説明

電子計算機の冷却構造

【課題】
ファンが複数段直列に搭載される電子計算機において、ファン性能を落とすことなく、かつファンが全て停止した場合でも冷却性能の低下を抑えるような冷却構造を構築する。
【解決手段】
直列に2段以上の複数の冷却用ファンを内蔵する電子計算機において、冷却用ファンと冷却用ファンの間に備えられた冷却構造体であって、シャッター形状の構造物から構成され、前記冷却用ファンが動作時にシャッターが開口して内蔵するファンの性能を向上させる形態と、前記冷却用ファンが停止時にシャッターが閉口して逆流を防止する形態に形状を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に2段以上の複数の冷却用ファンを内蔵する電子計算機において、電子計算機内を流れる風量により、内蔵するファンの性能を向上させる機能と、逆流を防止する機能に形状を変える事のできる冷却構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子計算機の分野においては、半導体製造技術の進歩に伴い、処理能力の高速化及び高機能化が飛躍的に進んでおり、その結果として、電子計算機の消費電力は増加の一途をたどっており、装置の冷却が益々困難となっている。
【0003】
ブレードサーバなどに代表される電子計算機は、ファンによる強制空冷方式が一般的に用いられるが、近年これら電子計算機の高密度化に伴い、装置全体の圧力損失は増加傾向にある。上記問題の解決策として、複数のファンを直列に搭載する方法があげられる。これにより、ファンが1台搭載される場合に対して、ファンの静圧を向上させることが可能となり、圧力損失の大きい装置に対してより多くの風量を流す事が可能となる。
【0004】
ファンを直列2台配置した場合、理論的にはその最大静圧は2倍となるが、実際には1.5倍程度までしか静圧が確保できない。その理由として、上流側に搭載されたファンからの排気風にファン回転による生じる旋回流成分が存在することにより、下流側のファンに乱れた流れの冷却風が入り込むために、下流側ファンの性能が低下することがあげられる。直列に2段搭載されたファンの間隔を広げることにより、この問題に対応することは可能であるが、近年、装置の高性能化が進む一方で装置の省スペース化が進んでおり、ファンを搭載するスペースの確保が困難になってきている。そこで、これらの対策として、上流側ファンの排気側に整流格子を設置することにより、ファンとファンの間の距離が近い場合でも、ファン性能の低下を極力抑えることを可能としている。
【0005】
上記電子計算機については、24時間365日間稼働し続けなければならないような状況下での使用も多く、その場合ファンが停止した場合でもシステムを停止させることなく保守を実現可能とする必要がある。そのため、あるファンが停止した場合でも装置内の冷却性能低下を最小限とするよう、ファンを直列化することに加え、それらファンを並列に搭載し、隣接するファンからも冷却風を期待するような構造が一般的となっている。
【0006】
しかし、あるファンボックス内のファンが全て停止した場合には、ファンによる排気が行われない連通空間が存在してしまい、そこを冷却風が逆流することにより、電子計算機の冷却性能が大きく低下する問題が発生してしまう。
【0007】
そのため、ファン性能を落とすことなく、かつファンが全て停止した場合でも冷却性能の低下を抑えるような冷却構造を構築する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−003256号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
停止しているファンの部分を冷却風が流れない構造であれば、電子計算機内の発熱体を冷却する風は全てファンを通る事になるため、逆流などを防ぐ事が可能となる。
【0010】
このような状況において、直列に搭載されるファンとファンの間に搭載される冷却構造体を工夫することにより、「ファン動作時に内蔵するファンの性能を向上させる形態」と「ファン停止時に逆流を防止する形態」の双方の機能を実現可能とするための冷却構造を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、直列に2段以上の複数の冷却用ファンを内蔵する電子計算機において、冷却用ファンと冷却用ファンの間に備えられた冷却構造体であって、シャッター形状の構造物から構成され、前記冷却用ファンが動作時にシャッターが開口して内蔵するファンの性能を向上させる形態と、前記冷却用ファンが停止時にシャッターが閉口して逆流を防止する形態に形状を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷却構造体を用いることにより、2つのファンの間にある冷却構造体に「ファンの性能を向上させる形態」と「逆流を防止する形態」の2つの機能を持たせることができるため、電子計算機側にこれらの機能を個別に追加する必要がなくなり、コスト低減、筐体サイズの小型化につなげる事ができる。また、冷却構造体に逆流を防止する形態を備えることにより、直列に搭載されたファンが全て停止した場合、この冷却構造体が自動的にシャッターの機能として働くため、これらの機能がない場合に比べ、ファン全台停止時の演算部の冷却性能低下を抑える事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】複数のファンが直列に搭載された電子計算機の全体図
【図2】図1の電子計算機の側面図
【図3】冷却構造体が、内蔵するファンの性能を向上させる形態として機能している時の側面図
【図4】冷却構造体が、逆流を防止する形態として機能している時の側面図
【図5】バネによる開閉機構を備えた時の冷却構造体側面図
【図6】駆動機構を備えた時の冷却構造体側面図
【図7】ファンと冷却構造体をボックス化した時の電子計算機の側面図
【図8】支点とヒンジを用いた場合の冷却構造体側面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
