説明

電子部品、測定方法および監視装置

【課題】接合部の損傷を事前に検知する。
【解決手段】電子部品は、第1部材と、第2部材と、接合部と、測定部とを備える。第1電極は、第1部材上に形成される。第2電極は、第1部材上の、第1電極が形成された領域の周囲の領域に形成される。第3電極は、第2部材に形成される。第2電極が第2部材に形成され、第3電極が第2部材の第2電極が形成された領域の周囲の領域に形成されてもよい。接合部は、第1電極と第2電極と第3電極と接合する。測定部は、第1電極および第2電極のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子部品、測定方法および監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクス機器や車載用電子機器に搭載される半導体モジュールは、稼働時に、熱負荷や動荷重などの負荷により、内部部品に故障が生じることがある。故障の原因となる負荷は、1回で故障に至るものだけに留まらず、繰り返し負荷が作用することにより、損傷が蓄積して故障に至るものも存在する。例えば、機器の稼働状態変化によって発生する温度変動は、素子や基板などの構成部材間の線膨張係数の差により、接合部(例えば素子電極接合部や、はんだ接合部)に繰り返し応力を発生させる。また、動荷重が加わる状態で機器が設置された場合、慣性力が作用することにより、繰返し応力が発生する。さらに、繰返し熱負荷に動荷重変動が重畳し、繰返しの複合負荷が作用する場合もある。
【0003】
これらの繰返し負荷により発生する応力やひずみは、1回の負荷では故障には至らないが、繰り返し負荷されると破損(故障)する恐れがある。
【0004】
一方、長期的に使用される製品に対して、製品の状態を診断し、故障するまでの寿命を予測し、保守部品交換の時期を適正化するための技術として、ヘルスモニタリングという手法が存在する。ヘルスモニタリングには様々な手法が存在するが、上述のような電子機器への適用例の1つとして、繰り返し負荷に対する寿命の予測が挙げられる。
【0005】
近年の電子機器には、温度センサおよび加速度センサなどのセンサ類を実装することが可能であり、稼動状態での機器の状態を監視することにより、状態に応じて様々なアクションをとることができる。
【0006】
例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理部品の温度を常時センシングし、温度が上昇してしきい値を超えた時点で演算負荷を強制的に下げ、温度上昇による故障の発生を防ぐことができる。また、加速度センサにより機器の加速度および傾きを検知して、ハードディスクドライブのヘッドを退避させる、または、ユーザが指定したアプリケーションを起動させる等の動作につなげることができる。
【0007】
これらのセンサは、上述のような繰り返し応力に対する疲労寿命の予測にも使用することが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−306239号公報
【特許文献2】特許第3265197号公報
【特許文献3】特開2010−223859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、参考技術では、熱負荷と動荷重が重畳するような複合負荷の場合には、適切に寿命を予測することができない場合もある。また、パワー半導体モジュールでは、半導体素子と絶縁基板の間、および、基板とヒートスプレッダの間のそれぞれを、薄膜金属接合層を介して接続することで、冷却構造への放熱経路を確保する。また、半導体素子間または半導体素子と基板との間は、金属ワイヤや金属薄膜などの導電部材で接続されているが、半導体素子と導電部材の接続面には、局所的に大きな熱が発生する。このため、その直下の接合部で損傷の恐れがあり、接合部の損傷による放熱性能の低下が懸念されている。例えば薄膜金属接合層で接合されているパワー半導体モジュールに対しては、必ずしもモジュールのコーナー部から破損が生じるとは限らず、また、コーナー部から破損しても、対象接合部の破損寿命と大きな隔たりがあり、故障予兆検出としては適切ではないこともあり、参考技術では、事前に故障予兆を検出することが困難となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の電子部品は、電子部品は、第1部材と、第2部材と、接合部と、測定部とを備える。第1電極は、第1部材上に形成される。第2電極は、第1部材上の、第1電極が形成された領域の周囲の領域に形成される。第3電極は、第2部材に形成される。第2電極が第2部材に形成され、第3電極が第2部材の第2電極が形成された領域の周囲の領域に形成されてもよい。接合部は、第1電極と第2電極と第3電極と接合する。測定部は、第1電極および第2電極のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】第1の実施形態の電子部品の断面図。
【図1B】第1の実施形態の電子部品の要部を示す断面図。
【図1C】絶縁基板上に形成された基板電極の形状を示す図。
【図1D】絶縁基板上に形成された基板電極の形状を示す図。
【図1E】半導体素子と導電部材との接続面の一例を示す図。
【図2A】第1の実施形態の変形例1の電子部品の要部を示す断面図。
【図2B】第1の実施形態の変形例1の基板電極の形状を示す図。
【図2C】第1の実施形態の変形例1の基板電極の形状を示す図。
【図2D】第1の実施形態の変形例1の基板電極の形状を示す図。
【図3A】第1の実施形態の変形例2の電子部品の要部を示す断面図。
【図3B】第1の実施形態の変形例2の基板電極の形状を示す図。
【図4A】第1の実施形態の変形例3の電子部品の要部を示す断面図。
【図4B】第1の実施形態の変形例3の基板電極の形状を示す図。
【図4C】第1の実施形態の変形例3の接合部の形状を示す図。
【図5】第1の実施形態の変形例4の絶縁基板の電極の形状を示す図。
【図6A】第2の実施形態の電子部品の要部を示す断面図。
【図6B】第2の実施形態の素子電極の形状を示す図。
【図7A】第3の実施形態の電子部品の要部を示す断面図。
【図7B】第3の実施形態の基板電極の形状を示す図。
【図7C】第3の実施形態の素子電極の形状を示す図。
【図7D】第3の実施形態の変形例1の電子部品の要部を示す断面図。
【図7E】第3の実施形態の変形例1の接続経路を示す図。
【図7F】第3の実施形態の変形例1の接続経路を示す図。
【図8A】第4の実施形態の電子部品の断面図。
【図8B】ベース板上に形成された基板電極の形状を示す図。
【図8C】ベース板上に形成された基板電極の形状を示す図。
【図9】第4の実施形態の変形例1の電子部品の要部を示す断面図。
【図10A】第4の実施形態の変形例2の電子部品の要部を示す断面図。
【図10B】接合部の下の基板電極の形状を示す図。
【図10C】接合部の上の基板電極の形状を示す図。
【図10D】配線の一部の代わりに結合部を備える構成を示す図。
【図10E】配線の一部の代わりに結合部を備える構成を示す図。
【図10F】第4の実施形態の変形例3の電子部品の要部を示す断面図。
【図10G】第4の実施形態の変形例4の電子部品の要部を示す断面図。
【図11】第5の実施形態の電子部品の要部を示す断面図。
【図12A】第6の実施形態の電子部品の断面図。
【図12B】第6の実施形態の要部を示す断面図。
【図12C】第6の実施形態の半導体素子上の電極の形状を示す図。
【図13】2つの測定部を用いる場合の配線を示す図。
【図14A】1つの測定部を用いる場合の配線を示す図。
【図14B】1つの測定部を用いる場合の配線を示す図。
【図15A】監視装置の概略構成例を示すブロック図。
【図15B】予測処理のフローチャート。
【図16】予測処理のフローチャート。
【図17】第7の実施形態の監視装置のブロック図。
【図18】寿命推定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電子部品、測定方法および監視装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1Aは、第1の実施形態の電子部品全体を模式的に示す断面図である。図1Bは、第1の実施形態の電子部品の要部(図1Aの破線で囲った部分)を示す断面図である。図1Cは、絶縁基板上に形成された基板電極の形状を示す図である。図1Dは、絶縁基板上に形成された基板電極の他の形状を示す図である。
【0014】
図1Aに示すように、第1の実施形態の電子部品(半導体パッケージ)は、半導体素子1と、絶縁基板2と、ベース板3とを備える。絶縁基板2は、例えばセラミック基板である。ベース板3は、例えば銅である。半導体素子1と絶縁基板2、および、絶縁基板2とベース板3は、接合部4−1で接続されている。半導体素子1同士、および、半導体素子1と絶縁基板2は、導電部材5で接続されている。接合部4−1は、例えば、はんだ接合部である。導電部材5は、例えば、アルミワイヤである。素子表面とアルミワイヤとは、例えば超音波接合されている。
【0015】
図1Bに示すように、絶縁基板2の表面には、基板電極6と基板電極7が形成されている。また、半導体素子1の表面には素子電極8が形成されている。基板電極6、基板電極7、および、素子電極8は、接合部4−2と接続している。接合部4−2は、例えば、はんだ接合部である。以下、特に区別する必要がない場合は、接合部4−1、接合部4−2、および、図12Bで説明する接合部4−3を単に接合部4という場合がある。
