説明

電子血圧計

【課題】測定者が腕帯部に対して一方側と他方側のどちら側から挿入しても、測定者の血流音(血管情報)を検知して血圧測定ができる電子血圧計を提供する。
【解決手段】電子血圧計1は、硬質の筒体を有する腕帯部2と、血圧計本体10とを有し、この腕帯部2と前記血圧計本体10とが別体に形成されており、腕帯部2内には上腕を圧迫する空気袋14を有し、腕帯部2は、第1挿入開口11Pと第2挿入開口11Rとを有する筒体に形成され、腕帯部2は、測定者の上腕を第1挿入開口11Pから第2挿入開口11Rに向けて挿入した状態で測定者の血流音を検知する第1マイクロフォンMと、測定者の上腕を第2挿入開口11Rから第1挿入開口11Pに向けて挿入した状態で測定者の血流音を検知する第2マイクロフォンMSを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子血圧計に関し、特に血圧計本体から腕帯部を分離でき、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプ(以下ではスル−インタイプと呼ぶ。)の電子血圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、精神的に安定している家庭にて一人で測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭血圧測定に用いる一人で測定するタイプの電子血圧計が注目されている。
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の空気袋を腕の正しい位置に配置し、正しい巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計(以降、アームインタイプと呼ぶ)が開発されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、使用者が上記アームインタイプの血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が測定者から離れていた場合には、測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果、血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇を、新たな擬似高血圧症の発生として、指摘されている。
そこで、このような擬似高血圧症の発生という不都合に対応するために、血圧計本体から腕帯部が分離できて、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者が座位にて背を伸ばした状態で腹圧の掛からない測定をすることが可能なタイプ(以降、スル−インタイプと呼ぶ)の電子血圧計が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したスル−インタイプの電子血圧計では、血圧測定をするためにリバロッチ・コロトコフ法が用いられ、腕帯部は開口部を有する筒状の部材であり、腕帯部はコロトコフ音(K音)を検出するマイクロフォンを備えている。このマイクロフォンは、測定者の血流音(血管情報)を検知して、この血流音からK音を検出してK音信号を伝えるために設けられ、入力されたK音信号からコロトコフ音と、このコロトコフ音の発生ポイントと、消滅ポイントを検出する。このため、測定者が上腕を腕帯部に挿入して血圧測定をする際には、腕帯部のマイクロフォンが測定者の上腕の動脈に位置しなければならないために、上腕を腕帯部に対して挿入する方向が決まっている。
しかし、上述したように腕帯部は筒状の部材であることから、測定者が上腕を腕帯部に対して逆方向に挿入するおそれがある。このように、上腕を逆方向に挿入してしまうと、腕帯部のマイクロフォンを測定者の上腕の動脈に位置させることができなくなり、マイクロフォンは血流音を検出できず血圧測定ができなくなってしまう。このため、測定者が腕帯部に対してどちら側から挿入しても、血圧測定ができることが望まれている。
そこで、上記課題を解消するために、本発明は、測定者が腕帯部に対して一方側と他方側のどちら側から挿入しても、測定者の血流音(血管情報)を検知して血圧測定ができる電子血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子血圧計は、硬質の筒体を有する腕帯部と、血圧計本体と、を有し、前記腕帯部と前記血圧計本体とが別体に形成されており、前記腕帯部内には測定者の上腕を圧迫する空気袋が配置され、前記腕帯部は、第1挿入開口と、前記第1挿入開口と反対側に形成された第2挿入開口とを有する筒体に形成されており、前記腕帯部は、前記測定者の上腕を前記第1挿入開口から前記第2挿入開口に向けて挿入した状態で前記測定者の血流音を検知する第1マイクロフォンと、前記測定者の上腕を前記第2挿入開口から前記第1挿入開口に向けて挿入した状態で前記測定者の血流音を検知する第2マイクロフォンとを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、測定者が腕帯部に対して一方側と他方側のどちら側から挿入しても、測定者の血流音(血管情報)を検知して血圧測定ができる。
【0007】
本発明の電子血圧計では、前記第1マイクロフォンと前記第2マイクロフォンは、前記空気袋に保持されていることを特徴とする。
上記構成によれば、空気袋に第1マイクロフォンと第2マイクロフォンを直接保持させることができるので、測定者の血流音を容易に検知できる。
【0008】
