説明

電子装置の取付構造

【課題】電子部品が搭載された回路基板をベース筺体に取り付けてなる電子装置を、防振ゴムを介して、被取付部材の被取付面に取り付けてなる取付構造において、ベース筺体と被取付面との間に防振ゴムを2個直列に配置することなく、被取付面に平行な第1の方向および被取付面に直交する第2の方向の両方向にて電子装置に伝搬する振動を減衰するのに適した構成を提供する。
【解決手段】ベース筺体30において回路基板20の外郭よりはみ出すはみ出し部には、被取付面2aと平行な第1の方向X、Yに沿って被取付部材2によって電子装置1に伝搬する第1の振動を減衰する第1の防振ゴム70と、被取付面2aと直交する第2の方向Zに沿って被取付部材2によって電子装置1に伝搬する第2の振動を減衰する第2の防振ゴム80とが、それぞれ平面的に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置を被取付部材に取り付けてなる電子装置の取付構造に関し、たとえばECUなどの電子装置を車両のエンジンに取り付ける場合に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電子装置の取付構造は、電子部品が搭載された回路基板をベース筺体に取り付けてなる電子装置を、被取付部材の被取付面に取り付けてなる構造を有している。たとえば電子装置は自動車用のECUなどであり、被取付部材は自動車のエンジンなどである。
【0003】
ここで、被取付部材にて発生する振動が電子装置に伝達されるのを抑制するために、ベース筺体と被取付面との間に、当該振動を減衰させる防振ゴムを介在させる手段が考えられる。また、この振動としては、被取付面に平行な第1の方向に沿った第1の振動と、被取付面に直交する方向に沿った第2の振動とがあるが、これら両振動を減衰させることが必要となる。
【0004】
従来では、このような第1および第2の振動を減衰させる防振ゴムの機構として、たとえば特許文献1に記載されているように、第1の振動を減衰させる第1の防振ゴムと第2の振動を減衰させる第2の防振ゴムとを直列に接続したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−242847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、第1の防振ゴムと第2の防振ゴムを直列に構成したものであるために、被取付面に直交する方向に、防振ゴムおよび電子装置が大きく出っ張ったものとなってしまう。
【0007】
そうすると、たとえばエンジンにECUを取り付けたような場合には、当該エンジン周りの配管、及び補機類の配置設計が困難になるという問題が生じる。また、上記特許文献1のものでは、第1の防振ゴムと第2の防振ゴムの間を副フレームで連結するためにコストアップとなるし、その強度設計にも開発費がかさむなどの問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電子部品が搭載された回路基板をベース筺体に取り付けてなる電子装置を、防振ゴムを介して、被取付部材の被取付面に取り付けてなる取付構造において、ベース筺体と被取付面との間に防振ゴムを2個直列に配置することなく、被取付面に平行な第1の方向および被取付面に直交する第2の方向の両方向にて電子装置に伝搬する振動を減衰するのに適した構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電子部品(10)が搭載された回路基板(20)をベース筺体(30)に取り付けてなる電子装置(1)を、被取付部材(2)の被取付面(2a)に取り付けてなる電子装置の取付構造において、ベース筺体(30)は、回路基板(20)の外郭端部よりはみ出すはみ出し部(33)を有するものであり、はみ出し部(33)と被取付面(2a)との間に防振ゴム(70、80)を介してベース筺体(30)が被取付面(2a)に取り付けられており、防振ゴムとして、被取付面(2a)と平行な第1の方向に沿って被取付部材(2)によって電子装置(1)に伝搬する第1の振動を減衰する第1の防振ゴム(70)と、被取付面(2a)と直交する第2の方向に沿って被取付部材(2)によって電子装置(1)に伝搬する第2の振動を減衰する第2の防振ゴム(80)とが、それぞれはみ出し部(33)に平面的に配置されていることを特徴としている。