【0016】
図1Cは、絶縁基板2に形成された基板電極6および基板電極7を絶縁基板2の鉛直上方から観察した図に相当する。図1Cに示すように、基板電極6は、基板電極7の内側に形成される。すなわち、基板電極7は、絶縁基板2上の、基板電極6が形成された領域の周囲の領域に形成される。基板電極6と基板電極7との間には空隙を設けても良いし、レジストを塗布しても良い。基板電極6の形状は、図1Cに示すように多角形でもよいし、図1Dに示すように円形でもよいし、その他の形状でもよい。
【0017】
基板電極6と基板電極7とが、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。測定部9は、基板電極6および基板電極7のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する。測定部9は、例えば絶縁基板2上に形成される。接続経路は基板電極6を含まない構成と可能であるが、基板電極6を含んだ接続経路の方がよりよく損傷を検出できるので好ましい。
【0018】
なお、各実施形態においては損傷の事例として、接続経路が電気的に完全に断線した状態、すなわち「破断」を例に説明する場合があるが、電気特性としてキャパシタンスまたはインピーダンス等を測定することにより、破断に至る前の状態およびその変化も損傷として検出可能である。
【0019】
接続経路は、例えば測定部9、配線10、基板電極6、接合部4−2、基板電極7、配線10の順に導電する。電気特性は例えば、電気抵抗値、電流、および電圧などである。
【0020】
使用中に半導体素子1と導電部材5の接続面で大きな発熱が生じる。その結果、接続面の直下の接合部4−2(接続面に最も近い接合部4−2)に損傷が生じやすい。図1Eは、半導体素子1と導電部材5との接続面の一例を示す図である。半導体素子1上に形成された電極1−Aと導電部材5とが接続された面が接続面1−Bに相当する。
【0021】
半導体素子1は、例えば10W〜1kW程度の発熱量を有する。このため、接合部4−2は、通電の他に放熱の役割を備えることが望ましい。放熱性能を高めるため(低熱抵抗にするため)には、半導体素子1と接合部4−2との接続面積を大きくする必要がある。この接続面積は、例えば0.1cm〜10cm程度が好ましい。上記発熱量を上記接続面積で除した、いわゆる熱流束が、例えば0.001kW/cm〜10kW/cmの範囲とすることが好ましい。
【0022】
このため、接合部4のアスペクト比は、10以上、好ましくは30以上とすることが望ましい。ここでは、アスペクト比とは、一辺の長さ/高さ、または、直径/高さを表す。接合部4の高さが異なる場合、「高さ」には最小の高さを用いる。接合部4の各辺の長さが異なる場合、「一辺の長さ」には最大の辺の長さを用いる。接合部4の直径が異なる場合、「直径」には最大の直径を用いる。
【0023】
一方、接合部4では電極間の空隙またはレジストにより、その周囲にボイドを生じやすい。従って、半導体素子1と導電部材5の接続面の直下で生じた損傷が拡大すると、電極間周辺の接合部4に生じたボイドが連結され、基板電極6と接合部4がはく離する。はく離により、基板電極6と接合部4との間で導電しなくなると、例えば電気抵抗値は上昇する。これにより、接合部4の損傷を検知することができる。基板電極6と接合部4のはく離が許容範囲内になるように、基板電極6の形状を設計すれば、接合部4が致命的または許容以上に損傷する前に、損傷を検知することができる。
【0024】
このように設計した第1の実施形態の電子部品によれば、測定部9で電気特性を測定することにより、基板電極と接合部4の断線を検知し、接合部4の損傷を事前に検出することができる。
【0025】
(第1の実施形態の変形例1)
次に、第1の実施形態の変形例1について説明する。図2Aは、第1の実施形態の変形例1の電子部品の要部を示す断面図である。図2Bは、第1の実施形態の変形例1の電子部品における基板電極の形状を示す図である。なお、本変形例の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0026】
図2Bに示すように、本変形例の電子部品は、第1の実施形態の電子部品と比較して、基板電極の形状が異なる。本変形例では、基板電極6が、互いに離間している複数の電極である、基板電極11と基板電極12と基板電極13と基板電極14とから構成される。それぞれの電極間には空隙を設けても良いし、レジストを塗布しても良い。
【0027】
基板電極11〜14および基板電極7のうち2つの電極間が、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。例えば、基板電極11と基板電極12との間、および、基板電極13と基板電極14との間が、それぞれ測定部9に電気的に接続される。基板電極11と基板電極12との間では、測定部9、配線10、基板電極11、接合部4−2、基板電極12、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。基板電極13と基板電極14との間では、測定部9、配線10、基板電極13、接合部4−2、基板電極14、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。
【0028】
本変形例では、基板電極6が複数の電極から構成されるため、破断の検出を早める効果がある。また、基板電極11〜14のそれぞれが、半導体素子1と導電部材5の接続面の直下の領域を含むように構成しても良い。当該接続面での発熱により接続面の直下の接合部4−2が損傷しやすいため、この構成によりさらに破断の検出を早めることができる。
【0029】
なお、基板電極6の数は多いほど破断を検出する精度を向上させることができる。例えば、図2Bは基板電極が2×2であるが、図2Cのように3×3とすることで精度を向上させることができる。
【0030】
また、基板電極6の大きさは異なっていても良い。これにより、破断を検出したい箇所をより精度よく検出することができる。例えば図2Dは、基板電極が3×3であるが、図2Cとはその大きさが中央部とその周辺部とで異なっている。すなわち、破断を検出したい箇所の基板電極の大きさを他の基板電極の大きさよりも小さくすることにより、検出精度を高めることができる。図2Dの例では、周辺部の破断の検出精度を中央部に比較して高めることができる。
【0031】
(第1の実施形態の変形例2)
次に、第1の実施形態の変形例2について説明する。図3Aは、第1の実施形態の変形例2の電子部品の要部を示す断面図である。図3Bは、第1の実施形態の変形例2の電子部品における基板電極の形状を示す図である。なお、本変形例の説明では、第1の実施形態の変形例1と異なる箇所について説明する。
【0032】
図3Bに示すように、本変形例の電子部品は、第1の実施形態の変形例1の電子部品に比較して、基板電極の形状が異なる。基板電極11、基板電極12、基板電極13、および、基板電極14の外側に形成された、変形例1の基板電極7は、基板電極15〜26から構成される。それぞれの基板電極間には空隙を設けても良いし、レジストを塗布しても良い。
【0033】
基板電極11〜26のうち2つの電極間が、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。基板電極11と基板電極16との間では、測定部9、配線10、基板電極11、接合部4−2、基板電極16、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。
【0034】
本変形例では、基板電極7が複数の電極から構成される。これにより、基板電極11〜14上の接合部4−2に生じた初期欠陥、および、半導体素子1と導電部材5の接続面の発熱に起因した接合部4−2の損傷だけでなく、基板電極7上の接合部4−2に生じた初期欠陥、および、接合部4−2のコーナーにおける応力集中などに起因した接合部4−2の損傷も、早期に検知することが可能となる。
【0035】
(第1の実施形態の変形例3)
次に、第1の実施形態の変形例3について説明する。図4Aは第1の実施形態の変形例3の電子部品の要部を示す断面図である。図4Bは、第1の実施形態の変形例3の電子部品における基板電極の形状を示す図である。図4Cは、第1の実施形態の変形例3の電子部品における接合部4−2の形状を示す図である。なお、本変形例の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0036】
図4Aと図4Cに示すように、本変形例の電子部品は、第1の実施形態の電子部品と比較して、接合部4−2の形状が異なる。本変形例では、接合部4−2は互いに離間している接合部27〜31から構成される。接合部27は、基板電極11と素子電極8を接続する。接合部28は、基板電極12と素子電極8を接続する。接合部29は、基板電極13と素子電極8を接続する。接合部30は、基板電極14と素子電極8を接続する。接合部31は基板電極7と素子電極8を接続する。
【0037】
基板電極11〜14および基板電極7のうち2つの電極間が、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。例えば、基板電極11と基板電極12との間、および、基板電極13と基板電極14との間が、それぞれ配線10を介して測定部9に電気的に接続される。
