説明

電子装置の製造方法、電子装置、電子装置パッケージの製造方法および電子装置パッケージ

【課題】再配置型の電子装置の製造工程において、電子部品の位置ずれが発生せず、また、封止材や電子部品に破損が生じにくく、残渣が付着した場合でも簡便に除去することが可能な電子装置の製造方法、電子装置、電子装置パッケージの製造方法および電子装置パッケージを提供する。
【解決手段】支持基板50に固定樹脂層60を形成する工程と、電子部品11を固定する工程と、封止材層70を形成する工程と、電子部品配置封止材硬化物80を得る工程と、電子部品配置封止材硬化物80を支持基板50から剥離する工程とを有し、前記剥離する工程においては、固定樹脂層60に活性エネルギー線を照射したのち固定樹脂層60を加熱して溶融することにより、電子部品配置封止材硬化物80を支持基板50から剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法、電子装置、電子装置パッケージの製造方法および電子装置パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路を搭載する半導体チップ等の電子部品は、様々な用途に用いられるようになり、多岐にわたる機能が求められている。また、情報処理量の増大および処理能力の高速化の要求があり、半導体チップの高密度化が進んできており、半導体チップの配線数が増えてきているが、配線ピッチには限界があり、また、入出力の配線数は半導体チップの面積に依存されるものであり、配線数には限界があった。
【0003】
このような問題を解決し高密度実装を実現するために、半導体チップを電気的に積層するCOC(チップ オン チップ)技術が提案されているが、半導体チップを積層する際の歩留りが悪いという問題や接続信頼性が悪いといった問題が発生する場合があった。
【0004】
このような問題に鑑み、支持基板に接着層を形成し、次に、接着層上に個片化した半導体チップ等の電子部品を間隔を空けて配置および固定し、次いで、半導体封止材等の封止材で電子部品を覆うように封止し、次いで、電子部品が配置された封止材の硬化物を接着層から剥離し、次いで、電子部品の接着層に接していた面に再配線技術を利用して、電子部品の外径よりも外側に配線を引きまわし、入出力の配線数を増大させ高密度化に対応する再配置型の電子装置が提案されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この再配置型の電子装置に使われる接着層は、封止材で封止する温度において電子部品が位置ずれを起こさないように電子部品を支持基板に固定する機能を有し、さらに、封止材を熱硬化させた後、電子部品が配置された封止材の硬化物を接着層が設けられた支持基板から容易に剥離し得ることが要求される。また、この剥離の際に、電子部品が配置された封止材の硬化物に接着層の残渣が付着しないことが好ましい。
【0006】
一方、従来提案されている接着層は、熱可塑性の接着層や熱発泡型の接着層であるため、電子部品を位置ずれが生じることなく固定する機能、封止材の硬化物を支持基板から容易に剥離させる機能、さらには残渣が付着しない機能を両立することは困難であった(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0007】
電子部品が位置ずれしてしまうと、その後の再配線プロセスで正確に再配線することができず、また、封止材の硬化物を容易に剥離させることができないと、封止材や電子部品に亀裂等が生じ破損の原因となり、さらに、接着層の残渣が電子部品が配置された封止材の硬化物に付着すると、電子装置の信頼性が低下するといった問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−287235号公報
【特許文献2】特開2005−191296号公報
【特許文献3】特開2005−243702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、再配置型の電子装置の製造工程において、電子部品の位置ずれが発生せず、また、封止材や電子部品に破損が生じにくく、さらに、たとえ残渣が付着した場合でも簡便に除去することが可能な電子装置の製造方法、かかる電子装置の製造方法で作製された信頼性の高い電子装置、かかる電子装置の製造方法を含む電子装置パッケージの製造方法、および、かかる電子装置パッケージの製造方法で作製された信頼性の高い電子装置パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(15)に記載の本発明により達成される。
(1) 支持基材の表面に固定樹脂層を設ける固定樹脂層形成工程と、
該固定樹脂層上に、互いに隣接するもの同士間に隙間が形成されるように複数の電子部品を配置し、前記固定樹脂層を介して前記支持基材上に前記電子部品を固定する電子部品固定工程と、
封止材で前記電子部品を覆い、前記固定樹脂層および前記電子部品上に封止材層を形成させる封止材層形成工程と、
前記封止材を加熱することにより前記封止材を硬化し、前記支持基材に支持されており、前記電子部品が配置された電子部品配置封止材硬化物を得る封止材硬化工程と、
前記支持基材に支持されている前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させる剥離工程とを有する電子装置の製造方法であり、
前記剥離工程において、前記固定樹脂層に活性エネルギー線を照射したのち前記固定樹脂層を加熱して溶融させることにより、前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0011】
(2) 前記封止材硬化工程で前記封止材を加熱する温度が、前記剥離工程で前記固定樹脂層を溶融させる温度よりも低い上記(1)に記載の電子装置の製造方法。
【0012】
(3) 前記剥離工程で前記固定樹脂層を溶融させる温度が130〜200℃である上記(1)または(2)に記載の電子装置の製造方法。
【0013】
(4) 前記固定樹脂層の前記活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度が、0.01〜100Pa.sである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【0014】
(5) 支持基材の表面に固定樹脂層を設ける固定樹脂層形成工程と、
該固定樹脂層上に、互いに隣接するもの同士間に隙間が形成されるように複数の電子部品を配置し、前記固定樹脂層を介して前記支持基材上に前記電子部品を固定する電子部品固定工程と、
封止材で前記電子部品を覆い、前記固定樹脂層および前記電子部品上に封止材層を形成させる封止材層形成工程と、
前記封止材を加熱することにより封止材を硬化し、前記支持基材に支持されており、前記電子部品が配置された電子部品配置封止材硬化物を得るとともに、該電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させる封止材硬化兼剥離工程とを有する電子装置の製造方法であり、
前記封止材硬化兼剥離工程において、前記固定樹脂層に活性エネルギー線を照射した後、前記加熱により前記固定樹脂層を溶融させることで、前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させることを特徴とする電子装置の製造方法。
【0015】
(6) 前記封止材硬化兼剥離工程で前記固定樹脂層を溶融させる温度が130〜200℃である上記(5)に記載の電子装置の製造方法。
【0016】
(7) 前記固定樹脂層の前記活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度が、0.01〜100Pa.sである上記(5)または(6)に記載の電子装置の製造方法。
【0017】
(8) さらに、前記電子部品配置封止材硬化物の前記電子部品が配置されている面に配線層を形成し、該配線層が形成された電子部品配置封止材硬化物を得る配線層形成工程を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【0018】
(9) さらに、前記配線層が形成された前記電子部品配置封止材硬化物を分割することにより、前記配線層が形成された前記電子部品配置封止材硬化物を個片化し、個片化された前記電子部品配置封止材硬化物を得る個片化工程を有する上記(8)に記載の電子装置の製造方法。
【0019】
(10) 前記固定樹脂層は、酸または塩基の存在下において溶融粘度が低下する樹脂成分と、前記活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤とを含有する樹脂組成物を含む上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【0020】
(11) 前記樹脂成分は、ポリカーボネート系樹脂である上記(10)に記載の電子装置の製造方法。
【0021】
(12) 前記ポリカーボネート系樹脂は、少なくとも2つの環状体をカーボネート構成単位に含んでなるものである上記(11)に記載の電子装置の製造方法。
【0022】
(13) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の電子装置の製造方法で作製されたことを特徴とする電子装置。
【0023】
(14) 上記(9)に記載の個片化された前記電子部品配置封止材硬化物を基板に実装する実装工程を有することを特徴とする電子装置パッケージの製造方法。
【0024】
(15) 上記(14)に記載の電子装置パッケージの製造方法で作製されたことを特徴とする電子装置パッケージ。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子装置の製造方法および電子装置パッケージの製造方法おいて形成される固定樹脂層は、活性エネルギー線の照射により、その溶融粘度が低下するものである。そのため、支持基材上における電子部品配置封止材硬化物の形成を電子部品の位置ずれが生じることなく行うことができる。さらに、電子部品配置封止材硬化物の支持基材からの剥離の際には、低い加熱温度で固定樹脂層を溶融状態として電子部品配置封止材硬化物を剥離させることができるため、電子部品配置封止材硬化物へのダメージを低減させつつ、電子部品や封止材に亀裂等の破損が生じるのを的確に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の電子装置パッケージの一実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図2】本発明の電子装置パッケージの製造方法の第1実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図3】本発明の電子装置パッケージの製造方法の第1実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【図4】本発明の電子装置パッケージの製造方法の第1実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の電子装置の製造方法、本発明の電子装置、本発明の電子装置パッケージの製造方法および本発明の電子装置パッケージを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
まず、本発明の電子装置パッケージについて説明する。
<電子装置パッケージ>
図1は、本発明の電子装置パッケージの一実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0029】
図1に示す電子装置パッケージ10は、配線回路19が形成されたインターポーザ20と、インターポーザ20上に配置された電子装置(半導体装置)30とを有している。インターポーザ20と電子装置30とは、それぞれが有する配線回路19とバンプ18とにより電気的に接続されている。
【0030】
また、電子装置(本発明の電子装置)30は、半導体チップ11と、半導体チップ11を覆うように封止部13が設けられ、また、半導体チップ11の機能面12の下には、半導体チップ11の端子(図示しない)と連結する導電性のビア15および導電性のビア15の周辺には第1の絶縁層14が設けられ、また、導電性のビア15の下には、導電性のビア15と連結した導体層16および第2の絶縁層17が設けられ、さらに、導体層16の下には、導体層16と連結したバンプ18が設けられている。