【0010】
それによれば、第1の方向に沿って発生する第1の振動を減衰する第1の防振ゴム(70)と、第2の方向に沿って発生する第2の振動を減衰する第2の防振ゴム(80)とが、それぞれベース筺体(30)のはみ出し部(33)に平面的に配置されているから、ベース筺体(30)と被取付面(2a)との間に防振ゴムを2個直列に配置することなく、被取付面(2a)に平行な第1の方向および被取付面(2a)に直交する第2の方向の両方向にて電子装置(1)に伝搬する振動を減衰するのに適した構成を実現することができる。
【0011】
ここで、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の電子装置の取付構造においては、第1の防振ゴム(70)、第2の防振ゴム(80)は、ともにはみ出し部(33)にて、第2の方向に延びるように設けられた穴(34)に挿入されて、取り付けられているものであり、第1の防振ゴム(70)は、穴(34)の側面に対向する面に、第1の方向に向かって突出し突出先端が穴(34)の側面に接触する凸部(73)を有するものであって、この凸部(73)の第1の方向への弾性変形により、第1の振動を減衰するものであり、第2の防振ゴム(80)は、穴(34)の被取付面(2a)側に位置する開口縁部と対向する面に、第2の方向に向かって突出し突出先端が前記穴(34)の開口縁部に接触する凸部(83)を有し、この凸部(83)の第2の方向への弾性変形により、第2の振動を減衰するものであるようにできる。
【0012】
それによれば、第1の防振ゴム(70)、第2の防振ゴム(80)の両者を、ベース筐体(30)のはみ出し部(33)の穴(34)に対して、ともに挿入により容易に組み付けられるとともに、第1の防振ゴム(70)の凸部(73)により第1の振動を、第2の防振ゴム(80)の凸部(83)により第2の振動を、それぞれ適切に減衰させることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の電子装置の取付構造において、電子部品(10)のうち第1の防振ゴム(70)および第2の防振ゴム(80)の合成振動伝達特性において減衰できず、むしろ振動が増幅される振動数域に、その固有振動数を有するものについては、接着剤(25)により回路基板(10)に接着固定されていることを特徴とする。
【0014】
それによれば、振動が増幅される振動数域、すなわち低い振動数域に固有振動数を有する電子部品(10)を、回路基板(20)に接着固定することにより、固有振動数を高くさせることができ、第1および第2の防振ゴム(70、80)で減衰可能な振動数まで、その固有振動数を高くすることになるため、部品が振動により壊れることを防ぐことが可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置の取付構造において、第1の防振ゴム(70)および第2の防振ゴム(80)の全体の重心と、電子装置(1)の重心とが一致していることを特徴とする。
【0016】
それによれば、第1の防振ゴム(70)および第2の防振ゴム(80)の個々に対して、均等に力が加わりやすくなり、耐久性に優れるなどの効果が期待できる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子装置の取付構造において、防振ゴム(70、80)は、回路基板(20)の対角位置の外郭両端部に位置するはみ出し部(33)に設けられており、回路基板(20)を挟んで一方の対角位置の一端部側のはみ出し部(33)と、他端部側のはみ出し部(33)とに、それぞれ1個ずつ第1の防振ゴム(70)が設けられており、
回路基板(20)を挟んでもう一方の対角位置の一端部側のはみ出し部(33)と、他端部側のはみ出し部(33)とに、それぞれ1個ずつ第2の防振ゴム(80)が設けられており、
一方の対角位置に設けられた2つの第1の防振ゴム(70)を結ぶ仮想直線と、もう一方の対角位置に設けられた2つの第2の防振ゴム(80)を結ぶ仮想直線とが交差するように、個々の防振ゴムが配置されていることを特徴とする。
【0018】
それによれば、第1の防振ゴム(70)、第2の防振ゴム(80)をそれぞれ2個ずつ用いて、電子装置(1)の周辺部に均等に配置した構成となりやすく、好ましい。
【0019】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置の被取付部材への取付構造を示す概略外観図である。