【0038】
基板電極11と基板電極12との間では、測定部9、配線10、基板電極11、接合部27、素子電極8、接合部28、基板電極12、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。基板電極13と基板電極14との間では、測定部9、配線10、基板電極13、接合部29、素子電極8、接合部30、基板電極14、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。
【0039】
使用中に半導体素子1と導電部材5の接続面で大きな発熱が生じ、半導体素子1と導電部材5の接続面の直下の接合部4−2で生じた損傷が拡大すると、接合部27〜30の少なくとも1つが破断する。接合部の破断により、基板電極11と基板電極12との間、または、基板電極13と基板電極14との間が導電しなくなる。このため、電気抵抗値は上昇し、接合部の損傷を検知することができる。
【0040】
本変形例では、接合部の損傷箇所に関わらず、精度よく損傷を検知することができる。また、接合部27〜30それぞれが、半導体素子1と導電部材5の接続面直下の領域を含むように構成しても良い。当該接続面での発熱によりその直下の接合部が損傷しやすいため、この構成によりさらに破断の検出を早めることができる。
【0041】
(第1の実施形態の変形例4)
次に、第1の実施形態の変形例4について説明する。図5は、第1の実施形態の変形例4の電子部品における絶縁基板の素子側の電極の形状を示す図である。なお、本変形例の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0042】
図5に示すように、本変形例の電子部品は、第1の実施形態の電子部品と比較して、絶縁基板2の素子側の基板電極6の形状が異なる。使用中に半導体素子1と導電部材5の接続面で大きな発熱が生じるため、導電部材5と半導体素子1を接合する接続面の直下付近は、放熱経路の確保が必要な領域501である。本変形例では領域501の外側に4つの基板電極6a〜6dが設置されている。
【0043】
本変形例では、基板電極6a〜6dが放熱経路の確保が必要な領域501の外側に存在するため、放熱性能を妨げない。また、基板電極6a〜6dは、放熱経路の確保が必要な領域501に隣接しているため、この周辺の接合部4−2は損傷しやすい。従って、測定部9で電気特性を測定することにより、早期に接合部4−2の損傷を検知することができる。変形例4についても第1の実施形態の変形例3と同様に、接合部4−2が互いに離間している複数の接合部から構成されてもよい。
【0044】
このように、第1の実施形態にかかる電子部品では、接合部の損傷が致命的または許容以上になる前に損傷を検出することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6Aは、第2の実施形態の電子部品の要部を示す断面図である。図6Bは、第2の実施形態の電子部品における素子電極の形状を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0046】
図6Aに示すように、絶縁基板2の表面には基板電極32が形成される。半導体素子1の表面には素子電極33と素子電極34が形成される。基板電極32、素子電極33、および、素子電極34は、接合部4−2と接続している。図6Bに示すように、素子電極33は素子電極34の内側に形成される。すなわち、素子電極34は、半導体素子1の、素子電極33が形成された領域の周囲の領域に形成される。素子電極33と素子電極34との間には空隙を設けても良いし、レジストを塗布しても良い。
【0047】
素子電極33と素子電極34が、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。測定部9は、素子電極33および素子電極34のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する。測定部9は、例えば半導体素子1に形成される。接続経路は、例えば測定部9、配線10、素子電極33、接合部4−2、素子電極34、配線10の順に導電する。
【0048】
使用中に半導体素子1と導電部材5の接続面で大きな発熱が生じる。その結果、接続面の直下の接合部4−2(接続面に最も近い接合部4−2)に損傷が生じる。損傷が拡大すると、素子電極33と接合部4−2がはく離し、素子電極33と接合部4−2間で導電しなくなる。このため、電気抵抗値は上昇し、接合部4−2の損傷を検知することができる。素子電極33と接合部4−2のはく離が許容範囲内になるように、素子電極33の形状を設計すれば、接合部4−2が致命的または許容以上に損傷する前に、損傷を検知することができる。第2の実施形態についても第1の実施形態の変形例3と同様に、接合部4−2が互いに離間している複数の接合部から構成されてもよい。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図7Aは、第3の実施形態の電子部品の要部を示す断面図である。図7Bは、第3の実施形態の基板電極の形状を示す図である。図7Cは、第3の実施形態の素子電極の形状を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0050】
図7Aに示すように、絶縁基板2の表面には基板電極6と基板電極7が形成される。半導体素子1の表面には素子電極33と素子電極34が形成される。基板電極33、および、素子電極34は、接合部4−2と接続している。
【0051】
図7Aに示すように、基板電極6は基板電極7の内側に形成される。素子電極33は素子電極34の内側に形成される。図7Bに示すように、基板電極6は、互いに離間している基板電極11と基板電極12と基板電極13と基板電極14とから構成される。図7Cに示すように、素子電極33は、互いに離間している素子電極35と素子電極36と素子電極37と素子電極38とから構成される。それぞれの電極間には空隙を設けても良いし、レジストを塗布しても良い。
【0052】
基板電極6および基板電極7のうち2つの電極間が配線10を介して測定部9に電気的に接続される。例えば、基板電極11と基板電極12との間、および、基板電極13と基板電極14との間が、それぞれ測定部9に接続される。
【0053】
基板電極11と基板電極12との間では、測定部9、配線10、基板電極11、接合部4−2、基板電極12、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。基板電極13と基板電極14との間では、測定部9、配線10、基板電極13、接合部4−2、基板電極14、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。
【0054】
また、素子電極33および素子電極34のうち2つの電極間が配線10を介して測定部9に電気的に接続される。例えば、素子電極35と素子電極36との間、および、素子電極37と素子電極38との間が、それぞれ測定部9に接続される。
【0055】
素子電極35と素子電極36との間では、測定部9、配線10、素子電極35、接合部4−2、素子電極36、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。素子電極37と素子電極38との間では、測定部9、配線10、素子電極37、接合部4−2、素子電極38、配線10の順に導電し、測定部9によって電気特性が測定される。
【0056】
(第3の実施形態の変形例1)
図7Aでは、接合部4−2の上下の電極の両方が、複数に分割されているが、さらに接合部4−2が複数に分割されてもよい。すなわち、第1の実施形態の変形例3と同様に、接合部4−2が互いに離間している複数の接合部から構成されてもよい。図7Dは、第3の実施形態の変形例1の電子部品の要部を示す断面図である。本変形例の接合部4−2は、例えば図4Cと同様に構成することができる。
【0057】
図7Eは、本変形例での接続経路の一例を示す図である。図7Eでは、矢印の順に重ねられる基板電極、接合部、および、素子電極を左から並べて図示している。図7Eに示すように、本変形例では、配線10A〜10Eによって、分割された電極および分割された接合部が接続される。
【0058】
具体的には、配線10Aは、測定部9と基板電極14とを接続する。配線10Bは、素子電極37と素子電極38とを接続する。配線10Cは、基板電極11と基板電極13とを接続する。配線10Dは、素子電極35と素子電極36とを接続する。配線10Eは、基板電極12と測定部9とを接続する。これにより、測定部9、基板電極14、接合部30、素子電極38、素子電極37、接合部28、基板電極13、基板電極11、接合部27、素子電極35、素子電極36、接合部29、基板電極12、および、測定部9の順に導電する接続経路が形成される。なお、図7Eの配線は一例でありこれに限られるものではない。
【0059】
図7Fは、本変形例での接続経路の他の例を示す図である。図7Fでは、配線10B〜10Dの代わりに、電極間を結合する結合部10B−2〜10D−2を備える点が、図7Eと異なっている。図7Fに示すように、配線の少なくとも一部を、隣接する電極を結合する結合部に置き換えてもよい。置き換える結合部は、図7Fに示す例に限られるものではない。例えば、結合部は、素子電極および基板電極のいずれか一方に備えるように構成してもよい。