【0031】
インターポーザ(基板)20は、電子装置30を支持する基板であり、その平面視形状は、通常、正方形、長方形等の四角形とされる。また、インターポーザ20は、ポリイミド・エポキシ・シアネート・ビスマレイミドトリアジン(BTレジン)等の各種樹脂材料で構成されている。
【0032】
インターポーザ20の上面(一方の面)には、例えば、銅等の導電性金属材料で構成される配線回路19が、所定形状で設けられている。
【0033】
導電性のビア15は、半導体チップ11の端子(図示しない)と導体層16を電気的に接続しているものであり、ビア15の壁面のみに導体層16が形成されていてもよく、ビア15全体に導体層16が形成されていてもよい。ビア15の壁面のみに導体層16が形成されている場合、ビア15の空隙は絶縁性の物質で充填されていることが好ましい。
【0034】
導体層16は、導電性のビア15とバンプ18を電気的に接続しているものであり、例えば、銅等の導電性金属材料から構成されている。
【0035】
バンプ18は、導体層16とインターポーザ20の上の配線回路19を電気的に接続しており、電子装置30から突出する部分は。ほぼ球形状(Ball状)をなしている。また、このバンプ18は、例えば、半田、銀ろう、銅ろう、燐銅ろうのようなろう材を主材料として構成されている。
【0036】
<電子装置パッケージの製造方法>
図1に示すような電子装置パッケージ(電子部品)10は、本発明の電子装置パッケージの製造方法を適用して、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0037】
<<第1実施形態>>
まず、電子装置パッケージ10を製造する電子装置パッケージの製造方法の第1実施形態について説明する。
【0038】
すなわち、電子装置パッケージ10の製造方法の第1実施形態では、支持基材の表面に固定樹脂層を設ける固定樹脂層形成工程と、該固定樹脂層上に、互いに隣接するもの同士間に隙間が形成されるように複数の電子部品を配置し、前記固定樹脂層を介して前記支持基材上に前記電子部品を固定する電子部品固定工程と、封止材で前記電子部品を覆い、前記固定樹脂層および前記電子部品上に封止材層を形成させる封止材層形成工程と、前記封止材を加熱することにより前記封止材を硬化し、前記支持基材に支持されており、前記電子部品が配置された電子部品配置封止材硬化物を得る封止材硬化工程と、前記支持基材に支持されている前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させる剥離工程とを有し、前記剥離工程において、前記固定樹脂層に活性エネルギー線を照射したのち前記固定樹脂層を加熱して溶融させることにより、前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離することを特徴とする。
【0039】
本発明では、以上のように剥離工程において、固定樹脂層に活性エネルギー線を照射したのちに固定樹脂層を加熱する。そのため、照射されたのちに加熱した固定樹脂層は、その溶融粘度が加熱前に活性エネルギー線を照射しない固定樹脂層よりも低下する。したがって、支持基材上における電子部品配置封止材硬化物の形成を、このものの形成の際に熱履歴を経たとしても、固定樹脂層の溶融粘度が低下していないことから、電子部品の位置ずれが生じることなく行うことができる。さらに、電子部品配置封止材硬化物の支持基材からの剥離の際には、低い加熱温度で固定樹脂層を溶融させて剥離させることができるため、電子部品配置封止材硬化物へのダメージを低減させつつ、電子部品や封止材に亀裂等の破損が生じるのを的確に防止することができる。
【0040】
図2〜4は、電子装置パッケージ10を平面視(図2の視面上側)した場合に、電子装置パッケージ10の外縁の外側に配線を引きまわす再配置型の電子装置30がインターポーザ20上に配置されている電子装置パッケージ10の製造方法の第1実施形態を説明するための模式的な縦断面図である。すなわち、図2〜4は、本発明の電子装置パッケージの製造方法の第1実施形態を示す模式的な縦断面図である。なお、以下の説明では、図2〜4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0041】
[1]まず、図2(a)に示すような、半導体チップ(電子部品)11と、支持基板(支持基材)50とを用意する。
【0042】
支持基板50としては、平坦性、剛直性および耐熱性を有しているものであれば、特に限定されないが、本実施形態のように、後述する剥離工程において、支持基板50を介した活性エネルギー線の照射により固定樹脂層60の溶融粘度を低下させる場合、光透過性を有するものが用いられる。これにより、支持基板50を介した固定樹脂層60への活性エネルギー線の照射を確実に行うことが可能となる。
【0043】
光透過性を有する支持基板50としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリカーボネートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板が挙げられる。
【0044】
[2]次に、支持基板50上(表面)に半導体チップ11を固定する固定樹脂層60を形成する(図2(b)参照;固定樹脂層形成工程)。
【0045】
この固定樹脂層60は、後述する、配線層形成工程で配線を精度良く形成できるようにするために、膜厚を均一に形成させることが好ましい。
【0046】
固定樹脂層60を形成する方法としては、特に限定されるわけではないが、液状の固定樹脂層60をスピンコート法、印刷法、ディスペンス法で形成する方法、フィルム状の固定樹脂層60をラミネートする方法等が挙げられるが、固定樹脂層60の膜厚均一性に優れる、液状の固定樹脂層60をスピンコートする方法およびフィルム状の固定樹脂層60をラミネートする方法が好ましい。
【0047】
液状の固定樹脂層60をスピンコート法、印刷法、ディスペンス法で形成する方法としては、特に限定されるわけではなく、室温で液状の固定樹脂層60または室温で固形の固定樹脂層60を溶剤や希釈剤に溶解させたワニス状の固定樹脂層60を、公知のスピンコーター、印刷機、ディスペンサーを用い形成することができる。
【0048】
また、フィルム状の固定樹脂層60をラミネートするする方法としては、特に限定されるわけではないが、ワニス状の固定樹脂層60をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の基材フィルムに塗布および乾燥することによりフィルム状の固定樹脂層60を作製し、次いで、公知のラミネータ等を用いることによりフィルム状の固定樹脂層60を形成することができる。
【0049】
ここで、固定樹脂層60は、活性エネルギー線の照射により、その溶融温度が低下するものであり、より具体的には、酸または塩基の存在下において溶融粘度が低下する樹脂成分と、前記活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤とを含有する樹脂組成物を含むものである。
【0050】
以下、この固定樹脂層60に含まれる樹脂組成物を構成する各成分について、順次、説明する。
【0051】
(樹脂成分)
樹脂成分は、支持基板50上での電子部品配置封止材硬化物80の形成時には、半導体チップ11を支持基板50に固定する機能を有するものであるとともに、活性エネルギー線照射したのちに加熱するとその溶融粘度が活性エネルギー線を照射しない場合よりも低下するため、活性エネルギー線照射の後の加熱により、電子部品配置封止材硬化物80の支持基板50からの脱離を容易に行え得る機能を有するものである。
【0052】
この樹脂成分としては、酸または塩基の存在下において溶融粘度が低下するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂、ビニル系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂であるのが好ましく、特に、ポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。これらのものは、酸または塩基の存在下において、その溶融粘度がより顕著に低下するものであるため、樹脂成分としてより好適に選択される。
【0053】
ビニル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリスチレン、ポリ―α―メチルスチレンのようなスチレン誘導体の重合体、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(ブチルビニルエーテル)、ポリビニルホルマールのようなポリビニルエーテル類やその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリ―α―メチルスチレンであるのが好ましい。かかる樹脂成分は、作業性に優れるという点から、特に好適に用いられる。
【0054】
また、(メタ)アクリル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような各種(メタ)アクリル系モノマーから選択される共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリメタクリル酸メチルまたはポリメタクリル酸エチルであるのが好ましい。かかる樹脂成分は、作業性に優れるという点から、特に好適に用いられる。
【0055】
さらに、ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されないが、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリブチレンカーボネートのような直鎖状の化学構造をカーボネート構成単位に含んでなるものや、環状の化学構造をカーボネート構造単位に含んでなるものが挙げられるが、これらの中でも、環状の化学構造をカーボネート構造単位に含んでなるものであるのが好ましい。かかる樹脂成分は、作業性に優れるという点から、特に好適に用いられる。
【0056】
以下、この環状の化学構造をカーボネート構造単位に含んでなるポリカーボネート系樹脂について、詳述する。
【0057】
このポリカーボネート系樹脂は、その構造単位に、環状の化学構造(以下、「環状体」と言うこともある。)を有するものであれば如何なる構成のものであってよいが、少なくとも2つの環状体を有するものであるのが好ましい。かかるポリカーボネート系樹脂における環状体の数および種類を適宜選択することにより、活性エネルギー線の照射により活性剤から発生した酸または塩基による作用によって、このものの180℃での溶融粘度を後述するような範囲内に容易に設定することが可能となる。
【0058】
また、環状体の数は、2〜5であるのが好ましく、2または3であるのがより好ましく、2であるのがさらに好ましい。カーボネート構成単位としてこのような数の環状体が含まれることにより、固定樹脂層60は、活性エネルギー線の照射前において、優れた密着性で半導体チップ11を支持基板50上に接合し得るものとなる。
【0059】
また、複数の環状体は、それぞれの頂点同士が互いに連結している連結多環系構造をなしていてもよいが、それぞれが有する一辺同士が互いに連結している縮合多環系構造をなしているのが好ましい。これにより、カーボネート構造単位の平面性が向上するため、活性エネルギー線の照射前後における、180℃での溶融粘度の差をより大きく設定することが可能となる。
【0060】
さらに、複数の環状体は、それぞれ、5員環または6員環であるあるのが好ましい。これにより、カーボネート構成単位の平面性がより保たれることから、活性エネルギー線の照射前後における、180℃での溶融粘度の差をさらに大きく設定することが可能となるとともに、後述する溶媒に対する溶解性をより安定させることができる。
【0061】
このような複数の環状体は、脂環式化合物であるのが好ましい。各環状体が脂環式化合物である場合に、前述したような効果がより顕著に発揮されることになる。
【0062】
これらのことを考慮すると、ポリカーボネート(樹脂成分)において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(1)で表わされるものが特に好ましい構造である。
【0063】
【化1】