【図2】図1中の電子装置の被取付面に対向する面側の構成を示す概略平面図である。
【図3】(a)は第1の防振ゴムの雄ゴム部の概略斜視図、(b)は第2の防振ゴムの雄ゴム部の概略斜視図である。
【図4】(a)は第1の防振ゴムのネジ止め前の組み付け状態を示す概略断面図、(b)は第2の防振ゴムのネジ止め前の組み付け状態を示す概略断面図である。
【図5】(a)は第1の防振ゴムのネジ止め後の組み付け状態を示す概略断面図、(b)は第2の防振ゴムのネジ止め後の組み付け状態を示す概略断面図である。
【図6】第1の方向(X、Y)の振動に対する第1の防振ゴムと第2の防振ゴムの合成振動伝達特性を示す図である。
【図7】第2の方向(Z)の振動に対する第1の防振ゴムと第2の防振ゴムの合成振動伝達特性を示す図である。
【図8】電子部品を回路基板に接着した構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る電子装置1の被取付部材2への取付構造を示す概略外観図であり、図2は、本電子装置1の被取付面2aに対向する面側の構成を示す概略平面図である。
【0023】
電子装置1は、大きくは、電子部品10が搭載された回路基板20をベース筺体30に取り付けてなるもので、たとえば自動車のECUなどとして構成されている。
【0024】
ベース筺体30は、たとえばアルミダイキャスト、鉄系金属などよりなる板状をなすものであり、ここでは、矩形板状をなす。このベース筺体30の一方の板面31は回路基板20が取り付けられる基板取付面31であり、他方の板面32は、被取付部材2の被取付面2aに対向する被取付部材対向面32である。
【0025】
回路基板20は、ベース筺体30よりも一回り小さい板状をなすものであり、ここでは、矩形板状を成している。この回路基板20としては、セラミック基板や樹脂基板などよりなる一般的な配線基板が採用される。そして、この回路基板20の一板面21側には、一般的な表面実装部品やスルーホール実装部品などよりなる電子部品10が搭載されている。
【0026】
また、回路基板20は、上記した一板面21とは反対側の他方の板面22をベース筺体30の基板取付面31に対向させて、ベース筺体30に取り付けられている。この回路基板20とベース筺体30とは、たとえば接着やネジ止めなどにより接合され固定されている。
【0027】
また、ベース筺体30は、回路基板20よりも一回り大きな板状をなすので、ベース筐体30には回路基板20の外郭よりはみ出す部分が存在し、このはみ出し部分ははみ出し部33として構成されている。ここで、ベース筺体30の基板取付面31において、はみ出し部33には、回路基板20および電子部品10を封止する樹脂製、または金属製のカバー40が、接着や嵌合、締結などにより取り付けられている。
【0028】
被取付部材2は、たとえば自動車のエンジン本体を構成するエンジンブロックであり、その一表面が、電子装置1が取り付けられる被取付面2aとして構成されている。そして、電子装置1は、ベース筺体30の被取付部材対向面32を被取付面2aに対向させた状態で、被取付面2aにネジなどの固定部材50により固定されている。ここでは、固定部材50は、典型的な鉄系金属などよりなるネジ50とされている。
【0029】
また、はみ出し部33と被取付面2aとの間に複数個の防振ゴム70、80を介して、ベース筺体30は被取付面2aに取り付けられている。これら複数個の防振ゴム70、80は、被取付部材2に発生する振動を電子装置1に伝わりにくくするために、振動を減衰させて伝達するものであり、個々のものがはみ出し部33において平面的に配置されている。
【0030】
複数個の防振ゴム70、80は、被取付面2aと平行な第1の方向X、Yに沿って被取付部材2によって電子装置1に発生する第1の振動を減衰する第1の防振ゴム70と、被取付面2aと直交する第2の方向Zに沿って被取付部材2によって電子装置1に発生する第2の振動を減衰する第2の防振ゴム80とよりなる。
【0031】
ここで、第1の方向は、図1、図2中のX、Yの2方向を意味するものではなく、被取付面2aと平行な方向であればよい。そして、これら第1の防振ゴム70および第2の防振ゴム80は、それぞれ回路基板20の外周にてベース筺体30のはみ出し部33に平面的に配置されている
