説明

電子線照射装置の性能判定装置

【課題】高速搬送される食品容器や包装材等の被照射物を、電子線照射手段からの電子線で滅菌処理するときに、滅菌処理の状態を搬送中に短時間で判定できる装置を提供する。
【解決手段】照射処理槽10に電子線照射手段40を設け、搬送手段である回転搬送体11に設ける複数の保持機構にて保持すると共に自転機構にて回転させる被照射物である容器1を、順に照射処理槽10内を搬送する。容器1は、電子線照射手段40からの電子線により搬送中に滅菌処理を実施する。照射処理槽10の側面に設けた観測窓50に対向して、少なくとも容器1の搬送状態を観測する撮影手段51を配置している。しかも、照射処理槽10には電子線の照射状態の観測手段53を備えている。これら撮影手段51からの出力と照射状態の観測手段53からの出力を用いて、容器1の滅菌状態を判定する判定手段54を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線照射装置の性能判定装置に係り、特にプラスチック製の食品容器や包装材等の被照射物を、電子線で滅菌処理の状況を評価するのに好適な電子線照射装置の性能判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、飲料や食品や医薬品、更には化粧品の充填にプラスチック製の容器が多く用いられている。これらの容器は、内容物の充填前に、内部を滅菌処理して無菌状態にし、その後内容物を充填して密封を行っている。容器の滅菌処理は、設備が大掛かりとなる薬剤を用いるものに代え、電子線照射装置の電子線を用い、電子線により高速で搬送する被照射物である容器の内外面を滅菌することが提案されている。
【0003】
電子線照射装置には、高エネルギーの電子線或いは低エネルギーの電子線を用いるものがあり、前者の装置は大型となる上、X線対策の大掛かりな放射線遮蔽を設ける必要があるのに対し、後者の装置は放射線遮蔽を簡易死してより小型化でき、プラスチック製ボトル等の容器を製造して高速で搬送するライン中に、電子線照射の滅菌工程を容易に組み込めるために注目されてきている。
【0004】
例えば、PETボトル等のプラスチック製の容器は、その中心軸が搬送方向と直交するように、即ち容器を横倒した状態で搬送手段によって、電子線発生手段の電子線を照射する照射領域まで搬送し、床部が傾斜して設けられた別の搬送手段で容器が回転しながら移動するように搬送し、容器を回転しながら電子線発生手段の照射空間を通過させ、これにより容器の外面及び内面の全てに電子線を照射し、効率よく滅菌処理を行う電子線照射装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また別の例としては、電子線発生手段を縦長状に配設し、この電子線発生手段の電子線照射窓を含みその前後部所要長さ範囲にわたり放射線不透過材により滅菌処理室を構成し、処理対象の容器を容器搬送手段によって、滅菌処理室の入口部から出口部にかけて立位姿勢で搬送し、しかも回転付与手段を備えて、容器には電子線発生手段の電子線照射窓に至る直前位置から通過し終えるまでの間自転を与え、小型化を図りながら容器の滅菌処理効果を高める電子線照射装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
更には、搬送手段によって正立した状態で滅菌処理室内に搬送される容器の内面を電子線照射で殺菌できるようにするため、電子線照射装置からの低エネルギーの電子線を、交流磁場で容器の搬送方向に沿って走査し、放射状ノズルで細分化して各容器内に順次注入することで、一つの電子線照射手段で多数の容器内面の滅菌を行うことができ、装置全体を小型化できる容器の殺菌方法及び装置も提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−268100号公報
【特許文献2】特開平11−1212号公報
【特許文献3】特開2002−104334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の電子線照射装置では、搬送手段により高速搬送されてくるプラスチック製ボトル等の被照射物は、電子線照射手段からの電子線で滅菌処理を連続して実施できる利点がある。しかし、高速で移動している各被照射物が、電子線の照射で確実に滅菌処理されているか否かの判定は、照射処理を行っている搬送ライン中で短時間に行うことが困難であった。
【0009】
被照射物に対する滅菌処理の検査を行うためには、専用の検査用被照射物を用い手検査するか、或いは搬送ラインから処理後の被照射物を抜き取って検査をすることも考えられる。しかし、このような検査の場合、万一電子線による滅菌処理が不十分と判定された場合には、結果が判明した時点までに処理済の被照射物を処分せねばならず、特に被照射物が食品関係の場合には、滅菌処理が不十分な製造した分を廃棄せねばならなくなる大きな問題となる。