【0060】
このように、第3の実施形態にかかる電子部品では、半導体素子1に近い接合部または絶縁基板2に近い接合部のいずれで損傷が生じても、精度よく損傷を検知することができる。
【0061】
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、半導体素子1と絶縁基板2との間の接合部の損傷を検知する例を説明した。同様の方法は、絶縁基板2とベース板3との間の接合部の損傷を検知する場合にも適用できる。第4の実施形態では、このように構成した例について説明する。
【0062】
図8Aは、第4の実施形態の電子部品全体を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0063】
図8Aに示すように、ベース板3の表面には基板電極6と基板電極7が形成される。絶縁基板2の表面には基板電極8−2が形成される。基板電極6、基板電極7、および、基板電極8−2は、接合部4−1と接続している。
【0064】
図8Aの下部は、基板電極6および基板電極7の、素子下周辺部分の断面図を示す。この断面図に示すように、基板電極7は、ベース板3上の、基板電極6が形成された領域の周囲の領域に形成される。
【0065】
基板電極6と基板電極7とが、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。測定部9は、基板電極6および基板電極7のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する。
【0066】
領域801は、半導体素子1の下の領域を表す。本変形例では、基板電極6が放熱経路の確保が必要な領域801の外側に存在するため、放熱性能を妨げない。なお、図8Aの断面図に示すように、基板電極6は、同様の形状を有し、領域801の周囲に四角形の周縁状に並べられた32個の複数の電極から構成される。
【0067】
なお、基板電極6の形状は図8Aに示す例に限られるものではない。例えば、図8Aの基板電極6の代わりに、図8Bおよび図8Cに示すような形状の基板電極6a〜6dを用いても良い。
【0068】
(第4の実施形態の変形例1)
次に、第4の実施形態の変形例1について説明する。図9は、第4の実施形態の変形例1の電子部品の要部を示す断面図である。図9に示すように、本変形例の電子部品は、第4の実施形態の電子部品と比較して、ベース板3と絶縁基板2との間の接合部4−1の形状が異なる。すなわち、図4Aに示した第1の実施形態の変形例3と同様に、本変形例では、接合部4−1が互いに離間している複数の接合部から構成される。
【0069】
(第4の実施形態の変形例2) 図9では、接合部4−1、および、接合部4−1の下の電極が複数に分割されているが、さらに接合部4−1の上の電極が複数に分割されてもよい。図10Aは、第4の実施形態の変形例2の電子部品の要部を示す断面図である。図10Bは、接合部4−1の下の基板電極の形状の一例を示す図である。図10Cは、接合部4−1の上の基板電極の形状の一例を示す図である。
【0070】
図10Bは、図8Bと同様の基板電極6a〜6d、7を適用する例を示している。図10Cは、図8Bの基板電極6a〜6d、7と同様の形状の基板電極8−4a〜8−4d、8−3を適用する例を示している。図10Bおよび図10Cの黒の実線は、電極間を接続する配線の例を示している。
【0071】
図10Dおよび図10Eは、図10Bおよび図10Cの配線の一部の代わりに結合部を備える構成の一例を示している。図10Dおよび図10Eの黒の太い実線は、電極間を結合する結合部の例を示している。図7Fで述べたように、結合部は、接合部4−1の上下のいずれか一方の電極に備えるように構成してもよい。
【0072】
(第4の実施形態の変形例3)
図8Aでは、接合部4−1の下の電極、すなわち、ベース板3上の電極が分割されていた(基板電極6、7)。第2の実施形態と同様に、接合部4−1の上の電極が分割されるように構成してもよい。図10Fは、このように構成した第4の実施形態の変形例3の電子部品の要部を示す断面図である。なお、本変形例では、接合部4−1も分割した例を示す。図10Fに示すように、本変形例では、ベース板3上の電極は分割されていない。ベース板3上の電極の表面には、レジスト1001が塗布される。これにより接合部4−1が分割される。
【0073】
本変形例では、電極が分割された側、すなわち、接合部4−1の上の電極側に接続経路が形成され(図示は省略)、この接続経路の電気特性が計測される。
【0074】
(第4の実施形態の変形例4)
例えばベース板3が銅である場合には、はんだ接合のための電極が不要となる場合がある。第4の実施形態の変形例4では、ベース板3上に電極が形成されない例を示す。図10Gは、第4の実施形態の変形例4の電子部品の要部を示す断面図である。図10Gに示すように、本変形例では、ベース板3上に電極が形成されていない。ベース板3上の表面には、レジスト1011が塗布される。これにより接合部4−1が分割される。
【0075】
本変形例も第4の実施形態の変形例3と同様に、接合部4−1の上の電極側に接続経路が形成され、この接続経路の電気特性が計測される。
【0076】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図11は、第5の実施形態の電子部品の要部を示す断面図である。図11に示すように、ベース板3の表面には基板電極32が形成される。絶縁基板2の表面には基板電極33−2と基板電極34−2が形成される。基板電極32、基板電極33−2、および、基板電極34−2は、接合部4−1と接続している。すなわち、第5の実施形態では、図6Aに示した第2の実施形態と同様に、接合部4−1の下側の電極(基板電極32)ではなく、接合部4−1の上側の電極(基板電極33−2、基板電極34−2)が分離される。
【0077】
図11では省略しているが、基板電極33−2と基板電極34−2とが、配線10を介して測定部9に電気的に接続される。これにより、第2の実施形態と同様の手法で、基板電極33−2と接合部4−1とのはく離を検出できる。
【0078】
第5の実施形態についても第1の実施形態の変形例3と同様に、接合部4−1が互いに離間している複数の接合部から構成されてもよい。
【0079】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図12Aは第6の実施形態の電子部品全体を模式的に示す断面図である。図12Bは第6の実施形態の電子部品の要部を示す断面図である。図12Cは第6の実施形態の半導体素子1上に形成された電極の形状を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0080】
本実施形態では、導電部材5を例えば金属板とする。導電部材5の素材は例えば銅などである。半導体素子1の表面には素子上電極が形成される。図12Bに示すように、素子上電極は、電極1211a〜1211dと電極1212とを含む。以下では、区別する必要がない場合は、電極1211a〜1211dを単に電極1211という。
【0081】
なお、図12Bは、電極1211および電極1212が、それぞれ上述の図8Cに示す基板電極6および基板電極7と同様に構成された例を示している。電極1211および電極1212は、図8Aまたは図8Bに示す基板電極6および基板電極7と同様の形状であっても良い。
【0082】
図12Aおよび図12Bに示すように、電極1211および電極1212は、導電部材5と接合部4−3で接続している。図12Cに示すように、電極1211は電極1212の内側に形成される。また、電極1211は、互いに離間している複数の電極から構成される。それぞれの電極間には空隙を設けても良いし、レジストを塗布しても良い。導電部材5の接続面の直下付近は、放熱経路の確保が必要な領域1221である。電極1211は、領域1221の外側に位置する。
【0083】
図12Bに示すように、本実施形態では、電極1211を構成する複数の電極を測定部9に接続する。これにより、導電部材5と半導体素子1を接続する接合部4−3の損傷を検知することができる。また、電極1211は放熱経路の確保が必要な領域1221の外側に存在するため、放熱性能を妨げない。さらに、電極1211は領域1221に隣接しているため、領域1221の周辺の接合部4−3(損傷しやすい接合部4−3)の損傷を早期に検知することができる。
【0084】
上記各実施形態では、主に1つの測定部9を用いて電気特性を検知していた。測定部9の個数は1に限られるものではなく、複数の測定部9を用いるように構成しても良い。図13は、2つの測定部9a、9bを用いる場合の配線の例を示す図である。図13の例では、基板電極11と基板電極12との間が測定部9aに接続される。また、基板電極13と基板電極14との間が、測定部9bに接続される。
【0085】
図14Aは、複数の検知対象に対して、1つの測定部9を用いる場合の配線の他の例を示す図である。
【0086】
配線1401および1402は、絶縁基板2の表面および裏面の電極を接続する配線である。従って、配線1401および1402は、絶縁基板2の内部を通ることになる。より具体的には、配線1401は、絶縁基板2の表面(半導体素子1側)の導電部材5の接続部と、絶縁基板2の裏面(ベース板3側)の電極112とを接続する。配線1402は、絶縁基板2の表面の内側の電極112と、絶縁基板2の裏面の電極112とを接続する。
