説明

電子線殺菌装置

【課題】樹脂製ボトル2の口部2aの内面側にも充分な電子線を照射できるようにする。
【解決手段】回転体32に回転自在に支持されている回転軸44の下端にボトル支持手段18が取り付けられている。ボトル支持手段18は一対のグリップ部材52A、52Bによってボトル2の口部2aをグリップする。ボトル支持手段18に支持されて吊り下げられた状態で回転搬送されているボトル2の左側側面から電子線を照射する。ボトル支持手段18の搬送方向前方側にS極の磁石88Aを、後方側にN極の磁石88Bを配置する。これら磁石88A、88Bはボトル2の口部2aの上方両側に位置している。電子線照射装置16から照射された電子線は、前記一対の磁石88A、88Bによる磁界によって下方へ偏向され、ボトル2の口部2a内面に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線殺菌装置に係り、特に、口部の下方を支持して吊り下げた状態で搬送しているボトルに、その搬送方向側方から電子線を照射して殺菌を行う電子線殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器搬送装置に設けられた複数の容器支持手段によって、樹脂製ボトルの口部の下方を支持して吊り下げた状態で搬送し、その搬送中に、電子線照射装置によって、搬送方向の側方から樹脂製ボトルに電子線を照射して殺菌を行う電子線殺菌装置は、従来から広く知られている。前記樹脂製ボトルは、軽量化のために胴部が薄肉化されているが、首部よりも上方の外周にねじが形成されてキャップが螺合される口部は、強度を要求されるため、下方の胴部に比べて肉厚が厚くなっている。このような樹脂製ボトルでは、肉厚の厚い口部には照射された電子線が胴部よりも透過しにくいため、口部内周面の殺菌が不十分になってしまうという問題がある。そこで、肉厚な口部でも電子線が透過するように出力を上げると、胴部には強すぎてボトルが変色してしまうため、電子線の出力を必要以上に上げることができなかった。
【0003】
前記のような電子線殺菌装置において、樹脂製ボトルの口部の内面を殺菌できるようにするために、各種の構成の電子線殺菌装置が提案されている(例えば、特許文献1ないし特許文献5参照)。
【0004】
特許文献1に記載された「開口容器用電子線照射装置」は、照射処理槽10内に、開口容器1を順に搬送する環状の搬送路を形成した回転搬送体11を配置し、この回転搬送体11は、その外面に開口容器1を保持して搬送する保持機構2を等間隔で多数設けてある。照射処理槽10内で電子線照射室となる搬送路に対応する部分に、電子線発生手段40を備えている。この電子線発生手段40を用いて、電子線照射室となる搬送路に向けて電子線を照射し、搬送されてくる開口容器1を連続して滅菌処理をするようにしている。この装置では、電子線照射装置を、容器の搬送路の上方に設置してあり、しかも、搬送路部分に、電子線発生手段40からの電子線EBを偏向させる電子線偏光器45を配置している。電子線偏光器45は永久磁石を使用したもので、永久磁石のN極とS極を開口容器1の内側と外側で対向するように配置、あるいは棒状の永久磁石のN極とS極が内側と外側で周方向にずれるように配置、さらには棒状の永久磁石のN極とS極を両側で対向させて配置する。この配置によって、上方から照射される電子線EBの偏向方向が、開口容器1の中心軸に対して、それぞれ角度の異なる円周方向に曲げられる。
【0005】
また、特許文献2に記載された「電子照射により物品を殺菌するための装置」は、回転式プラットホーム2がグリップ6を有していて、そのグリップ6がびんのネック部分周囲を把持する。そして、電子線照射部材24によって、びん1の垂直長手軸に対して45°の角度で電子線26を発射するようにしている。
【0006】
特許文献3には、搬送手段としての回転体3と、回転体3の円周方向等間隔位置に回転自在に設けられて容器2を載置するびん台4と、びん台4の移動過程となる照射領域Aを通過するびん台4上の容器2に対して電子線EBを照射する電子線照射手段5とを備え、容器2の外方側の側面2Aの全域に電子線EBを照射する「容器滅菌装置」が記載されている。この容器滅菌装置では、照射領域Aの上部に反射ミラー21を配置してあるので、電子線照射手段5から照射された電子線EBが、反射ミラー21によって下方側に向けて反射されて、容器2の内面に照射されるようになっている。
【0007】
さらに、特許文献4には、電子線照射体を、被照射物の立設方向に対し所定角度傾斜させて被照射物の斜め上方に設置するとともに、照射体片側の立設方向側に偏向磁場を持つ直流磁石を設け、前記被照射物に前記直流磁石により偏向された電子線と偏向されない電子線が照射可能に構成した「電子線照射装置」が記載されている。
