説明

電子血圧計

【課題】腕帯部からの上腕の抜き取りにより空気袋が引っ張られて移動することを防ぐことができ、上腕の挿入と抜き取り動作を容易に行うことができる電子血圧計を提供する。
【解決手段】電子血圧計1は、硬質の筒体を有する腕帯部2と、血圧計本体10とを有し、この腕帯部2と前記血圧計本体10とが別体に形成されており、腕帯部2内には、空気を入れて測定者の上腕Tを圧迫する筒状の空気袋14が配置され、空気袋14には補強部材300が設けられ、補強部材300は、空気袋14の周方向Eに沿って形成された帯状部材301と、補強部材301から空気袋14の長さ方向Vに突出して形成された突出部分302,303,304とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子血圧計に関し、特に血圧計本体から腕帯部を分離でき、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプ(以下ではスル−インタイプと呼ぶ。)の電子血圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、精神的に安定している家庭にて一人で測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭血圧測定に用いる一人で測定するタイプの電子血圧計が注目されている。
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の空気袋を腕の正しい位置に配置し、正しい巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計(以降、アームインタイプと呼ぶ)が開発されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、使用者が上記アームインタイプの血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が測定者から離れていた場合には、測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果、血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇を、新たな擬似高血圧症の発生として、指摘されている。
そこで、このような擬似高血圧症の発生という不都合に対応するために、血圧計本体から腕帯部が分離できて、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者が座位にて背を伸ばした状態で腹圧の掛からない測定をすることが可能なタイプ(以降、スル−インタイプと呼ぶ)の電子血圧計が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したスル−インタイプの電子血圧計は、腕帯部はケースと、このケース内に上腕を圧迫するために配置された空気袋を有している。この腕帯部は筒状の部材であり、測定者が上腕を空気袋に挿入して空気袋に空気を送って上腕を圧迫して血圧を測定し、空気袋から空気を排気後に測定者の上腕を空気袋から抜き取る。このように測定者の上腕を空気袋から抜き取ると、空気袋が上腕の抜き取りによりケース内で引っ張られて位置が移動してしまうおそれがある。この空気袋の移動を防ぐために、空気袋には補強用の帯状部材が、腕帯部の長さ方向と直交する空気袋の周方向に沿って配置されている。
しかし、このように空気袋には周方向に沿って帯状部材を配置するだけでは、上腕の抜き取りにより空気袋が引っ張られて移動することを防ぐには不十分であり、上腕の挿入と抜き取り動作を容易に行うことができず、腕帯部の使用勝手が悪い。
そこで、上記課題を解消するために、本発明は、腕帯部からの上腕の抜き取りにより空気袋が引っ張られて移動することを防ぐことができ、上腕の挿入と抜き取り動作を容易に行うことができる電子血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子血圧計は、硬質の筒体を有する腕帯部と、血圧計本体とを有し、前記腕帯部と前記血圧計本体とが別体に形成されており、前記腕帯部内には、空気を入れて測定者の上腕を圧迫する筒状の空気袋が配置され、前記空気袋には硬質の補強部材が設けられ、前記補強部材は、前記空気袋の周方向に沿って形成された帯状部材と、前記補強部材から前記空気袋の長さ方向に突出して形成された突出部分とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋が膨張・収縮して形状を変えても、硬質の補強部材としての帯状部材と、空気袋の長さ方向に突出して形成された硬質の突出部があるから、腕帯部からの上腕の抜き取りにより空気袋が引っ張られて移動することを防ぐことができ、上腕の挿入と抜き取り動作を容易に行うことができる。
【0007】
本発明の電子血圧計では、前記空気袋は、筒状に形成するために前記空気袋の前記長さ方向に沿って形成された複数の折れ線部分を有し、隣り合う前記折れ線部分の間に、前記突出部分が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、突出部分は折れ線部分の間の部分の補強ができ、空気袋は各折れ線部分と突出部分により筒体としての強度を上げることができる。
【0008】
本発明の電子血圧計では、前記補強部材の前記帯状部材には、前記上腕の血流音を検出するマイクロフォンを保持するマイクロフォン保持部が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、マイクロフォン保持部の位置が、補強部材の帯状部材により、移動しないように固定できる。
【0009】