つまり、第1の防振ゴム70および第2の防振ゴム80は、従来のように被取付面2aに直交方向に直列に配置するのではなく、被取付面2aと平行な平面に沿って平面的に配置されているのである。ここでは、図2に示されるように、それぞれ2個ずつの第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80が、回路基板20の対角の両端部に位置するはみ出し部33に設けられている。
【0032】
具体的には、回路基板20を挟んで一方の対角端部のはみ出し部33と、他の端部側のはみ出し部33とに、それぞれ1個ずつ第1の防振ゴム70が設けられており、回路基板20を挟んで他方の対角端部のはみ出し部33と、他の端部側のはみ出し部33とに、それぞれ1個ずつ第2の防振ゴム80が設けられている。
【0033】
そして、一方の対角に位置する2つの第1の防振ゴム70を結ぶ仮想直線(図2中の一点鎖線)と、他方の対角に位置する第2の防振ゴム80を結ぶ仮想直線(図2中の一点鎖線)とが交差するように、個々の防振ゴム70、80が配置されている。
【0034】
この図2に示される4個の防振ゴム70、80の配置構成によれば、各防振ゴム70、80が電子装置1の周辺部に均等に配置され構成となり、各防振ゴム70、80に加わる力を均等にするためには望ましいものとなる。
【0035】
ここでは、2個の第1の防振ゴム70同士を結ぶ上記仮想直線と2個の第2の防振ゴム80同士を結ぶ上記仮想直線との交差点が、複数個の防振ゴム70、80の全体の重心(合成重心)であり、図2に示されるように、これら防振ゴムの重心(合成重心)は、電子装置1の重心Gと一致していることが望ましい。
【0036】
次に、本実施形態の防振ゴム70、80について、図3、図4、図5を参照して、より詳細に述べる。図3において、(a)は第1の防振ゴム70の雄ゴム部71の概略斜視図、(b)は第2の防振ゴム80の雄ゴム部81の概略斜視図である。
【0037】
また、図4において、(a)は第1の防振ゴム70のネジ止め前の組み付け状態を示す概略断面図、(b)は第2の防振ゴム80のネジ止め前の組み付け状態を示す概略断面図であり、また、図5において、(a)は第1の防振ゴム70のネジ止め後の組み付け状態を示す概略断面図、(b)は第2の防振ゴム80のネジ止め後の組み付け状態を示す概略断面図である。
【0038】
図3〜図5に示されるように、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80は、共に、ベース筺体30のはみ出し部33にて、第2の方向Zに延びるように設けられたゴム取付用の穴34(図2も参照)に挿入されて、取り付けられているものである。ここでは、ゴム取付用の穴34は、ベース筺体30の基板取付面31から被取付部材対向面32へ貫通する穴とされている。
【0039】
具体的には、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80は、共に、図4、図5に示されるように、雄ゴム部71、81とこの雄ゴム部71、81が挿入・嵌合される雌ゴム部72、82とよりなるブッシュタイプのものである。これら両防振ゴム70、80は、典型的にはシリコンゴムよりなり、たとえば硬度(HsA)が40〜60程度のものである。
【0040】
両防振ゴム70、80の雄ゴム部71、81は、ゴム取付用の穴34に挿入される筒状の筒部71a、81aと、その筒部71a、81aの一端にて筒部71a、81aの軸方向に張り出す張り出し部71b、81bとが一体成形されたものである。ここで、張り出し部71b、81bは、ゴム取付用の穴34に入らず穴34の開口サイズよりも大きなものである。
【0041】
また、両防振ゴム70、80の雌ゴム部72、82は、雄ゴム部71、81の筒部71a、81aの他端が挿入・嵌合される穴を有する板状をなすものであり、これも、ゴム取付用の穴34に入らず穴34の開口サイズよりも大きなものである。ここでは、両防振ゴム70、80の雄ゴム部71、81は張り出し部71b、81bを段とする段付き円筒状をなし、雌ゴム部72、82は円筒状をなしている。
【0042】
そして、各防振ゴム70、80においては、ゴム取付用の穴34に対して、被取付部材対向面32側から雄ネジ部71、81の筒部71a、81aを挿入し、基板取付面31側にて当該筒部71a、81aを雌ゴム部72、82に挿入・嵌合させる。
【0043】