本発明の電子血圧計では、前記空気袋には、2つの前記第1マイクロフォンと2つの前記第2マイクロフォンをそれぞれ保持するマイクロフォン保持部を有し、2つの前記第1マイクロフォンは対向して保持され、2つの前記第2マイクロフォンは対向して保持されていることを特徴とする。
上記構成によれば、第1マイクロフォンは、上腕を第1挿入開口から挿入した状態で上腕の動脈に近い位置と遠い位置に配置でき、第2マイクロフォンは、上腕を第2挿入開口から挿入した状態で上腕の動脈に近い位置と遠い位置に配置できる。
【0009】
本発明の電子血圧計では、前記第1マイクロフォンと前記第2マイクロフォンは、前記空気袋の内面側に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、測定者の血流音を動脈に最も近い位置で検出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定者が腕帯部に対して一方側と他方側のどちら側から挿入しても、測定者の血流音(血管情報)を検知して血圧測定ができる電子血圧計を提供することができるとともに、腕帯を持ち上げて腕を入れるだけの簡単操作で、お腹を圧迫することなくリラックスした正しい測定姿勢をとることができる電子血圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図である。
【図2】電子血圧計を後側から示す斜視図である。
【図3】図3(A)は、電子血圧計の腕帯部と血圧計本体を分離した状態を示す斜視図であり、図3(B)は、腕帯部に測定者の上腕を第1挿入開口側からD1方向に挿入した状態を示す斜視図である。
【図4】腕帯部の構造例を示す斜視図である。
【図5】腕帯部の内部構造例を示す断面図である。
【図6】図6(A)は、外布と空気袋のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを別の方向から見た斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
【図7】図7(A)は、空気袋とマイクロフォンを示す斜視図であり、図7(B)は、空気袋と外布と内布カバーと、マイクロフォンを示す図である。
【図8】空気袋を形成するシート例を示す図である。
【図9】空気袋を形成する工程例を示す図である。
【図10】空気袋の内面が測定者の被測定面を当接している様子を示す図である。
【図11】電子血圧計のブロック構成図である。
【図12】腕帯部に測定者の上腕を第2挿入開口側からD2方向に挿入した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図であり、図2は、この電子血圧計を後側から示す斜視図である。図3(A)は、電子血圧計の腕帯部と血圧計本体を分離した状態を示す斜視図であり、図3(B)は、腕帯部に測定者の上腕を第1挿入開口11P側からD1方向に挿入した状態を示す斜視図である。
図1〜図3に示す電子血圧計1は、自動電子血圧計ともいい、血圧計本体10から腕帯部2を分離でき、血圧計本体10の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプ(以下では、スル−インタイプと呼ぶ。)の電子血圧計である。この電子血圧計1は、血圧測定方式としてリバロッチ・コロトコフ法が用いられ、コロトコフ音(K音)を検出して血圧測定を行う装置である。図1〜図3に示すように、電子血圧計1は、腕帯部2と、血圧計本体10を備える。腕帯部2と血圧計本体10は別体であり、図3に示すように腕帯部2が血圧計本体10に固定できるとともに、腕帯部2が血圧計本体10から分離可能に形成されている。
【0013】
図3(B)に示すように、この電子血圧計1は、測定者の上腕Tを腕帯部2の第1挿入開口11Pから、D1方向(第1方向ともいう)に沿って挿入して血圧を測定することができるスルーイン式の血圧計である。しかも、図12に示すように、この電子血圧計1は、測定者の上腕Tを腕帯部2の第2挿入開口11Rから、D2方向(第2方向ともいう)に沿って挿入した場合でも血圧を測定することができるスルーイン式の血圧計である。
腕帯部2と血圧計本体10とは有線(電気信号線)3により電気的に接続され、しかも腕帯部2と血圧計本体10とがエアーの給排気路であるフレキシブルなチューブ4により接続されている。
【0014】
まず、図1〜図3を参照して、血圧計本体10の構造について説明する。
図1に示すように、血圧計本体10は、ケーシング30と表示部31を有している。ケーシング30は、例えばプラスチック製の薄型の内部空間を有する部材であり、傾斜した上面部32と、前端面部33と後端面部34と、側面部35,36と、底面部42を有している。
図1に示すように、ケーシング30の上面部32には、傾斜した表示部31が配置されており、測定者が表示部31の表示内容を容易に確認できるようになっている。ケーシング30には、測定開始操作部の一例としての開始/停止ボタン37と、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38と、モード選択ボタン39と、窪み部分40が設けられている。測定者が開始/停止ボタン37を押すことで、血圧測定操作の開始あるいは停止をするためのボタンである。
【0015】
図1において、時刻を設定する場合には、例えば、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38とモード選択ボタン39を同時に長押しすることで、操作・設定・入力機能として作用させることにより、表示部31には時刻設定画面が表示され、時刻設定画面に表示されている時刻は、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38で選択しながら設定することができる。
