電子血圧計
【課題】測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる電子血圧計を提供する。
【解決手段】電子血圧計1の腕帯部2は、空気を供給することで上腕を加圧可能な空気袋14と、空気袋の内側であって上腕の手指側の位置に配置され、空気袋14の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数の小空気袋500とを有し、空気袋14が上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる小空気袋500内の空気の変動を検知してK音信号を検出するためのセンサ600を有する。
【解決手段】電子血圧計1の腕帯部2は、空気を供給することで上腕を加圧可能な空気袋14と、空気袋の内側であって上腕の手指側の位置に配置され、空気袋14の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数の小空気袋500とを有し、空気袋14が上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる小空気袋500内の空気の変動を検知してK音信号を検出するためのセンサ600を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子血圧計に関し、特に血圧計本体から腕帯部を分離でき、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプの電子血圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、精神的に安定している家庭にて一人で測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭血圧測定に用いる一人で測定するタイプの電子血圧計が注目されている。
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の空気袋を腕の正しい位置に配置し、正しい巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計が開発されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、使用者が上記血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が測定者から離れていた場合には、測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果、血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇を、新たな擬似高血圧症の発生として、指摘されている。
そこで、このような擬似高血圧症の発生という不都合に対応するために、血圧計本体から腕帯部が分離できて、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者が座位にて背を伸ばした状態で腹圧の掛からない測定をすることが可能なタイプの電子血圧計が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電子血圧計では、最高血圧以上に腕帯部の内圧を上げて、上腕橈骨動脈を阻血した後、腕帯部の内圧を徐々に減圧し、腕帯部の内圧が最高血圧以下になると発生する腕帯部の末梢側への血流を腕帯部の下流側に配置したセンサで検出し、その時の腕帯部の内圧を最高血圧値と測定する。また、腕帯部の内圧を徐々に減圧していくと、心臓の収縮、拡張を1心周期とすると、腕帯部による上腕動脈を圧閉する時間が徐々に短くなり、圧閉する時間がゼロになり、上腕の腕帯部下の橈骨動脈に閉塞が無くなったことを急な空気振動の減衰で検出し、その時の腕帯内圧を最低血圧値と測定する方式を採用している。
この場合に、使用するセンサは腕帯部の下流側の橈骨動脈上の振動を高感度で捉える必要がある。とくに、上述の電子血圧計は、細い腕の場合には、腕帯部の空気袋が内側に大きく膨らみ上腕を圧迫することで適用腕範囲幅を広くとる構造をとっており、細い腕の場合には空気袋の膨らみ方のバラツキからセンサの上腕への密着がうまく行えない場合があり、上記の傾向が発生しやすくなっていた。
また、腕帯部の空気袋は上腕動脈を的確に加圧する必要があるが、空気袋と上腕との間にリジッドなセンサが存在する。このセンサとして変位型の圧電セラミックスセンサを用いた場合には、上腕との接触面は直径が約30mmのリジッドな金属ダイアフラムを持ち、かつ数ミリの厚みの金属ケ−スを有した構造となっている。このため、上腕が細い測定者の場合には、センサが配置されているために空気袋と上腕との密着性が悪くなり、センサに対する振動の伝達が悪いので検出感度が悪くなっていた。
本発明は、上記課題を解決するするためになされたものであり、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕を腕帯部に挿入しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕が腕帯部に挿入された場合でも、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる電子血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子血圧計は、上腕で測定する電子血圧計で、筒状の腕帯部と、該腕帯部と本体と別体に形成された血圧計本体とを有し、前記腕帯部は、空気を供給することで前記上腕を加圧可能な空気袋と、前記空気袋の内側であって前記上腕の手指側の位置に配置され、前記空気袋の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数の小空気袋とを備えており、前記空気袋が前記上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる前記小空気袋内の空気の変動を検知してK音信号を検出するためのセンサを有することを特徴とする。
上記構成によれば、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、例えば測定者の腕が細い場合でも空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる。
すなわち、複数の小空気袋が、空気袋の内側面に配置され、小空気袋が上腕の動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。しかも小空気袋内の空気振動は、センサにより検出して、K音信号を得ることができる。従って、測定者が上腕に腕帯部を通した際に、腕帯部が上腕に対して正しい位置から上腕の周囲方向に回転した状態で上腕に通されても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通しても、いずれかの小空気袋は、上腕の動脈の位置に当てて配置できるので、正確にK音信号を得ることができ、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる。複数の圧電マイクロフォンを用いずに、複数の小空気袋と安価なセンサを用いるだけで済む。
【0007】
好ましくは、前記空気袋の内面を覆う筒体でなり、前記上腕の被測定面に当接する当接布部と、前記空気袋を収容するように前記当接布部の外側に接合される外側部材と、を有し、前記当接布部は、変形可能で伸縮性を有し、前記外側部材は、変形可能であるが前記当接布部よりも伸縮性の低い布部材で形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、腕帯部全体の型保持性を担うとともに、折り畳むこともできることで、使いやすくコンパクトな腕帯部を有する電子血圧計を提供できる。
【0008】
好ましくは、前記空気袋と前記小空気袋にそれぞれ接続されたチューブと、各前記チューブを通じて前記空気袋と前記小空気袋にそれぞれ空気を送るためのポンプとを有し、前記ポンプは、前記血圧計本体に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋と小空気袋は、それぞれ別のチューブを通じてポンプから空気を供給でき、空気袋から小空気袋側に空気を供給する方式ではないので、空気袋内の空気が小空気袋の内側に空気が流入することが全くない。従って、小空気袋内の空気の圧力の変化を正確にチューブを通じてセンサに伝えることができ、複数の小空気袋とチューブとセンサを用いて、K音検出をより正確に行うことができる。
【0009】
好ましくは、前記空気袋は、折り畳むために複数の折り曲げ部分を有し、前記小空気袋は、複数の前記折り曲げ部分の間に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋を含む腕帯部は、小空気袋の配置に影響を受けずに折り曲げ部分において確実に折り畳むことができ、コンパクトに収納できる。