【0087】
配線1411〜1414は、絶縁基板2またはベース板3の表面の電極を接続する配線である。例えば、配線1414は、絶縁基板2の裏面の電極112内の2つの電極を接続する。
【0088】
図14Bは、複数の検知対象に対して、1つの測定部9を用いる場合の配線の他の例を示す図である。図14Bでは、配線1414および1412の代わりに、それぞれ結合部1421および1422を備える例が示されている。すなわち、配線の少なくとも一部を、電極間を結合する結合部に置き換えるように構成してもよい。
【0089】
図14Aおよび図14Bのような構成により、測定部9は、半導体素子1の下の接合部4−2、絶縁基板2の下の接合部4−1、導電部材5の接続部、および、導電部材5のいずれかの破断を検知することができる。
【0090】
この場合においても、測定部9は1に限られるものではなく、複数の測定部9を用いるように構成しても良い。さらに、半導体素子1、絶縁基板2、ベース板3、導電部材5はそれぞれ1に限られるものではなく、複数の半導体素子1、複数の絶縁基板2、複数のベース板3、複数の導電部材5であっても良い。
【0091】
次に、測定部9により測定された電気特性から、接合部の損傷状態を予測する予測処理の一例について説明する。図15Aは、接合部の損傷状態を予測する監視装置の概略構成例を示すブロック図である。図15Aに示すように、監視装置は、測定部9と、演算部231と、損傷状態データベース245とを備えている。
【0092】
演算部231は、測定部9により測定された接続経路の電気特性、および、損傷状態データベース245に記憶された情報を参照し、接合部の損傷状態を予測する。損傷状態データベース245は、例えば電気特性値xが規定範囲外である場合の接合部の損傷状態を表す情報を記憶する。演算部231はハードウェアによって構成しても、プログラムモジュールによって構成しても良い。
【0093】
図15Bは、予測処理の全体の流れの一例を示すフローチャートである。まず、測定部9が、電気特性値xを測定する(ステップS11)。なお、電気特性値xは、n(nは1以上の整数)個の測定部9のうちi番目の測定部9で測定される電気特性値を表す。演算部231は、測定された電気特性値xが規定範囲内であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0094】
電気特性値xが規定範囲内である場合(ステップS12:Yes)、予測処理を終了する。電気特性値xが規定範囲内でない場合(ステップS12:No)、演算部231は、損傷状態データベース245に格納された情報を参照し、接合部の損傷状態を予測する(ステップS13)。演算部231は、この情報を参照して損傷状態を予測する。
【0095】
図16は、予測処理の全体の流れの他の例を示すフローチャートである。接合部の損傷状態の予測を、例えば接合部が破損に至るまでの寿命サイクル数の予測とする。図16では、測定される電気特性値の個数をn、i番目の電気特性値をxとする。電気特性値xが規定範囲内のとき0、規定範囲外のとき1をとる変数をyとする。また、規定範囲外の電気特性値の個数をkとする。kおよびyの初期値を0とする。iの初期値を1とする。
【0096】
なお、1以上の測定部9がそれぞれ1つの電気特性を測定するように構成しても良いし、1以上の測定部9の少なくとも一部が、複数の電気特性を測定するように構成しても良い。1つの測定部9が複数の電気特性を測定する場合には、1つの測定部9が複数(箇所)の接合部の電気特性を検出する場合、および、1つの測定部9が複数の電気特性値(キャパシタンス、インピーダンス、電気抵抗値等)を測定する場合が含まれる。
【0097】
まず、演算部231は、yが0と等しいか否かを判断する(ステップS21)。等しい場合は(ステップS21:Yes)、i番目の電気特性値xを測定する(ステップS22)。演算部231は、測定された電気特性値xが規定範囲内であるか否かを判断する(ステップS23)。
【0098】
電気特性値xが規定範囲内でない場合(ステップS23:No)、演算部231は、kに1加算するとともに、yを1に更新する(ステップS24)。演算部231は、損傷状態データベース245に格納された情報を参照し、予測寿命NfkにN’fiを設定する(ステップS25)。N’fiは、i番目の測定部9で測定された電気特性値xiが規定範囲外の場合に対応する接合部の予測寿命を表す。記憶部は、1〜n番目の測定部9に対応する接合部の各予測寿命であるN’f1〜N’fnを記憶する。予測寿命Nfkは、k番目に規定範囲外となった測定部9に対応する接合部の予測寿命を表す。予測寿命が、接合部が破損に至るまでの寿命サイクル数の予測に相当する。
【0099】
ステップS25の後、yが0と等しくない場合(ステップS21:No)、または、電気特性値xが規定範囲内である場合(ステップS23:Yes)、演算部231は、iに1を加算する(ステップS26)。演算部231は、iがnより大きいか否かを判断する(ステップS27)。大きくない場合(ステップS27:No)、ステップS21に戻り処理を繰り返す。
【0100】
iがnより大きい場合(ステップS27:Yes)、演算部231は、kが0と等しいか否かを判断する(ステップS28)。等しくない場合(ステップS28:No)、演算部231は、予測寿命Nf1〜Nfkのうち、最小値をNとする(ステップS29)。例えばこのNを電子部品の予測寿命として出力する出力部を備えても良い。kが0と等しい場合(ステップS28:Yes)、演算部231は予測処理を終了する。
【0101】
本実施形態では、電気特性値が規定範囲外になる毎に、損傷状態の予測の修正を段階的に行う。
【0102】
(第7の実施形態)
次に、接合部の損傷状態を予測する監視装置の構成例について説明する。図17は、第7の実施形態の監視装置200の概略構成例を示すブロック図である。
【0103】
監視装置200は、対象部品201およびダミー部品202を搭載した基板(図示せず)を備える。対象部品201は、例えば半導体素子1を含んでもよい。この基板は、例えばパワーエレクトロニクス機器、車載用電子機器、医療用機器などの電子機器内に配置されている。対象部品201は対象接合部211を介して基板に接続されている。対象部品201またはダミー部品202は、1つまたは複数のダミー接合部212a〜212cを介して基板に接続されている。
【0104】
対象接合部211とは、寿命や破損などの予測の対象となる接合部を表す。ダミー接合部212a〜212cとは、接合部のうち破断を検知する測定部と接続されている接続経路を形成している接合部であって、対象接合部211以外の接合部を表す。ダミー接合部212は、例えば、上述の第1〜第6の実施形態に記載した接合部のうち、破断を検知する測定部と接続されている接続経路を形成している接合部のいずれかを適用することができる。特に区別する必要がない場合は、ダミー接合部212a〜212cを単にダミー接合部212という。対象部品201とは、対象接合部211が接続された部品を表す。ダミー部品202とは、対象部品201以外の部品を表す。
【0105】
ダミー接合部212は、温度変動および加速度変動に対して、対象接合部211よりも先に破断される可能性が高い箇所に設置されている。すなわち熱負荷と動荷重に対して対象接合部211よりも寿命が短くなる場所にダミー接合部212を配置している。対象接合部211およびダミー接合部212は、共に例えば薄膜はんだ接合部により構成する。対象接合部211およびダミー接合部212はこれに限られるものではなく、素子電極のワイヤ接合部や金属薄膜接合層であっても良い。対象部品201とダミー部品202はそれぞれ同じ部品であっても異なる部品であっても良い。
【0106】
監視装置200は、対象部品201、対象接合部211、ダミー部品202およびダミー接合部212に加え、測定部9、温度センサ221、加速度センサ222、演算部231−2、温度情報データベース241、加速度情報データベース242、複合負荷モデルベース243、寿命予測モデルベース244および損傷情報データベース245−2を備えている。
【0107】
演算部231−2は、各データベースとモデルベースからデータやモデルを読み出す読み出し部(図示せず)を含む。
【0108】
なお、演算部231−2および測定部9はハードウェアによって構成しても、プログラムモジュールによって構成しても良い。プログラムモジュールにより構成する場合、各プログラムモジュールは不揮発性メモリまたはハードディスク等の記録媒体に格納され、CPU等のコンピュータにより、当該記録媒体から読み出され、RAM等のメモリ装置に展開されてまたは直接に実行される。データベースやモデルベースは、例えばメモリ装置、ハードディスク、CD−ROM、USBメモリ等の記録媒体によって構成することができる。
【0109】
温度情報データベース241は、温度センサ221により検出される温度の変動履歴を温度履歴データとして記録する。加速度情報データベース242は、加速度センサ222により検出される加速度の変動履歴を加速度履歴データとして記録する。
【0110】
例えば温度情報データベース241および加速度情報データベース242は、一定時間間隔で温度情報および加速度情報を記録しても良いし、予め指定されたタイミング(例えば指定温度または指定加速度になったとき)で温度情報および加速度情報を記録しても良い。なお記録の際、温度情報および加速度情報に時刻情報を付加しても良い。
