説明

電子線照射システム

【課題】稼働率を向上させる電子線照射システムを提供する。
【解決手段】電子線照射システム200は、第1電子線照射装置100aと第1搬送ラインとを含んで構成される電子線照射ユニット200aと、第2電子線照射装置100bと第2搬送ラインとを含んで構成される電子線照射ユニット200bと、第1搬送ラインの第1搬出部312から第2搬送ラインの第2搬入部350に被照射物を送出するユニット間搬送部210と、第1照射領域R1を通過した被照射物の搬送先を、第1搬出口312aおよびユニット間搬送部のいずれか一方に切り換える搬送先切換部214と、を備え、搬送先切換部が第1照射領域を通過した被照射物の搬送先をユニット間搬送部に切り換えたとき、第1照射領域を通過するときの被照射物における照射面と、第2照射領域を通過するときの被照射物における該照射面と、を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物に電子線を照射する電子線照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療器具や食品等の滅菌、樹脂の架橋や硬化、悪性腫瘍等の病巣の除去等、様々な分野で利用されている電子線照射装置(例えば、特許文献1、2)が知られている。このような電子線照射装置は、カソード電極と加速器を備えており、カソード電極に電力を供給することでカソード電極から電子線を放出し、その電子線を加速器で加速して被照射物に照射する。電子線照射装置を利用して被照射物に電子線を照射する場合、被照射物は、コンベア等の搬送装置で、被照射物に電子線が照射される領域(照射領域)に、連続的に搬送されることが多い。
【0003】
そして、被照射物に電子線が照射される照射領域において電子線が被照射物等に衝突すると、X線等の放射線が発生するため放射線が外部に漏洩しないように、遮蔽壁で電子線照射装置が包囲されている。ここで遮蔽壁は、発生した放射線を十分に遮蔽できる程度の厚みを有するコンクリートや金属(鉛やステンレス)等で構成されている。また、遮蔽壁は、電子線照射装置を取り囲むとともに、建屋としての機能も有している。
【0004】
ここで、例えば、電子線照射装置を利用して高密度の被照射物に電子線を照射する場合、低密度の被照射物に照射する場合よりも高エネルギーの電子線を照射することで、被照射物の内部まで電子線を到達させることができる。しかし、電子線のエネルギーを高くすると、発生する放射線の線量も多くなってしまう。したがって、遮蔽壁の厚みを、より厚くしなければならず、建屋全体の設置面積が大きくなってしまい、電子線照射装置を設置する場所が制限されてしまっていた。また、第1種放射線取扱主任者等の特別な資格を有する人員を配置する必要もある。
【0005】
そこで、図10に示すように、1つの建屋内に配された1台のコンベア12の両側に、電子線の照射方向が互いに対向するように2台の電子線照射装置10(図10中、10a、10bで示す)を配しておき、コンベア12によって搬送される被照射物Wの両面から電子線を照射することで、低エネルギーの電子線であっても、高密度の被照射物Wの内部まで電子線を到達させることができる技術が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−349998号公報
【特許文献2】特開2003−139898号公報
【特許文献3】特開2003−215300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献3の技術では、2台の電子線照射装置10のうち、一方の電子線照射装置10に故障等が生じてメンテナンスする際に、ライン全体を停止させなければならず、その間、滅菌処理等を施すことができなくなってしまう。
【0008】
また、被照射物によっては片面からの照射で十分な場合もあるが、こうした被照射物が搬送される場合には、いずれかの電子線照射装置が待機状態となり、装置の稼働率が低下してしまう。しかも、電子線照射装置は、待機状態であっても、真空状態を維持する等の処理が必要であるため、その間、エネルギー損失が生じる。また、長時間にわたって片面からの照射を行う場合には、一方の電子線照射装置の稼働を完全に停止させることも可能であるが、電子線照射装置は、一度稼働を停止させると、再稼働する際にエージングを行わなければならず、エージングのための様々なコストがかかってしまい、さらには、定格稼働に至るまでに長時間を要してしまう。
【0009】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、2台の電子線照射装置を備えた電子線照射システムにおいて、装置の稼働率を向上することが可能な電子線照射システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の電子線照射システムは、水平方向に電子線を照射する第1電子線照射装置と、第1搬入口から第1電子線照射装置によって電子線が照射される第1照射領域まで被照射物を搬送する第1搬入部、および、第1照射領域から第1搬出口まで被照射物を搬送する第1搬出部を有する第1搬送ラインと、水平方向に電子線を照射する第2電子線照射装置と、第2搬入口から第2電子線照射装置によって電子線が照射される第2照射領域まで被照射物を搬送する第2搬入部、および、第2照射領域から第2搬出口まで被照射物を搬送する第2搬出部を有する第2搬送ラインと、第1搬出部における第1搬出口より搬送方向上流から第2搬送ラインの第2搬入部に被照射物を送出するユニット間搬送部と、第1照射領域を通過した被照射物の搬送先を、第1搬出口およびユニット間搬送部のいずれか一方に切り換える搬送先切換部と、を備え、搬送先切換部が第1照射領域を通過した被照射物の搬送先をユニット間搬送部に切り換えている間、第1照射領域を通過するときの被照射物における照射面と、第2照射領域を通過するときの被照射物における照射面と、を異ならせることを特徴とする。
【0011】