好ましくは、前記外側部材の内側には、骨部材が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋に空気が供給された時に、腕帯部の外側部材が外側に膨れる現象を防止することができ、正確な血圧測定が行える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定者によって腕の太さにばらつきがあったとしても、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる電子血圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図である。
【図2】電子血圧計の腕帯部の分解斜視図である。
【図3】電子血圧計の腕帯部の内部構造を示す断面図である。
【図4】外布の内側に配置された骨部材の形状例を示す図である。
【図5】骨部材を有する腕帯部を示す側面図である。
【図6】図6(A)は、外布と空気袋のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを別の方向から見た斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
【図7】図7(A)は、空気袋と2つの小空気袋を示す斜視図であり、図7(B)は、空気袋と外布と内布カバーと、2つの小空気袋を示す図である。
【図8】空気袋を形成するシート例を示す図である。
【図9】小空気袋を示す図である。
【図10】空気袋と小空気袋と、ポンプと、コンデンサマイクロフォン等の接続関係を示すブロック図である。
【図11】電子血圧計のブロック構成図である。
【図12】電子血圧計の動作例を示すフロー図である。
【図13】電子血圧計の動作例を示すフロー図である。
【図14】本発明の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
(血圧計の全体の構成説明)
図1は、本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図である。
図1に示す電子血圧計1は、血圧計本体10から腕帯部2を分離でき、腕帯部と本体部が一体となった一体型血圧計と違い、座位にて測定するときに血圧計本体10の設置場所が測定者から前方に離れていても、測定者は背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプの電子血圧計である。腕帯部は図1に示すように変形可能で柔らかな材質で作られソフトな筒体の腕帯部2を備える。
【0013】
図1および図11に示すように、この電子血圧計1は、測定者の腕Tに腕帯部2の挿入開口11Rから手を挿入し肘より上の上腕部に腕帯を保持し、血圧を測定する血圧計である。腕帯部2と血圧計本体10とが、腕帯部2の「上腕を加圧可能な空気袋」としての阻血用空気袋14への給排気用のエア−導管4と、「小空気袋」としてのK音信号を検出する2つのK音検出用空気袋に接続したエア−導管4Pとを併設した複胴管(複導管ともいう)のエラストマーチューブにより、本体と脱着可能なエア−コネクタ4Q(図1参照)を介して接続されている。
腕帯部2の阻血用空気袋14は、エア−導管4を通じて、血圧計本体10の圧力センサ−64、および、ポンプ44,45および排気弁46、制御弁47に接続されている。腕帯部2の2つのK音検出用空気袋500は、それぞれの配管を合体してエア−導管4Pを通じて、血圧計本体10のコンデンサマイクロフォン600に接続されている。
また、阻血用空気袋14および圧力センサ−および加減圧おこなうポンプおよび減圧弁等の配管系とK音検出用空気袋およびコンデンサマイクロフォンの配管系とは、ポンプの脈動の防止およびK音検出用空気袋への少量のエア−の供給を行うためのメカニカルフィルタ-700を介して接続されている。
制御システム56(CPU)は、血圧測定の 一連の動作を行うプログラムを内蔵し、かつ、ワークエリアとして使用するメモリ部69と、プログラムを動かすタイマ59を内蔵し、かつ、駆動部66、67、62をアクセスし、空気袋の加減圧制御、および、空気袋圧力値の測定、表示、コンデンサマイクロフォンによるK音の検出、および、収縮期血圧および拡張期血圧の測定を行い、表示部31に表示する一連の動作を行うCPUである。また、電子血圧計1は、これらを動かす電池68、および、電源をON/OFF制御する電源コントロ−ル部69Cを持っている。
【0014】
(図2において、腕帯部の構成を説明する)
図2に示すように、外布16は、例えば、4つの側面部16Rを有しており、例えば、4つの折り目部分16Mにおいて簡単に折り畳むことができる。図3に示すように、外布16の内側面の両端部分は、阻血用空気袋14を収容するように内布17の外側面の両端部分に対して、両側の接合部分77において接合されている。
図2に示すように、外布16の4つの折り目部分16Mと、阻血用空気袋14の4つの折れ線部分(折り曲げ部分)222が、容易に折り畳むことができるように、互いに重なる位置にある。これらの外布16の4つの折り目部分16Mと、阻血用空気袋14の4つの折れ線部分(折り曲げ部分)222は、図1の上腕Tを通す方向であるD1方向に沿って形成されている。これにより、腕帯部2は、外布16の4つの折り目部分16Mと、阻血用空気袋14の4つの折れ線部分(折り曲げ部分)222を用いて、簡単に小さく折り畳むことができる。
図2に示す外布16の4つの折り目部分16Mは、隣接する側面部16Rの接続部分に形成されており、例えば4つの折り目部分16Mの厚みは、例えば融着等により側面部16Rの厚みに比べて薄く形成されている。
すなわち、折り目部分16Mを形成するために、材料の厚みを線状に薄くしたり、部分的に弱い線状の脆弱部を形成したり、厚みは変化がなくても、予め折りクセを形成しておく等の処理を施すと好ましい。
外布16は、阻血用空気袋14を収容するように当接布部である内布17の外側に接合され、外布16は、変形可能であるが伸縮性が非常に低いかほとんど無い布部材である例えば伸びにくい生地(201BE)を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが1445N/inで、ヨコが827N/inである。外布16としては、例えば、ポリエステル100%の生地を用いることができる(図の修正不要か)。
内布17は、空気袋14の内面を覆う筒体でなり変形可能で伸縮性を有し、上腕Tの被測定面に当接する当接布部である。内布17は、弾性を備えていてしかも伸縮性を有する布部材である例えば伸びやすい生地を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが94.9N/inで、ヨコが150.7N/inである。引張伸度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが517%で、ヨコが400%である。内布としては、例えば、ナイロン80%、ポリウレタン20%の生地である。
【0015】
また、図3に示すように、外側部材である外布16の上腕Tを通す方向D1に沿った幅Sから、阻血用空気袋14の上腕を通す方向D1に沿った幅Wを引いた値は、好ましくは4cm以下である。このように、(幅S−幅W)の値を4cm以下に設定するのは、阻血用空気袋14の膨張をおさえ、膨張時の上腕への阻血用空気袋のラジアル方向とスラスト方向の密着面積を大きくするためである。
内布17は、阻血用空気袋14が膨張できるように伸縮性を持たせた素材にて、かつ、腕帯を手先から挿入して、肘の上部の上腕部までスライドさせる必要があるので、スベリの良い、例えば、ジャ−ジ素材を使用している。
一方、図2に示すように、外布16は、簡単に折り畳むことができる柔軟性を有する。
図3に示すように、外布16の内側面の長手方向の両端部分は、阻血用空気袋14を収容できるように内布17の長手方向の両端部の外側面に対して、77において接着または縫製または融着により接合されている。
また、外布と内布の短端は、両布にて空気袋が収納可能なド−ナツ状の空間を作るように、外布1端と外布の他端を、内布1端と内布の他端をつなぐように縫製している。
【0016】
次に、図4と図5を参照して、外布16の内側に配置された骨部材150について説明する。
図4は、外布16の内側に配置された骨部材150の形状例を示し、図5は、骨部材150を有する腕帯部2を示す側面図である。
図4に示すように外布16の内面16Nには、骨部材150が例えば接着剤により固定されている。この骨部材150は、有している。各骨150Hは、外布16の短手方向16Tに平行になるように同じFeまたはSUS等の硬質金属製材料あるいはガラス繊維入りのナイロン樹脂等の硬質のプラスチック成型品であり、外布16の長手方向16Sに沿って配置されており、骨部材150は、複数本の骨150Hを間隔をおいて配列されている。各骨150Hは、断面円形状あるいは断面矩形形状であるが、断面形状や本数は特に限定されない。
【0017】
(阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500の構造例の説明)
図8は、阻血用空気袋14を形成するためのシート例を示している。