【0008】
特許文献5に記載された「電子線照射装置」は、前面に照射窓7を有する走査ホーン6が配置され、ペットボトル20は、コンベヤ14によって照射位置に搬送される。そして、電子線照射窓7と反対側に位置する電子線吸収量が最も少ないボトル20口部23の右表側と対面する位置に反射板11を配置している。この装置では、走査ホーン6から走査された電子線8は照射窓7から空気中に放出され、ペットボトル20を照射するとともに電子線8の透過しにくいボトル口部23については反射板11で反射した電子線18により照射するようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−297067号公報(第4−7頁、図6)
【特許文献2】特表2007−522833号公報(第3−4頁、図2)
【特許文献3】特開2006−6726号公報(第3−4頁、図2)
【特許文献4】特開平11−248896号公報(第3−6頁、図1)
【特許文献5】特開平11−248894号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載された発明では、開口容器1の口部内周に電子線を照射して殺菌をすることができるが、上方からの照射でボトルの口部から底部まで殺菌するため、照射距離が異なり殺菌効果が偏るおそれがある。特に大型の容器の場合には、底部まで充分な殺菌を行うことが困難である。
【0011】
また、特許文献2に記載された発明は、斜め上方から電子線を照射しているため、口部内周を殺菌することは可能であるが、口部と底部で照射距離が異なるため殺菌効果が偏るおそれがある。特に大型の容器では底部の殺菌が困難である。
【0012】
特許文献3に記載された発明は、搬送されるボトルの側方から照射された電子線を、反射ミラーによりボトルの内面に照射するようにしているので、ボトルの口部内周の殺菌は可能であるが、反射ミラーに衝突することで電子線のエネルギーが減衰し、殺菌効果が低下するおそれがあるという問題があった。
【0013】
特許文献4に記載された発明は、ボトルの斜め上方から照射した電子線を偏向磁石板によって偏向させてボトルの内外面に照射するようにしているので、口部内周の殺菌は可能である。しかしながら前記各特許文献の発明と同様にボトルの口部と底部とで照射距離が異なるため、殺菌効果が偏るおそれがあり、特に、大型の容器では、殺菌効果が偏るおそれが大きいという問題があった。
【0014】
特許文献5に記載した発明では、コンベヤ上を搬送されるボトルに側方から電子線を照射し、照射領域の上部に配置した反射板によりボトルの内面に電子線を照射するようにしているので、ボトルの口部内面の殺菌は可能であるが、電子線が反射ミラーに衝突することでエネルギーが減衰し、殺菌効果が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、複数のボトル支持手段と、このボトル支持手段に支持されているボトルに電子線を照射する電子線照射装置とを備え、前記ボトル支持手段によって、上部に円筒状の口部を有するボトルの口部の下方を支持して吊り下げた状態で搬送し、搬送中に、前記電子線照射装置によって搬送方向側方からボトルの全長に亘って電子線を照射して、ボトルの内外面を殺菌する電子線殺菌装置において、磁極の異なる一対の磁力発生器を有する電子線偏向手段を各ボトル支持手段毎に設け、前記一対の磁力発生器を前記ボトル支持手段に支持されているボトルの口部の直上で所定方向に磁界を発生させるように、前記ボトルの口部を挟んで搬送方向前後の上方に配置し、ボトルの進行方向側方から照射される電子線を下方へ偏向させて、円筒状の口部の内周面に電子線を照射するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項2に記載した発明は、前記ボトル支持手段は、前記ボトルの口部の下方を搬送方向の前後から把持する把持手段と、この把持手段が下端に取り付けられ、前記ボトルの口部の上方に配置された回転軸とを備えており、さらに、この回転軸を回転させる回転駆動手段を設け、前記把持手段を回転軸を中心に回転可能に構成したことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、請求項3に記載した発明は、前記把持手段に把持されたボトルの口部の直上に配置され、ボトルの搬送方向側方に反射面を向けて、側方から照射される電子線を下方へ反射させる反射部材を設けたことを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項4に記載した発明は、前記一対の磁力発生器をボトルの口部を中心に回動させる回動駆動手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