【0016】
また、図1において、例えばメモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38を押すことにより、過去の例えば100件の血圧測定記録を表示部31に表示できる。表示部31に表示される各件の最高血圧値、最低血圧値、脈拍数、日時が、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38を押す毎に順番に表示できる。モード選択ボタン39は、例えば測定者が、最高血圧値と最低血圧値と脈拍値および脈圧をメモリ部69に記憶しない場合だけ押すためのボタンである。
【0017】
図3に示すように、ケーシング30の上面部32の中央部分には、Y方向に沿って窪み部分40が形成されている。窪み部分40は、ケーシング30の中央部分から後端面部34にかけて形成されており、窪み部分40は半円形状部分40Pと長方形状部分40Rを有し、この窪み部分40の半円形状部分40Pの中央部には、円形状の開始/停止ボタン37が配置されている。窪み部分40の長方形状部分40Rには、溝部分41が形成されている。
【0018】
図3に示すように、ケーシング30には、窪み部分40の開始/停止ボタン37と溝部分41の付近にマグネット40Mが配置されている。このマグネット40Mは例えば長方形状の板状の永久磁石であるが、特に形状に限定されず、円形状あるいは楕円形状等であっても良い。また、マグネット40Mは、ケーシング30の外側に露出していても良い。
図3の窪み部分40と前端面部33の間には、表示部31がX方向に沿って配置されている。この表示部31は、例えば液晶表示装置を用いることができ、一例として図1に示すように、表示部31は、最高血圧値、最低血圧値、脈拍数、脈圧、測定動作中の表示マーク、電池交換の表示マーク等の各種の測定値等を表示することができる。
【0019】
図1と図2に示すように、測定者が血圧計本体10を持ち易いようにするために、側面部35,36は曲面状に形成されている。メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38とモード選択ボタン39は、上面部32の表示部31の付近に配置されている。図1に示すように、ケーシング30の内部には、スピーカ43と、2つのポンプ44,45と、排気バルブ46と、制御バルブ47と、制御システムを含む回路基板48と、メモリ部69が配置されている。スピーカ43は、音声によるガイドや音楽によるガイドを出力するために設けられている。
【0020】
次に、図1〜図3と、図4と図5を参照して、腕帯部2の構造について説明する。
図4は、腕帯部2の構造例を示す斜視図である。図5は、腕帯部2の内部構造例を示す断面図である。
【0021】
図4と図5に示すように、腕帯部2は、硬質の本体ケース11と、空気袋(カフともいう)14と、外布16と、内布カバー17Cを有している。腕帯部2の総重量は330g〜410gが好ましく、高齢者の方でも片手で容易に操作できるように軽量化されている。
図4と図5に示す本体ケース11は、例えばプラスチックにより形成され略円筒状構造を有しており、第1挿入開口11Pと、第1挿入開口11Pとは反対側の第2挿入開口11Rを有している。図1に示すように、本体ケース11は、D1方向に向かって先細りになるように形成され、第1挿入開口11Pの直径L1は第2挿入開口11Rの直径L2よりも大きい。例えば、L1は138mm〜142mm、L2は126mm〜130mmが好ましく、本体ケース11の厚みは、2〜3mmが好ましい。この寸法は、測定者の上腕挿入に適した寸法であり、本体ケース11は、およそ9割以上の一般の測定者の血圧測定に適合した形状となっている。また、本体ケース11は、第1挿入開口11R側に例えばほぼ扇型の把持部11Hを有している。
図3(B)に示すように、腕帯部2の本体ケース11は、血圧測定時に、測定者の上腕Tを第1挿入開口11PからD1方向に沿って挿入しても空気袋14が上腕Tの動脈を圧迫でき、しかも図12に示すように、測定者の上腕Tを腕帯部2の第2挿入開口11RからD2方向に沿って挿入しても、空気袋14が上腕Tの動脈を圧迫できるようにするために、図1と図2に示すように両端部が切れた略円筒状構造(筒状体)を有している。
このため、この腕帯部2は、通常の腕帯部と異なり測定者の上腕Tに対して巻き付ける必要が無く、左右のいずれの上腕Tであっても、腕帯部2に対して図3(B)に示すD1方向と、図12に示すD1方向とは反対のD2方向に沿って挿入可能である。これにより、測定者は腕帯部2の向きを考慮せずに上腕Tを挿入して容易に血圧測定ができ、使用勝手が良い。
この本体ケース11は、図3(B)に示すように、基本的には、測定者の上腕TはD1方向に挿入するようになっているので、上述したように第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側に向けてやや先細りに形成されている。しかも、把持部11Hが第2挿入開口11R側に設けられている。
腕帯部2はD1方向であってもD2方向であっても上腕Tを挿入して血圧測定できるようになっているが、上述のように腕帯部2の本体ケース11をやや先細りに形成することで、測定者が基本的には上腕TをD1方向に挿入して血圧測定することを認識し易くしている。