【0010】
電子線による被照射物の滅菌処理は、電子線照射手段からの電子線の被照射物に対する照射状態や、搬送手段による被照射物移動状態や、自転機構による被照射物の回転状態によって大きく影響を受けるから、これらの状態を観察しないと滅菌処理の判定を適切に行えないため、短時間に滅菌処理の状態を判定する装置の開発が望まれている。
【0011】
本発明の目的は、高速搬送される食品容器や包装材等の被照射物を、電子線照射手段からの電子線によって滅菌処理する際、搬送中に被照射物の滅菌処理の状態を搬送中に短時間で判定できる電子線照射装置の性能判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電子線照射装置の性能判定装置は、照射処理槽に電子線照射手段を設け、搬送手段に設ける複数の保持機構にて保持する被照射物を順に前記照射処理槽内を搬送し、前記被照射物は前記電子線照射手段からの電子線により搬送中に滅菌処理する電子線照射装置であって、前記照射処理槽の側面に設けた観測窓に対向して、少なくとも前記被照射物の搬送状態を観測する撮影手段を配置し、かつ前記照射処理槽には電子線の照射状態の観測手段を有し、前記撮影手段からの出力と前記照射状態の観測手段からの出力を用いて前記被照射物の滅菌状態を判定する判定手段を備えて構成したことを特徴としている。
【0013】
好ましくは、前記搬送手段の保持機構には、被照射物の自転機構を備えると共に、前記照射処理槽の側面に設けた観測窓に対向して被照射物の自転状態を観測する撮影手段を備えることを特徴としている。
【0014】
また好ましくは、前記照射状態の観測手段には、前記照射処理槽に設けた観測窓に対向して配置する撮影手段を用いたことを特徴としている。更に好ましくは、前記照射状態の観測手段には、前記照射処理槽の内部に配置する電子線測定素子と測定器を有する電子線測定手段、或いは前記照射処理槽を取り囲むX線遮蔽体の内側に配置するX線検出器と測定器を有するX線測定手段を用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の如く電子線照射装置の性能判定装置を構成すれば、搬送手段によって高速搬送されてくる被照射物を、電子線照射手段からの電子線で滅菌処理するとき、被照射物の滅菌処理の状態を、被照射物の搬送中に短時間で判定することができる。したがって、判定結果を直ちに性能判定装置に反映することができるから、滅菌処理が不適の被照射物の処分や、装置の点検修理に役立てることができるため、滅菌処理工程の確認用として極めて効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の電子線照射装置の性能判定装置は、照射処理槽に電子線照射手段を設け、搬送手段に設ける複数の保持機構にて保持する被照射物を順に前記照射処理槽内を搬送し、前記被照射物を前記電子線照射手段からの電子線により搬送中に滅菌処理する電子線照射装置に用いられる。そして、前記照射処理槽の側面に設けた観測窓に対向して、少なくとも前記被照射物の搬送状態を観測する撮影手段を配置し、かつ前記照射処理槽には電子線の照射状態の観測手段を有している。しかも、撮影手段からの出力と照射状態の観測手段からの出力とを用いて前記被照射物の滅菌状態を判定する判定手段を備えている。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明を適用する図1(a)、(b)に示す回転搬送型の電子線照射装置を用いて説明する。この図1では、電子線で滅菌処理する被照射物となる容器の例として、プラスチック製ボトルで示している。中央に配置する照射処理槽10の側面部に隣接して、前処理ラインに連なる前圧力調整槽20と後処理ラインに連なる後圧力調整槽30を配置し、一体に連結している。
【0018】
各槽10、20、30内には、駆動機構(図示せず)により同期させて矢印で示すように回転させる搬送手段としての回転搬送体11、21、31を回転可能に配置し、これによって各槽の外壁面との間に、容器1を順に搬送する環状の搬送路を形成している。搬送手段となる各回転搬送体11、21、31は、その外面に容器1を保持して搬送する保持機構2を等間隔で多数設け、これによって容器1の前処理ラインから後処理ラインまでの間で、容器1が直立状態のまま順に円滑に受け渡しできる構成としている。
【0019】