第1搬送ラインおよび第2搬送ラインのいずれか一方または両方の搬送ラインに設置され、搬送ラインによって被照射物が搬送される照射領域を通過した被照射物を、当該搬送ラインの搬出部から搬入部へと送出するとともに、搬送先切換部によって切り換え選択可能な再搬送部と、再搬送部が設置される搬送ラインに少なくとも1つ設けられ、搬送先切換部が照射領域を通過した被照射物の搬送先を再搬送部に切り換えたとき、再搬送部から搬入部に搬送された被照射物の照射面が、搬入口から搬入部に搬送された場合の照射領域における被照射物の照射面と異なるように被照射物の向きを変える向き変更部と、を備えてもよい。
【0012】
再搬送部および向き変更部は、第1搬送ラインに設置されてもよい。
【0013】
第1搬入口から第1搬入部に搬送された場合の第1照射領域における被照射物の照射面は、再搬送部から第1搬入部に搬送された場合の第1照射領域における被照射物の照射面、および、ユニット間搬送部を介して第2搬入部に搬送された場合の第2照射領域における被照射物の照射面と、水平面上で180度異なってもよい。
【0014】
第1搬入部は、第1照射領域を通過する第1の通路と、第1の通路よりも搬送方向上流側に設けられ、かつ、第1の通路と水平方向に直交する第2の通路と、を経由して、第1搬入口から第1照射領域まで被照射物を搬入し、向き変更部は、第2の通路を通過する被照射物を第1の通路に押出するプッシャを含んで構成されてもよい。
【0015】
第1照射領域の通過回数を被照射物ごとに識別する識別情報を読み取る情報読取部を備え、搬送先切換部は、情報読取部の読み取り結果に応じて搬送先を切り換えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置の稼働率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子線照射装置を説明するための説明図である。
【図2】電子線の照射線量と浸透深さを説明するための説明図である。
【図3】電子線照射システムを説明するための説明図である。
【図4】電子線照射ユニットを説明するための説明図である。
【図5】電子線照射ユニットを説明するための説明図である。
【図6】搬送先切換部の一例を説明するための説明図である。
【図7】片面照射の場合の被照射物の搬送の流れを説明するための説明図である。
【図8】電子線照射ユニットおよび電子線照射ユニットを利用して両面照射をする場合の被照射物の搬送の流れを説明するための説明図である。
【図9】電子線照射ユニットのみを利用して両面照射をする場合の被照射物の搬送の流れを説明するための説明図である。
【図10】従来の電子線照射システムを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
本実施形態の電子線照射システムは、2つの電子線照射ユニット(1台の電子線照射装置と、電子線照射装置が電子線を照射する領域である照射領域に被照射物を搬送する搬送ラインを含んで構成されるユニット)を含んで構成される。ここでは、まず電子線照射装置の構成を説明した後、電子線照射システムについて説明する。
【0020】
(電子線照射装置100)
図1は、電子線照射装置100を説明するための説明図である。図1に示すように、電子線照射装置100は、カソード電源104と、電子銃110と、高周波ユニット112と、導波管114と、プリバンチャ116と、加速器118と、スキャンホーン120とを備えて構成されている。なお、電子銃110、プリバンチャ116、加速器118、スキャンホーン120は、内部空間(真空室)が連続しており、この内部空間は、イオンポンプ等の真空ポンプ102で高真空状態から超高真空状態(例えば、10E−5Pa以下)に維持される。
【0021】
電子線照射装置100において、電子銃110から放出された熱電子は、プリバンチャ116、加速器118で加速され、スキャンホーン120を通過し、搬送ライン300で搬送される被照射物Wに向かって、水平方向(図1中X軸方向)に照射される。以下、電子線照射装置100の各機能部について詳述する。
【0022】
(電子銃110)
電子銃110は、例えば、三極管電子銃であり、カソード電源(交流電源)104から供給された電力によってカソード電極を加熱し、パルス状に印加された高電圧のグリッド電圧(引出電圧)により、電子線を放出する。
【0023】
(高周波ユニット112、導波管114)
高周波ユニット112は、クライストロン等で構成される高周波増幅器112aと、高周波増幅器112aに電力を供給する高周波電源(電力供給部)112bとを含んで構成され、導波管114を通じてプリバンチャ116および加速器118に、例えばSバンドに相当する3GHzのパルス状の高周波電力を供給する。導波管114は、セラミック等で構成されたRF窓114a、114bを通じて、高周波増幅器112aから増幅されて供給される高周波の電圧を加速器118に供給する。導波管114におけるRF窓114aとRF窓114bの間には、六フッ化硫黄(SF)等の絶縁ガスが充填されており、高周波増幅器112aで増幅されて出力された電圧によって導波管114が放電してしまう事態を回避する。なおRF窓114a、114bはSFと真空とを隔てる境界の役割を果たす。
【0024】
(プリバンチャ116)
プリバンチャ116は、電子銃110と加速器118の間に設けられ、導波管114を通じて高周波ユニット112に接続されている。プリバンチャ116は、電子銃110から入射された電子線をバンチング(密度圧縮(速度変調))して、加速器118に送出する。具体的に説明すると、プリバンチャ116内は、高周波増幅器112aから供給された高周波の電圧によって高周波電界が形成されており、プリバンチャ116を通過した電子線は、バンチングされて加速器118に入射する。プリバンチャ116で電子線をバンチングすることにより、加速器118で加速された電子線のエネルギーの分散を小さくすることができ、電子線のエネルギーの均一性を向上させることが可能となる。
【0025】
ここで、プリバンチャ116によって圧縮された電子線の加速器118への入射タイミングが、加速器118における高周波の正位相と同期したときのみ、電子線は加速器118で効率よく加速される。したがって、プリバンチャ116から加速器118への電子線の入射タイミングを調整するために、プリバンチャ116の高周波導入部116aには、不図示の位相調整手段が設けられている。また、電子線の圧縮率(バンチングされた電子線の長さ)も加速器118による加速効率に影響するため、すなわち、電子線の長さが短い程、加速効率が向上する。したがって、供給する高周波の強度を調整して電子線の長さを調整するために、プリバンチャ116の高周波導入部116aには、不図示の減衰(アッテネータ)手段が設けられている。