まず、阻血用空気袋14の構造を説明すると、図8に示すシートSWは、ほぼ長方形状の例えば透明のプラスチックシートであり、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。このシートSWは、フィルタ付き接続管220、4つの折れ線部分(折り曲げ部分の一例)222、接合部分223,224を有している。
接続管220は、図1に示すエア−導管4の空気袋への導管端部を接続する。接合部分223,224は高周波融着により接合して阻血用空気袋14を形成する。
シートSWは膨らんだときに定位置にシワができるように、シ−ト肉厚を薄くするよう金属電極にて熱を掛けて挟んで押すことで222の部分をつくることにより、膨張時に図7に示す形状の阻血用空気袋14を形成できる。
図8に示すように、空気袋14の内部には、空気袋14の空気容量をできるだけ少なくしてポンプ44,45から供給するべきエアーの量を減らすために伸縮可能なクッション材240が配置されている。
また、阻血用空気袋14の222は、保管時に腕帯を折りたたむための折り曲げ部分となる。クッション材240とK音検出用空気袋500は、複数の折り曲げ部分222を逃げるために折り曲げ部分222の中間に配置されている。
ここで、測定者の上腕の腕周長が、18cm〜33cmの範囲である場合に、図8(B)において小空気袋500の寸法例をあげる。この場合には、例えば長手方向C1の小空気袋500の長さS3が、4cm〜6cmであり、C2方向の小空気袋500の幅S2が1cm〜4cmであり、そして阻血用空気袋14の端部からの小空気袋500の配置距離S1が、0.5cm〜5cmである。
【0018】
図9は、このK音検出用空気袋500の構造例を拡大して示しており、複数の小空気袋500が、空気袋14の内面部分14F、14Gに配置され、しかもK音検出用空気袋500が上腕Tの動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。K音検出用空気袋500は、測定者の上腕Tの被測定面HMに密着して上腕Tの動脈に対応させるようになっている。
図9に示すように、K音検出用空気袋500の材質は、例えば空気袋14と同じ材質のものを使用でき、K音検出用空気袋500は長方形状を有している。K音検出用空気袋500の4つの辺部分501,502,503,504は、例えば融着により密閉されており、空気収容部509を有する。辺部分501には、チューブ4Pの一端部506が挿入して固定されている。チューブ4Pの他端部507は、コンデンサマイクロフォン600に接続されている。チューブ4Pは、チューブ4Rとメカニカルフィルタ700と配管路63を介して、ポンプ44,45に接続されている。
ポンプ44,45からK音検出用空気袋500に対して空気を供給すると、K音検出用空気袋500内の空気が動脈の動きを空気振動に変えてチューブ4Pを通じて、K音を検出するセンサの一例であるコンデンサマイクロフォン600に伝えることができる。コンデンサマイクロフォン600はこの空気振動を電気信号に変換してK音信号を得ることができる。コンデンサマイクロフォン600とポンプ44,45は、血圧計本体10側に配置されており、チューブ4Pは、図1に示すように、有線3とチューブ4とともに、腕帯部2側から血圧計本体10側に接続されている。
このように、阻血用空気袋14とポンプ44,45は、チューブ4により接続されているが、2つのK音検出用空気袋500とコンデンサマイクロフォン600とポンプ44,45は、チューブ4とは別のチューブ4Pにより接続されている。しかも、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500は、別体であり、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500は互いに接続されておらず、両者間には空気の流通はない。阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500は、それぞれ別のチューブ4,4Pを通じて、ポンプ44,45から空気を供給することができる。このため、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500がつながっており両者の間で空気の流通がある場合に比べて、阻血用空気袋14に空気を供給して上腕を加圧する際に、該阻血用空気袋14内の空気がK音検出用空気袋500内側に流入することが全くない。従って、K音検出用空気袋500内の空気は阻血用空気袋14内の空気により影響を受けないので、K音検出用空気袋500内の空気の圧力の変化は、正確にチューブ4Pを通じてコンデンサマイクロフォン600に伝えることができる。従って、K音検出用空気袋500とチューブ4Pとコンデンサマイクロフォン600を用いて、K音検出をより正確に行うことができる。
【0019】
実際に4つ折りの状態を図6に示す。図6(A)は、外布16と阻血用空気袋14のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを2つ折りにした斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを4つ折に折りたたんだ状態を示す斜視図である。
図6(C)に示すように外布1および外布2が柔らかい布でできているので、簡単に折りたたむことができる構造である。
【0020】
図7と図8に示すように、阻血用空気袋14の内側面14G、14Fの熱押し部の中間部位には、それぞれK音検出用空気袋500が、例えば両面粘着テ−プまたは接着剤により固定されている。
K音検出用空気袋500が阻血用空気袋14の内側面に少なくとも2つ配置されているのは、左右の腕で測定が行われるようにするためである。腕帯に接続されているエア−導管の出口を上腕の上面部に位置させて、測定者が上腕Tを腕帯部2内に挿入した際に、小空気袋が上腕動脈上に位置するためである。また、このK音検出用空気袋の装着位置は、動脈の位置からラジアル方向にずれて装着した場合でも、一方が、上腕TのK音の伝達効率が高い上腕筋部位に配置できるようにするためである。
【0021】
図7(A)は、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500を示す斜視図であり、図7(B)は、阻血用空気袋14と外布16と内布17とK音検出用空気袋500を示す図である。図7に示すように、2つK音検出用空気袋500が阻血用空気袋14の内面側に取り付けられ、2つのK音検出用空気袋500は互いに向かい合っている。
【0022】
図9は、このK音検出空気袋500の構造例を拡大して示しており、複数のK音検出用空気袋500が、阻血用空気袋14の内面部分14F、14Gに配置され、しかもK音検出用空気袋500が上腕Tの動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。
図9に示すように、K音検出用空気袋500の材質は、例えば阻血用空気袋14と同じ材質のものを使用でき、K音検出用空気袋500は長方形状を有している。K音検出用空気袋500の4つの辺部分501,502,503,504は、例えば融着により密閉されている。また、配管用チュ−ブ506を辺部分501に融着固定している。
エア−導管4Pの他端部507は、コンデンサマイクロフォン600に接続されている。エア−導管4Pは、メカニカルフィルタ700を介して配管路63にて、阻血用空気袋14および排気バルブ46、制御バルブ、ポンプ44,45と接続されている。
メカニカルフィルタ−は流体抵抗となる細管とコンプライアンスとなる空気タンクから構成され、ポンプ44、45と制御バルブの脈動成分の排除と、K音検出用空気袋が測定時に必要となる少量の空気吹き込みを目的にしている。メカニカルフィルタ700を介して供給している。
【0023】
次に、図10を参照して、上述した空気袋14と小空気袋500と、ポンプ44,45と、コンデンサマイクロフォン600等の接続関係を説明する。
図10に示すように、コロトコフ音(K音)検出システム50は、腕帯部2の2つの小空気袋500と、1つのコンデンサマイクロフォン600と、メカニカルフィルタ700を有している。2つの小空気袋500は、チューブ4Pを介して1つのコンデンサマイクロフォン600に接続されており、小空気袋500内の空気の圧力変動は、小空気袋500からチューブ4Pを通じてコンデンサマイクロフォン600に伝わるようになっている。空気袋14のチューブ63は、チューブとメカニカルフィルタ700とチューブ4Pを介して小空気袋500側に接続されており、空気袋14に空気を供給する際には小空気袋500にも空気を供給して空気袋14と小空気袋500を上腕に対して密着させるようになっている。これにより、コンデンサマイクロフォン600により小空気袋500内の空気の圧力変動の感度を得ることができる。
【0024】
コンデンサマイクロフォン600は、チューブ4Rを介してメカニカルフィルタ700に接続されている。このメカニカルフィルタ700は、圧力センサ64と、ポンプ44,45と、排気バルブ46、制御バルブ47に対して、配管部63を介して接続されている。圧力センサ64と、ポンプ44,45と、排気バルブ46、制御バルブ47は、制御システム56に指令により動作する。