【0111】
測定部9は、対象接合部211およびダミー接合部212の電気特性(例えば抵抗値)を測定して演算部231−2に通知する。演算部231−2は、電気特性(抵抗値)がしきい値以上であるとき、対象接合部211が破断したと判断する。
【0112】
演算部231−2は、温度情報データベース241および加速度情報データベース242に記録された温度履歴データおよび加速度履歴データに基づき、各種データベースとモデルベースに従って対象接合部211の寿命分布推定(寿命に達したか否か、または余寿命がどの程度あるか等の推定)と破損確率推定を行う。すなわち、演算部231−2は、温度履歴データおよび加速度履歴データに基づき対象接合部211の損傷値(ここでは温度変動および加速度変動に起因する累積負荷を示す温度損傷値および加速度損傷値)を取得する。そして演算部231−2は、取得した損傷値がしきい値に達している場合は、対象接合部211は寿命に達したと判断して、所定のアクションを取る。例えば、演算部231−2は、外部とのインターフェースとなる出力部(図示せず)を介して、寿命に達したことをユーザに通知する。
【0113】
また演算部231−2は、測定部9から通知される対象接合部211およびダミー接合部212の電気特性をもとに、対象接合部211およびダミー接合部212の破断(故障)の有無を判断する。演算部231−2は、対象接合部211の故障を検出したときは、上記出力部を介して、所定のアクションを取る。
【0114】
一方、演算部231−2は、ダミー接合部212の故障を検出したときは、温度情報データベース241および加速度情報データベース242内のセンシング履歴(温度履歴データおよび加速度履歴データ)に基づき、ダミー接合部212の損傷値(温度損傷値および加速度損傷値)をデータベースとモデルベースを利用して計算する。演算部231−2は、計算した損傷値を上述した対象接合部211の寿命分布推定と破損確率推定に反映させて、対象接合部211の寿命推定と破損確率推定をキャリブレーション(修正)する。寿命分布は寿命を変数とした確率分布である。破損確率は、規定寿命までに破損する確率として、寿命分布を表現する確率分布、または、損傷値を変数とした確率分布から算出することができる。
【0115】
演算部231−2の詳細動作は後述する。以下では演算部231−2の演算で用いる複合負荷モデルベース243および寿命予測モデルベース244について説明する。
【0116】
まず寿命予測モデルベース244について説明する。
【0117】
寿命予測モデルベース244は、ダミー接合部212および対象接合部211の損傷値を計算するための関数や各種パラメータ等を記憶する。疲労による材料の破壊は、ひずみ振幅の値と、繰り返し数とによって決定される。代表的な例として、下記の式(1)の形で示されるCoffin−Manson則(サイクル数が10程度以下)、および、Busquin則(サイクル数が10程度以上)等が知られている。
【数1】

【0118】
マイナー則(Miner’s Rule)では、熱、振動、および衝撃など、異なる負荷が複合的に作用した場合でも、損傷値が一定の値(マイナー則では1)に達した時点で破壊するとされている(後述するDth+D=1の式を参照)。ここで、クリープ現象による損傷を考慮した寿命則を用いても良い。
【0119】
寿命予測モデルは、確定関数によるモデルだけではなく、不確定性を考慮した確率密度分布関数であっても良い。例えば、Coffin−Manson則やBusquin則のパラメータが確率分布に従うモデルであっても良い。
【0120】
一例として、温度変動と動荷重(以降では振動を例に説明)による複合負荷を考える。温度変動の損傷値をDth、動荷重の損傷値をDとする。それぞれ単独の負荷が与えられて破壊した場合の損傷値Dth、Dはそれぞれ1であるとする。マイナー則に従うのであれば、異なる負荷が複合的に作用した場合、損傷値Dth、Dの合計が1、すなわち下記式(3)の状態で破壊が生じる。
【数2】

本実施形態では、ひずみ振幅Δεは一定の値をとるものとする。ひずみ振幅が一般的な波形をとる場合でも、以下の式(8)に示すように各ひずみ振幅とその繰り返しサイクル数とによる損傷値を合計することにより、本質的に同様にして損傷値の計算ができる。
【数3】

【0121】
ダミー接合部212および対象接合部211のそれぞれについて上記式(1)から式(7)(および式(8))の関係を予め取得して上述のように寿命予測モデルベース244に記憶させておく。負荷が複合しない場合の寿命予測式である式(5)および式(7)の関係は、はんだ接合部を用いた材料試験等で取得する。
【0122】
ここで、寿命予測モデルは、ひずみ(または応力)を変数としたモデルで説明しているが、温度範囲や加速度範囲を変数とした寿命予測モデルであっても良い。ひずみ(または応力)を変数とした寿命予測モデルを用いる場合には、温度範囲と加速度範囲から、ひずみ範囲(または応力範囲)を算出するための変換式や変換テーブルを用意しておく。この変換式や変換テーブルは事前に有限要素シミュレーションなどの応力解析による熱負荷条件や加速度条件を振ったパラメータサーベイにより、作成しておく。
【0123】
ダミー接合部212に関する式(4)および式(5)の組(熱負荷損傷値の算出関数)はダミー損傷関数に相当する。対象接合部211に関する式(4)および式(5)の組(熱負荷損傷値の算出関数)は対象損傷関数に相当する。
【0124】
また、ダミー接合部212に関する式(6)および式(7)の組(動荷重損傷値の算出関数)はダミー損傷関数に相当する。対象接合部211に関する式(6)および式(7)の組(動荷重損傷値の算出関数)も、対象損傷関数に相当する。
【0125】
ここで、熱負荷寿命予測モデルは、疲労寿命予測モデルとクリープ破損寿命予測モデルに分割して、疲労損傷値とクリープ損傷値に分けても良い。また、動荷重寿命予測モデルは、疲労寿命予測モデルとクリープ破損寿命予測モデルに分割して、疲労損傷値とクリープ損傷値に分けても良い。
【0126】
次に、複合負荷モデルベース243について説明する。
【0127】
上述したように、マイナー則に従うのであれば、式(3)の状態(各負荷の損傷値の合計が1)で破壊が生じるが、実際には複合的な負荷が作用した場合は各負荷の損傷値の合計が1に達する前に壊れることも多い。そこで本実施形態ではマイナー則(式(3))を改良した手法を用いる。
【0128】
すなわち、試験と(有限要素法などの)数値シミュレーションによって事前に各負荷を複合させて壊れるまでの時間を測定する試験を行う。これにより、熱負荷損傷値Dthと動荷重損傷値Dのデータと、破損したか否かの関係を、ダミー接合部212および対象接合部211のそれぞれについて取得し、複合負荷モデルベース243に保存しておく。本実施形態では式(3)ではなく、DthとDを変数とした確率密度分布関数(または確率分布関数)を後述する各種演算(寿命のキャリブレーション)に用いる。ここで、式(9)の関数(複合負荷関数)の関係が、確率密度分布関数内に存在しても良い。また、DthとDは、それぞれ、疲労損傷値Dfatigue、クリープ損傷値Dcreepに分けて4変数にしても良い。
【数4】

【0129】
thとDを変数とした確率密度分布関数(または確率分布関数)では、あるDthとDの値のときの破損確率が決まる。
【0130】
確率密度分布関数としては、例えば、DthとDの関係を示す曲線を、曲率半径をパラメータとして、円弧近似し、そのパラメータに関する確率分布を設定しても良い。DthとDの実験結果に基づく発生頻度を近似した確率密度関数であっても良い。
【0131】
ここで、f(Dth)は、振動による損傷値Dが与えられた際に温度変動の損傷値を返す関数である。f(D)は温度変動の損傷値が与えられた際に振動の損傷値Dthを返す関数である。
【0132】
このとき、余寿命は、現在の損傷値(座標)と、DthとDを変数とした確率密度分布との間の距離(マージン)と関連がある。損傷が進むに従ってDth、Dは確率密度分布に近接し、確率密度分布上に達した時点で破損が発生する確率を有することになる。このとき、現在の損傷値(DthとD)に対する、熱負荷や動荷重のサイクル数と、時間(使用期間や保守点検期間)の関係から、寿命(サイクル数)を変数とした確率分布を算出することもできる。
【0133】
次に、DthとDを変数とした確率密度分布関数を複合負荷モデルとして用いる場合に、ダミー接合部212の破損時の損傷値または寿命に関する確率分布(例えば50%点)が、複合負荷モデルの確率分布(例えば50%点)と整合するように、寿命予測モデルと複合負荷モデルを修正する方法について説明する。
【0134】
基本的には、ダミー接合部212が破断した時点でのDthとDのデータ点が、DthとDを変数とした確率密度分布の50%点などの既定の確率点の線上に来るようにモデルパラメータを修正する。例えば、損傷値が確定値の場合には、DthとDの2次元グラフ上で、ダミー接合部212の破断時の損傷値データ点と、確率密度分布の既定確率点のラインとの距離が最小となるように、すなわち損傷値データ点がライン上に来るように、モデルパラメータを修正する。
【0135】
寿命予測モデルがデータの不確定性を考慮して確率密度分布として与えられる場合には、損傷値も確率密度分布となる。このとき、例えばBayes法などの統計的手法を活用して、複合負荷モデルである確率密度分布の既定確率点で、ダミー接合部212が破断する確率が高くなるように、寿命予測モデルと複合負荷モデルのパラメータを修正する。
