説明

電子装置及び電子デバイス

【課題】製造時に高い温度を印加することにより、性能を十分に発揮できる薄膜トランジスタ回路を搭載した電子装置及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】可撓性を有する基板11と、基板11の平面上に形成され、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層12と、誘電体層12の平面上に形成され、所定の機能を発揮する電子素子13が形成される電子素子形成層14とを備える。基板11は、SUS基板等の金属基板により構成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する電子装置及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、フレキシブル基板上に薄膜トランジスタ回路を形成することにより、フレキシブルディスプレイやイメージセンサーやRFID(Radio Frequency Identification)タグ等の電子デバイスが開発されている。
ここで、特許文献1には、薄膜トランジスタ回路を用いた集積回路及びRFID(Radio Frequency Identification)の作製について、SOI基板を用いて剥離するという方法が記載されている。また、特許文献2には、対象物に貼り合わされた後で剥離することにより、リーダ/ライタとの間における信号又は電源電圧の送受を制限することができる半導体装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、薄膜トランジスタ(TFT)回路等の薄膜能動素子を含んでいる薄膜集積回路装置について記載されている。また、特許文献4には、ICチップからの放熱性を向上させ、半導体装置の誤動作を防止し、半導体装置の動作信頼性を向上させる半導体装置の実装構造が記載されている。また、特許文献5には、基材をエッチング薄く加工した後、貼り合わせによりフレキシブル化を達成するフレキシブル電子デバイスについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−203751号公報
【特許文献2】特開2005−228304号公報
【特許文献3】特開2005−235191号公報
【特許文献4】特許第3446818号公報
【特許文献5】特許第4063082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、フレキシブル基板としては、プラスチック系のフィルムや基板が使われているが、基材の性質上、製造時に高温(250℃程度)を加えることができず薄膜トランジスタ回路の性能を十分に発揮させることが困難であった。これは、薄膜トランジスタ回路は、活性層であるポリシリコン層やゲート絶縁膜の成膜時に印加される温度によって変化する性質を有しており、ポリシリコン層では、印加される温度によって、シリコン膜中の水素濃度によりレーザ結晶化時の結晶化エネルギーの最適値が変化する。また、ゲート絶縁膜では、成膜時に印加される温度によって、絶縁性及びTFT特性を決定する界面準位密度(MidDit)が変化する。
したがって、印加される温度が低いと、ポリシリコン層の結晶化エネルギーが最適値が変化してしまい、また、ゲート絶縁膜の界面準位密度も変化してしまうため、薄膜トランジスタ回路の性能を十分に発揮させることが困難となる。
【0006】
ところで、特許文献1〜特許文献5においては、樹脂基板が用いられており、製造時に高い温度を印加できないため、薄膜トランジスタ回路の性能を十分に発揮することが困難である。
さらに、単に、フレキシブル基板上に非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子とチップとを同時に形成しようとすれば、チップの面積に対してアンテナ素子の面積が大きくなってしまう問題がある。
また、フレキシブルな金属基板上に非接触式のデータキャリア用回路をそのまま形成すると、当該回路が一定の動作特性を担保できなくなる。
【0007】
本発明では、金属基板のコストメリットを活かしつつ、製造時に高い温度を印加することにより、性能を十分に発揮できる薄膜トランジスタ回路を搭載し、フレキシブル基板上に非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子とチップとを同時に形成しても小型化を実現でき、また、非接触式のデータキャリア用回路の動作特性を担保する電子装置及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
請求項1の発明は、可撓性を有する基板(11)と、前記基板(11)の平面上に形成され、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層(12)と、前記誘電体層(12)の平面上に形成され、所定の機能を発揮する電子素子(13)が形成される電子素子形成層(14)とを備えることを特徴とする電子装置(1)である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子装置(1)において、前記基板(11)は、SUS基板等の金属基板により構成されていることを特徴とする電子装置(1)である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電子装置(1)において、前記誘電体層(12)は、強誘電体層により構成されていることを特徴とする電子装置(1)である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電子装置(1)において、前記電子素子形成層(14)は、薄膜トランジスタ回路(14a)により構成されており、非接触式のデータキャリア用回路としての機能を発揮することを特徴とする電子装置(1)である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の電子装置(1)において、前記基板(11)の平面上であって、前記誘電体層(12)が形成されていない側の平面上には、前記非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子(15)が形成されていることを特徴とする電子装置(1)である。