本発明の電子血圧計では、前記空気袋の前記長さ方向の幅Wは、12cm以上であることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋の内側が測定者の被測定面に対して少なくとも8cm以上当接できるようにして正しい血圧測定が行える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、腕帯部からの上腕の抜き取りにより空気袋が引っ張られて移動することを防ぐことができ、上腕の挿入と抜き取り動作を容易に行うことができるとともに、腕帯を持ち上げて腕を入れるだけの簡単操作で、お腹を圧迫することなくリラックスした正しい測定姿勢をとることができる電子血圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図である。
【図2】電子血圧計を後側から示す斜視図である。
【図3】図3(A)は、電子血圧計の腕帯部と血圧計本体を分離した状態を示す斜視図であり、図3(B)は、腕帯部に測定者の上腕を第1挿入開口側からD1方向に挿入した状態を示す斜視図である。
【図4】腕帯部の構造例を示す斜視図である。
【図5】腕帯部の内部構造例を示す断面図である。
【図6】図6(A)は、外布と空気袋のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを別の方向から見た斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
【図7】図7(A)は、空気袋とマイクロフォンを示す斜視図であり、図7(B)は、空気袋と外布と内布カバーと、マイクロフォンを示す図である。
【図8】空気袋を形成するシート例を示す図である。
【図9】空気袋を形成する工程例を示す図である。
【図10】空気袋の内面が測定者の被測定面を当接している様子を示す図である。
【図11】電子血圧計のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図であり、図2は、この電子血圧計を後側から示す斜視図である。図3(A)は、電子血圧計の腕帯部と血圧計本体を分離した状態を示す斜視図であり、図3(B)は、腕帯部に測定者の上腕を第1挿入開口11P側からD1方向に挿入した状態を示す斜視図である。
図1〜図3に示す電子血圧計1は、自動電子血圧計ともいい、血圧計本体10から腕帯部2を分離でき、血圧計本体10の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプ(以下では、スル−インタイプと呼ぶ。)の電子血圧計である。この電子血圧計1は、血圧測定方式としてリバロッチ・コロトコフ法が用いられ、コロトコフ音(K音)を検出して血圧測定を行う装置である。図1〜図3に示すように、電子血圧計1は、腕帯部2と、血圧計本体10を備える。腕帯部2と血圧計本体10は別体であり、図3に示すように腕帯部2が血圧計本体10に固定できるとともに、腕帯部2が血圧計本体10から分離可能に形成されている。
【0013】
図3(B)に示すように、この電子血圧計1は、測定者の上腕Tを腕帯部2の第1挿入開口11Pから、D1方向(第1方向ともいう)に沿って挿入して血圧を測定することができるスルーイン式の血圧計である。
腕帯部2と血圧計本体10とは有線(電気信号線)3により電気的に接続され、しかも腕帯部2と血圧計本体10とがエアーの給排気路であるフレキシブルなチューブ4により接続されている。
【0014】
まず、図1〜図3を参照して、血圧計本体10の構造について説明する。
図1に示すように、血圧計本体10は、ケーシング30と表示部31を有している。ケーシング30は、例えばプラスチック製の薄型の内部空間を有する部材であり、傾斜した上面部32と、前端面部33と後端面部34と、側面部35,36と、底面部42を有している。
図1に示すように、ケーシング30の上面部32には、傾斜した表示部31が配置されており、測定者が表示部31の表示内容を容易に確認できるようになっている。ケーシング30には、測定開始操作部の一例としての開始/停止ボタン37と、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38と、モード選択ボタン39と、窪み部分40が設けられている。測定者が開始/停止ボタン37を押すことで、血圧測定操作の開始あるいは停止をするためのボタンである。
【0015】
図1において、時刻を設定する場合には、例えば、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38とモード選択ボタン39を同時に長押しすることで、操作・設定・入力機能として作用させることにより、表示部31には時刻設定画面が表示され、時刻設定画面に表示されている時刻は、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38で選択しながら設定することができる。
【0016】
また、図1において、例えばメモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38を押すことにより、過去の例えば100件の血圧測定記録を表示部31に表示できる。表示部31に表示される各件の最高血圧値、最低血圧値、脈拍数、日時が、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38を押す毎に順番に表示できる。モード選択ボタン39は、例えば測定者が、最高血圧値と最低血圧値と脈拍値および脈圧をメモリ部69に記憶しない場合だけ押すためのボタンである。
【0017】
図3に示すように、ケーシング30の上面部32の中央部分には、Y方向に沿って窪み部分40が形成されている。窪み部分40は、ケーシング30の中央部分から後端面部34にかけて形成されており、窪み部分40は半円形状部分40Pと長方形状部分40Rを有し、この窪み部分40の半円形状部分40Pの中央部には、円形状の開始/停止ボタン37が配置されている。窪み部分40の長方形状部分40Rには、溝部分41が形成されている。