【0064】
なお、上記化学式(1)で表わされるカーボネート構成単位を有するポリカーボネートは、デカリンジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
【0065】
また、上記化学式(1)で表わされるカーボネート構成単位において、デカリンジオールが有する水酸基に連結する炭素原子に由来するものは、それぞれ、デカリン(すなわち、縮合多環系構造を形成する2つの環状体)を構成する炭素原子に結合し、かつ、これら水酸基に連結する炭素原子の間に3つ以上の原子が介在しているのが好ましい。これにより、ポリカーボネートの直線性が保たれ、その結果、活性エネルギー線の照射前後における、180℃での溶融粘度の差をより確実に大きく設定することが可能となる。さらに、後述する溶媒に対する溶解性をより安定させることができる。
【0066】
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(1A)、(1B)で表わされるものが挙げられる。
【0067】
【化2】

【0068】
さらに、複数の環状体は、脂環式化合物である他、複素脂環式化合物であってもよい。各環状体が複素脂環式化合物である場合であっても、前述したような効果がより顕著に発揮されることになる。
【0069】
この場合、ポリカーボネート(樹脂成分)において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(2X)で表わされるものが特に好ましい構造である。
【0070】
【化3】

【0071】
なお、上記化学式(2X)で表わされるカーボネート構成単位を有するポリカーボネートは、下記化学式(2a)で表わされるエーテルジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
【0072】
【化4】

【0073】
また、上記化学式(2X)で表わされるカーボネート構成単位において、上記化学式(2a)で表わされる環状エーテルジオールが有する水酸基由来の炭素原子は、それぞれ、上記環状エーテル(すなわち、縮合多環系構造を形成する2つの環状体)を構成する炭素原子に結合し、かつ、これら炭素原子の間に3つ以上の原子が介在しているのが好ましい。これにより、ポリカーボネートの分解性を制御でき、その結果、活性エネルギー線の照射前後における、180℃での溶融粘度の差をより確実に大きく設定することが可能となる。さらに、後述する溶媒に対する溶解性をより安定させることができる。
【0074】
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(2A)で表わされる1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)型のものや、下記化学式(2B)で表わされる1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)型ものが挙げられる。
【0075】
【化5】

【0076】
樹脂成分(ポリカーボネート)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜800,000であることがより好ましい。重量平均分子量を上記下限以上とすることにより、本工程において、樹脂組成物の支持基板50に対する濡れ性が向上する効果、さらに、固定樹脂層60の成膜性が向上するという効果を得ることができる。
【0077】
また、樹脂成分は、樹脂組成物の全量の10〜100重量%程度の割合で配合されているのが好ましく、30〜100重量%の割合で配合されているのがより好ましい。樹脂成分の含有量を上記下限値以上とすることで、後述する剥離工程後における、電子部品配置封止材硬化物80に対する樹脂組成物の密着性を確実に低減させることができる。そのため、洗浄工程において、電子部品配置封止材硬化物80に残存した樹脂組成物(固定樹脂層60)を容易に除去することができるようになる。
【0078】
(活性剤)
活性剤は、活性エネルギー線の照射によってエネルギーを加えられることにより、酸または塩基のような活性種を発生させるものであり、この活性種の作用により、前記樹脂成分の溶融粘度を低減させる機能を有するものである。
【0079】
この活性剤としては、特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線の照射により酸を発生する光酸発生剤や、活性エネルギー線の照射により塩基を発生する光塩基発生剤等が挙げられる。
【0080】
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の溶融粘度を効率的に下げることができるという観点から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)が好ましい。
【0081】
また、光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン、1−(2−ニトロベンゾイルカルバモイル)イミダゾール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の溶融粘度を効率的に下げることができるという観点から、5−ベンジルー1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナンおよびこの誘導体が好ましい。
【0082】
前記活性剤は、樹脂組成物の全量の0.01〜50重量%程度であるのが好ましく、0.1〜30重量%程度であるのがより好ましい。かかる範囲内とすることにより、樹脂成分の溶融粘度を安定的に目的とする範囲内に下げることが可能となる。
【0083】
このような活性剤の添加により、活性エネルギー線を照射することで、酸または塩基のような活性種が発生し、この活性種の作用によって、樹脂成分の主鎖にその溶融粘度が低下する構造が形成されると推察される。
【0084】
(増感剤)
また、樹脂組成物は、活性剤とともに、特定の波長の活性エネルギー線に対する活性剤の反応性を発現あるいは増大させる機能を有する成分である増感剤を含んでいるのが好ましい。
【0085】
前記増感剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンツピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン−9−オン、2‐イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4‐プロポキシチオキサントン、およびこれらの混合物等が挙げられる。このような増感剤の含有量は、前述した活性剤100重量部に対して、100重量部以下であるのが好ましく、50重量部以下であるのがより好ましい。
【0086】
(酸捕捉剤)
さらに、樹脂組成物は、例えば、酸捕捉剤を含んでいてもよい。
【0087】
酸捕捉剤は、活性エネルギー線の照射により発生した酸が、活性エネルギー線を照射していない部位に拡散するのを防止する機能を有する成分である。
【0088】
前記酸捕捉剤としては、例えば、トリ(n−プロピル)アミン、トリエチルアミン、下記一般式(2)で表される化合物、および、下記一般式(3)で表される化合物等に代表されるアミン(二級アミン、三級アミン)、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0089】
【化6】