図3(B)に示すように、左腕の上腕Tを第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側にD1方向へ挿入し、そして第2挿入開口11Rから第1挿入開口11P側にD2方向へ左腕の上腕Tを外す動作は、右手でこの把持部11Hを持って行うことができる。また、右腕の上腕Tを第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側にD1方向へ挿入し、そして第2挿入開口11Rから第1挿入開口11P側にD2方向へ右腕の上腕Tを外す動作は、左手でこの把持部11Hを持って行うことができる。これにより、測定者は左右いずれの上腕Tに対しても、腕帯部2においてD1方向への上腕Tの装着動作あるいはD2方向への上腕Tの取り外し動作を容易に行うことができる。
逆に、図12に示すように、左腕の上腕Tを第2挿入開口11Rから第1挿入開口11P側にD2方向へ挿入し、そして第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側にD1方向へ左腕の上腕Tを外す動作は、右手でこの把持部11Hを持って行うことができる。また、右腕の上腕Tを第2挿入開口11Rから第1挿入開口11P側にD2方向へ挿入し、そして第1挿入開口11Pから第2挿入開口11R側にD1方向へ右腕の上腕Tを外す動作は、左手でこの把持部11Hを持って行うことができる。これにより、測定者は左右いずれの上腕Tに対しても、腕帯部2のD2方向への上腕Tの装着動作あるいはD1方向への上腕Tの取り外し動作を容易に行うことができる。
【0022】
図1と図3に示すように、本体ケース11の下側部分には、磁気吸着用部材の一例としての磁気吸着用のプレート部材210が設けられている。このプレート部材210は、例えば金属板であり、本体ケース11の軸方向に沿って長くなるように形成され、血圧計本体10のマグネット40Mにより磁気的に吸着されるようになっている。このプレート部材210とマグネット40Mは、腕帯部2を血圧計本体10に固定(あるいは結合)するための固定手段250を構成している。
【0023】
この固定手段250は、腕帯部2を血圧計本体10から持ち上げる時に、血圧計本体10と腕帯部2との結合力が解除される程度の力を有している。これにより、測定者が血圧測定をしない場合には腕帯部2が血圧計本体10からは簡単に転がってしまうことがなく、また測定者が血圧測定をしようとする場合には、腕帯部2が血圧計本体10から取りづらくなるということが無くなる。これにより、腕帯部2が血圧計本体10と別体になっていても、使用勝手が良い。
さらに好ましくは、このマグネット40Mがプレート部材210を磁気的に吸着する力は、例えば血圧計本体10の重量を超えるように設定することができる。これにより、測定者が電子血圧計1を運ぶ際に、測定者が血圧計本体10を持たずに腕帯部2だけを持ち上げてしまった場合に、腕帯部2から血圧計本体10だけが不用意に落下することを防止できる。
【0024】
また、すでに説明したように、プレート部材210は、本体ケース11の軸方向に沿って長くなるように形成されているので、腕帯部2は、血圧計本体10に対して、磁気的吸引力を維持しながら、血圧計本体11の窪み部分40に沿ってY方向に移動可能である。これにより、測定者が腕帯部2を血圧計本体10に対して、磁気的吸引力を維持しながらY方向に移動できるので、腕帯部2が表示部31に被さった状態から腕帯部2を後退させて、表示部31が腕帯部2により見えなくなってしまうという不都合を解消できる。このため、測定者は表示部31の表示内容を容易に確認でき、使用勝手が向上する。
【0025】
さらに、図1に示すように、腕帯部2が血圧計本体10の窪み部分40に配置されている収納状態では、開始/停止ボタン37が腕帯部2の下部にある。つまり、腕帯部2が収納されている状態では、測定者は開始/停止ボタン37を押せないようになっている。そして、測定者が腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から磁気的吸着力に抗して取り外せば、開始/停止ボタン37が露出するので、測定者はこの開始/停止ボタン37を押すことができる。
【0026】
図4と図5に示す空気袋14は、例えば、塩化ビニル,ウレタン、合成ゴム,天然ゴム等の伸縮性を有する材質で形成されている。図4に示すように、空気袋14は、図1に示す腕帯部2の第1挿入開口11Pからであっても、第2挿入開口11Rからであっても上腕Tを挿入して血圧測定できるように、ほぼ同じの矩形の開口部14Pと、反対側の開口部14Rを有している。
この空気袋14内へは、図1に示す血圧計本体10内の破線で示すポンプ44,45の作動により、チューブ4を通じてエアーを供給されることにより膨張することで上腕Tを圧迫する。空気袋14の内圧を一定速度で減圧するため、制御バルブ47により空気袋14内からエアーを徐々に外へ排気でき、測定を終了したときに、排気バルブ46により空気袋14内からエアーを外へ急排気できる。この空気袋14の詳しい構造については、後で説明する。
【0027】
図4と図5に示す外布16は、空気袋14の外側と本体ケース11の内側の間に配置され、変形可能で伸縮性のない布部材である外側部材に相当する。図4と図5に示す内布カバー17Cは、カフリングともいい、空気袋14の内側を覆うことができ、この内布カバー17Cを配置することで、測定者は上腕をスムーズに挿入したり外したりできる。内布カバー17Cは、上述した空気袋14の内側に着脱可能に配置でき、伸縮性を有する布部分17Dと2つのO−リング状のリング部材17F、17Gを有している。布部分17Dは、長さ方向と円周方向にいずれにも伸縮可能なナイロン、スパンデックス等のすべり性のあるストレッチ素材で形成されている。
【0028】
図6(A)は、外布16と空気袋14のユニットUTを示す斜視図であり、図6(B)は、このユニットUTを別の方向から見た斜視図であり、図6(C)は、ユニットUTを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