【0018】
図3に示すように、ケーシング30には、窪み部分40の開始/停止ボタン37と溝部分41の付近にマグネット40Mが配置されている。このマグネット40Mは例えば長方形状の板状の永久磁石であるが、特に形状に限定されず、円形状あるいは楕円形状等であっても良い。また、マグネット40Mは、ケーシング30の外側に露出していても良い。
図3の窪み部分40と前端面部33の間には、表示部31がX方向に沿って配置されている。この表示部31は、例えば液晶表示装置を用いることができ、一例として図1に示すように、表示部31は、最高血圧値、最低血圧値、脈拍数、脈圧、測定動作中の表示マーク、電池交換の表示マーク等の各種の測定値等を表示することができる。
【0019】
図1と図2に示すように、測定者が血圧計本体10を持ち易いようにするために、側面部35,36は曲面状に形成されている。メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38とモード選択ボタン39は、上面部32の表示部31の付近に配置されている。図1に示すように、ケーシング30の内部には、スピーカ43と、2つのポンプ44,45と、排気バルブ46と、制御バルブ47と、制御システムを含む回路基板48と、メモリ部69が配置されている。スピーカ43は、音声によるガイドや音楽によるガイドを出力するために設けられている。
【0020】
次に、図1〜図3と、図4と図5を参照して、腕帯部2の構造について説明する。
図4は、腕帯部2の構造例を示す斜視図である。図5は、腕帯部2の内部構造例を示す断面図である。
【0021】
図4と図5に示すように、腕帯部2は、硬質の本体ケース11と、空気袋(カフともいう)14と、外布16と、内布カバー17Cを有している。腕帯部2の総重量は330g〜410gが好ましく、高齢者の方でも片手で容易に操作できるように軽量化されている。
図4と図5に示す本体ケース11は、例えばプラスチックにより形成され略円筒状構造を有しており、第1挿入開口11Pと、第1挿入開口11Pとは反対側の第2挿入開口11Rを有している。図1に示すように、本体ケース11は、D1方向に向かって先細りになるように形成され、第1挿入開口11Pの直径L1は第2挿入開口11Rの直径L2よりも大きい。例えば、L1は138mm〜142mm、L2は126mm〜130mmが好ましく、本体ケース11の厚みは、2〜3mmが好ましい。この寸法は、測定者の上腕挿入に適した寸法であり、本体ケース11は、およそ9割以上の一般の測定者の血圧測定に適合した形状となっている。また、本体ケース11は、第1挿入開口11R側に例えばほぼ扇型の把持部11Hを有している。
図3(B)に示すように、腕帯部2の本体ケース11は、血圧測定時に、測定者の上腕Tを第1挿入開口11PからD1方向に沿って挿入しても空気袋14が上腕Tの動脈を圧迫できるようにするために、図1と図2に示すように両端部が切れた略円筒状構造(筒状体)を有している。このため、この腕帯部2は、通常の腕帯部と異なり測定者の上腕Tに対して巻き付ける必要が無く、左右のいずれの上腕Tであっても、腕帯部2に対して図3(B)に示すD1方向に沿って挿入可能である。これにより、測定者は上腕Tを挿入して容易に血圧測定ができる。
この本体ケース11は、図3(B)に示すように、測定者の上腕TはD1方向に挿入するようになっているので、上述したように第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側に向けてやや先細りに形成されている。しかも、把持部11Hが第2挿入開口11R側に設けられている。
図3(B)に示すように、左腕の上腕Tを第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側にD1方向へ挿入し、そして第2挿入開口11Rから第1挿入開口11P側にD2方向へ左腕の上腕Tを外す動作は、右手でこの把持部11Hを持って行うことができる。また、右腕の上腕Tを第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側にD1方向へ挿入し、そして第2挿入開口11Rから第1挿入開口11P側にD2方向へ右腕の上腕Tを外す動作は、左手でこの把持部11Hを持って行うことができる。これにより、測定者は左右いずれの上腕Tに対しても、腕帯部2においてD1方向への上腕Tの装着動作あるいはD2方向への上腕Tの取り外し動作を容易に行うことができる。
【0022】
図1と図3に示すように、本体ケース11の下側部分には、磁気吸着用部材の一例としての磁気吸着用のプレート部材210が設けられている。このプレート部材210は、例えば金属板であり、本体ケース11の軸方向に沿って長くなるように形成され、血圧計本体10のマグネット40Mにより磁気的に吸着されるようになっている。このプレート部材210とマグネット40Mは、腕帯部2を血圧計本体10に固定(あるいは結合)するための固定手段250を構成している。
【0023】
この固定手段250は、腕帯部2を血圧計本体10から持ち上げる時に、血圧計本体10と腕帯部2との結合力が解除される程度の力を有している。これにより、測定者が血圧測定をしない場合には腕帯部2が血圧計本体10からは簡単に転がってしまうことがなく、また測定者が血圧測定をしようとする場合には、腕帯部2が血圧計本体10から取りづらくなるということが無くなる。これにより、腕帯部2が血圧計本体10と別体になっていても、使用勝手が良い。
さらに好ましくは、このマグネット40Mがプレート部材210を磁気的に吸着する力は、例えば血圧計本体10の重量を超えるように設定することができる。これにより、測定者が電子血圧計1を運ぶ際に、測定者が血圧計本体10を持たずに腕帯部2だけを持ち上げてしまった場合に、腕帯部2から血圧計本体10だけが不用意に落下することを防止できる。