一般式(2)中、Rは、H、または、アルキル基である。
【0090】
【化7】

一般式(3)中、R〜Rは、H、または、任意の2つがメチル基で残りが水素である。
【0091】
これらの中でも、上記一般式(2)で表される化合物、上記一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を用いるのが好ましく、上記一般式(2)で表される化合物を用いるのがより好ましい。これにより、樹脂組成物の活性エネルギー線に対する感度を高いものとしつつ、活性エネルギー線を照射していない部位の溶融粘度の低下を効果的に防止することができる。
【0092】
前記酸捕捉剤の含有量は、前述した活性剤100重量部に対して、0.01〜10重量部であるのが好ましく、0.02〜8重量部であるのがより好ましい。これにより、活性エネルギー線を照射していない部位の溶融粘度の低下をさらに効果的に防止することができる。
【0093】
(酸化防止剤)
また、樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0094】
前記酸化防止剤は、望ましくない酸の発生や、樹脂組成物の自然酸化を防止する機能を有している。
【0095】
前記酸化防止剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ニューヨーク州タリータウンのCiba Fine Chemicals社から入手可能なCiba IRGANOX(登録商標) 1076又はCiba IRGAFOS(登録商標)168が好適に用いられる。
【0096】
また、他の酸化防止剤としては、例えば、Ciba Irganox(登録商標) 129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標) 1790、Ciba Irganox 3114、Ciba Irganox 3125等を用いることもできる。
【0097】
前記酸化防止剤の含有量は、前記樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
【0098】
(添加剤)
また、樹脂組成物は、必要によりアクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤等の添加剤等を含んでも良い。
【0099】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、単独でも2種以上混合して用いてもよい。固定樹脂層60を構成する樹脂組成物がシランカップリング剤を含むことにより、半導体チップ11や支持基板50に対する密着性が向上するという効果がある。
【0100】
(溶媒)
さらに、樹脂組成物は、溶媒を含有していても良い。
【0101】
溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂組成物が溶媒を含有することにより、樹脂組成物の粘度を調整することが容易となり、支持基板50に樹脂組成物を含有する固定樹脂層60の形成が容易となる。
【0102】
前記溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全量の5〜98重量%であることが好ましく、10〜95重量%であることがより好ましい。
【0103】
本発明では、活性エネルギー線の照射後における180℃での固定樹脂層60の溶融粘度が0.01〜100Pa.sに設定されているのが好ましく、かかる範囲内に設定されるように、樹脂組成物中に含まれる上述した各種構成材料、特に、樹脂成分および活性剤の組み合わせおよびこれらの含有量を設定する。
【0104】
このような仮固定剤(樹脂組成物)であれば、このものを130〜200℃程度の温度範囲に加熱することで、固定樹脂層60を溶融状態とすることができ、さらに、支持基板50から電子部品配置封止材硬化物80を容易に脱離させ得る程度の溶融粘度のものとすることができる。その結果、支持基板50からの電子部品配置封止材硬化物80の脱離(剥離)を、電子部品配置封止材硬化物80を構成する半導体チップ11および封止材層70に亀裂等の損傷が生じることなく、容易に行うことが可能となる。
【0105】
なお、活性エネルギー線の照射後における180℃での仮固定剤の溶融粘度は、0.01〜100Pa.sであるのが好ましいが、特に、0.1〜10Pa.s程度であるのが好ましい。これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0106】
また、活性エネルギー線の照射前における180℃での溶融粘度は、特に限定されないが、100〜10000Pa.s程度であるのが好ましく、100〜1000Pa.s程度であるのがより好ましい。これにより、電子部品配置封止材硬化物80の形成時に固定樹脂層60が例えば180℃程度に加熱されたとしても、固定樹脂層60は、半導体チップ11を支持基板50に固定するのに十分な強度を有しているため、電子部品配置封止材硬化物80の形成の際に、半導体チップ11の支持基板50からの位置ずれが生じてしまうのを確実に防止することができる。
【0107】
さらに、活性エネルギー線の照射前における180℃での固定樹脂層60の溶融粘度をA[Pa.s]とし、活性エネルギー線の照射後における180℃での固定樹脂層60の溶融粘度をB[Pa.s]としたとき、A/Bは、100〜10000なる関係を満足するのが好ましく、200〜1000なる関係を満足するのがより好ましい。A/Bがかかる関係を満足することにより、電子部品配置封止材硬化物80の形成時には、固定樹脂層60により確実に半導体チップ11を支持基板50に固定することができ、電子部品配置封止材硬化物80の支持基板50からの脱離時には、支持基板50から電子部品配置封止材硬化物80を容易に脱離させることができる。
【0108】
なお、固定樹脂層60の溶融粘度は、レオメータ法を用いて測定することができる。
具体的には、仮固定剤の溶液をシリコン基板上に塗布し、ホットプレート上で、120℃で300秒乾燥させ、活性エネルギー線として超高圧水銀灯からの光線を波長365nm換算で2000mJ/cm照射した後、仮固定剤からなる厚さ50μmのフィルムをシリコン基板より剥離し、レオメータ(Haake RS150型、Thermo Fischer Scientific社製)で溶融粘度を測定(ギャップ:30μm、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜300℃、周波数::1Hz)し、180℃における溶融粘度を測定値とすることにより求めることができる。
【0109】
また、固定樹脂層60に対する活性エネルギー線の照射は、特に限定されないが、波長365nmの光を、2000mj/cm照射することで行うのが好ましい。かかる条件とすることで、活性剤から酸または塩基のような活性種を十分量発生させることができ、この活性種の作用により樹脂成分の溶融粘度を確実に低減させることができる。そのため、固定樹脂層60に照射する活性エネルギー線の条件として好適に用いることができる。
【0110】
[3]次に、固定樹脂層60の上に半導体チップ11を配置し、固定樹脂層60を介して支持基板50の上に半導体チップ11を固定する(図2(c)参照。;電子部品固定工程)。
【0111】
ここで、半導体チップ11を配置する際は、端子(図示しない)を有する面を下(固定樹脂層60と接する面)に向けて配置する。また、半導体チップ11を配置する際は、後述する、配線層形成工程で配線層を精度良く形成することができるように、精密に配置する必要がある。そこで、半導体チップ11を配置する方法としては、特に限定されるわけではないが、フリップチップボンダーを適用することにより半導体チップ11を精密に配置することができる。
【0112】
半導体チップ11の固定樹脂層60への固定は、特に限定されるわけではなく、固定樹脂層60が液状である場合、加圧(半導体チップ11の自重のみを含む)のみで固定することができる。また、固定樹脂層60が固形である場合、必要により適宜加熱および加圧することにより半導体チップ11を固定することができる。前記加熱温度としては、特に限定されるわけではないが、50〜200℃が好ましく、80〜180℃が特に好ましい。また、前記加圧時間は、0.05〜1MPaが好ましく、0.1〜0.8MPaが特に好ましい。さらに、加熱および加圧時間は0.1〜30秒が好ましく、1〜15秒が特に好ましい。加熱および加圧条件を上記範囲とすることで、半導体チップ11を確実に固定することおよび半導体チップ11の破損や変形を防止することの両方を実現することができる。
【0113】
[4]次に、封止材で隣接する半導体チップ11の間隙および半導体チップ11を覆うように、封止材層70を形成する(図2(d)参照。;封止材層形成工程)。
【0114】
ここで、半導体チップ11を覆うようにとは、半導体チップ11が完全に覆われる場合と半導体チップ11の一部が覆われる場合の両方を含むものであるが、半導体チップ11が完全に覆われている方が、電子装置30の信頼性が良好であるため好ましい。
【0115】
封止材で封止材層70を形成する方法は、特に限定されるわけではなく、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法等が挙げられるが、固定された半導体チップ11の位置ずれが発生し難い圧縮成形法が好ましい。また、前記成形温度は、特に限定されるわけではないが、50〜200℃が好ましく、80〜180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、特に限定されるわけではないが、0.5〜12MPaであることが好ましく、1〜10MPaが特に好ましい。さらに、成形時間は30秒〜15分であることが好ましく、1〜10分が特に好ましい。成形温度、圧力、時間を上記範囲とすることで、封止材の未充填部分が発生することと半導体チップ11が位置ずれしてしまうことの両方を防止することができる。
【0116】
封止材としては、特に限定されるわけではなく、液状の封止材、固形状の封止材を使用することができる。封止材を構成する封止材用樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを主材料として構成されるものが好ましく用いられる。かかる構成材料で構成される封止材は、優れた密着性で半導体チップ11を封止できるとともに、熱膨張係数を比較的容易に調整することができる。
【0117】
以下、液状の封止材について詳細に説明するが、液状の封止材はこれに限定されるものではない。
【0118】
本発明に係る液状の封止材としては、特に制限されるわけではないが、エポキシ樹脂、酸無水物、無機充填材、および硬化促進剤を必須成分とすることが好ましい。また、前記硬化促進剤は、ホスホニウム塩型硬化促進剤であることがさらに好ましい。
【0119】
液状の封止材を構成するエポキシ樹脂は、特に限定されるわけではないが、一分子中にエポキシ基を2個以上有するもので、かつ常温において液状であれば、特に分子量や構造は限定されるものではない。
【0120】
前記液状の封止材を構成するエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0121】
前記液状の封止材を構成するエポキシ樹脂としては、芳香族環にグリシジルエーテル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点から好ましく、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性という観点から使用する量を限定するほうが好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。本発明ではエポキシ樹脂として最終的に常温(25℃)で液状であることが好ましいが、常温で固体のエポキシ樹脂であっても常温で液状のエポキシ樹脂に溶解させ、結果的に液状の状態であればよい。
【0122】
液状の封止材を構成する酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、または無水メチルナジック酸などが挙げられる。
【0123】
これらは、低温での硬化が早いことと、封止材の硬化物のガラス転移温度が高くなることから好ましい。また、常温で液状であり、且つ粘度も低いことから、テトラヒドロ無水フタル酸を硬化剤として用いることが、より好ましい。特にこれらは、単独で用いても2種以上用いても差し支えない。
【0124】
また、酸無水物の配合量は、全液状封止樹脂組成物100重量部に対して、2重量部〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは5重量部〜7重量部である。酸無水物の配合量が、上記下限値未満の場合には硬化性が悪くなり、生産性が低下する。そして、上記上限値を越える場合には、耐湿信頼性が低下する。
【0125】
液状の封止材は、酸無水物以外の硬化剤を含有してもよく、酸無水物以外の硬化剤としては、1分子内にエポキシと反応する官能基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であればこれを併用できる。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ジフェニレン骨格などを有する)などのフェノール類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
液状の封止材を構成する無機充填材としては、一般に封止材に使用されているものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素などが挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用して用いても差し支えない。これらの中でも樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度などを向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましい。
【0127】
前記無機充填材の形状は、特に限定されないが、粘度特性や流動特性の観点から形状は球状であることが好ましい。
【0128】
無機充填材が溶融シリカの場合の含有量としては、成形性と耐半田クラック性のバランスから、全エポキシ樹脂組成物中に30重量%以上90重量%以下使用することが好ましく、更に好ましくは40重量%以上85重量%以下である。前記下限値未満の場合には、吸水率の上昇に伴う耐半田クラック性が低下し、前記上限値を越えると液状封止用樹脂組成物のディスペンス性能に問題が生じる可能性がある。
【0129】
無機充填剤が、溶融シリカ以外の場合は、体積換算として前記含有量となるようにする。
【0130】
液状の封止材を構成する硬化促進剤は、特に限定されるわけではないが、ホスホニウム塩型硬化促進剤であることが好ましい。ホスホニウム塩型硬化促進剤としては、例えば、一般式(4)または(5)で示される構造を有するホスホニウム塩型硬化促進剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
【化8】