図6(A)と図6(B)に示すように、ユニットUTは4つに折り曲げてほぼ正方形断面の開口部14Rを形成することができる。ユニットUTは4つの折り曲げ部分200を有していることにより、図6(C)に示すように簡単に折りたたむことができる構造である。
図7(A)は、空気袋14とマイクロフォンMとマイクロフォンMSを示す斜視図であり、図7(B)は、空気袋14と外布16と内布カバー17Cと、マイクロフォンMとマイクロフォンMSを示す図である。図7(A)と図7(B)に示すように、2つのマイクロフォンMとマイクロフォンMSが空気袋14に取り付けられ、2つのマイクロフォンMは互いに向かい合い、2つのマイクロフォンMSは互いに向かい合っている。マイクロフォンMは第1マイクロフォンであり、マイクロフォンMSは第2マイクロフォンである。
図4に示すように、第1マイクロフォンMは、空気袋14の第2開口部14R寄りの位置に配置され、第2マイクロフォンMSは、空気袋14の第1開口部14P寄りの位置に配置されている。これにより、図4と図1に示すように、第1マイクロフォンMは第2挿入開口11R寄りの位置に配置され、第2マイクロフォンMSは第1挿入開口11P寄りの位置に配置される。しかも、図6と図7に示すように、第1マイクロフォンMと第2マイクロフォンMSは、空気袋14の内面側に配置されている。これにより、第1マイクロフォンMと第2マイクロフォンMSは、測定者の血流音を動脈に最も近い位置で検出できる。
【0029】
ここで、空気袋14の構造例を説明する。
図8は、空気袋14を形成するためのシート例を示している。
図8に示すシートSWは、ほぼ長方形状の例えば透明のプラスチックシートであり、伸縮性を備えていない例えばほぼ長方形状のプラスチック製のシート、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。このシートSWは、フィルタ付き接続管220、コードフック221、4つの折れ線部分222、接合部分223,224、2つのマイクロフォン保持部225を有している。
接続管220は、図1に示すチューブ4の端部を接続する。コードフック221は、図1に示す有線3とチューブ4を掛ける。接合部分223,224は熱圧着により空気袋14を形成する。2つのマイクロフォン保持部225は、それぞれマイクロフォンMを保持できる。残りの2つのマイクロフォン保持部225は、それぞれマイクロフォンMSを保持できる。合計4つのマイクロフォン保持部225は、空気袋14の内面側に配置されており、空気袋14の内面側は測定者の上腕の被測定面を圧迫する側の面である。
空気袋14は、第1マイクロフォンMと第2マイクロフォンMSを、測定者の上腕の被測定面を圧迫する側の面に直接保持させることができるので、測定者の血流音を容易に検知できる。シートSWは4つの折れ線部分222の部分で折り曲げることにより、図7に示す形状の空気袋14を形成できる。
【0030】
図9は、空気袋14を形成する工程例を示している。図10は、空気袋14の内面が測定者の被測定面HMを当接している様子を示す図である。
図9(A)に示すように、シートSWは、折り曲げ線226,227で折り曲げて,図9(B)に示すように接合部分223,224を接合する。そして、図9(C)に示すように、4つの折れ線部分222で折り曲げることで空気袋14が完成する。この空気袋14は、4つの側面部231,232,233,234を備える。
なお、図8(B)に示すように、この空気袋14内には、間隔をおいて3つのスペーサ240が配置されている。このスペーサ240は、弾性変形可能な直方体形状の部材であり、例えばプラスチックスポンジ等である。これにより、スペーサ240が配置されていることで、空気袋14が必要以上につぶれてしまうのを防止できる。
また、図8(B)と図10に示すように、空気袋14の幅Wは、好ましくは12cm以上である。空気袋14の内側が測定者の被測定面HMに対して少なくとも8cm以上当接していないと正しい血圧測定ができないので、8cm以上接しているためには、空気袋14の幅Wは12cm以上必要である。
【0031】
次に、図11は、図1の電子血圧計1のブロック構成図である。
図11に示す電子血圧計1の回路ブロックを説明する。電子血圧計1の回路ブロックの破線で示すように、血圧計本体10は、コロトコフ音(K音)検出システム50と、加圧システム51と、排気システム52と、圧力検出システム53と、電源システム54と、音声システム55と、制御システム56を有する。
【0032】
制御システム56は、表示部31の駆動部58と、タイマ59と、メモリ部69等を有する。表示部31の駆動部58は、表示部31を駆動制御して表示すべき項目を表示させる。メモリ部69は、制御システム56のCPU(中央処理部)により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)である。タイマ59は、各種の動作の時間のカウントを行う。操作部57は、制御システム56に電気的に接続されており、すでに説明した開始/停止ボタン37と、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38と、モード選択ボタン39を有している。
【0033】
図11のコロトコフ音(K音)検出システム50は、腕帯部2の2つのマイクロフォンMと、K音検出回路部60と、ノイズセンサ15と、ノイズセンサ検出回路部61を有している。2つのマイクロフォンMともう2つのマイクロフォンMSの合計4つのマイクロフォンは、K音検出回路部60を介して制御システム56に電気的に接続されている。