【0136】
また、DthとDを、それぞれ、疲労損傷値Dfatigue、クリープ損傷値Dcreepに分けて4変数の確率密度分布とした場合には、4次元グラフ上で、ダミー接合部212の破断時の損傷値データ点と、確率密度分布の既定確率点との距離を、寿命予測モデルと複合負荷モデルのパラメータを変更することで修正することになる。
【0137】
ダミー寿命データおよび対象寿命データは、DとDthとを対応づけたルックアップテーブルの形式を有していても良いし、破損確率とDとDthとを対応づけた複合負荷モデル(確率密度分布関数)とそのパラメータ値で与えても良い。
【0138】
センサ温度(温度センサ221により検出される温度)またはセンサ加速度(加速度センサ222により検出される加速度)から、接合部ひずみ(または応力)を算出するには、例えば、事前に温度条件や加速度条件をパラメータとした応力解析を行うことで、センサ値(センサ温度またはセンサ加速度)と接合部ひずみの関係式、またはテーブルを用意しておくことなどが考えられる。
【0139】
次に、ひずみ振幅Δεの算出方法を決定する方法について説明する。ひずみ振幅Δεは、実際の接合部では計測できない量であり、有限要素法などのシミュレーションを用いて決定される。参照実験値データ(半導体モジュールの温度と加速度)が取得され、応力解析により参照実験値データと、接合部に発生するひずみとの関係が取得される。参照実験データからサイクルカウントにより破断検出時の繰り返し数Nが算出される。参照実験データと応力解析結果から接合部のひずみ振幅Δε(または応力振幅)が算出される。算出したひずみ振幅Δε(または応力振幅)を寿命予測モデルベース244の式であるN=αΔε−βに代入し寿命サイクルが算定される。
【0140】
図18は、寿命推定処理の全体の流れの一例を示すフローチャートである。
【0141】
演算部231−2は、温度情報データベース241に保存された温度履歴データと、加速度情報データベース242に保存された加速度履歴データをもとに、温度範囲と加速度範囲から接合部ひずみ範囲への変換式を活用し、ひずみ範囲とサイクル数のデータセットを算出する。演算部231−2は、寿命予測モデルベース244を用いて、対象接合部211の損傷値(熱負荷損傷値と動荷重損傷値)を算出する(ステップS31)。演算部231−2は、ダミー接合部212についても対象接合部211と同様にして損傷値(温度損傷値と動荷重損傷値)を算出する。演算部231−2は、対象接合部211およびダミー接合部212について算出した損傷値(熱負荷損傷値と動荷重損傷値)を損傷情報データベース245−2に保存する。
【0142】
演算部231−2は、対象接合部211の損傷値(熱負荷損傷値と動荷重損傷値)を入力として複合負荷モデルにより破損確率を算出する(ステップS32)。演算部231−2は、算出した破損確率が、しきい値に達したとき、対象接合部211は寿命に達したとみなす。演算部231−2は、寿命に達した旨を損傷情報データベース245−2に記録するとともに、所定のアクションを実行する。
【0143】
所定のアクションとしては、企業内使用時にメンテナンスを実行する、および、ユーザサポートの連絡先をユーザに知らせる、などのアクションが考えられる。これにより事前にその兆候を察知することができ、故障発生前に部品を交換することにより、市場不良発生を未然に防ぐことができる。
【0144】
なお、寿命推定は、何らかのイベントの発生の際に定期的に行われる。イベントの発生として、例えば、保守点検時、電源オンの直後、および、警告温度以上への温度上昇等が挙げられる。
【0145】
一方、演算部231−2は、測定部9からの通知によりダミー接合部212の破断を検出すると、ダミー接合部212の熱負荷損傷値と動荷重損傷値を算出し、対象接合部211の寿命予測モデルと複合負荷モデルのキャリブレーション(修正)を行う(ステップS33〜ステップS35)。以下、詳細に説明する。
【0146】
まず、演算部231−2は、測定部9を介してダミー接合部212および対象接合部211の電気特性(ここでは抵抗値)を定期的またはユーザ指定時に取得する。演算部231−2は、ダミー接合部212の抵抗値がしきい値以上か否かを検査する(ステップS33)。しきい値以上でないときは(ステップS33:No)、演算部231−2は、ダミー接合部212は破断していないと判断し、対象接合部211に対する寿命予測モデルと複合負荷モデルのキャリブレーションを行わない。
【0147】
なお、上述のように対象接合部211の抵抗値がしきい値以上のときは、演算部231−2は、対象接合部211が故障したと判断して所定のアクションを実行し、対象接合部211の抵抗値がしきい値未満のときは何も行わない。
【0148】
一方、ダミー接合部212の抵抗値がしきい値以上のときは(ステップS33:Yes)、演算部231−2は、まず、温度情報データベース241に保存された温度履歴データと、加速度情報データベース242に保存された加速度履歴データをもとに、温度範囲と加速度範囲から接合部ひずみ範囲への変換式を活用し、ひずみ範囲とサイクル数のデータセットを算出する。演算部231−2は、寿命予測モデルベース244を用いて、ダミー接合部212の熱負荷損傷値と動荷重損傷値を算出し、対象接合部211の寿命予測モデルと複合負荷モデルのキャリブレーション(修正)を行う(ステップS34)。
【0149】
モデルの修正後、演算部231−2は、温度情報データベース241に保存された温度履歴データと、加速度情報データベース242に保存された加速度履歴データをもとに、温度範囲と加速度範囲から接合部ひずみ範囲への変換式を活用し、ひずみ範囲とサイクル数のデータセットを算出する。演算部231−2は、寿命予測モデルベース244を用いて、対象接合部211の損傷値(熱負荷損傷値と動荷重損傷値)を算出する。対象接合部211の損傷値(熱負荷損傷値と動荷重損傷値)を入力として複合負荷モデルにより破損確率を算出する(ステップS35)。算出した破損確率がしきい値に達したとき、演算部231−2は、対象接合部211が寿命に達したとみなす。演算部231−2は、その旨を損傷情報データベース245−2に記録するとともに、所定のアクションを実行する。
【0150】
なお、ダミー接合部212が複数存在する場合は、対象接合部211とダミー接合部212との関係で示した処理を、ダミー接合部212が破断するごとに繰り返すことにより、対象接合部211の寿命をさらに高い精度で予測することができる。
【0151】
以上のように本実施形態により、半導体モジュール接合部の寿命予測で、ダミー接合部212の破断により対象接合部211の寿命予測をキャリブレーション(修正)することが可能になり、より高精度な余寿命予測を実現できる。
【0152】
(第7の実施形態の変形例1)
これまでは1つの対象接合部211を備える例を説明した。第7の実施形態の方法は、半導体モジュール接合部が、冷却構造とモジュールを結ぶはんだ接合層、素子電極接合部(アルミワイヤ接合部、または銅電極との間の金属薄膜接合層)、および、素子と基板を結ぶ金属薄膜接合層などのように、複数の対象接合部211が存在する場合についても適用できる。すなわち、それぞれの対象接合部211について、本実施形態と同等の方法を適用できる。
【0153】
このとき、それぞれの対象接合部211に関連したダミー接合部212をそれぞれデイジーチェーンで結び、いずれかが断線したときに第7の実施形態と同等の方法で寿命予測およびキャリブレーションを実施しても良い。また、それぞれの対象接合部211に関連したダミー接合部212の断線情報を、それぞれに検出して、それぞれの対象接合部211ごとに、第7の実施形態と同等の方法で寿命予測およびキャリブレーションを実施しても良い。
【0154】
(第7の実施形態の変形例2)
複数の半導体モジュールが存在する場合についても同様に、第7の実施形態と同等の方法で寿命予測およびキャリブレーションを実施することができる。このとき、各半導体モジュールのそれぞれの対象接合部211に関連したダミー接合部212をそれぞれデイジーチェーンで結び、いずれかが断線したときに第7の実施形態と同等の方法で寿命予測およびキャリブレーションを実施しても良い。また、それぞれの半導体モジュールごとに、対象接合部211に関連したダミー接合部212の断線情報を、それぞれに検出して、それぞれの半導体モジュールの対象接合部211ごとに、第7の実施形態と同等の方法で寿命予測およびキャリブレーションを実施しても良い。
【0155】
すべての半導体モジュールにダミー接合部212を設けることができない場合には、ダミー接合部212の場所として、いずれの場所を選択するかが問題となる。
【0156】
このような場合には、熱による負荷、および、外力による負荷のそれぞれが最も影響が大きい場所をダミー接合部212の場所とするのが望ましい。例えば、熱応力が最大となる領域の近くにダミー接合部212を設置する、または、動荷重による応力やひずみが最大となる領域の近くにダミー接合部212を設置することが望ましい。このような最適条件は、事前に実験や数値シミュレーションによって変形や応力の状態を調べ、重要視する負荷を考慮した上で選択するとより望ましい。
【0157】