ボトル支持手段に支持されている樹脂製ボトルの口部の上方に、一対の磁力発生器を有する電子線偏向手段を配置し、電子線照射装置から照射された電子線を下方へ向けて偏向させるようにしたので、ネックハンドリングにより高速搬送をしながら、ボトルの口部内面および内外面全体に充分に電子線を照射して完全な殺菌を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ボトルの口部を支持して吊り下げた状態で搬送するボトル支持手段と、このボトル支持手段に支持されて搬送されているボトルに電子線を照射する電子線照射装置を備えており、ボトルの搬送方向の側方(例えば左側)から電子線を照射する。ボトル支持手段に支持されているボトルの口部の上方両側に、一対の磁石(磁力発生器)を有し、一方の磁石(例えばS極の磁石)をボトルの搬送方向の前方側に配置するとともに、他方の磁石(例えばN極の磁石)を後方側に配置した電子線偏向手段を設け、搬送中に搬送方向側方から照射された電子線を、前記一対の磁石による磁界で、下方へと偏向させることにより容器口部内面に照射するという構成にしたことにより、樹脂製ボトルの肉厚の厚い口部の内面側にも充分な電子線を照射して確実に殺菌するという目的を達成する。
【実施例1】
【0021】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る電子線殺菌装置の全体の配置を簡略化して示す平面図である。この電子線殺菌装置は、ボトル2(図2および図3参照)に電子線を照射して殺菌する際に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製の隔壁4によって囲まれた殺菌チャンバー6を有している。この殺菌チャンバー6内は、供給ホイール8が配置されている入口側の供給室10と、供給ホイール8から受け渡された容器2を回転搬送する容器搬送装置12が設けられたメイン室14と、電子線照射装置16の前面側に位置し、前記容器搬送装置12のボトル支持手段18(図2参照)によって支持されて搬送されるボトル2が電子線の照射を受ける照射室20と、この照射室20の出口側(図1の右側)に連続して設けられ、電子線の照射により殺菌されたボトル2を無菌状態を維持したまま下流側に送る排出室22とを備えており、それぞれの室10、14、20、22が内部壁24、26、28によって区画されている。これらの隔壁4および各内部壁24、26、28には、受け渡しが行われるボトル2が通過可能な開口が形成されている。
【0022】
この実施例に係る電子線殺菌装置において殺菌され、その後の工程で液体等の内容物が充填される容器はペットボトル等の樹脂製のボトル2である。この樹脂製ボトル2は、胴部の横断面がほぼ長方形をしており(後に説明する図4参照)、その上部に円筒状の口部2aを備えている。口部2aの外周面には、キャップを螺合するための雄ねじ2aaが形成され、この雄ねじ2aaが形成された部分の下方に、間隔を空けてフランジ2bが形成されており、このフランジ2bの上方または下方をグリッパによって把持し、あるいはフランジ2bの下面側を前記ボトル支持手段18やその他の支持手段等によって支持して、吊り下げた状態で搬送する。
【0023】
このボトル2は、図示しないエア搬送コンベヤによって連続的に搬送され、インフィードスクリュー等によって所定の間隔に切り離された後、前記殺菌チャンバー6の入口側に配置された供給室10内に搬入される。供給室10内に設けられた供給ホイール8には、円周方向等間隔で複数のグリッパ30が設けられており、各グリッパ30が前記樹脂製ボトル2のフランジ2bの上方側を把持して搬送する。
【0024】
メイン室14内に配置された容器搬送装置12の回転体32には、円周方向等間隔で複数のボトル支持手段18が設けられており、これら各ボトル支持手段18が樹脂製ボトル2のフランジ2bの下面側を支持して搬送する。このボトル支持手段18の構成については後に説明する。前記供給ホイール8と容器搬送装置12の回転体32とは同期回転しており、供給ホイール8の各グリッパ30から各ボトル支持手段28に樹脂製ボトル2が受け渡される。
【0025】
容器搬送装置12の各ボトル支持手段18に支持されて回転搬送される樹脂製ボトル2は、照射室20内を通過し、その間に上下方向の全長に亘って全体的に電子線照射装置16から電子線の照射を受けて殺菌される。殺菌された樹脂製ボトル2は、照射室20に連続して設けられている排出室22に導入され、排出ホイール34に引き渡される。排出ホイール34は外周部に円周方向等間隔で複数のグリッパ36が設けられており、前記回転体32のボトル支持手段18が支持している樹脂製ボトル2の、フランジ2bよりも上部を把持して受け取る。排出ホイール34も前記回転体32と同期回転しており、各ボトル支持手段18から排出ホイール34の各グリッパ36に樹脂製ボトル2が受け渡される。排出ホイール34のグリッパ36に把持された樹脂製ボトル2は、この排出室22に隣接して設けられた次のチャンバー内(図示を省略)の容器支持手段等に受け渡されて次の工程に送られる。