図10のメカニカルフィルタ700は、排気バルブ46の制御音と制御バルブ47の制御音と、ポンプ44,45の脈動音動作を排除して、コンデンサマイクロフォン600の検出信号に影響を与えないようにするために配置されている。2つの小空気袋500は、上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置に配置することができる。
【0025】
(電子血圧計動作例)
次に、血圧測定の動作の1例について、図12、図13に説明する。
開始SWをONすると、S101にて排気弁46および制御弁47を開にして阻血用空気袋14の残空気を排出する。S102にて阻血用空気袋14の残圧がないことを圧力値の減衰変化量で検出し、変化が規定値以下であると、S103にて圧力のゼロセットを行う。S104にて排気弁46および制御弁47を閉にする。S105にて加圧ポンプ44、45をONする。S106にて圧力値が予め設定しておいた予想される収縮期血圧値より30から40mmHg高い圧力値に到ったかがチェックされる。設定圧に到ったら、S107にて加圧ポンプ44、45を停止する。S108にて制御バルブにより3から5mmHg/秒にて減圧するように減圧制御を開始する。S109にて検出した圧力信号に重畳している脈波の検出を開始する。また、S110にてコンデンサマイク60の信号からK音の検出を開始する。図示していないが脈波とK音は同期して発生するので、両信号の同期をK音検出の条件として、K音の検出を行う。また、検出した脈波とK音と圧力値は組にして記録を開始する(図12参照)。
図13を参照する。
S111にてはじめてのK音が検出されたら、そのときの圧力値を収縮期血圧値として決定し記録する。
さらに、減圧を進め、S113にてK音が消失したことを、連続して2拍消失したことで検出し、最後のK音発生のタイミングの圧力値を拡張期血圧値として決定し記憶する。 S115にて排気弁46と制御弁47を開にしてカフ内の空気を排出する。S116にて今まで検出した脈波数と測定時間から脈拍数を計算し記録する。S117にて記録した収縮期血圧値、拡張期血圧値、脈波数を表示部31に表示して一連の血圧測定を終了する(図13参照)。
このように、電子血圧計1では、腕帯部2内をポンプ44,45で加圧した後、微速度で排気して減圧しつつ圧力センサ64を用いて腕帯部2の空気袋14内の圧力を検出すると同時に、コンデンサマイクロフォン600を用いてK音信号を検出して、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。
制御システム56は、加圧して血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時の最初のK音信号が検出された時点の圧力を最高血圧値と決定、更に減圧を続けて血管の管路断面積が十分に拡がり、K音信号が検出されなくなったら、最後のK音信号が検出された時点の圧力を最低血圧値に決定する。また、制御システム56は、測定中に得られた脈波の出現間隔から脈拍数を演算する。
【0026】
次に、本発明の別の実施形態を、図14を参照して説明する。
図14(A)に示すように、阻血用空気袋14の内面部分の下流側には、3つのK音検出用空気袋500を配置でき、図14(B)に示すように、阻血用空気袋14の内面部分の下流側には、4つのK音検出用空気袋500を配置することもできる。
【0027】
上述した本発明の実施形態の電子血圧計1では、複数のK音検出用空気袋500が、阻血用空気袋14の内側面に配置され、K音検出用空気袋500が上腕Tの動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。従って、測定者が上腕Tに腕帯部2を通した際に、腕帯部2が上腕Tに対して正しい位置から上腕Tの周囲方向に回転した状態で上腕が挿入されても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕Tに腕帯部2を通しても、いずれかのK音検出用空気袋500は、上腕Tの動脈の位置に当てて配置させることができるので、正確にK音信号を得ることができる。すなわち、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、例えば測定者の腕が細い場合でもK音検出用空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる。しかもK音検出用空気袋500内の空気振動は、1つのコンデンサマイクロフォン600により検出して、K音信号を得ることができる。複数の圧電マイクロフォンを用いずに、複数のK音検出用空気袋500と安価な1つのコンデンサマイクロフォン600を用いるだけで済むので、コストダウンが図れる。
【0028】
ポンプ44,45が全速力で阻血用空気袋14を昇圧して阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500を昇圧する。制御システム56が脈の消失を判断したら腕帯部2内の昇圧を停止する。そして、腕帯部2内を少しずつ減圧していく際に、動脈における最高血圧に対応する振動をK音検出用空気袋500内の空気の振動として検出して、この空気の振動をコンデンサマイクロフォン600により電気的に検知する。これにより、コンデンサマイクロフォン600を用いており、K音信号が確実に検出でき、電子血圧計1は、K音信号と、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。
複数のK音検出用空気袋500は、腕帯部2の下流側に配置されているので、仮に測定者が腕帯部2を上腕に通す際に、正しい位置でなく上腕に対して回転した位置に装着しても、いずれかのK音検出用空気袋500が動脈に密着させることができるので、K音信号を適切に検知できる。
【0029】
上述した本発明の実施形態では、電子血圧計は、血圧測定方式としてリバロッチ・コロトコフ法が用いられ、コロトコフ音(K音)を検出して血圧測定を行うようになっているが、圧脈波(オシロメトリック法)等の他の血圧測定方式を採用しても良い。
【0030】
なお、測定しない時には、折り畳まれた腕帯部2は、測定をしない時には、血圧計本体10の上面に対して、固定手段を用いて着脱可能に固定するようにしても良い。腕帯部2の固定方式としては、例えば、腕帯部と血圧計本体とは、マグネットと金属板とを用いて磁気的な吸引力で着脱可能に固定したり、オス型部材を有するテープ部材と、このオス型部材に対して着脱可能に機械的に取り付けることができるメス型部材を有するテープ部材を貼り付けることで、着脱可能に固定することもできる。
また、K音センサ(センサ)の一例としてコンデンサマイクロフォンを挙げているが、K音が計測可能なセンサとして圧電マイクロフォン、ダイナミックマイクロフォン、バウンダリーマイクロフォンなどが利用できる。また、挿入方向を報知するのみであれば、K音が測定できるセンサに限定されず、ストレインゲージ、光センサなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・電子血圧計、2・・・腕帯部、10・・・血圧計本体、11P、11R・・・腕帯部の開口部、14・・・阻血用空気袋、16・・・外布(第1外側部材の一例)、17・・・内布(当接布部)、500・・・K音検出用空気袋(小カフまたは小バックともいう)、600・・・コンデンサマイクロフォン(センサの一例)、880・・・面ファスナー(着脱手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子血圧計に関し、特に血圧計本体から腕帯部を分離でき、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプの電子血圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、精神的に安定している家庭にて一人で測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭血圧測定に用いる一人で測定するタイプの電子血圧計が注目されている。
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の空気袋を腕の正しい位置に配置し、正しい巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計が開発されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、使用者が上記血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が測定者から離れていた場合には、測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果、血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇を、新たな擬似高血圧症の発生として、指摘されている。