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4に記載の電子装置(1)において、前記電子素子形成層(14)には、前記非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子(15)が形成されていることを特徴とする電子装置(1)である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電子装置(1)を用いたことを特徴とする電子デバイスである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層を有するので、波長短縮効果によって、電子素子(例えば、外部装置と通信を行うために形成されるアンテナ素子)のサイズを小型化することができる。
(2)本発明では、金属基板を用いるので、製造時において高温を印加することができ、電子素子として構成される薄膜トランジスタ回路の性能を十分に発揮させることができる。
(3)本発明では、誘電体層が強誘電体層により構成されているため、波長短縮効果によって、電子素子(例えば、外部装置と通信を行うために形成されるアンテナ素子)のサイズを小型化することができる。
(4)電子素子形成層は、非接触式のデータキャリア用回路(例えば、RFID用回路)として機能する。したがって、本発明では、フレキシブル基板上に形成した薄膜トランジスタ回路で非接触式データキャリアチップを構成することにより、シリコンベースの非接触式データキャリアチップに比べ、曲げ等の応力に対するチップ割れ、クラック等の発生を軽減することが可能となる。
(5)本発明では、基板を加工することによりアンテナ素子を形成するので、強誘電体層上にアンテナ素子を形成することと同等であり、波長短縮効果によって、アンテナ素子とデータキャリア用回路の小型化とコストダウンを図ることができる。
(6)本発明では、電子素子形成層にアンテナ素子を形成し、強誘電体層上にアンテナ素子を形成することになるので、波長短縮効果によって、アンテナ素子とデータキャリア用回路の小型化とコストダウンを図ることができる。
また、薄膜トランジスタ回路は、外部装置と通信を行うためのアンテナ素子と組み合わせることにより、RFID用薄膜トランジスタ回路として機能する。一般的なRFID用薄膜トランジスタ回路を搭載したRFIDカードでは、金属(外部装置)に近接すると共振周波数やその特性が変化してしまう。そこで、本発明では、金属基板により構成される基板をアンテナ素子と予め組み合わせ、製造段階において金属に近接することにより共振周波数やその特性が変化してしまう現象を回避するように調整しておく。このように構成することにより、本発明では、外部装置(リーダ/ライタ装置)に近接しても、共振周波数やその特性が変化しないように抑制することができる。また、基板は、特性変化抑制用の金属基板として用いている。
(7)本発明では、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層を有し、波長短縮効果によって、電子素子(例えば、外部装置と通信を行うために形成されるアンテナ素子)のサイズの小型化が図られた電子装置を有する電子デバイスを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】誘電体層の比誘電率を変化させた場合におけるそれぞれのλ/4の値の違いについての説明に供する図である。
【図3】電磁波周波数900MHz帯のダイポールアンテナの場合において、高い比誘電率を有する誘電体層を用いたときのアンテナ素子の長さについての説明に供する図である。
【図4】共振周波数が13.56MHzのループアンテナの場合において、高い比誘電率を有する誘電体層を用いたときの波長の変化と、変化した波長に対応する周波数についての説明に供する図である。
【図5】共振周波数が303MHzの場合において、コンデンサの容量を変化させたときのコイルの容量の変化についての説明に供する図である。
【図6】電子装置の製造方法についての説明に供する図である。
【図7】製造された電子装置の平面と断面を模式的に示す図である。
【図8】電子装置の製造方法についての説明に供する図である。
【図9】製造された電子装置の平面と断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明する。図1は、フレキシブル金属基板上に形成された薄膜トランジスタ回路を用いた非接触式データキャリア装置としての電子装置1の断面図を示す。本実施の形態にかかる電子装置1によれば、電子素子(例えば、外部装置と通信を行うために形成されるアンテナ素子)のサイズの小型化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0019】
当該効果を発揮するために、電子装置1は、図1に示すように、可撓性を有する基板11と、誘電体層12と、電子素子形成層14とを備える。誘電体層12は、基板11の平面上に形成され、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する。電子素子形成層14は、誘電体層12の平面上に形成され、所定の機能を発揮する電子素子13が形成される。また、詳細は後述するように、電子素子形成層14の一例として、誘電体層12の上面に薄膜トランジスタ回路14aが形成される。