照射処理槽10内は、内部を減圧するため耐圧の密封構造に構成し、この照射処理槽10に真空排気装置13を含む排気手段に連なる配管14を接続し、搬送する容器1の周囲の雰囲気を、所定の負圧状態に維持している。しかも、図2に示す如く照射処理槽10内の電子線照射室44となる容器1の搬送路に対応する上方に、電子線の電子線照射手段40を少なくとも一つ備えている。電子線照射手段40において所定の加速電圧で加速された電子線は、電子線照射窓43から減圧状態を維持した電子線照射室44に向けて照射され、高速で順に直立状態で搬送されてくる容器1を、電子線で連続して滅菌処理をする。
【0020】
照射処理槽10内が減圧された状態にあると、電子線照射室内での電子線の減衰が大幅に軽減されるので、後述するような低い加速電圧で加速した低エネルギーの電子線であっても、大気中に比べて電子の飛程(飛行距離)が長くなり、しかも電子線の発散量が少なく、電子線での被照射物の容器1に対する照射滅菌が効果的に行える。
【0021】
図1の例では、照射処理槽10内の負圧状態を効果的に維持可能にして電子線の照射を良好に行えるようにするため、容器1の搬入側である前処理ライン側、及び搬出側である後処理ラインに連なる前圧力調整槽20と後圧力調整槽30は、これら内の回転搬送体21、31に、それぞれ各保持機構2間を区分する隔壁3を突設している。これにより、回転搬送体21、31の回転移動時に、各保持機構2の両側の隔壁3と槽壁面との間で、小部屋となる複数の小区画22、32が形成される構造にしている。
【0022】
しかも、前圧力調整槽20側では、容器1を前工程ラインから取り込んだ位置から照射処理槽10に移動する範囲に存在する複数の小区画22を減圧するため、この範囲の壁面に、真空排気装置23を含む排気手段に連なる配管24の複数本を接続している。これによって、容器1が前工程ラインより前圧力調整槽20に搬入されてから照射処理槽10までの範囲の小区画22は、大気圧から所望の負圧までの状態となる圧力調整範囲としている。また、後圧力調整槽30側では、容器1を照射処理槽10から後工程ラインの位置に移動する範囲に形成される小区画32を減圧するため、同様にこの範囲の壁面に、真空排気装置33を含む排気手段に連なる配管34の複数本を接続している。これによって、照射処理槽10から後圧力調整槽30の後工程ラインに容器1が搬出されるまでの範囲の小区画32は、逆に所望の負圧から大気圧までの状態となる圧力調整範囲としている。
【0023】
なお、前圧力調整槽20や後圧力調整槽30における小区画32の減圧する範囲は、必要に応じて上記とは反対側、即ち前圧力調整槽20においては照射処理槽10から前工程ラインに移動する範囲の小区画32と、後圧力調整槽30においては照射処理槽10から後工程ラインに移動する範囲の小区画32とも、排気手段を設けて減圧することもできる。
【0024】
小区画22、32を形成させるための各隔壁3は、図1(b)に示すように各槽20、30の外壁との間に微小な間隙Gを有するように設けている。隔壁3は、照射処理槽10から前圧力調整槽20や後圧力調整槽30の大気開放側の各範囲に、複数個存在することになる。このため、複数個の隔壁3が、ラビリンスシール構造の働きと同様になり、照射処理槽10から大気圧の外部までの流路抵抗が大きくなるので、特別にシール等を使用することなく、照射処理槽10の負圧状態を維持することができる。当然のことながら、照射処理槽10に設ける排気手段の真空排気装置13の容量は、漏れ量を見込んだ容量とすることで、照射処理槽10内部を予め定めた負圧状態の範囲内に維持することができる。
【0025】
また、照射処理槽10や前圧力調整槽20及び後圧力調整槽30部分に、例えばドライポンプを用い、適切なフィルタを備えた清浄空気発生装置15からの配管16を接続し、内部に清浄空気を供給するように構成している。なお、清浄空気発生装置15の代りに、電子線の照射が良好に行えるガス雰囲気にするため、窒素ガスやヘリウムガス等やこれらの混合ガスを供給する各種のガス供給装置を接続することができる。
【0026】
上記の構成の電子線照射装置では、前工程ラインからの直立状態のまま前圧力調整槽20に送り込まれる容器1は、順に前圧力調整槽20から照射処理槽10を経て、後圧力調整槽30から後工程ラインに搬出されるが、途中の照射処理槽10部分の負圧雰囲気内で、電子線照射手段40からの電子線照射による滅菌処理を受ける。この際、前圧力調整槽20内の回転搬送体21が時計方向に回転すると、容器1の前工程ラインより前圧力調整槽20への取り込み位置から、照射処理槽10に近づく範囲に形成されて内部に容器30を保持している小区画22は、排気手段によって大気圧から少しずつ減圧された状態となり、照射処理槽10内の回転搬送体11に移動したときには、照射処理槽10と略同じ負圧となる。
【0027】
また逆に、後圧力調整槽30内の回転搬送体31が時計方向に回転し、容器1が照射処理槽10から後工程ラインへの排出位置に近づく範囲に形成されて内部に容器30を保持している小区画32では、排気手段によって照射処理槽10内の負圧状態から少しずつ大気圧に近づく状態になり、後工程ライン側に容器1を排出する時点では大気圧になる。