そこで、このような擬似高血圧症の発生という不都合に対応するために、血圧計本体から腕帯部が分離できて、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者が座位にて背を伸ばした状態で腹圧の掛からない測定をすることが可能なタイプの電子血圧計が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電子血圧計では、最高血圧以上に腕帯部の内圧を上げて、上腕橈骨動脈を阻血した後、腕帯部の内圧を徐々に減圧し、腕帯部の内圧が最高血圧以下になると発生する腕帯部の末梢側への血流を腕帯部の下流側に配置したセンサで検出し、その時の腕帯部の内圧を最高血圧値と測定する。また、腕帯部の内圧を徐々に減圧していくと、心臓の収縮、拡張を1心周期とすると、腕帯部による上腕動脈を圧閉する時間が徐々に短くなり、圧閉する時間がゼロになり、上腕の腕帯部下の橈骨動脈に閉塞が無くなったことを急な空気振動の減衰で検出し、その時の腕帯内圧を最低血圧値と測定する方式を採用している。
この場合に、使用するセンサは腕帯部の下流側の橈骨動脈上の振動を高感度で捉える必要がある。とくに、上述の電子血圧計は、細い腕の場合には、腕帯部の空気袋が内側に大きく膨らみ上腕を圧迫することで適用腕範囲幅を広くとる構造をとっており、細い腕の場合には空気袋の膨らみ方のバラツキからセンサの上腕への密着がうまく行えない場合があり、上記の傾向が発生しやすくなっていた。
また、腕帯部の空気袋は上腕動脈を的確に加圧する必要があるが、空気袋と上腕との間にリジッドなセンサが存在する。このセンサとして変位型の圧電セラミックスセンサを用いた場合には、上腕との接触面は直径が約30mmのリジッドな金属ダイアフラムを持ち、かつ数ミリの厚みの金属ケ−スを有した構造となっている。このため、上腕が細い測定者の場合には、センサが配置されているために空気袋と上腕との密着性が悪くなり、センサに対する振動の伝達が悪いので検出感度が悪くなっていた。
本発明は、上記課題を解決するするためになされたものであり、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕を腕帯部に挿入しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕が腕帯部に挿入された場合でも、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる電子血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子血圧計は、上腕で測定する電子血圧計で、筒状の腕帯部と、該腕帯部と本体と別体に形成された血圧計本体とを有し、前記腕帯部は、空気を供給することで前記上腕を加圧可能な空気袋と、前記空気袋の内側であって前記上腕の手指側の位置に配置され、前記空気袋の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数の小空気袋とを備えており、前記空気袋が前記上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる前記小空気袋内の空気の変動を検知してK音信号を検出するためのセンサを有することを特徴とする。
上記構成によれば、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、例えば測定者の腕が細い場合でも空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる。
すなわち、複数の小空気袋が、空気袋の内側面に配置され、小空気袋が上腕の動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。しかも小空気袋内の空気振動は、センサにより検出して、K音信号を得ることができる。従って、測定者が上腕に腕帯部を通した際に、腕帯部が上腕に対して正しい位置から上腕の周囲方向に回転した状態で上腕に通されても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通しても、いずれかの小空気袋は、上腕の動脈の位置に当てて配置できるので、正確にK音信号を得ることができ、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる。複数の圧電マイクロフォンを用いずに、複数の小空気袋と安価なセンサを用いるだけで済む。
【0007】
好ましくは、前記空気袋の内面を覆う筒体でなり、前記上腕の被測定面に当接する当接布部と、前記空気袋を収容するように前記当接布部の外側に接合される外側部材と、を有し、前記当接布部は、変形可能で伸縮性を有し、前記外側部材は、変形可能であるが前記当接布部よりも伸縮性の低い布部材で形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、腕帯部全体の型保持性を担うとともに、折り畳むこともできることで、使いやすくコンパクトな腕帯部を有する電子血圧計を提供できる。
【0008】
好ましくは、前記空気袋と前記小空気袋にそれぞれ接続されたチューブと、各前記チューブを通じて前記空気袋と前記小空気袋にそれぞれ空気を送るためのポンプとを有し、前記ポンプは、前記血圧計本体に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋と小空気袋は、それぞれ別のチューブを通じてポンプから空気を供給でき、空気袋から小空気袋側に空気を供給する方式ではないので、空気袋内の空気が小空気袋の内側に空気が流入することが全くない。従って、小空気袋内の空気の圧力の変化を正確にチューブを通じてセンサに伝えることができ、複数の小空気袋とチューブとセンサを用いて、K音検出をより正確に行うことができる。
【0009】
好ましくは、前記空気袋は、折り畳むために複数の折り曲げ部分を有し、前記小空気袋は、複数の前記折り曲げ部分の間に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋を含む腕帯部は、小空気袋の配置に影響を受けずに折り曲げ部分において確実に折り畳むことができ、コンパクトに収納できる。
好ましくは、前記外側部材の内側には、骨部材が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋に空気が供給された時に、腕帯部の外側部材が外側に膨れる現象を防止することができ、正確な血圧測定が行える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定者によって腕の太さにばらつきがあったとしても、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる電子血圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図である。
【図2】電子血圧計の腕帯部の分解斜視図である。
【図3】電子血圧計の腕帯部の内部構造を示す断面図である。
【図4】外布の内側に配置された骨部材の形状例を示す図である。
【図5】骨部材を有する腕帯部を示す側面図である。
【図6】図6(A)は、外布と空気袋のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを別の方向から見た斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
【図7】図7(A)は、空気袋と2つの小空気袋を示す斜視図であり、図7(B)は、空気袋と外布と内布カバーと、2つの小空気袋を示す図である。
【図8】空気袋を形成するシート例を示す図である。
【図9】小空気袋を示す図である。
【図10】空気袋と小空気袋と、ポンプと、コンデンサマイクロフォン等の接続関係を示すブロック図である。
【図11】電子血圧計のブロック構成図である。
【図12】電子血圧計の動作例を示すフロー図である。
【図13】電子血圧計の動作例を示すフロー図である。
【図14】本発明の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
(血圧計の全体の構成説明)
図1は、本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図である。
図1に示す電子血圧計1は、血圧計本体10から腕帯部2を分離でき、腕帯部と本体部が一体となった一体型血圧計と違い、座位にて測定するときに血圧計本体10の設置場所が測定者から前方に離れていても、測定者は背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプの電子血圧計である。腕帯部は図1に示すように変形可能で柔らかな材質で作られソフトな筒体の腕帯部2を備える。
【0013】