【0020】
このように構成される電子装置1は、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層を有するので、波長短縮効果によって、電子素子(例えば、外部装置と通信を行うために形成されるアンテナ素子)のサイズを小型化することができる。
【0021】
また、電子装置1では、基板11は、SUS基板等の金属基板により構成されていることが好ましい。
本実施形態においては、基板11にSUS基板等の金属基板を用いるので、製造時において高い温度(250度以上)を印加することができ、電子素子形成層14としての薄膜トランジスタ回路の性能を十分に発揮させることができる。
【0022】
また、本実施例においては、薄膜トランジスタ回路は、外部装置と通信を行うためのアンテナ素子と組み合わせることにより、RFID用薄膜トランジスタ回路として機能する。一般的なRFID用薄膜トランジスタ回路を搭載したRFIDカードでは、金属(外部装置)に近接すると共振周波数やその特性が変化してしまう。そこで、本実施例に係る電子装置1では、金属基板により構成される基板11をアンテナ素子と予め組み合わせ、製造段階において金属に近接することによりRFIDを金属物へ設置した場合の共振周波数やその特性が変化してしまう現象を回避するように調整しておく。このように構成することにより、本実施形態に係る電子装置1は、外部装置(リーダ/ライタ装置)に近接しても、共振周波数やその特性が変化しないように抑制することができる。したがって、本実施例では、基板11は、特性変化抑制用の金属基板として用いている。
【0023】
このように構成される電子装置1は、金属基板を用いるので、製造時において高温を印加することができ、電子素子として構成される薄膜トランジスタ回路の性能を十分に発揮させることができる。
【0024】
また、電子装置1では、誘電体層12は、強誘電体層により構成されていることが好ましい。なお、強誘電体とは、電圧を加えることによって物質内の自発分極(物質内に電気的な正負が生じる状態)の方向を自由に変化させ、電圧をかけなくてもその分極方向を持続させることのできる誘電体(分極により電荷を蓄え、直流電流を通さない物質)のことである。また、本明細書においては、比誘電率(εr)は100以上であることが好ましい。
ここで、電子装置1に入射した電波が金属製の基板11により反射した電波によって打ち消されてしまい、RFIDへの電波供給(電源供給)が不可能となり、RFIDが動作しないという問題がある。理論的には、基板11と電子素子形成層14との間に所定のクリアランス(例えば、λ/4(波長の4分の1))を誘電体層12で形成することにより、金属製の基板11による反射位相180°の電波がさらに180°ずれることにより、入射した電波と反射した電波による打消しがなくなり、RFIDへの電波供給の変化を低減することができる。
【0025】
一定の周波数帯向けアンテナにおいて、誘電体層12の比誘電率(εr)を変化させた場合におけるそれぞれのλ/4の値の違いについて説明する。
電磁波周波数2.45GHz帯のダイポールアンテナにおいて、誘電体層12の比誘電率(εr)が1の場合には、波長(λ)は約0.122mであり、λ/4は約0.03m(3mm)になる。
つぎに、例えば、比誘電率(εr)が20000の誘電体層12を基板11と電子素子形成層14の間に形成したときには、(1)式より、
λd=λ/√εr・・・(1)
波長(λd)は約0.87mmであり、λd/4は約0.22mmになる(図2を参照)。また、例えば、比誘電率(εr)が500の誘電体層12を基板11と電子素子形成層14の間に形成したときには、(1)式より、波長(λd)は約5.47mmであり、λd/4は約1.37mmになる(図2を参照)。
【0026】
また、電磁波周波数900MHz帯のダイポールアンテナにおいて、誘電体層12の比誘電率(εr)が1の場合には、波長(λ)は約0.33mであり、λ/4は約0.08mmになる。
つぎに、例えば、比誘電率(εr)が20000の誘電体層12を基板11と電子素子形成層14の間に形成したときには、(1)式より、波長(λd)は約2.36mmであり、λd/4は約0.59mmになる(図2を参照)。また、例えば、比誘電率(εr)が500の誘電体層12を基板11と電子素子形成層14の間に形成したときには、(1)式より、波長(λd)は約14.9mmであり、λd/4は約3.72mmになる(図2を参照)。
【0027】
また、共振周波数が13.56MHzのループアンテナにおいて、比誘電率(εr)が1の場合には、波長(λ)は約22.11mmであり、λ/4は約5.53mmである。
つぎに、例えば、比誘電率(εr)が20000の誘電体層12を基板11と電子素子形成層14の間に形成したときには、(1)式より、波長(λd)は約156mmであり、λd/4は約39.1mmになる(図2を参照)。また、例えば、比誘電率(εr)が500の誘電体層12を基板11と電子素子形成層14の間に形成したときには、(1)式より、波長(λd)は約989mmであり、λd/4は約247mmになる(図2を参照)。
【0028】
このようにして、比誘電率(εr)が高い誘電体層12ほどλ/4は短縮する。したがって、電子装置1は、比誘電率(εr)が高い誘電体層12を用いるので、全体の大きさを小型化することができ、コストダウンを図ることができる。
【0029】
つぎに、比誘電率(εr)の高い誘電体層12を設けることによる波長短縮効果について説明する。