【0026】
前記隔壁4の照射室20が設けられている部分に開口部4aが形成され、この開口部4aに電子線照射装置16が取り付けられている。この電子線照射装置16は、図示はしないが、樹脂製ボトル2に電子線を照射する真空チャンバー(加速チャンバー)を備えており、周知のように、真空チャンバー内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにした後、照射窓16aに取り付けてあるTi等の金属製の窓箔を通して大気中に取り出して被処理物(この実施例では樹脂製ボトル2)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う。なお、図1では図示を省略しているが、電子線照射装置16から電子線の照射を受ける樹脂製ボトル2の背後には、ビームコレクター38が設置されている(図3参照)。
【0027】
次に、図2および図3によりボトル支持手段18の構成について説明する。容器搬送装置12の回転体32は、水平な円盤状のプレート40の外周に固定された環状の回転プレート41と、この回転プレート41の上方に配置されて一体的に回転する環状の中間プレート42を備えている。これら回転プレート41と中間プレート42の外周部に、円周方向等間隔で鉛直方向の回転軸44が、それぞれボールベアリング46、48を介して回転自在に支持されている。これら垂直な回転軸44の下端に水平な取付体50が固定されている。この取付体50の下方側に、樹脂製ボトル2を点接触で保持する一対のグリップ部材(請求項2に記載した把持手段)52A、52Bが設けられている。取付体50の回転体32の回転方向前後側の両端面には、鉛直方向を向いた一対の板ばね(開閉部材)54A、54Bの上端が固着され、これら板ばね54A、54Bの下端に前記グリップ部材52A、52Bが取り付けられており、垂直な回転軸44の真下の位置で樹脂製ボトル2が保持されるようになっている。また、水平な取付体50の両側(両板ばね54A、54Bの外側)に水平な連結部材56A、56Bが固定され、これら各水平連結部材56A、56Bの下面側に、下方に向けた垂直な支持部材58A、58Bが取り付けられている。
【0028】
両側の垂直な支持部材58A、58Bは、各板ばね54A、54Bの長さよりもやや短くなっており、これら両支持部材58A、58Bの下端には、内側に向けて水平ピン60A、60Bが取り付けられている。これら水平ピン60A、60Bは板ばね54A、54Bの下端のグリップ部材52A、52Bよりもやや上方の位置に挿通されている。水平ピン60A、60Bの、支持部材58A、58Bと板ばね54A、54Bとの間に位置する部分の外周にコイルスプリング62A、62Bが介装されて、各板ばね54A、54Bを互いに接近する方向へ付勢している。この板ばね54A、54Bの内面側に位置しているピン60A、60Bの先端に設けた拡径頭部60Aa、60Baによって、スプリング62A、62Bに付勢された板ばね54A、54Bの位置を規制しており、通常は板ばね54A、54Bが支持部材58A、58Bと平行な鉛直状態を維持している。また、板ばね54A、54Bの下端部が内面側から押されると、スプリング62A、62Bの付勢力に抗して互いに拡開する方向に移動できるようになっている。
【0029】
ボトル支持手段18が取り付けられている鉛直方向の回転軸44の、前記中間プレート42の上方へ突出している上端部にピニオンギヤ64が固定されている。また、前記円盤状プレート40の外周に固定された環状の回転プレート41と環状の中間プレート42の、回転軸44を支持している位置の半径方向内方側に、鉛直方向の中間軸66が、それぞれボールベアリング68、70を介して回転自在に支持されている。これら各中間軸66の上端の、前記回転軸44のピニオンギヤ64とほぼ同じ高さに、セクターギヤ72が取り付けられている。このセクターギヤ72の、回転体32の半径方向外方側を向いた面に歯72aが形成され前記ピニオンギヤ64に噛み合っている(図4参照)。
【0030】