ダミー接合部212と対象接合部211とが互いに異なる部品である場合や、同じ種類の部品(例えば接合部)であるが異なる形状を有する場合であっても、第7の実施形態の手法と基本的に同様にして、ダミー接合部212が破断した時点でキャリブレーション(修正)を行うことができる。
【0158】
第7の実施形態によれば、熱負荷(熱負荷は低サイクル疲労と高サイクル疲労とクリープに分けて考えても良い)や動荷重(動荷重は低サイクル疲労と高サイクル疲労とクリープに分けて考えても良い)が重畳した複合負荷の影響を考慮した寿命予測を行うことが可能になる。また、半導体モジュール接合部の損傷が致命的または許容以上になる前に検出することができる電子機器または半導体モジュールを提供することができる。
【0159】
以上説明したとおり、第1から第7の実施形態によれば、接合部の損傷を事前に検知することができる。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1 半導体素子
2 絶縁基板
3 ベース板
4 接合部
5 導電部材
6、7 基板電極
8 素子電極
9 測定部
10 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板状の部材である第1部材と、
基板状の部材、または、半導体素子である第2部材と、
前記第1部材上に形成された第1電極と、
前記第1部材上の、前記第1電極が形成された領域の周囲の領域に形成された第2電極と、
前記第2部材に形成された第3電極と、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極と接合する接合部と、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1電極は、互いに離間した複数の電極を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記接続経路は、前記複数の電極と、前記第2電極のうち、少なくとも2つを含むこと、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2電極は、互いに離間した複数の電極を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記接続経路は、前記複数の電極と、前記第1電極のうち、少なくとも2つを含むこと、
を特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1電極が形成された領域は、前記第1部材上の領域のうち、前記第2部材に接続された導電部材と前記第2部材との接続部に最も近い領域を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
前記複数の電極の少なくとも1つが形成された領域は、前記第1部材上の領域のうち、前記第2部材に接続された導電部材と前記第2部材との接続部に最も近い領域を含むこと、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1電極と前記第2電極との間に空隙が形成されたこと、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項9】
前記複数の電極間、および、前記複数の電極と前記第2電極との間に空隙が形成されたこと、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項10】
前記複数の電極間、および、前記複数の電極と前記第1電極との間に空隙が形成されたこと、
を特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極との間にレジストが形成されたこと、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項12】
前記複数の電極間、および、前記複数の電極と前記第2電極との間にレジストが形成されたこと、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項13】
前記複数の電極間、および、前記複数の電極と前記第1電極との間にレジストが形成されたこと、
を特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項14】
前記測定部は、前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方を含み、相互に異なる複数の接続経路のそれぞれに対応して複数備えられ、
複数の前記測定部それぞれに対して定められた、前記電気特性と前記接合部の損傷に関する指標との関係のうち、前記電気特性が測定された前記接続経路に対して定められた前記関係と、測定された前記電気特性とに基づいて、前記接合部の損傷に関する指標を演算する演算部と、をさらに備えること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項15】
前記演算部で求められる演算結果を出力する出力部をさらに備えること、
を特徴とする請求項14に記載の電子部品。
【請求項16】
前記第1部材下に形成された第4電極と、
前記第2部材の、前記第3電極が形成された面の裏面に形成された第5電極と、をさらに備え、
前記接続経路は、前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方と、前記第3電極、前記第4電極、および前記第5電極の少なくとも1つと、を接続すること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項17】
基板状の部材である第1部材と、
基板状の部材、または、半導体素子である第2部材と、
前記第1部材上に形成された第1電極と、
前記第2部材に形成された第2電極と、
前記第2部材の、前記第2電極が形成された領域の周囲の領域に形成された第3電極と、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極と接合する接合部と、
前記第2電極および前記第3電極のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする電子部品。
【請求項18】
基板状の部材である第1部材と、
基板状の部材、または、半導体素子である第2部材と、
前記第1部材上に形成された第1電極と、
前記第1部材上の、前記第1電極が形成された領域の周囲の領域に形成された第2電極と、
前記第2部材に形成された第3電極と、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極と接合する接合部と、を備える電子部品における測定方法であって、
測定部が、前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する測定ステップ
を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項19】
基板状の部材である第1部材と、
基板状の部材、または、半導体素子である第2部材と、
前記第1部材上に形成された第1電極と、
前記第2部材に形成された第2電極と、
前記第2部材の、前記第2電極が形成された領域の周囲の領域に形成された第3電極と、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極と接合する接合部と、を備える電子部品における測定方法であって、
測定部が、前記第2電極および前記第3電極のうち少なくとも一方を含む接続経路の電気特性を測定する測定ステップ
を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項20】
対象接合部を介して電子部品を搭載するとともに前記電子部品または他の電子部品との間にダミー接合部が設けられた基板、を含む電子機器の監視装置であって、
前記電子機器の温度の変動に起因する前記ダミー接合部および前記対象接合部の累積損傷を示す熱負荷損傷値をそれぞれ計算するダミー損傷関数および対象損傷関数を含む熱負荷寿命予測モデルを格納する第1モデルベースと、
前記電子機器の加速度の変動に起因する前記ダミー接合部および対象接合部の累積損傷を示す動荷重損傷値をそれぞれ計算するダミー損傷関数および対象損傷関数を含む動荷重寿命予測モデルを格納する第2モデルベースと、
前記ダミー接合部の熱負荷損傷値と、前記ダミー接合部の動荷重損傷値と、に応じた前記ダミー接合部の破損確率を定めたダミー複合負荷モデルを格納する第3モデルベースと、
前記対象接合部の熱負荷損傷値と、前記対象接合部の動荷重損傷値と、に応じた前記対象接合部の破損確率を定めた対象複合負荷モデルを格納する第4モデルベースと、
前記ダミー接合部の電気特性を測定する測定部と、
前記電気特性に基づき前記ダミー接合部の破断が検出されたとき、前記ダミー接合部の損傷値または寿命に関する確率分布が、前記ダミー複合負荷モデルおよび前記対象複合負荷モデルの確率分布と整合するように、前記熱負荷寿命予測モデル、前記動荷重寿命予測モデル、前記ダミー複合負荷モデル、および、前記対象複合負荷モデルを修正する演算部と、
を備えることを特徴とする監視装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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