例えば、電磁波周波数900MHz帯のダイポールアンテナの場合には、波長(λ)は、上述したように約0.33mであり、アンテナ素子の長さ(例えば、λ/2)は、約0.17m(170mm)である。つぎに、比誘電率が20000の誘電体層12を用いた場合には、波長短縮効果によりアンテナ素子の長さ(λ/2)は、(1)式より、約1.18mmとなる。また、比誘電率が500の誘電体層12を基板11の表面に形成した場合には、波長短縮効果によりアンテナ素子の長さ(λ/2)は、(1)式より、約7.45mmとなる(図3を参照)。
このようにして、電子装置1は、基板11上に誘電体層12を形成することにより、アンテナ素子を短縮化することができ、全体の大きさを小型化することができ、コストダウンを図ることができる。
【0030】
また、共振周波数が13.56MHzのループアンテナの場合には、波長(λ)は、上述したように約22.1mである。比誘電率(εr)が20000の誘電体層12を基板11の表面に形成したときには、(1)式より、波長(λd)は、約0.16mとなる。なお、約0.16mの波長は、実質的に約1928MHz(1.928GHz)の周波数の波長に相当する(図4を参照)。
また、比誘電率(εr)が500の誘電体層12を基板11の表面に形成したときには、(1)式により、波長(λd)は、約0・99mとなる。なお、約0.99mの波長は、実質的に約303MHzの周波数の波長に相当する(図4を参照)。
【0031】
また、周波数が303MHzであって、コンデンサ(c)の容量が30pFの場合には、(2)式より、
f=1/2π√LC・・・(2)
コイル(L)の容量は約0.0092μHになり、また、周波数が303MHzであって、コンデンサ(c)の容量が5pFの場合には、(2)式より、コイル(L)の容量は、約0.0552μHになり、また、周波数が303MHzであって、コンデンサ(c)の容量が1pFの場合には、(2)式より、コイル(L)の容量は、約0.2759μHになる。
なお、共振周波数が13.56MHzであって、コンデンサ(c)の容量が30pFの場合には、(2)式より、コイル(L)の容量は、約5.6μHになる(図5を参照)。
【0032】
したがって、高い比誘電率(εr)を有する誘電体層12を用いることにより、波長短縮効果を発揮することができ、コイル(L)のインダクタンスを低く(コイル(L)の長さを短く)することができるので、アンテナ素子自体を短く形成することができる。
【0033】
また、電子装置1では、電子素子形成層14は、薄膜トランジスタ回路14aにより構成されており、非接触式のデータキャリア用回路としての機能を発揮することが好ましい。
このように構成される電子装置1では、例えば、基板11に相当するフレキシブル基板上に形成した薄膜トランジスタ回路14aで非接触式データキャリアチップを構成することにより、シリコンベースの非接触式データキャリアチップに比べ、曲げ等の応力に対するチップ割れ、クラック等の発生を軽減することが可能となる。
【0034】
また、電子装置1では、基板11の平面上であって、誘電体層12が形成されていない側の平面上には、非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子15が形成されていることが好ましい。
このように構成される電子装置1では、基板11を加工することによりアンテナ素子15を形成するので、別の部材としてアンテナ素子を設ける必要がなく、また、誘電体層12上にアンテナ素子15を形成することと同等であり、波長短縮効果が生じるので、アンテナ素子15とデータキャリア用回路の小型化とコストダウンを図ることができる。
また、金属製の基板11であるフレキシブル基板自体をアンテナ素子15として用いると共にバッファー層として、強誘電体層を用いることにより、金属製の基板11上で非接触式データキャリア用回路を動作させることが可能となる。
【0035】
また、電子装置1では、電子素子形成層14には、非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子15が形成されていることが好ましい。
このように構成される電子装置1では、強誘電体層上にアンテナ素子を形成することと同等であり、波長短縮効果が生じるので、アンテナ素子とデータキャリア用回路の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0036】
つぎに、共振周波数が13.56MHzの電子装置1の製造方法について説明する。なお、以下では、図6(a)〜(e)は、電子装置1を作成する過程における断面図を示す。
電子装置1では、図6(a)、(b)に示すように、フレキシブルな金属製の基板11の平面上に所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層12を形成する。ここで、基板11の平面上は粗く平坦ではないが、その表面上に誘電体層12を形成することにより平坦化が図られる。
電子装置1は、図6(c)に示すように、誘電体層12の平面上に電子素子形成層14としての薄膜トランジスタ回路14aを作成する。本実施例では、基板11が金属製であるため、薄膜トランジスタ回路14aの作成において高温を印加することが可能であり、性能を十分に発揮する薄膜トランジスタ回路14aを作成することができる。
また、電子装置1は、図6(d)、(e)に示すように、電子素子形成層14としての薄膜トランジスタ回路14a上に、層間絶縁膜14bを形成し、ビアホール14c(スルーホール)を形成し、金属層を作成後、パターンニング、エッチング等を行うことによりアンテナ素子14dの形成を行う。
また、図7には、電子装置1の平面図と、A−Aで切断したときの断面図を示す。
【0037】
つぎに、UHF帯用のRFIDとして機能する電子装置1の製造方法について説明する。なお、以下では、図8(a)〜(e)は、電子装置1を作成する過程における断面図を示す。