一方、セクターギヤ72の、回転体32の半径方向内方側を向いた端部に垂直なピン74が貫通して取り付けられており、この垂直ピン74の上端にカムフォロア76が回転自在に支持されている。また、この垂直ピン74の下端と、前記中間プレート42の内周端に固定したばね受けピン78との間に引っ張りコイルばね80が介装され、セクターギヤ72の端部を回転体32の半径方向内方側に引きつけている。前記回転体32の円盤状プレート40の上方に、円形の固定プレート82が配置されており、その外周にセクターギヤ72を揺動させるカム84が固定されている。このカム84の外周面がカム面であり、このカム面に沿って前記カムフォロア76が回転移動する。このカムフォロア76の回転移動に伴う半径方向への揺動により、セクターギヤ72が前記中間軸66を中心に揺動してピニオンギヤ64を回転させる。上端にピニオンギヤ64が固定されている回転軸44の下端に前記ボトル支持手段18が取り付けられており、セクターギヤ72の揺動によりピニオンギヤ64が回転し、樹脂製ボトル2の口部2aの上方に配置されている回転軸44が回転することによって、ボトル支持手段18によって支持されて搬送されている樹脂製ボトル2がその重心軸を中心に回転する。
【0031】
この実施例では、セクターギヤ72の歯72aの一方の端部(図4の左端のセクターギヤ72A参照)に噛み合っているピニオンギヤ64が、セクターギヤ72の歯72aの中間部に噛み合う状態(同図の中央のセクターギヤ72B参照)を経て、他方の端部(同図の右端のセクターギヤ72C参照)まで噛み合い移動することにより、樹脂製ボトル2を180度回転させるようになっている。このボトル支持手段18は、通常は、一対の板ばね54A、54Bおよびグリップ部材52A、52Bの一方(この実施例では、図2の板ばね54Aおよびグリップ部材52A)を進行方向の前方に向け、他方(図2の板ばね54Bおよびグリップ部材52B)を進行方向の後方を向けて回転移動しており、前記照射室20内で電子線照射装置16から電子線の照射を受ける間に、前記カム84によって回転軸44および樹脂製ボトル2を支持しているボトル支持手段18が180度回転され、グリップ部材52A、52Bの前後を入れ替えるようになっている。
【0032】
前記ボトル支持手段18の上部の水平な取付体50の下面に、電子線照射装置16から照射された電子線を反射する反射板86が取り付けられている。この反射板86は、ボトル支持手段18の進行方向と直交する断面がほぼV字状をしており(図3参照)、電子線照射装置16から電子線が照射される方向(図3の右方)を向いた面86aとその背後の面86bが、ほぼ45度の角度で斜め下方を向いている。この反射板86は、V字状の先端(下端)が樹脂製ボトル2の口部2aよりもやや上方の、口部2aの開口部のほぼ中央に位置するように配置されている。
【0033】
前記環状の回転プレート41の下面側に、ボトル支持手段18の両側に取り付けられている鉛直方向の支持部材58A、58Bの両側に位置するように、垂直な固定プレート90A、90Bを介して、一対の磁石(電子線偏向手段の磁力発生器)88A、88Bが固定されている(図2参照)。これら一対の磁石88A、88Bは、ボトル支持手段18の回転方向前方側に位置する一方88AがS極であり、後方側に位置する他方88BがN極である。この実施例では、ボトル支持手段18に支持されて搬送されている樹脂製ボトル2の進行方向左側から電子線が照射されるようになっており、前記両磁石88A、88Bにより発生する磁界の方向(N極→S極)を樹脂製ボトル2の進行方向と同じにすることにより、側方から照射される電子線を磁界から受ける力によって下方へ向けるよう作用させることができる。なお、樹脂製ボトル2の進行方向に対し右側から電子線を照射する場合には、磁界の方向を樹脂製ボトル2の進行方向と逆にする(進行方向前方側にN極を配置し、後方側にS極を配置する)ことにより、前記本実施例の構成と同様の作用を受けることができる。なお、回転体32の天面および外周面はカバー96によって覆われている。
【0034】
以上の構成に係る電子線殺菌装置の作動について説明する。この実施例に係る電子線殺菌装置で殺菌される樹脂製ボトル2は、ネック搬送コンベヤ(図示せず)によって搬送され、所定の間隔にピッチ切りされた後、鉛製の隔壁4で囲まれた無菌チャンバー6の供給室10内に導入される。供給室10内に設置された供給ホイール8は、円周方向等間隔で複数のグリッパ30が設けられており、外部から供給室10内に導入された樹脂製ボトル2の円筒状口部2aの下部に形成されているフランジ2bの上方側をグリップする。グリッパ30に保持された樹脂製ボトル2は、供給ホイール8の回転によって回転搬送され、容器搬送装置12への受け渡し位置で、供給ホイール8のグリッパ30から容器搬送装置12の回転体32に設けられたボトル支持手段18に受け渡される。ボトル支持手段18は、グリップ部材52A、52Bの一方(この実施例では52A)を回転方向の前方に向け、他方を回転方向の後方に向けて回転移動しており、受け渡し位置Aで、供給ホイール8のグリッパ30に把持されている樹脂製ボトル2の口部2aが両グリップ部材52A、52B間に押し込まれる。両グリップ部材52A、52Bはそれぞれ板ばね54A、54Bの下端に取り付けられており、板ばね54A、54Bを強制的に押し開いて樹脂製ボトル2の口部2aが両グリップ部材52A、52B間に押し込まれる。その後、両板ばね54A、54Bが自らのばね力によって復帰して、図2に示すように樹脂製ボトル2のフランジ2bの下部側を保持するとともにフランジ2bの下面を支持する。