(ただし、R7、R8、R9、R10は芳香族もしくは複素環を有する1価の有機基または1価の脂肪族基であって、それらの内の少なくとも1つは、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個有するプロトン供与体がプロトンを1個放出してなる基であり、これらは互いに同一であっても異なっていても良い。また、Arは置換または無置換の芳香族基を表し、同一分子内の二つの酸素原子は、芳香族炭素位の隣接に位置する。nは2〜12の整数を示す。)
【0132】
【化9】

【0133】
一般式(4)または(5)で示される構造を有するホスホニウム塩硬化促進剤を用いることにより、液状の封止材硬化物と封止された電子部品との密着性の向上、および、固定樹脂層60との密着性向上が得られる。
【0134】
前記一般式(4)で示される構造を有する硬化促進剤としては、例えば、下記式(6)、式(7)、および式(8)で示されるホスホニウム塩型硬化促進剤を挙げることができる。
【0135】
【化10】

【0136】
【化11】

【0137】
【化12】

【0138】
また一般式(5)で示される構造を有する硬化促進剤としては、下記式(9)、式(10)、および式(11)で示されるホスホニウム塩型硬化促進剤を挙げることができる。
【0139】
【化13】

【0140】
【化14】

【0141】
【化15】

【0142】
これらホスホニウム塩硬化促進剤の中でも、硬化性と密着性のバランスに優れる、式(7)または式(11)で示されるホスホニウム塩硬化促進剤が好ましい。
【0143】
硬化促進剤の配合量は、全液状封止樹脂組成物100重量部に対して、0.1重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3重量部以上0.8重量部以下である。上記下限値未満の場合には硬化が遅く生産性が低下し、上記上限値を越える場合には保存性が悪化するためである。
【0144】
さらに、酸無水物と硬化促進剤の配合比[(酸無水物配合量)/(硬化促進剤配合量)]は、3〜35が好ましく、5〜30であることがさらに好ましく、10〜20が特に好ましい。配合比が、上記下限値未満の場合には保存性が悪化し、上記上限値を越える場合には硬化が遅く生産性が悪くなるためである。
【0145】
上記以外に用いることができる成分としては、消泡剤としてのシリコーン化合物やワックスなどの離型剤、シリコーンゴムなどの低応力剤を適宜添加することができる。
【0146】
なお、上述した液状の封止材の製造方法は、特に限定されるわけではないが、エポキシ樹脂、酸無水物、無機充填材、硬化促進剤、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理することにより製造することができる。
【0147】
さらに、以下では、固形状の封止材について詳細に説明するが、固形状の封止材はこれに限定されるものではない。
【0148】
固形状の封止材を構成するエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0149】
これらの中でも、エポキシ樹脂としては、特に、下記一般式(12)で表されるものが好ましく用いられる。下記一般式(12)で表されるエポキシ樹脂は2官能であるため、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は架橋密度が低く抑えられ、熱膨張係数が低く、半田リフロー工程時、すなわち電子装置30の加熱時における応力緩和に適しているため、かかる工程時における反りの大きさが小さくなる。また、下記一般式(12)で表されるエポキシ樹脂は、結晶性で低分子量の樹脂であるため溶融粘度が低く、このものを含有するエポキシ樹脂組成物は流動性に優れる。
【0150】
【化16】

[式(12)中、Xは、単結合、−O−、−S−、−R12CR12−の中から選択される基である。R11は、炭素数1〜6のアルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、aは0〜4の整数である。R12は、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0151】
これらの中でも、前記一般式(12)で表されるエポキシ樹脂は、4,4’−ジグリシドキシビフェニル、または3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジグリシドキシビフェニルおよびこれらの溶融混合物がより好ましく用いられる。これらの化合物は、作業性、実用性のバランスに優れるとともに、封止材層70の熱膨張係数を低く設定することができる。
【0152】
また、固形状の封止材を構成する硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミノ類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0153】
また、これらの中でも、封止材層70の構成材料に用いる硬化剤としては、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく用いられる。かかる硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。かかる化合物を選択することにより、封止材層70の熱膨張係数を低く設定できる。これらの化合物は、耐湿性、信頼性等の観点からも優れた化合物である。
【0154】
さらに、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する硬化剤としては、特に、下記一般式(13)で表されるフェノール樹脂を用いるのが好ましい。下記一般式(13)で表されるフェノール樹脂は、その基本骨格がノボラック型フェノール樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂の構造をあわせもつ。ノボラック型フェノール樹脂を基本骨格として有することにより、構造面で、樹脂骨格の架橋点間距離が短く、良好な硬化性、成形性を発揮するという効果を有している。また、トリフェノールメタン型フェノール樹脂を基本骨格として有することにより、一分子中に3個以上の水酸基を有することになるため、架橋密度が高く、これを用いた樹脂組成物の硬化物を、高Tgで線膨張係数が小さく、また高い強度を有するものとし得るという効果を有している。そのため、下記一般式(13)で表されるフェノール樹脂を使用した樹脂組成物は、良好な硬化性で優れた成形性を持ち、また、成形・硬化後および熱処理後の熱膨張、熱収縮が比較的小さくなるため、電子装置30において反り量を小さくすることができる。
【0155】
【化17】

[式(13)中、R13、R14、R15は、炭素数1〜4のアルキル基から選択される基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。bは0〜3の整数、cは0〜4の整数、dは0〜3の整数である。m、nはモル比を表し、0<m<1、0<n<1で、m+n=1である。]
【0156】
また、上記一般式(13)中のmとnとのモル比(m/n)は、1/5〜5/1であるのが好ましく、1/2〜2/1であるのがより好ましい。これにより、ノボラック型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂の双方が含まれることにより得られる効果を相乗的に発揮させることができる。
【0157】
なお、前記一般式(13)で表されるフェノール樹脂の具体例としては、例えば、下記式(14)に示すものが挙げられる。
【0158】
【化18】