【0024】
また、すでに説明したように、プレート部材210は、本体ケース11の軸方向に沿って長くなるように形成されているので、腕帯部2は、血圧計本体10に対して、磁気的吸引力を維持しながら、血圧計本体11の窪み部分40に沿ってY方向に移動可能である。これにより、測定者が腕帯部2を血圧計本体10に対して、磁気的吸引力を維持しながらY方向に移動できるので、腕帯部2が表示部31に被さった状態から腕帯部2を後退させて、表示部31が腕帯部2により見えなくなってしまうという不都合を解消できる。このため、測定者は表示部31の表示内容を容易に確認でき、使用勝手が向上する。
【0025】
さらに、図1に示すように、腕帯部2が血圧計本体10の窪み部分40に配置されている収納状態では、開始/停止ボタン37が腕帯部2の下部にある。つまり、腕帯部2が収納されている状態では、測定者は開始/停止ボタン37を押せないようになっている。そして、測定者が腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から磁気的吸着力に抗して取り外せば、開始/停止ボタン37が露出するので、測定者はこの開始/停止ボタン37を押すことができる。
【0026】
図4と図5に示す空気袋14は、例えば、塩化ビニル,ウレタン、合成ゴム,天然ゴム等の伸縮性を有する材質で形成されている。図4に示すように、空気袋14は、ほぼ同じの矩形の第1開口部14Pと、反対側の第2開口部14Rを有している。
この空気袋14内へは、図1に示す血圧計本体10内の破線で示すポンプ44,45の作動により、チューブ4を通じてエアーを供給されることにより膨張することで上腕Tを圧迫する。空気袋14の内圧を一定速度で減圧するため、制御バルブ47により空気袋14内からエアーを徐々に外へ排気でき、測定を終了したときに、排気バルブ46により空気袋14内からエアーを外へ急排気できる。この空気袋14の詳しい構造については、後で説明する。
【0027】
図4と図5に示す外布16は、空気袋14の外側と本体ケース11の内側の間に配置され、変形可能で伸縮性のない布部材である外側部材に相当する。図4と図5に示す内布カバー17Cは、カフリングともいい、空気袋14の内側を覆うことができ、この内布カバー17Cを配置することで、測定者は上腕をスムーズに挿入したり外したりできる。内布カバー17Cは、上述した空気袋14の内側に着脱可能に配置でき、伸縮性を有する布部分17Dと2つのO−リング状のリング部材17F、17Gを有している。布部分17Dは、長さ方向と円周方向にいずれにも伸縮可能なナイロン、スパンデックス等のすべり性のあるストレッチ素材で形成されている。
【0028】
図6(A)は、外布16と空気袋14のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを別の方向から見た斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
図6(A)と図6(B)に示すように、ユニットUTは4つに折り曲げてほぼ正方形断面の開口部14Rを形成することができる。ユニットUTは4つの折り曲げ部分200を有していることにより、図6(C)に示すように簡単に折りたたむことができる構造である。
図7(A)は、空気袋14とマイクロフォンMを示す斜視図であり、図7(B)は、空気袋14と外布16と内布カバー17Cと、マイクロフォンMを示す図である。図7(A)と図7(B)に示すように、2つのマイクロフォンMが空気袋14に取り付けられ、2つのマイクロフォンMは互いに向かい合っている。
図4に示すように、2つのマイクロフォンMは、空気袋14の第2開口部14R寄りの位置に配置されている。図7に示すように、マイクロフォンMは、空気袋14の内面側に配置されている。これにより、マイクロフォンMは、測定者の血流音を動脈に最も近い位置で検出できる。
【0029】
ここで、空気袋14の構造例を説明する。
図8は、空気袋14を形成するためのシート例を示している。
図8に示すシートSWは、ほぼ長方形状の例えば透明のプラスチックシートであり、伸縮性を備えていない例えばほぼ長方形状のプラスチック製のシート、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。このシートSWは、フィルタ付き接続管220、コードフック221、4つの折れ線部分222A〜222D、接合部分223,224、2つのマイクロフォン保持部225を有している。
接続管220は、図1に示すチューブ4の端部を接続する。コードフック221は、図1に示す有線3とチューブ4を掛ける。接合部分223,224は熱圧着により空気袋14を形成する。2つのマイクロフォン保持部225は、それぞれマイクロフォンMを保持できる。2つのマイクロフォン保持部225は、空気袋14の内面側に配置されており、空気袋14の内面側は測定者の上腕の被測定面を圧迫する側の面である。これにより、空気袋14は、マイクロフォンMを、測定者の上腕の被測定面を圧迫する内面に直接保持させることができるので、マイクロフォンMは測定者の血流音を容易に検知できる。
図8に示すように、シートSWには、破線で示す補強部材300が設けられている。この補強部材300は、図4に示す腕帯部2の本体ケース11の長さ方向(または軸方向)Vと直交する空気袋14の周方向Eに沿って、例えば、帯状部材と一体に、例えば接着剤を用いてシートSWの面に積層して取り付けられている。
補強部材300は、例えばシートSWの材料を該当箇所だけ厚みを増加する形成することができるし、シートSWとは別に他の材料を接着等の手段により固定して形成してもよい。その場合補強部材の材料としては、例えば、変形しにくい比較的硬質の材料で、さらに具体的には、例えば発泡ポリエチレン等を使用することが好ましい。
この長さ方向Vは、空気袋14の長さ方向あるいは腕帯部2の長さ方向でもある。また、空気袋14の周方向Eは、本体ケース11の周方向あるいは腕帯部2の周方向でもある。