【0026】
(加速器118)
加速器118は、ステンレス(例えばSUS)等で形成され、内部に複数の加速空間を有して構成される。高周波増幅器112aから高周波の電圧(例えば、3GHz)が供給されると、加速器118の複数の加速空間が空間共振器として機能し、空間共振器内に時間的に変化する電界が生じる。そして、この時間的に変化する電界で、プリバンチャ116によって圧縮された電子線を加速する。
【0027】
ここで、電子線の速度と加速空間における正に帯電する(正位相になる)タイミングが同期するように、高周波増幅器112aから供給される電圧の周波数と、加速空間の距離が設計されているため、電子線は加速器118内で徐々に加速され、最終的には、例えば10MeV程度まで加速されて、スキャンホーン120に入射される。
【0028】
なお、ここでは、加速器118として、定在波型の線形(リニアック)加速器を採用しているが、電子を加速できればよく、進行波型の線形加速器や、シンクロトロン、サイクロトロン等の円形加速器を採用することもできる。
【0029】
(スキャンホーン120)
スキャンホーン120は、ステンレス(例えばSUS)等で形成され、その内部空間が加速器118と連結され、加速器118の出口付近に設けられたスキャン電磁石122と、加速器118と連結する端部と対向する端部に設けられた電子線取出部124とを含んで構成される。
【0030】
スキャン電磁石122は、加速器118から入射された電子線を鉛直方向(図1中Z軸方向)に走査(スキャン)する。電子線の進行方向は水平方向(図1中X軸方向)であるため、スキャン電磁石122が水平方向に進行する電子線を鉛直方向に走査することにより、鉛直方向に高さのある被照射物W全体に確実に電子線を照射することができる。
【0031】
電子線取出部124は、例えば、50μm程度の厚みのチタン(Ti)箔で構成され、内部空間と、大気とを隔てる境界の役割を果たす。そして、電子線取出部124から大気雰囲気に放出された電子線は、照射領域Rにおいて被照射物Wに照射される。
【0032】
こうして、電子銃110で放出された電子線は、加速器118で加速されて、電子線取出部124を通じて、被照射物Wに照射される。
【0033】
ところで、電子線は、X線やγ線と異なり粒子線であるため、その浸透深さには限界がある。電子線の浸透深さは、加速器118による電子線の加速電圧によって決定される。すなわち、電子線は、加速電圧が大きいほどより深くまで浸透(到達)することができる。また、電子線の浸透深さは、被照射物の密度にも影響され、被照射物の密度が小さいほどより深くまで浸透することとなる。
【0034】
図2は、電子線の照射線量と浸透深さを説明するための説明図である。図2中、縦軸は、被照射物の表面における電子線の照射線量を100%としたときの浸透した照射線量の割合(%)を示し、横軸は、比重1(水の密度)における電子線の浸透深さ(mm)を示す。なお、図2における、電子線の照射線量と浸透深さは、三菱重工技報Vol.40. No.5(2003)を参考にした。
【0035】
図2(a)に示すように、被照射物Wの比重が実質的に1に等しい場合、被照射物Wの表面から電子線の照射方向にある程度進むにつれて、浸透する電子線の照射線量は増加するが、それ以降は徐々に減少する。例えば、10MeVの電子線を例に挙げて説明すると、被照射物Wの表面から30mmよりも進むと、照射方向に進むにつれて、電子線の到達線量は徐々に減少し、60mmより進むと電子線の照射線量(到達線量)は0%、すなわち電子線が到達しなくなってしまう。したがって、比重が実質的に1に等しい被照射物Wの水平方向の厚みが60mm以上である場合、10MeVといった高エネルギーの電子線を照射したとしても、電子線が全く照射されない部分が生じてしまい、滅菌を確実に行うことができない。
【0036】
そこで、被照射物Wの両側から10MeVの電子線を照射すれば、図2(b)に示すように、被照射物Wの水平方向の厚みが60mmであっても、被照射物Wの内部に到達する照射線量を100%以上にすることができる。
【0037】
次に、本実施形態の電子線照射システム200について詳述する。
【0038】
(電子線照射システム200)
図3は、電子線照射システム200を説明するための説明図であり、図1におけるZ軸方向から電子線照射装置100を見た場合の電子線照射システム200の図である。図3に示すように、電子線照射システム200は、2つの電子線照射ユニット200a、200bと、2つの電子線照射ユニット200a、200bを取り囲むとともに、2つの電子線照射ユニット200a、200bにおいて発生した放射線の外部への漏洩を防止するための遮蔽壁202と、2つの電子線照射ユニット200a、200bを接続するユニット間搬送部210と、情報読取部212と、搬送先切換部214とを含んで構成される。
【0039】
(電子線照射ユニット200a)
図4は、電子線照射ユニット200aを説明するための説明図である。図4中理解を容易にするために遮蔽壁202を省略する。図4に示すように、電子線照射ユニット200aは、電子線照射装置100a(以下、第1電子線照射装置100aとする)と、搬送ライン300a(以下、第1搬送ライン300aとする)と、向き変更部320(図4中、320a、320bで示す)と、再搬送部330とを含んで構成される。
【0040】
第1電子線照射装置100aは、上述したように水平方向(図4中X軸方向)に電子線を照射する。
【0041】
第1搬送ライン300aは、コンベア等で構成された、第1搬入部310と、第1搬出部312とを含んで構成される。第1搬入部310は、第1搬入口310aから被照射物Wを搬入し、第1電子線照射装置100aによって電子線が照射される領域である第1照射領域R1まで搬送する。第1搬出部312は、第1照射領域R1から被照射物Wを搬出し、第1搬出口312aへ被照射物Wを搬送する。