図1および図11に示すように、この電子血圧計1は、測定者の腕Tに腕帯部2の挿入開口11Rから手を挿入し肘より上の上腕部に腕帯を保持し、血圧を測定する血圧計である。腕帯部2と血圧計本体10とが、腕帯部2の「上腕を加圧可能な空気袋」としての阻血用空気袋14への給排気用のエア−導管4と、「小空気袋」としてのK音信号を検出する2つのK音検出用空気袋に接続したエア−導管4Pとを併設した複胴管(複導管ともいう)のエラストマーチューブにより、本体と脱着可能なエア−コネクタ4Q(図1参照)を介して接続されている。
腕帯部2の阻血用空気袋14は、エア−導管4を通じて、血圧計本体10の圧力センサ−64、および、ポンプ44,45および排気弁46、制御弁47に接続されている。腕帯部2の2つのK音検出用空気袋500は、それぞれの配管を合体してエア−導管4Pを通じて、血圧計本体10のコンデンサマイクロフォン600に接続されている。
また、阻血用空気袋14および圧力センサ−および加減圧おこなうポンプおよび減圧弁等の配管系とK音検出用空気袋およびコンデンサマイクロフォンの配管系とは、ポンプの脈動の防止およびK音検出用空気袋への少量のエア−の供給を行うためのメカニカルフィルタ-700を介して接続されている。
制御システム56(CPU)は、血圧測定の 一連の動作を行うプログラムを内蔵し、かつ、ワークエリアとして使用するメモリ部69と、プログラムを動かすタイマ59を内蔵し、かつ、駆動部66、67、62をアクセスし、空気袋の加減圧制御、および、空気袋圧力値の測定、表示、コンデンサマイクロフォンによるK音の検出、および、収縮期血圧および拡張期血圧の測定を行い、表示部31に表示する一連の動作を行うCPUである。また、電子血圧計1は、これらを動かす電池68、および、電源をON/OFF制御する電源コントロ−ル部69Cを持っている。
【0014】
(図2において、腕帯部の構成を説明する)
図2に示すように、外布16は、例えば、4つの側面部16Rを有しており、例えば、4つの折り目部分16Mにおいて簡単に折り畳むことができる。図3に示すように、外布16の内側面の両端部分は、阻血用空気袋14を収容するように内布17の外側面の両端部分に対して、両側の接合部分77において接合されている。
図2に示すように、外布16の4つの折り目部分16Mと、阻血用空気袋14の4つの折れ線部分(折り曲げ部分)222が、容易に折り畳むことができるように、互いに重なる位置にある。これらの外布16の4つの折り目部分16Mと、阻血用空気袋14の4つの折れ線部分(折り曲げ部分)222は、図1の上腕Tを通す方向であるD1方向に沿って形成されている。これにより、腕帯部2は、外布16の4つの折り目部分16Mと、阻血用空気袋14の4つの折れ線部分(折り曲げ部分)222を用いて、簡単に小さく折り畳むことができる。
図2に示す外布16の4つの折り目部分16Mは、隣接する側面部16Rの接続部分に形成されており、例えば4つの折り目部分16Mの厚みは、例えば融着等により側面部16Rの厚みに比べて薄く形成されている。
すなわち、折り目部分16Mを形成するために、材料の厚みを線状に薄くしたり、部分的に弱い線状の脆弱部を形成したり、厚みは変化がなくても、予め折りクセを形成しておく等の処理を施すと好ましい。
外布16は、阻血用空気袋14を収容するように当接布部である内布17の外側に接合され、外布16は、変形可能であるが伸縮性が非常に低いかほとんど無い布部材である例えば伸びにくい生地(201BE)を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが1445N/inで、ヨコが827N/inである。外布16としては、例えば、ポリエステル100%の生地を用いることができる(図の修正不要か)。
内布17は、空気袋14の内面を覆う筒体でなり変形可能で伸縮性を有し、上腕Tの被測定面に当接する当接布部である。内布17は、弾性を備えていてしかも伸縮性を有する布部材である例えば伸びやすい生地を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが94.9N/inで、ヨコが150.7N/inである。引張伸度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが517%で、ヨコが400%である。内布としては、例えば、ナイロン80%、ポリウレタン20%の生地である。
【0015】
また、図3に示すように、外側部材である外布16の上腕Tを通す方向D1に沿った幅Sから、阻血用空気袋14の上腕を通す方向D1に沿った幅Wを引いた値は、好ましくは4cm以下である。このように、(幅S−幅W)の値を4cm以下に設定するのは、阻血用空気袋14の膨張をおさえ、膨張時の上腕への阻血用空気袋のラジアル方向とスラスト方向の密着面積を大きくするためである。
内布17は、阻血用空気袋14が膨張できるように伸縮性を持たせた素材にて、かつ、腕帯を手先から挿入して、肘の上部の上腕部までスライドさせる必要があるので、スベリの良い、例えば、ジャ−ジ素材を使用している。
一方、図2に示すように、外布16は、簡単に折り畳むことができる柔軟性を有する。
図3に示すように、外布16の内側面の長手方向の両端部分は、阻血用空気袋14を収容できるように内布17の長手方向の両端部の外側面に対して、77において接着または縫製または融着により接合されている。
また、外布と内布の短端は、両布にて空気袋が収納可能なド−ナツ状の空間を作るように、外布1端と外布の他端を、内布1端と内布の他端をつなぐように縫製している。
【0016】
次に、図4と図5を参照して、外布16の内側に配置された骨部材150について説明する。
図4は、外布16の内側に配置された骨部材150の形状例を示し、図5は、骨部材150を有する腕帯部2を示す側面図である。
図4に示すように外布16の内面16Nには、骨部材150が例えば接着剤により固定されている。この骨部材150は、有している。各骨150Hは、外布16の短手方向16Tに平行になるように同じFeまたはSUS等の硬質金属製材料あるいはガラス繊維入りのナイロン樹脂等の硬質のプラスチック成型品であり、外布16の長手方向16Sに沿って配置されており、骨部材150は、複数本の骨150Hを間隔をおいて配列されている。各骨150Hは、断面円形状あるいは断面矩形形状であるが、断面形状や本数は特に限定されない。
【0017】
(阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500の構造例の説明)
図8は、阻血用空気袋14を形成するためのシート例を示している。
まず、阻血用空気袋14の構造を説明すると、図8に示すシートSWは、ほぼ長方形状の例えば透明のプラスチックシートであり、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。このシートSWは、フィルタ付き接続管220、4つの折れ線部分(折り曲げ部分の一例)222、接合部分223,224を有している。
接続管220は、図1に示すエア−導管4の空気袋への導管端部を接続する。接合部分223,224は高周波融着により接合して阻血用空気袋14を形成する。
シートSWは膨らんだときに定位置にシワができるように、シ−ト肉厚を薄くするよう金属電極にて熱を掛けて挟んで押すことで222の部分をつくることにより、膨張時に図7に示す形状の阻血用空気袋14を形成できる。
図8に示すように、空気袋14の内部には、空気袋14の空気容量をできるだけ少なくしてポンプ44,45から供給するべきエアーの量を減らすために伸縮可能なクッション材240が配置されている。
また、阻血用空気袋14の222は、保管時に腕帯を折りたたむための折り曲げ部分となる。クッション材240とK音検出用空気袋500は、複数の折り曲げ部分222を逃げるために折り曲げ部分222の中間に配置されている。
ここで、測定者の上腕の腕周長が、18cm〜33cmの範囲である場合に、図8(B)において小空気袋500の寸法例をあげる。この場合には、例えば長手方向C1の小空気袋500の長さS3が、4cm〜6cmであり、C2方向の小空気袋500の幅S2が1cm〜4cmであり、そして阻血用空気袋14の端部からの小空気袋500の配置距離S1が、0.5cm〜5cmである。
【0018】
図9は、このK音検出用空気袋500の構造例を拡大して示しており、複数の小空気袋500が、空気袋14の内面部分14F、14Gに配置され、しかもK音検出用空気袋500が上腕Tの動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。K音検出用空気袋500は、測定者の上腕Tの被測定面HMに密着して上腕Tの動脈に対応させるようになっている。
図9に示すように、K音検出用空気袋500の材質は、例えば空気袋14と同じ材質のものを使用でき、K音検出用空気袋500は長方形状を有している。K音検出用空気袋500の4つの辺部分501,502,503,504は、例えば融着により密閉されており、空気収容部509を有する。辺部分501には、チューブ4Pの一端部506が挿入して固定されている。チューブ4Pの他端部507は、コンデンサマイクロフォン600に接続されている。チューブ4Pは、チューブ4Rとメカニカルフィルタ700と配管路63を介して、ポンプ44,45に接続されている。