この補強部材300は、帯状部分301と、3つの長方形状の突出部分302,303,304から形成されている。図8(B)に示すように、帯状部分301は、空気袋14の第2開口部14R側寄りの位置に配置されている。
図8に示すように、帯状部分301はその全長にわたってほぼ同じ幅CDを有し、4つの折れ線部分222A〜222Dに対して直交している。帯状部分301の一端部301Aは、折れ線部分222Aを直交して折れ線部分222Aから少し周方向Eに沿って突出している。同様にして、帯状部分301の他端部301Bは、折れ線部分222Dを交差して折れ線部分222Dから少し周方向Eに沿って突出している。
図8(A)に示すように、帯状部分301が、折れ線部分222Aと接合部分223の間の空白部分222Fにはほとんど形成されておらず、折れ線部分222Dと接合部分223の間の空白部分222Gにもほとんど形成されていない。この理由としては、図8に示すシートSWを筒状に曲げて図4に示す筒状の空気袋14を形成すると、図8に示す空白部分222F、222Gが折り重なる部分であるので、この重なる部分は強度が高く、補強部材300の帯状部分301により特に補強をする必要がないからである。
一方、図8に示す補強部材300の3つの突出部分302,303,304は、帯状部分301に対して直交する方向、すなわち本体ケース11(または空気袋14)の長さ方向Vと平行に突出して形成されている。
3つの長方形状の突出部分302,303,304は、空気袋14の第1開口部14Pに向かって形成されている。
突出部分302は折れ線部分222Aと折れ線部分222Bの間に配置され、突出部分303は折れ線部分222Bと折れ線部分222Cの間に配置され、しかも突出部分304は折れ線部分222Bと折れ線部分222Cの間に配置されている。突出部分302は折れ線部分222Aと折れ線部分222Bの間のシートSWを補強し、突出部分303は折れ線部分222Bと折れ線部分222Cの間のシートSWを補強し、突出部分304は折れ線部分222Cと折れ線部分222Dの間のシートSWを補強している。これにより、突出部分302,303,304は、折れ線部分222A〜222Dの間の部分の補強ができ、空気袋14は各折れ線部分222A〜222Dと突出部分302,303,304により、筒体としての強度を上げることができる。
また、図8に示すように、1つのマイクロフォン保持部225が、帯状部分301と突出部分302の交差部分305に配置され、残りの1つのマイクロフォン保持部225が、帯状部分301と突出部分304の交差部分306に配置されている。これにより、空気袋14は空気の出し入れにより膨張収縮するにも関わらず、2つのマイクロフォン保持部225の位置は、それぞれ交差部分305,306の存在により、移動しないように固定できる。
図8のシートSWは、4つの折れ線部分222A〜222Dの部分で折り曲げることにより、図4と図7に示す形状の空気袋14を形成できる。
【0030】
図9は、空気袋14を形成する工程例を示している。図10は、空気袋14の内面が測定者の被測定面HMを当接している様子を示す図である。
図9(A)に示すように、シートSWは、折り曲げ線226,227で折り曲げて,図9(B)に示すように接合部分223,224を接合する。そして、図9(C)に示すように、4つの折れ線部分222A〜222Dで折り曲げることで筒状の空気袋14が完成する。この空気袋14は、4つの側面部231,232,233,234を備える。
なお、図8(B)に示すように、この空気袋14内には、間隔をおいて3つのスペーサ240が配置されている。各スペーサ240は、突出部分302,303,304の先端部の位置に重ねて配置されている。このスペーサ240は、弾性変形可能な直方体形状の部材であり、例えばプラスチックスポンジ等である。これにより、空気袋14は空気の出し入れにより膨張収縮するにも関わらず、各スペーサ240が突出部分302,303,304の先端部の位置に重ねて配置されていることで、空気袋14が必要以上につぶれてしまうのを防止できる。しかも、各スペーサ240の位置が、突出部分302,303,304の存在により、移動しないように固定できる。
また、図8(B)と図10に示すように、空気袋14の幅Wは、好ましくは12cm以上である。この空気袋14の幅Wは、空気袋14の長さ方向(軸方向)Vと平行な方向の幅である。空気袋14の内側が測定者の被測定面HMに対して少なくとも8cm以上当接していないと正しい血圧測定ができないので、8cm以上接しているためには、空気袋14の幅Wは12cm以上必要である。これにより、空気袋14の内側が測定者の被測定面HMに対して少なくとも8cm以上当接できるようにして正しい血圧測定が行える。
【0031】
次に、図11は、図1の電子血圧計1のブロック構成図である。
図11に示す電子血圧計1の回路ブロックを説明する。電子血圧計1の回路ブロックの破線で示すように、血圧計本体10は、コロトコフ音(K音)検出システム50と、加圧システム51と、排気システム52と、圧力検出システム53と、電源システム54と、音声システム55と、制御システム56を有する。
【0032】
制御システム56は、表示部31の駆動部58と、タイマ59と、メモリ部69等を有する。表示部31の駆動部58は、表示部31を駆動制御して表示すべき項目を表示させる。メモリ部69は、制御システム56のCPU(中央処理部)により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)である。タイマ59は、各種の動作の時間のカウントを行う。操作部57は、制御システム56に電気的に接続されており、すでに説明した開始/停止ボタン37と、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38と、モード選択ボタン39を有している。