そうすることにより、各防振ゴム70、80は、張り出し部71b、81bおよび雌ゴム部72、82によって、ゴム取付用の穴34から外れないように組み付けられる。このように、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80は共に、ゴム取付用の穴34に対して挿入することで容易に組み付けられる。
【0044】
その後は、図4に示されるように、各防振ゴム70、80の筒部71、81に固定部材であるネジ50を挿入し、このネジ50を被取付部材2にネジ止めすることにより、図5に示されるように、電子装置1のベース筺体30は防振ゴム70、80を介して被取付部材2に固定される。
【0045】
ここで、ネジ50の締結力により、各防振ゴム70、80は圧縮されて若干潰れるが、過度な圧縮を規制するため、各防振ゴム70、80の表面には鉄系金属などよりなる金属材90で被覆されている。
【0046】
具体的には、金属材90は、筒部71a、81aの内表面を被覆する円筒状のもの、張り出し部71b、81bにおける被取付面2aとの対向面を被覆する穴空き円板状のもの、雌ゴム部72、82におけるネジ50との接触面を被覆する穴空き円板状のものよりなる。なお、各防振ゴム70、80としては、この金属材90は省略された構成であってもよい。
【0047】
さらに、図3〜図5に示されるように、本実施形態の各防振ゴム70、80においては、それぞれ振動を減衰するための凸部73、83が一体に成形されている。第1の防振ゴム80は、ゴム取付用の穴34の側面に対向する面に、第1の方向X、Yに向かって突出し突出先端が穴34の側面に接触する凸部73を有する。
【0048】
詳しくは、図3(a)に示されるように、第1の防振ゴム70のうち筒部71aの側面に、筒部71aの軸方向に延びるとともに第1の方向X、Yに沿って突出するリブ状の凸部73が形成されている。そして、この凸部73の第1の方向X、Yへの弾性変形すなわち凸部73の突出厚さ方向への弾性変形により、第1の振動が減衰されるようになっている。
【0049】
また、第2の防振ゴム80は、ゴム取付用の穴34の被取付面2a側に位置する開口縁部と対向する面に、第2の方向Zに向かって突出し突出先端が穴34の当該開口縁部に接触する凸部83を有する。
【0050】
詳しくは、図3(b)に示されるように、第2の防振ゴム80のうち張り出し部81bにおける穴34の当該開口縁部に対向する面に、筒部81aを中心に放射状に延びるとともに第2の方向Zに沿って突出するリブ状の凸部83が形成されている。そして、この凸部83の第2の方向Zへの弾性変形すなわち凸部83の突出厚さ方向への弾性変形により、第2の振動が減衰されるようになっている。
【0051】
このように、本実施形態によれば、第1の方向X、Yに沿って発生する第1の振動を減衰する第1の防振ゴム70と、第2の方向Zに沿って発生する第2の振動を減衰する第2の防振ゴム80とが、それぞれベース筺体30のはみ出し部33に平面的に配置されているから、ベース筺体30と被取付面2aとの間に防振ゴムを2個直列に配置することなく、被取付部材2によって両方向X、Y、Zにて電子装置1に伝搬する振動を減衰するのに適した構成が実現される。
【0052】
また、上述したが、本実施形態においては、第1の防振ゴム70および第2の防振ゴム80の全体の重心と、電子装置1の重心とが一致していることが好ましく、それによれば、第1の防振ゴム70および第2の防振ゴム80の個々に対して、均等に力が加わりやすくなり、耐久性に優れたものとなる。
【0053】
ここで、図6は、第1の方向(X、Y)の振動に対する第1の防振ゴム70と第2の防振ゴム80の振動伝達特性を示す図であり、図7は、第2の方向(Z)の振動に対する第1の防振ゴム70と第2の防振ゴム80の振動伝達特性を示す図であり、それぞれ横軸に振動数、縦軸に伝達率を示している。これら伝達特性においては、伝達率が1倍未満の場合、被取付部材2から電子装置1に伝わる振動の減衰がなされ、1倍よりも大きいと当該振動が増幅されて伝わることとなる。
【0054】
図6に示されるように、第1の方向(X、Y)の振動に対して、第2の防振ゴム80に比べ第1の防振ゴム70の方が減衰性能が優れ、第1の防振ゴム70と第2の防振ゴム80の合成振動伝達率が1以上となる低振動数域では振動が増幅されるが、1未満となる高振動数域では振動が減衰される。
【0055】