[ただし、式(14)中、m、nはモル比を表し、0<m<1、0<n<1で、m+n=1である。]
【0159】
また、封止材層70に含まれる無機充填材としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に溶融球状シリカが好ましい。これにより、封止材層70の熱膨張係数を低く設定することができる。
【0160】
なお、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましい。さらに、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができるが、その粒径としては、半導体チップ11の隙間への充填性を考慮すると0.01μm以上、150μm以下であることが好ましい。
【0161】
さらに、封止材層70を構成する前記樹脂組成物には、エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填材の他に、シランカップリング剤、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物、硬化促進剤が含まれていても良い。
【0162】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなシランカップリング剤が樹脂組成物に含まれることにより、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応が生じるため、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度を向上させることができる。
【0163】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランおよびβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0164】
なお、シランカップリング剤は、後述する芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(以下、かかる化合物を「水酸基結合化合物」と言うこともある)との相乗効果により、樹脂組成物の粘度を下げ、流動性を向上させる効果を有するため、樹脂組成物中に水酸基結合化合物が含まれる場合には、水酸基結合化合物を添加することにより得られる効果を十分に発揮させるためにはシランカップリング剤も含まれる構成とするのが好ましい。これにより、比較的粘度が高い樹脂を多く配合した場合や、無機充填剤を多量に配合した場合においても、封止材層70を構成する樹脂組成物として充分な流動性を発揮させることが出来る。
【0165】
また、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(水酸基結合化合物)としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(15)で表される化合物、下記一般式(16)で表される化合物等が挙げられる。なお、水酸基結合化合物中には、水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0166】
【化19】

[式(15)中、R16、R20は、いずれか一方が水酸基であり、一方が水酸基の場合、他方は水素、水酸基または水酸基以外の置換基から選ばれる基である。R17、R18、R19は、水素、水酸基または水酸基以外の置換基から選ばれる基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。]
【0167】
【化20】

[式(16)中、R21、R27は、いずれか一方が水酸基であり、一方が水酸基の場合、他方は水素、水酸基または水酸基以外の置換基から選ばれる基である。R22、R23、R24、R25、R26は水素、水酸基または水酸基以外の置換基から選ばれる基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。]
【0168】
なお、一般式(15)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式(17)で表されるカテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステルおよびこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(16)で表される化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、下記式(18)で表される2,3−ジヒドロキシナフタレンおよびこれらの誘導体が挙げられる。これらの化合物は1種類を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさ、低揮発性の点から主骨格がナフタレン環である化合物(すなわち、1、2−ジヒドロキシナフタレン、2、3−ジヒドロキシナフタレンおよびその誘導体)がより好ましく選択される。
【0169】
【化21】