【0028】
上記のように電子線照射装置を構成しているので、照射処理槽10と前圧力調整槽20及び後圧力調整槽30で、各槽内部の圧力管理を別個に適切に管理できるから、負圧に維持する照射処理槽10内で、加速電圧が低くて低エネルギーの電子線照射手段40を使用して、電子線による容器1の滅菌処理を効果的に行うことができる。
【0029】
照射処理槽10の上部に取り付ける各電子線照射手段40は、例えば図2に示す如く10−5Paのような高真空にする電子線発生室41内に、電子線ユニット42を配置している。電子線ユニット42部分で発生した電子線EBを、円形やスリット状に形成した電子線照射窓43から、負圧状態に維持した下方の電子線照射室44となる搬送路に向けて照射し、回転搬送体11の各保持機構2により直立保持されて移動すると共に、保持機構2部分に設ける自転機構(図示せず)により回転させられる容器1は、その内外面が搬送中に電子線EBの照射を受けて滅菌処理される。電子線発生手段40は、少なくとも一つの電子線ユニット42を備えて、照射処理槽10の上部に取り付けている。
【0030】
電子線EBによる容器1の滅菌処理した状態を、搬送中に確認できるようにするため、本発明により図3(a)、(b)に示すように照射処理槽10には、その側面に複数の観測窓50を設けている。そして、各観測窓50に対向するように容器1の搬送状態を観測する撮影手段51や、容器1の自転状態を観測する撮影手段52や、電子線の照射状態の観測手段53を配置している。
【0031】
撮影手段51、52は、光源51aや52aを備えるビデオカメラ等が使用され、観測窓50を通して照射処理槽10内を移動する各容器1を撮影可能に適切に配置する。撮影手段51は、撮影画像を活用して各容器1が直立状態を適正に維持して搬送されているかを観測するために使用する。また撮影手段52は、1台又は後述するように2台一組にして用いて、一定時間を置いて撮影した少なくとも2枚の撮影画像を活用し、各容器1が搬送時に適正に自転(回転)している観測するために使用する 更に観測手段53は、図3では撮影手段51、52と同様にビデオカメラを使用した例であり、各容器1を電子線で照射処理したときの発光状態を撮影し、この撮影画像を活用して、各容器1が電子線の照射で適切に滅菌処理されているかどうかを観測するために使用する。
【0032】
なお、撮影手段51、52や観測手段53の図3(a)に示す配置は一例であって、この配置に限られるものではなく、必要に応じて適宜配置や組み合せを変更し、容器1の滅菌処理の判定に利用することができる。
【0033】
撮影手段51、52や観測手段53は、それぞれ判定手段54の処理部55と接続し、これらからの画像データを処理した後、判定部56において出力データを用いて、容器1の搬送状態、回転状態、電子線の照射状態から、容器1の滅菌処理の状態を判定する。
【0034】
撮影手段51で被照射物である容器1の撮影を行い、ここで撮影した画像は、図4(a)に示すように処理部55に運搬画像を入力して必要な処理を施し、この画像データと予めデータベースDBに保存してある正常運搬時の画像設定データとを用い、判定部54で搬送状態の比較判定を行って、異常のときには搬送状態の異常検出の出力をする。
【0035】
また、撮影手段52でも、被照射物である同一の容器1に対し、図4(b)に示す如く定めた間隔で少なくとも2回の撮影を行って得た画像A、Bも同様に、処理部55に入力して処理し、その後判定部54において両画像A、Bのデータを比較して容器1の回転状態の判定を行い、異常のときには回転状態の異常検出の出力をする。
【0036】
観測手段53では、図4(c)に示すように電子線の照射状態を撮影した画像も上記と同様に、処理部55に入力して処理し、この画像データと予めデータベースDBに保存してある正常照射時の画像設定データとを用いて、判定部54で照射状態の判定を行い、異常のときには照射状態の異常検出の出力をする。
【0037】
判定手段54における判定の結果に基づく各容器1の滅菌処理の状態は、上位の制御装置(図示せず)に伝えられ、制御装置からの指示で滅菌処理不適の容器1の搬送ラインからの排出、或いは電子線照射装置が稼動停止され、必要個所の点検修理を実施する。
【0038】