【0042】
向き変更部320(図4中、320a、320bで示す)は、第1搬送ライン300aに設けられ、プッシャで構成される。具体的に説明すると、第1搬送ライン300aの第1搬入部310は、第1照射部コンベア310bと、第1搬入コンベア310cとを含んで構成され、第1搬出部312は、第1前搬出コンベア312bと、第1後搬出コンベア312cとを含んで構成される。第1照射部コンベア310bは、第1照射領域R1を通過する第1の通路204aに設けられ、第1搬入コンベア310cは、第1の通路204aよりも搬送方向上流側に設けられ、かつ、第1の通路204aと水平方向に直交する第2の通路204bに設けられる。また、第1前搬出コンベア312bは、第1の通路204aと平行に配された第3の通路204cに設けられ、第1後搬出コンベア312cは、第3の通路204cよりも搬送方向下流側に設けられ、かつ、第3の通路204cと水平方向に直交する第4の通路204dに設けられる。
【0043】
向き変更部320aは、第1照射部コンベア310bと第1搬入コンベア310cとを連続する部分に設けられる。そして、向き変更部320aは、第1搬入コンベア310cによって第2の通路204bを通過する被照射物Wを図4中Y軸方向に押出して、第1の通路204aに設けられた第1照射部コンベア310bに送出する。すなわち、向き変更部320aは、被照射物Wにおける、第1搬入コンベア310cの搬送方向の前面に該当する面と、第1照射部コンベア310bの搬送方向の前面に該当する面と、を90度変更する。向き変更部320aによって被照射物Wの向きを変更する理由については、後述する。
【0044】
ここで、第1照射部コンベア310bにおいて、被照射物Wが、前後の被照射物Wと一定間隔、離隔されて搬送されると、被照射物Wと被照射物Wとの間は、被照射物Wに電子線が照射されず、第1照射部コンベア310bに電子線が照射されることとなり、電子線が無駄に消費されてしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、第1照射部コンベア310bの搬送速度V1を、第1搬入コンベア310cの搬送速度V2よりも遅くなるように設定し、第1照射領域R1の直前に設けられた向き変更部320aが、搬送速度V1に合わせて所定間隔ごとに被照射物Wを送出することとする。
【0046】
これにより、第1照射部コンベア310bにおいて、被照射物Wを密接して搬送することができる。したがって、電子線が無駄に消費されてしまう事態を回避することが可能となる。
【0047】
また、向き変更部320bは、第1前搬出コンベア312bと第1後搬出コンベア312cとを連続する部分に設けられる。そして、向き変更部320bは、第1前搬出コンベア312bによって第3の通路204cを通過する被照射物Wを図4中X軸方向に押出して、第4の通路204dに設けられた第1後搬出コンベア312cに送出する。すなわち、向き変更部320bは、被照射物Wにおける、第1前搬出コンベア312bの搬送方向の前面に該当する面と、第1後搬出コンベア312cの搬送方向の前面に該当する面と、を90度変更する。向き変更部320bによって被照射物Wの向きを変更する理由については、後述する。
【0048】
再搬送部330は、コンベア等で構成され、第1照射領域R1を通過した被照射物Wを第1搬出部312から第1搬入部310へと送出する。再搬送部330による、第1搬出部312から第1搬入部310への送出については後に詳述する。
【0049】
(電子線照射ユニット200b)
図5は、電子線照射ユニット200bを説明するための説明図である。図5中理解を容易にするために遮蔽壁202を省略する。図5に示すように、電子線照射ユニット200bは、電子線照射装置100b(以下、第2電子線照射装置100bとする)と、搬送ライン300b(以下、第2搬送ライン300bとする)と、向き変更部370(図5中、370a、370bで示す)とを含んで構成される。
【0050】
第2電子線照射装置100bは、上述したように水平方向(図5中X軸方向)に電子線を照射する。
【0051】
第2搬送ライン300bは、コンベア等で構成された第2搬入部350、第2搬出部352を含んで構成される。第2搬入部350は、第2搬入口350aから被照射物Wを搬入し、第2電子線照射装置100bによって電子線が照射される領域である第2照射領域R2まで搬送する。第2搬出部352は、第2照射領域R2から被照射物Wを搬出し、第2搬出口352aまで搬送する。
【0052】
向き変更部370(図5中、370a、370bで示す)は、第2搬送ライン300bに設けられ、プッシャで構成される。具体的に説明すると、第2搬送ライン300bの第2搬入部350は、第2照射部コンベア350bと、第2搬入コンベア350cとを含んで構成され、第2搬出部352は、第2前搬出コンベア352bと、第2後搬出コンベア352cとを含んで構成される。第2照射部コンベア350bは、第2照射領域R2を通過する第5の通路204eに設けられ、第2搬入コンベア350cは、第5の通路204eよりも搬送方向上流側に設けられ、かつ、第5の通路204eと水平方向に直交する第6の通路204fに設けられる。また、第2前搬出コンベア352bは、第5の通路204eと水平方向に直交する第7の通路204gに設けられ、第2後搬出コンベア352cは、第7の通路204gよりも搬送方向下流側に設けられ、かつ、第7の通路204gと水平方向に直交する第8の通路204hに設けられる。
【0053】
向き変更部370aは、第2照射部コンベア350bと第2搬入コンベア350cとを連続する部分に設けられる。そして、向き変更部370aは、第2搬入コンベア350cによって第6の通路204fを通過する被照射物Wを図5中Y軸方向に押出して、第5の通路204eに設けられた第2照射部コンベア350bに送出する。すなわち、向き変更部370aは、被照射物Wにおける、第2搬入コンベア350cの搬送方向の前面に該当する面と、第2照射部コンベア350bの搬送方向の前面に該当する面と、を90度変更する。向き変更部370aによって被照射物Wの向きを変更する理由については、後述する。
【0054】