図3(A)に示すように、2つのマイクロフォンMは、図3(B)に示すように測定者の上腕TがD1方向に挿入された場合に、互いに対向した位置(上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置)になるように配置されている。同様にして、もう2つのマイクロフォンMSは、図12に示すように測定者の上腕TがD2方向に挿入された場合に、互いに対向した位置(上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置)になるように配置されている。これにより、2つの第1マイクロフォンMは、上腕Tを第1挿入開口11Pから挿入した状態で上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置にそれぞれ配置でき、2つの第2マイクロフォンMSは、上腕Tを第2挿入開口11Rから挿入した状態で上腕Tの動脈に近い位置と遠い位置にそれぞれ配置できる。
【0034】
図11の2つのマイクロフォンMともう2つのマイクロフォンMSは、測定者の動脈の血流音(血管情報)を検知し、K音検出回路部60はこの血流音からK音を検出して制御システム56にK音信号を伝える。制御システム56は、入力されたK音信号からコロトコフ音と、このコロトコフ音の発生ポイントと、消滅ポイントを検出する。ノイズセンサ15は、外部からマイクロフォンMともう2つのマイクロフォンMSに入る振動ノイズを検知して、ノイズセンサ検出回路部61を介して制御システム56にノイズ信号を送る。これにより、制御システム56は、K音信号からノイズを除去することで、K音検出信号の精度を高めている。
【0035】
図11に示す圧力検出システム53は、配管部63と、圧力センサ64と、チューブ4により構成されている。圧力センサ64は、アンプ65(ここではアンプ65は、フィルタ、積分A/D部も含んでいる)を介して制御システム56に電気的に接続されている。制御システム56は、K音信号を検出する。すなわち、加圧して血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時の最初のK音信号が検出された時点の圧力を最高血圧値に設定し、更に減圧を続けて血管の管路断面積が十分に拡がり、K音信号が検出されなくなったら、最後のK音信号が検出された時点の圧力を最低血圧値に設定する。また、制御システム56は、最高血圧値と最低血圧値から得られる血管脈動またはK音信号の出現間隔から脈拍数を演算する。
血流音(血管情報)は、血流の流れ方向に対して上流側(解剖学的に心臓に近い側)が下流側に先行して検知される。これを利用して、マイクロフォンMとマイクロフォンMSのどちらが心臓に近いか、つまりどちら側から上腕を挿入しているかを判断する。好適な判断アルゴリズムとしては、マイクロフォンMとマイクロフォンMSの検知する血流音のピークの検出時間を比較し、より速い検出時間を持つマイクロフォン側から測定者の上腕が挿入されていると判断するものである。
【0036】
加圧システム51は、ポンプ44,45と、ポンプの駆動部62を有する。制御システム56の指令により、駆動部62は、ポンプ44,45を駆動制御する。ポンプ44,45は、圧力検出システム53の配管部63を通じて腕帯部2の空気袋内に接続されている。
電子血圧計1では、腕帯部2内をポンプ44,45で加圧した後、微速度で排気して減圧しつつ圧力センサ64を用いて腕帯部2の空気袋内の圧力を検出すると同時に、マイクロフォンMともう2つのマイクロフォンMSを用いてコロトコフ音(K音)を検出する。そして、電子血圧計1は、K音信号と、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。
【0037】
次に、排気システム52について説明する。排気システム52は、2つの駆動部66,67と、排気バルブ(強制排気部)46と、制御バルブ(減圧制御部)47を有する。排気バルブ46と制御バルブ47は配管部63の途中に配置されている。制御システム56が駆動部66に指令をすることで、排気バルブ46の開閉を行い、制御システム56が駆動部67に指令をすることで、制御バルブ47の開閉を行う。
【0038】
電源システム54は、電池68と、電源コントロール部69Cと、電源監視部70を有する。電池68は、繰り返して充電可能な例えばリチウムイオン電池であるが、特に種類は限定されず、乾電池等でも良い。電池68の電圧は、電源コントロール部69Cにより制御されて制御システム56に供給されるとともに、ポンプ44,45の駆動電源、音声制御部71へ供給する電源でもある。電源監視部70は、電池68の残量等の監視を行う。また、ACアダプタを用いることで100Vの商用電源を用いることができる。
【0039】
音声システム55は、音声制御部71と、増幅部72を有している。音声制御部71と増幅部72は、制御システム56からの指令により制御される。音声制御部71は、制御システム56の指令により、音声による最高血圧値や最低血圧値、脈拍数等の測定情報や、音声による血圧測定操作のガイダンスデータもしくは音楽データを、増幅部72に送って増幅する。この増幅部72には、血圧計本体10に配置されたスピーカ43に電気的に接続されている。これにより、スピーカ43は、音声による最高血圧値や最低血圧値、脈拍数等の測定情報や、音声によるガイド用のアナウンスと音楽によるガイド用のアナウンスを発生することができる。
【0040】
次に、上述した電子血圧計1を用いて、血圧測定プログラムの手順に従って、血圧測定を行う例を説明する。
血圧測定プログラムでは、例えば通常モードM1、最高血圧モードM2、最低血圧モードM3を有する。以下に、これらのモードを順番に説明する。