ポンプ44,45からK音検出用空気袋500に対して空気を供給すると、K音検出用空気袋500内の空気が動脈の動きを空気振動に変えてチューブ4Pを通じて、K音を検出するセンサの一例であるコンデンサマイクロフォン600に伝えることができる。コンデンサマイクロフォン600はこの空気振動を電気信号に変換してK音信号を得ることができる。コンデンサマイクロフォン600とポンプ44,45は、血圧計本体10側に配置されており、チューブ4Pは、図1に示すように、有線3とチューブ4とともに、腕帯部2側から血圧計本体10側に接続されている。
このように、阻血用空気袋14とポンプ44,45は、チューブ4により接続されているが、2つのK音検出用空気袋500とコンデンサマイクロフォン600とポンプ44,45は、チューブ4とは別のチューブ4Pにより接続されている。しかも、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500は、別体であり、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500は互いに接続されておらず、両者間には空気の流通はない。阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500は、それぞれ別のチューブ4,4Pを通じて、ポンプ44,45から空気を供給することができる。このため、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500がつながっており両者の間で空気の流通がある場合に比べて、阻血用空気袋14に空気を供給して上腕を加圧する際に、該阻血用空気袋14内の空気がK音検出用空気袋500内側に流入することが全くない。従って、K音検出用空気袋500内の空気は阻血用空気袋14内の空気により影響を受けないので、K音検出用空気袋500内の空気の圧力の変化は、正確にチューブ4Pを通じてコンデンサマイクロフォン600に伝えることができる。従って、K音検出用空気袋500とチューブ4Pとコンデンサマイクロフォン600を用いて、K音検出をより正確に行うことができる。
【0019】
実際に4つ折りの状態を図6に示す。図6(A)は、外布16と阻血用空気袋14のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを2つ折りにした斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを4つ折に折りたたんだ状態を示す斜視図である。
図6(C)に示すように外布1および外布2が柔らかい布でできているので、簡単に折りたたむことができる構造である。
【0020】
図7と図8に示すように、阻血用空気袋14の内側面14G、14Fの熱押し部の中間部位には、それぞれK音検出用空気袋500が、例えば両面粘着テ−プまたは接着剤により固定されている。
K音検出用空気袋500が阻血用空気袋14の内側面に少なくとも2つ配置されているのは、左右の腕で測定が行われるようにするためである。腕帯に接続されているエア−導管の出口を上腕の上面部に位置させて、測定者が上腕Tを腕帯部2内に挿入した際に、小空気袋が上腕動脈上に位置するためである。また、このK音検出用空気袋の装着位置は、動脈の位置からラジアル方向にずれて装着した場合でも、一方が、上腕TのK音の伝達効率が高い上腕筋部位に配置できるようにするためである。
【0021】
図7(A)は、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500を示す斜視図であり、図7(B)は、阻血用空気袋14と外布16と内布17とK音検出用空気袋500を示す図である。図7に示すように、2つK音検出用空気袋500が阻血用空気袋14の内面側に取り付けられ、2つのK音検出用空気袋500は互いに向かい合っている。
【0022】
図9は、このK音検出空気袋500の構造例を拡大して示しており、複数のK音検出用空気袋500が、阻血用空気袋14の内面部分14F、14Gに配置され、しかもK音検出用空気袋500が上腕Tの動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。
図9に示すように、K音検出用空気袋500の材質は、例えば阻血用空気袋14と同じ材質のものを使用でき、K音検出用空気袋500は長方形状を有している。K音検出用空気袋500の4つの辺部分501,502,503,504は、例えば融着により密閉されている。また、配管用チュ−ブ506を辺部分501に融着固定している。
エア−導管4Pの他端部507は、コンデンサマイクロフォン600に接続されている。エア−導管4Pは、メカニカルフィルタ700を介して配管路63にて、阻血用空気袋14および排気バルブ46、制御バルブ、ポンプ44,45と接続されている。
メカニカルフィルタ−は流体抵抗となる細管とコンプライアンスとなる空気タンクから構成され、ポンプ44、45と制御バルブの脈動成分の排除と、K音検出用空気袋が測定時に必要となる少量の空気吹き込みを目的にしている。メカニカルフィルタ700を介して供給している。
【0023】
次に、図10を参照して、上述した空気袋14と小空気袋500と、ポンプ44,45と、コンデンサマイクロフォン600等の接続関係を説明する。
図10に示すように、コロトコフ音(K音)検出システム50は、腕帯部2の2つの小空気袋500と、1つのコンデンサマイクロフォン600と、メカニカルフィルタ700を有している。2つの小空気袋500は、チューブ4Pを介して1つのコンデンサマイクロフォン600に接続されており、小空気袋500内の空気の圧力変動は、小空気袋500からチューブ4Pを通じてコンデンサマイクロフォン600に伝わるようになっている。空気袋14のチューブ63は、チューブとメカニカルフィルタ700とチューブ4Pを介して小空気袋500側に接続されており、空気袋14に空気を供給する際には小空気袋500にも空気を供給して空気袋14と小空気袋500を上腕に対して密着させるようになっている。これにより、コンデンサマイクロフォン600により小空気袋500内の空気の圧力変動の感度を得ることができる。
【0024】
コンデンサマイクロフォン600は、チューブ4Rを介してメカニカルフィルタ700に接続されている。このメカニカルフィルタ700は、圧力センサ64と、ポンプ44,45と、排気バルブ46、制御バルブ47に対して、配管部63を介して接続されている。圧力センサ64と、ポンプ44,45と、排気バルブ46、制御バルブ47は、制御システム56に指令により動作する。
図10のメカニカルフィルタ700は、排気バルブ46の制御音と制御バルブ47の制御音と、ポンプ44,45の脈動音動作を排除して、コンデンサマイクロフォン600の検出信号に影響を与えないようにするために配置されている。2つの小空気袋500は、上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置に配置することができる。
【0025】
(電子血圧計動作例)
次に、血圧測定の動作の1例について、図12、図13に説明する。
開始SWをONすると、S101にて排気弁46および制御弁47を開にして阻血用空気袋14の残空気を排出する。S102にて阻血用空気袋14の残圧がないことを圧力値の減衰変化量で検出し、変化が規定値以下であると、S103にて圧力のゼロセットを行う。S104にて排気弁46および制御弁47を閉にする。S105にて加圧ポンプ44、45をONする。S106にて圧力値が予め設定しておいた予想される収縮期血圧値より30から40mmHg高い圧力値に到ったかがチェックされる。設定圧に到ったら、S107にて加圧ポンプ44、45を停止する。S108にて制御バルブにより3から5mmHg/秒にて減圧するように減圧制御を開始する。S109にて検出した圧力信号に重畳している脈波の検出を開始する。また、S110にてコンデンサマイク60の信号からK音の検出を開始する。図示していないが脈波とK音は同期して発生するので、両信号の同期をK音検出の条件として、K音の検出を行う。また、検出した脈波とK音と圧力値は組にして記録を開始する(図12参照)。
図13を参照する。
S111にてはじめてのK音が検出されたら、そのときの圧力値を収縮期血圧値として決定し記録する。
さらに、減圧を進め、S113にてK音が消失したことを、連続して2拍消失したことで検出し、最後のK音発生のタイミングの圧力値を拡張期血圧値として決定し記憶する。 S115にて排気弁46と制御弁47を開にしてカフ内の空気を排出する。S116にて今まで検出した脈波数と測定時間から脈拍数を計算し記録する。S117にて記録した収縮期血圧値、拡張期血圧値、脈波数を表示部31に表示して一連の血圧測定を終了する(図13参照)。
このように、電子血圧計1では、腕帯部2内をポンプ44,45で加圧した後、微速度で排気して減圧しつつ圧力センサ64を用いて腕帯部2の空気袋14内の圧力を検出すると同時に、コンデンサマイクロフォン600を用いてK音信号を検出して、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。