また、上述した電子線照射ユニット200aの第1照射部コンベア310bの搬送速度V1と、第1搬入コンベア310cの搬送速度V2との関係と同様に、本実施形態では、第2照射部コンベア350bの搬送速度V3を、第2搬入コンベア350cの搬送速度V4よりも遅くなるように設定し、第2照射領域R2の直前に設けられた向き変更部370aが、搬送速度V3に合わせて所定間隔ごとに被照射物Wを送出することとする。
【0055】
また、向き変更部370bは、第2前搬出コンベア352bと第2後搬出コンベア352cとを連続する部分に設けられる。そして、向き変更部370bは、第2前搬出コンベア352bによって第7の通路204gを通過する被照射物Wを図5中Y軸方向に押出して、第8の通路204hに設けられた第2後搬出コンベア352cに送出する。すなわち、向き変更部370bは、被照射物Wにおける、第2前搬出コンベア352bの搬送方向の前面に該当する面と、第2後搬出コンベア352cの搬送方向の前面に該当する面と、を90度変更する。向き変更部370bによって被照射物Wの向きを変更する理由については、後述する。
【0056】
図3に戻って、ユニット間搬送部210、情報読取部212、搬送先切換部214について説明する。
【0057】
ユニット間搬送部210は、コンベア等で構成され、第1搬送ライン300aの第1搬出部312における第1搬出口312aよる搬送方向上流から第2搬送ライン300bの第2搬入部350に被照射物Wを送出する。
【0058】
情報読取部212は、ユニット間搬送部210の上流近傍に設置され、第1照射領域R1の通過回数を被照射物Wごとに識別する識別情報を読み取る。具体的に説明すると、電子線照射システム200に搬入する前に、被照射物Wに、被照射物Wをそれぞれ識別するバーコード等の識別子を付しておく。情報読取部212は、第1搬出部312によって第1照射領域R1から搬出された被照射物Wの識別子を読み取り、保持しておく。そして、情報読取部212は、同一の識別子を読み取った回数を計数することで、被照射物Wごとの第1照射領域R1の通過回数を計数する。
【0059】
搬送先切換部214は、情報読取部212の読み取り結果に応じて、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、第1搬出口312a、再搬送部330、ユニット間搬送部210のうちのいずれかに切り換える。
【0060】
図6は、搬送先切換部214の一例を説明するための説明図である。図6に示すように、搬送先切換部214は、プッシャ214aと、ストッパ214bと、経路分岐装置214cと、を含んで構成される。
【0061】
プッシャ214aおよびストッパ214bは、ともに、通常、搬送される被照射物Wの移動軌跡上から退避した位置にある。プッシャ214aは、第1後搬出コンベア312cとユニット間搬送部210とを連続する部分に設けられ、駆動制御されると、被照射物Wの移動軌跡上に進入し、第1後搬出コンベア312cによって搬送された被照射物Wを図4中Y軸方向に押出して、ユニット間搬送部210に送出する。ストッパ214bは、駆動制御されると、被照射物Wの移動軌跡上に進入して、被照射物Wの搬送方向(第1後搬出コンベア312cの搬送方向)前面に接触する。
【0062】
例えば、搬送先切換部214が、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、ユニット間搬送部210に切り換える場合、まず、ストッパ214bが駆動制御され、第1搬出部312(第1後搬出コンベア312c)によって搬送された被照射物Wを停止させる。そして、プッシャ214aが図6中Y軸方向に被照射物Wを押出することで、被照射物Wをユニット間搬送部210に送出する。こうすることで、搬送先切換部214は、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、ユニット間搬送部210に切り換える。
【0063】
また、搬送先切換部214が、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、再搬送部330に切り換える場合、プッシャ214aおよびストッパ214bは、搬送される被照射物Wの移動軌跡上から退避した位置に配される。そして、図6(a)から図6(b)に示すように、経路分岐装置214cが、被照射物Wの搬送先を、第1搬出部312から第1搬出口312aへ続く経路312dから再搬送部330に切り換える。例えば、経路312dと再搬送部330とを鉛直上下方向に2段構成としておき、経路分岐装置214cが、経路312dと再搬送部330とを鉛直方向に移動させることによって、経路312dまたは再搬送部330の鉛直方向の高さを第1後搬出コンベア312cと実質的に等しくすることで搬送先を切り換える。
【0064】
さらに、搬送先切換部214が、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、第1搬出口312aに切り換える場合、プッシャ214aおよびストッパ214bを駆動せず、図6(b)から図6(a)に示すように、再搬送部330から、第1後搬出コンベア312c(第1搬出部312)から第1搬出口312aへ続く経路312dに切り換える。
【0065】
続いて、電子線照射システム200による被照射物Wへの片面照射および両面照射をする際の搬送先切換部214による搬出先の切り換えについて説明する。
【0066】
(片面照射)
被照射物Wの密度が低く、電子線照射装置100による1回の電子線照射で、十分に被照射物Wの内部まで電子線を照射することができる場合、被照射物Wの片面に対して電子線を照射(片面照射)すれば足りる。
【0067】
図7は、片面照射の場合の被照射物Wの搬送の流れを説明するための説明図である。図7に示すように、片面照射の場合、搬送先切換部214は、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、第1搬出口312aに切り換える。そして、電子線照射ユニット200aにおいて、第1搬入部310が第1搬入口310aから被照射物Wを搬入すると、図7中、白抜き矢印で示すように、第1搬入部310によって第1照射領域R1まで搬送され、第1照射領域R1において第1電子線照射装置100aによって電子線が照射され、その後、第1搬出部312によって第1搬出口312aまで搬送される。