判定手段54における滅菌処理の状態を判定は、少なくとも搬送状態を観測する撮影手段51と電子線の照射状態を観測する観測手段53を使用し、これら2つの出力データが、全て正常値であるときに容器1の滅菌処理が適切にされていると判定する。各出力データが正常値のとき適切との判定は当然であるが、撮影等の各手段が増して観測データ数が増加するときには、出力データの組み合せに応じて判定レベルを変えることもできる。最も重要な判定を行わなければならないのは電子線の照射状態であるから、照射状態が許容範囲内である、例えば容器1が回転移送体11の保持機構2で垂直状態より少し傾いて保持しての搬送をなされてはいるが、容器1に対する電子線の照射もある程度行われていると判断されるときには、適切と判定する設定でき、他の出力データでの判定も同様に検査する被照射物に応じて適宜変更することもできる。
【0039】
図5に示す例では、上記の実施例のように観測手段53に撮影手段を使用する代りに、照射処理槽10の下方に配置する電子線測定素子57と、及びこれに接続する電子線の測定器58とで電子線測定手段を構成し、これを照射状態の観測手段として活用したものである。この構成を観測手段とした場合、各容器1に対する電子線の照射状態の判定は、図6の如く電子線測定素子57では内部で容器1が通過する度に、間歇的に電子線の直接照射を受けるから、このとき生ずる電流等の出力を電子線の測定器58に出力し、この出力値と予めデータベースDBに保存した管理値範囲の設定データとのデータ比較を行い、管理値範囲外であるときには容器1に対する照射状態の異常検出と出力する。
【0040】
また、図7に示す例は、通常の電子線照射装置で照射処理槽10の外面を取り囲むように配置するステンレス鋼材と鉛板等のX線遮蔽体61を配置する構造に適用し、X線遮蔽体61の内側に配置するX線検出器60と、これに接続するX線の測定器61にてX線測定手段を構成し、これを照射状態の観測手段として用いたものである。この構成を観測手段とした場合には、図8に示す如く電子線を照射するときに発生して照射処理槽10から漏れ出てくるX線を、X線検出器60で受けたときに発生する電圧出力を測定器に出力し、この出力値と予めデータベースDBに保存した管理値範囲の設定データとのデータ比較を同様に行って判定し、管理値範囲外であるときは容器1に対する照射状態の異常検出と出力する。
【0041】
更に、図9に示す例は、自転状態を観測する撮影手段の別の例を示しており、照射処理槽10に設けた各観測窓50にそれぞれビデオカメラ52a、52b等を配置し、この2台1組で撮影手段52を構成したものである。このように複数のビデオカメラ52a、52bを用いるときには、回転搬送体11の回転軸11aと同軸上にエンコーダ62を設け、エンコーダ62に回転搬送体11の保持機構2と対応するように同数を形成している各突起63が、回転してくる度に出力する近接センサ64を配設しており、近接センサ64の出力信号を活用して特定の容器1をビデオカメラ52aで撮影し、近接センサ64の出力信号のから一定時間Td後の信号を出力する信号発生器65を用い、その信号を受けて移動してくる同一の対象容器1をビデオカメラ52bで撮影を行い、各ビデオカメラ52a、52bで得て処理した画像の比較により、容器1の自転状態を観測することができる。
【0042】
通常、自転機構による被照射物である容器1の自転回数は、電子線照射手段から照射する照射処理槽10中における移送長さをAとすると、2回転/Aであるから、異なる観測窓50に配置するビデオカメラ52a、52bで撮影した各画像を用いても、自転状態を良好に観測することができる。
【0043】
電子線の照射状況を観測する観測手段は、図5のようにする代りに図10(a)、(b)に示すように構成することもできる。この図10の例では、観測手段となる電子線測定手段は、回転搬送体11に一端を固定して各保持機構2の上方まで伸びる取付板66を設け、各取付板66の上面、つまり容器1を保持する保持機構2上方位置となる上面に、電流測定素子67を配置し、各電流測定素子67は回転軸11a部分に設ける回転ユニオン11bを活用して、照射処理槽10外に配置した測定器68と接続を行って構成している。
【0044】
この図10の構成では、回転搬送体11と保持機構2と取付板66は、一体となって一緒に回転する。このため、取付板66上面の電流測定素子67は、電子線照射手段の電子線の照射個所を通過する度に出力するので、この出力を測定器68に出力し、ここで出力値と予め設定した管理値範囲の設定データとの比較を行って、電子線照射の状態を判定出力する。
【0045】
電流測定素子67は、図10の例では全ての取付板66に配置した例で示しているが、これに限られるものではなく、電子線照射手段から電子線の照射を受ける範囲内に、少なくとも一つの電流測定素子67が存在するように、複数個を選択した取付板66に分散して配置することができる。例えば、図1のように照射処理槽10における円形搬送路中で、電子線照射手段40から電子線の照射を受ける範囲が、約90度の範囲である場合は4個以上の電流測定素子67を、また約180度であれば2個以上の電流測定素子67を、所定の取付板66上に分散して配置し、照射を受ける範囲内に存在させたいずれかの電流測定素子67が、電子線照射を受けて出力するように構成する。