【0170】
【化22】

【0171】
さらに、硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンおよびその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0172】
また、前記封止材用樹脂組成物は、上記の構成材料の他に、さらに必要に応じて、カーボンブラック等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0173】
その後、封止材用樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形、硬化させ、封止材とする。成形方法としては、特に限定されないが、電子部品の位置ずれ、剥離を防止する観点から、コンプレッションモールドが好ましい。
【0174】
[5]次に、封止材層70を加熱し硬化させることにより、半導体チップ11が配置された電子部品配置封止材硬化物80を得る(図2(d)参照;封止材硬化工程)。
【0175】
ここで、電子部品配置封止材硬化物80とは、支持基板50上に設けられ、複数の半導体チップ11が間隔をあけて封止材層70の硬化物により、これらを覆うようにして封止されたものである。
【0176】
封止材層70を硬化させる条件は、特に限定されるわけではないが、加熱温度としては、固定樹脂層60が溶融しない温度範囲に設定される。これにより、電子部品配置封止材硬化物80の形成を半導体チップ11の位置ずれを生じることなく行うことができる。具体的には、前記加熱温度としては、100〜200℃が好ましく、120〜190℃が特に好ましい。また、加熱時間は、特に限定されるわけではないが、30分〜8時間が好ましく、1〜6時間が特に好ましい。加熱温度および加熱時間を上記範囲とすることで、固定樹脂層60が分解してしまうことを防止することができるとともに、信頼性の高い電子装置30を得ることができる。
【0177】
なお、前記工程[4]および本工程[5]による電子部品配置封止材硬化物80の形成では、前記工程[2]の固定樹脂層形成工程において、前記樹脂組成物を用いて、その膜厚が均一で、かつ表面が平滑な優れた精度を有する固定樹脂層60が形成されているため、優れた精度をもって電子部品配置封止材硬化物80の形成を行え得るという効果を奏する。
【0178】
また、前記工程[4]および本工程[5]による電子部品配置封止材硬化物80の形成工程において、固定樹脂層60は加熱され、温度履歴を経ることとなるが、この際には、固定樹脂層60に対する活性エネルギー線照射が施されておらず、固定樹脂層60は、高い溶融粘度を維持したままである。したがって、封止材層70および電子部品配置封止材硬化物80と支持基板50との間で剥離や半導体チップ11の支持基板50上での位置ずれ等が生じることなく電子部品配置封止材硬化物80を形成することが可能であるため、電子部品配置封止材硬化物80の形成を優れた寸法精度で行うことができる。
【0179】
なお、上述したように、本発明では、活性エネルギー線の照射前における180℃での溶融粘度が好ましくは0.01〜100Pa.sとなっている。このように、180℃での溶融粘度が前記範囲内となっている際に、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0180】
[6]次に、固定樹脂層60に活性エネルギー線を照射したのち固定樹脂層60を加熱して溶融させることにより、電子部品配置封止材硬化物80を支持基板50から剥離する(剥離工程)。
【0181】
以下、この工程[6]について詳述する。
[6−1]まず、図2(e)に示すように、支持基板50を介して、固定樹脂層60に活性エネルギー線を照射する。
【0182】
これにより、固定樹脂層60の構成材料である樹脂組成物中に含まれる活性剤にエネルギーが付与され、その結果、活性剤から酸または塩基のような活性種が発生するため、この活性種の作用により、加熱した際の樹脂成分の溶融粘度が低下する。
【0183】
また、活性エネルギー線としては、特に限定されないが、例えば、波長200〜500nm程度の光線であるのが好ましく、波長350〜400nm程度の光線であるのがより好ましい。
【0184】
さらに、活性エネルギー線の照射量は、特に限定されないが、1〜2000mj/cm程度であるのが好ましく、10〜1000mj/cm程度であるのがより好ましい。
【0185】
活性エネルギー線を照射する条件を、上記のように設定することにより、活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度を0.01〜100Pa.sとするのに十分な量の活性種を活性剤から確実に発生させることができる。
【0186】
[6−2]次いで、図2(f)に示すように、固定樹脂層60を加熱することで、固定樹脂層60を溶融状態とし、その後、電子部品配置封止材硬化物80を支持基板50から剥離させる(図2(g)参照。)。
【0187】
ここで、本発明では、固定樹脂層60の加熱に先立って、固定樹脂層60に活性エネルギー線が照射されているため、固定樹脂層60を加熱することにより樹脂成分の溶融粘度が活性エネルギー線を照射しない場合よりも低減しており、好ましくは、固定樹脂層60に対する活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度が0.01〜100Pa.sとなっている。
【0188】
そのため、固定樹脂層60を溶融状態とするための加熱温度を、比較的低く設定することができる。具体的には、活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度が0.01〜100Pa.sとなっている場合には、前記加熱温度を、130〜200℃程度に設定することが可能となる。そのため、この加熱による、半導体チップ11および封止材層70の変質・劣化を的確に抑制または防止することができるとともに、固定樹脂層60を溶融状態とするために要する時間の短縮を図ることができる。
【0189】
なお、加熱時間は、特に限定されるわけではないが、30秒〜60分が好ましく、1〜30分が特に好ましい。加熱時間を上記範囲とすることで、固定樹脂層60を確実に溶融させることと、半導体チップ11および封止材層70が熱劣化してしまうことを効果的に防止することができる。
【0190】
また、電子部品配置封止材硬化物80を支持基材から剥離する方法としては、特に限定されるわけではないが、支持基板50の表面に対して垂直に剥離する方法、支持基板50の表面に対して水平方向にスライドさせて剥離する方法、支持基板50から電子部品配置封止材硬化物80を浮かして剥離する方法等が挙げられる。
【0191】
[6−3]次いで、電子部品配置封止材硬化物80の剥離後、電子部品配置封止材硬化物80の表面に固定樹脂層60が付着している場合には、残存する固定樹脂層60を洗浄する。
【0192】
すなわち、電子部品配置封止材硬化物80の半導体チップ11が封止されている側の面に残留した固定樹脂層60の残留物(残渣)を除去する。
【0193】
なお、電子部品配置封止材硬化物80の表面に固定樹脂層60が付着する場合でも、本発明では、固定樹脂層60を上述したような構成のものとすることから、プラズマ処理、薬液処理、研磨処理等の手法により簡便に残渣を除去することができる。その結果、得られる電子装置の信頼性をより高めることができる。
【0194】
前記残渣の除去方法としては、酸素プラズマ処理、環境に対する負荷の小さいIPA、アセトン、γ―ブチロラクトン、PEGMEA等の薬液処理が特に好ましい。
【0195】
なお、本実施形態では、封止材硬化工程後に、剥離工程を行う実施形態について説明したが、剥離工程後に封止材硬化工程を実施してもよい。
【0196】
以上のような工程を経ることにより、支持基板50から剥離された電子部品配置封止材硬化物80を得ることができる。すなわち、前記工程[1]〜[6]により、本発明の電子装置の製造方法の第1実施形態が構成される。
【0197】
次に、電子部品配置封止材硬化物80に配線層を形成する配線層形成工程について、図3、4を利用して説明する。
【0198】
[7]次に、得られた電子部品配置封止材硬化物80を、半導体チップ11が端子を有する面(固定樹脂層60と接していた面)41を上に向けて配置する(図3(a)参照。)。
【0199】
[8]次に、電子部品配置封止材硬化物80の端子を有する面41に、第1の絶縁層90を形成する(図3(b)参照。)。
【0200】
前記第1の絶縁層90としては、特に限定されるわけではないが、有機樹脂組成物が好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリアミド樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等を主成分とする感光性樹脂組成物を挙げることができる。これらの中でも、露光、現像する際の感度、解像度、また、ガラス転移温度、弾性率等の機械特性、さらには、電子部品配置封止材硬化物80に対する密着性に優れるポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリアミド樹脂を主成分とするポジ型感光性樹脂組成物が好ましい。
【0201】
前記樹脂組成物を電子部品配置封止材硬化物80の端子を有する面41に形成する方法は、特に限定されるわけではないが、スピンナーを用いた回転塗布法、スプレーコーターを用いた噴霧塗布法、浸漬法、印刷法、ロールコーティング法等を用いることにより塗布し、前記樹脂組成物に含まれる溶剤をプリベークし揮散させることにより形成することができる。この時、前記樹脂組成物は、形成する方法により適宜溶剤等により希釈することにより粘度を調整することができる。
【0202】
前記塗布量は、特に限定されるわけではないが、最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布することが好ましい。膜厚が下限値未満であると、電子部品配置封止材硬化物80の絶縁膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、また、上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。また、プリベーク温度は、特に限定されるわけではないが、50〜150℃が好ましく、60〜130℃が好ましい。
【0203】
[9]次に、第1の絶縁層90の半導体チップ11の端子(図示しない)に対応する位置に、露光および現像することにより開口部91を形成する(図3(c)参照。)。
【0204】
ここで、ポジ型感光性樹脂組成物を露光および現像することにより、開口部91を形成するメカニズムについて説明する。電子部品配置封止材硬化物80上の塗膜に、ステッパー等の露光装置でマスクの上から化学線を照射(露光)することにより、露光された部分(以下露光部)と露光されていない部分(以下、未露光部)が出来る。この未露光部中に存在するジアゾキノン化合物は現像液に不溶であり、またポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリアミド樹脂がジアゾキノン化合物と相互作用することで、さらに、現像液に対し耐性を持つようになる。一方、露光部に存在していたジアゾキノン化合物は化学線の作用によって化学変化を起こし、現像液に可溶となり、樹脂の溶解を促進させる。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより未露光部のみの開口部91の作製が可能となる。
【0205】
前記露光する方法としては、特に限定されるわけではないが、開口部91に対応する位置に開口を有するマスクを第1の絶縁層90に位置合わせし、X線、電子線、紫外線、可視光線等の化学線を照射することにより行うことができる。前記化学線の波長としては、200〜500nmであることが好ましく、具体的には、i線またはg線が好ましい。
【0206】
次に、露光部を現像液で溶解除去することにより開口部91を得ることができる。前記現像液としては、特に限定されるわけではないが、溶剤、アルカリ水溶液を挙げることができ、環境に対する不可の少ないアルカリ水溶液が好ましい。前記アルカリ水溶液としては、特に限定されるわけではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液およびこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。
また、現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0207】
[10]次に、第1の絶縁層90、開口部91の壁面および半導体チップ11の端子に連結するように、導電層92を形成する(図3(d)参照。)。
【0208】
導電層92を形成する方法としては、特に限定されるわけではないが、Cr、Ti、Cu等の金属をスパッタリング法等により形成することができる。
【0209】
[11]次に、導電体93を形成する部分に開口部を有するレジスト層100を形成する(図3(e)参照。)。
【0210】
レジスト層100を形成するレジストとしては、特に限定されるわけではないが、液状またはフィルム状の感光性レジストが挙げられる。
【0211】
液状の感光性レジストの場合、導電層92の全面を覆うように、スクリーン印刷等の手法により液状の感光性レジストを形成、次いで、導電体93を形成する部分に開口を有するマスクを介して露光し、次いで、現像液により現像することによりレジスト層100を形成する。フィルム状の感光性レジストの場合、導電層92の全面を覆うように、ラミネート等の手法によりフィルム状の感光性レジストを形成、あとは、液状のレジストの場合と同様にレジスト層100を形成する。
【0212】
[12]次に、レジスト層100の開口部に、メッキにより導電体93を形成する(図3(f)参照。)。
【0213】
導電体93を構成する金属としては、特に限定されるわけではなく、電気抵抗が小さく信号の高速化に対応することができる銅が好ましい。
【0214】
[13]次に、レジスト層100を除去し、さらに、導電体93を形成している部分以外の導電層92を除去する(図4(a)参照。)。
【0215】
レジスト層100および導電層92を除去する方法としては、特に限定されるわけではないが、導電体93を形成しない部分に導電層92の残渣が残り難い、反応性イオンエッチング(RIE)等の手法により除去することができる。反応性イオンエッチング等の手法により除去する際に、導電体93も若干膜減りを起こすが、導電層92よりも導電体93の厚みの方が十分に厚く形成されているため、導電体93が全て除去されてしまうことはない。
【0216】
[14]次に、導電体93を覆うように、第2の絶縁層110を形成する(図4(b)参照。)。
【0217】
第2の絶縁層110を構成する材料および第2の絶縁層110の形成方法は、時に限定されるわけではないが、第1の絶縁層90の場合と同様のものを用いることができる。