【0068】
また、電子線照射ユニット200bにおいて、第2搬入部350が第2搬入口350aから被照射物Wを搬入すると、図7中、黒い塗りつぶしの矢印で示すように、第2搬入部350によって第2照射領域R2まで搬送され、第2照射領域R2において第2電子線照射装置100bによって電子線が照射され、その後、第2搬出部352によって第2搬出口352aまで搬送される。
【0069】
(両面照射1)
一方、被照射物Wの密度が高く、電子線照射装置100による1回の電子線照射では、十分に被照射物Wの内部まで電子線を照射することができない場合、被照射物Wの両面に対して電子線を照射(両面照射)する必要がある。
【0070】
図8は、電子線照射ユニット200aおよび電子線照射ユニット200bを利用して両面照射をする場合の被照射物Wの搬送の流れを説明するための説明図である。図8に示すように、電子線照射ユニット200aおよび電子線照射ユニット200bを利用して両面照射をする場合、電子線照射ユニット200aにおいて、第1搬入部310が第1搬入口310aから被照射物Wを搬入すると、図8中、白抜き矢印で示すように、第1搬入部310によって第1照射領域R1まで搬送される。
【0071】
ここで、第1搬入部310によって搬入された被照射物Wは、向き変更部320aによって図8中X軸方向からY軸方向に押出されるので、第1照射領域R1において、被照射物Wに電子線が照射される面(照射面)は、図8(a)に示す、搬送方向の前面に該当する面となる。
【0072】
そして、片面に電子線が照射された被照射物W((図8(b)参照:照射された面を黒い塗り潰しで示す))は、向き変更部320bによって図8中Y軸方向からX軸方向に押出されるので、向き変更部320bの下流の被照射物Wにおける搬送方向の前面は、被照射物Wの電子線が照射された面と対向する面(水平方向に180度異なる面)となる(図8(c)参照)。
【0073】
続いて、情報読取部212は、被照射物Wごとの識別子を読み取った回数を計数する。ここでは、片面に電子線が照射された被照射物Wに関する識別子を読み取った回数が1であるため、被照射物Wに再度電子線を照射すべく、搬送先切換部214は、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、ユニット間搬送部210に切り換える。
【0074】
ここで、搬送先切換部214を構成するプッシャ214aが図8中X軸方向からY軸方向に被照射物Wを押出してユニット間搬送部210に送出するので、ユニット間搬送部210における搬送方向の前面は、第1照射領域R1における照射面と直交する面となる(図8(d)参照)。
【0075】
そして、ユニット間搬送部210から第2搬入部350に被照射物Wが送出されると、第2搬入部350における被照射物Wの搬送方向の前面は、第1照射領域R1における照射面となる(図8(e)参照)。
【0076】
続いて、第2搬入部350によって搬入された被照射物Wは、向き変更部370aによって図8中X軸方向からY軸方向に押出されるので、第2照射領域R2における照射面は、図8(f)に示すように、第1照射領域R1の照射面と対向する面となる。したがって、ユニット間搬送部210を経由して、第1照射領域R1および第2照射領域R2において2回電子線を照射された被照射物Wは、被照射物Wにおける180度異なる2面から電子線が照射されたことになる(図8(g)参照)。
【0077】
以上説明した両面照射1では、電子線照射ユニット200aおよび電子線照射ユニット200bを利用して被照射物Wの両面から電子線を照射しているが、電子線照射ユニット200bがメンテナンス等で利用できない場合がある。この場合には、電子線照射ユニット200aのみで両面照射を行うことが可能である。
【0078】
(両面照射2)
図9は、電子線照射ユニット200aのみを利用して両面照射をする場合の被照射物Wの搬送の流れを説明するための説明図である。ここでは、例えば、メンテナンス等で電子線照射ユニット200bを利用できない場合を例に挙げて説明する。図9に示すように、電子線照射ユニット200aのみを利用して両面照射をする場合、電子線照射ユニット200aにおいて、第1搬入部310が第1搬入口310aから被照射物Wを搬入すると、図9中、白抜き矢印で示すように、第1搬入部310によって第1照射領域R1まで搬送される。
【0079】
ここで、第1搬入部310によって搬入された被照射物Wは、向き変更部320aによって図9中X軸方向からY軸方向に押出されるので、第1照射領域R1において、被照射物Wに電子線が照射される面は、図9(a)に示す、搬送方向の前面に該当する面となる。
【0080】
そして、片面に電子線が照射された被照射物W((図9(b)参照:照射された面を黒い塗り潰しで示す))は、向き変更部320bによって図9中Y軸方向からX軸方向に押出されるので、向き変更部320bの下流の被照射物Wにおける搬送方向の前面は、被照射物Wに電子線がすでに照射された面と対向する面(水平面上で180度異なる面)となる(図9(c)参照)。
【0081】
続いて、情報読取部212は、被照射物Wごとの識別子を読み取った回数を計数する。ここでは、片面に電子線が照射された被照射物Wに関する識別子を読み取った回数が1であるため、被照射物Wに再度電子線を照射すべく、搬送先切換部214は、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を、再搬送部330に切り換える。
【0082】
そして、再搬送部330を経由して搬送された被照射物W(図9(d)参照)は、向き変更部320aによって図9中X軸方向からY軸方向に押出されるので、第1照射領域R1において、被照射物Wに再度電子線が照射される面(図9(e)参照)は、図9(c)、(d)に示す、搬送方向の前面に該当する面となる。したがって、再搬送部330を経由して、第1照射領域R1において2回電子線を照射された被照射物Wは、被照射物Wにおける180度異なる2面から電子線が照射されたことになる(図9(f)参照)。
【0083】