【0035】
回転体32の回転によりボトル支持手段18に支持されている樹脂製ボトル2が電子線の照射室20内に入る。樹脂製ボトル2は、図1の矢印R方向に搬送されており、電子線照射装置16の照射窓16aの前方側を移動する樹脂製ボトル2の左側の側面に電子線が照射される。ボトル支持手段18に設けられた電子線偏向手段の一対の磁石(磁力線発生器)88A、88BのうちS極88Aが搬送方向前方に位置し、N極88Bが後方に位置しており、磁界の方向(N極→S極)と進行方向が同じなので、左側の側方から照射される電子線は、磁界から下方に向かう力を受け、樹脂製ボトル2の口部2aよりも上方に照射された電子線は口部2aの内面側に照射される。また、これと合わせて樹脂製ボトル2の口部2aの上方には反射板86が取り付けられており、樹脂製ボトル2の口部2aよりも上方に照射された電子線は、水平方向から90度下方へ向けられて樹脂製ボトル2の口部2a内に照射される。
【0036】
前記ボトル支持手段18が取り付けられている回転軸44は、上端にピニオンギヤ64が固定されてセクターギヤ72に噛み合っており、さらに、このセクターギヤ72は、上方の固定プレート82の外周に取り付けられたカム84によって揺動するようになっている。この実施例では、図4に示すようにカム面の形状が設定されており、このカム84によって電子線照射装置16の前面を移動する間に、ボトル支持手段18に支持されている樹脂製ボトル2が180度回転される。このように樹脂製ボトル2が電子線照射装置16の照射窓16aの前面で180度回転することにより、樹脂製ボトル2の上下方向の全長に亘って内外面全体が電子線の照射を受けて殺菌される。しかも、前述のように、一対の磁石88A、88Bを有する電子線偏向手段によって水平方向に照射された電子線を、下方へ向けて偏向させ、樹脂製ボトル2の口部2aの内面側に照射するようにしたので、肉厚な口部2aに対し、外面から電子線を照射するだけでなく内面側からも照射することができ、樹脂製ボトル2の全体に対して完全な殺菌が可能である。殺菌された樹脂製ボトル2は排出室22に導入され、引き渡し位置Bで排出ホイール34のグリッパ36に引き渡される。
【実施例2】
【0037】
前記実施例では、ボトル支持手段18が回転軸44の下端に取り付けられて、回転体32に回転自在に支持されるとともに、そのボトル支持手段18の搬送方向前後に、前方側のS極88Aと後方側のN極88Bとで一対となる磁石(磁力発生器)を、円盤状プレート40の外周に固定された回転プレート41の下面に固定していたが、この第2実施例では、一対の磁石を、樹脂製ボトルの口部の上方を回転できるようにしたことを特徴としている。
【0038】
この第2実施例の構成について、図5および図6により説明する。この実施例では、回転体132の円盤状プレート140の外周に上下2枚の回転プレート(上方の第1回転プレート141Aと下方の第2回転プレート141B)が取り付けられている。第1回転プレート141Aの上方に環状の第1中間プレート142Aが配置され、前記第1実施例と同様に、ボトル支持手段118が取り付けられている回転軸(以下第1回転軸144Aと呼ぶ)と第1中間軸166Aとが、第1回転プレート141Aと第1中間プレート142Aに回転自在に支持されている。なお、この第1回転軸144Aは、前記第2回転プレート141Bおよび後に説明する第2中間プレート142Bも貫通している。これら第1回転軸144Aと第1中間軸166Aの上端に、それぞれ第1ピニオンギヤ164Aおよび第1セクターギヤ172Aが取り付けられ、第1セクターギヤ172Aの端部の第1カムフォロア176Aが、第1引っ張りコイルばね180Aに引かれて、上方の第1固定プレート182Aの外周に取り付けられた第1カム184Aに係合している。この回転体132の上部の構成は、第1実施例の回転軸44およびボトル支持手段18を回転させる構成と同様である。
【0039】