【0218】
[15]次に、第2の絶縁層110のうち、バンプ18を形成する部分に開口部111を形成する(図4(c)参照。)。
【0219】
第2の絶縁層110に開口部111を形成する方法としては、特に限定されるわけではないが、第1の絶縁層90に開口部91を形成する場合と同様の方法も用いることができる。
【0220】
[16]次に、第2の絶縁層110の開口部111にバンプ18を形成する(図4(d)参照。)。
【0221】
バンプ18の材質としては、特に限定されるわけではないが、錫(Sn)、鉛(Pb)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)および銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも2種以上の金属の合金、または錫単体からなることが好ましい。これらのうち、溶融温度および機械的物性を考慮すると、Sn−Pbの合金、鉛フリー半田であるSn−Biの合金、Sn−Ag−Cuの合金、Sn−Inの合金、Sn−Agの合金などのSnを含む合金からなることがより好ましい。
【0222】
バンプ18を形成する方法としては、特に限定されるわけではないが、前記Snを含む合金とフラックスを主成分とするペーストを、第2の絶縁層110の開口部111にスクリーン印刷等の手法により塗布、次いで、半田リフロー装置を通すことにより形成する方法、また、第2の絶縁層110の開口部111に前記Snを含む合金からなる半田ボールを載置し、次いで、半田ボールにフラックスを塗布し、次いで、半田リフロー装置を通すことにより形成する方法等が挙げられる。
【0223】
以上のような工程を経ることにより、電子部品配置封止材硬化物80に配線層を形成することができる。
【0224】
次に、配線層が形成された電子部品配置封止材硬化物80を分割して、電子装置30を得る工程について、図4を利用して説明する。
【0225】
[17]上記電子部品配置封止材硬化物80を分割する工程は、前記工程[16]で得られたバンプ18を形成した電子部品配置封止材硬化物80を分割することにより、電子装置30を得る(図工程である(図4(d)および(e)参照)。
【0226】
電子部品配置封止材硬化物80の分割は、各半導体チップ11毎に分割しても、複数の半導体チップ11単位で分割してもよい。複数の半導体チップ11単位で分割することにより、1つの電子装置30に複数の機能を有する半導体チップ11を配置することができるため、電子装置30の高機能化を実現することができる。
【0227】
電子部品配置封止材硬化物80を分割する方法としては、特に限定されるわけではないが、レーザーやダイシングソー等の手法により分割することができる。これらの中でも、簡便に分割することができるダイシングソーによる方法が好ましい。
【0228】
このようにして得られた電子装置30は、半導体チップ11の外縁の外側に配線を引きまわし、入出力の配線数を増大させることができるため、電子装置30の高機能化を実現することができる。また、支持基板50に半導体チップ11を固定する際に、活性エネルギー線の照射により溶融する温度が低下する固定樹脂層60を適用しているため、電子部品配置封止材硬化物80を剥離させる際の加熱温度を低く設定することができ、半導体チップ11および封止材層70の変質・劣化を的確に抑制または防止することができることから、信頼性の高い電子装置30を提供することができる。
【0229】
以上のような工程を経ることにより、分割(個片化)された電子装置30を形成することができる。
【0230】
なお、本実施形態では、分割されることにより形成された電子装置30において、分割された封止材層70により封止部13が、分割された第1の絶縁層90により第1の絶縁層14が、分割された第2の絶縁層110により第2の絶縁層17が、一体形成された導電体93によりビア15および導体層16がそれぞれ構成される。
【0231】
次に、分割された電子装置30を基板に実装する工程について図1を利用して説明する。
【0232】
[18]上記電子装置30を基板に実装する工程は、電子装置30のバンプ18とインターポーザ20の上に形成された配線回路19を接続する工程である(図1参照)。
【0233】
前記バンプ18と配線回路19の接続する方法は、特に限定されるわけではないが、バンプ18の少なくとも表面に半田層を有する場合、バンプ18にフラックスを塗布し、次いで、バンプ18と配線回路19が対応するように電子装置30をインターポーザ20に載置し、次いで、半田リフロー装置を通すことにより電子装置30を作製することができる。この時、電子装置30とインターポーザ20はバンプ18と配線回路19が金属結合することにより、電気的に接続されている。
以上のような工程を経ることにより、電子装置パッケージ10を製造することができる。
【0234】
なお、本実施形態では、封止材層70で半導体チップ11を封止する場合について説明したが、半導体チップ11のような能動素子に限らず各種電子部品を封止するようにしてもよく、その他の電子部品としては、例えば、コンデンサ、フィルター等の受動素子等が挙げられる。
【0235】
<<第2実施形態>>
次に、電子装置パッケージ10を製造する電子装置パッケージの製造方法の第2実施形態について説明する。
【0236】
すなわち、電子装置パッケージ10の製造方法の第2実施形態では、支持基材の表面に固定樹脂層を設ける固定樹脂層形成工程と、該固定樹脂層上に、互いに隣接するもの同士間に隙間が形成されるように複数の電子部品を配置し、前記固定樹脂層を介して前記支持基材上に前記電子部品を固定する電子部品固定工程と、封止材で前記電子部品を覆い、前記固定樹脂層および前記電子部品上に封止材層を形成させる封止材層形成工程と、前記封止材を加熱することにより封止材を硬化し、前記支持基材に支持されており、前記電子部品が配置された電子部品配置封止材硬化物を得るとともに、該電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離される封止材硬化兼剥離工程とを有する電子装置の製造方法であり、前記封止材硬化兼剥離工程において、前記封止材を加熱することにより封止材を硬化したのち、前記固定樹脂層に活性エネルギー線を照射して前記固定樹脂層を溶融させることにより、前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離することを特徴とする。
【0237】
以下、第2実施形態の電子装置パッケージ10の製造方法について説明するが、第1実施形態の電子装置パッケージ10の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0238】
前述した第1実施形態では、封止材硬化工程を行った後、剥離工程を実施することとしたが、本実施形態では、封止材硬化工程と剥離工程を同時に行う封止材硬化兼剥離工程を実施することとした以外は、第1実施形態と共通するものである。
【0239】
すなわち、第2実施形態では、封止材層70を硬化させる封止材硬化工程[5]と、電子部品配置封止材硬化物80を剥離させる剥離工程[6]とを同時に行うものであり活性エネルギー線を固定樹脂層60に照射して固定樹脂層60の溶融粘度を低下させた後、封止材層70を硬化させるために加熱する。本工程をかかる構成のものとすることで、封止材層70の硬化と固定樹脂層60の溶融とを同時に行うことができる。すなわち、封止材層70の硬化と、電子部品配置封止材硬化物80の剥離とを同時に行うことができる。
【0240】
その結果、電子装置パッケージ10の製造工程を短縮することができるため、生産性を向上することができるとともに、電子装置パッケージ10を廉価に製造することができる。
【0241】
この際、封止材層70および固定樹脂層60を加熱する温度は100〜200℃が好ましく、120〜190℃が特に好ましい。また、加熱時間は特に限定されるわけではないが、30分〜8時間が好ましく、1〜6時間が特に好ましい。加熱温度および加熱時間を上記範囲とすることで、封止材層70の硬化と、活性エネルギー線照射後における固定樹脂層60の溶融とを確実に行うことができる。
【0242】
以上、本発明の電子装置の製造方法、電子装置、電子装置パッケージの製造方法および電子装置パッケージを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0243】
たとえば、本発明の電子装置の製造方法および電子装置パッケージの製造方法に用いられる樹脂組成物に含まれる各構成材料は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0244】
また、本発明の電子装置の製造方法および電子装置パッケージの製造方法には、必要に応じて任意の工程が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0245】
10 電子装置パッケージ
11 半導体チップ
12 機能面
13 封止部
14 第1の絶縁層
15 ビア
16 導体層
17 第2の絶縁層
18 バンプ
19 配線回路
20 インターポーザ
30 電子装置
41 端子を有する面
50 支持基板
60 固定樹脂層
70 封止材層
80 電子部品配置封止材硬化物
90 第1の絶縁層
91 開口部
92 導電層
93 導電体
100 レジスト層
110 第2の絶縁層
111 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の表面に固定樹脂層を設ける固定樹脂層形成工程と、
該固定樹脂層上に、互いに隣接するもの同士間に隙間が形成されるように複数の電子部品を配置し、前記固定樹脂層を介して前記支持基材上に前記電子部品を固定する電子部品固定工程と、
封止材で前記電子部品を覆い、前記固定樹脂層および前記電子部品上に封止材層を形成させる封止材層形成工程と、
前記封止材を加熱することにより前記封止材を硬化し、前記支持基材に支持されており、前記電子部品が配置された電子部品配置封止材硬化物を得る封止材硬化工程と、
前記支持基材に支持されている前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させる剥離工程とを有する電子装置の製造方法であり、
前記剥離工程において、前記固定樹脂層に活性エネルギー線を照射したのち前記固定樹脂層を加熱して溶融させることにより、前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記封止材硬化工程で前記封止材を加熱する温度が、前記剥離工程で前記固定樹脂層を溶融させる温度よりも低い請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記剥離工程で前記固定樹脂層を溶融させる温度が130〜200℃である請求項1または2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記固定樹脂層の前記活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度が、0.01〜100Pa.sである請求項1ないし3のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
支持基材の表面に固定樹脂層を設ける固定樹脂層形成工程と、
該固定樹脂層上に、互いに隣接するもの同士間に隙間が形成されるように複数の電子部品を配置し、前記固定樹脂層を介して前記支持基材上に前記電子部品を固定する電子部品固定工程と、
封止材で前記電子部品を覆い、前記固定樹脂層および前記電子部品上に封止材層を形成させる封止材層形成工程と、
前記封止材を加熱することにより封止材を硬化し、前記支持基材に支持されており、前記電子部品が配置された電子部品配置封止材硬化物を得るとともに、該電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させる封止材硬化兼剥離工程とを有する電子装置の製造方法であり、
前記封止材硬化兼剥離工程において、前記固定樹脂層に活性エネルギー線を照射した後、前記加熱により前記固定樹脂層を溶融させることで、前記電子部品配置封止材硬化物を前記支持基材から剥離させることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記封止材硬化兼剥離工程で前記固定樹脂層を溶融させる温度が130〜200℃である請求項5に記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記固定樹脂層の前記活性エネルギー線の照射後における180℃での溶融粘度が、0.01〜100Pa.sである請求項5または6に記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記電子部品配置封止材硬化物の前記電子部品が配置されている面に配線層を形成し、該配線層が形成された電子部品配置封止材硬化物を得る配線層形成工程を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記配線層が形成された前記電子部品配置封止材硬化物を分割することにより、前記配線層が形成された前記電子部品配置封止材硬化物を個片化し、個片化された前記電子部品配置封止材硬化物を得る個片化工程を有する請求項8に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記固定樹脂層は、酸または塩基の存在下において溶融粘度が低下する樹脂成分と、前記活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤とを含有する樹脂組成物を含む請求項1ないし9のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成分は、ポリカーボネート系樹脂である請求項10に記載の電子装置の製造方法。
【請求項12】
前記ポリカーボネート系樹脂は、少なくとも2つの環状体をカーボネート構成単位に含んでなるものである請求項11に記載の電子装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の電子装置の製造方法で作製されたことを特徴とする電子装置。
【請求項14】
請求項9に記載の個片化された前記電子部品配置封止材硬化物を基板に実装する実装工程を有することを特徴とする電子装置パッケージの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電子装置パッケージの製造方法で作製されたことを特徴とする電子装置パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−114297(P2012−114297A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262929(P2010−262929)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】