このように、向き変更部320を設けて被照射物Wの向きを変える構成により、搬送先切換部214が第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先を再搬送部330に切り換えている間、再搬送部330から第1搬入部310に搬送された被照射物Wの電子線の照射面を、第1搬入口310aから第1搬入部310に搬送された場合の照射面と異ならせることができる。
【0084】
そして、両面に電子線が照射された被照射物W((図9(f)参照)が第1搬出部312によって搬送されると、情報読取部212は、両面に電子線が照射された被照射物Wの識別子を再度読み取ることになる。ここでは、情報読取部212が、両面に電子線が照射された被照射物Wの識別子を読み取った回数は2となるため、被照射物Wを外部に搬出すべく、搬送先切換部214は、第1照射領域R1を2回通過した被照射物Wの搬送先を、第1搬出口312aに切り換える。これにより、被照射物Wは、第1搬出口312aから搬出される(図9中、黒い塗りつぶしの矢印で示す)。
【0085】
このように、1つの電子線照射ユニット200aを利用した場合であっても、被照射物Wの両面から確実に電子線を照射することが可能となる。なお、ここでは、電子線照射ユニット200bがメンテナンス等で利用できない場合を例に挙げて説明したが、電子線照射ユニット200aにおいて両面照射を行っているときに、電子線照射ユニット200bにおいて片面照射をすることもできる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態にかかる電子線照射システム200によれば、搬送先切換部214が第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬出先を第1搬出口312aとユニット間搬送部210とで切り換える構成により、2台の電子線照射装置100a、100bのうちいずれか一方を待機状態にしたり、停止したりすることなく、片面照射と両面照射とを瞬時に切り換えることができる。したがって、電子線照射装置100a、100bの稼働率を向上することが可能となる。
【0087】
また、両面照射を所望する際に、2台の電子線照射装置100a、100bのうち、例えば電子線照射装置100bに故障等が生じてメンテナンスする場合であっても、電子線照射ユニット200aと電子線照射ユニット200bとがそれぞれ独立しており、かつ、向き変更部320と、再搬送部330とを備えているため、電子線照射装置100aのみで両面照射を行うことができる。
【0088】
さらに、両面照射をするための、被照射物Wの水平面内での回転を、直交するコンベアによって為しているので、被照射物Wを回転する特別な機構を別途設ける必要がない。また、搬送先切換部214および向き変更部320、370を備えるだけで、片面照射や、2つの電子線照射システム200を利用した両面照射、1つの電子線照射システム200のみで遂行する両面照射を全て行うことができるため、搬送ラインを纏めることができ、設備全体の占有面積を低減したり、設備にかかるコストを低減することが可能となる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、上述した実施形態で説明した、向き変更部320、370の数や設置位置、搬送先切換部214の構成は、電子線照射システム200の一例である。したがって、搬送先切換部214が、第1照射領域R1を通過した被照射物の搬送先を再搬送部330に切り換えたとき(電子線照射ユニット200aのみを利用して両面照射を行う場合)、再搬送部330から第1搬入部310に搬送された被照射物Wの第1照射領域R1における照射面が、第1搬入口310aから第1搬入部310に搬送された場合の第1照射領域R1における照射面と異なれば、向き変更部320、370の数や設置位置、搬送先切換部214の構成はどのようなものであってもよい。また、搬送先切換部214が、第1照射領域R1を通過した被照射物Wの搬送先をユニット間搬送部210に切り換えたとき(電子線照射ユニット200aおよび電子線照射ユニット200bを利用して両面照射を行う場合)、第1照射領域R1における照射面と、第2照射領域R2における照射面とが異なれば、向き変更部320、370の数や設置位置、搬送先切換部214の構成はどのようなものであってもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、第1搬送ライン300aに2つの向き変更部320(320a、320b)を設置することで、被照射物Wにおける、水平方向に対向する2面(180度異なる面)に電子線を照射する場合を例に挙げて説明した。しかし、向き変更部320を第1搬送ライン300aに少なくとも1つ設けておけば、再搬送部330から第1搬入部310に搬送された被照射物Wの第1照射領域R1における照射面と、第1搬入口310aから第1搬入部310に搬送された場合の、被照射物Wの第1照射領域R1における照射面とを異ならせることができ、また、第1照射領域R1における照射面と、第2照射領域R2における照射面とを異ならせることができる。したがって、被照射物Wにおける密度が均一でない場合において、被向き変更部320を第1搬送ライン300aに少なくとも1つ設けておけば、被照射物Wの内部に電子線を到達させることも可能である。
【0092】
さらに、上述した実施形態では、電子線照射ユニット200aが再搬送部330を備えることで、電子線照射ユニット200aのみで被照射物Wの両面から電子線を照射することができる場合を例に挙げて説明したが、電子線照射ユニット200bが、第2照射領域R2を通過した被照射物Wを第2搬出部352から第2搬入部350へと送出する再搬送部を備えることもできる。こうすることで、電子線照射ユニット200aのみでも、電子線照射ユニット200bのみでも、片面照射および両面照射を遂行することが可能となる。さらにこのとき、第2照射領域R2を通過した被照射物Wを第2搬出部352から第1搬入部310に送出するユニット間搬送部を設け、両ユニット200a、200b間で被照射物Wを往来可能にすることも可能である。
【0093】