さらにこの第2実施例では、円盤状プレート140の下部外周に取り付けられた第2回転プレート141Bと、その下方に配置された第2中間プレート142Bを、前記第1回転軸144Aが貫通して、回転自在に支持されている。第1回転軸144Aの下部外周に円筒状の第2回転軸(電子線偏向手段を回動させる回動軸)144Bがボールベアリング192、194を介して回転自在に支持されている。この第2回転軸144Bの外周面に第2ピニオンギヤ164Bが形成されている。下部側の第2回転プレート141Bと第2環状プレート142Bを貫通して第2中間軸166Bが回転自在に支持され、この第2中間軸166Bの下端に第2セクターギヤ172Bが回転可能に支持されて、前記第2回転軸144Bの第2ピニオンギヤ164Bに噛み合っている。また、第2セクターギヤ172Bの、回転体132の半径方向内方側の端部に第2カムフォロア176Bが回転自在に支持されている。さらに、円盤状プレート140の下方側に第2固定プレート182Bが固定され、その外周に第2カム184Bが取り付けられており、第2引っ張りコイルばね180Bによって第2セクターギヤ172Bの端部が引かれることにより、前記第2カムフォロア176Bがこの第2カム184Bに係合している。なお、回転体132の天面、外周面および底面はカバー196によって覆われている。
【0040】
この実施例では、電子線偏向手段の一対の磁石(磁力発生器)188A、188Bを、前記第2回転軸144Bの下部に取付プレート190A、190Bを介して取り付けている。この実施例でも、ボトル支持手段118の両グリップ部材152A、152Bに支持されている樹脂製ボトル102の搬送方向左側から、電子線照射装置116によって電子線が照射されるようになっており、従って、ボトル支持手段118の進行方向前方側に前記一対の磁石188A、188BのうちS極の磁石188Aが配置され、後方側にN極の磁石188Bが配置されている。また、前記水平な取付体150の下面に反射板186が取り付けられている。この反射板186の構成も前記第1実施例と同様である。
【0041】
この実施例では、樹脂製ボトル102を支持するボトル支持手段118が取り付けられている第1回転軸144Aは、前記第1実施例と同様に図4に示す形状のカム(第1カム184A)によって回転されるようになっており、樹脂製ボトル102が電子線の照射位置を移動する間にこのカム184Aによって180度回転される。また、一対の磁石188A、188Bが取り付けられている円筒状の第2回転軸144Bは、この実施例では、図7に示す形状の第2カム184Bによって回動される。
【0042】
一対の磁石188A、188Bは、電子線照射装置116の照射窓116aの前方を通過して電子線が照射されている間に、前記第2回転軸144Bを中心に往復回動するようになっており、それ以外の区間では、ボトル支持手段118の搬送方向前方側と後方側の中央部に位置しており、両グリップ部材152A、152Bと平行な状態で移動している(図8の最も左側の図に破線で示す磁石188A、188B参照)。このときには、セクターギヤ127Bの歯127Baの中央部にピニオンギヤ164Bが噛み合っている(図7の最も左側のセクターギヤ172BA参照)。この状態から、樹脂製ボトル102を支持しているボトル支持手段118が、照射窓116aの前方の電子線の照射領域に入ると、先ず、第2カム184Bによってセクターギヤ172Bを図7の反時計回り方向に回動させる。すると第2ピニオンギヤ164Bが同図の時計回り方向に回転し(図7の左から2番目のセクターギヤ172BB参照)、一対の磁石188A、188Bを同じ方向に回転させる(図8の一番左側の図に実線で示す磁石188A、188B参照)。このように一対の磁石188A、188Bを回動させることにより、これら磁石188A、188Bによる磁界の方向を、電子線の照射方向と直交する方向に向ける。
【0043】
その後、ボトル支持手段118に支持された樹脂製ボトル102が電子線の照射領域のほぼ中央部に移動してくる間に、セクターギヤ172Bを逆方向(図7の時計回り方向)に回転させて、その歯172Baのほぼ中央でピニオンギヤ164Bに噛み合う状態になる(図7の中央のセクターギヤ172BC参照)。セクターギヤ172Bとピニオンギヤ164Bとの噛み合いがこの状態になると、一対の磁石188A、188Bは、ボトル支持手段118に支持されている樹脂製ボトル102の中心の移動経路上に、その中央部が位置する状態になる(図8の中央の図に示す磁石188A、188B参照)。さらにボトル支持手段118が回転体132の回転により移動して、電子線の照射領域の後半に来ると、第2カム184Bによって第2セクターギヤ172Bがさらに時計回り方向に回動し、ピニオンギヤ164Bを反時計回り方向に回転させる(図7の右から2番目のセクターギヤ172BD参照)。この状態になると、一対の磁石188A、188Bは、図8の最も右側の図に示すように樹脂製ボトル102の搬送経路に対して、図8の左側に示す状態の時とは逆方向に回転して、電子線の放射方向と直交する方向に磁界が発生するように向きを変える(図8の右側の図に実線で示す磁石188A、188B参照)。その後、電子線の照射が終了すると、再びセクターギヤ172Bの歯172Baの中央部にピニオンギヤ164Bが噛み合う状態になり、一対の磁石188A、188Bが、ボトル保持手段118の両グリップ部材152A、152Bと平行な状態に戻って移動する。(図8の右側の図に破線で示す磁石188A、188B参照)。