【0033】
図11のコロトコフ音(K音)検出システム50は、腕帯部2の2つのマイクロフォンMと、K音検出回路部60と、ノイズセンサ15と、ノイズセンサ検出回路部61を有している。2つのマイクロフォンMは、K音検出回路部60を介して制御システム56に電気的に接続されている。
図3(A)に示すように、2つのマイクロフォンMは、図3(B)に示すように測定者の上腕TがD1方向に挿入された場合に、互いに対向した位置(上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置)になるように配置されている。これにより、2つのマイクロフォンMは、上腕Tを第1挿入開口11Pから挿入した状態で上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置にそれぞれ配置できる。
【0034】
図11の2つのマイクロフォンMは、測定者の動脈の血流音(血管情報)を検知し、K音検出回路部60はこの血流音からK音を検出して制御システム56にK音信号を伝える。制御システム56は、入力されたK音信号からコロトコフ音と、このコロトコフ音の発生ポイントと、消滅ポイントを検出する。ノイズセンサ15は、外部からマイクロフォンMに入る振動ノイズを検知して、ノイズセンサ検出回路部61を介して制御システム56にノイズ信号を送る。これにより、制御システム56は、K音信号からノイズを除去することで、K音検出信号の精度を高めている。
【0035】
図11に示す圧力検出システム53は、配管部63と、圧力センサ64と、チューブ4により構成されている。圧力センサ64は、アンプ65(ここではアンプ65は、フィルタ、積分A/D部も含んでいる)を介して制御システム56に電気的に接続されている。制御システム56は、K音信号を検出する。すなわち、加圧して血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時の最初のK音信号が検出された時点の圧力を最高血圧値に設定し、更に減圧を続けて血管の管路断面積が十分に拡がり、K音信号が検出されなくなったら、最後のK音信号が検出された時点の圧力を最低血圧値に設定する。また、制御システム56は、最高血圧値と最低血圧値から得られる血管脈動またはK音信号の出現間隔から脈拍数を演算する。
【0036】
加圧システム51は、ポンプ44,45と、ポンプの駆動部62を有する。制御システム56の指令により、駆動部62は、ポンプ44,45を駆動制御する。ポンプ44,45は、圧力検出システム53の配管部63を通じて腕帯部2の空気袋内に接続されている。
電子血圧計1では、腕帯部2内をポンプ44,45で加圧した後、微速度で排気して減圧しつつ圧力センサ64を用いて腕帯部2の空気袋内の圧力を検出すると同時に、マイクロフォンMを用いてコロトコフ音(K音)を検出する。そして、電子血圧計1は、K音信号と、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。
【0037】
次に、排気システム52について説明する。排気システム52は、2つの駆動部66,67と、排気バルブ(強制排気部)46と、制御バルブ(減圧制御部)47を有する。排気バルブ46と制御バルブ47は配管部63の途中に配置されている。制御システム56が駆動部66に指令をすることで、排気バルブ46の開閉を行い、制御システム56が駆動部67に指令をすることで、制御バルブ47の開閉を行う。
【0038】
電源システム54は、電池68と、電源コントロール部69Cと、電源監視部70を有する。電池68は、繰り返して充電可能な例えばリチウムイオン電池であるが、特に種類は限定されず、乾電池等でも良い。電池68の電圧は、電源コントロール部69Cにより制御されて制御システム56に供給されるとともに、ポンプ44,45の駆動電源、音声制御部71へ供給する電源でもある。電源監視部70は、電池68の残量等の監視を行う。また、ACアダプタを用いることで100Vの商用電源を用いることができる。
【0039】
音声システム55は、音声制御部71と、増幅部72を有している。音声制御部71と増幅部72は、制御システム56からの指令により制御される。音声制御部71は、制御システム56の指令により、音声による最高血圧値や最低血圧値、脈拍数等の測定情報や、音声による血圧測定操作のガイダンスデータもしくは音楽データを、増幅部72に送って増幅する。この増幅部72には、血圧計本体10に配置されたスピーカ43に電気的に接続されている。これにより、スピーカ43は、音声による最高血圧値や最低血圧値、脈拍数等の測定情報や、音声によるガイド用のアナウンスと音楽によるガイド用のアナウンスを発生することができる。
【0040】
次に、上述した電子血圧計1を用いて、血圧測定プログラムの手順に従って、血圧測定を行う例を説明する。
血圧測定プログラムでは、例えば通常モードM1、最高血圧モードM2、最低血圧モードM3を有する。以下に、これらのモードを順番に説明する。
(通常モードM1)
図1に示す腕帯部2の本体ケース11のプレート部材210は、すでに説明したように本体ケース11の軸方向に沿って長くなるように形成されており、腕帯部2は、このプレート部材210を用いて、血圧計本体10のマグネット40Mにより血圧計本体10の窪み部分40において磁気的に吸着して結合されている。図3に示すように、測定者は、この腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から、マグネット40Mの磁気的吸引力に抗して持ち上げることで、腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から容易に外すことができる。このように、測定者が血圧測定をする際には、腕帯部2を血圧計本体10から簡単に取り外すことができる。これにより、血圧計本体10の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で容易に血圧測定ができる。