また、図7に示されるように、第2の方向(Z)の振動に対しては、第1の防振ゴム70に比べ第2の防振ゴム80の方が減衰性能に優れ、第1の防振ゴム70と第2の防振ゴム80の合成振動伝達率が1以上となる低振動数域では振動が増幅されるが、1未満となる高振動数域では振動が減衰される。
【0056】
よって、本実施形態では、図6、図7に示される振動伝達率が1以上、すなわち防振ゴム70、80により振動が増幅されて伝達される低振動数域に、回路基板20や回路基板に実装されている電子部品10の固有振動数があると、固有振動数では振動加速度が10倍以上となり、たとえば回路基板20にスルーホール実装された電子部品10としてのアルミ電解コンデンサのリードが振動で折れてしまう等の不具合が発生する。
【0057】
このようなことから、本実施形態では、回路基板20およびそれに実装される電子部品10の固有振動数を、第1および第2の防振ゴム70、80の合成振動伝達率が1未満となる高振動数域に高くすることで、被取付部材2からの振動が増幅されて電子部品10に伝達されるのを防止するべく、回路基板20、電子部品10、各防振ゴム70、80を設計する。
【0058】
その場合、回路基板20に対しては、ねじ固定点を増やすことで、基板の固有振動を高くできる。電子部品10、たとえばアルミ電解コンデンサについては、図8に示されるように、エポキシなどよりなる接着剤25により回路基板10に接着固定することで、電子部品の固有振動数を高くできる。
【0059】
防振ゴムの設計は、振動減衰性能を高くするには、硬度が小さく柔らかい材料を選定すればよいが、その場合、振動耐久性能が低くなるので、回路基板20と電子部品10の実装形態とのバランスをとることが望ましい。
【0060】
図8では、当該電子部品10は、回路基板20の穴23にリード11をはんだ24により接続してなるスルーホール実装部品であり、その電子部品10と回路基板20との間には、接着剤25が充填されるて接着固定が行われている。
【0061】
それによれば、減衰されない低い固有振動数を有する電子部品10を、回路基板20に接着固定することにより、振動耐久性能を確保した第1および第2の防振ゴム70、80で減衰可能な振動数まで、その固有振動数を高くすることが可能となる。
【0062】
(他の実施形態)
上記実施形態では、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80の各凸部73、83はリブ形状であったが、たとえば第1の防振ゴム70の筒部71aの長さ方向の一部において当該筒部71aの側面全周を取り巻く環状の凸部73でもよいし、筒部71aの側面に点在する島状の凸部73でもよい。また、第2の防振ゴム80についても、張り出し部81bにおける上記ゴム取付用の穴34の開口縁部との対向面にて、点在する島状の凸部83などでもよい。
【0063】
また、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80は、被取付部材2によってそれぞれ第1の方向X、Yに沿って伝搬する第1の振動を減衰するもの、第2の方向Zに沿って伝搬する第2の振動を減衰するものであるならば、上記図3〜図5に示される形状のもの以外の形状が適用可能である。
【0064】
また、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80は、上記したように、それぞれ2個ずつ、計4個に限るものではなく、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80を少なくとも1個含むものであり、これらがはみ出し部33にて平面的に配置されたものであれば、計3個でもよいし、5個以上でもよい。
【0065】
たとえば、3個の場合には、回路基板20の外周のはみ出し部33にて3個の防振ゴム70、80が三角形状に配置されるようにし、5個の場合には五角形状の配置とすればよい。さらには、これら複数個の防振ゴム70、80の全体の重心と電子装置1の重心とが一致することが望ましい。
【0066】
また、第1の防振ゴム70、第2の防振ゴム80をベース筐体30へ取り付ける固定部材50としては、上記したネジ50に限るものではなく、一般的な種々のものが適用可能である。また、ベース筐体30は、上記はみ出し部33を有するものであればよく、上記した板状のもの以外にも、たとえば容器形状のものなどであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 電子装置
