板25は、走査中心点Pを通る鉛直線に関して略線対称に配置されている。底部位置対応反射板26は、図12に示されるように、底面に対向する反射面を有している。その反射面は、平面又は小さい曲率の曲面に形成されている。電子線の一部分は、底部位置対応反射板26で反射して容器PBの外側底面に照射される。第1反射板20Rの底部位置対応反射板26は後方搬送路15Rの搬送中心線Lの他方側に配置され、第2反射板20Fの底部位置対応反射板26は前方搬送路15Fの搬送中心線Lの一方側に配置されている。2つの底部位置対応反射板26は、走査中心点Pを通る鉛直線に関して略線対称に配置されている。首部位置対応反射板24と胴部位置対応反射板25と底部位置対応反射板26は、1枚の金属板を成形することにより製作されている。もしくは分割された構造になっている。
【0035】
電子線の一部分は、PET膜の外側面に直接に入射しPET膜を透過し更にPET膜の内側面に入射する。電子線の他の一部分は、既述の多様な反射板で反射して、PET膜の外側面に入射しPET膜を透過し更にPET膜の内側面に入射する。略線対称に配置されている第1反射板20Rと第2反射板20Fで反射する電子線は、任意の容器PBに対して左右両側から搬送中心線Lを含む鉛直面に関して略対称に照射される。このような電子線照射は、既述の全面照射効果の他に、均等照射効果を奏している。
【0036】
スクリュー2とスクリュー3は、搬送路(支持面形成路)の始端から搬送路の途中まで前方に延びている。スクリュー4とスクリュー5は、搬送路の途中から搬送路の終端まで前方に延びている。一方の一方側反射板22は、スクリュー2とスクリュー3の終端から前方に位置している。他方の一方側反射板22は、スクリュー4とスクリュー5の始端より後方に位置している。一方の他方側反射板23は、スクリュー2の上方に位置している。他方の他方側反射板23は、スクリュー4の上方に位置している。このような配置は、反射板とスクリューの空間的干渉を巧みに回避し、且つ、反射板の線対称配置を巧みに実現している。
【0037】
スクリュー2とスクリュー3とスクリュー4とスクリュー5は、駆動側軸受け35と従動側軸受27により支持されている。スクリュー2とスクリュー3の終端側の軸受27の省略とスクリュー4とスクリュー5の始端側の軸受27の省略が可能である。この場合には、スクリュー2とスクリュー3とスクリュー4とスクリュー5は、駆動側の軸受け35の片持ちにより支持される。このような省略は、両側の一方側反射板22をそれぞれに延長することができる点で有効な照射領域が増えて好都合である。軸受27が省略されない場合には、軸受27の外側面を電子線反射面に形成することが好ましく、又は、軸受27を電子線反射板で覆うことが好ましい。
【0038】
上下1対の2本のスクリューのうち上側のスクリュー3,5の半径を連続的に変化させることにより、容器を搬送路に直交する回転面上で揺動させることにより、電子線照射の均一性を更に助長することができる。揺動手段として、搬送路面に凹凸波面を形成すること等多様な工夫が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明による電子線殺菌装置の実施の好ましい形態を示す正面図である。
【図2】図2は、図1の平面図である。
【図3】図3は、本発明による電子線殺菌装置の一部分を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1の側面図である。
【図5】図5は、走査線軸の傾斜を示す平面図である。
【図6】図6は、図1の一部の側面図である。
【図7】図7は、容器の回転モーメントを示す正面図である。
【図8】図8(a),(b)は、容器の押し力をそれぞれに示す正面図である。
【図9】図9(a),(b)は、容器の他の押し力をそれぞれに示す正面図である。
【図10】図10は、電子線反射の形態を示す側面図である。
【図11】図11は、電子線反射の他の形態を示す側面図である。
【図12】図12は、電子線反射の更に他の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
2…第1スクリュー
3…第2スクリュー
4…第3スクリュー
5…第4スクリュー
15…搬送路面
15F…前方部位
15R…後方部位
17…線状領域
19…第2反射板
21…第1反射板
24…第1部位
25…第2部位
26…第3部位
P…点領域(点状領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線が照射される照射領域に設定され固定されている搬送路面と、
前記搬送路面に載置される容器に前記搬送路面に対して推進力を与える搬送機構とを具え、
前記搬送機構は、
前記容器に点状に接触する第1スクリューと、
前記第1スクリューの下方に配置され前記容器に点状に接触する第2スクリューとを備え、
前記第1スクリューと前記容器の接触点と前記第2スクリューと前記容器の接触点とは互いに略上下位置関係にある
電子線殺菌装置。
【請求項2】
前記搬送路面は電子線通過性を有する
請求項1の電子線殺菌装置。