【0046】
なお、図5及び図7では、容器1の搬送状態を観測や自転状態を観測する各撮影手段を省略して示し、図9及び図10では容器1の搬送状態を観測する撮影手段と、容器1の照射状態の観測する観測手段を省略して示している。
【0047】
また、上記の実施例の説明では、被照射物である容器を回転搬送体で搬送する構造の電子線照射装置に適用した例で説明したが、本発明はこのような搬送構造に限ることはなく、種々の構造の電子線照射装置に適用することができる。例えば、搬送手段により被照射物を略直線状に搬送する構造に適用し、この電子線の照射処理槽部分に、被照射物の搬送状態を観測する撮影手段、被照射物の自転状態を観測する撮影手段、電子線の照射状態の観測手段を設けて構成しても同様な効果を達成できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を適用する例である容器の滅菌に用いる電子線照射装置の原理を示す概略図である。
【図2】本発明の開口容器用電子線照射装置に用いる電子線照射手段部分の一例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施例である電子線照射装置の性能判定装置の要部を示す概略縦断面図である。
【図4】図3の性能判定装置に用いる各撮像手段の処理フロー図である。
【図5】本発明の電子線照射装置の性能判定装置に用いる電子線観測手段の例を示す概略縦断面図である。
【図6】図5の電子線観測手段の処理フロー図である。
【図7】本発明の電子線照射装置の性能判定装置に用いるX線観測手段の例を示す概略縦断面図である。
【図8】図7のX線観測手段の処理フロー図である。
【図9】本発明の電子線照射装置の性能判定装置用いる自転観測手段の別の例を示す概略縦断面図である。
【図10】本発明の電子線照射装置の性能判定装置用いる別の電子線観測手段の例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…容器、2…保持機構、10…照射処理槽、11…回転搬送体、40…電子線照射手段、44…電子線照射室、50…観測窓、51、52…撮影手段、53…観察手段、54…判定手段、57、67…電子線測定素子、58、61、68…測定器、59…X線遮蔽体、60…X線検出器、67…取付板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射処理槽に電子線照射手段を設け、搬送手段に設ける複数の保持機構にて保持する被照射物を順に前記照射処理槽内を搬送し、前記被照射物は前記電子線照射手段からの電子線により搬送中に滅菌処理する電子線照射装置であって、前記照射処理槽の側面に設けた観測窓に対向して、少なくとも前記被照射物の搬送状態を観測する撮影手段を配置し、かつ前記照射処理槽には電子線の照射状態の観測手段を有し、前記撮影手段からの出力と前記照射状態の観測手段からの出力を用いて前記被照射物の滅菌状態を判定する判定手段を備えて構成したことを特徴とする電子線照射装置の性能判定装置。
【請求項2】
請求項1において、前記搬送手段の保持機構には被照射物の自転機構を備えると共に、前記照射処理槽の側面に設けた観測窓に対向して被照射物の自転状態を観測する撮影手段を備えることを特徴とする電子線照射装置の性能判定装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記照射状態の観測手段には、前記照射処理槽に設けた観測窓に対向して配置する撮影手段を用いたことを特徴とする電子線照射装置の性能判定装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記照射状態の観測手段には、前記照射処理槽の内部に配置する電子線測定素子と測定器を有する電子線測定手段を用いたことを特徴とする電子線照射装置の性能判定装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、前記照射状態の観測手段には、前記照射処理槽を取り囲むX線遮蔽体の内側に近傍に配置するX線検出器と測定器を有するX線測定手段を用いたことを特徴とする電子線照射装置の性能判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−150091(P2008−150091A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342017(P2006−342017)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】