(通常モードM1)
図1に示す腕帯部2の本体ケース11のプレート部材210は、すでに説明したように本体ケース11の軸方向に沿って長くなるように形成されており、腕帯部2は、このプレート部材210を用いて、血圧計本体10のマグネット40Mにより血圧計本体10の窪み部分40において磁気的に吸着して結合されている。図3に示すように、測定者は、この腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から、マグネット40Mの磁気的吸引力に抗して持ち上げることで、腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から容易に外すことができる。このように、測定者が血圧測定をする際には、腕帯部2を血圧計本体10から簡単に取り外すことができる。これにより、血圧計本体10の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で容易に血圧測定ができる。
【0041】
好ましくは、このマグネット40Mがプレート部材210を磁気的に吸着する力は、例えば血圧計本体10の重量を超えるように設定することができる。これにより、測定者が電子血圧計1を運ぶ際に血圧計本体10を持たずに腕帯部2だけを持ち上げてしまった場合に、腕帯部2から血圧計本体10だけが不用意に落下することを防止できる。
図1に示すように、腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40に載置された場合に、開始/停止ボタン37は腕帯部2の下側に位置しており、測定者が腕帯部2を血圧計本体10の窪み部分40から持ち上げて外さないと、開始/停止ボタン37が外部に露出しないようになっている。これにより、測定者は、腕帯部2を持ち上げて上腕Tを通して測定しようとする状態になってから、開始/停止ボタン37を押すことができるので、測定しない時に不用意に開始/停止ボタン37を押してしまうといったことが無くなる。
【0042】
次に、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕を第1挿入開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。測定者が図1に示すモード選択ボタン39を押して通常モードM1を選択した場合には、スピーカ43は、選択されたモードが通常モードM1であることを測定者に音により報知する。
測定者は図1の開始/停止ボタン37を押して血圧測定を開始する。図1のポンプ44,45が全速力で空気袋14を昇圧して、2つのマイクロフォンMが、測定者の血流音(血管情報)を検知して脈が消滅するまで全速力で腕帯部2内の空気袋14を昇圧する。制御システム56が脈の消失を判断したら腕帯部2内の昇圧を停止する。
そして、腕帯部2内を少しずつ減圧(例えば2〜5mmHg/秒)していき、最高血圧値と最低血圧値を検出する。最高血圧値と最低血圧値および脈拍数等を図1の表示部31に表示して、ポンプ44,45と排気バルブ46を作動して腕帯部2内の空気袋14を急排気する。このように、最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できた時点で、腕帯部2内の空気袋14を急排気することで、測定者の上腕に対する圧迫を即座に解消できるので、測定者への負担を軽減できる。
また、最高血圧値と最低血圧値および脈拍数等を図1の表示部31に表示するとともに、血圧計本体10のスピーカ43から、音声による最高血圧値と最低血圧値および脈拍数等の測定情報や、音声によるガイド用のアナウンスと音楽によるガイド用のアナウンスを発生できる。従って、血圧計本体10に配置されたスピーカ43からも最高血圧値や最適血圧値等の測定情報や、その他のガイダンス情報等を、測定者に音声により認識させることができる。
【0043】
(最高血圧モードM2)
また、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕を第1開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。測定者が図1に示すモード選択ボタン39を押して最高血圧モードM2を選択した場合には、スピーカ43は、選択されたモードが最高血圧モードM2であることを測定者に音により報知する。測定者は図1の開始/停止ボタン37を押して血圧測定を開始する。図1のポンプ44,45が全速力で空気袋14を昇圧して、2つのマイクロフォンMが、測定者の血流音を検知して脈が消滅するまで全速力で腕帯部2内の空気袋14を昇圧する。制御システム56が脈の消失を判断したら腕帯部2内の空気袋14の昇圧を停止する。
【0044】
そして、少しずつ減圧(例えば2〜5mmHg/秒)していき、図1のスピーカ43が腕帯部2内の空気袋14を減圧時のカフ値毎に、例えば10mmHg毎に圧力値を音声によりアナウンスし、最高血圧値を検出する。その後、図1のスピーカ43は最高血圧値と脈拍数を音声によるガイドでアナウンスして、ポンプ44,45と排気バルブ46を作動して腕帯部2内の空気袋14を急排気する。これにより、最高血圧値と脈拍数を音声によるガイドでアナウンスしながら腕帯部2内を急排気することで、測定者の上腕に対する圧迫を即座に解消できるので、測定者への負担を軽減できる。
また、最高血圧値や脈拍数等を図1の表示部31に表示するとともに、血圧計本体10のスピーカ43から、音声による最高血圧値や脈拍数等の測定情報や、音声による操作ガイド用のアナウンスと音楽によるガイド用のアナウンスを発生できる。従って、血圧計本体10に配置されたスピーカ43からも最高血圧値や脈拍数等の測定情報や、その他のガイダンス情報等を、測定者に音声により認識させることができる。