【請求項3】
前記照射領域のうち前記搬送路面に含まれる領域部分は線状領域として形成され、前記搬送路面は前記線状領域に交叉する
請求項1の電子線殺菌装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、
前記容器に点状に接触する第3スクリューと、
前記第3スクリューの下方に配置され前記容器に点状に接触する第4スクリューとを更に備え、
前記第1スクリューと前記第2スクリューは、前記搬送路面の搬送中心線の一方側に配置され、
前記第3スクリューと前記第4スクリューは、前記搬送路面の搬送中心線の他方側に配置され、
前記搬送路面の後方部位では前記容器は、前記第1スクリューと前記第2スクリューにより前記推進力を与えられ、
前記搬送路面の前方部位では前記容器は、前記第3スクリューと前記第4スクリューにより前記推進力を与えられる
請求項1の電子線殺菌装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、側面ガイドを更に備え、
前記容器は、前記側面ガイドと前記第1スクリューとに挟まれて、前記側面ガイドと前記第2スクリューとに挟まれて搬送される
請求項1〜請求項4から選択される1請求項の電子線殺菌装置。
【請求項6】
前記照射領域のうち前記搬送路面に含まれる領域部分は線状領域として形成され、前記路面中心線は前記線状領域に交叉する
請求項4の電子線殺菌装置。
【請求項7】
前記容器は容器中心線に対して略線対称である形状を有し、
前記搬送中心線は前記線状領域と点領域で交叉し、
前記第1スクリューは前記第3スクリューと前記点領域を通る直線に関して線対称に配置され、
前記第2スクリューは前記第4スクリューと前記直線に関して略線対称に配置されている
請求項6の電子線殺菌装置。
【請求項8】
反射板を更に具え、
前記反射板は、
前記第1スクリューと前記第2スクリューの前方に配置され電子線を反射する第1反射板と、
前記第3スクリューと前記第4スクリューの後方に配置され電子線を反射する第2反射板とを更に具え、
前記第1反射板と前記第2反射板とは、前記直線に関して略線対称に配置されている
請求項7の電子線殺菌装置。
【請求項9】
前記第1反射板と前記第2反射板はそれぞれに、
前記容器の首部に対して前記電子線を反射させる第1部位と、
前記容器の胴部に対して前記電子線を反射させる第2部位と、
前記容器の底部に対して前記電子線を反射させる第3部位とを備える
請求項8の電子線殺菌装置。
【請求項10】
前記第1スクリューの上部に配置され電子線を反射する第3反射板と、
前記第3スクリューの上部に配置され電子線を反射する第4反射板とを更に備え、
前記第3反射板と前記第1反射板とは、前記搬送中心線を含む鉛直面に関して略対称に配置され、
前記第4反射板と前記第2反射板とは、前記搬送中心線を含む鉛直面
に関して略対称に配置されている
請求項9の電子線殺菌装置。
【請求項11】
反射板を更に備え、
前記反射板は、
前記第1スクリューの上部に配置され電子線を反射する第3反射板と、
前記第3スクリューの上部に配置され電子線を反射する第4反射板とを更に備え、
前記第3反射板と前記第4反射板とは、前記直線に関して略線対称に配置されている
請求項7の電子線殺菌装置。
【請求項12】
前記第1スクリューと前記第2スクリューと前記第3スクリューと前記第4スクリューとは、それぞれ、
直線状に形成される棒状部材と、
前記棒状部材を軸とする円筒面上に配置される螺旋状に形成されて前記棒状部材に同体に接合される螺旋部材と、
前記軸を中心にして回転可能に前記棒状部材を支持する支持部材とを備える
請求項4の電子線殺菌装置。
【請求項13】
前記第1スクリューと前記第2スクリューと前記第3スクリューと前記第4スクリューとは、ともに片持ちで支持されている
請求項4の電子線殺菌装置。
【請求項14】
前記第1スクリューの螺旋巻き方向と前記第2スクリューの螺旋巻き方向とは互いに逆方向であり、且つ、前記第1スクリューの回転方向と前記第2スクリューの回転方向とは互いに逆方向である
請求項4の電子線殺菌装置。
【請求項15】
前記第1スクリューの螺旋巻き方向は、前記第2スクリューの螺旋巻き方向の逆方向であり、
前記第1スクリューの回転方向は、前記第2スクリューの回転方向の逆方向であり、
前記第3スクリューの螺旋巻き方向は、前記第4スクリューの螺旋巻き方向の逆方向であり、
前記第3スクリューの螺旋回転方向は、前記第4スクリューの回転方向の逆方向である
請求項4の電子線殺菌装置。
【請求項16】
前記容器は前記搬送路面に対して揺動する
請求項1〜15から選択される1請求項の電子線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−125234(P2007−125234A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320947(P2005−320947)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】