電子装置1は、図8(a)、(b)に示すように、フレキシブルな金属製の基板11の平面上に所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層12を形成する。ここで、基板11の平面上は粗く平坦ではないが、その表面上に誘電体層12を形成することにより平坦化が図られる。
電子装置1は、図8(c)に示すように、誘電体層12の平面上に電子素子形成層14としての薄膜トランジスタ回路14aを作成する。本実施例では、基板11が金属製であるため、薄膜トランジスタ回路14aの作成において高温を印加することが可能であり、性能を十分に発揮する薄膜トランジスタ回路14aを作成することができる。
また、電子装置1は、図8(d)、(e)に示すように、電子素子形成層14としての薄膜トランジスタ回路14a上に、層間絶縁膜14bを形成し、ビアホール14c(スルーホール)を形成し、金属層を作成後、パターンニング、エッチング等を行うことによりアンテナ素子14dの形成を行う。
また、図9には、電子装置1の平面図と、A−Aで切断したときの断面図を示す。
【0038】
ここで、本実施例に係る電子装置1のポイントをまとめる。
1.電子装置1は、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層12を有するので、波長短縮効果によって、電子素子13のサイズを小型化することができる。
2.電子装置1は、基板11として金属製のもの(例えば、SUS基板)を用いるので、製造時において高温を印加することができ、電子素子13として構成される薄膜トランジスタ回路14aの性能を十分に発揮させることができる。
3.電子装置1は、誘電体層12が強誘電体層(例えば、比誘電率εが100以上)により構成されているため、波長短縮効果によって、電子素子13のサイズを小型化することができる。
4.電子素子形成層14は、非接触式のデータキャリア用回路(例えば、RFID用回路)として機能する。したがって、電子装置1は、フレキシブルな基板11上に形成した薄膜トランジスタ回路14aで非接触式データキャリアチップを構成することにより、シリコンベースの非接触式データキャリアチップに比べ、曲げ等の応力に対するチップ割れ、クラック等の発生を軽減することが可能となる。
5.電子装置1は、基板11を加工することによりアンテナ素子を形成するので、誘電体層12上にアンテナ素子15を形成することと同等であり、波長短縮効果によって、アンテナ素子15とデータキャリア用回路の小型化とコストダウンを図ることができる。
6.電子装置1は、電子素子形成層14上にアンテナ素子15を形成するので、結果として、アンテナ素子15を誘電体層12上に形成することと同等であるので、波長短縮効果によって、アンテナ素子15とデータキャリア用回路の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0039】
また、発展的な形態として、電子デバイスに本実施例に係る電子装置1を備えさせても良い。このような電子デバイスは、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層を有し、波長短縮効果によって、電子素子(例えば、外部装置と通信を行うために形成されるアンテナ素子)のサイズの小型化が図られた電子装置1を備えることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 電子装置
11 基板
12 誘電体層
13 電子素子
14 電子素子形成層
14a 薄膜トランジスタ回路
15 アンテナ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板と、
前記基板の平面上に形成され、所定の比誘電率以上の比誘電率を有する誘電体層と、
前記誘電体層の平面上に形成され、所定の機能を発揮する電子素子が形成される電子素子形成層とを備えることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記基板は、SUS基板等の金属基板により構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子装置において、
前記誘電体層は、強誘電体層により構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子装置において、
前記電子素子形成層は、薄膜トランジスタ回路により構成されており、非接触式のデータキャリア用回路としての機能を発揮することを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子装置において、
前記基板の平面上であって、前記誘電体層が形成されていない側の平面上には、前記非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子が形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電子装置において、
前記電子素子形成層には、前記非接触式のデータキャリア用回路のアンテナ素子が形成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電子装置を用いたことを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−206328(P2010−206328A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47336(P2009−47336)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】