【0041】
好ましくは、このマグネット40Mがプレート部材210を磁気的に吸着する力は、例えば血圧計本体10の重量を超えるように設定することができる。これにより、測定者が電子血圧計1を運ぶ際に血圧計本体10を持たずに腕帯部2だけを持ち上げてしまった場合に、腕帯部2から血圧計本体10だけが不用意に落下することを防止できる。
図1に示すように、腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40に載置された場合に、開始/停止ボタン37は腕帯部2の下側に位置しており、測定者が腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から持ち上げて外さないと、開始/停止ボタン37が外部に露出しないようになっている。これにより、測定者は、腕帯部2を持ち上げて上腕Tを通して測定しようとする状態になってから、開始/停止ボタン37を押すことができるので、測定しない時に不用意に開始/停止ボタン37を押してしまうといったことが無くなる。
【0042】
次に、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕を第1挿入開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。測定者が図1に示すモード選択ボタン39を押して通常モードM1を選択した場合には、スピーカ43は、選択されたモードが通常モードM1であることを測定者に音により報知する。
測定者は図1の開始/停止ボタン37を押して血圧測定を開始する。図1のポンプ44,45が全速力で空気袋14を昇圧して、2つのマイクロフォンMが、測定者の血流音(血管情報)を検知して脈が消滅するまで全速力で腕帯部2内の空気袋14を昇圧する。制御システム56が脈の消失を判断したら腕帯部2内の昇圧を停止する。
そして、腕帯部2内を少しずつ減圧(例えば2〜5mmHg/秒)していき、最高血圧値と最低血圧値を検出する。最高血圧値と最低血圧値および脈拍数等を図1の表示部31に表示して、ポンプ44,45と排気バルブ46を作動して腕帯部2内の空気袋14を急排気する。このように、最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できた時点で、腕帯部2内の空気袋14を急排気することで、測定者の上腕に対する圧迫を即座に解消できるので、測定者への負担を軽減できる。
また、最高血圧値と最低血圧値および脈拍数等を図1の表示部31に表示するとともに、血圧計本体10のスピーカ43から、音声による最高血圧値と最低血圧値および脈拍数等の測定情報や、音声によるガイド用のアナウンスと音楽によるガイド用のアナウンスを発生できる。従って、血圧計本体10に配置されたスピーカ43からも最高血圧値や最適血圧値等の測定情報や、その他のガイダンス情報等を、測定者に音声により認識させることができる。
【0043】
(最高血圧モードM2)
また、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕を第1開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。測定者が図1に示すモード選択ボタン39を押して最高血圧モードM2を選択した場合には、スピーカ43は、選択されたモードが最高血圧モードM2であることを測定者に音により報知する。測定者は図1の開始/停止ボタン37を押して血圧測定を開始する。図1のポンプ44,45が全速力で空気袋14を昇圧して、2つのマイクロフォンMが、測定者の血流音を検知して脈が消滅するまで全速力で腕帯部2内の空気袋14を昇圧する。制御システム56が脈の消失を判断したら腕帯部2内の空気袋14の昇圧を停止する。
【0044】
そして、少しずつ減圧(例えば2〜5mmHg/秒)していき、図1のスピーカ43が腕帯部2内の空気袋14を減圧時のカフ値毎に、例えば10mmHg毎に圧力値を音声によりアナウンスし、最高血圧値を検出する。その後、図1のスピーカ43は最高血圧値と脈拍数を音声によるガイドでアナウンスして、ポンプ44,45と排気バルブ46を作動して腕帯部2内の空気袋14を急排気する。これにより、最高血圧値と脈拍数を音声によるガイドでアナウンスしながら腕帯部2内を急排気することで、測定者の上腕に対する圧迫を即座に解消できるので、測定者への負担を軽減できる。
また、最高血圧値や脈拍数等を図1の表示部31に表示するとともに、血圧計本体10のスピーカ43から、音声による最高血圧値や脈拍数等の測定情報や、音声による操作ガイド用のアナウンスと音楽によるガイド用のアナウンスを発生できる。従って、血圧計本体10に配置されたスピーカ43からも最高血圧値や脈拍数等の測定情報や、その他のガイダンス情報等を、測定者に音声により認識させることができる。
【0045】
(最低血圧モードM3)
また、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕を第1挿入開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。その後、測定者が図1に示すモード選択ボタン39を押して最低血圧モードM3を選択した場合には、スピーカ43は、選択されたモードが最低血圧モードM3であることを測定者に音により報知する。
測定者は図1の開始/停止ボタン37を押して血圧測定を開始する。少しずつ昇圧(例えば2〜5mmHg/秒)していき、図1のスピーカ43が腕帯部2内の空気袋14を昇圧時のカフ値毎に、例えば10mmHg毎に圧力値を音声アナウンスし、最低血圧値を検出する。その後、脈が消失したら昇圧を停止して、図3のスピーカ43が最低血圧値を音声によるガイドでアナウンスをするとともに、ポンプ44,45と排気バルブ46を作動して腕帯部2内の空気袋14を急排気する。