請求項1に関する実施例を以下に示す。図1に電子計算機001の全体図を示す。冷却風002は演算部003の前面より入気され、演算部003内を通過したのちに、冷却ファン004、005を通過し、冷却ファン005の下流側から大気に向かって排出される。
【0015】
図2に電子計算機001の側面図を示す。演算部003には複数の発熱体006が搭載される。また、電子計算機001内にファン004、005が直列に複数搭載され、ファン004とファン005の間には冷却構造体007を備えている。
【0016】
図3に冷却構造体007が「内蔵するファンの性能を向上させる形態」として機能している状態を示す。冷却構造体007は開いたシャッター形状の構造物008から構成されている。この場合、ファン004を通過した冷却風が構造物008を通過する際、構造物008が整流の機能を果たすため、ファン005には整流された風が入る。そのため、内蔵するファン005の性能を回復させることを可能とし、その結果として、ファンの性能が向上する。
【0017】
図4に冷却構造体006が「逆流を防止する形態」として機能している状態を示す。この場合、構造体009が縦に連なって配置されることにより、シャッターの機能を果たす。そのため、ファン004、ファン005が両方停止した時に、装置背面からファン側への風の逆流を遮断することを可能とし、演算部への冷却風の回り込みを防ぐ。そのため、直列に搭載されるファンが全て停止した時の演算部の冷却性能低下を抑えることができる。
【0018】
以上の方式により、ファンの動作状態によって冷却構造体007が2つの形態として機能し、冷却構造体007を用いるだけで、ファン動作時のファン性能向上とファン停止時の逆流防止を同時に実現することが可能となる。
【実施例2】
【0019】
請求項2に関する実施例を以下に示す。図5に冷却構造体007の断面図を示す。冷却構造体007は構造物008とバネ010とで構成されている。電子計算機001内に冷却風が流れていない場合は、バネ010の力により構造物008がファン004の下流側を塞ぐ形となり、逆流を防止する形態となっている。しかし、ファンからの風がバネ010の力を上回ると、ファン004の下流側を塞いでいた構造物008が開き、構造物008は整流機能となることにより、ファンの性能を向上させる形態へと自動で変更する。この状態でファン004及び005が停止し、バネ010の力が上回ると、構造物がファン004の下流側を塞ぐ形となり、再び逆流を防止する形態へと自動で変更する。
【実施例3】
【0020】
請求項3に関する実施例を以下に示す。図6に冷却構造体007の断面図を示す。外部制御装置からの入力信号を駆動部011に伝え、駆動部011が構造体008を動かす。これにより、使用環境に応じ、外部制御装置からの操作によって、いつでもファンの性能を向上させる形態と逆流を防止する形態に形状を変えることが可能である。
【実施例4】
【0021】
請求項4に関する実施例を以下に示す。図6の構造体008の角度を外部制御装置からの変更によって任意に調整可能とすることにより、開口率を自由に設定することが可能となり、その結果、筐体内の風量を自由に制御することが可能となる。
【実施例5】
【0022】
請求項5に関する実施例を以下に示す。図7は図2中で、冷却構造体007とファン004、005を一体化したものを示す。
なお、ここでは一体化したものをファンボックス012と定義する。電子計算機001にファンボックス012を内蔵することにより、ファンボックス012のファン004,005が故障した場合にも、容易に交換することができる。
【実施例6】
【0023】
請求項6に関する実施例を以下に示す。図8は冷却構造体007の断面図を示す。構造物008は、支点013、014及びヒンジ015部を中心に回転し、ファン動作時には構造物008が開くことにより整流機能を果たす。一方、全ファン停止時には逆流する風によって構造物008が90度回転することにより、逆流を防止する形態へと自動で変更する。
【符号の説明】
【0024】
001・・・電子計算機
002・・・冷却風流れ
003・・・演算部
004・・・上流側ファン
005・・・下流側ファン
006・・・演算部上に搭載される発熱体
007・・・冷却構造体
008・・・ファン動作時の冷却構造体内の構造物
009・・・ファン全台停止時の冷却構造体内の構造物
010・・・構造物に設置されるバネ
011・・・構造物の駆動部
012・・・ファンボックス
013・・・上側支点
014・・・下側支点
015・・・ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に2段以上の複数の冷却用ファンを内蔵する電子計算機において、冷却用ファンと冷却用ファンの間に備えられた冷却構造体であって、シャッター形状の構造物から構成され、前記冷却用ファンが動作時にシャッターが開口して内蔵するファンの性能を向上させる形態と、前記冷却用ファンが停止時にシャッターが閉口して逆流を防止する形態に形状を変えることを特徴とする冷却構造体。
【請求項2】
ファンの性能を向上させる形態と、逆流を防止する形態を、電子計算機内を流れる冷却風量により自動で制御することを特徴とする請求項1の冷却構造体。
【請求項3】
ファンの性能を向上させる形態と、逆流を防止する形態を、外部制御装置を用いて変更する請求項1の冷却構造体。
【請求項4】
請求項3に示す冷却構造体であって、筐体風量を制御することを可能とした冷却構造体。
【請求項5】
上記請求項1の冷却構造体とファンを一体化した冷却構造体を有する電子計算機。
【請求項6】
請求項2に示す冷却構造体であって、全ファンが停止した時には、その時に発生する逆流する風によって、ファン性能を向上させる形態から逆流を防止する形態へと形状を変える事を特徴とする冷却構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−75111(P2011−75111A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223615(P2009−223615)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】