また、上述した実施形態では、被照射物Wに予め識別子を付しているが、例えば被照射物Wをトレーに載置して搬送する形態の場合、予めトレーに識別子を付しておいてもよい。この場合、情報読取部212は、トレーに付された識別子を読み取り、その結果に応じてトレーごと被照射物Wの搬送先を切り換えるとよい。
【0094】
さらに、上述した実施形態において、情報読取部212は、両面照射2において、被照射物Wに関する第1照射領域R1の通過回数を検出し、1回であったら、搬送先切換部214が搬送先を再搬送部330に切り換え、2回であったら第1搬出口312aに切り換える場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限定されず、例えば、被照射物Wの種類(密度)に応じて、片面照射で十分なことを示す識別子と、両面照射が必要なことを示す識別子とを予め付しておき、情報読取部212が読み取った識別子が、片面照射で十分なことを示す識別子である場合、搬送先切換部214は、搬送先を第1搬出口312aに切り換え、両面照射が必要なことを示す識別子である場合、搬送先切換部214は、搬送先を再搬送部330に切り換えてもよい。この場合、種類の異なる被照射物Wを搬入しても、適切に片面照射および両面照射を遂行することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、被照射物に電子線を照射する電子線照射システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
R1 …第1照射領域
R2 …第2照射領域
100a …第1電子線照射装置
100b …第2電子線照射装置
200 …電子線照射システム
200a …電子線照射ユニット
200b …電子線照射ユニット
204a …第1の通路
204b …第2の通路
210 …ユニット間搬送部
212 …情報読取部
214 …搬送先切換部
214a …プッシャ
300a …第1搬送ライン
300b …第2搬送ライン
310 …第1搬入部
310a …第1搬入口
312 …第1搬出部
312a …第1搬出口
320、370 …向き変更部
330 …再搬送部
350 …第2搬入部
350a …第2搬入口
352 …第2搬出部
352a …第2搬出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に電子線を照射する第1電子線照射装置と、
第1搬入口から前記第1電子線照射装置によって電子線が照射される第1照射領域まで被照射物を搬送する第1搬入部、および、該第1照射領域から第1搬出口まで被照射物を搬送する第1搬出部を有する第1搬送ラインと、
水平方向に電子線を照射する第2電子線照射装置と、
第2搬入口から前記第2電子線照射装置によって電子線が照射される第2照射領域まで被照射物を搬送する第2搬入部、および、該第2照射領域から第2搬出口まで被照射物を搬送する第2搬出部を有する第2搬送ラインと、
前記第1搬出部における前記第1搬出口より搬送方向上流から前記第2搬送ラインの第2搬入部に被照射物を送出するユニット間搬送部と、
前記第1照射領域を通過した被照射物の搬送先を、前記第1搬出口および前記ユニット間搬送部のいずれか一方に切り換える搬送先切換部と、
を備え、
前記搬送先切換部が前記第1照射領域を通過した被照射物の搬送先を前記ユニット間搬送部に切り換えている間、前記第1照射領域を通過するときの被照射物における前記照射面と、前記第2照射領域を通過するときの被照射物における該照射面と、を異ならせることを特徴とする電子線照射システム。
【請求項2】
前記第1搬送ラインおよび前記第2搬送ラインのいずれか一方または両方の搬送ラインに設置され、該搬送ラインによって被照射物が搬送される照射領域を通過した被照射物を、当該搬送ラインの搬出部から搬入部へと送出するとともに、前記搬送先切換部によって切り換え選択可能な再搬送部と、
前記再搬送部が設置される搬送ラインに少なくとも1つ設けられ、前記搬送先切換部が前記照射領域を通過した被照射物の搬送先を前記再搬送部に切り換えたとき、前記再搬送部から搬入部に搬送された被照射物の前記照射面が、前記搬入口から搬入部に搬送された場合の前記照射領域における前記被照射物の前記照射面と異なるように前記被照射物の向きを変える向き変更部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子線照射システム。
【請求項3】
前記再搬送部および前記向き変更部は、前記第1搬送ラインに設置されることを特徴とする請求項2に記載の電子線照射システム。
【請求項4】
前記第1搬入口から前記第1搬入部に搬送された場合の前記第1照射領域における被照射物の前記照射面は、前記再搬送部から前記第1搬入部に搬送された場合の前記第1照射領域における被照射物の前記照射面、および、前記ユニット間搬送部を介して前記第2搬入部に搬送された場合の前記第2照射領域における被照射物の前記照射面と、水平面上で180度異なることを特徴とする請求項3に記載の電子線照射システム。
【請求項5】
前記第1搬入部は、
前記第1照射領域を通過する第1の通路と、前記第1の通路よりも搬送方向上流側に設けられ、かつ、該第1の通路と水平方向に直交する第2の通路と、を経由して、前記第1搬入口から前記第1照射領域まで被照射物を搬入し、
前記向き変更部は、
前記第2の通路を通過する被照射物を前記第1の通路に押出するプッシャを含んで構成されることを特徴とする請求項3または4に記載の電子線照射システム。
【請求項6】
前記第1照射領域の通過回数を被照射物ごとに識別する識別情報を読み取る情報読取部を備え、
前記搬送先切換部は、前記情報読取部の読み取り結果に応じて搬送先を切り換えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子線照射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−2935(P2013−2935A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133847(P2011−133847)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】