【0046】
上述した通常モードM1、最高血圧モードM2、最低血圧モードM3において、図3(B)に示すように、測定者が把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕Tを第1挿入開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。そして、血圧測定が終わったら、測定者は把持部11Hを把持しながら右の上腕Tを第2挿入開口11Rから第1挿入開口11PにかけてD2方向に沿って抜き出す。
測定者の上腕TをD1方向に挿入する動作と上腕TをD2方向に抜き出す動作において、上腕Tの動きにつられて空気袋14が移動してしまうことを防ぐことができる。これは、図8(B)と図9(C)に示すように、補強部材300の帯状部分301にさらに3つの突出部分302,303,304が延長され、帯状部材301と3つの突出部分302,303,304が空気袋14に配置されているからである。
これにより、腕帯部2からの上腕Tの抜き取りにより、空気袋14が本体ケース11内で引っ張られて移動することを防ぐことができ、上腕Tの挿入動作と抜き取り動作を容易に行うことができる。このため、測定者が血圧測定をする際の電子血圧計1の腕帯部2の使用勝手を向上できる。
また、図4に示す空気袋14は、本体ケース11の内周面と外布16に対して例えば両面テープにより固定しようとする際に、補強部材300の帯状部分301と3つの突出部分302,303,304が空気袋14を補強しているので、空気袋14は筒状の部材としての強度を高めることができ、空気袋14は、両面テープのような簡単な接合方式で本体ケース11の内面側に確実に固定することができる。
【0047】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。例えば、図示例では、把持部11Hはほぼ扇型であるが、これに限らず任意の形状を採用できる。表示部31は、例えば液晶表示装置の他に、有機EL装置、蛍光表示装置等、特に種類は限定されない。
【0048】
図1等に示す本発明の実施形態では、マグネット40Mが血圧計本体10の窪み部分40に配置され、プレート部材210が腕帯部2のケーシングともいう本体ケース11側の底部に設けられている。しかし、これに限らず、逆の配置例として、プレート部材210が血圧計本体10の窪み部分40に配置され、マグネット40Mが腕帯部2の本体ケース11の底部に設けられても良い。
また、腕帯部2は血圧計本体10に対して、プレート部材210とマグネット40Mを用いた磁気的吸引力により着脱可能に固定しているが、これに限らず他の種類の固定方式を用いても良い。例えば、腕帯部と血圧計本体とは、オス型部材を有するテープ部材と、このオス型部材に対して着脱可能に機械的に取り付けることができるメス型部材を有するテープ部材を貼り付けることで、着脱可能に固定することもできる。
図8に示すように、補強部材300は、帯状部分301と、3つの長方形状の突出部分302,303,304から形成されているが、特に突出部分の形状は限定されず、例えば突出部分の形状は楕円形状や2等辺三角形状等であっても良い。
図8に示す空気袋14の折れ線部分222A〜222Dの本数は、4本に限らず5本以上あっても良く、各折れ線部分の間には補強部材の突出部分を配置できる。
補強部材は、空気袋を構成するシート部材の表面に積層して貼り付けても良いが、これとは別の構造としては、予め空気袋を構成するシート部材の一部分を厚く形成することで補強部材とすることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・電子血圧計、2・・・腕帯部、10・・・血圧計本体、11・・・本体ケース(硬質の筒体の一例)、・・・、11P、11R・・・開口部、16・・・外布、17C・・・内布カバー、31・・・表示部、300・・・補強部材、301・・・補強部材の帯状部分、302,303,304・・・補強部材の突出部分、V・・・腕帯部の本体ケース(空気袋)の長さ方向(軸方向)、E・・・空気袋の周方向(腕帯部の周方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の筒体を有する腕帯部と、血圧計本体とを有し、前記腕帯部と前記血圧計本体とが別体に形成されており、前記腕帯部内には、空気を入れて測定者の上腕を圧迫する筒状の空気袋が配置され、前記空気袋には補強部材が設けられ、
前記補強部材は、前記空気袋の周方向に沿って形成された硬質の帯状部材と、前記補強部材から前記空気袋の長さ方向に突出して形成された硬質の突出部分と
を有することを特徴とする電子血圧計。
【請求項2】
前記空気袋は、筒状に形成するために前記空気袋の前記長さ方向に沿って形成された複数の折れ線部分を有し、隣り合う前記折れ線部分の間に、前記突出部分が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記補強部材の前記帯状部材には、前記上腕の血流音を検出するマイクロフォンを保持するマイクロフォン保持部が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項4】
前記空気袋の前記長さ方向の幅Wは、12cm以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子血圧計。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−83428(P2011−83428A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238506(P2009−238506)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】