【0045】
(最低血圧モードM3)
また、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕を第1挿入開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入する。その後、測定者が図1に示すモード選択ボタン39を押して最低血圧モードM3を選択した場合には、スピーカ43は、選択されたモードが最低血圧モードM3であることを測定者に音により報知する。
測定者は図1の開始/停止ボタン37を押して血圧測定を開始する。少しずつ昇圧(例えば2〜5mmHg/秒)していき、図1のスピーカ43が腕帯部2内の空気袋14を昇圧時のカフ値毎に、例えば10mmHg毎に圧力値を音声アナウンスし、最低血圧値を検出する。その後、脈が消失したら昇圧を停止して、図3のスピーカ43が最低血圧値を音声によるガイドでアナウンスをするとともに、ポンプ44,45と排気バルブ46を作動して腕帯部2内の空気袋14を急排気する。
【0046】
ところで、上述した通常モードM1、最高血圧モードM2、最低血圧モードM3では、図3(B)に示すように、測定者は把持部11Hを把持しながら例えば右の上腕Tを第1挿入開口11Pから第2挿入開口11RにかけてD1方向に挿入して血圧測定を行っている。
しかし、測定者が上腕Tを図12に示すように、第2挿入開口11Rから第1挿入開口11PにかけてD2方向に挿入しても、上述した通常モードM1、最高血圧モードM2、最低血圧モードM3で血圧測定することができる。
【0047】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。例えば、図示例では、把持部11Hはほぼ扇型であるが、これに限らず任意の形状を採用できる。把持部11Hは、本体ケース11の長さ方向についてほぼ中央位置にもうけることができる。これにより、測定者が上腕Tを腕帯部2に挿入する動作は、D1方向であってもD2方向であっても、測定者は把持部11Hを持ってさらに容易に行うことができる。2つのマイクロフォンMともう2つのマイクロフォンMSは、空気袋14に取り付けるだけでなく、例えば腕帯部2の本体ケース11の内面に取り付けることもできる。
表示部31は、例えば液晶表示装置の他に、有機EL装置、蛍光表示装置等、特に種類は限定されない。
【0048】
図1等に示す本発明の実施形態では、マグネット40Mが血圧計本体10の窪み部分40に配置され、プレート部材210が腕帯部2のケーシングともいう本体ケース11側の底部に設けられている。しかし、これに限らず、逆の配置例として、プレート部材210が血圧計本体10の窪み部分40に配置され、マグネット40Mが腕帯部2の本体ケース11の底部に設けられても良い。
また、腕帯部2は血圧計本体10に対して、プレート部材210とマグネット40Mを用いた磁気的吸引力により着脱可能に固定しているが、これに限らず他の種類の固定方式を用いても良い。例えば、腕帯部と血圧計本体とは、オス型部材を有するテープ部材と、このオス型部材に対して着脱可能に機械的に取り付けることができるメス型部材を有するテープ部材を貼り付けることで、着脱可能に固定することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・電子血圧計、2・・・腕帯部、10・・・血圧計本体、11・・・本体ケース(硬質の筒体の一例)、・・・、11P、11R・・・開口部、16・・・外布、17C・・・内布カバー、31・・・表示部、M・・・マイクロフォン(第1マイクロフォン)、MS・・・別のマイクロフォン(第2マイクロフォン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の筒体を有する腕帯部と、血圧計本体と、を有し、前記腕帯部と前記血圧計本体とが別体に形成されており、前記腕帯部内には測定者の上腕を圧迫する空気袋が配置され、
前記腕帯部は、第1挿入開口と、前記第1挿入開口と反対側に形成された第2挿入開口とを有する筒体に形成されており、
前記腕帯部は、前記測定者の上腕を前記第1挿入開口から前記第2挿入開口に向けて挿入した状態で前記測定者の血流音を検知する第1マイクロフォンと、
前記測定者の上腕を前記第2挿入開口から前記第1挿入開口に向けて挿入した状態で前記測定者の血流音を検知する第2マイクロフォンと
を備えることを特徴とする電子血圧計。
【請求項2】
前記第1マイクロフォンと前記第2マイクロフォンは、前記空気袋に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記空気袋には、2つの前記第1マイクロフォンと2つの前記第2マイクロフォンをそれぞれ保持するマイクロフォン保持部を有し、2つの前記第1マイクロフォンは対向して保持され、2つの前記第2マイクロフォンは対向して保持されていることを特徴とする請求項2に記載の電子血圧計。
【請求項4】
前記第1マイクロフォンと前記第2マイクロフォンは、前記空気袋の内面側に配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の電子血圧計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−83430(P2011−83430A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238508(P2009−238508)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】