制御システム56は、加圧して血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時の最初のK音信号が検出された時点の圧力を最高血圧値と決定、更に減圧を続けて血管の管路断面積が十分に拡がり、K音信号が検出されなくなったら、最後のK音信号が検出された時点の圧力を最低血圧値に決定する。また、制御システム56は、測定中に得られた脈波の出現間隔から脈拍数を演算する。
【0026】
次に、本発明の別の実施形態を、図14を参照して説明する。
図14(A)に示すように、阻血用空気袋14の内面部分の下流側には、3つのK音検出用空気袋500を配置でき、図14(B)に示すように、阻血用空気袋14の内面部分の下流側には、4つのK音検出用空気袋500を配置することもできる。
【0027】
上述した本発明の実施形態の電子血圧計1では、複数のK音検出用空気袋500が、阻血用空気袋14の内側面に配置され、K音検出用空気袋500が上腕Tの動脈の下流側(すなわち、肩寄りの側ではなく手指寄りの側)に配置されている。従って、測定者が上腕Tに腕帯部2を通した際に、腕帯部2が上腕Tに対して正しい位置から上腕Tの周囲方向に回転した状態で上腕が挿入されても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕Tに腕帯部2を通しても、いずれかのK音検出用空気袋500は、上腕Tの動脈の位置に当てて配置させることができるので、正確にK音信号を得ることができる。すなわち、測定者の上腕の周囲方向に沿った位置決めを考慮せずに、該上腕に腕帯部を通しても、あるいは右腕、左腕のいずれの上腕に腕帯部を通した場合でも、例えば測定者の腕が細い場合でもK音検出用空気袋と上腕の密着性を上げて正確な血圧測定ができる。しかもK音検出用空気袋500内の空気振動は、1つのコンデンサマイクロフォン600により検出して、K音信号を得ることができる。複数の圧電マイクロフォンを用いずに、複数のK音検出用空気袋500と安価な1つのコンデンサマイクロフォン600を用いるだけで済むので、コストダウンが図れる。
【0028】
ポンプ44,45が全速力で阻血用空気袋14を昇圧して阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500を昇圧する。制御システム56が脈の消失を判断したら腕帯部2内の昇圧を停止する。そして、腕帯部2内を少しずつ減圧していく際に、動脈における最高血圧に対応する振動をK音検出用空気袋500内の空気の振動として検出して、この空気の振動をコンデンサマイクロフォン600により電気的に検知する。これにより、コンデンサマイクロフォン600を用いており、K音信号が確実に検出でき、電子血圧計1は、K音信号と、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。
複数のK音検出用空気袋500は、腕帯部2の下流側に配置されているので、仮に測定者が腕帯部2を上腕に通す際に、正しい位置でなく上腕に対して回転した位置に装着しても、いずれかのK音検出用空気袋500が動脈に密着させることができるので、K音信号を適切に検知できる。
【0029】
上述した本発明の実施形態では、電子血圧計は、血圧測定方式としてリバロッチ・コロトコフ法が用いられ、コロトコフ音(K音)を検出して血圧測定を行うようになっているが、圧脈波(オシロメトリック法)等の他の血圧測定方式を採用しても良い。
【0030】
なお、測定しない時には、折り畳まれた腕帯部2は、測定をしない時には、血圧計本体10の上面に対して、固定手段を用いて着脱可能に固定するようにしても良い。腕帯部2の固定方式としては、例えば、腕帯部と血圧計本体とは、マグネットと金属板とを用いて磁気的な吸引力で着脱可能に固定したり、オス型部材を有するテープ部材と、このオス型部材に対して着脱可能に機械的に取り付けることができるメス型部材を有するテープ部材を貼り付けることで、着脱可能に固定することもできる。
また、K音センサ(センサ)の一例としてコンデンサマイクロフォンを挙げているが、K音が計測可能なセンサとして圧電マイクロフォン、ダイナミックマイクロフォン、バウンダリーマイクロフォンなどが利用できる。また、挿入方向を報知するのみであれば、K音が測定できるセンサに限定されず、ストレインゲージ、光センサなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・電子血圧計、2・・・腕帯部、10・・・血圧計本体、11P、11R・・・腕帯部の開口部、14・・・阻血用空気袋、16・・・外布(第1外側部材の一例)、17・・・内布(当接布部)、500・・・K音検出用空気袋(小カフまたは小バックともいう)、600・・・コンデンサマイクロフォン(センサの一例)、880・・・面ファスナー(着脱手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕で測定する電子血圧計で、
筒状の腕帯部と、
該腕帯部と本体と別体に形成された血圧計本体とを有し、
前記腕帯部は、
空気を供給することで前記上腕を加圧可能な空気袋と、
前記空気袋の内側であって前記上腕の手指側の位置に配置され、前記空気袋の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数の小空気袋と
を備えており、
前記空気袋が前記上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる前記小空気袋内の空気の変動を検知してK音信号を検出するためのセンサを有する
ことを特徴とする電子血圧計。
【請求項2】
前記空気袋の内面を覆う筒体でなり、前記上腕の被測定面に当接する当接布部と、前記空気袋を収容するように前記当接布部の外側に接合される外側部材とを有し、前記当接布部は、変形可能で伸縮性を有し、前記外側部材は、変形可能であるが前記当接布部よりも伸縮性の低い布部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記空気袋と前記小空気袋に接続されたチューブと、前記チューブを通じて前記空気袋と前記小空気袋にそれぞれ空気を送るためのポンプとを有し、前記センサと前記ポンプは、前記血圧計本体に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項4】
前記空気袋は、折り畳むために複数の折り曲げ部分を有し、前記小空気袋は、複数の前記折り曲げ部分の間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項5】
前記外側部材の内側には、骨部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項1】
上腕で測定する電子血圧計で、
筒状の腕帯部と、
該腕帯部と本体と別体に形成された血圧計本体とを有し、
前記腕帯部は、
空気を供給することで前記上腕を加圧可能な空気袋と、
前記空気袋の内側であって前記上腕の手指側の位置に配置され、前記空気袋の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数の小空気袋と
を備えており、
前記空気袋が前記上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる前記小空気袋内の空気の変動を検知してK音信号を検出するためのセンサを有する
ことを特徴とする電子血圧計。
【請求項2】
前記空気袋の内面を覆う筒体でなり、前記上腕の被測定面に当接する当接布部と、前記空気袋を収容するように前記当接布部の外側に接合される外側部材とを有し、前記当接布部は、変形可能で伸縮性を有し、前記外側部材は、変形可能であるが前記当接布部よりも伸縮性の低い布部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記空気袋と前記小空気袋に接続されたチューブと、前記チューブを通じて前記空気袋と前記小空気袋にそれぞれ空気を送るためのポンプとを有し、前記センサと前記ポンプは、前記血圧計本体に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項4】
前記空気袋は、折り畳むために複数の折り曲げ部分を有し、前記小空気袋は、複数の前記折り曲げ部分の間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項5】
前記外側部材の内側には、骨部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子血圧計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−200606(P2011−200606A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73641(P2010−73641)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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