【0044】
この第2実施例では、照射を受けた電子線を下方へ向けて偏向させる一対の磁石188A、188Bを、ボトル支持手段118の中心軸線を中心に回転できるようにした。電子線照射装置116の照射窓116aの照射面は平面状に形成されており、一方、ボトル支持手段118は回転体132によって回転移動されて円弧状の移動経路を移動するので、第1実施例のように磁石88A、88Bの位置を変更しなければ、照射窓116aの前方を移動する間に、一対の磁石188A、188Bによる磁界の方向と電子線の照射方向との角度が変化していくが、この実施例では、一対の磁石188A、188Bを所定の角度回転させるようにしたので、照射窓116aの前方を移動する間、常に磁界の方向が電子線の照射方向と直交する方向に一定となるように維持することができ、照射された電子線をより効率的に下方へ向けて偏向させ、樹脂製ボトル102の口部102a内面全体に照射して効果的な殺菌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】電子線殺菌装置の全体の配置を簡略化して示す平面図である。(実施例1)
【図2】ボトル支持手段の正面図である。
【図3】ボトル支持手段を備えた容器搬送手段の要部の縦断面図である。
【図4】樹脂製ボトルを回転させる機構を示す説明図である
【図5】第2実施例のボトル支持手段の正面図である。(実施例2)
【図6】第2実施例の容器搬送手段の要部の縦断面図である。
【図7】一対の磁石を回転させる機構を示す説明図である。
【図8】第2実施例の樹脂製ボトルと一対の磁石の回転状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
2 ボトル
2a ボトルの口部
16 電子線照射装置
18 ボトル支持手段
44 回転軸
52A 把持手段(グリップ部材)
52B 把持手段(グリップ部材)
64 ピニオンギヤ(回転駆動手段)
72 セクターギヤ(回転駆動手段)
76 カムフォロア(回転駆動手段)
84 カム(回転駆動手段)
86 反射板
88A 磁力発生器(磁石)
88B 磁力発生器(磁石)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボトル支持手段と、このボトル支持手段に支持されているボトルに電子線を照射する電子線照射装置とを備え、前記ボトル支持手段によって、上部に円筒状の口部を有するボトルの口部の下方を支持して吊り下げた状態で搬送し、搬送中に、前記電子線照射装置によって搬送方向側方からボトルの全長に亘って電子線を照射して、ボトルの内外面を殺菌する電子線殺菌装置において、
磁極の異なる一対の磁力発生器を有する電子線偏向手段を各ボトル支持手段毎に設け、前記一対の磁力発生器を前記ボトル支持手段に支持されているボトルの口部の直上で所定方向に磁界を発生させるように、前記ボトルの口部を挟んで搬送方向前後の上方に配置し、ボトルの進行方向側方から照射される電子線を下方へ偏向させて、円筒状の口部の内周面に電子線を照射するようにしたことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項2】
前記ボトル支持手段は、前記ボトルの口部の下方を搬送方向の前後から把持する把持手段と、この把持手段が下端に取り付けられ、前記ボトルの口部の上方に配置された回転軸とを備えており、さらに、この回転軸を回転させる回転駆動手段を設け、前記把持手段を回転軸を中心に回転可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子線殺菌装置。
【請求項3】
前記把持手段に把持されたボトルの口部の直上に配置され、ボトルの搬送方向側方に反射面を向けて、側方から照射される電子線を下方へ反射させる反射部材を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電子線殺菌装置。
【請求項4】
前記一対の磁力発生器をボトルの口部を中心に回動させる回動駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−105702(P2010−105702A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280304(P2008−280304)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】