2 被取付部材
2a 被取付面
10 電子部品
20 回路基板
21 回路基板の一板面
25 接着剤
30 ベース筺体
33 はみ出し部
34 ゴム取付用の穴
70 第1の防振ゴム
73 第1の防振ゴムの凸部
80 第2の防振ゴム
83 第2の防振ゴムの凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(10)が搭載された回路基板(20)をベース筺体(30)に取り付けてなる電子装置(1)を、被取付部材(2)の被取付面(2a)に取り付けてなる電子装置の取付構造において、
前記ベース筺体(30)は、前記回路基板(20)の外郭端部よりはみ出すはみ出し部(33)を有するものであり、
前記はみ出し部(33)と被取付面(2a)との間に防振ゴム(70、80)を介して前記ベース筺体(30)が前記被取付面(2a)に取り付けられており、
前記防振ゴムとして、前記被取付面(2a)と平行な第1の方向に沿って前記被取付部材(2)によって前記電子装置(1)に伝搬する第1の振動を減衰する第1の防振ゴム(70)と、前記被取付面(2a)と直交する第2の方向に沿って前記被取付部材(2)によって前記電子装置(1)に伝搬する第2の振動を減衰する第2の防振ゴム(80)とが、それぞれ前記はみ出し部(33)に平面的に配置されていることを特徴とする電子装置の取付構造。
【請求項2】
前記第1の防振ゴム(70)、前記第2の防振ゴム(80)は、ともに前記はみ出し部(33)にて、前記第2の方向に延びるように設けられた穴(34)に挿入されて、取り付けられているものであり、
前記第1の防振ゴム(70)は、前記穴(34)の側面に対向する面に、前記第1の方向に向かって突出し突出先端が前記穴(34)の側面に接触する凸部(73)を有するものであって、この凸部(73)の前記第1の方向への弾性変形により、前記第1の振動を減衰するものであり、
前記第2の防振ゴム(80)は、前記穴(34)の前記被取付面(2a)側に位置する開口縁部と対向する面に、前記第2の方向に向かって突出し突出先端が前記穴(34)の前記開口縁部に接触する凸部(83)を有し、この凸部(83)の前記第2の方向への弾性変形により、前記第2の振動を減衰するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置の取付構造。
【請求項3】
前記電子部品(10)のうち前記第1の防振ゴム(70)および前記第2の防振ゴム(80)の合成振動伝達特性において減衰できず振動が増幅される振動数域に固有振動数を有するものについては、接着剤(25)により前記回路基板(10)に接着固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置の取付構造。
【請求項4】
前記第1の防振ゴム(70)および前記第2の防振ゴム(80)の全体の重心と、前記電子装置(1)の重心とが一致していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置の取付構造。
【請求項5】
前記防振ゴム(70、80)は、前記回路基板(20)の対角位置の外郭両端部に位置する前記はみ出し部(33)に設けられており、
前記回路基板(20)を挟んで一方の対角位置の一端部側の前記はみ出し部(33)と、他端部側の前記はみ出し部(33)とに、それぞれ1個ずつ前記第1の防振ゴム(70)が設けられており、
前記回路基板(20)を挟んでもう一方の対角位置の一端部側の前記はみ出し部(33)と、他端部側の前記はみ出し部(33)とに、それぞれ1個ずつ前記第2の防振ゴム(80)が設けられており、
一方の対角位置に設けられた2つの前記第1の防振ゴム(70)を結ぶ仮想直線と、もう一方の対角位置に設けられた2つの前記第2の防振ゴム(80)を結ぶ仮想直線とが交差するように、個々の前記防振ゴムが配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−138474(P2012−138474A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290029(P2010−290029)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】